星の海へ   作:ステルス兄貴

269 / 294
二百六十話 協力要請 そのⅡ

 

 

アクエリアスの接近のせいで水没しようとしているミッドチルダ。

 

その水没しようとしているミッドチルダから住民たちを脱出させようと管理局は対策をたてるが、ミッドチルダへの移住を計画しているディンギル軍の猛攻によって管理局の避難対策は頓挫する事となった。

 

更には管理局の主力艦隊さえも壊滅状態となり、防衛面に関しても管理局は戦力を大きく損失する事となった。

 

このままではミッドチルダに居る大勢の人々がアクエリアスの水害に巻き込まれてしまう。

 

そこで、管理局は残存艦隊でミッドチルダに残っている住民たちを避難させるのではなく、ミッドチルダを襲撃し、アクエリアスを近づけている敵勢力の排除する方針とした。

 

ただし、現状管理局に残されている戦力は決して多くはない。

 

そんな中、リンディは第六十一管理世界にて、修理を受けているまほろばに注目した。

 

MS機関を手に入れて艦の性能が格段に上がったとは言え、最初から戦闘目的で建造されたまほろばならば十分な戦力になり得ると判断したからだ。

 

リンディは、はやてにまほろばへの協力要請を頼むと、はやてはまほろばの艦長であるギンガにミッドチルダの現状を伝えて、まほろばに対して協力を要請した。

 

はやてからミッドチルダの現状を聞いたギンガは驚愕した。

 

それと同時にこのまま協力要請を拒否して地球圏に戻った場合、ミッドチルダに居る養父であるゲンヤと妹のスバルはアクエリアスによる水害に巻き込まれてしまう。

 

協力を受けるか、それとも拒否するか?

 

葛藤を抱きつつ、ギンガはまず副長であるティアナにはやてから聞いたミッドチルダの現状を伝える。

 

ギンガと違いティアナにはミッドチルダに家族も身内も居ないが、親友であるスバル、そして師であるなのはが居る。

 

ティアナもギンガ同様、葛藤を抱く事となった。

 

「それで、ギンガさんは管理局からの協力要請をどうするつもりなんですか?」

 

いずれにしてもギンガには決断を下さなければならない。

 

ティアナはギンガがどのような決断を下すのかを訊ねる。

 

「‥‥私としてはやっぱり、父さんやスバルを助けたい」

 

「すると、管理局からの協力要請を受けるんですか?」

 

「‥父さんやスバルを助けたいと言う気持ちは私人である私‥‥まほろばの艦長である私としては、やっぱり管理局の要請は素直に受け入れられる要請じゃないわ。地球連邦政府・防衛軍からの正式な許可も得ていない。何より、戦闘でまほろばの乗員たちの命を危険にさらす訳にはいかない」

 

「‥‥私も同意見です。ギンガさん」

 

ティアナも今はもう管理局員ではなく、地球連邦の市民の一人で、まほろばの副長と言う立場からギンガと同じ気持ちで会った。

 

「一応、これから各部のパートリーダーと話し合って、次は乗員たちの意見も聞かないと‥‥」

 

「は、はい」

 

ギンガはティアナを伴って艦橋に下りる。

 

「あっ、艦長。先ほど伝え忘れた事があるのですが‥‥」

 

艦橋に来たギンガにアルバートが話しかける。

 

「ん?なに?」

 

「修理作業の報告で、波動砲の修理についてなんだが‥‥」

 

アルバートはギンガに波動砲の破損個所については管理局から支給された部品では完全に修理が出来ない旨を伝え、その上で波動砲は現状、一発しか撃てない状況である事を伝えた。

 

「波動砲が一発‥‥」

 

管理局に協力するにしても切り札である波動砲が一発しか撃てない状況はますます管理局に協力する選択肢が狭まる。

 

「まぁ、地球圏に戻れば修理できるので、現状そこまでの影響ではないだろう」

 

「そう‥分かりました。通信長」

 

「はい」

 

「各部のパートリーダーをミーティングルームに集まるように放送をかけて」

 

「りょ、了解」

 

メイリンは艦内放送をかけてギンガの指示通り、ミーティングルームに各部のパートリーダーが集められた。

 

メイリン自身も通信科のリーダーなので、ギンガ、ティアナ、アルバートと共にミーティングルームへと向かった。

 

やがて、呼び出されたパートリーダーたちがミーティングルームに集まるとギンガは早速、呼び出した要件を伝える。

 

「先ほど、管理局から本艦に対して協力要請がありました」

 

「えっ?」

 

「管理局から?」

 

「協力って‥‥」

 

「‥‥」

 

ティアナは事前にギンガから聞いていたので、驚くことはなかったが、他のパートリーダーたちはまさか管理局から協力を要請が来るとは思っても居なかったので、困惑する者、驚愕する者と様々なリアクションをとっていた。

 

「艦長、管理局からの協力とは一体どんな事を我々に協力しろと言って来たのですか?」

 

アルバートが管理局からの協力内容について質問がとぶ。

 

「それについて、管理局の本部がある惑星‥ミッドチルダがおかれている現状に関係しています」

 

「ミッドチルダ‥‥」

 

「それが管理局の根拠地なんですね」

 

「ええ‥現状、ミッドチルダは水没の危機にあります」

 

「水没?」

 

「なにか異常な環境変化で海面が上昇でもしているんですか?」

 

「いえ、ミッドチルダが水没しようとしている原因は宇宙からのある天体物が影響しています」

 

「宇宙からの天体物‥‥それって彗星帝国みたいな人工天体物なんですか?」

 

「管理局からの情報では今の所、彗星帝国のような人工の天体物ではなく、自然なモノではあるのだけれど、それを利用している勢力が確認されているの」

 

「ちょっと話が見えてこないのですが‥‥」

 

メイリンが話の先が不透明なのでもう少し簡単に説明してもらいたいと言う。

 

「そうね。まず、最初にミッドチルダに接近しているのは水惑星アクエリアス‥‥」

 

「水惑星‥‥」

 

「アクエリアス‥‥」

 

「この水惑星については、まほろばと衝突した管理局の艦‥ガイアが、実際にアクエリアスの水柱によって水没した惑星の姿を確認しているわ。今から映す映像はそのガイアから提供された映像で、実際にアクエリアスが接近した惑星の光景になるわ」

 

ギンガはミーティングルームにあるモニターにはやてから受け取ったアクエリアスの情報を表示する。

 

どこかの文明のある惑星の空は黒い雨雲に包まれ、大粒の大雨が降り注ぎ、海は荒れ、大波が陸地を襲い、街を水の中に沈めて行く。

 

『‥‥』

 

その光景にギンガを除く皆が、唖然とする。

 

ティアナはギンガからミッドチルダが水没するかもしれないと聞いていたが、その原因となるアクエリアスがどんな惑星なのかを聞いておらず、もしもアクエリアスがこのままミッドチルダに接近した場合、ミッドチルダにもこのような光景が広がる事になると思うとゾッとした。

 

「こ、こんなことが本当に‥‥」

 

「信じられない‥‥」

 

「でも、全て事実よ。これがこの先、ミッドチルダに起きる」

 

「管理局はこんな惑星が接近しているのに何も対策をしていないんですか?」

 

こんな物騒な惑星が自分たちの根拠地に接近しているのだから、当然ガイアはミッドチルダに報告している筈であり、報告を受けた管理局は住民の安全確保のために何らかの対策を立てなければならないのだが、まほろばに協力を求めて来ると言う事は管理局は此処まで事態が逼迫している状況に陥るまで何の対策を取っていないとも見れる。

 

「勿論、管理局も対策はしていたわ。でも、本来ならばこの水惑星がミッドチルダに接近するまでに六千年の時間が合った筈だったの」

 

「ろ、六千年!?」

 

「それがどうして、此処まで接近しているのですか?」

 

「誰かが意図的にアクエリアスを24時間おきに150光年の距離を恐らくワープさせていると思われる」

 

「惑星をワープ‥‥」

 

「そんな事出来るんですか?」

 

「科学技術が優れて、巨大な瞬間物質転送機を使えばあるいは‥‥人工天体物ではあるが、あの彗星帝国本土もワープが出来たからな」

 

アクエリアスの奇妙な移動について、アルバートは巨大な瞬間物質転送機があれば、可能かもしれない事を示唆する。

 

「ですが、六千年の時間が短縮したからと言っても何か対策は取れる筈では?管理局は宇宙船を保有しているのですから、アクエリアスが接近している中で住民の避難活動を行わなかったのですか?」

 

「勿論、管理局側もアクエリアスの急激な接近に対して対策は行いました。民間の船舶会社から宇宙船を徴用してミッドチルダに居る全住民を他の惑星やコロニーへ避難させる活動を‥‥でも、その活動中にアクエリアスをワープさせている敵勢力によって妨害されて、避難用の宇宙船が壊滅されて避難活動が不可能となってしまったみたいなのよ」

 

「では、まほろばをミッドチルダの住民の為の避難に使いたいと言う事ですか?」

 

ギンガやティアナの様に此処までの話を聞くと誰もがまほろばをミッドチルダの住民の避難活動に協力してもらいたいと思う。

 

しかし、管理局の協力要請はミッドチルダの住民の避難活動に協力するためではなかった。

 

「いえ、私も最初此処までの話を聞いた時、皆と同じ様にまほろばをミッドチルダの住民の避難活動に使用したいのかと思っていたけど、管理局の協力要請はまほろばを避難船として使用する事じゃないの」

 

「えっ?」

 

「となると、管理局は一体まほろばを何に使用したいと言うのです?」

 

「‥‥管理局はミッドチルダの住民の避難活動の方針から、アクエリアスが接近する前に、敵勢力の排除とアクエリアスのワープの阻止に方針を切り替えたのよ。そして、まほろばにはその協力‥すなわち、敵勢力の排除とアクエリアスのワープの阻止に協力してもらいたいと要請をしてきたの」

 

「敵勢力の排除!?」

 

「それってまほろばに対して戦闘に参加しろと言うのですか?」

 

「ええ」

 

『‥‥』

 

ギンガははやてからの‥管理局からの協力要請の内容を全て語った。

 

「そもそもアクエリアスをワープさせている敵勢力の正体は掴めているのですか?」

 

「どこの星間国家なのかは掴めていないけれど、その敵勢力はアクエリアスをワープさせる前にガイアを攻撃して来た襲撃犯と同一の勢力と思われるわ」

 

「あのミサイル技術を持つ勢力か‥‥」

 

「それで艦長は管理局に協力をするつもりなんですか?」

 

「いえ、これは私一人で決められる問題ではないわ。だからこそ、今回みんなに集まってもらって意見を聞こうと思ったの」

 

ギンガはミッドチルダに集まった各パートリーダーの面々の顔を見て意見を求める。

 

「今回、管理局が敵対している勢力は地球連邦とは無関係の勢力ならば、やはり首を突っ込んで無用な戦闘をするのはリスクがあるのではないでしょうか?」

 

航海長のノイマンは管理局からの協力要請に否定的だ。

 

「私も航海長の意見に同感です。時空管理局は正直に言って信用に値する組織なのかと言われると疑問に思いますし‥‥」

 

戦術長のうららもやはり、否定的だ。

 

(うわぁ~管理局、随分と嫌われているわね)

 

ノイマンとうららの様子からティアナは敵対していない筈にもかかわらず、管理局が嫌われていると言うか不信感が防衛軍の中でも根強く共通していた事を認識する。

 

「でもよぉ~いくら管理局とやらが不審な組織であってもミッドチルダに住んで居る住民全員が管理局の人間って訳じゃあねぇんだろう?このまま放置しておくと、ミッドチルダの住民は全員アクエリアスの水に呑まれちまう‥それを知って見て見ぬふりは人としてどうなんでぃ」

 

反対に機関長の柳原はやや肯定的だった。

 

「人道的には協力をするべきなんだろうけど、まほろばは管理局ではなく地球連邦に所属している艦なのよ、機関長。そのまほろばが管理局の為に動いたとなると問題も発生するのよ」

 

うららが柳原の意見に反論する。

 

「艦長、協力するにしてもやはり戦闘に参加するのではなく、避難民の協力に変更できないのですか?」

 

通信長のメイリンが協力要請の内容を変更する事が出来ないのかを問う。

 

「まほろば一隻が避難活動に協力してもミッドチルダの住民を乗せられるには限りがあるし、全ての住民を避難させるにはもう時間が足りないから、大した意味はないと管理局は判断したからこそ、勝率を上げるために管理局はまほろばに戦闘に参加してもらいたいみたい」

 

ギンガはメイリンにまほろばが避難協力ではなく、戦闘に参加してもらいたい理由を話す。

 

「だったら、それこそ要請は拒否するべきです。地球連邦所属の私たちが管理局の為に命をかけて戦う意味はありません」

 

うららは拒否姿勢を貫く。

 

「だがよぉ~戦術長。あたしたちまほろばは一応、管理局に助けてもらって一宿一飯の恩義があるじゃねぇか。あたしらが遭難せずにこうしてちゃんと修理できたのは管理局のおかげだろう?」

 

「機関長、貴女はそんな事で管理局の為に命をかけろと言うのですか!?私たちを含めて部下たちに危険な戦闘を強要する気ですか!?」

 

「‥‥」

 

うららの剣幕に黙り込む柳原。

 

かつて、ティアナとフェイトが遭難した際、まほろばは二人を救助した。

 

そして、今度はまほろばが遭難した時、管理局は救助の手を差し伸べた。

 

互いに救助した事で恩を返したと言えば返したのだが、人数で言えば管理局の方が上なので、恩義を返したとは言えないかもしれない。

 

「艦長と副長はどうお考えですか?」

 

ノイマンがギンガとティアナに管理局からの協力要請についての意見を求める。

 

「‥‥私は‥出来る事なら、ミッドチルダを助けたい」

 

「わ、私も‥‥」

 

「えっ?艦長、ティアナ、本気ですか!?」

 

うららはギョッとした表情でギンガとティアナを見る。

 

「機関長も言った通り、管理局を助けるのではなく、ミッドチルダに残っている大勢の人々を助ける為よ」

 

「私も艦長と同じよ、うらら。助けられるかもしれない命を見て見ぬふりをして助けずに殺すのは未必の殺意と同じなんじゃないかしら?当然、その場合でも地球連邦の法律でも防衛軍の軍規にも触れないけど、大勢の人々を見殺しにしたって言う罪悪感と後悔が残るんじゃない?」

 

「そ、それは‥‥」

 

「まぁ、管理局に協力したって事で、防衛軍の軍規違反になるかもしれないけど、私はやらずに後悔するくらいなら、やって後悔した方がマシだと思っているわ」

 

「‥‥」

 

ティアナの言葉にうららは黙り込む。

 

「かつて、大統領はアンドロメダの進宙式の際、こう言っていたわ‥『地球は宇宙の平和を守るリーダー』だと‥‥実際は井の中の蛙なのかもしれないけどね」

 

ギンガはまだまほろばの通信長時代にまほろばの艦橋にあるモニターで見たアンドロメダの進宙式での大統領が演説で発した言葉を発する。

 

「その後、テレサのメッセージ、そして地球に迫る白色彗星について地球連邦政府は軽視していたけど、ヤマトの古代艦長たちは反逆者になる事を承知で地球を出てテレザートまで向かった‥‥今回、管理局が敵対している勢力はミッドチルダを狙っているけど、その後は?‥‥敵勢力が次のターゲットに地球を狙わないって言いきれる?」

 

『‥‥』

 

ギンガは全員の顔を見渡しながら訊ねる。

 

皆はギンガの問いに自信をもって 『あり得ない』 『無い』 とは言えない。

 

「確かに艦長の言う通り、管理局が此処まで追い込まれたのだから、その敵勢力がかつてのガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国、ボラー連邦と同等の科学技術力を持っているのは間違いない。特にその勢力が保有しているミサイル‥あれは我々地球人類にとってかなりの脅威となる」

 

「そのミサイルってそんなに強力なミサイルなんですか?」

 

ハイパー放射ミサイルについてはまだまほろばの乗員たちの中にはその能力が認知されていなかった。

 

その為、メイリンがアルバートにハイパー放射ミサイルについて質問する。

 

「被弾した管理局の艦に記録されていた映像と艦内に残されていた放射線の残量から、このミサイルはミサイルというよりは徹甲榴弾に近い性質を持ち、弾頭部が装甲を貫通し、装甲を溶融した直後に胴体部が縮んで起爆する。そして、爆発によって内側から敵艦を破壊すると同時に地球にとってこれまで確認されていない未知の放射性物質を艦内へ放出して乗組員を殺傷する兵器だ。なお、例え宇宙服を着用しても仮死状態となる」

 

「そ、そんな物騒な兵器を保有しているなんて‥‥」

 

アルバートからハイパー放射ミサイルの説明を聞いたメイリンは顔色を青くする。

 

「管理局を利用する訳ではないが、危険な芽は早く摘んでおいた方が今後の地球の為になるのではないだろうか?」

 

アルバートは地球の将来性を考慮して此処は管理局と共闘してこの敵勢力を排除した方が良いと判断する。

 

取り越し苦労かもしれないが、この敵が地球に攻めてこない可能性もあるが、存在していると地球へ攻め込んで来る可能性の方が若干では高い。

 

管理局からの協力要請について反対だったうららとノイマンも考え込む。

 

「管理局に協力するにしてもまずは地球連邦政府か防衛軍に許可をとる必要があるのではないでしょうか?」

 

ノイマンが今回の管理局との共闘について最大のポイントを指摘する。

 

古代たちが反逆者の烙印を覚悟してまで、防衛軍の制止を振り切ってテレザート星まで向かった時、第十一番惑星の基地が彗星帝国からの襲撃を受けた事で、地球がどこかの勢力に狙われている事が決定的となり、ヤマトにかけられた反逆者の烙印は拭われた。

 

第二次イスカンダル航海で、当時地球と未接触だった暗黒星団帝国とイスカンダルを守るために戦端を開いた。

 

一見この行為も越権行為に見えるが、そもそもイスカンダルへの遠征が藤堂の命令であり、当初の目的も暗黒星団帝国との戦闘ではなく、イスカンダルに居たスターシアと古代守の救助であり、暗黒星団帝国との戦闘はイレギュラーな事であり、不可抗力の行動だったので特にお咎めは無かった。

 

今回の管理局との協力はこの二例に似ているが、どのみち地球連邦政府か防衛軍長官である藤堂の許可が必要だ。

 

しかし、此処は地球からあまりにも距離がありすぎて通信が出来ない。

 

一度、地球との通信圏内まで行き、地球と交信し、そこから管理局との共闘の許可をもらうのはあまりにも時間がかかり過ぎる。

 

「それについて、我に策あり」

 

地球とコンタクトを取って許可を得なければならない中、アルバートには何か考えがあるのか、声を上げる。

 

「えっ?技師長、何か方法があるの?」

 

「ふむ、実は以前、管理局との交信用にヤマトの真田さんが設置した通信ポットなのだが、アレの同型のポットを地球圏のあちこちの小惑星に密かに設置してあるのだ」

 

「えっ?あの時の通信ポットを!?」

 

「おや?艦長も知っているのか?」

 

「ええ、ヘリオポーズに真田さんと一緒に設置したから覚えているわ」

 

「そうでしたか」

 

「それで、あの通信ポットの同型機をどうしてあちこちに設置しているの?」

 

「これは地球の防衛に関わる内容なので、他言無用に願いたい」

 

「分かったわ」

 

「はい」

 

「了解」

 

アルバートは複数の通信ポットの設置が意外と地球の防衛に関係しており、その内容については他言無用とし、続きを話す。

 

「連邦政府と防衛軍は密かに時空管理局の動向を知るためにこの通信ポットを太陽系の小惑星は勿論の事、シリウス、プロキオン、ケンタウロス座、バース星を始めとする地球圏の小惑星に蜘蛛の巣の様に張り巡らしている」

 

「つまり、その通信ポットは盗聴器って事ですか?」

 

ティアナがアルバートに通信ポットの使用目的を訊ねる。

 

「その通りだ。副長」

 

「でも、どうしてそんな事を?」

 

「これはまだ推測なのだが、管理局は広大な宇宙空間の広範囲を活動している。その為、本国と管理局艦との通信技術に関しては、防衛軍よりも管理局の方が一日の長があると判断し、その通信内容を傍受するためにあちこちに通信ポットを設置したのだ」

 

「なるほど」

 

アルバートの話を聞いて、地球連邦政府、防衛軍は管理局を仮想敵国とまではいかないまでも動向を注視する要警戒組織と見ていた。

 

管理局のこれまでの地球に対する行動から警戒される羽目になった。

 

「うーん‥それだと地球連邦政府や防衛軍が果たして管理局との共闘に賛同するでしょうか?」

 

「それと、艦長。例の通信ポットを使って地球に通信を送るにしてもまほろばの通信波では受信されにくいかもしれない。周波数は管理局で使用されていた通信波に設定されている。なので、地球に通信を送るには管理局の艦の通信機を使用した方が受信されやすい」

 

「そう‥でも、地球との連絡手段はあるって事ね」

 

「ええ、まぁ‥‥」

 

「‥‥では、まずパートリーダーの間で今回の管理局からの協力要請について、協力するか、それとも否かの最終採決を決めたいと思う」

 

ギンガは真剣な表情で皆の顔を見渡しながら採決をとった。

 

結果的にパートリーダーはあくまでもミッドチルダに住む住民の為ならばと管理局からの協力要請に賛成した。

 

次いでギンガはパートリーダー以外のまほろば乗組員にミッドチルダの状況と管理局からの協力要請について説明を行わなければならなかった。

 

「通信長」

 

「はい」

 

「展望室に乗員を集めて」

 

「了解」

 

メイリンは艦内放送で乗員たちを展望室へと集めた。

 

「一体なんだろうな?」

 

「さあな」

 

いきなり展望室に集められた事で戸惑うまほろばの乗員たち。

 

「まさか、管理局がまほろばを強引に手に入れようとしているんじゃあ‥‥」

 

「管理局がその気ならば戦うだけさ」

 

その中には管理局がまほろばの拿捕を目論んでいるのではないかと噂が出る。

 

「おっ、艦長が来たぞ」

 

展望室にギンガが入って来るとざわついていた乗員たちは黙る。

 

乗員たちの前に立ったギンガは、

 

「管理局からの協力がありましたが、まほろばは皆さんの尽力のおかげで無事に航行する事が出来ました。ありがとうございました。そしてお疲れ様です」

 

軍帽を脱ぎ、ペコッと一礼する。

 

 

「後は地球圏に帰還するだけ‥‥なのですが、実は先ほど管理局よりある要請がありました」

 

「管理局からの要請‥‥」

 

「やっぱり、まほろばを手に入れるつもりか?」

 

管理局からの要請と言う言葉に再びざわつく乗員たち。

 

「艦長、管理局からの要請とは一体どんな内容なんですか?」

 

乗員の一人がギンガに質問する。

 

「管理局からの要請は‥協力です」

 

「協力?」

 

「現在、管理局の根拠地、ミッドチルダはある危機に瀕しています」

 

ギンガは展望室のモニターにミッドチルダが置かれている現状を説明する。

 

映像付きの説明に誰もがあまりにも現実離れしている内容と映像に唖然とする。

 

「このままアクエリアスが接近すると、ミッドチルダに居る大勢の人々はアクエリアスの水害によって水に呑まれてしまいます。そのアクエリアスについても宇宙を回遊している事から、アクエリアスがいつ地球圏にやってくるのか分からない状況であり、更に今現在、管理局と敵対している勢力は、これまで地球が戦って来た勢力とほぼ同等の科学技術を持っている事が判明し、この勢力が使用しているミサイルは我々地球人類にとって脅威となりうる性能を有しています」

 

ギンガは次いで敵勢力が保有しているミサイル‥‥ハイパー放射ミサイルの性能について説明をする。

 

「管理局からの協力要請はこの敵勢力の排除と同時にアクエリアスのワープの阻止です」

 

「こんな連中と戦えって事ですか!?」

 

「これは管理局側の問題であって、我々には関係がないのではありませんか?」

 

乗員たちはそんな凶悪なミサイルを保有している敵勢力との戦闘についてやはり、批判的、反対的な言葉が飛び交う。

 

「皆の言うは分かります。ですが、地球の将来性を考えると先ほど言ったようにアクエリアスの動向、そして敵勢力がいつ地球へ侵攻して来るのか不明のため、此処は管理局と共にこの敵勢力を排除した方が地球にとっての不安要素を排除すると共にひいては全宇宙の平和のために私は今回の協力要請を受けようと思っています。かつて、地球がガミラスの遊星爆弾で絶滅しかかった頃、損得無しに救いの手を差し伸べたイスカンダルのスターシアさんと同じ様に‥‥」

 

管理局からの協力要請を受けると宣言するギンガ。

 

それはつまり未知なる敵勢力との戦闘に参加する事を意味する。

 

「ただ、これはまだ決定した事ではないわ。流石にこのように重大な決断を艦長とは言え、私一人の一存で決める事ではない。今回の協力要請については皆の意見も聞きたい」

 

ギンガは管理局との共闘についてはまだ拒否する選択がある事を乗員たちに言う。

 

ただ、この戦いにはミッドチルダに居る大勢の人々の運命も背負っている。

 

地球から見れば、交流を持っている訳ではないミッドチルダの人たちがどうなろうとも知った事ではない。

 

しかし、このままだと大勢の民間人が溺死する運命が待っている。

 

協力するか?それとも拒否するか?

 

その選択肢に乗員たちはどうしたものかと互いに顔を見合わせる。

 

「どうする?」

 

「どうするって言っても‥‥」

 

「管理局の人間たちだろう?俺たち地球からしたら関係ない事だし‥‥」

 

「でも、このままだと大勢の民間人が死ぬって事なんだろう?」

 

「それに此処で協力しておけば、管理局には大きな貸しをつけることが出来るじゃないか?」

 

ミッドチルダは地球や自分たちと何の関係は無いが、それでも大勢の民間人の命がかかっていると聞いて軍人として‥人として、やはり心が揺らぐまほろばの乗員たち。

 

管理局は地球に対して不審な行動を行ってきたが、今回まほろばが遭難し、修理のためのドックと部品を供与してくれた。

 

管理局の協力がなければ、自分たちは宇宙空間で遭難死するところだった。

 

そうした一宿一飯の恩義が出来た事も管理局からの協力要請に対して強く否定できない部分もある。

 

やがて乗員たちもパートリーダー同様、ミッドチルダに居る大勢の民間人を救うと言う大義の下、管理局の協力要請に納得してくれた。

 

「ありがとう‥みんな‥‥」

 

ギンガは再び乗員たちに一礼した。

 

後は地球と連絡を取り許可を取り付けるだけだ。

 

(フェイトさん‥‥)

 

ギンガは念話をはやてではなく、フェイトに送る。

 

(ん?ギンガ?どうしたの?)

 

(先ほど、まほろばの乗員たちと話し合い、管理局からの協力について皆は納得してくれました)

 

(えっ?それって‥‥)

 

(はい。まほろばは今回の作戦に参戦します)

 

(そう‥ありがとう‥ギンガ‥‥)

 

(それで、参戦するにしても地球と連絡を取り、許可を得なければなりません)

 

(やっぱり、そうだよね‥‥)

 

(はい。それで、フェイトさんたちの艦の通信機を貸していただけますか?)

 

(えっ?ガイアの通信機を?まほろばの通信機じゃダメなの?)

 

(は、はい。まだまほろばの通信機は不調でして‥‥それに地球圏から離れすぎていて使用できないんです)

 

(そうなの?)

 

(はい。事態は刻一刻迫っているので、一分一秒でも無駄には出来ないので‥‥)

 

(分かったクロノにも伝えておくよ。準備が出来たら、また念話を送るよ)

 

(分かりました)

 

防衛軍が設置している例の通信ポットについては軍事機密なので、ギンガはまほろばの通信機の不調と言う事にした。

 

ギンガから念話を受けたフェイトは早速クロノに念話の内容を伝える。

 

「クロノ、さっきギンガから念話があって、まほろばも今回の作戦に協力するって」

 

「そうか‥‥本来ならば今回の作戦にまほろばは関係ないのに‥‥月村艦長には感謝しきれないな‥‥」

 

「うん、そうだね‥‥それで、もう一つの地球に作戦参加の許可をとりたいからガイアの通信機を借りたいって」

 

「まほろばの通信機は使えないのか?」

 

「うん。そうみたい」

 

「そうか‥‥分かった。まほろばには無理をさせるのだから、それくらいはな」

 

クロノからガイアの通信機の使用許可が出たので、フェイトはギンガに念話を送る。

 

(ギンガ、クロノから通信機の使用許可がおりたよ)

 

(分かりました。では、そちらのお伺いしますね)

 

通信機の使用許可がおりた旨の念話をもらったギンガはガイアへと向かった。

 

ギンガを出迎えたのはフェイトだった。

 

「ギンガ、わざわざありがとう」

 

「いえ、まほろばの乗員は今回の作戦に協力を了承しましたけど、問題は地球連邦政府と防衛軍が許可を出すか‥です」

 

「うん。そうだね」

 

例えまほろばの乗員全員が管理局からの協力要請を了承しても、まほろばが所属する地球連邦政府・防衛軍がその協力要請に納得がいかず、まほろばに『作戦参加を認めず即刻地球圏に帰還しろ』と言われたら、まほろばは地球圏に戻らなければならない。

 

フェイトもその点は納得した様子だった。

 

ガイアの通信室に案内されたギンガは手慣れた様子でガイアの通信機を操作する。

 

(新型の艦になっても通信機は前のままなんだ‥‥)

 

外見やエンジンは自分が居た頃に比べると随分と変わったが通信機の類はまだ自分が管理局員時代の時と変わっていなかったので、難なく操作する事が出来た。

 

 

地球 防衛軍司令部 指令室

 

『‥‥こ‥‥ちら‥‥ろば‥かん‥‥つき‥‥ギンガ。防衛軍‥‥部‥‥応答を‥‥』

 

「ん?なんだ?」

 

オペレーターが何かの通信を受信した事を確認し、周波数を調整する。

 

『こちら、まほろば艦長‥‥月村ギンガ。防衛軍司令部応答をお願いします』

 

「まほろば!?‥‥でも、この周波数は時空管理局の通信波の筈‥‥どうして、まほろばの月村艦長が‥‥?」

 

管理局が使用している筈の通信からどうしてギンガの声が聞こえてくるのか疑問に思いつつも通信を映像通信に切り替えた。

 

するとモニターにギンガの姿が映し出された。

 

「月村艦長!?」

 

モニターに映ったのは間違いなくギンガの姿だったので、オペレーターは再度驚愕する。

 

「月村艦長、こちら防衛軍司令部」

 

『防衛軍司令部。こちら、まほろば艦長、月村です』

 

「月村艦長、無事だったんですね。でも、どうして管理局の周波数で通信を?」

 

『それにつきましては、藤堂長官にお話がありますので、お取次ぎをお願いします』

 

「分かりました」

 

オペレーターは急ぎ藤堂にギンガから通信が入った事を知らせる。

 

「藤堂長官、まほろばの月村艦長から通信が入っております」

 

「なにっ!?月村艦長から!?間違いないのか!?」

 

「はい。映像通信で月村艦長の姿を確認しています。ただ、通信の周波数はまほろばのモノではなく、時空管理局が使用している周波数でした」

 

「時空管理局の周波数‥‥?」

 

「はい。その点を含めて藤堂長官にお話がしたいと仰っています」

 

「分かった。通信回路を開いてくれ」

 

「了解」

 

オペレーターが藤堂の卓上にあるタブレット端末にギンガからの通信を送信する。

 

やがてタブレット端末にギンガの姿が映る。

 

『藤堂長官。まほろば艦長の月村です』

 

ギンガはモニターに映る藤堂に敬礼する。

 

「月村艦長、無事で何よりだ。ところで、どうして管理局の周波数で通信を送っているのだ?まほろばはどうした?」

 

『まほろばは乗員全員無事です。まずは経緯を報告いたします』

 

ギンガは藤堂にヤマトとガルマン・ガミラス付近で何が起きたのかを報告する。

 

『座標指定なしのワープを行い、艦に大きな損傷を受け、修理に必要な部品も欠品している中、時空管理局の艦と遭遇し、その後、管理局に救助されてまほろばの修理を行っていました。幸い修理に必要な部品については管理局の艦が使用しているモノでも代用出来たので、まほろばは航行能力を取り戻しました』

 

「そうか‥‥ヤマトからガルマン・ガミラスの件、その後にまほろばが行方不明になった件についても報告を受け、ヤマトを始めとする捜索隊がまほろばの捜索に出ている。その中にはヒューベリオンもいる」

 

『ヒューベリオン‥‥良馬さんが‥‥』

 

「うむ。それで、まほろばは何時頃出航する?」

 

『それについて何ですが‥‥』

 

良馬が自分たちを捜すために捜索に出ている事を知り、ギンガは内心嬉しかった。

 

藤堂はまほろばの修理が終わったのなら、地球圏に何時頃戻るのかを訊ねる。

 

しかし、ギンガは何だか気まずそうな様子だ。

 

「ん?どうした?月村艦長」

 

藤堂はそんなギンガの様子に気づき、何かあったのかを問う。

 

「藤堂長官、実は‥‥」

 

ギンガは意を決したかのように口を開いた。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。