星の海へ   作:ステルス兄貴

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管理局の空戦魔導師とディンギル軍の大型戦闘機の強さに関して、意見を求めた結果、今回のような展開となりました。

流石にディンギル軍のワンサイドゲームでは管理局も立つ瀬が無いと思いまして‥‥


二百五十八話 ミッドチルダ空襲

 

 

アクエリアスの接近によって水没が確定したミッドチルダ‥‥

 

水没から逃れるためにミッドチルダを脱出した第一次避難船団であるが、目的地である第六管理世界アルザスを目前にしてザール率いるミッドチルダ制圧艦隊と遭遇してしまい、全滅。

 

何千万と言う避難民は宇宙に散った。

 

さらに管理局の凶報ともいえる報告が齎される。

 

「そ、総合統括官!!」

 

「どうしたの?スー大将の艦隊は間に合ったの?」

 

「そ、それが‥‥」

 

オペレーターはリンディにその凶報とも言える報告を伝える。

 

「な、なんですって!?その情報に間違いないの!?」

 

凶報を聞いてリンディは椅子から立ち上がる。

 

「は、はい。第一次避難船団、スー艦隊は全滅した模様です」

 

「‥‥スー大将は?」

 

「殉職なされました」

 

「‥‥」

 

第一次避難船団、スー艦隊の全滅、そしてスー大将の殉職。

 

相次ぐ凶報にリンディは力なく椅子にドサッと倒れる。

 

「‥‥それで、避難船団とスー艦隊を攻撃してきた敵の動きは?」

 

「ミッド方面に進撃中であります。総合統括官、どう対処されますか?」

 

「‥第二、第三管理世界の艦隊を合流させて迎撃にあたるように伝えて」

 

「承知しました」

 

(避難船団を攻撃して来たと言う事は敵の狙いはもしかしてミッドの閉塞‥‥?)

 

避難船団、スー艦隊を撃破し、ミッドチルダ方面に向かっている事から敵の狙いがミッドチルダであることは明白であり、しかもミッドチルダの住民を外に逃がさない様に思えた。

 

アクエリアスが接近している中、このまま他の管理世界に出ることが出来なかったら、ミッドチルダの住民は全てアクエリアスの水害で溺死してしまう。

 

(奴らの狙いはもしかしてミッド全住民の抹殺?)

 

(大袈裟すぎるかもしれないけど、敵の動きとアクエリアスの接近時期が重なっているこの状況を見ると、そうとしか考えられないわ)

 

(なると、アクエリアスを人為的に動かしているのはやはり避難船団とスー艦隊を攻撃してきた敵と同一ね)

 

アクエリアスの不自然な移動に関しても避難船団、スー艦隊を攻撃してきた勢力と同一犯の可能性が高いとリンディは判断した。

 

そして、その敵がミッドチルダに接近している事から、これ以上ミッドチルダへ近づける訳にはいかないので、リンディは第二、第三管理世界に駐屯している次元航行艦隊を迎撃のために派遣した。

 

第九、第八、第七管理世界に展開していた艦隊と比べ、第二、第三管理世界に駐屯していた艦隊はミッドチルダに近いと言う事で、それなりの数の艦隊を保有していた。

 

しかし、リンディはスー艦隊の全滅の原因が不明のまま迎撃のために追加出撃させてしまった。

 

一方でザールの方も初戦には勝つことが出来たが、これで自分たちの存在は完全にミッドチルダ側にもバレたと判断し、増援を要請した。

 

既に第九無人管理世界に橋頭堡を築いた制圧艦隊本隊は直ぐに増援をザールの下に派遣した。

 

「殿下、これで敵も我々の存在に気付いた筈です。今後の進軍は慎重にしなければなりませんね」

 

増援が来るまでザールは進撃を一時停止していた。

 

そこへ、参謀がザールに話しかける。

 

「うむ。だが、決して我々は不利ではない」

 

「と、申しますと?」

 

「敵は我々を目指して進撃してくる。よって戦場の選択肢は我々にある。数の上では確かに我々は不利だ。だが、数の有利性を覆すことが出来る環境下で戦える場所を選択できるのは充分に有利であるぞ」

 

「な、なるほど」

 

ザールは参謀に自軍が決して不利ではない事を告げる。

 

「直ちに偵察機を出し、周辺の状況を確認しろ」

 

「了解」

 

「水雷母艦は水雷艇の補給を急げ」

 

増援が到着する前にザールは戦場となりえる宙域の調査、管理局の次元航行艦隊の動きを探るための偵察を行った。

 

そして、再び艦隊決戦となると水雷艇によるハイパー放射ミサイルの雷撃が必要であるため、水雷艇を再び出撃できるように水雷母艦には水雷艇の補給を急がせた。

 

その頃、第二、第三管理世界に駐屯していた次元航行艦隊は合流し、一路スー艦隊を撃破した敵艦隊を探しつつ進撃していた。

 

「まさか、あのスー大将がやられるなんて‥‥」

 

「今回の敵はそれほど、強力な敵と言う事だ」

 

「しかし、今回は我々第二管理世界以外に第三管理世界に駐屯している艦隊も居る。そう易々と侵略者どもには負けぬ」

 

「そうだ。非武装の避難船団を躊躇なく攻撃してくるような卑劣な奴等だ。正義の鉄槌を下してやる!!」

 

管理局艦隊の局員たちはやはり、スー大将の敗北には信じられないと言う戸惑いと、非武装の避難船団を全滅させ大勢の避難民を虐殺した恨みと怒りで満ちていた。

 

そんな中、管理局艦の観測員がディンギル軍の艦載機を発見した。

 

「敵勢力所属の小型艇らしき反応を捕捉!!」

 

「なにっ!?」

 

モニターには第九、第八、第七管理世界を襲撃して来たディンギル軍の大型戦闘機の姿が映し出される。

 

「間違いない。第九無人管理世界を襲撃して来た小型艇と同一のモノだ」

 

自分たちの存在に気づいたのか、ディンギル軍の大型戦闘機は踵を返して何処かへ飛んでいく。

 

「逃げたぞ!!」

 

「追え!!あの先に敵が居る筈だ!!」

 

「しかし、大丈夫か?罠ではないだろうか?」

 

敵を見つけていきり立つ者も居れば、何かの罠ではないかと勘繰る者も居た。

 

「何を言うか!!数においては我々が勝っている筈だ!!どうせ、連中は我々の姿を見て恐れて逃げたに違いない!!」

 

「その通りだ。敵にどんな策や野蛮な兵器があろうとも数こそ力なりだ!!」

 

ミッドチルダの大勢の住民、スー艦隊をやられ、それを撃破した敵を見つけた事で、管理局艦隊の局員たちは少々冷静さを欠いていた。

 

管理局の次元航行艦隊は逃げて行った戦闘機を追いかけた。

 

 

ディンギル軍 ガルンボルスト 艦橋

 

「殿下、偵察機02号より敵艦隊を発見、こちらに向かっているとの事です」

 

「よし、全艦所定の位置にて待機しろ」

 

「はっ!!」

 

ザールが参謀に言ったようにディンギル軍は既に管理局の次元航行艦隊を待ち受けるために戦場を選定し、待ち構える体制を取っていた。

 

先程の戦闘機が次元航行艦に見つかったのは偶然であるが、次元航行艦隊を見て反転したのは決して次元航行艦隊の数を見て、恐れおののいて反転したのではなく、戦場となる宙域へ誘い込むためであった。

 

 

「岩礁域に敵艦を発見!!」

 

ディンギル軍の戦闘機を追いかけて来た次元航行艦隊はアステロイド帯の中に布陣しているディンギル軍の艦隊を発見した。

 

「敵は岩礁帯に隠れている様だな」

 

「我々の数を見て、恐れをなして岩礁域に隠れたか?」

 

「ならば、そのまま岩礁域諸共次元の海の塵にしてやる!!全艦、ネオ・アルカンシェル発射用意!!」

 

管理局側はアステロイド帯に居るディンギル軍が隠れているのかと思い、アステロイド帯諸共葬ろうと陣形を変更してネオ・アルカンシェルへのエネルギー充填をして、ネオ・アルカンシェルの発射を準備を行う。

 

ネオ・アルカンシェルを撃つことができれば、この戦いに勝敗がつこうと言うその時、

 

 

ドドドドドドドドド・‥‥!!

 

ドガッ

 

グアッ

 

ドオオッ

 

ズオオオ

 

 

次元航行艦隊の背後からオレンジ色のショックカノンが無数迫り、次元航行艦が何隻か被弾し爆散した。

 

「ど、どうした!?」

 

「我が艦隊の背後に敵艦が出現!!」

 

「何故、背後に敵艦が出現しているのだ!?」

 

「恐らく別動隊が居り次元跳躍を行って、我々の背後をとった模様です!!」

 

管理局の次元航行艦は後部に武装を施していなかったので、攻撃するには反転する必要があった。

 

ザールは自らの艦隊をアステロイド帯に隠れるように布陣し、管理局の次元航行艦隊を引き付けると、増援部隊に管理局の艦隊の背後を襲撃させたのだ。

 

「反転して迎撃!!」

 

「ですが、この陣形で反転しますと岩礁域に居る敵に背中を見せる事になります!!」

 

「くっ、ならば後衛部隊は反転し、背後の敵を迎撃!!我々はこのままネオ・アルカンシェルで岩礁域の敵を吹き飛ばす!!」

 

司令官は艦隊を二分してディンギル軍に対処しようとする。

 

しかし、そんな管理局艦隊の側面から水雷艇が接近し、ハイパー放射ミサイルを放って来た。

 

特に反転しようとしていた艦は無防備状態だったので、成す術無くハイパー放射ミサイルに被弾していく。

 

「艦隊側面から小型艇が接近!!」

 

「小型艇より高速飛来物が来ます!!」

 

「反転中の後衛部隊に飛来物が命中!!」

 

「被弾した艦が轟沈しています!!」

 

「高速飛来物、こちらにも接近しています!!」

 

「くっ、ネオ・アルカンシェル発射中止!!各艦、迎撃しつつ回避に専念せよ!!」

 

このままネオ・アルカンシェルの発射を強行しても発射する前にハイパー放射ミサイルの餌食になってしまう。

 

なので、司令官はネオ・アルカンシェルの発射を中止して、回避行動に専念した。

 

しかし、ネオ・アルカンシェルを発射するため、密集隊形をとっていたので、自分たちに迫りくるハイパー放射ミサイルを回避しようと互いに衝突する艦もあり、衝突し身動きが取れない中、ハイパー放射ミサイルに被弾する艦もあった。

 

後方と側面からの攻撃で混乱している管理局艦隊の様子を見てザールは、

 

「見てみろ、参謀。連中の無様な慌て様を‥‥」

 

「艦隊運用がまったく出来ていませんね。乗員は皆、幼年学校の学生なのでは?」

 

管理局艦隊の動きを見て参謀は皮肉を込める。

 

「だとしたら、学生に持たせるには過ぎた玩具だな」

 

参謀の皮肉にザールは思わず笑ってしまう。

 

「よし、此方も動くぞ」

 

「はっ!!全艦前進!!」

 

ザール率いる本隊も動き出す。

 

 

管理局連合艦隊 旗艦 艦橋

 

「岩礁域に居た敵も動き始めました!!」

 

「なにっ!!」

 

管理局としては自分たちよりも数が劣勢だった筈にもかかわらず、背後と側面をとられて混乱している中で、前面の敵も動き出した。

 

ザールの本隊はアステロイド帯に潜んでいたが、ガトリング・ショックカノンを撃ちながらアステロイド帯から出て来た。

 

周囲にはアステロイド帯があるので、アステロイド帯内でショックカノンを撃ってもアステロイドに当たってしまうが、ディンギル軍のガトリング・ショックカノンは速射性が優れているので、例えアステロイドに当たってもアステロイドをその速射性を活かし、アステロイド砕いてショックカノンを撃ちながら管理局艦隊へと迫って来た。

 

管理局艦隊は満足な抵抗も出来ずにディンギル軍の猛攻を受け、壊滅した。

 

 

ミッドチルダ クラナガン 地上本部ビル “海”分室 総合統括官執務室

 

「総合統括官」

 

「今度は何?」

 

「‥‥そ、それが‥敵の迎撃に向かった第二、第三管理世界の艦隊が全滅しました」

 

「なっ‥‥」

 

「更に、第二、第三管理世界周辺に展開している監視衛星が次々と破壊されており、現状の確認が出来ません」

 

「通信衛星も破壊されて通信網も破壊されています」

 

オペレーターからは次々と凶報とも言える報告ばかりが入る。

 

「総合統括官、ミッドの月付近に艦影を捕捉しました!!」

 

別のオペレーターがリンディに新たな報告を伝える。

 

「とうとう月まで‥‥」

 

ミッドチルダの月軌道に出現したのは空母を中心としたディンギル軍のもう一つの別動隊であった。

 

「念の為、市民には避難警報を発令して!!それと“空”と“海”の空戦魔導師隊に待機命令!!いつでも迎撃に出せるように!!それと、港湾地区に停泊中の次元航行艦にも戦闘準備を下令!!」

 

「はっ!!」

 

リンディは住民の避難と迎撃を命令する。

 

その頃、ミッドチルダの月軌道に展開中のディンギル軍の空母部隊では、

 

「全空母へ、攻撃機を発進させろ!!」

 

月周辺に展開していた空母部隊からは次々と大型戦闘機が発艦していく。

 

空母から発艦した大型戦闘機隊は雲霞の如くミッドチルダの地上へと向かって行く。

 

ミッドチルダの地上では、警報が鳴り響き、テレビや町中にあるスピーカーからは避難放送が流れる。

 

避難警報が鳴る少し前、リンディから出撃要請を受けたなのはは、バリアジャケットを身に纏い、手には愛機であるレイジングハートが握られていた。

 

緊急事態につき、なのははリミッターが解除され全力を出せる状態となっている。

 

「なのは、どうしても行くのかい?」

 

そんななのはにユーノは心配そうに声をかける。

 

「うん。今度は後悔したくないから‥‥」

 

なのはは辛そうに言う。

 

ボラー連邦への武力制裁の失敗後、ミッドチルダで起きた暴動‥‥

 

その一つの中に自分やはやてに対する誤解による誹謗中傷があった。

 

元々自分もはやてもボラー連邦への武力制裁に参戦する予定はなかった。

 

しかし、過去の実績から自分もはやても当然、ボラー連邦に対しての武力制裁に参戦すると思われていた。

 

武力制裁の失敗後、自分とはやてがミッドチルダに居た事から、大金を積んで武力制裁から逃れた。

 

管理局の高官と枕営業をして、武力制裁に参戦しなかった。

 

と、自分でも身に覚えのない事ばかり言われて自宅も襲撃に遭った。

 

だからこそ、今回はミッドチルダの為に戦う事を選んだ。

 

「気を付けてね」

 

「うん。ユーノ君もヴィヴィオの事をよろしくね」

 

「ああ。ヴィヴィオは僕が守るよ。だから、なのはも絶対に帰って来てね」

 

「分かっている。それじゃあ、いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

なのはは吹っ切れたような顔で自宅のマンションのベランダからミッドチルダの空へと舞い上がって行くが、ユーノとヴィヴィオは不安げな表情でなのはを見送った。

 

そして、なのはの姿は見えなくなった後、

 

「さっ、ヴィヴィオ。僕たちも避難しよう」

 

「う、うん」

 

ユーノはヴィヴィオの手を引いて近くのシェルターへと避難した。

 

 

『現在、未知の勢力がミッドチルダに接近中!!ただちにお近くのシェルターまたは地下道へ避難してください!!』

 

『路上や建物に居るのは非常に危険です!!走行中の車は直ちに停車して乗車している方は避難して下さい!!』

 

市街地では突然の避難放送に住民たちは何事かと困惑するもこの時点ではまだパニックは起こっていなかった。

 

しかし、雲・空の彼方から小さな黒い点が現れる。

 

「ん?なんだ?あれはっ!?」

 

「段々と数が増えているぞ‥‥」

 

「い、一体なんだ?」

 

最初は小さく少ない黒い点が段々と大きく、そして数が増えて行く。

 

囂々と落雷のような凄まじい音を立ててディンギル軍の大型戦闘機が群れを成して空を飛んできた。

 

やがて編隊を組んだ大型戦闘機はまずは挨拶がわりと胴体下部爆弾倉を開くと何発もの爆弾を地上に投下しはじめた。

 

まだ地上に残っている人々は突然の爆撃にパニック状態となり逃げ惑う。

 

「きたぞ!!」

 

「例え水没するとしてもこのミッドチルダを奴らの好きにさせるな!!」

 

「JS事件を潜り抜けた首都防空隊だ。今度もミッドの空を守ってみせるぞ!!」

 

“空”と“海”の空戦魔導師たちがバリアジャケットを身に纏い、手には各々のデバイスを持ち、空へと舞い上がる。

 

空にはいくつものシューターや集束魔法、オレンジ色の閃光とミサイルなどが飛び交いJS事件時の空戦以上の大混戦となる。

 

なのはもいくつものシューターを放つが高速で空を飛び回るディンギル軍の大型戦闘機にはなかなか当たらない。

 

そんな中、一機の戦闘機がなのはに向かって来た。

 

なのはの目線とコックピット内の敵パイロットと目があった。

 

「っ!?」

 

なのはは咄嗟に防御魔法であるオーバルプロテクションを展開する。

 

なのはのバリア魔法によって出来た障壁と戦闘機が衝突する。

 

「うっ‥‥くっ‥‥」

 

凄まじい衝撃がなのはを襲うが、オーバルプロテクションが大型戦闘機の体当たりを防ぐことが出来た。

 

なのはが下方を見ると、オーバルプロテクションと接触した敵戦闘機が火を噴きながらバラバラになって墜落していく。

 

その残骸の中には人らしき物体もあった。

 

「わ、私‥ひ、人を‥‥人を‥‥」

 

ミッドチルダを空襲してきた敵とは言え、なのははこの手で‥‥自分の魔法で、人を殺めてしまったのだと自覚する。

 

「高町一尉!!」

 

すると、同じく迎撃にあたっていた空戦魔導師の一人が声をかける。

 

「ど、どうしよう‥わ、私‥人を‥‥」

 

「一尉、しっかりしろ!!相手はミッドを攻撃し、市民を殺そうとしている奴等なんだ!!JS事件の時のガジェットはプログラムされて動いているロボットだったが、こいつらは明確に自分の意思で俺たちを‥ミッドの住民を殺そうとしている侵略者だ!!例え殺しても君が責められる理由はない!!」

 

「で、でも‥‥」

 

「高町一尉、君が戦わねばミッドに残っている大勢の人々が死ぬんだ!!ミッドを守れるのは俺たちだけなんだ!!」

 

「わ、私たちだけ‥‥」

 

「そうだ!!君にも守るべき大切な人が居るんだろう?だったら、その人たちを守るために戦うんだ!!」

 

その言葉を聞きなのはの脳裏にユーノとヴィヴィオの姿が過った。

 

「は、はい!!」

 

「よし、行くぞ!!」

 

なんとか気力を持ち直したなのはは再び空を縦横無尽に飛び回る敵戦闘を睨みつつシューターを周囲に展開し、迎撃にあたった。

 

途中、同じく迎撃にあがっていたヴィータやシグナムとも合流出来、共に戦った。

 

この戦いでなのはは十数機の敵機をラッキーパンチとは言えシューターや集束砲で撃墜する戦果を出した。

 

しかし、迎撃にあがった全ての局員がなのは、ヴィータ、シグナムのようなエース級の魔導師と言う訳ではない。

 

先程なのはが、オーバルプロテクションで敵戦闘機を逆に墜落させることが出来たのは、なのはが魔力ランクS+のエース・オブ・エース級の魔導師だからだ。

 

なのはの様に敵戦闘機との接触に対してシールドやバリア魔法を使って逆に相手を撃墜しようとした魔導師も居たのだが、魔力ランクがAクラス以下の魔導師は敵戦闘機との接触でシールドやバリアは砕け重傷を負うも戦闘機を大破させる結果となり、B、Cランクの魔導師は戦闘機と接触し死亡し、接触相手の戦闘機は多少の損害はあるが飛行可能と言う状態であった。

 

第九無人管理世界の戦いでは、辺境の無人世界故に空戦魔導師のランクも低かった事で、戦闘機の体当たりをくらって肉片に変わってしまったのだ。

 

それに管理局の魔導師と言っても全員が空戦属性を持っている訳ではない。

 

空戦魔導師の迎撃網を突破したディンギル軍の大型戦闘機は管理局の施設や次元航行船の発着場など要衝に集中的に飛来した。

 

空戦属性の無い魔導師も地上からシューターや集束魔法を使って迎撃するもやはり空戦魔導師よりも迎撃効率は悪い。

 

管理局の施設は一つ、また一つと破壊され、クラナガンのシンボルであり、“陸”の象徴である地上本部ビルは途中から真っ二つに折れた。

 

そして、港湾地区で建設中の“海”の新庁舎もまだ完成していない中、ディンギル軍の空襲に遭い破壊された。

 

次元航行船発着場に停泊している次元航行船も次々に破壊されていく。

 

停泊している次元航行船は第二次避難船団の避難船だった。

 

第一次避難船団はアルザス近海で沈められ、第二次避難船団はミッドチルダの次元航行船乗り場で破壊された事で、いよいよミッドチルダに居る住民はミッドチルダからの脱出が困難な状況となっていく。

 

港湾地区に停泊していた次元航行艦群も勿論、ディンギル軍の攻撃対象となった。

 

浮上しようとするもその最中で攻撃を受け、空中で爆散する艦、

 

雷撃を受けて浮上する前に機関部に損傷を受けて洋上艦の様に水の中に沈んで行く艦もあった。

 

破壊と殺戮を繰り広げたディンギル軍の攻撃機隊は高度を上げて引き上げて行く。

 

いくらエース級の魔導師でもバリアジャケットでは、真空の宇宙へ上がる事が出来ない。

 

ミッドチルダを完全に守れなかった事から悔しそうに帰還していくディンギル軍の大型戦闘機を睨みつける空戦魔導師たち。

 

月軌道で待機していたディンギル軍の空母群はミッドチルダを空爆した艦載機を収容すると悠々とした様子で撤退して行った。

 

JS事件の時は守れた筈のミッドチルダを守ることが出来なかった。

 

それはあまりにも戦力が違い過ぎたのだ。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

「なのは‥‥無事‥だったか‥‥」

 

息を切らしているなのはにヴィータも疲労困憊と言った様子だ。

 

「う、うん。ヴィータちゃんもシグナムさんも大丈夫?」

 

「あ、ああ‥危なっかしい場面が何度かあったがな」

 

「私たちは生き延びたが、大勢の仲間、そしてミッドは‥‥どうやら守れなかったようだ」

 

シグナムがチラッと後ろを振り向くとなのはとヴィータも視線を後ろへとうつす。

 

するとそこには煙と爆炎が立ち込めるクラナガンの姿があった。

 

「JS事件の公開陳述会以来だ。此処までの屈辱を抱いたのは‥‥」

 

シグナムは燃えるクラナガンの姿を見つつ悔しさから顔を歪め、歯をグッと食いしばる。

 

敵は去ったが、これは決して自分たち空戦魔導師たちが撃退した訳ではない。

 

敵機のミサイル、エネルギーが無くなったから帰還しただけだ。

 

「「‥‥」」

 

なのはとヴィータもシグナムと同じ気持ちを抱きつつ燃えるクラナガンを見つめる。

 

『なのはさん無事?』

 

そこへ、リンディから映像通信が入る。

 

「はい。リンディさんも無事ですか?」

 

『無事‥って言えば無事なんだけど、地上はJS事件以上の被害を受けたわ。仮庁舎として間借りしていた地上本部ビルも途中で折れたし‥‥』

 

「えっ?地上本部ビルが!?」

 

なのはは地上本部ビルが倒壊した事に驚愕する。

 

「それで、被害は!?」

 

『私を含め、ビル内に居たほとんどの局員は地下のシェルターに避難したから負傷者は出たけど、幸い死者は出ていないわ』

 

「そ、そうですか‥良かった」

 

『でも、地上のあちこちで大きな被害が出ているわ。なのはさんたちも疲れているとは思うけど、救助に向かってくれるかしら?』

 

「分かりました」

 

敵がもう襲ってこないとは言え、先ほどの攻撃で多数の被災者が出た。

 

その為。なのはたちは急いで被災者の救助へと向かった。

 

だが、被害は何も地上だけと言う訳ではない。

 

 

ミッドチルダ 港湾地区 沖合

 

今、一隻の次元航行艦が次元の海ではなく、洋上の海に沈もうとしている。

 

この次元航行艦はディンギル軍の襲来後に浮上して戦おうとしたのだが、その前に機関部に深刻なダメージを受け、浮上どころか洋上を航行する能力さえも失い、その後はディンギル軍の的となり、雷撃で船体の彼方此方に雷撃を受け、破孔から海水が浸水し、船体が傾き沈没しようとしているのだ。

 

艦内にはまだ生存している乗員が大勢居た。

 

「総員退去!!総員退去!!」

 

艦内の連絡網が既に機能しないので、乗員が伝令として傾いている艦内を走り、他の乗員たちに脱出を促す。

 

しかし、生きている乗員の中には大怪我を負い、手足を欠損して身動きがまともにとれない者も大勢居た。

 

それでも諦めずに這ってでも艦内に脱出しようとしている。

 

「うわああっ!!」

 

「ぐっ‥‥うっ‥‥」

 

艦内には浸水してくる海水の轟音の他に怪我で苦しんでいる乗員たちの呻き声もする。

 

「た、助けてくれ‥‥」

 

「つ、連れて行ってくれ~」

 

身動きが取れない乗員はまだ動ける乗員に縋ったり、助けを求める。

 

「しっかりしろ!!」

 

「がんばれ!!」

 

動ける乗員の中には負傷して動けない乗員に肩を貸す者も居たが、ある女性局員は‥‥

 

「どけっ!!邪魔だ!!」

 

縋りついて来る乗員を蹴り飛ばし、脱出をしようとしていた。

 

「くそっ、こんな所で死んでたまるか!!」

 

その女性局員は生への執着だけで動いており、負傷している同僚を気遣う事など出来なかった。

 

「どけっ!!何をモタモタしている!!」

 

そして、脱出しようとしている他の乗員たちの背中蹴り飛ばし、身体を押しのけて、外へと出ようとしている。

 

彼女の名前はメアリー・スー‥‥

 

アルザス近海で避難船団を救援しようとディンギル軍と戦ったスー大将の娘でフェイトとチンクの士官学校の同期であった。

 

彼女の艦はスー大将の艦隊に所属しておらず、ミッドチルダの港湾地区で待機していた所をディンギル軍に襲撃されたのだ。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」

 

メアリーは命からがら艦外へ出る事が出来た。船体は九十度傾いた状態で浮かんでいるが、いつまで洋上に浮いていられるのか分からない。

 

早くこの場から逃げたいが、メアリーは空戦属性がなかった。

 

周囲を見回しても救命艇が来る気配はまだない。

 

「おーい!!」

 

「助けてくれ!!」

 

「救助はまだか!?」

 

周囲の海には自分が乗っていた次元航行艦同様、海上で攻撃を受けて今まさに洋上に沈没しようとしている次元航行艦が何隻もあり、艦の周辺には脱出した乗員たちが救助を待っている。

 

泳いで岸に戻るには距離が有り過ぎる。

 

「なんで‥‥なんでこんな事に‥‥」

 

煤と血で汚れた状態で現状を嘆くメアリー。

 

「父さんが敵をやっつけに行ったんじゃないの?それがどうして‥‥」

 

父であるスー大将がミッドチルダに近づいている敵を討伐に向かった筈が、父は還らず、逆に敵がミッドチルダを攻撃して来た。

 

その結果から齎される結論は‥‥

 

「ま、まさか、父さんは‥‥」

 

父は敵に負けて殺されたのではないか?

 

そんな思いがメアリーの中を支配する。

 

「あいつらに‥‥」

 

メアリーはディンギル軍が帰還して行った空を睨みつけた。

 

この時から、メアリーの中にあるルールが産まれる。

 

それは、ミッドチルダ以外の人間は全て敵であるルールだ。

 

例え他の管理世界の人間であってもいつかは自分たちを裏切る。

 

ならば、使える内に精々ボロ雑巾の様に使い古して捨ててやろう。

 

敵対する世界に人間は例え女・子供であろうとも危険分子として処分してやる。

 

今回の事件はメアリーの人格が歪んだ決定打と言ってもよかった。

 

やがて、救助にやってきて救助艇によってメアリーは救助された。

 

市街地に救助に来たなのはたちも被災者の救助を行うが、そこはスバルを助けた空港火災よりも悲惨な現場であった。

 

救助隊の消火車両、救急車両のサイレンが鳴り響き、水道管が彼方此方で壊れているのか、道には水が噴き出している箇所もある。

 

大通りには爆撃を受けた事で生じたクレーターがいくつも存在し、そこからは煙と炎が上がっている。

 

建物も崩れて、火災が起きている。

 

そして、瓦礫の下敷きになった者、大怪我を負って血塗れになりながら苦痛に顔を歪めて呻き声を上げる者。

 

「うっ‥‥」

 

「これは‥‥」

 

「酷い有様だな」

 

なのはたちはその光景に一瞬の間、怯むも直ぐに被災者の救助を行う。

 

その最中、

 

「あっ、なのはさん!!」

 

「スバル!!スバルも無事だった!?」

 

特別救助隊に所属しているスバルがなのはを見つけて声をかけながら近寄って来た。

 

スバルのバリアジャケットは煤で彼方此方汚れていた。

 

「はい。でも、隊舎の方はあの連中からの攻撃を受けて半壊しました。今は、隊舎の復旧よりもさっきの攻撃によって被災した人たちの救助に来ています」

 

スバルが所属する特別救助隊の隊舎も管理局の施設だった為、軍事施設と認定されてディンギル軍からの爆撃を受けたみたいだが、スバルは何とか無事であり、こうして救助活動を行っていた。

 

そこになのはたちが来て、声をかけたのだ。

 

「なのはさん、ミッドはこの後、どうなってしまうのでしょう?」

 

スバルは不安げになのはに訊ねる。

 

JS事件のテロ、そして古代ベルカ時代の戦乱はあったが、外部からミッドチルダが此処まで大規模な攻撃を受けたのはこれが初めてだ。

 

今回の攻撃で次元航行船の発着場、そして停泊していた次元航行船の大部分が破壊されてしまった。

 

転送ポートが使用できず、脱出する船もなく、そこへアクエリアスの接近ときたのだから、スバルだけでなくともミッドチルダの未来に不安を抱くのも当然だ。

 

「希望が無いわけじゃないよ。スバル」

 

「えっ?それはどう言う事ですか?」

 

「まだ。クロノ君やはやてちゃんの艦が残っている筈だよ。管理局はまだ戦える」

 

なのはは次元航行艦乗りではないが、それでもはやてとクロノの艦がこの絶望的な状況をひっくり返してくれるのではないかと言う予感があった。

 

JS事件の時も聖王のゆりかごが打ち上げられた中でも逆転をしてあの事件を解決させたのだから、今回もきっと‥‥そんな思いがなのはにはあった。

 

「スバル、ゲンヤさんたちは無事なのか?」

 

ヴィータがスバルに彼女の家族の安否を訊ねる。

 

「はい。幸い西部地区はそこまでの被害は無く、父さんたちも避難警報が出てすぐにシェルターに避難したみたいで無事です。今はノーヴェたちが救助、復旧作業を手伝っているみたいです」

 

ノーヴェは普段、クラナガンでナカジマ・ジムを経営しているのだが、アクエリアスの接近による避難で一時ジムを閉鎖してミッドチルダ西部のエルセアにあるナカジマ家に戻っていた。

 

ディンギル軍の空襲後、エルセアではゲンヤの後を継いで108部隊の部隊長となったカルタスが住民の救助、施設・ライフラインの復旧作業を指揮していた。

 

ノーヴェ、ディエチ、ウェンディもボランティアとしてその作業を手伝っているらしい。

 

クラナガンで救助作業が行われている中、ベルカ地区の聖王教会では、

 

「どうやら敵は去ったみたいね」

 

「ええ」

 

教会地下にあるシェルターにベルカ地区からの避難民と共にいたカリムが地上の様子を窺う。

 

ディンギル軍からの脅威が去り、シャッハと共に周囲を伺い危険が無い事を確認すると避難民に説明をする。

 

すると、シェルターからはワラワラと避難していたベルカ地区の住民たちが出て来る。

 

ベルカ地区は教会や病院、商店に住宅街と管理局の施設がなかったので、ディンギル軍からの攻撃はほとんど受けず、せいぜい流れ弾が数発落ちて来た適度の被害で済んだ。

 

「シャッハ」

 

「はい」

 

「直ぐに被害調査を‥‥それと病院には医療体制を整えるように‥‥クラナガンが大きな被害を受けたみたいですから、負傷者が大勢担ぎ込まれてくる可能性があります」

 

「承知しました」

 

カリムも被災者の為の活動を開始した。

 

地上本部ビルの地下シェルターには、リンディを含め、“陸”“海”“空”の高官たちがまだ居た。

 

地上本部ビルが半ば崩壊し、建設中の“海”の新庁舎も空爆された。

 

恐らく“空”の首都防空隊庁舎も破壊されて指揮機能を失っていることだろう。

 

なので、リンディたちはこの地下シェルターを臨時の総司令部として使用しているのだ。

 

「それで、現在までに入ってきている被害状況は?」

 

「はっ、次元航行船の発着場での空襲により、停泊して次元航行船は全て破壊されました」

 

「次に港湾地区に停泊していた次元航行艦も撃沈、もしくは大破させられた模様」

 

「負傷者の集計は局員、民間人はまだ詳しい集計は出ていませんが、迎撃にあたった空戦隊にもかなりの被害を出したようです」

 

「敵に与えた損害は?」

 

「敵の小型艇にも多数の被害を与える事は出来ましたが、やはり此方が出した被害の方が上かと‥‥」

 

『‥‥』

 

被害の大きさに“陸”“海”“空”の高官たちは黙り込む。

 

「どうするんだ?船がやられたとなると、ミッドからの脱出は出来ないぞ!!」

 

「他の管理世界にある船を直ぐにでもかき集めてミッドに集結させては?」

 

「次元の海を航行中にまた敵にやられる未来しか見えないぞ」

 

「では、どうするのだ?このままアクエリアスによって水没するミッドと運命を共にしろと言うのか!?」

 

再起動した“陸”“海”“空”の高官たちはこの後、どうやって水没するミッドチルダから逃げるのか議論を交わす。

 

他の管理世界にまだ存在するであろう次元航行船をミッドチルダに集結させるには航路の安全確保が必須だ。

 

しかし、ミッドチルダに向かう前にディンギル軍の攻撃を受けて撃沈される光景しか思い浮かばず、仮に無事、ミッドチルダに到着してもそこから他の管理世界まで行く途中にディンギル軍に見つかれば、第一次避難船団の様に壊滅する。

 

アクエリアスが迫っている中での、船不足は管理局側にとっては物凄く痛い。

 

「‥‥こうなれば、アクエリアスがミッドに近づく前に敵の本体を叩いてアクエリアスの接近を阻止しましょう‥‥」

 

リンディは守る、逃げるに徹するのではなく、こちらから打って出ると言う。

 

「ば、バカな!?」

 

「スー大将の艦隊に第二、第三管理世界の艦隊が壊滅したのだぞ!?勝てる訳がない!!」

 

「そうだ。これ以上無駄に戦力を消耗させる気か!?」

 

しかし、主力艦隊を失っているこの現状で打って出てもまた返り討ちに遭うとの意見が占めていた。

 

「では、どうするのです?このまま手を拱いてミッドが水没するのを待ちますか?」

 

「そ、それは‥‥」

 

「‥‥」

 

リンディの問いに高官たちは再び黙り込む。

 

「確かに残された戦力は少ない‥‥でも、ゼロではありません。私たち時空管理局は最後の最後まで戦い、ミッドの‥いえ、管理世界の安全を守る義務があるのです」

 

リンディはこの絶望的な状況下でも最後まで諦めずに足掻くに足掻いてみようと言う姿勢を貫いた。

 

(はやてさんとクロノには辛い戦いになるかもしれないけど、このまま諦める訳にはいかない‥‥)

 

(ん?はやてさんとクロノ‥‥っ!?そうだわ。まだ管理世界には強力な艦があるじゃない!!)

 

(まほろばに‥‥まほろばに協力を求めて一緒に戦ってもらえれば、活路が見いだせるかもしれない)

 

そして、まほろばにもこの現状の打破のために協力を申し込む事にしたのだった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
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