星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百六十六話 アクエリアスの戦い

 

 

ミッドチルダを水没させようとしているアクエリアスのワープ阻止に向かったガイア、まほろばと異なり、第九管理世界での戦いで負傷した局員たちを乗せたジャガーノート以下の管理局の残存艦艇は母港であるミッドチルダへと無事に戻って来た。

 

高度を徐々に下げて大気圏内に入り、雲の下に広がるクラナガンの姿がジャガーノートの肉眼でも段々と確認できる高度になってくる。

 

クラナガンは先日、ディンギル軍による空襲であちこちに爆撃によって生じたクレーターや破壊されたビル群の姿があった。

 

「映像で見ましたが、こうして直接目で見ると、酷いモノですね」

 

ジャガーノートの艦橋で副長のグリフィスがクラナガンの惨状についての感想を述べる。

 

「空戦魔導師隊も必死になって防衛に当たったみたいやけど、いくらバリアジャケットを着た空戦魔導師隊でも次元の海と大気圏内の両方に対応できる戦闘機相手じゃあ、つらい戦いになったやろうな‥‥」

 

はやてもディンギル軍と戦った“空”の空戦魔導師たちの苦労の心中を察する。

 

(なのはちゃんやシグナムたちは大丈夫やろうか?)

 

ミッドチルダに居たなのはやシグナムたちもあの戦いに駆り出されていた筈だ。

 

はやては親友たちの身を案じた。

 

残存艦隊はそれぞれ空港へと着陸態勢を取るが、空港もディンギル軍からの爆撃でクレーターが出来て、空港施設も破損していた。

 

空港に停泊していた避難用の次元航行船、管理局の次元航行艦も被弾して使い物にならなくなったが、はやてたちがミッドチルダに帰還した時は、クレーターや施設は完全に直ってはいなかったが、破壊された次元航行船の残骸は撤去されていたので、ジャガーノート以下の艦艇は無事に着陸できた。

 

空港では既に沢山の救急車両がリンディの手配によって空港で待機しており、負傷者たちは次々と艦から救急車へと移乗して病院へと運ばれた。

 

「ふぅ~これで一区切りついたな」

 

空港のロビーから病院へと向かう救急車群を見送り、はやては一息つく。

 

そこへ、

 

「騎士はやて」

 

「ん?」

 

はやては声をかけられて振り向くと、聖王教会の神父服を着た人物が立っていた。

 

神父は、はやてに一礼した後、

 

「私、聖王教会‥騎士カリムからの使いの者です」

 

「カリムからの?」

 

「はい。騎士カリムより、騎士はやてがミッドに帰還次第お話があると‥‥」

 

そう言って教会からの使者は一枚のメモをはやてに手渡す。

 

「騎士カリムはそこで、お待ちしております」

 

管理局から聖王教会は睨まれているので、管理局でも高官であるはやてが聖王教会の幹部と出会う事で、双方の間でいらぬ疑惑を持たせるので、カリムはこうしてお忍びではやてを呼び出したのだ。

 

「分かった。ご苦労様です」

 

はやては教会の使者に労いの言葉をかけて見送ると、メモに書かれていた場所へと向かった。

 

「‥‥」

 

上空からクラナガンの惨状を見ていたが、実際にこうして歩きながらクラナガンの市街を見てみると、当日の惨状がJS事件の決戦時以上の戦場であった事が窺える。

 

車道には瓦礫が未だに転がっており、車は片道走行を余儀なくされているし、裏道に関しては未だに瓦礫で埋まっているに違いない。

 

道の彼方此方には被災者たちの血痕らしき赤いシミが彼方此方に残っている。

 

カリムとの待ち合わせ場所は比較的被害を免れた一店の喫茶店であった。

 

事前に教会側が予約をして店を借り切っていたのか、店内には他の客の姿はなかった。

 

まぁ、オーナーもしくは店主にしても教会側からまとまったお金が振り込まれた事でミッドチルダが救われたら店の再建も直ぐに出来そうだ。

 

店の奥にあるボックス席にはカリムと彼女の護衛なのかシャッハの姿があった。

 

「カリム。お待たせ」

 

「いえ、こちらこそ急に呼び出してしまい申し訳ございません。ですが、騎士はやてに急ぎ伝えなければならない事がありまして‥‥」

 

「ん?一体‥‥ま、まさか‥‥」

 

カリムのこのパターンからはやては、カリムがまたもや不吉な内容の予知をしたのかと思った。

 

「‥‥」

 

カリムは、はやてに無言のままつい最近に発動した予知の内容を記したメモを手渡す。

 

「‥‥」

 

はやてもカリムから受け取ったメモを無言のまま内容に目を通す。

 

「こ、これは‥‥」

 

メモの内容を見たはやては思わず声が出る。

 

「当初、この内容を見た私は、騎士はやての事かと思っていました‥‥ですが、今日こうして騎士はやてがミッドチルダに戻って来た事で、此処にある『勇敢なる海の戦士』が騎士はやての事を指しているのではないと分かりましたが‥‥」

 

(クロノ君とギンガはまだアクエリアスの次元跳躍を阻止するために今も戦っている‥‥)

 

(となると、このメモにある 『勇敢なる海の戦士』 はクロノ君かギンガの事を指しているかもしれへんな‥‥)

 

カリムが気まずそうに言う中、はやてもこの予知の中にある『勇敢なる海の戦士』がクロノかギンガの事を指しているのかと思い、

 

「カリム、情報ありがとな。私の方もこのままミッドを含めて見過ごす訳にはいかへん‥‥私も独自に動いてみるわ」

 

このままミッドチルダを水没させる訳にはいかないが、カリムのこの予言の内容を見たからにはそれもみすみす見逃す訳にはいかなくなった。

 

「ありがとうございます。騎士はやて」

 

「ご武運を‥‥」

 

はやては急ぎカフェから出ると、

 

「グリフィス君、グリフィス君」

 

グリフィスに連絡を取った。

 

『はい、何でしょう?』

 

「すまへんけど、ジャガーノートは直ぐにでも次元の海にもう一度出航するで」

 

『えっ?直ぐに‥ですか!?』

 

「ああ、直ぐにや‥そんで悪いけど、補給の手配を急ぎやってや」

 

『わ、分かりました』

 

はやてはグリフィスに補給の手配を行わせ、ジャガーノートの出航準備を行わせた後、次にミッドチルダ西部のエルセアにあるナカジマ家に連絡を取る。

 

『八神か、どうした?』

 

「突然の連絡すみません。スバルは居ますか?」

 

『あ、ああ、居るが、スバルに何か用か?』

 

「ええ、あとゲンヤさんにも‥‥」

 

『ん?管理局を定年した老いぼれに今更一体何の用だ?』

 

「‥‥実は、まほろばが‥‥ギンガが今、来ているんです」

 

『なっ!?ぎ、ギンガが‥‥ギンガがミッドに来ているのか!?』

 

はやてからの返答内容の中にある『ギンガ』の名前を聞きゲンヤは思わず声が裏返る。

 

そして、ギンガがミッドチルダに居るのかをはやてに問う。

 

「いえ、残念ながらミッドには居ません。現在、管理局の艦と一緒に作戦行動中です。でも、次元の海に出れば、まほろばと‥ギンガと邂逅するチャンスもあると思います」

 

『‥‥』

 

ギンガと会えるかもしれないと言うはやての誘いを受けてゲンヤは暫し考え込む。

 

『分かった。それで、どこへ向かえばいい?』

 

「クラナガンの次元航行船の発着場です」

 

『うむ‥なぁ、八神』

 

「なんでしょう?」

 

『もし、ギンガと会えるかもしれないと言うのなら、ノーヴェたちにもギンガを紹介したい』

 

「ノーヴェたちにも?」

 

『ああ。今回のチャンスが最初で最後かもしれない』

 

確かにゲンヤの言う通り、今回ギンガと会えるのはこの先の残りの人生で最後かもしれない。

 

自分やスバルがギンガに対してミッドチルダに戻って来てもらうように頼んでもギンガは恐らくそれを了承しないだろう。

 

それならば、ノーヴェたちにもギンガを紹介したかった。

 

「分かりました。では、そのように手配しておきます」

 

『すまない』

 

「いえ、それでは‥‥」

 

はやてはゲンヤに待ち合わせ場所を伝えると、ジャガーノートが停泊する次元航行船の発着場へと戻った。

 

 

はやてとの通話を終えたゲンヤは、

 

「スバル、直ぐに出かける用意をしろ」

 

「えっ?突然どうしたの?」

 

ゲンヤの言葉にキョトンとするスバル。

 

「さっき、八神の奴から連絡があってな」

 

「八神さんから‥‥でも、それがどうして出かける事になるの?」

 

「‥‥ギンガの奴がどうも近くに来ているらしい」

 

「えっ?ギン姉が!?」

 

「ああ、俺も話を聞いた時は驚いた」

 

「それで、ギン姉は何処に!?ミッドに来ているの!?」

 

「いや、ミッドには居ない。でも、ミッドの近くの次元の海に居るみたいでな、もしかしたらギンガが乗艦している艦と邂逅できるかもしれない‥って八神の奴がそう言ってな」

 

「ギン姉と会える‥‥うん。分かった直ぐに準備するよ」

 

スバルはゲンヤから話を聞いて直ぐに準備に取り掛かった。

 

「ギン姉と会ったら何を話そうかな‥‥」

 

ギンガと会えるかもしれないと言う可能性をゲンヤから聞いて、長い期間離れ離れになっていたのだから積もる話はいっぱいある。

 

スバルはギンガと再会した時の事を想像しながら鞄に荷物を詰め込んだ。

 

 

「ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、お前たちもだ」

 

「「「えっ?」」」

 

「詳しい話は後でする。今は、出かける準備をしろ」

 

ゲンヤはノーヴェたちにも準備を促した。

 

「で、でも、パパりん。何処に行くっスか?」

 

ウェンディがゲンヤに行き先を訊ねる。

 

「八神の艦で次元の海に行く」

 

「えっ?」

 

「次元の海に?」

 

「で、でも、ミッドが大変な時にヴィヴィオやアインハルトたちを残して行くのは‥‥」

 

ノーヴェもミッドチルダがこのままでは水没してしまう事を知っている。

 

そして、ミッドチルダから脱出する事が困難な事も‥‥

 

そんな状況下で門下生であるヴィヴィオやアインハルトたちをミッドチルダに残して自分だけ次元の海に行くのは気が引けたのだ。

 

「ミッドの危機は八神たちが居るんだ。このままみすみすミッドの水没を許すような真似はしねぇよ」

 

ゲンヤはミッドチルダがこの危機的な状況でもはやてたちが救うだろうと思っていた。

 

確かにゲンヤの言う通り、ノーヴェたちは身をもってソレを経験している。

 

クラナガンの防衛の要であるアインヘリアルを破壊し、聖王のゆりかごを浮上させて自分たちは絶対的に有利な状況下であったにもかかわらず、それを逆転されて、敗北した。

 

決して油断していたわけではない。

 

むしろ勝てると言う絶対的な自信が自分たちにはあった。

 

それを土壇場で逆転されて自分たちは敗北した。

 

ならば、今回のこの事態もはやてたちが解決できるのではないかとノーヴェ自身もそう思い始めた。

 

「でも、いきなり次元の海に行くから出かける準備なんて一体どういうことなんっスかね?」

 

部屋にて、カバンに荷物を詰め込むウェンディは今回のお出かけに疑問を抱く。

 

「あたしに言われても知らねぇよ」

 

「でも、ウェンディの言う通り急だよね」

 

ディエチも急にゲンヤから次元の海に行くから準備しろと言われて、ウェンディ同様に疑問を感じていた。

 

やがて、出かける準備が整うとゲンヤたちは、はやてたちが待つクラナガンの次元航行船の発着場へと向かった。

 

移動手段に関しては、はやてがハイヤーを手配してくれていた。

 

「~♪~~♪」

 

次元航行船の発着場に向かうハイヤーの中で、スバルは鼻歌を歌いながら窓の外の風景を見つめていた。

 

「スバル、随分と機嫌がいいね」

 

そんなスバルの様子に気づいたディエチがスバルに声をかける。

 

「あっ?分かる?」

 

「そりゃあ、あれだけ機嫌良さそうに鼻歌を歌っていたら誰でも気づくよ。それで、どうしてそこまで機嫌がいいの?」

 

「大切な人‥‥と、会えるかもしれないんだ」

 

「えっ?大切な人?」

 

「うん」

 

「‥‥」

 

スバルから『大切な人』と言われたディエチはフリーズする。

 

(えっ?えっ?大切な人?)

 

(スバルはこれからその『大切な人』と会えるからこんなにも機嫌が良い‥‥)

 

(と言う事は、スバルの言う『大切な人』ってそう言う人って事だよね?)

 

(スバル、いつの間にそんな人を作ったんだ!?)

 

ディエチはスバルの機嫌の良さと言葉の意味からスバルの言う『大切な人』は、スバルの恋人なのではないかと思った。

 

 

ゲンヤたちよりも一足早く次元航行船の発着場に到着したはやては、ジャガーノートの艦橋へと上がる。

 

「急な出航にもかかわらず、準備をしてもろてすまへん」

 

「いえ。ですが、どうしたんですか?急に出航だなんて‥‥」

 

グリフィスは、はやてに急な出航について何かあったからこそ、ミッドチルダに着いたばかりにもかかわらず、再び出航させる事についてその理由を訊ねる。

 

「実は、さっきカリムから呼び出されてな‥‥」

 

はやてはグリフィスに先ほどのカリムとのやり取りを話す。

 

そして、カリムから渡された予知の内容が書かれたメモをグリフィスにも見せる。

 

「こ、これは‥‥」

 

グリフィスも予知が記されたメモの内容を見て思わず声を上げる。

 

「カリムはそこに記されている『勇敢なる海の戦士』は私かと思っていたみたいやけど、こうしてミッドに戻って来た事から違うと判断したみたいや‥‥となると、その予知が指しているのは、今も作戦行動中の‥‥」

 

「ハラオウン提督‥‥」

 

「それか、ギンガや‥‥」

 

「それで、本艦はガイアとまほろばを全速で追いかけるのですか?」

 

予知内容の阻止のために出航するのであるならば、当然目的地はガイアとまほろばの下だ。

 

「いや、その前に戦力を増強できればと思うとる」

 

「戦力の増強‥ですか?しかし、周辺の世界に味方の艦は‥‥」

 

「ちゃう、ちゃう、管理局やない‥‥」

 

「?」

 

管理局所属ではない管理局の味方の艦と言われてグリフィスは首を傾げる。

 

「目的地はガイアが最初に敵勢力と接触をした海域や‥‥」

 

「?」

 

はやての思惑が読めずにますます困惑するグリフィスであった。

 

 

一方、アクエリアスにてアクエリアスをミッドチルダに近づけている敵勢力の情報を得たガイアとまほろばでは‥‥

 

「アクエリアスの引力圏に向かって、敵艦艇多数接近中!!」

 

アクエリアス周辺に偵察に出していた航空隊から敵艦隊発見の報告が入る。

 

ギンガは即時に反応して指示を出す。

 

「出航!!全速前進!!航空隊には帰還命令を出して!!」

 

「了解」

 

ガイアの方にも航空隊の通信はリンクしてあったので、敵艦隊発見の報告はガイアの方にも伝えられる。

 

ザールの方もアクエリアスの浮遊大陸の湖に着水中のまほろば、ガイアを捕捉していた。

 

「雷撃機、ミサイル攻撃を開始せよ!!水雷戦隊発進!!」

 

ドウズ型戦艦より、大型戦闘機が発進して、水雷母艦からは水雷艇が次々と発進する。

 

(浮遊大陸からのこのこと出て来た所をハイパー放射ミサイルの一斉射で一気に撃滅してやる!!)

 

(例えハイパー放射ミサイルを躱せた所で、これだけの戦闘艦部隊の数だ‥‥我が艦隊のガトリング砲で穴だらけにしてやるぞ!!)

 

ザールはハイパー放射ミサイルの一斉射撃で片が付けばそれで良いが、仮にハイパー放射ミサイルの一斉射撃を掻い潜った所で、数に勝る戦闘艦部隊の攻撃でいとも簡単に撃滅出来ると判断していた。

 

「右舷六十度、敵機接近!!」

 

まほろばのコスモレーダーが浮遊大陸に接近中の大型戦闘機の機影を捕捉する。

 

「あっ、探査衛星目標を探知!!アクエリアスの後方九万宇宙キロに巨大な要塞を確認!!」

 

オペレーターの林が探査衛星からの情報を報告する。

 

「モニターに表示して」

 

「了解」

 

まほろばのモニターには巨大な衛星都市の姿が映し出された。

 

「あれが敵の本体だ。間違いない」

 

クイーン・アクエリアスの言葉から、アクエリアスのミッドチルダ接近を早めているのはディンギル星人であることが分かっている。

 

アクエリアスをワープさせるにはアクエリアス本土もしくはアクエリアスの近くに位置しなければならない。

 

クイーン・アクエリアスはアクエリアス本土には敵は居ないと断言していた。

 

ならば、アクエリアスの後方に展開しているあの都市衛星こそがディンギル星人の本体であることは明白だ。

 

「ワープ装置はあの衛星都市か‥‥」

 

ノイマンもモニターに映る都市衛星の姿を見て呻った。

 

都市衛星の巨大さを見て、あそこへ突入してワープ装置を破壊するのは容易な事ではないと考えた。

 

彗星帝国の要塞都市、暗黒星団帝国の人口中心都市の例からあの都市衛星にも何かしらの防衛装備があるだろう。

 

それに突入する前に今、接近している敵艦隊を撃破しなければならない。

 

「敵機、ミサイル発射」

 

まほろば、ガイアは敵ミサイルが当たる前に浮遊大陸の湖から浮上した。

 

敵が放ったミサイルはハイパー放射ミサイルではなかった。

 

「別方向に熱源放射弾発射!!」

 

まほろばは囮ミサイルを放ち、敵ミサイルの方向を狂わせる。

 

「航空隊、着艦体制に入ります」

 

アクエリアスの偵察を行っていた航空隊は次々とまほろばへと帰還する。

 

「出力全開、上昇角四十度、全速前進!!」

 

「総員宇宙服着用!!」

 

ノイマンは操縦悍を引いてアクエリアスの引力圏からまほろばを上昇させる。

 

「敵ミサイル防御戦用意」

 

アルバートが先ほど完成させたばかりの対ハイパー放射ミサイルの切り札を作動させる。

 

テストをしていないとは言え、アルバートにはかなりの成算があった。

 

ハイパー放射ミサイルの仕組みについてはこれまでの戦闘データから推察がついている。

 

その推論に間違いなければほぼ確実にミサイルは処理できる筈だ。

 

 

ラウゴールム コックピット

 

「まほろば、ガイア、浮遊大陸から浮上!!急上昇中!」

 

「雷撃隊のミサイルは!?」

 

「全弾回避された模倣です!!」

 

「ちっ、運のいい奴らめ!!だが、まほろば、ガイア、逃がさんぞ!!水雷戦隊、上昇中のまほろばとガイアにハイパー放射ミサイルの照準を合わせ!!」

 

既に母艦から放たれた水雷艇は逃げる獲物を追いかける群れ成す肉食獣の様にまほろば、ガイアを追撃してくる。

 

まほろばとガイアはアクエリアス周辺の氷塊リングを抜け出る。

 

 

ガイア 艦橋

 

「艦長、後方より敵の小型艇が接近中!!」

 

「総員、防護服を着用!!」

 

ガイアのモニターにはディンギル軍の水雷艇群の姿が映し出された。

 

「あのミサイルを搭載している小型艇か‥‥」

 

「艦長、どうする?位置的にも数でも此方が不利だ」

 

チンクが水雷艇の対処をクロノに訊ねる。

 

「‥‥」

 

「艦長、まほろばより通信で敵のミサイルに対して対処するとのことです」

 

「対処?あのミサイルをどうやって対処すると言うんだ‥‥?」

 

管理局の艦があれほど苦戦したハイパー放射ミサイルの対処をまほろば一隻が行うと言うのだから一体どんな方法をとるのか気になるクロノ。

 

やがて、水雷艇からハイパー放射ミサイルが一斉に発射された。

 

すると、まほろばの艦底部の一部が開口し、そこからアルバートが制作した対ハイパー放射ミサイルビーム砲が突出する。

 

構造の関係から甲板部分に設置することが出来なかったので、艦底部に突出・格納するタイプとなった。

 

「センサー、目標を捕捉。自動照準回路作動!!」

 

ビーム砲にはアンテナとセンサーが設置されており、そのセンサーがハイパー放射ミサイルの存在を捕捉する。

 

「エネルギー充填完了!!」

 

「対ミサイルビーム砲発射!!」

 

対ハイパー放射ミサイルビーム砲が後方から迫るハイパー放射ミサイルに向かって発射された。

 

ビームは発射された当初はショックカノンの様に一筋のビームであったが、やがて拡散波動砲の様に拡散し、ハイパー放射ミサイルの起爆装置と弾頭に触れるとハイパー放射ミサイルを溶かしてしまう。

 

「まほろばの前方、下方にも水雷艇!!」

 

水雷艇の数は多く、後方から迫ってくるだけではなく、前方・下方向からも迫り、ハイパー放射ミサイルを放つ。

 

ビーム砲はその砲口を前方・下方へと向けてビームを放つとやはりハイパー放射ミサイルはあっという間に無効化される。

 

「す、すごい‥‥」

 

「あの厄介なミサイルがあんなにも簡単に‥‥」

 

ガイアの艦橋では次々と無効化されていくハイパー放射ミサイルの光景を見て、艦橋員たちは唖然とする。

 

(この短期間であの厄介なミサイルをこうも簡単に無効化してしまう兵器を作ってしまうとは‥‥)

 

(やはり、武器の生産力・技術力に関してはもう一つの地球に一日の長があるな‥‥)

 

対ハイパー放射ミサイルビーム砲に関してはクロノ自身もその威力を認めざるを得なかった。

 

それはハイパー放射ミサイルを使用したディンギル軍側もそうだった。

 

 

ラウゴールム コックピット

 

「ハイパー放射ミサイル、命中まで、あと三十秒!!」

 

「ハハハハハ、これで最期だ!!宇宙の塵と成り果てるがいい!!」

 

ザールはまほろば、ガイアへと迫っていくハイパー放射ミサイルを見て勝利を確信していた。

 

しかし‥‥

 

まほろばの艦底部から青白ビームがハイパー放射ミサイルに向かって行くと、次々とハイパー放射ミサイルは爆発していく。

 

「なっ、なんだと‥‥!?」

 

何かの間違いかと思ったが、別方向から放たれたハイパー放射ミサイルもまほろばから放たれた青白ビームによって次々と爆発・無効化されていく。

 

ハイパー放射ミサイルの対策を見て、ザールは

 

「お、おのれぇ~いつの間にあんな防御兵器を‥‥」

 

母星であったディンギルの傍でガイアを攻撃し、ミッドチルダを始めとする周辺の管理世界、そして第九管理世界での戦いまであのような兵器が無かった事は確かである。

 

このわずかな期間で新兵器を開発した敵勢力にザールは舌を巻く。

 

だが、この程度の想定外な出来事くらいでザールは委縮しなかった。

 

むしろ、彼の闘志に火を着けた。

 

ハイパー放射ミサイルを撃ち尽くした水雷艇群は撤退行動に入るが、そこをまほろば、ガイアは攻撃を加えて次々と撃ち落していく。

 

いくらハイパー放射ミサイルの対策が出来たとしても再び出撃されてくると厄介だ。

 

まほろば、ガイアの行く手には小惑星群があり、その小惑星群を背後に隠れるように待機していたディンギル軍の戦闘艦隊が出現した。

 

「全艦、砲雷撃戦用意!!撃て!!」

 

ザールはそれらの戦闘艦隊に攻撃命令を下す。

 

ディンギル艦隊からは何本ものオレンジ色のショックカノンが雨の様に降り注ぐ。

 

ガトリング砲の速射性はやはりバカには出来ず、その圧倒的火力の前にまほろば、ガイアは次々と被弾する。

 

そして、被弾の衝撃で艦全体が大きく揺れる。

 

その衝撃は第一艦橋まで伝わり、床から被弾の衝撃音が低く響いて来る。

 

「くっ、今度は物量で来たわね」

 

ギンガは被弾の衝撃に耐えながら呟く。

 

アルバートは応急指揮パネルを見つめている。

 

パネルには艦内配置図が表示されており、被弾箇所を示す赤い点が次々と表示されていく。

 

「第二砲塔被弾!!」

 

「艦首魚雷室被弾!!」

 

「技術班は被害箇所が大きい箇所から優先的に応急修理を行え、多少の被害は構わない!!」

 

アルバートは技術班に応急修理箇所を指示するがこれではキリがないので、多少軽度の被害箇所については無視して重要箇所と大きな被弾箇所の応急修理を優先させた。

 

うららは応戦可能な主砲で敵を攻撃するが、小惑星群が邪魔をしてなかなか敵に命中弾を与えられない。

 

ガイアも同様で、ジャスティス・カノンを撃ってもなかなか敵に当たらない。

 

「艦長、数では圧倒され、反撃を行うも近くにある小惑星群が邪魔で対応出来ません!!」

 

うららが敵に致命傷を与えられない件を伝える。

 

「‥‥航海長、こちらも小惑星が密集している宙域へ向かって」

 

「了解」

 

「通信長、ガイアにも本艦に続くように通信を送って」

 

「はい」

 

まほろば、ガイアは小惑星群へ回頭を開始する。

 

こちらも小惑星群を盾にするのかとクロノも思った。

 

しかし、いくら小惑星群を盾にしたとしても戦況が自分たちに不利なのは変わらない。

 

まほろば、ガイアは被弾しつつも小惑星の影へと向かう。

 

ディンギル軍の戦闘艦隊はハイパー放射ミサイルのように致命的な打撃を与えることは出来なかったが、その速射性と物量によって、まほろばとガイアを追い詰めていた。

 

「まほろば、ガイア、小惑星の影に逃げ込みました」

 

「反撃も目に見えて減っています」

 

「ふっ、勝ったな‥‥よし、小惑星もろとも吹っ飛ばしてやれ!!」

 

まほろば、ガイアの行動から既に勝利を確信したザールであった。

 

だが、まほろばとて此処で撃沈される訳にはいかない。

 

「艦首回頭180度」

 

まほろばは艦首を敵艦隊へと向けると、

 

「波動砲発射用意」

 

「えっ!?」

 

「は、波動砲ですか!?」

 

ギンガは現状、一発しか撃てない波動砲を此処で使用する事を決めた。

 

「しかし、艦長。まほろばは、波動砲を一発しか撃てませんし、前方には小惑星帯が‥‥」

 

ティアナが此処で波動砲を使って良いモノかと意見する。

 

一発しか撃てないのだから、もう少し慎重になった方がいいのではないか?

 

これ以上の危機がこの先に待ち構えていないとは言い切れない。

 

まだアクエリアスをワープさせているワープ装置を破壊していない。

 

あの敵の本拠地である都市衛星の攻略がまだ控えている。

 

彗星帝国の要塞都市攻略の際も波動砲が使えない状況下だったので苦戦を強いられて大勢の犠牲を払った。

 

その危機的状況の時に波動砲が使用不可能だったらどうするのか?

 

ティアナたち艦橋員にはそんな疑問と不安があった。

 

「ティアナの言う通りだけど、このままだと撃沈は時間の問題‥‥それならば、例え一発しか撃てなくても此処で波動砲を撃って危機を脱しないと未来はない!!それに前方の小惑星群には生物は存在していない‥‥それなら波動砲で粉砕しても問題ないわ」

 

「‥‥わ、分かりました。戦術長、機関長、波動砲の発射用意」

 

「は、はい」

 

「女は度胸、任せな、艦長!!」

 

うららは不安そうだが、柳原はむしろこの状況を楽しんでいる様に見えた。

 

「通信長もガイアに波動砲発射する旨を伝えて」

 

「了解」

 

メイリンは急ぎガイアに波動砲発射の旨をガイアに通信を送った。

 

 

ガイア 艦橋

 

「艦長、まほろばから波動砲を撃つ旨の通信が入りました」

 

「波動砲!?」

 

「はい。『決して本艦の前には出るな』と言っています」

 

「よし、まほろばの後方につけろ」

 

「ですが、一隻の戦略砲ではいくらなんでも無理じゃあ‥‥」

 

「それに敵のあの数では、撃ち漏らす可能性もあります」

 

「君たちは地球の戦艦の波動砲を見た事が無いようだな」

 

「えっ?ええ‥‥」

 

「ありません」

 

「艦長は見た事があるんですか?波動砲とやらを‥‥?」

 

「ああ‥まほろばではないが、かつて一度だけ実際にこの目で見た事がある。この後、強力な閃光が走る。全員、目を保護するために防御ゴーグルをかけろ!!」

 

クロノも波動砲の威力はテレザートで見ている事から、まほろばの‥ギンガが言っている事は当然の配慮だと思い、ガイアをまほろばの後方につけた。

 

そして、目を保護するための処置を命じる。

 

 

まほろば 艦橋

 

「機関停止、波動砲へエネルギー回路接続!!エネルギー導入開始!!」

 

柳原が波動砲の発射準備を行う。

 

「シア―ロック解除、内圧限界へ‥‥」

 

「ターゲット・スコープ、オープン。クロスゲージ明度二十。目標、前方敵艦隊、発射十秒前、対ショック、対閃光防御」

 

艦橋員たちは目を保護するための遮光ゴーグルを装着する。

 

「十‥‥九‥‥八‥‥七‥‥六‥‥五‥‥四‥‥三‥‥二‥‥一‥‥発射!!」

 

うららが波動砲のトリガー引く。

 

すると、艦首にあるまほろばの波動砲の発射口から眩い閃光と共に波動砲が発射された。

 

まほろばから放たれた波動砲は、行く手にある全てのモノを素粒子レベルで引きちぎる。

 

小惑星群は粉々に砕かれ、ディンギル軍の戦艦群は波動砲の直撃を受けて小惑星群と同じく一瞬で粉砕されるか、直撃を受けなくても砕かれた小惑星群の衝撃波と岩の雨をくらい船体が割れる被害を受けた。

 

まほろばの波動砲による一撃で形勢は一気にひっくり返った。

 

「敵艦隊、消滅を確認‥‥いえ、一機だけ波動砲の射程外に待機していたものと思われます」

 

ティアナが小さな反応を見逃さずに一機だけ生き延びた敵が居た事を確認する。

 

「おそらくそれは敵の旗艦ね」

 

艦隊から離れていた場所に待機していた事からギンガはその生き延びた艦は敵の旗艦だと判断する。

 

「敵旗艦、反転していきます」

 

「方向は?」

 

「例の都市衛星がある方角です」

 

「撤退したみたいね‥‥追撃するわよ。航海長、敵艦を追って」

 

「了解」

 

「技術班は応急修理を急いで」

 

「了解」

 

まほろばは戦場から撤退していくラウゴールムを追尾した。

 

この先でも戦闘は予想されるので、技術班は先ほどの戦闘で損傷した箇所の修理を急いだ。

 

 

ガイア 艦橋

 

「‥‥」

 

「あ、あれが波動砲の威力‥‥」

 

「ネオ・アルカンシェル以上の威力がなかったか?」

 

波動砲の威力を初めて見たガイアの乗員たちはその威力を前に啞然とする。

 

(相変わらず凄まじい威力だな‥‥地球軍の波動砲は‥‥)

 

(管理局も今後、もう一つの地球との対応を間違えたら、あの敵艦隊の様に波動砲の餌食になるな‥‥)

 

クロノもこれで二度目になる波動砲の威力を見てもう一つの地球との付き合い方を間違えれば、今度は自分たちが波動砲の餌食になると突きつけられる。

 

「敵艦隊は?」

 

いつまでも惚けている暇はない。

 

クロノはオペレーターに敵艦の有無を訊ねる。

 

「‥す、すべて消滅しました。いえ、一隻だけ生き残っています」

 

「まほろばが、生き残った敵艦を追尾してきます」

 

「よし、本艦もまほろばに続いて敵艦を追うぞ」

 

「了解」

 

ガイアもまほろばと共に撤退するラウゴールムを追尾した。

 

 

まほろばの波動砲の威力を見て驚愕したのは、初めて波動砲を見たガイアの乗員だけではなかった。

 

 

ラウゴールム コックピット

 

「み、味方戦闘艦、ぜ、全滅‥‥」

 

ラウゴールムのコックピットでは、オペレーターが絶望的な報告をザールに伝える。

 

(な、何という事だ‥‥)

 

(あれだけいた味方艦が一撃で‥‥たった一撃で‥‥)

 

(な、何なんだ!?あの兵器は!?)

 

(まほろばがまさかあのような凶悪な兵器を有していたとは‥‥)

 

第九管理世界での戦いで、まほろばの波動カートリッジ弾で煮え湯を飲まされたザールであったが、今回もまほろばの波動砲によって手痛い敗北を期すことになった。

 

雷撃隊のミサイル攻撃に水雷艇部隊のハイパー放射ミサイル、相手の戦力を上回る戦闘艦隊‥‥三つの矢を持って今回の戦いに挑んだ。

 

戦力においても、使用する兵器においても、自分たちの方が勝っており、敗北する要素などなかった。

 

つい先ほどまでもハイパー放射ミサイルは封じられたが、戦闘艦隊の物量で十分に追い詰めた。

 

しかし、敵艦の放った戦略砲の一撃‥‥たった一撃だけで戦況をひっくり返されてしまった。

 

まほろばによってハイパー放射ミサイルを封じられた際に燃え上がったザールの闘志は一気に燃え尽きてしまう。

 

「で、殿下、残っているのは本艦のみです」

 

「殿下、いかがなさいますか?」

 

ラウゴールムの乗員たちがザールに指示を乞う。

 

「て、撤退だ‥‥ウルクまで全速離脱だ!!」

 

ザールは撤退を命じる。

 

ラウゴールムは機首に大口径のビーム砲を有しているが、とてもラウゴールム一機でまほろばとガイアを相手にするにはあまりにも分が悪い。

 

なので、ザールが撤退命令を出すのも当然の判断であった。

 

「りょ、了解」

 

ラウゴールムの操縦士は機体を反転させる。

 

ルガールが二度の敗北を許すか不明であるが、敵にはまだ自分たちが知らない強力な兵器がある事を報告しなければならない。

 

未確認の兵器を使用されたのだから、今回の敗北は前回同様やむなき事なのだから、ルガールはもう一度自分にチャンスを与えるだろうとザールはこの時、そんな甘い思いを抱いていた。

 

ザールを乗せたラウゴールムは一路、全速でウルクを目指して撤退していく。

 

その後方から、まほろばとガイアを引き連れて‥‥

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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