星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百五十九 協力要請

 

 

アクエリアスが近づいている中、ディンギル軍の空襲を受けたミッドチルダ。

 

管理局の施設、ライフライン、人員の喪失は勿論なのだが、管理局として一番の痛手はミッドチルダに住む住民の避難用に確保していた次元航行船群の喪失であった。

 

大半が完全に破壊されてしまったのだが、修理すればなんとか使用できる次元航行船もあったのだが、アクエリアスの接近までに修理は終わりそうにないものばかり‥‥

 

管理局はまさに八方塞がりな状況となってしまった。

 

ミッドチルダがディンギル機動部隊の艦載機群による空襲を受けている中、ザール率いる主力艦隊は第二、第三管理世界を攻撃していた。

 

第二、第三管理世界を守備していた管理局の次元航行艦隊はザールの主力艦隊と戦闘を行った結果、既に全滅しており、守る術がほぼない二つの管理世界は甚大な被害を受ける事となった。

 

二つの管理世界を攻略したザールは艦隊旗艦であるガルンボルストの艦橋から宇宙空間を見つめていた。

 

「殿下、ミッドチルダ本土へ向かった機動部隊より入電しました」

 

そこへ、ミッドチルダを空襲した機動部隊より連絡が入った。

 

「読め」

 

「はっ、『我が機動部隊はミッドチルダへの空襲を敢行し、敵港湾施設を中心に爆撃を行い、敵に甚大な被害を与えたものなり』‥以上です」

 

「そうか‥‥フッ、じつにあっけないものだな‥‥」

 

「はっ、おっしゃる通りです」

 

不敵な笑みを浮かべつつザールは呟く。

 

通信士もザールの意見に同意する。

 

限られた戦力で複数の艦隊戦力と戦わなければならないこの制圧作戦‥‥

 

失敗は当然許されないが、困難な作戦であると当初はそう思っていた。

 

しかし、実際に作戦を実行してみればまるでナイフでバターを切るように管理局の艦隊を蹴散らし、ミッドチルダ本土を空襲し、多数の惑星の基地を攻略した。

 

それはまさに完勝とも言える大成功だ。

 

「あとは大総統がアクエリアスをミッドチルダに近づけて、ミッドチルダに居る連中を水没させるあけだ‥‥ミッドチルダは今は亡き我が母星ディンギルの様に水没してゆく‥‥ミッドチルダの全てがアクエリアスの水底に沈むのだ‥‥」

 

この先に起こるであろうミッドチルダの水没とアクエリアスによって水没した故郷ディンギルが重なり、その水害時を思い出し、ザールの脳裏に自分の母と弟の姿が過る。

 

ザールは慌ててそれを打ち消した。

 

(いかんな‥‥私も大総統を見習ってもっと、もっと、冷酷にならなければ‥‥)

 

ミッドチルダの住民全てを水害で抹殺し、水が引いたらミッドチルダに移住し、かの地に新たな帝国を建国後は自分がいずれ父親から大総統の地位を譲り受けて大総統の地位に着くことだろう。

 

その時、父親のように冷酷非情な男にならなければディンギル帝国の大総統にはなれないと思った。

 

だからこそ、自分はこのミッドチルダ制圧作戦で冷酷非情な男になろうと決意した。

 

やがて、ザールは機動部隊を始めとする艦隊を集結させて橋頭堡となった第九無人管理世界へと一時帰還した。

 

 

その頃、まほろばが修理を受けている第六十一管理世界スプールスでは‥‥

 

「なんやて!?」

 

「なんですって!?」

 

「ミッドチルダがそんな事に‥‥」

 

リンディからミッドチルダの惨状、管理局の主力艦隊の壊滅がはやて、フェイト、クロノに伝えられた。

 

映像付きの通信なので、ミッドチルダの現状を見てはやてとクロノは絶句する。

 

燃え盛るクラナガンの都市部の光景。

 

港湾地区では海に沈む次元航行艦の姿。

 

次元航行船発着場では発着場の施設は勿論の事、停泊していた次元航行船は破壊され尽くされていた。

 

「次元航行船の発着場と次元航行船が破壊されたってことは、ミッドからの避難活動は‥‥」

 

『絶望的になったわ‥‥修理が可能な船もあったけど、とてもアクエリアスの接近までに直せそうにないわね』

 

「そ、そんな‥‥」

 

「アクエリアスの接近までもう時間がないのに‥‥」

 

「このままではミッドは‥‥」

 

『住民諸共水没してしまうわ』

 

「「「‥‥」」」

 

『ミッドには敵と十分に渡り合える戦力も時間も残されていない‥‥』

 

「それでも完全に戦力が無くなった訳じゃあないでしょう?」

 

「そうやね。リンディさん、管理局にはまだ私の艦があります。それにクロノ君の艦も‥‥」

 

『‥‥こんなことを言うのは心苦しいけど‥はやてさん、やってくれる?』

 

「はい」

 

『ハラオウン提督は?』

 

「‥‥ミッドの状況は理解しました。戦力が乏しいと言う状況ならば、本艦も八神艦長と共に出撃するのはやぶさかではありません」

 

はやてとクロノはミッドチルダを守るために戦う事を決めた。

 

『‥‥それで、はやてさんにもう一つ貴女に頼みたい事があるのだけれど‥‥』

 

「えっ?なんでしょう?」

 

『‥‥まほろばの艦長さんを説得して今回の作戦にまほろばの協力を取り付けてもらいたいの』

 

「えっ?」

 

「まほろばを‥‥」

 

「ちょっと待ってください総合統括官」

 

リンディの頼みを聞き、はやてとフェイトは目を点にしたが、クロノは慌ててリンディを止めた。

 

「まほろばは管理局の所属ではなく、地球防衛軍に所属する戦艦なんですよ!?ボラー連邦は兎も角、ミッドを襲撃して来た未知の勢力と地球連邦は関係ないのですよ!?まほろばが首を突っ込んだことで地球連邦も巻き込まれるかもしれない危険がある中で、それでもまほろばを巻き込むつもりですか!?」

 

地球連邦はボラー連邦と敵対していたが、ディンギル帝国とは敵対どころか、ディンギル帝国と言う星間国家の存在さえも知らないとギンガは言っていた。

 

今回の対ディンギル戦役で、まほろばが参戦した事でディンギル帝国が地球連邦の存在を確認して、地球を敵対国として認知すれば、地球連邦にディンギル軍が襲来する可能性も否定できない。

 

リンディは地球連邦に新たな戦争の火種を生み出そうとしているのかを問うクロノ。

 

クロノがリンディに噛みついている中、はやての方は‥‥

 

(クロノ君の言う事は分かる‥‥)

 

(でも、管理局の戦力が無いのも事実‥‥)

 

(ミッドがピンチである事を知れば、ギンガとティアナはきっと協力してくれると思うんやけど、まほろばにはギンガティアナ以外の大勢の乗員たちが居る。まほろばが協力するにはギンガとティアナの二人がまほろばの乗員全員を説得して了承を得る必要がある)

 

はやては、まほろばの協力を得るには自分たち管理局の権力何て全く役に立たない事から、どうやって協力を得れば良いのかを考えた。

 

強引に従わせようとすれば手痛い反撃を受けるのは明白だ。

 

モタモタしていると、まほろばの修理が終わって、まほろばはもう一つの地球へ還ってしまう。

 

その前に何とかまほろばの協力を得る必要があった。

 

「はやて、フェイト、君たちはどうなんだ?無関係のまほろばを巻き込むのを『良し』とするのか?」

 

「そ、それは‥‥」

 

フェイトはクロノの問いに言いよどむが、

 

「クロノ君の言う事は理解できるけど、管理局の戦力は一気に低下したのも事実や」

 

「それじゃあ、はやてはまほろばを巻き込むつもりか?」

 

「私とクロノ君の艦だけで戦って勝てる相手やない筈や。私たちが負ければそれはミッドと大勢の人々の命がかかっているんや」

 

「‥‥」

 

はやての返しに今度はクロノが黙り込む。

 

「それに決定権はまほろば側にあるんや‥‥力づくで従わそうとしても返り討ちに遭うのは目に見えているやし、まずは、まほろばの月村艦長に事情を話すところからやで、クロノ君」

 

はやて自身、リンディと同じく何としでもミッドチルダを救いたいと言う気持ちが強かった。

 

「クロノ、私もはやてと同じだよ。確かにクロノが言う通り、本来なら無関係のまほろばを巻き込むのは辛いけど、今はどんな手を使ってでもミッドを救う事が先決だと思う」

 

「フェイトまで‥‥」

 

フェイトまでもがリンディとはやてと同じくまほろばに協力してもらいたい事にクロノは軽い絶望感を覚える。

 

しかし、クロノだってこのまま指をくわえてミッドチルダが水没して大勢の人々が水に飲まれるのを黙って見ている訳にはいかないと言う気持ちもあった。

 

「だが、月村艦長が協力を拒んだらどうする?」

 

「その時はその時や‥‥無関係なギンガたちに無理強いをさせる訳にはできへん。まほろばの協力が得られなかったら、私は玉砕覚悟で敵に一矢報いるつもりや‥‥尤も私らも敵の勢力全てを把握している訳やない。仮にまほろばの協力を得たとしても敵を殲滅できるのかさえ分からんしな」

 

はやてだってギンガの立場を理解している。

 

まほろばを本来は無関係な戦争に首を突っ込ませて乗員たちを危険にさらす訳にはいかない筈だ。

 

それにクロノが言ったようにまほろばが管理局所属の艦ではなく、第三勢力に所属している事が万が一にも敵にバレでもしたら、もう一つの地球にも危機が及んでしまうし、まほろばが協力したからと言って勝率が100%あるわけでもないし、もう一つの地球がアクエリアスの接近させている星間国家に狙われ戦争になってしまった場合、管理局は責任を取れるかと聞かれたら、返事は『NO』である。

 

あの敵がターゲットを自分たちからもう一つの地球に変更してくれたら、その間にも管理局は戦力を再建できる程度にしか考えない高官も多いだろう。

 

仮にまほろばからの協力を得た後で、まほろばが撃沈される事態になっても、

 

「協力を申し出たのは、まほろば側であり、当然撃沈されるリスクも承知していた筈だ。まほろばが撃沈されたのは、まほろばの指揮官の自己責任であり、管理局は一切、無関係だ」

 

と、無責任なことまで言いかねない。

 

なので、まほろばの協力を得たとしても、はやてとクロノはまほろばを守りながた戦わなければならない事になる。

 

これは普通に敵を撃破するよりも戦いにくい。

 

しかし、一応まほろばも戦艦なので非武装の対象を守る護衛任務よりかは多少なりとも負担は少ないが全てはまほろばが協力を了承してくれるかだ。

 

はやては緊張した面持ちでギンガにコンタクトを取った。

 

 

まほろば 艦橋

 

まほろばの艦橋に居たギンガの下にはまほろばの各部署から修理状況が次々と上がる。

 

「管理局の次元航行艦の部品が流用できて良かったですね。一時はどうなるかと思いましたよ」

 

同じく環境に居たティアナもまほろばの修理が順調である事に胸をなでおろす。

 

それはきっとギンガも同じだろう。

 

そんな中、

 

(ギンガ、ギンガ、今ちょっとええか?)

 

はやてから念話が来た。

 

(えっ?はやてさん?ええ、良いですけど何か用ですか?)

 

(ちょっと、ギンガに話があるんや‥‥今からそっちに行ってもええか?)

 

(は、はい。大丈夫です)

 

(ありがとな、それじゃあ、今から行くわ)

 

「ん?ギンガさん、どうしました?」

 

「今、はやてさんから念話があって、何か話したい事があるからこっちに来たいって」

 

「話?‥‥なんでしょう?」

 

ティアナは管理局員のはやてから話があると聞いて訝しむ。

 

「まさか、このまま管理局に所属しろ‥‥なんてことを言うんじゃあ‥‥」

 

「いくら何でもそんな強引な事は‥‥ない‥と思うけど‥‥」

 

「ギンガさんもちょっと自信なさげじゃないですか」

 

「いや、でもはやてさんがそんな事を言う訳がないと思うけど‥‥」

 

「一応、八神さんは管理局に所属していますからね」

 

「う、うん」

 

はやて個人は兎も角、組織に所属しているので、その組織‥管理局がまほろばを接収しようとしている可能性は否定しきれない。

 

「修理が完了次第、早々に此処から退避した方がいいのではないでしょうか?」

 

「そうかもね」

 

はやての話が何であれ、ギンガもティアナもかつて所属していた組織に対して此処までも疑心暗鬼になるとは思っていなかった。

 

ミッドチルダから‥管理局から離れて別の世界で結婚し、子供を産み、家庭を持った事で守るべきモノ、今自分が還る場所があることから、ミッドチルダへの未練が薄れていた。

 

「それじゃあ、ちょっとはやてさんを出迎えて来るから、此処は任せてもいい?」

 

「はい」

 

一応、はやて、フェイトとは顔見知りの仲であるが、管理局員と言う事で案内無しでまほろばの艦内を歩き回る事は出来ないので、艦長であるギンガが直接出迎えれば他の乗員たちもそこまで警戒することはないだろうと言う配慮であった。

 

タラップの近くでギンガが待っていると、はやて、フェイト、クロノがやって来た。

 

「わざわざ、時間をもろてごめんな、ギンガ」

 

「いえ、それで話って言うのは‥‥此処では話せそうではありませんね」

 

はやて一人ならば、世間話程度のものかと思ったが、フェイトとクロノも居る事から何やら訳アリ感が否めない。

 

「そうやな‥今は他の人に聞かれたくはないんで‥‥」

 

「分かりました。では、先日の様に艦長室で聞きます。どうぞ‥‥」

 

ギンガは三人を艦長室へと通した。

 

(はやてさんはさっき、『今は』って言った‥‥)

 

(それは、いずれ公の事実になると言う事だけど一体‥‥)

 

(まさか、本当にまほろばを管理局が接収するって事なのかしら?)

 

ギンガはついさっきまでのはやてとの会話から違和感を覚え、はやてが‥管理局が本当にまほろばの接収を考えているのではないかと疑ってしまう。

 

(ううん、早合点は禁物‥はやてさんの話をちゃんと聞いてからでないと‥‥)

 

しかし、直ぐに切り替えて、管理局がまほろばの接収を考えているのか?そうでないのかは、はやての話を聞いてからなのでまずは、はやての話を聞くことが先決であった。

 

艦長室に到着し、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを人数分取り出し、それぞれに配り終え、互いに席へ着くとギンガは早速、はやてに用件を訊ねる。

 

「それで、話と言うのはなんでしょう?」

 

「‥‥ギンガ、単刀直入に言う。‥‥ギンガ‥いや、月村艦長。まほろばの力を貸してほしい!!」

 

はやてはギンガに深々と頭を下げて用件を言い放った。

 

「えっ?それって、管理局に所属しろ‥ってことですか?」

 

はやての言葉を聞いてその意味を彼女に訊ねる。

 

「(まさか、本当にまほろばを接収する気なんですか!?はやてさん‥‥)

 

「いや、接収やない。協力してほしいんや」

 

「協力?」

 

「ぎ、ギンガ。実は今、ミッドがある危機に瀕しているの」

 

「えっ?ミッドの危機?」

 

「うん。実は‥‥」

 

フェイトは持ってきたタブレット端末をギンガに見せる。

 

「ミッドに今、この水世界のアクエリアスが接近しているの」

 

「水世界‥‥」

 

「せや、それで、このアクエリアスがミッドに近づくと、ミッドには数百兆トンの水が降り注ぐ事になるんや」

 

タブレット端末にはアクエリアスが接近した場合のシミュレーション映像が映し出される。

 

「数百兆トン‥‥」

 

ミッドに降り注ぐ水の量の多さに思わず絶句するギンガ。

 

「それで、そんな大量の水がミッドに降り注いだらどうなるんですか?」

 

「ミッドの地表は全て水没する事になる」

 

シミュレーション映像は続き、都市部も海の様に水没していき、高い山々さえも水の底に沈んだ。

 

「‥‥」

 

シミュレーション映像とは言え、水没したミッドチルダの様子にも呆然とした様子でタブレット端末を見つめるギンガ。

 

「こ、こんな事態が近々ミッドで起こると言うのですか?」

 

「うん。もう二週間を切っている」

 

「二週間!?どうしてそんな急に‥‥事前に何か掴めなかったんですか!?」

 

ガルマン・ガミラスから見た銀河交叉の様に急に現れて成す術なく、崩壊してしまった状況と似ているが、銀河交叉と違ってそれなりの時間があった筈だ。

 

例え防衛軍程の艦船、監視体制を敷いていないとは言え、管理局でもアクエリアスの接近について何かしらの前兆が掴めたのではないだろうか?

 

そんな疑問がギンガの中にあった。

 

「勿論、アクエリアスについては観測対象になっていた。しかし、最初にこの水世界を発見した時、アクエリアスがミッドに接近するのは六千年後の筈だった」

 

クロノがアクエリアスを最初に発見した時の事をギンガに説明する。

 

「ろ、六千年後!?それがどうして、ミッドに接近するのが二週間となっているんですか!?」

 

「ギンガ、実はアクエリアスを最初に発見したのは、私たちなの」

 

「えっ?フェイトさんたちが?」

 

「ああ‥最初に発見した時、六千年後とは言え、ミッドに接近する可能性があるから、我々はアクエリアスにビーコンを設置して、常にアクエリアスの位置を観測できるようにした。それが突然、24時間おきに150光年の距離を縮める反応があったんだ」

 

クロノがギンガにアクエリアスを発見してからミッドチルダに急接近した訳を話す。

 

「150光年の距離を‥‥それも24時間おきに‥‥」

 

「ええ。これはどう見ても自然現象などではなく、誰かが人為的にアクエリアスをミッドに近づけている行為だと認定されたよ」

 

「それで、何処の誰がそんな事を‥‥」

 

「それがまだどこの誰かなのかまでは分かってはいないが、犯人は分かっている」

 

「誰なんですか?」

 

「先日、まほろばで映像解析を依頼しただろう?」

 

「はい」

 

「アクエリアスをミッドに近づけているのはどうもその連中みたいなんだ」

 

「あの時の‥‥でも、ミッドが水没するとしても管理局側は何か対策を撮らなかったんですか?いえ、まだ水没していないのですから、まだ何らかの対策は出来る筈では?」

 

「勿論、管理局側もアクエリアスの接近を知り、対策には乗り出した。民間の船舶会社から次元航行船を徴用して、ミッドに居る全住民を他の管理世界やコロニーへの避難をさせるためにね」

 

「次元航行船をわざわざわざ使用しての避難って、それって非効率ではありませんか?本局の転送ポートを使用すれば、もっと効率的に住民を避難させることができるのではありませんか?」

 

「そうしたいのは山々何だが‥‥」

 

「?」

 

「ぎ、ギンガ、実は本局はもう存在しないんや‥‥」

 

「えっ?本局が存在しない!?どういう事なんですか?本局が存在しないって!?」

 

「数年前、本局のあった空間に突如、巨大な天体物が飛来して、本局はそれに飲み込まれてしまったの‥‥そのせいで転送ポートも無くなって、ミッドの住民を避難させるには次元航行船を使うしか手がないのよ」

 

フェイトがギンガに転送ポートが使用できない理由を話す。

 

「では、まほろばをミッドの住民の避難のために使用したいと言う事ですか?」

 

本局が既に存在しない事実も驚愕したが、此処までの説明を聞いて、ギンガはアクエリアスからの水害から逃げるためにミッドチルダの住民の避難のために一隻でも多くの宇宙船が必要なので、まほろばを避難船の一隻として協力してもらいたいのかと思った。

 

(ミッドの住民の避難のために協力するとしたら、父さんやスバルとも顔を合わせるかもしれないわね‥‥)

 

そして、もしも避難のためにまほろばを使うとしたら、その際ゲンヤやスバルとも邂逅する可能性があった。

 

「いや、それが‥‥」

 

「「‥‥」」

 

すると、クロノたちは何だかその先を言いにくそうに口ごもり、互いに視線を交わす。

 

「えっ?何かあったんですか?」

 

ギンガも当然、三人のリアクションを見て、ミッドチルダからの避難活動で何か問題が生じたのだと察した。

 

「実は、アクエリアスをミッドに近づけている勢力が、ミッドからの避難民が乗った次元航行船を襲撃した」

 

「えっ?襲撃‥‥」

 

「うん。その襲撃を受けて避難船団は全滅した」

 

「ぜ、全滅‥‥あ、あの、その襲撃を受けた避難船団の中に父さんやスバルは‥‥」

 

震える声でギンガは襲撃を受けた避難船団の乗船客の中にゲンヤとスバルが巻き込まれていないかを訊ねた。

 

「襲撃を受けた避難船団の乗客にゲンヤさんとスバルは入っておらへんよ」

 

「そ、そうですか‥‥」

 

死亡した避難船団の乗船客や遺族には悪いが、その中にゲンヤとスバルが居ない事にホッとするギンガ。

 

「そして、避難船団を襲撃してきた敵は管理局の主力艦隊さえも撃破して、ミッド周辺の管理世界は勿論、ミッド本土にも襲来した」

 

「ミッド本土に!?それは本当なんですか!?」

 

「本当や。これがついさっき、ミッドから送られて来た映像や」

 

はやてはタブレット端末を操作してディンギル軍の襲撃を受けたミッドチルダの映像をギンガに見せる。

 

「‥‥」

 

タブレット端末に映し出された映像を見たギンガはまたもや絶句する。

 

自分が幼少時代から見慣れたクラナガンの市街地が瓦礫の山となっており、“陸”の総本山でクラナガンのシンボルともいえる地上本部ビルが途中から折れている。

 

「この襲撃で次元航行船発着場も空襲を受けて、停泊していた次元航行船が破壊されてしまった」

 

「そ、それじゃあ‥‥」

 

「ああ。とてもじゃないが、アクエリアスの接近まで、ミッドに居る全ての住民を避難させるのが困難になってしまった」

 

「まほろばが避難に協力してもそれは焼け石に水や」

 

「では、はやてさんの言う、まほろばへの協力って一体なんですか?」

 

ミッドチルダにある次元航行船発着場に停泊している次元航行船を失い、住民の避難活動が出来ない中で、まほろばに住民の避難の協力を求めた所で、アクエリアスの接近までにミッドチルダに居る全住民を避難させるのは不可能だと判明した。

 

「まずは、ミッドを襲撃して来た敵勢力を排除した後、アクエリアスへと到達して次元跳躍を阻止する事‥‥年単位での遅延は不可能であっても半年~数ヶ月の時間を稼ぐことが出来れば、避難活動を再開する事は出来る筈と思っとるんや」

 

「それは、まほろばにも戦闘に参加しろ‥‥と言う事ですか?」

 

「結果的にはそうなるな‥‥でも、このままやと確実にミッドは水没して、今、ミッドに居る大勢の人々はアクエリアスの水に呑まれる。その中にはゲンヤさんやスバルも含まれる」

 

「‥‥」

 

はやて自身も内心で自分の事を殴りたい気持ちでいっぱいであった。

 

ギンガを説得するためとは言え、ゲンヤとスバルをまるで人質にするかのような言い方をして、協力を取り付け‥いや、脅迫して無理矢理協力させようとしているのだから‥‥

 

「ギンガにはもう一つの地球での生活もあるし、一日でも早く還りたいのも分かる。でも、ミッドにもギンガの家族があるのも忘れんといてや」

 

「‥‥わ、分かりました。ただ、協力するにしても戦闘が起こる事が絶対に予測される中、私一人が勝手に決められる事案ではありません。まずは乗員たちに説明をして、同意をしてもらわなければなりません。その結果、協力できない事もあり得ますがよろしいでしょうか?」

 

「分かっとる。ギンガも大勢の乗員たちの命を預かる責任者やからな」

 

はやてたちはミッドチルダが置かれている状況と共にまほろばへの協力要請を伝え、まほろばを後にした。

 

「はやてにしては随分と強引と言うか、らしくないやり方だったな」

 

クロノが先ほどのはやてとギンガとのやり取りを見て、彼女らしくない‥‥人質を使うかのようにして強引に協力させようとしたやり方を指摘する。

 

「私自身、それは分かっとる。でも、ミッドを救うために汚れ役を引き受けるつもりやで、私は‥‥」

 

「‥ギンガは協力してくれるかな?」

 

フェイトはやや不安そうにギンガが協力か非協力かどちらの選択を選ぶのか気になる様子だ。

 

「それは分からへん‥‥ミッドに居るゲンヤとスバルの二人をとるか?それともティアナたちまほろばの乗員をとるか‥‥どっちを選択しても私はギンガの決断を尊重するつもりや」

 

はやてはフェイト程ではないが、ギンガが協力するにしても協力を拒否してもその決定を尊重し、非協力の場合でもまほろばには決して手を出さないと決めていた。

 

一方、はやてたちが帰った後、ギンガは頭を抱えて葛藤する。

 

それは、はやての予想通り、ギンガは葛藤していた。

 

このままだとミッドチルダに居るゲンヤとスバルはアクエリアスの水害に巻き込まれてしまう。

 

しかし、ミッドチルダ出身者はまほろばでは自分と副長のティアナだけ‥‥

 

しかもティアナはミッドチルダに身内が居ないので最悪、ミッドチルダが水没してでもまほろばの乗員たちの安全を優先するかもしれない。

 

とりあえず、最初に副長であるティアナにはやてからの協力要請とミッドチルダが置かれている現状を伝える事にした。

 

 

はやてたちがまほろばのタラップを降りた時、

 

まほろばをジッと見つめている人物が居た。

 

「ん?あれは‥‥」

 

クロノはその人物に見覚えがあった。

 

「もしかして、ヴェルタン技師?」

 

「ん?おお、ハラオウン提督。お久しぶりです」

 

まほろばを見つめていたのは、ガイアの設計・建造に携わったフランソワ・エミール・ヴェルタンであった。

 

「どうして此処に?」

 

彼の所属部署である艦政部造艦科も本局にあり、ローレライの魔女襲来時に大勢の技師が殉職していた。

 

しかし、ヴェルタンがこうして生きてこの場にいると言う事は彼はあのローレライの魔女襲来時に本局にはいなかった事だ。

 

「ガイアの就航後に上層部から睨まれてしまいましてね。それでこの世界に左遷されたんですよ。おかげで本局崩壊の惨事に巻き込まれずにすみましてね」

 

「そうだったんですか‥‥ヴェルニー技師は?」

 

「彼も私同様、僻地に左遷されました」

 

此処には居ないが、もう一人の設計・建造者であるルイ・レオンス・ヴェルニーも本局の崩壊を撒ぬがていた。

 

「それにしても‥‥」

 

ヴェルタンは視線をクロノから再びまほろばへと移した。

 

「まさか、をこの目で見る日が来るとは思ってもみませんでした」

 

「そう言えば、ガイアはフェイトが描いたもう一つの第九十七管理外世界の艦のイラストからのスタートでしたからね」

 

「ええ‥ですがこうして実物を見る事が出来て世界の広さを実感させられます。やはり大型の戦闘艦と言うモノは男の魂を揺さぶるものですからね。出来れば艦内も見たかった所ですが、部外者である私が見れるのは外見だけですからね。ですからこの目に焼き付けておこうと思いまして、こうして観察をしている次第です」

 

「なるほど」

 

「ヴェルニー君は当初、ハラオウンさんからのイラストを見て、古臭い設計と言っていましたが、紙に描かれたイラストと現物では違いますな」

 

ヴェルタンは目を輝かせながらまほろばを見つめる。

 

「その気持ち、分かります!!」

 

そこへ、ジャガーノートの航海長であるルキノがヴェルタンの言葉を肯定する。

 

「うわっ、ルキノ、いつの間に‥‥」

 

ポンと突然湧いて出て来たルキノにはやては驚く。

 

「いや~フェイトさんの御迎えをした時、一度まほろばに乗艦しましたが、こうして外から堂々と見る機会が出来たんですから、見ないと損じゃないですか」

 

「お嬢さんはまほろばに乗った事があるのかね?」

 

「はい。とは言え、一部ですけど」

 

「そうなのか‥羨ましいな‥それで、まほろばの艦内はどんな構造をしていたのだ?」

 

「えっとですね‥‥」

 

ルキノは自分が覚えている限り、まほろばの艦内についてヴェルタンに語った。

 

「似た者同士やな」

 

「うん、私もヴェルタン技師と初めて会った時は、男性版ルキノだと思ったよ」

 

語りあっているルキノとヴェルタンの姿を見て、フェイトは初めてヴェルタンと出会った時の事を思い出していた。

 

一方その頃、まほろばの艦橋では‥‥

 

はやてたちとギンガが艦長室で何やら話し込んでいる中、ティアナは艦橋で修理状況の報告を受けていた。

 

「おや?艦長の姿が見えないようだが‥‥」

 

そこへ、アルバートが艦橋に戻って来た。

 

艦橋内を見渡し、ギンガの姿が見えなかったので、その行方をティアナに訊ねる。

 

「艦長は今、管理局の方々と面会中よ」

 

「そうか、修理に関してある問題点があったので、直接伝えようとしていたのだがな」

 

「えっ?問題?どんな問題なの?」

 

「管理局の艦との衝突の衝撃で、波動砲のストライカーボルトが外れかけている。あそこの部分に使われている部品だけは地球製の部品ではなければ直りそうにない。一発限りは撃てるだろうが、それ以上は撃てず、完全に修理するには地球圏のドックでなければならない」

 

「波動砲が‥‥でも、後は地球圏に還るだけだし、無理に波動砲にこだわる必要はないでしょう」

 

「ふむ、それもそうだな」

 

波動砲が一発しか撃てない状況下でも地球圏まで戻れる事が出来ればそれで良いので、アルバートもティアナもそこまで気にした様子はなかった。

 

そこに、顔色がやや悪いギンガが戻って来た。

 

「あっ、艦長」

 

「艦長‥ん?どうしました?少し顔色が悪いみたいですけど‥‥」

 

「副長、技師長‥‥」

 

「それで、艦長。管理局との話し合いは‥‥」

 

ティアナはギンガがはやてたちとどんな内容の話をしてきたのかを訊ねる。

 

「副長、ちょっと来て」

 

「えっ?あっ、はい」

 

ティアナの質問にギンガは答えず、ティアナを呼び出した。

 

そして再び艦長室にティアナを連れて戻ると、

 

「あの‥艦長‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガの態度に違和感を覚えるティアナ。

 

「艦長、それで管理局の話って一体なんだったんですか?」

 

「実はね‥‥」

 

ギンガはティアナに先ほど、艦長室ではやてたちと話した事をティアナに伝えた。

 

「ミッドでそんな事が‥‥」

 

流石にスケールがデカすぎる内容にティアナも驚愕する。

 

本局の崩壊

 

アクエリアスの接近によってミッドチルダが水没する事

 

管理局が水没するミッドチルダから住民を脱出しようと避難活動を開始したが、謎の勢力によって避難船団と管理局の主力艦隊も全滅。

 

更にミッドチルダ本土もその勢力によって空襲を受けて、避難用に確保していた次元航行船が破壊されしまいミッドチルダの住民たちは避難する事が出来ない事態に陥っている事

 

「それで、八神さんたち管理局はまほろばを住民の避難に協力してほしいと言う事ですか?」

 

やはりティアナも此処までの話を聞き、管理局がまほろばに住民の避難の協力を要請したのかと思った。

 

「私も当初は話を聞いてそう思ったんだけど‥‥」

 

「違うんですか?」

 

「管理局は‥はやてさんたちは住民の避難よりも敵勢力の排除とアクエリアスのワープを止める方針をとったみたい」

 

「敵勢力の排除って、その敵勢力と戦って管理局の主力艦隊は全滅したんですよね!?」

 

「うん。はやてさんたちの話ではそうみたい」

 

「それで、まほろばに協力って、まさか‥‥」

 

「うん、敵勢力の排除とアクエリアスのワープ停止の協力」

 

「それってまほろばが戦闘に巻き込まれますし、地球連邦とは無関係の敵対勢力に喧嘩を売るって事じゃないですか!?」

 

「‥‥」

 

「それで管理局は協力しなければ、まほろばを強引に拿捕するとでも言ってきたんですか?」

 

「はやてさんはそこまで強引に協力を強要はしなかったよ。協力するしないはまほろばの意思であり、それを尊重するって言っていたよ」

 

「意思を尊重するって言ってもあくまでもそれは、はやてさんたちだけであって管理局全ての総意ではないと思いますけど‥‥」

 

「‥‥」

 

確かにティアナの言う事は当たっている。

 

自分たち、まほろばの意思を尊重すると言ったのは、はやてであり、はやての言葉=管理局の総意 とは言い切れない。

 

はやてがまほろばを拿捕する気が無いとは言え、はやては一管理局員なので、管理局の高官多数がまほろばを無理矢理協力もしくは拿捕を実行をしてこないとは言い切れない。

 

「でも、ミッドには父さんとスバルが‥‥」

 

「あっ‥‥」

 

ギンガの呟きにティアナは全てを察した。

 

ミッドチルダにはギンガの家族が居る。

 

このままではミッドチルダはアクエリアスの接近で水没してしまいゲンヤもスバルも水害に巻き込まれてしまう。

 

自分はギンガと違ってミッドチルダに家族や身内は居ない。

 

しかし、スバルはギンガの妹ではあるが、ティアナにとって訓練校、最初に配属された部隊、機動六課と長い付き合いであり、離れてもティアナには大事な人であった。

 

「なのはさんは、まだミッドに?」

 

「はやてさんやフェイトさんの様子から多分‥‥」

 

もしもなのはが、第一次避難船団に乗船していたら、なのはは敵勢力に殺された事になる。

 

はやてにとってなのはは自分とスバルと同じ様に親友の間柄だ。

 

その親友が殺されたとしたら、はやてとフェイトの怒りは凄まじい筈だ。

 

しかし、先ほど話を受けた際、はやてとフェイトは冷静に話をしていた。

 

管理局員として冷静に事を運んでいたとしても何らかの片りんは見せる筈だ。

 

それが無かったと言う事は、なのはは今もミッドチルダに居ると言う事だ。

 

つまり、敵勢力を何とかしなければ、スバルもなのはもミッドチルダと共に水没してしまう。

 

ミッドチルダに家族や身内が居なくてもティアナにとって大切な人は居た。

 

ティアナもギンガ同様、ミッドチルダの件で葛藤する事となった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
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