星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百六十一話 出撃準備

 

 

アクエリアスの接近のせいで水没が決定的となったミッドチルダ。

 

当然、管理局はこの事態に対してミッドチルダに居る大勢の住民たちを他の管理世界やコロニーへの避難活動を行うもミッドチルダへの移住を計画しているディンギル軍の猛攻によってそれは頓挫してしまう。

 

ディンギル軍はミッドチルダからの避難民を乗せた避難船団と管理局の主力艦隊を壊滅させるだけではなく、ミッドチルダ本土にも大規模な空襲を行い管理局が避難用に民間の船舶会社から徴用していた次元航行船が破壊されてしまい、ミッドチルダからの避難が不可能な状況となってしまった。

 

このままではミッドチルダに居る大勢の人々はアクエリアスの水に呑まれてしまうが、管理局は既にディンギル軍への対抗手段を失ってしまう。

 

しかし、管理局は戦う術を全て失った訳ではない。

 

そこでリンディは最後の頼みとして、第六十一管理世界に居るはやて、クロノ以下の管理局の残存艦隊でディンギル軍と戦う事を決めた。

 

だが、いくらMS機関を有していても管理局がディンギル軍の全てを認識している訳ではない。

 

そこで、同じく第六十一管理世界にて修理しているまほろばにも協力要請をした。

 

ただ、管理局から協力要請を受けたからと言ってすんなりと受ける事は出来ない。

 

そもそも管理局と地球連邦は国交も同盟も結んでいる訳ではない。

 

それどころから互いに警戒している間柄だ。

 

だが、まほろば艦長のギンガと副長のティアナにはミッドチルダには大切な人が居る。

 

ギンガとティアナはミッドチルダの現状を知って葛藤を抱く。

 

私人としては、当然ミッドチルダを救いたい。

 

しかし、公人としては地球と関係ない世界の為に命を張り、まほろばの乗員たちを危険にさらす訳にはいかない。

 

それどころか、地球と関係がない敵対勢力のディンギル軍が地球に侵略の矛先を向ける可能性もある。

 

だが、管理局からの協力要請を無視する訳にもいかない。

 

ギンガはまず、ティアナにミッドチルダの現状と管理局からの協力要請の件と彼女に自分の気持ちを伝える。

 

次いで、ギンガはまず、まほろばの各部のパートリーダーに説明し、理解を得ると最後にまほろばの乗員たちに説明した。

 

その結果、まほろばの乗員たちからはミッドチルダの救援についての理解を得る事が出来た。

 

しかし、まほろばの乗員たちからの理解を得ても地球連邦政府もしくは防衛軍司令部からの許可を得なければミッドチルダの救援は出来ない。

 

そこで、ギンガは防衛軍司令部からの許可を得るためにガイアの通信機を借りて地球との交信を試みた。

 

通信技術に関しては防衛軍よりも管理局の方が優れていた。

 

それは防衛軍と管理局の任務の違いからくるものであった。

 

そこに防衛軍が管理局の動きを探るために管理局の通信波を傍受できるように盗聴器とも言える通信ポットをいくつも仕掛けていた。

 

管理局の艦からの通信波ならば、その通信ポットに受信されて地球へ通信が届くのではないかと推測した。

 

そして、その推測は当たり、ギンガは地球と交信する事が出来た。

 

なお、ギンガがガイアに来た際、彼女を通信室に案内したのはフェイトであったが、フェイトは通信室の中には入っていない。

 

地球との交信の場に管理局員の自分が居れば、何かと疑われてしまう事を考慮したのだ。

 

そうなれば、まほろばからの協力がふいになってしまうと考えたからだ。

 

ギンガもそれを分かっていたが、

 

(ブリッツキャリバー、サーチャーの気配は?)

 

(‥‥この部屋にはサーチャーの気配はありません)

 

念のために通信室にサーチャーの気配と通信機に盗聴・盗撮機の類が無いかを確認してから地球との交信を行った。

 

ギンガが地球との交信にはやてのジャガーノートではなく、フェイトが居るガイアを選んだのは、フェイトの実直さを知っていたからだ。

 

自分が管理局員時代、はやてがゲンヤが部隊長を務める108部隊に研修に来た切っ掛けで、フェイトよりもはやての方が、付き合いが長く、当時の上官であり父であるゲンヤは、よくはやての事をよく『豆狸』と呼んでいた。

 

それは決してはやての見た目だけを揶揄して呼んでいた訳ではなく、はやてはその年齢にそぐわず以外にも強かな一面も有しているのでゲンヤは、はやてのそんな一面を含めて彼女を『豆狸』と呼んでいたのだ。

 

そんなはやての一面をゲンヤの傍で見ていたギンガとしては、地球と交信するとなるとサーチャーや盗聴・盗撮を行うのではないかと思ってしまい、敢えてジャガーノートではなくガイアの通信機を借りたのだ。

 

 

地球との交信が行われ、まず藤堂との通信でギンガはまほろばが遭難した経緯を報告した。

 

そして、いよいよ本命である管理局からの協力要請‥‥ミッドチルダ救援について話す。

 

「藤堂長官、実は‥‥」

 

『そうか‥管理局の本拠地が‥‥』

 

「実はその件で管理局からまほろばに協力要請が来ておりまして‥‥」

 

『ん?協力要請?』

 

「はい。管理局はミッドチルダに居る住民の避難を諦め、敵勢力の排除とアクエリアスのワープの阻止に方針を切り替えました。その作戦にまほろばにも参加してもらいたいと‥‥」

 

『‥‥』

 

ギンガからの説明を聞いて、藤堂は腕を組んで目を閉じて考え込む。

 

「藤堂長官、確かに時空管理局は地球連邦・防衛軍にとって不審な組織ですが、遭難した私たちを管理局は救助し、修理に必要なドックと部品を提供してくれました。それにミッドチルダに居る大勢の人々全員が管理局の関係者ではありません。むしろ、民間人の方が多いくらいなんです」

 

『‥‥』

 

「長官、かつてガミラスの手によって滅びかけた地球をイスカンダルのスターシア陛下はヤマトにイスカンダルまでの航海と言う試練はありましたが、無償で放射能除去装置の贈与をしてくれました。それに大統領も『地球は宇宙の平和を守るリーダーである』とおっしゃいました。例え住んで居る星が異なっても助けを求めている人の手を叩き落とすのは人として倫理に外れるのではないでしょうか?」

 

『しかし、まほろば一隻の協力を得た所で形成をひっくり返せるのかね?』

 

「それは分かりません。ですが、かつてヤマトはただ一隻でガミラスと戦いイスカンダルまで行きましたし、私自身も彗星帝国との戦いの際、まほろばの一員として必死に戦いました」

 

『‥そうだったな‥‥だが、まほろば乗員の総意はどうなんだ?』

 

「事前に説明を行い、乗員たちの理解は既に得ています」

 

『‥‥そうか‥‥分かった。やってみるといい』

 

藤堂はまほろばに管理局との共闘に許可を出した。

 

「ありがとうございます!!藤堂長官」

 

『ただし、絶対に生きて還ってきなさい』

 

「はい!!」

 

藤堂からの許可を得た事で、まほろばは正式に管理局との共闘が可能となった。

 

ただ、まほろばを捜索している捜索隊にこの事実は伝えたくても伝えられなかった。

 

ギンガは管理局の艦の通信波を通信ポットに敢えて受信させる事によって地球と交信できたのだが、まほろばが遭難したばかりの時は、遭難現場が地球からかなり離れた場所である為、通信が出来なかった。

 

そして、まほろばの捜索隊も現在、まほろばの遭難現場付近で捜索を行っているので、当然、地球から捜索隊に通信を送る事は出来なかった。

 

藤堂からまほろばを捜索するための艦隊が派遣されている事は聞いてはいたが、此処から捜索隊に呼びかけても捜索隊がその通信を受信できるのか不明だったので、此処から通信を送っても空振りになる可能性があるので、ギンガは管理局との共闘が終わったら遭難現場へと戻り、そこで捜索隊との合流を図る事にした。

 

「ギンガ‥その‥‥大丈夫だった?」

 

通信室から出るとフェイトがドキドキした様子でギンガに地球との交信結果について訊ねてきた。

 

「はい。防衛軍司令部からの許可は出ました。なので、フェイトさんたちと戦う事になります」

 

「分かった。それじゃあ、はやてとクロノにも伝えておくね」

 

「はい。私の方も乗員たちに伝えてきます」

 

ギンガはガイアを後にして、まほろばへと戻る。

 

そして、艦内放送を通じて先ほど藤堂から許可が下りた旨を伝える。

 

「先ほど、地球との交信を行い、管理局との共闘に許可が正式に下りました、ただしこの先、戦闘は必ず予測され、戦闘が起きれば必ず死傷者を出す事になります‥‥ですが私は艦長なのに、みんなの安全の保障が出来ない‥‥故に艦を降りる者は直ちに申告せよ。管理局と交渉し、再びまほろばがこの地に戻るまでの安全確保を確約させます。各々が自分で考え、自分で決断せよ‥‥以上」

 

それと同時にギンガはこの艦内放送にて、これから先の戦闘により死傷者は出る事を予見して、乗員たちに一時的な退艦許可を出す。

 

管理局に対して不信抱き、今回の協力要請に関しても反対する乗員も居たので、大勢の退艦者が出るかと思っていたギンガであったが、

 

『此方機関室、榊原麻侖以下、機関科お供いたしやす!!』

 

『こちら医務室、石田軍医以下、衛生科お供いたします』

 

『水雷科お供します』

 

『航空科山本玲以下全員、お供します』

 

『砲術科行きます』

 

各部からはまほろばに残って共に戦う旨の返答が入る。

 

「乗組員全員退艦者なし、降りる者はいません」

 

ティアナが退艦者の有無を報告する。

 

「みんな‥‥ありがとう‥‥」

 

ギンガは乗員たちの決意に礼を述べた。

 

「ただ艦長。いくら管理局との共闘に問題が無くなったとは言え、あの管理局と共闘する訳ですから、何かしらの手は事前に打っておくべきではないだろうか?」

 

アルバートが無条件で管理局を信じられる訳ではないので、管理局が手を出したくても手を出せない状況を作るべきだと提案する。

 

「そう‥ですね」

 

ギンガはアルバートの意見を採用した。

 

そして、ある内容が書かれた文章を作成した後、再びフェイトに念話を飛ばした。

 

一方、フェイトからまほろばが正式に管理局との共闘が可能となった事がはやてとクロノたちに伝えられた。

 

「そうか、まほろばが正式に‥‥」

 

「急ぎ、艦隊編成をせなあかんな」

 

まほろばが正式に今回の作戦に参戦する事となり、はやてとクロノは急ぎ、艦隊編成を行う。

 

第六十一管理世界に居るのは、はやてのジャガーノート、クロノのガイア、ギンガのまほろばの他に巡航艦三隻、警邏艦六隻が駐屯していた。

 

はやては急ぎ各艦の艦長をジャガーノートへと集めた。

 

しかし、ギンガに関しては、いくら今回の作戦に参戦するとは言え、やはり部外者なので、この艦長会議には呼ばれず、会議後に決まった内容を伝える事となった。

 

ジャガーノートの会議室で会議が行われている中、

 

「失礼します」

 

フェイトが一枚の紙を持ってジャガーノートの会議室に入って来た。

 

「ん?どうしたんや?ハラオウン副長」

 

クロノは兎も角、他の艦の艦長が居たので、はやては此処では敢えてフェイトの事をハラオウン副長と呼んだ。

 

「先ほど、まほろばよりこの様な打診が入ったので、伝令として来ました」

 

フェイトは、はやてに手に持っていた紙を手渡す。

 

「‥‥」

 

はやては早速、受け取った紙に書かれたまほろばから打診された内容に目を通す。

 

「八神艦長、まほろばからはどのような打診が来たのかな?」

 

クロノも此処は敢えてはやての事を名前ではなく名字+役職名で呼んだ。

 

「『この度、管理局との共闘に際して、アドバイザーとして高官の派遣を要求する』‥‥やて」

 

「なるほど、まほろばとしては打つべき手を打って来たと言う事か‥‥」

 

クロノはまほろばからの打診に対して妙に納得した。

 

「アドバイザーとはどういう事です?向こうは世界が異なるとはいえ、現役の軍人なのでしょう?ならば、アドバイザーなんていらない筈では?」

 

「戦闘に関しては、恐らく彼らの方が我々よりもプロでしょう。ですが、地理的な情報は我々の方が上‥‥まほろばが指しているアドバイザーは助言と言うよりも水先案内人に近い」

 

(案内人と言うのはあくまでも建前で本当は、背後からのフレンドリーファイアを警戒しての打診‥ようは艦と乗員の安全のために人質を寄越せと言う事だな)

 

クロノは口ではあくまでも地理不慣れの為の案内人と説明したが、実際は共闘相手の事を完全に信じていない為、背後からのフレンドリーファイアを警戒しての人質だと判断した。

 

自分やはやては、まほろばを背後から撃つなんて事はしないが、他の艦の艦長がまほろば諸共敵を撃つ可能性もある。

 

まほろばをフレンドリーファイアで撃沈したとしても所属先の防衛軍司令部が管理局との共闘に許可を出しているので、戦闘でまほろばが沈んでも防衛軍は管理局に対して文句は言えない状況となっている。

 

ギンガとしては人質をとるような真似は心苦しいが、艦と乗員たちの生命の安全を確保するためにこうして管理局に打診した。

 

「それで誰が行くのです?」

 

艦長の一人はちらりと周囲を見渡す。

 

少なくとも自分の艦から人員は出すつもりはない様子だ。

 

もしもこの場にヴェルタンが居たら即座に自分が乗艦すると言っていただろう。

 

「ハラオウン提督は案内人と言うが、実際は体の良い人質ではないか?」

 

別の艦長はまほろばからの打診についてクロノと同じ思いを抱いており、クロノと違って自分が抱いた思いを口にする。

 

話し合いの内容は本来の内容から、まほろばの打診内容について議題が代わる。

 

「偵察を兼ねて乗り込んではいかがです?人数に関しては明記されていませんし、上手くいけば今回の作戦だけとは言わず、今後の我々の戦力になるかもしれませんぞ」

 

「確かに、今回の打診をまほろばへの乗艦許可と捉えるのであるならば、いっそ武装隊を送り込んで制圧してしまえば‥‥」

 

艦長の中には、まほろばに武装隊を送り込んでまほろばを占領しようと言う意見もあった。

 

「そんな事をすれば、折角の協力体制が崩れてしまうやろう。今は一隻でも多くの戦える艦が必要なんやで」

 

「では、八神艦長はこの打診を受諾すると言うのですか?」

 

「八神艦長の所からこのアドバイザーとやらを派遣すると言う事で良いんですね?」

 

はやてはまほろばには手を出さない様に伝えると、他艦の艦長たちは、そこまで言うのであるならば、まほろばが求めるアドバイザーはジャガーノートから出すのかを問う。

 

はやて自身もそこまで言われれば、やむを得ないと判断し、ジャガーノートから士官を出すと言い出そうとした時、

 

「それなら、私がまほろばへと行きます」

 

フェイトがまほろばへ行く事を志願した。

 

「えっ?フェイトちゃん!?」

 

フェイトの行動にはやては思わず声を上げる。

 

「いいのかい?副長」

 

フェイトの発言に驚くはやてであるが、反面クロノは

 

「はい。このままでは、誰が行くのか延々と話が続きそうなので‥‥それに私はまほろばにも乗艦経験があります。副長の職務は一時戦術長に兼任してもらってください。」

 

「そうだったな」

 

クロノはフェイトとティアナが遭難した時、まほろばに救助された事を思い出す。

 

そして、フェイトはチンクに副長代理をクロノに頼む。

 

「分かった」

 

「では、私はまほろば移乗の為の準備に入ります。それと戦術長にも副長代理の件を伝えておきますので」

 

フェイトは会議室に居る皆に一礼した後、会議室を出てガイアに戻る。

 

なお、ガイアに戻る最中フェイトはギンガに念話で自分がアドバイザーとしてまほろばに乗艦する旨を伝えた。

 

 

ガイアに戻ったフェイトはチンクを見つけて声をかける。

 

「チンク」

 

「フェイトか、どうした?」

 

「ついさっき、まほろばからある打診が来て、私は一時的にまほろばに移乗するから」

 

「えっ?まほろばってあの戦艦だろう?どうしてフェイトがまほろばに行くのだ?」

 

「それは‥‥」

 

フェイトはチンクにまほろばに移乗する経緯と理由を伝えた。

 

「なるほど‥しかし、フェイトはガイアの副長だろう?副長不在でこの先の戦いは大丈夫なのか?」

 

「その件で、チンクには一時副長代理を務めてもらおうかと思っているの」

 

「なっ!?私が!?」

 

フェイトの言葉にチンクはギョッとした表情となる。

 

「副長と言っても文字通り艦長の補佐だし、この先は戦闘が予測されるから戦術長の任務とほぼ変わらないから大丈夫よ」

 

「そ、そうだろうか?」

 

「クロノもその辺はちゃんとわかっているだろうから、自信をもって。これはチンクにとっても将来のステップアップにも繋がるだろうから」

 

「う、うむ。分かった」

 

フェイトから励ましてもらいチンクは自信が無さげながらも副長代理の任を引き受けた。

 

その頃、同じくガイアの医務室では‥‥

 

「あら?あの子が居ない‥‥」

 

ガイアの医務官がアクエリアスの接近により水没した世界から救助された唯一の生存者である少年の姿が消えている事に気づく。

 

「た、大変。何処に行ったのかしら?」

 

医務官は急ぎ医務室を捜すが見つからない。

 

慌てて通路に出ると、フェイトとチンクが居た。

 

「あっ、副長!!戦術長!!」

 

「ん?医務官どうした?そんな慌てて」

 

「何かあったの?」

 

「そ、それが‥‥」

 

医務官はフェイトとチンクに救助した少年が医務室から消えた事を伝える。

 

「あの子が!?」

 

「は、はい。様子を見に行ったら消えていて‥‥医務室を捜したのですが見つからなかったので、医務室の外に出たのかと‥‥副長と戦術長は見ませんでしたか?」

 

「いや、少なくとも私は見ていないぞ」

 

「私も‥‥」

 

「ど、どうしましょう‥‥」

 

医務官はこの後、ガイアは戦場に行くので、あの少年は此処で降ろそうと思っていた矢先、何処かに行ってしまったのだ。

 

「一先ず手空きの乗員に艦内の捜索を頼もう」

 

チンクは通路に設置されている内線電話をかける。

 

「私だ。ああ、医務室から要救助者が脱走した。‥‥うむ、医務室は既に医務官が捜索したが見つからなかったようだ。ああ、要救助者は艦内に潜伏している可能性が高い。手空きの乗員を総動員して要救助者を捜索せよ。そうだ‥ただし、手荒な真似はするな。相手は子供であるし、目が覚めたら見知らぬ場所に居て困惑しているだろうからな」

 

「チンク、なんかごめんね。出撃が近い中でなんか仕事を一つ増やしちゃって」

 

「いや、こうした仕事ならば大丈夫なのだがな‥‥それじゃあ、私も捜索に入る。フェイトもまほろばで頑張れ」

 

「うん。ありがとう」

 

チンクは行方不明になった要救助者の少年の捜索に入り、フェイトは一時自室に戻り、トランクに必要なモノを詰め込みまほろばに移乗する準備を整えた。

 

 

「‥‥」

 

ガイアの艦内で要救助者の少年の捜索が行われている中、その少年は既にガイアの艦外に居た。

 

医務室にあったベッドのシーツを適当な大きさに引き裂いてローブの様に羽織り、顔を隠してガイアの艦外に脱出していた。

 

周囲に居る人間は自分と肌の色がまるで違うので、顔を隠さなければあっという間に見つかってしまう。

 

なので、彼は医務室のシーツを引き裂いて顔を隠して、ガイアの乗員たちの隙をついてガイアの艦外に出たのだ。

 

ガイアの艦外に出た少年はドックにあるコンテナや作業車両の影に隠れつつ周囲を見渡しながら、何処に行けばいいのか?

 

どこか隠れる場所はないか?と困惑していた。

 

あまり時間をかけると誰かに見つかってしまうのだが、此処は自分にとっては未知の場所。

 

何処に何があるのか分からない。

 

そもそも自分は水没しかけていた故郷から何故、どういった経緯で助かり、此処に居るのかさえも分からない。

 

目が覚めた時、自分と一緒に居た筈の母親の姿もなかった。

 

母は別の場所に居るのだろうか?

 

その他に母の他に自分と同郷の人の姿も無い。

 

まさに孤立無援の状態である。

 

そんな状況下でも年の割に泣き叫ぶことも無く、しっかりと行動しているのは彼が生まれ育った星の環境によるものだが、それは後々に判明する事になる。

 

「よし、あとはこのコンテナだけだな」

 

「おう、さっさと積み込んじまおうぜ」

 

「っ!?」

 

自分が隠れているコンテナの近くで人の声がした。

 

少年は急ぎコンテナの中に入り込んでやり過ごす。

 

やがて、コンテナがクレーンに吊り上げられたのか。グラっとコンテナが揺れると次いでふわりとした浮遊感がコンテナを包む。

 

そして、コンテナは別の艦に積み込まれるのを少年はコンテナの扉を少し開けて確認する。

 

別の艦に積み込まれたのだが、その艦の乗員は他の仕事があるのか、少年が隠れているコンテナに近づいて来ない。

 

少年はその隙にコンテナから出た。

 

通路を見回しながら歩いていると先程、自分が居た艦と似て異なるが、この艦もやはり自分の故郷の戦艦ではない事が窺える。

 

少年が通路を歩いていると、

 

『艦長より、総員に告ぐ。先ほど管理局にアドバイザーの派遣を打診した所、ガイアより、アドバイザーが派遣されることになりました。失礼が無いように対応を求めます』

 

この艦の艦長からの艦内放送があり、この艦に誰か来るみたいだ。

 

少年が引き続き、通路を歩いていると、

 

「ちょっと、そこの人」

 

「っ!?」

 

先程、自分が乗っていた艦に居た人物同様、白い服を着た女性が自分を見つけた。

 

「もしかして、貴方がさっき放送にあったアドバイザー?」

 

どうやらこの女性は自分と誰かを間違えているみたいだ。

 

このまま逃げてもいいのだが、それだと騒ぎが起きて捕まってしまう。

 

どうリアクションをとればいいのかを迷っていると、

 

クゥ~‥‥

 

お腹が鳴った。

 

故郷が水害に遭い、目が覚めてから何も食べていなかったのでお腹が空くのも当然だ。

 

「あら?お腹が空いているの?それだったら、何か食べる?」

 

女性の問いに少年は頷く。

 

「それじゃあ、此方にどうぞ」

 

その女性は少年を何処かへと案内した。

 

 

まほろばの医務官、石田幸華は、艦長からこの後、地球圏に戻る前に管理局と共闘し、管理局の根拠地であるミッドチルダを水没させようとしている未知の敵勢力との戦闘と水惑星アクエリアスのワープ阻止があるとの事で、彼女はこの後にあるであろう戦闘に備えて医薬品や生活物資の確認を行っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あら?」

 

そんな幸華がまほろばの艦内通路を歩いていると、白い塊のようなモノが動いていた。

 

「ん?何かしら?」

 

彼女が疑問に思っていると、

 

『艦長より、総員に告ぐ。先ほど管理局にアドバイザーの派遣を打診した所、ガイアより、アドバイザーが派遣されることになりました。失礼が無いように対応を求めます』

 

ギンガの艦内放送が流れる。

 

「アドバイザー‥‥もしかしてあの白い塊がアドバイザーの人なのかしら?」

 

幸華はギンガの放送を聞いてあの白い塊が管理局からのアドバイザーなのだと判断した。

 

「ちょっと、そこの人」

 

「っ!?」

 

幸華がその白い塊に声をかけると、塊はビクッと震える。

 

「もしかして、貴方がさっき放送にあったアドバイザー?」

 

幸華がアドバイザーなのか訊ねると、塊は困惑している様子だ。

 

そんな中、

 

クゥ~‥‥

 

アドバイザー?のお腹が鳴った。

 

「あら?お腹が空いているの?それだったら、何か食べる?」

 

幸華がそう訊ねると、塊は頷く。

 

「それじゃあ、此方にどうぞ」

 

幸華はアドバイザー?を連れて医務室へと向かった。

 

厨房は今も搬入された物資の仕分けが行われているので、人が少ない医務室に案内した。

 

「どうぞ、そこの椅子に座って‥‥そのローブ?を着たままだと食べにくいでしょう?外したら?」

 

(うーん、でもローブと言うよりも何かシーツみたい‥‥)

 

幸華がアドバイザー?にローブを取るように促す。

 

それと同時にアドバイザー?が纏っていたローブがシーツに見えた。

 

アドバイザー?の人は恐る恐る顔を隠していたローブを取る。

 

すると、シーツの下から現れたのは銀髪に群青色の肌を持つ少年の姿だった。

 

地球上には決して存在しない色の肌を持つ少年。

 

しかし、幸華はその肌の色を見ても驚く事は無かった。

 

ガルマン・ガミラスの人も青い肌を持っていたし、此処は魔法が存在する世界‥‥

 

地球とは異なる肌の色を持つ人が居ても不思議ではないと思っていたからだ。

 

その後‥‥

 

「ムシャ、ムシャ、ムシャ‥‥」

 

「そんなに慌てて食べなくても誰も取らないわよ」

 

幸華が用意した食事を少年は食べ始めた。

 

よほどお腹が空いていたのだろう、彼は物凄い速さで用意された食事を平らげて行く。

 

 

医務室で変わった肌の色をした少年が食事をしている頃、

 

トランクを持ったフェイトは再びまほろばの甲板に立つ。

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。アドバイザーとしてお世話になります」

 

甲板で待っていたギンガに敬礼するフェイト。

 

「お待ちしておりました。ハラオウン、アドバイザー」

 

出迎えたギンガはまず、フェイトを用意していた部屋に案内する。

 

「あっ、そう言えば‥‥」

 

「はい?」

 

「医務長さんも今は変わっているの?」

 

フェイトは思い出したかのようにギンガに現在の医務長について訊ねる。

 

良馬が艦長の時、医務長はリニスが務めており、そのリニスはかつてフェイトにバルディッシュを与え、魔法を教えてくれた師匠的な存在であった。

 

フェイトの使い魔であるアルフにとってもリニスは母のような存在であり姉のような存在でもあった。

 

「はい。リニスさんは良馬さんが艦長を務めている艦の医務長をしている筈ですから」

 

「そうなんだ‥‥それじゃあ、今の医務長さんってどんな人なの?」

 

「折角ですし、会って行きますか?もしかしたら、フェイトさんもお世話になるかもしれませんし‥‥」

 

「う、うん。そうする‥‥」

 

戦闘が起きれば、フェイトも負傷する可能性もある。

 

その際はフェイトもまほろばの医務長のお世話になるので、ギンガは医務長に挨拶をしておくか訊ねる。

 

フェイトもそれを了承して、医務長に挨拶するために医務室へと向かった。

 

 

「石田先生、居ますか?」

 

「はい。どうぞ」

 

ギンガが医務室の主である幸華に声をかけると医務室の中から幸華の声がしたので、ギンガとフェイトが医務室の中に入ると、医務室の片隅で食事をしている少年の姿が映った。

 

ただその少年の肌の色は地球人、ミッドチルダの住人と異なる肌の色をしていた。

 

「あ、あれ?君は‥‥誰?」

 

ギンガがこの見知らぬ少年の姿に戸惑っていると、

 

「あっ!!君、此処に居たの!?」

 

フェイトはその姿を見て思わず声をあげる。

 

「えっ?この子、フェイトさんの知り合いですか?」

 

「アクエリアスの水害で水没した世界で救助した子。さっき、ガイアの医務室から消えたって大騒ぎになって‥‥」

 

フェイトがギンガに少年の素性を伝えている中、フェイトとギンガの存在を認知した少年は慌てて椅子から立ち上がると幸華の背後に隠れる。

 

「えっと、艦長。そちらの方は?」

 

幸華は少年の行動に戸惑いつつもギンガにフェイトの事を訊ねる。

 

「あっ、此方の方は管理局からのアドバイザーの‥‥」

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」

 

フェイトは幸華に一礼しながら自己紹介をする。

 

「ご丁寧にどうも‥まほろばの医務長、石田幸華です。てっきりこの子が管理局からのアドバイザーなのだと思っていました」

 

幸華もフェイトに一礼しながら自己紹介をする。

 

「では、こちらの少年は、管理局からのアドバイザーではないと言う事なんですか?」

 

「はい。これからガイアは戦場に向かうので、要救助者であるこの子には艦から降りてもらおうとしていたんですが‥‥」

 

フェイトは少年をチラッと見ると、少年は完全に幸華の背後に隠れてしまう。

 

少年の行動を見るとどうやら此処から動きたくない様子だ。

 

「ど、どうしましょう?艦長」

 

自分の背後に隠れつつ白衣を握られている幸華自身も困惑しながらギンガに訊ねる。

 

「‥‥坊や、これからこの艦は戦場に‥怖く危険な事が起きる場所に行くから、降りた方が安全なんだけど‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガが少年に優しく問いかけるが、少年は首を横に振る。

 

「‥‥この子以外に救助した人は居ないのですか?」

 

ギンガはフェイトに他の救助者の有無を訊ねる。

 

「救助できたのはあの子、一人だけなの‥‥」

 

「そうですか‥‥」

 

ギンガはそれを聞いてかつて自分が次元漂流した時の事を思い出す。

 

あの時も無事に救助されたとは言え、知り合いが一人も居ない未知の世界に放り出された。

 

眼前の少年は自分が次元漂流した時よりも幼い。

 

不安に思うのは当然だ。

 

「分かりました。では、この子は暫くの間、まほろばで預かります」

 

ギンガは少年をまほろばで預かる事に決めた。

 

「えっ?いいの?ギンガ」

 

ギンガの決断にフェイトは慌てて訊ねる。

 

「はい。見た所、石田先生懐いているみたいですから」

 

「ギンガがそれで良いなら‥‥」

 

「石田先生、すみませんが暫くその子を医務室に置いてもらえますか?」

 

「は、はい。ただ、戦闘が始まる前には別室に移ってもらいます」

 

「分かりました」

 

戦闘が始まり、負傷者が出れば此処は怪我人で溢れる。

 

血塗れの人の姿を子供にはあまり見せたくはないし、医療行為中はこの子を構っている暇はない。

 

「坊やもそれでいいかな?」

 

「‥‥」

 

まほろばから降ろされないと言う事が分かったのか、少年は頷いた。

 

医務室での予想外な出会いがあった後、ギンガは改めてフェイトの為に用意した部屋に案内する。

 

その最中、フェイトはチンクに念話で行方不明になった少年がまほろばで見つかった事、

 

しばらくの間、少年は自分と同じくまほろばで面倒をみる事を伝えた。

 

「では、此方の部屋を使ってください。それと、以前使ったと思いますが、此方を使ってください」

 

フェイトを部屋に案内した後、ギンガはフェイトにヘルメットを始めとする女性乗員一式の装備品を渡す。

 

勿論、コスモガンは除かれる。

 

「うん。ありがとう」

 

フェイトは装備品一式を受け取る。

 

後は管理局からの出撃命令を待つだけとなった。

 

管理局の次元航行艦所属を示す制服から、防衛軍女性隊員の制服に着替えたフェイトはまほろばの艦橋へと上がる。

 

「管理局からアドバイザーとして乗艦したフェイト・テスタロッサ・ハラオウンさんです」

 

ギンガは艦橋メンバーにフェイトを紹介する。

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。しばらくの間、お世話になります」

 

フェイトは医務室の時同様、艦橋メンバーに自己紹介をして一礼する。

 

「艦長、管理局艦より通信です」

 

「内容は?」

 

「はっ、艦隊は出航後、第九管理世界?へと向かい、かの世界を占領している敵勢力の排除を行う‥‥以上です」

 

「了解したと伝えて」

 

「はい」

 

「艦長、出航についてだが、いきなりエンジンをフルスロットルにすると何かしらの問題が起こるかもしれねぇ。少しの間、海上航行をしてエンジンを慣らしてくれねぇか?」

 

修理が終わったとは言え、地球製の部品ではなく、管理局からの支給部品を使用していたので、エンジンを慣らしてからの出撃をしてくれと柳原がギンガに頼む。

 

「分かったわ。通信長、その旨も管理局に伝えて」

 

「了解」

 

メイリンが先ほどの通信内容と出航に関する旨をジャガーノートへと送信する。

 

 

ジャガーノート 艦橋

 

「艦長、まほろばから通信です」

 

「ん?まほろばからは何って言って来たんや?」

 

「まほろばから‥‥」

 

ジャガーノートの通信長はまほろばからの通信内容をはやてに報告する。

 

「分かった。ドックの方にも伝えてや」

 

「はい」

 

各艦それぞれの出航準備が整って行く。

 

ミッドチルダを救うための戦いが刻一刻と近づいていた。

 

 

第六十一管理世界にて、ディンギル軍を討伐するための艦隊の出撃準備が着々と進んでいるその頃、ミッドチルダでは‥‥

 

ミッドチルダ ベルカ地区

 

ベルカ地区では先のディンギル軍の空襲により、多くの負傷者・被災者が出たため、聖王病院には多くの怪我人が収容されていた。

 

また聖王教会広場には被災者のための炊き出しが行われており、沢山の人が訪れていた。

 

そんな中、

 

「っ!?」

 

カリムのレアスキル、プロフェーティン・シュリフテンが発動した。

 

彼女は急ぎ、執務室へと向かい予言の内容を羊皮紙に記し始めた。

 

「‥‥書けた‥でも、この内容は‥‥」

 

カリムは羊皮紙に書いた予言の内容を見て、顔をしかめる。

 

その内容は‥‥

 

 

生命の誕生となる水の世界と法の大地が交わる時

 

勇敢なる海の戦士、法の大地を守護するため、己の命を懸け法の大地を守護ス

 

 

羊皮紙にはそのように書かれていた。

 

「‥‥なんだか、嫌な予感がするわ。外れてくれればいいのだけれど‥‥」

 

カリムの予言は的中率が100%と言う訳ではないが、本局の崩壊を予知したあの予言から久しぶりに物騒な内容の予言にカリムは胸騒ぎを覚えたのだった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
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