星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百六十四話 ガルマン・ガミラス新たなる旅立ち&第九管理世界での戦後の出来事

 

 

第九管理世界の沖合にて、ジャガーノート、ガイア、そして管理局からの協力要請を受けたまほろばを始めとする管理局艦隊とミッドチルダを始めとする周辺にある管理世界の制圧を任務とするザールは率いるディンギル軍との戦闘が激闘を究め、双方に多大の犠牲を出す結果となった。

 

しかし、ティアナの懸命な索敵とまほろばの波動カートリッジ弾によって、ディンギル軍は艦隊旗艦の移動要塞母艦と補給中だった多くの艦艇を失い、ウルクへと帰還して行った。

 

管理局の最初の目的である敵勢力の排除については、敵の全てを撃破する事は叶わなかったが、少なくともミッドチルダ周辺からディンギル軍の脅威を取り除くことは出来た。

 

ディンギル軍との戦闘の最中、肩を負傷し応急処置を施すも、索敵の際に傷口が開き、出血のために意識を失ったティアナはまほろばに帰還後、格納庫に待機していた医療班たちの手で医務室へと運ばれて本格的な手術を受ける事となった。

 

「石田先生、副長の具合は‥‥?」

 

ギンガが石田にティアナの容体を訊ねる。

 

「飛行長の応急処置が完璧だったおかげで、出血量も最低限で済みました。傷口は縫合が終わっており、今は輸血をしているので、明日にでも目を覚まします」

 

「そう、よかった‥‥」

 

ティアナの命に別状がない事を知り、ギンガはホッと胸をなでおろす。

 

ディンギル軍が去ったので、停止していた救助活動が再開された。

 

エネルギー補給が終わったまほろばの航空隊も念のために周辺を哨戒してディンギル軍を警戒する。

 

今回の戦闘で管理局は巡航艦三隻、警邏艦一隻を失い、残存艦に収容された負傷者の人数はかなり多く、艦内の医療設備だけでなく、管理世界の病院で本格的な治療を必要する者も居た。

 

 

ジャガーノート 艦橋

 

「艦長、負傷者の集計ですが大まかですが終わりました。やはり、一度どこかの管理世界の病院に搬送する負傷者の人数が多すぎて本艦を含めて他艦の収容能力ギリギリとなっています」

 

グリフィスがはやてに救助活動における経過報告を伝える。

 

残存艦が警邏艦ばかりと言う事で医務室の収容能力は次元航行艦や巡航艦よりも低い。

 

次元航行艦であるジャガーノートの医務室でも医療班たちが慌ただしく動き回っている。

 

「敵勢力の撃破‥‥については達成できましたが、もう一つの任務‥アクエリアスの次元転移阻止について、大勢の負傷者を抱えての作戦続行は不可能なのではないでしょうか?」

 

はやてたちの任務は敵勢力の排除とアクエリアスのワープ阻止。

 

敵勢力は排除出来たが、肝心なもう一つの任務‥‥アクエリアスのワープ阻止がある。

 

ディンギル軍との戦闘で大勢の負傷者が出た。

 

戦力も低下した。

 

そんな状況でもう一つの任務をこなす事が出来るのか?

 

はやてはグリフィスの言葉を聞き、どうすべきか考える。

 

『はやて、君たちは負傷者たちを連れてミッドに戻ってくれ』

 

「えっ?でも、クロノ君は?」

 

モニターにクロノの姿が映ると、ジャガーノートと警邏艦群については負傷者を収容してミッドチルダへ戻る事を勧めた。

 

『大勢の負傷者を抱えてのこれ以上の任務続行は無理だ。アクエリアスの次元跳躍阻止は僕たちが引き続き行う』

 

『では、まほろばもガイアに同行します』

 

すると、ギンガもリモート会議に参加してまほろばはガイアと共にアクエリアスのワープ阻止に参加する旨を伝えた。

 

ガイアに収容した負傷者はジャガーノートへと移送し、ジャガーノート以下の管理局の艦艇は戦いによって傷ついた局員たちを乗せてミッドチルダへの帰還行動に入った。

 

こうして第九管理世界の戦いは完全に終わりを告げた。

 

一方、恐るべき兵器であるハイパー放射ミサイルの防御策はまだ解決されていなかった。

 

まほろばにとって戦況は有利なモノではなかった。

 

そして、乗組員たちは当然来るべきであろう次なる戦闘に向けて整備に万全を尽くしていた。

 

「いいかぁ、お前ら!!次の戦闘は敵との決戦になるかもしれねぇ!!エンジンの調節は戦局を左右する重要なポイントだ!!ネジ一本の締め忘れがあたしらの運命に関わるって事を忘れるな!!」

 

まほろばの機関室では柳原が作業をしつつ機関部員たちを 咤激励する。

 

医務室ではティアナを始めとして負傷者の手当てが終わり、一息ついた時、

 

「人は他人の為に死ねるの?」

 

「えっ?」

 

少年が石田に変な質問をした。

 

「急にどうしたの?」

 

「さっきの戦闘で自分からミサイルに当たりに行った艦がいただろう?」

 

少年は先ほどの戦闘でガイアをハイパー放射ミサイルから守った巡航艦の行動だろう。

 

「ああ、それね‥‥うーん‥ミッドチルダでは分からないけど、私たちの故郷である地球って言う星では、他人の幸せに尽くす事が人として大切な事なのよ」

 

「‥‥自分の幸せの為ならどんなことをしても良いって言うけどな‥ディンギルの人たちは‥‥」

 

「ディンギル‥‥」

 

少年は自分の故郷の人たちの行動をポツリと呟く。

 

そして、少年の故郷の星の名がディンギルと言う名前なのだと石田は知った。

 

第九管理世界でまほろばがディンギル軍と激しい戦闘を行っていた頃、地球圏のケンタウロス座アルファ星では、星の周辺に多数の艦隊反応を捉えた。

 

「司令官、ヤマトから連絡のあったガルマン・ガミラス艦隊を確認しました」

 

アルファ星周辺に出現した艦隊はデスラー率いるガルマン・ガミラスの残存艦隊であった。

 

「デスラー総統の旗艦に連絡を取れ」

 

「えっ?デスラーとですか?」

 

ラップの命令にオペレーターは聞き返す。

 

「そうだ。かの艦隊は長い旅をして此処まで来たのだ。物資や艦の補給が必要かもしれないだろう?」

 

「ですが、そこまでの事をしてやる相手ですか?彼らは一度、地球を‥‥」

 

「かつては君の言う敵であったかもしれないが、ガルマン・ガミラスは地球の数少ない同盟国だ。例え、星が滅んでも彼らは生きている。生きている限り、彼らは地球の同盟国なのだ」

 

「は、はい」

 

ラップの言葉を聞き、オペレーターはデスラーが座上するノイ・デウスーラⅡと交信を行う。

 

「こちら、地球連邦。ケンタウロス座アルファ星基地。接近中の艦隊はガルマン・ガミラス艦隊でよろしいか?どうぞ」

 

『こちら、ガルマン・ガミラス艦隊旗艦、ノイ・デウスーラⅡで間違いない。どうぞ』

 

「地球連邦政府はガルマン・ガミラス一行の地球圏の航行を許可する。その上で、現在不足している物資、艦の補修・補強があれば、当惑星基地のドックにて行える用意があるが、いかがなさるか?」

 

地球側のこの返答にノイ・デウスーラⅡの通信士は困惑し、

 

『デスラー総統に意見を求める。暫し待たれよ』

 

と、デスラーに指示を求めた。

 

「そうか、地球側が‥‥」

 

「はい。いかがいたしましょう?」

 

デスラーは艦隊の現状から確かに物資の補給は必要であった。

 

銀河系中心部から残存艦を集結させて、第二の故郷であるガルマン・ガミラスの荒廃と滅亡を確認した後、偶然にもヤマトと遭遇し、娘の待つ地球圏までの旅は艦にも乗員たちにも疲労を蓄積させた。

 

そんな中で、かつて自分が移住しようとして滅亡させようとしていた地球がこうして自分たちに救いの手を差し伸べようとしている。

 

「‥‥地球側の好意をありがたくうけさせていただこう」

 

「はっ、承知しました」

 

デスラーからの指示を受けた通信士はアルファ星基地へと返信をする。

 

「こちら、ノイ・デウスーラⅡ。地球側の好意、ありがたく受けさせていただく」

 

『了解。では、艦隊は当基地の管制に従って着陸をしてもらいたい』

 

アルファ星基地はガルマン・ガミラスの艦隊の着陸管制を行い、艦隊を基地へと誘導した。

 

ノイ・デウスーラⅡがアルファ星基地に着陸すると、基地司令官のラップがデスラーを直接出迎える。

 

「地球防衛軍、アルファ星基地司令官のジャン・ロベール・ラップであります。遠路ご苦労様です」

 

ラップが敬礼しながらデスラーに自己紹介をする。

 

「うむ、出迎え感謝する」

 

その後、ラップとデスラーは司令官室にて今後の補給計画の確認など事務的な手続きを行った。

 

「総統、お疲れでございましょう。あとはこのタランが行いますので、総統は少しお休みになられた方がよろしいのではないでしょうか?」

 

副官のタランがデスラーに休息する旨を進言する。

 

「だが、総統たるこの私が、兵士たちが働いている中で休む訳にはいかん」

 

しかし、デスラーは他の将兵たちが働いている中、トップである自分がのうのうと休むことを拒否する。

 

「将兵たちも交代で休息をとっております。地球に辿り着いた後、総統にはまだ成すべき事があります」

 

「‥‥」

 

タランの言う『成すべき事』‥‥それはデスラー自身もちゃんと理解している。

 

二度も故郷となる星を失ったが、自分を含めてガルマン・ガミラスの民族全てが死に絶えた訳ではない。

 

生きているからには再び新たなる故郷となる星を見つけなければならない。

 

自分に付き従っている将兵たちはそれを信じて此処まで共に来てくれた。

 

ならば、自分はガルマン・ガミラスの総統として彼らの希望に答えなければならない。

 

「‥‥分かった。暫しの間の事、頼んだぞ。タラン」

 

「はっ!!お任せください!!」

 

デスラーはノイ・デウスーラⅡの艦内にある自室へと下がった。

 

「やはり、お疲れなのでしょう。デスラー総統は‥‥」

 

デスラーが艦に戻った後、ラップは残ったタランにデスラーの事について訊ねる。

 

「はい。私たちとしましてもこれで二度、故郷の星を失った訳ですから」

 

ガミラス出身者はタランの言う通り、ガミラス星、そしてガルマン星と二度にわたり故郷の星を失った事になる。

 

デスラーとしてもやはり、ショックを大きいだろう。

 

しかし、総統と言う地位であるからにはそれを表に出す事は出来ない。

 

彼の精神的疲労はかなりのモノの筈だ。

 

「それで、タラン将軍。地球では未確認なのですが、ガルマン・ガミラスが今回このような事になったと言う事はボラー連邦の方も‥‥」

 

「私たちもボラー連邦の領内深くを確認した訳ではありませんが、恐らくは‥‥」

 

タランもガルマン・ガミラスがこのような惨事に見舞われた事から、ボラー連邦も同様な被害があったと推測している。

 

「それで、バジウド星系を始めとしてガルマン派、そして親ボラー派の星間国家の様子はどうなっているのでしょうか?」

 

「今回のガルマン・ガミラス崩壊の件を受けて独立する星間国家、引き続き我々と同盟を続けてくれる国家、敵対する国家、様々な対応です」

 

「なるほど‥‥」

 

(バジウド星系は元々ボラー連邦の星間国家が多かったからな‥‥)

 

(ガルマン・ガミラスが崩壊したことを知るとなると、タラン将軍の言うように、ガルマン・ガミラスからの独立、引き続き同盟を続ける国家‥‥まぁ、地球もそうだが、厄介なのは、やはり親ボラー派の星間国家だな)

 

(一時はバジウド星系を平定する事が出来たが、今回の一件で再び親ボラー派が息を吹き返すかもしれない)

 

(いや、ガルマン・ガミラスから独立した星間国家も油断はならないな)

 

(当面は、やはりこのアルファ星とバース星が地球にとっての最前線になるな)

 

ラップは銀河系中心部で睨みを利かせていたガルマン・ガミラスが事実上崩壊した事で、バジウド星系で再び宇宙間戦争が起きるのではないかと不安視した。

 

やがて、物資の補給、艦の補修・補強が終わったガルマン・ガミラス艦隊はアルファ星を出航し、地球へと向かって行った。

 

太陽系内は地球の絶対制宙権内なので、ガルマン・ガミラス艦隊は襲撃に警戒することなく航行する事が出来た。

 

月面にあるガルマン・ガミラス大使館でも、デスラーの生存と残存艦隊が月に向かっている知らせは地球連邦政府から通達されており、デスラー生存の知らせを聞いた時、ジュラは胸をなでおろし、思わず涙腺が緩んでしまった。

 

ガルマン・ガミラス艦隊は地球ではなく、ジュラが居る月面に着陸した。

 

そして、ガルマン・ガミラス大使館にてデスラーはジュラとの再会を果たした後、地球連邦政府との会見に臨んだ。

 

残念ながら地球圏にはガルマン・ガミラス人が暮らせる環境の星は存在しておらず、デスラーたちガルマン・ガミラスの生存者たちは新たな故郷となる星を捜すための長い旅に出る事になる。

 

デスラーは今回の旅に娘のジュラを連れて行くつもりはなく、地球がガルマン・ガミラスとの同盟を継続してくれるというのであるならば、ジュラを引き続き大使として月面に残してほしいと頼んだ。

 

デスラーの言葉にジュラは「えっ?」と戸惑う。

 

「ジュラ、今度の旅は前回の様な旅とは限らない。この宇宙を幾年も彷徨うかもしれん過酷な旅になるだろう。そんな旅にお前を連れて行く訳にはいかん」

 

「そんな‥お父様‥‥」

 

「ジュラ、私の心が分かると言うのなら、どうか聞き分けて欲しい」

 

「‥‥は、はい」

 

「地球の民よ。ジュラを‥‥娘を頼む」

 

デスラーは地球側の大使たちに対して頭を下げてまでジュラの事を地球に託した。

 

あのデスラーが頭を下げてまで頼んで来たので、地球側としても断る訳にはいかなかった。

 

「分かりました。デスラー総統。ご息女は地球が責任を持って預からせて頂きます」

 

地球側の大使たちもデスラーに頭を下げてジュラを地球で保護する事を確約した。

 

「デスラー総統、実は今回の総統の来訪に当たって地球連邦政府・地球防衛軍より、ガルマン・ガミラス側へお渡ししたい物がございます」

 

「ほう、何かね?」

 

「こちらです」

 

大使の一人が端末を操作するとモニターにホワイトフォーレストが映し出される。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「これは、彗星帝国の本体?」

 

ホワイトフォーレストとして改造された姿でも、ソレはデスラーに見覚えがある建造物であった。

 

「はい。地球との戦いで下部だけとなった彗星帝国の本体を我々は長い時間をかけて修復しました。今はホワイトフォーレストと名を変えて地球防衛の移動要塞として使用しています。ガルマン・ガミラス崩壊の知らせとデスラー総統の生存と地球圏への来訪の報告を受け、地球連邦政府と防衛軍はガルマン・ガミラスにこのホワイトフォーレストを無期限で貸与する事を決めました」

 

デスラーが地球圏に来る前、地球連邦政府と防衛軍はガルマン・ガミラスの崩壊とデスラーの生存の知らせを聞いた時、デスラーが再び新たな故郷となる星の探査の旅に出る事を見越して、ガルマン・ガミラスへホワイトフォーレストを無期限で貸与するための防衛会議を開いていた。

 

そして、長い旅に耐えられるようにとホワイトフォーレストの貸与を決めていた。

 

勿論、受け取る、受け取らないと言う最終的な決断はデスラーに決めてもらう。

 

「‥‥」

 

「艦隊で宇宙を旅するよりは民たちの生存確率が上がる筈です」

 

大使はデスラーに宇宙艦船での旅よりも移動式の宇宙要塞の方が生存率が上がる旨を伝えるが、デスラーとしては彗星帝国で総参謀長のサーベラーの策略を受けた屈辱があるので、彗星帝国本体の姿に対してはあまりいい思い出はない。

 

しかし、地球側の大使が言うように今度の旅もいつになったら終わるのか分からない未知の旅‥‥

 

宇宙艦船で旅をするよりもあの彗星帝国の本体で旅をした方が、生存率は上がる。

 

生存率があがるならば、新たな故郷となる星も発見できる可能性も高い。

 

「重ね重ね地球側の配慮に感謝する」

 

こうして、ガルマン・ガミラスと地球との間にホワイトフォーレストの無期限の貸与の正式な調印が交わされ、ガルマン・ガミラス艦隊はホワイトフォーレスト内にあるドックへと次々と入港した後、新天地を求めての大航海へと旅立って行った。

 

 

一方、第九管理世界での戦いにギリギリながらも勝利して、敵勢力の排除に成功した管理局の艦隊は、ガイアとまほろばは敵の残存勢力を追尾しつつアクエリアスのワープ阻止へと向かい、ジャガーノート以下の残存艦はこの戦いによって負傷した局員たちを乗せてミッドチルダへと向かっていた。

 

ミッドチルダに向かっている中、はやては今回の戦闘報告をミッドチルダのリンディにいれる。

 

『そう、敵勢力は何とか排除することが出来たのね』

 

「はい。決定打だったのは、まほろばの長距離射撃と艦載機による索敵でした。それに戦闘に関してもやはり、まほろばの艦載機による戦果が大きかったと思っています」

 

はやては宇宙空間で運用できるまほろばの艦載機が無ければ、この戦いは短期決戦で管理局側の敗北で終わっていたと思っていた。

 

『どういう事かしら?』

 

「こちらの映像を見て下さい」

 

口や文字だけでは分かりにくいと判断したはやては録画していた映像をリンディに見せた。

 

彼女の下には次々と撃墜されていく敵の水雷艇の光景があった。

 

しかし、敵の護衛機がつくと戦況は一転して、まほろばの艦載機たちも護衛機の相手と水雷艇の撃墜の両方は不可能だった。

 

あと一隻、艦載機を搭載している地球の戦艦もしくは空母が居れば、敵の攻撃を完全に防ぐ事が出来ただろう。

 

迎撃網を突破した敵の水雷艇部隊は管理局の巡航艦を撃沈した。

 

その後、いきなりの反転をして撤退をすると、その間に管理局側は救助活動を行うが、そこを敵の大型戦闘機が強襲し、救助活動中の局員に大勢の犠牲者を出す結果となり、警邏艦も一隻撃沈された。

 

『救助活動中に攻撃を仕掛けて来るなんて‥‥』

 

リンディも敵のこの行動には憤慨した。

 

しかし、この大型戦闘機隊はまほろばに攻撃を仕掛けようとして三式弾の砲撃で壊滅的被害を受けて残存機は踵を返すように撤退していく。

 

そこをティアナのコスモゼロが追尾して行く。

 

やがて、敵本隊の位置を特定したのか、まほろばの主砲が旋回し、砲身の仰角があがるとそこから十五本の光弾が放たれる。

 

『まほろばの攻撃は敵に届いたの?』

 

「はい。後の報告でこのまほろばの砲撃は外れることなく、敵本隊を葬りました」

 

『見えない位置からの攻撃を一発も外す事も無く‥‥ソレは間違いないの?』

 

「はい。敵の行動から間違いありません」

 

『‥‥』

 

リンディは、はやての報告を聞いて驚愕する。

 

「その後、ガイアとまほろばを除く本艦以下の残存艦は負傷者を乗せてミッドへの帰還行動に入りました」

 

『第九管理世界での戦いではかなりの負傷者が出たみたいね』

 

「ええ、警邏艦だけではとても負傷者を収容しきれず、本艦にも収容しましたが、負傷者を連れてアクエリアスの次元跳躍阻止は不可能だと判断し、ガイアとまほろばが引き続き、アクエリアスの次元跳躍阻止のために向かいました」

 

『分かったわ。病院と治療体制についてはこちらで手配しておくわ。はやてさんたちは無事にミッドに戻って来てね』

 

「了解です」

 

映像で一連の戦闘報告を受けたリンディは、はやてとの通信を切り、病院の手配を行った。

 

そして、手配が終わるともう一度、はやてから齎された戦闘記録の映像を見返す。

 

宇宙空間でも使用可能な戦闘機‥‥

 

敵もミッドチルダ空襲の際、戦闘機を使用していた。

 

救助活動中に襲撃して来た機体とミッドチルダを空襲してきた機体は同一の機体と言う事から、あの機体は大気圏内、宇宙空間の両方で使用できる機体である事が分かる。

 

そして、敵が使用した戦闘機と同等のモノをまほろば‥いや、もう一つの地球の軍は保有し運用している。

 

リンディもこれらの現実から、フェイト同様管理局もこうした戦闘機を開発した方が良いのではないかと思い始めていた。

 

(一機だけでも技術調査の為、譲渡してもらえないかしら?)

 

しかし、管理局には大気圏内・宇宙空間の両方を飛行できる戦闘機の製作ノウハウなど当然なかった。

 

一見、運用空間を見る限り、次元航行艦と変わらないかもしれないが、大きさがあまりにも異なる。

 

MS機関の研究開発によって今では小型の警邏艦もMS機関を使用しているが、戦闘機となるとソレを更に小型化しなければならない。

 

今日、明日、で必要となるモノではないが、それでも今回の一件で管理局はまたもや戦力の再構築を迫られる事になる。

 

その際、こうした戦闘機の導入を求めるチャンスだとリンディは思っていた。

 

“海”に関しては今回の一件とこの戦闘記録の映像を見せれば説き伏せる事は出来るだろう。

 

しかし、“空”にかんしては反発が予想される。

 

だが、ミッドチルダ空襲の際、“空”の空戦魔導師隊の戦果はそこまで誇れるモノではなかった。

 

逆にミッドチルダの要衝を破壊され、避難に必要な船団に壊滅的な打撃を与えられてしまった大きな失態がある。

 

その点を突けば“空”も黙らせることが出来るかもしれない。

 

反発が予想される“空”を黙らせて大気圏内・宇宙空間の両方で運用出来る戦闘機の開発を行うのはこの機会しかない。

 

時間が経てば経つほど、戦闘機の開発チャンスは失われてしまう。

 

だが、開発をするにしてもゼロからの開発ではなく、最初からサンプルがあれば開発時間を大幅に短縮できる。

 

とは言え、無償で譲渡なんて出来る筈もない。

 

何か交換条件を出さなければならない。

 

しかし、それを行うにはまずは目の前の事態を解決しなければならないが、ミッドチルダで待つリンディには作戦が成功するように祈るだけだったので、作戦の成功を見越してリンディは何とかしてまほろばから戦闘機の譲渡を模索するのであった。

 

そして、同じ頃ベルカ地区にある聖王教会では‥‥

 

「失礼します。騎士・カリム」

 

シャッハがカリムの執務室へと入って来た。

 

「あら?どうしたの?シャッハ」

 

「先ほど、第九管理世界の近くで管理局と敵勢力との間で大規模な戦闘があったみたいです」

 

「敵勢力って先日、ミッドチルダを空襲した輩?」

 

「はい」

 

「それで、どうなったの?」

 

「管理局側が勝利したみたいです。その戦いには騎士はやても参戦したみたいです」

 

カリムは管理局を公職追放された身であり、その後は管理局と深く関わっていないが、シャッハは管理局の情報は常に仕入れていた方が良いと思いカリムの義弟であるロッサを通じて管理局の情報を仕入れていた。

 

「はやてさんも!?それで、はやてさんは無事なの?」

 

「はい。今、ミッドチルダに戻っている最中です」

 

「敵との戦闘に勝利して、はやてさんがミッドに戻っている最中と言う事は、ミッドは救われたって事かしら?」

 

「いえ、一概にそうとも言えないみたいです」

 

「どういう事?」

 

「今回の戦闘の勝利はあくまでもミッド周辺に居る敵勢力を排除しただけであって、例の水世界は未だにミッドに近づいているみたいです。そしてその水世界にはクロノ提督の艦が今、向かっているみたいです」

 

「クロノ提督が‥‥」

 

シャッハからの話を聞いてカリムは神妙な表情で考え込む。

 

(はやてさんがミッドに戻ってきていると言う事は予言の中にあった『海の戦士』は、はやてさんじゃない‥‥)

 

(ミッドに近づいている水世界に向かったのはクロノ提督‥‥ま、まさかっ!?)

 

カリムは先日発動したレアスキルの予言内容と現状を照らし合わせて、

 

「シャッハ、はやてさんがミッドに戻って来たら急いで呼んで頂戴!!」

 

「しょ、承知しました」

 

カリムの様子にただならぬ雰囲気を読み取ってシャッハは、カリムの言う通りにした。

 

はやてたちが負傷者を乗せてミッドチルダに帰還している中、アクエリアスのワープ阻止を目的とするガイア、まほろばでは、アクエリアスに向かって航行していた。

 

航行中、今後の方針を決めるために艦の幹部たちによるリモート会議が行われていた。

 

ギンガ、アルバート、うらら、ノイマン、そしてフェイトはまほろばの中央作戦室に居り、ティアナはまだ医務室に居る。

 

中央作戦室のモニターにはクロノが映っている。

 

そして、中央作戦室にある床面大パネルにはアクエリアスの推定軌道が表示されていた。

 

あくまでも推定位置なのだが、アクエリアスはかなりミッドチルダに接近している。

 

「アクエリアスは依然二十四時間ごとの周期でワープを続けており150光年の距離でミッドチルダに接近しています。現在までにアクエリアスは十八回目のワープを終えてミッドチルダから三百光年の位置にいます」

 

ノイマンがアクエリアスの現状を報告する。

 

クロノを含めて一同が頷く。

 

「あと二回のワープを終えると、ミッドチルダから百三十億キロメートルの位置に現れ、そこからは二分の一光速の速度で進み、二十四時間後にはミッドチルダの至近距離を通過します」

 

(予測されていたとは言え、残された時間はあまりにも少ないな‥‥)

 

第九管理世界での戦いでディンギル軍を敗走させた事で当面の危機は去った。

 

しかし、ディンギル軍によって宇宙へ逃れる術を失ってしまったミッドチルダの住民たちにとって元凶となっているアクエリアスをどうにかしなければどの道待っているのは破滅しかない。

 

『もし、そのような事態になればミッドチルダは水没してしまう。二十回目の次元跳躍を許してしまったら万事休すだ』

 

「二十回目のワープが終わるまでにアクエリアスへと到達し、ワープを止めなければなりませんね」

 

ノイマンの説明とアクエリアスの現状を聞き、クロノとギンガは時間の無さを痛感する。

 

「十九回目のワープ明けの地点ならば、ミッドチルダから150光年の位置だから、ミッドチルダに至近距離に到達するまで三百年の時間はある。流石にそれくらいの時間があれば、管理局でも十分に対応出来るはずだ」

 

アルバートがクロノに訊ねる。

 

『ああ、流石に三百年の時間が残されるならば管理局でも十分に対応は可能だ』

 

「アクエリアスはあと二時間ほどで十九回目のワープを終える筈。時間的には十九回目のワープを止めるのは無理‥でも、ワープアウト地点で先回りをして二十回目のワープを止める事が出来れば‥‥」

 

規則的なワープの為、ワープアウト地点の特定は直ぐに出来る。

 

当然敵も二十回目のワープを行おうと準備するだろうし、敵艦隊を排除した事から敵も此方の存在を認知している為、迎撃の用意をしているかもしれない。

 

また苛烈な戦いが予測されたが、此処で逃げればミッドチルダに待っているのは破滅‥‥

 

逃げ出す訳にはいかなかった。

 

「例のミサイルの防御対策は?」

 

「あと一息です」

 

ギンガはアルバートに対ハイパー放射ミサイルの対策について訊ねる。

 

彼曰くもうすぐで完成みたいだ。

 

「技師長、次の戦いまでに絶対に間に合わせて」

 

「了解です」

 

「航海長、ワープの準備」

 

「了解」

 

方針が決まりガイアとまほろばはアクエリアスの十九回目のワープアウト地点に向けてワープした。

 

ガイア、まほろばが二十回目のアクエリアスのワープ阻止のためにワープアウト地点へ向かう少し前‥‥

 

第九管理世界での戦いで旗艦である移動要塞母艦と多くの僚艦を失い失意のままウルクに帰還するディンギル軍の残存艦隊。

 

旗艦であるガルンボルストの艦橋は重苦しい空気となっている。

 

いや、ガルンボルストだけでなく残存艦隊全ての艦艇で同じ空気だろう。

 

「殿下‥‥」

 

そんな中、ガルンボルストの通信士がザールに恐る恐る声をかける。

 

「なんだ?」

 

「無線傍受をした結果、敵の今後の動きが判明いたしました」

 

「報告しろ」

 

「はっ、敵は先の戦いで大半が根拠地へ引き返した模様です」

 

「ほぅ‥アクエリアスによって水没するであろう星に戻ったか‥‥しかし、此処で諦めて水没する運命を受け入れるのか?それとも数少ない宇宙船で一部の住民だけを乗せて宇宙へ逃げるのか?」

 

「それは分かりませんが、二隻の戦艦が我々を追っているとの事です」

 

「二隻だと‥フッ、我々も随分と舐められたモノだな。それで、その愚か者共の艦名は判明しているのか?」

 

「はい。ガイアとまほろばと言う艦名みたいです」

 

「ガイア‥まほろば‥‥」

 

「はい。それにまほろばに関しては、あの砲撃をしてきた艦みたいです」

 

ガルンボルストの艦橋にあるモニターにはまほろばの姿が映し出される。

 

「‥‥」

 

通信士の報告にザールは険しい表情となる。

 

「戦術長」

 

「はっ」

 

「敵が‥まほろばが使用したあの兵器は一体なんだ?」

 

ザールは戦術長にまほろばが移動要塞母艦に行った砲撃についてその正体を訊ねる。

 

通常の砲撃程度であそこまでの大爆発なんて考えられない。

 

まほろばが使用した砲弾は、自分たちが使用しているハイパー放射ミサイルみたいに何らかの絡繰りがあるのではないかとザールは思ったのだ。

 

「はっ、ただいま科学班が分析を行っておりますが、恐らく波動エネルギーが砲弾に仕込まれていたモノと思われます」

 

「波動エネルギーだと!?」

 

「簡単に言えばワープのエネルギーです。ワープエンジンのエネルギーを集約して、電気的な圧力でカートリッジ状の弾頭の中に封じ込めたのでしょう」

 

「バカな!?そんな事が可能なのか!?」

 

ザールとしてはそんな兵器が存在するなんてとても信じられなかった。

 

ワープエンジンのエネルギーはあくまでもワープをするためだけのものであり、そのエネルギーをまさか兵器に転用するなんて一体誰が思いつき、実際に兵器に転用出来るのかと信じられなかった。

 

「殿下、冷静に結果を受け入れなければなりません。データがそのような結果を出している以上、我々には不可能と思われている事でも彼奴等の兵器科学者‥いえ、まほろばの兵器開発者はそれを何らかの方法で兵器として転用することに成功し、それを我々に使用してきたのです」

 

「ぬぅ~まほろばめ!!少し甘く見ていたが恐るべき相手だ‥‥」

 

「殿下、敵が使用したこの兵器についてルガール大総統に報告なさいますか?」

 

「っ!?」

 

戦術長から発せられた父の名を聞き、ザールはビクッと身体を震わせる。

 

そして、彼の胸の中を一瞬のためらいが走り抜ける。

 

やがてそれは恐怖の感情へと変わる。

 

実の父とは言え、此処までの大敗北の詳細が知られたら司令官を解任されるかもしれない。

 

いや、解任だけならまだマシな方だ。

 

軍規と士気を維持するために自分を見せしめのために処刑するかもしれない。

 

ザールにとっての母‥つまりルガールにとっての妻、もう一人の息子が死んでも涙一つ見せなかったのだから、自分を処刑することくらい平気でやりそうだった。

 

「‥‥いや、やめておこう。客観的な戦果のみを報告すればそれで良い。全艦、ウルクに向けてワープ態勢に入れ」

 

「はっ!!」

 

ガルンボルスト以下の残存艦隊はウルクに向けてワープに入った。

 

ザールは自分たちに壊滅的な打撃を与えたまほろばの艦長が、ルガールの言った弱くて滅びて当然と言い放った女性であった事を知る由も無かった。

 

やがて、ワープアウトしたディンギル軍残存艦隊の前に三つのリングを持つ青く、巨大で、自分たちの故郷を滅ぼした星、水惑星アクエリアスとそのアクエリアスをまるで操縦しているかのように航行しているウルクの姿があった。

 

速度を落とし、艦隊はウルクへと帰投する。

 

「大総統、ルガール殿下が只今帰還なさいました」

 

「うむ‥‥帰投次第ルガール将軍には総統府へ出頭を命じろ‥‥戦況報告をさせるのだ」

 

「承知しました」

 

幕僚の一人はディンギル軍式の敬礼をして、ルガールの命令をドックへと伝えた。

 

ザールがウルクへと戻り、ガルンボルストから降りると、

 

「ルガール将軍。帰投後直ちに総統府へ出頭する様に大総統からの御命令が出ております」

 

「分かった」

 

ザールはエアーカーでドックから総統府へと向かう。

 

そして、総統府内にある司令室へと赴く。

 

司令室では左右に複数の幕僚たちが控えており、中央の指揮卓の前には自身の父親であり、ディンギルの国家元首である大神官・大総統の肩書をもつルガールの姿があった。

 

ルガールを前にザールはディンギル軍式の敬礼をする。

 

例え父親であっても幕僚たちの前では君臣の礼をしなければならない。

 

「ルガール将軍。ミッドチルダの制圧作戦の戦果はどうなっておる?」

 

ルガールは早速対ミッドチルダ制圧作戦についての戦況報告を求める。

 

心の中でザールは見抜かれまいと思いつつこれまでの戦果を報告する。

 

「大総統、我が艦隊はミッドチルダとその周辺の惑星に巣食う敵艦隊、敵基地を攻略し、宇宙への脱出路を完全に封鎖いたしました。しかし、その封鎖網とは別方向から侵攻して来た艦隊と交戦。中型艦三隻と小型艦一隻を沈める戦果を出しましたが、当方も封鎖作戦と戦闘によって大半のエネルギーと物資を消耗した結果、帰還もやむなき判断としてウルクへ帰投した次第であります」

 

「うむ、我らの進路を阻む者はことごとく殲滅しなければならぬ」

 

「はっ」

 

「諸君、アクエリアスのワープは当初の予定通り進んでおり、あと二回のワープで我らの作戦は完遂する。ウルクの残りエネルギーも少ない。万が一にもアクエリアスがミッドチルダの至近距離に進出しなければ、それは我々の破滅を意味する」

 

ルガールが周囲を見渡しながら残りの作戦について言うとザールを始め幕僚たちは緊張した面持ちとなる。

 

自分たちは圧倒的な有利な状況の中でミッドチルダを制圧しようとしているのだが、ルガールの言葉を聞き最後の最後まで油断できない状況であると認識させられた。

 

「私はこれより、作戦の成功を祈るために神殿に赴く‥ルガール将軍共に参れ」

 

「は、はい」

 

ルガールはザールを伴ってウルクの最後部にある山の上の神殿へと赴いた。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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