星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百六十七話 脅威ニュートリノ・ビーム

 

 

ミッドチルダに迫る水惑星アクエリアス‥‥

 

水惑星アクエリアスがミッドチルダの至近距離を通過すると、互いの引力の関係でアクエリアスからミッドチルダには数百兆トンの水が降り注ぐことになり、ミッドチルダの地表全ては水没してしまいミッドチルダに居る人類を始めとする陸上生物は全て死滅してしまう。

 

勿論、管理局もこのような事態を見過ごす訳はなく、対策をとるもアクエリアスをミッドチルダに近づけているディンギル星人はミッドチルダに住む人類が宇宙へ脱出する術を奪った。

 

このままでは、ミッドチルダに住む人類が滅びてしまう‥‥

 

管理局は残存勢力をかき集め、敵勢力の排除とアクエリアスのワープ阻止のための対抗策をとる。

 

その対抗策の要として、銀河系交叉によって次元遭難し、管理局から保護された地球連邦・防衛軍所属の戦艦まほろばもこの作戦に協力する事となった。

 

第九管理世界を根拠地とした敵勢力との戦いでは、管理局側は大きな犠牲を払いつつも管理世界勢力から敵勢力を排除する事に成功した。

 

しかし、戦いはまだ終わった訳ではない。

 

今回の異変の原因であるアクエリアスは依然と24時間おきに150光年の距離をワープして、ミッドチルダに近づいている。

 

このアクエリアスのワープを止めなければ、ミッドチルダを救う事は出来ない。

 

だが、第九管理世界の戦いで管理局側には大勢の負傷者を出してしまい、彼らを連れての作戦続行には難しく、管理局の次元航行艦ガイアの艦長、クロノはアクエリアスのワープ阻止についてはガイアが担当し、その他の艦には負傷者をミッドチルダへ搬送するように伝える。

 

はやてが艦長を務めるジャガーノート以下の残存艦はクロノの指示通り、負傷者を乗せてミッドチルダへと戻る。

 

しかし、ギンガが艦長を務めるまほろばはガイアと行動を共にしてアクエリアスのワープ阻止へと向かった。

 

アクエリアスが向かってくるコースは既に判明しているので、アクエリアスがワープした回数とコースを逆算してまほろばとガイアはアクエリアスが十九回目のワープアウトする宙域へと向かった。

 

そして、十九回目のワープアウトをしたアクエリアスへ直接降り、ワープシステムを捜索する。

 

だが、アクエリアスの地表にあるのはどこまでも続く広大で蒼い海と大小様々な大きさの浮遊大陸。

 

そして、それらの大陸に残るかつてこの星で栄えたであろう人類が残した遺跡の数々であった。

 

浮遊大陸の一つに着水し、周囲を探索している中、まほろば、ガイアの乗員たちの前にまるで蜃気楼のようにアクエリアスの空には一人の女性の姿が浮かび上がった。

 

彼女はクイーン・オブ・アクエリアス‥‥

 

かつてアクエリアス文明を治めた女王であり、アクエリアスの心‥‥

 

シャルバート星のマザーシャルバートと同じ様な存在なのだろう。

 

そのクイーン・オブ・アクエリアスから、アクエリアスをミッドチルダに近づけている勢力の正体が伝えられた。

 

アクエリアスをワープさせてミッドチルダを水没させようとしている勢力の正体‥‥

 

それは、ディンギル星人‥‥

 

ディンギル星人はかつてミッドチルダにて最初の文明を築いた人類の末裔‥‥

 

言うなれば、ミッドチルダはミッドチルダの人間によって滅ぼされそうになっていた。

 

クイーン・オブ・アクエリアスから驚愕の事実を知った直後、第九管理世界での戦いに敗れ復讐戦に執念を燃やすザールがまほろばとガイアに襲い掛かって来た。

 

彼はディンギル軍の十八番であるハイパー放射ミサイルでまほろばとガイアを仕留めにかかるが、まほろばの技師長であるアルバートが完成させた対ハイパー放射ミサイルビーム砲で、ハイパー放射ミサイルを無効化させた。

 

自軍の切り札であるハイパー放射ミサイルを無効化された事で、ザールは次に物量作戦へと移行した。

 

彗星帝国の回転式砲塔と同じく防衛軍、管理局の主砲よりも速射性が高いディンギル軍のガトリング砲と戦力差、そして戦場となった宙域に展開する小惑星群によって、まほろばとガイアは徐々に追いつけられた。

 

この時、ザールは既に勝利を確信していた。

 

ザールとしてはこの戦いには何としてでも勝たなければならなかった。

 

何故ならば、彼は第九管理世界での戦いの敗戦から既に崖っぷちに追い込まれていた。

 

一度の敗戦の罪を免れたのは彼のこれまでの将軍としての功績とザールが大総統の息子だからと言う理由であった。

 

だからこそ、今回の戦いは何が何でも勝たなければならない。

 

そして、物量作戦によって自分はまほろばとガイアを追い詰めている。

 

もう少しと言う所で、まほろばの波動砲によって形勢は一気にひっくり返った。

 

ザールは波動砲の眩い閃光に目を閉じ、指揮席から崩れ落ちる。

 

やがて、閃光が収まると彼は眼前の光景に絶望する。

 

周辺の小惑星群諸共あれだけ居た味方の艦は自分が搭乗しているラウゴールム以外全滅。

 

全身を小刻みに震わせながら眼球を落とさんばかりに眼を大きく見開き、歯はガチガチと音を立てていた。

 

ラウゴールム一機だけではとてもまほろばとガイアを相手にする事は出来ず、ザールはウルクへと撤退していく。

 

「ば、バカな‥‥あそこまで追いこんだにも関わらず、あんな事が‥‥たった一隻の戦艦如きに‥‥」

 

ザールは未だに現実を受け入れる事が出来ずにいた。

 

ディンギル軍の宇宙艦船には防衛軍のような波動砲、管理局のネオ・アルカンシェルのような決戦兵器は搭載されていない。

 

ハイパー放射ミサイルと速射性の高いガトリング砲が主な兵装であった。

 

鎖国政策をとり外宇宙にある星間国家との交流を絶っており、これまでもハイパー放射ミサイルとガトリング砲でディンギルの独立が保たれていたからこそ、これで十分だと言う凝り固まった思考のマイナス面をザールは此処で垣間見たのだ。

 

「二度の失敗‥‥父上は何と言うだろうか‥‥」

 

ウルクへ戻る途中、ザールは自身の未来の行く末を案じる。

 

絶縁され、将軍としての地位を失うかもしれない。

 

いや、それならばまだマシな方だ。

 

自分の父親は弱者を切り捨てる冷酷な男だ。

 

いくら親子の縁があるとはいえ、三度の温情などかければそれこそ軍全体の指揮に関わる。

 

味方の艦隊が全滅した事、

 

自分の未来に絶望している中、

 

「そ、そうだ‥父上に報告をせねば‥‥あの戦艦が持つ恐ろしい兵器の事を伝えなければ‥‥」

 

ザールはふと我に返り、まほろばが保有する恐ろしい兵器についての報告をいれるためにウルクに居る父親であり、大総統・大神官であるルガールへ通信を送った。

 

 

都市衛星ウルク 総統府

 

「大総統、ルガール殿下より通信が入っております」

 

「繋げ」

 

「はっ」

 

オペレーターが通信回路を開く。

 

この時、ルガールは息子の戦勝報告かと思ったが、モニターに映し出された息子の姿は、出撃した時の闘志に燃える姿とは打って変わって、何かに怯えている様な姿だった。

 

しかも、ウルクを出撃した際、ディンギル軍の最後の戦力ともいえる戦闘艦群の姿は見えず、帰還行動に入っているのはザールのラウゴールムのみ‥‥

 

「‥‥」

 

(不肖の息子よ‥‥)

 

(二度も重大な作戦に失敗し、おめおめと逃げ帰り生き恥を晒しおって‥‥)

 

『父上、申し訳ございません。我が艦隊は全力を挙げてあと一歩でまほろばとガイアを撃破するところでした。しかし、奴等には‥‥』

 

「‥‥」

 

『ち、父上‥‥』

 

ザールはルガールの態度に嫌な予感を覚え、モニター越しであるが、ルガールへ手を伸ばそうとする。

 

そのルガールはザールの弁解じみた報告を冷めた目と無言を貫いて見ていたが、その報告すべてを聞く前に通信を切った。

 

二度もチャンスを与えながらも詰めをしくじって僅かな隙を突かれて形勢を逆転された。

 

ルガールの目にはザールは全く成長しない愚息に見えた。

 

そのような者にディンギルの大総統の後継者たる資格はない。

 

それどころか、息子である資格もない。

 

ザールとの通信を一方的に切ったルガールは、

 

「ニュートリノ・ビーム防御幕放射」

 

「えっ?」

 

「放射だ!!」

 

「は、はっ!!」

 

ルガールの命令を聞き、幕僚は驚愕する。

 

敗戦の将とは言え、彼は自分の息子を処刑しようと言うのだ。

 

しかし、此処で自分が何か言えば、それこそ自分の命が危うい。

 

「ニュートリノ・ビーム防御幕‥放射開始!!」

 

ウルクの中央部から多連装式の砲台が出現し回転し始める。

 

それと同時にウルクの左右前部、後部にある風車のような突起物も回転をし始める。

 

すると、砲台、風車からはビーム状の幕が広がり、ウルク全体を包んで行く。

 

このニュートリノ・ビームは放射する事によってウルクを被う防御スクリーンとなる。

 

ニュートリノは中性微子とも呼ばれる電気的に中性な素粒子で、そのためニュートリノ・ビームはどんな物質の中に入り込み変質させてしまうのだ。

 

防御幕を展開しているウルクの姿は当然、ラウゴールムからも確認出来た。

 

「あ、あれはっ!?」

 

(ち、父上‥‥まさか私を‥‥)

 

当然、ウルクが展開しているのが一体何なのかをザールは知っていた。

 

ウルク全体を包み込むビーム幕を見てザールは思わず後退る。

 

「は、反転だ‥‥」

 

「駄目です!!ウルクに接近し過ぎてもう間に合いません!!」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

ザールは操縦士に反転する様に指示を出す。

 

しかしその指示は遅く、ラウゴールムは反転も停止も間に合わず、ニュートリノ・ビームに接触し、一瞬の内に爆散した。

 

ザールを含めて、ラウゴールムに乗っていた乗員に生存者は居なかった。

 

総統府に居る幕僚の中にはラウゴールムの爆散の光景に思わず目を背ける者も居た。

 

ラウゴールムを収容した後、ビーム幕を展開して、まほろばとガイアの侵入を阻止する事も出来た。

 

しかし、ルガールは敢えてラウゴールムを収容する前にビーム幕を展開した。

 

それは自分の息子を処刑したも同然だ。

 

幕僚たちはルガールの非情さに恐れおののいた。

 

 

まほろば 艦橋

 

ラウゴールムを追撃して来たまほろばでもウルクの存在と周囲を被っているビーム幕に気づく。

 

「いかん!!あれはニュートリノ・ビームだ!!」

 

そして、その危険性に気づいたアルバートが声を荒げつつビーム幕の正体を告げる。

 

「えっ?」

 

「ニュートリノ・ビーム?」

 

「航海長、急いで反転しろ!!あれをまともに受けたら艦ごと全て溶かされてしまうぞ!!」

 

「通信長、ガイアにも退避を呼び掛けて!!」

 

「は、はい!!」

 

アルバートの忠告を聞き、ギンガはメイリンにガイアへ警告を送るように指示を出す。

 

「反転180度、全速前進!!」

 

ノイマンも急ぎまほろばの艦体を急停止させ、次いで反転させてウルクから遠ざかろうとする。

 

まほろばより後方に位置していたガイアはすんなりと反転でき退避行動に入った。

 

ラウゴールムの様にビーム幕に接触させてまほろばとガイアを葬ろうとしたが、ラウゴールムの轟沈を見て、防御幕を危険だと認識し、一時退避を計ろうとしたのだと判断したルガールは、

 

「まほろば、ガイア共に反転し、離脱していきます!!」

 

「フッ、逃げても無駄だ。ニュートリノ・ビーム、まほろば、ガイアに向けて発射」

 

「はっ!!」

 

「ニュートリノ・ビーム、発射準備完了!」

 

「発射!!」

 

ウルクの中央部にあった砲台は回転を止めて、仰角を上げ、照準をウルクから遠ざかっていくまほろばへと合わせると、ニュートリノ・ビームを放つ。

 

砲台から放たれたニュートリノ・ビームはウルクを被っている防御幕と接触するが、同質のビームだったので、防御幕に接触しても消滅や威力が落ちることなく、防御幕を貫通する。

 

ウルクの多連装砲台から放たれたニュートリノ・ビームはやがて一つの太いビームとなり、まほろばへと迫る。

 

「ニュートリノ・ビームがこちらに向かって発射されました!!」

 

「防御だけでなく、攻撃機能もあったのか‥‥」

 

まぁ、敵の本拠地なのだから、彗星帝国、暗黒星団帝国のように防御・攻撃方法くらいは有しているだろう。

 

まほろばは全速を出しているにもかかわらず、ニュートリノ・ビームはまほろばとの距離をどんどん縮めている。

 

「機関長、全然速度が出ていませよ!?」

 

ノイマンは苛立ちながら柳原に速度が出ていない事を指摘する。

 

「お、おう。こら、機関室!!何をしている!!全速前進だ!!このままだと敵のビームでお陀仏だぞ!?」

 

ノイマンからの指摘を受けて柳原は機関室に状況確認と共に機関部員に喝を入れる。

 

すると、機関室からは驚愕の報告があがる。

 

『機関長!!さっきの波動砲発射の影響で波動エネルギーが漏れています!!回転がこれ以上、上がりません!!』

 

「なっ!?」

 

適合するとは言え、やはり純正品ではない部品を使用した影響が、エネルギー伝導管に波動砲発射の影響で亀裂が入り、エネルギーが漏れてシリンダーの回転数があがらず速度がでないのだ。

 

破損した伝導管から漏れている波動エネルギーは後部の噴射口、艦首の動砲発射口からキラキラと光る靄のようなものが出ていた。

 

「ええい、この際エンジンが壊れてもいい!!無理矢理にでも出力を上げろ!!多少のエネルギー・リークはしかたねぇ!!」

 

『りょ、了解』

 

今はエンジンよりも生き残らねばならない。

 

エンジンに無理をさせるような指示を柳原は機関室に命じる。

 

機関員たちは必死に速度を上げようとした。

 

まほろばの異変はガイアでも確認出来た。

 

 

ガイア 艦橋

 

「艦長、まほろばの動きが変です!!」

 

「変?どういう事だ?」

 

「速度が上がっておらず、このままでは敵のビーム砲から逃げきれません」

 

ガイアのモニターにはまほろばへと迫るニュートリノ・ビームの様子が映し出される。

 

確かにオペレーターの言うように波動エンジンを搭載しているまほろばとしては速度が何だか遅く感じる。

 

「ま、まさか、まほろばのエンジンに何か異常が‥‥」

 

まほろばの様子からクロノは、まほろばのエンジンに異常が出たのだと判断した。

 

(やはり、純正品である地球の部品ではなく、管理局の部品では完全に直す事が出来なかったか‥‥)

 

「敵ビーム砲、まもなくまほろばに接触します!!」

 

「くっ、此処でまほろばが撃沈されたら‥‥」

 

いくら、まほろばからの協力を受け入れたとは言え、異なる組織の艦を沈めたとなったら、大問題だ。

 

管理局側は『自己責任』で、押し通すだろうが、地球連邦政府、防衛軍はそうとは見ず、管理局を攻撃する大義名分を得ることになる。

 

それにまほろばにはフェイトが乗艦している。

 

だが、現状ガイアもまほろばを救助する余裕は無い。

 

「敵ビーム砲、まほろばに接触します!!」

 

「‥‥」

 

クロノは悔しそうに眼を閉じた。

 

 

まほろば 艦橋

 

そのまほろばの艦橋内でも絶望感が渦巻いていた。

 

「技師長、ニュートリノ・ビームと言うのはどんな性質を持っているの?」

 

ギンガがアルバートにニュートリノ・ビームについて訊ねる。

 

現状、この速度ではニュートリノ・ビームからは逃れる事は出来そうにない。

 

ならば、何か別の対策があるかもしれない。

 

「ニュートリノ・ビームは放射性元素がβ崩壊する時、電子と一緒に放出されるのがニュートリノ・ビームです」

 

「それで、なにか防御対策は?」

 

「ありません」

 

「ない!?」

 

アルバートの返答にギンガの声が思わず裏返る。

 

「はい。電機的に中性故に、電磁スクリーンでは遮断できず、しかも中性子よりも遥かに小さいので、透過力も格段に強力です」

 

「となると‥‥防ぐ手は‥‥」

 

「ワープで逃げるしか現状、手はありません」

 

「‥‥」

 

火炎直撃砲を初見で回避するのと同じく現状、ニュートリノ・ビームから逃れる手はワープしかなかった。

 

「ですが、艦長、現状エンジンが不調でしかも波動砲を撃ったばかりだからワープなんて出来ねぇぜ」

 

柳原がまほろばのエンジンの現状から、ワープは当然不可能である事を報告する。

 

(あの時、私が波動砲の発射を命じなければ、こんな事には‥‥)

 

物量作戦に押されて危機を乗り越えるために波動砲の使用を判断したギンガであったが、結果、エネルギー漏れを起こす事態となってしまいニュートリノ・ビームから逃れる手を自身の判断でまほろばを危機を招いた事に後悔するギンガ。

 

(なのは‥‥はやて‥‥みんな‥‥ごめん‥‥私はここまでみたい‥‥)

 

艦長席の横に居たフェイトも半ば諦めモードとなっている。

 

「ニュートリノ・ビーム接近!!逃げられません!!」

 

オペレーターの林がニュートリノ・ビームの接触を報告する。

 

「こ、こんな所で‥‥」

 

艦橋の一同は目を閉じて拳を握りしめ、死を覚悟した。

 

しかし、いつまでたっても体がバラバラになるような激痛は襲ってこない。

 

外を見てみると、確かにまほろばはニュートリノ・ビームの中に居る。

 

だが、それだけではなく、まほろばの周囲をキラキラと光る虹色に輝く謎の幕が、まほろば全体を被っており、それがニュートリノ・ビームを遮断しているのだ。

 

アルバートは現状、ニュートリノ・ビームを防ぐ手立ては無いと言っていたが、イレギュラーな事にまほろばは謎の虹色の幕で守られている。

 

「技師長、アレは‥‥」

 

「そうか!!」

 

ギンガはまほろばを包み込んでいる謎の幕の正体についてアルバートに訊ねると、

 

「怪我の功名だ。どうやらあの謎の幕は波動エネルギーが漏れて出来ている様だ。我々はまだ波動エネルギーを物理学的には完全に解明できないまま波動エンジンや波動砲としているようだ‥‥この幕はニュートリノ・ビームを遮断できる性質を持っているみたいだ」

 

ギンガが失敗だと思った波動砲の使用がまさかこのような形で窮地を救うとは誰も予測は出来なかった。

 

結果的にギンガがあの時、命じた波動砲の使用はまほろばを救う事に繋がった。

 

「技師長、この幕を纏っていれば、ニュートリノ・ビームに接触しても問題はないのね?」

 

「はい。詳しいことは今後、研究を進めなければなりませんが、現状、ニュートリノ・ビーム内に居るにもかかわらず、こうして我々が無事なので、間違いないかと」

 

「そう‥‥」

 

アルバートの説明を聞いたギンガは、

 

「航海長、反転180度、波動砲口より、波動エネルギーを逆噴射して、エネルギーをリークした後、敵衛星都市へ強行着陸」

 

「て、敵の上に降りるんですか!?」

 

ギンガの指示にティアナは唖然としながらも確認する。

 

「アクエリアスのワープまで時間もなく、そのワープ装置があの都市衛星にあるのならば、直接降りて叩かないと解決しないでしょう?」

 

「は、はい。機関長、航海長」

 

「ガッテンでぃ!!波動エネルギー逆噴射」

 

「反転180度」

 

柳原はまほろばの波動砲の発射口からエネルギーを噴射させて波動エネルギーをまほろばの周囲に展開させる。

 

ノイマンは操縦桿を引いて、まほろばの艦体を反転させ、ニュートリノ・ビームの中から出た。

 

「通信長、ガイアに通信を‥本艦が無事な事とこれから敵の都市衛星に強行着陸する旨を伝えて」

 

「了解」

 

メイリンはガイアに急ぎ通信を送った。

 

 

ガイア 艦橋

 

「か、艦長!!」

 

「どうした?」

 

ガイアはニュートリノ・ビームからの脅威から脱出したが、まほろばはニュートリノ・ビームの餌食になってしまったと判断し、沈痛な中、自分たちにはまだあの都市衛星を攻略してアクエリアスのワープを止めなければならない。

 

ガイア一隻であの都市衛星と戦えるのか?

 

そもそもあのビーム幕のバリアをどうやって突破すればいいのか?

 

このまま無駄に時間が過ぎてしまえば、アクエリアスは最後のワープをしてしまう。

 

そうなれば、ミッドチルダは水没してしまう。

 

クロノがまほろばと都市衛星の攻略に頭を抱えている中、オペレーターが声をあげた。

 

「ま、まほろばが‥‥」

 

「まほろばがどうした?」

 

「ビームの中から出てきました‥‥」

 

「なにっ!?」

 

オペレーターからのあまりにも現実離れした報告にクロノは驚愕する。

 

そして、モニターに目をやると確かにオペレーターの報告通り、ニュートリノ・ビームの中からまほろばが飛び出してきた。

 

ただ、ニュートリノ・ビームに呑まれる前と異なり、まほろばの周囲にはキラキラと光る虹色の幕を纏っていた。

 

「な、なんだ?あの光は‥‥」

 

「あの太いビーム砲をくらっても無傷だなんて‥‥」

 

「まほろばの装備なのか?」

 

まほろばがどうやってニュートリノ・ビームをくらっても無傷でいたのかなんてとても信じられなかったが、ガイアの乗員たちの眼前にはまほろばが確かに存在し、都市衛星の方へと向かっていく。

 

「艦長、まほろばから通信が入っています!!」

 

「内容は?」

 

「はい。『本艦は健在なり。これより、本艦は敵都市衛星へ強行着陸を行い、ワープシステムを破壊する』‥以上です」

 

「強行着陸って‥‥」

 

「敵の都市衛星周辺にもビームバリアが‥‥」

 

「いや、見たところ先ほどのビーム砲とバリアとして展開しているあのビーム幕も同一のモノだ‥‥あのビーム砲の中から無傷で生還したまほろばならばあるいは‥‥」

 

クロノはウルク周辺に展開しているニュートリノ・ビームを貫通して襲い掛かって来たニュートリノ・ビーム砲を見て同一のモノと判断した。

 

そして、あのニュートリノ・ビームの中から生還したまほろばならばウルク周辺に展開しているニュートリノ・ビーム幕も突破できると確信していた。

 

ガイアの乗員たちが固唾を飲んでまほろばの動向を窺っていると、まほろばがウルク周辺に展開しているニュートリノ・ビームの中に突入して行った。

 

まほろばの行動に驚いたのはガイアの乗員たちだけではなかった。

 

ニュートリノ・ビームを放ったディンギル側もニュートリノ・ビームよって撃沈したと思ったまほろばがそのニュートリノ・ビームの中から無傷で出て来て、ニュートリノ・ビーム幕を展開しているウルクへと接近して来たのだから彼らが驚愕するのは言うまでもなかった。

 

 

ウルク 総統府

 

「だ、大総統、ま、まほろばが‥‥」

 

「何だ?」

 

「ニュートリノ・ビームの中から出てきました!!」

 

「なにっ!?」

 

流石のルガールもこの報告には思わず眉をひそめる。

 

「まほろば、ウルクへ接近中!!」

 

(まほろばはどうやってニュートリノ・ビームの中を生還出来たと言うのだ!?)

 

(ニュートリノ・ビームを展開し、放った時、まほろばは確かに逃げの行動に出ていた)

 

(それにもかかわらず、まほろばはニュートリノ・ビームを物ともせずに向かってくる‥‥)

 

(あの行動は我々を油断させるための偽装だったのか?)

 

ルガールとしてはハイパー放射ミサイルと同等の兵器であるニュートリノ・ビームをまほろばがどうやって突破して来たのか理解できなかった。

 

「まほろば、ウルクに展開中のニュートリノ・ビーム幕に接触します!!」

 

「ぬっ‥‥!!」

 

まほろばはウルクに展開しているニュートリノ・ビーム幕に恐れることなく突っ込んでくる。

 

やがてニュートリノ·ビーム幕からまほろばがウルク内に出現し、

 

「着陸だ!!」

 

「よし!!」

 

ズッシン!!

 

バリバリ‥‥

 

ガラガラ‥‥

 

まほろばはウルクの建造物を薙ぎ倒しながら強行着陸をする。

 

「くっ‥‥」

 

「うわぁぁ!!」

 

艦内には大きな揺れが起こり、座席から転がり落ちる者も居た。

 

ウルクの建造物がいくつも薙ぎ倒されると同時にまほろばの艦底部も地面にめり込む。

 

「エンジン停止!!」

 

ノイマンが操縦桿を引き起こし、エンジンを止める。

 

「艦内各部署、状況を知らせよ!!」

 

強行着陸を行ったのだから何処かに被害、けが人が出ていてもおかしくはない。

 

ギンガは他の部署の損害確認を行う。

 

「技術班、機関員はエンジン部の修理を急げ!!」

 

エネルギー伝導管からのエネルギー漏れがあり、速力低下を招いた。

 

この都市衛星にあるワープ装置を破壊したら飛び立つので、今の内に機関部の修理は行わなければならない。

 

 

ウルク 総統府

 

「まほろば、ウルクの市街地に強行着陸!!」

 

「‥‥アクエリアス二十回目のワープを急げ」

 

「えっ?しかし、ワープを行うにしてもエネルギーが‥‥」

 

「エネルギーはどれくらい充填出来ている?」

 

「八十七%は出来ています」

 

アクエリアスをワープさせるためには二十四時間のエネルギー充填期間が必要だ。

 

しかし、ウルクは数時間前にアクエリアスの十九回目のワープをしたばかりなので、ワープ装置にはまだアクエリアスの二十回目のワープを行うためのエネルギーがまだ溜まっていない。

 

「ニュートリノ・ビームを始めとしてウルク全体のライフラインのエネルギーを最低限のモノとしてその他は全てワープ装置へエネルギーをまわせ」

 

「ニュートリノ・ビームも!?それでは、ウルクの外に居るもう一隻の敵艦をウルクへ強行着陸させる事になりますが?」

 

「すでに一隻、ウルクの内部に入り込まれているのなら、ニュートリノ・ビームはもう意味がない。それよりもアクエリアスをあと一回ワープさせれば我々の目的は達成できる。それまで彼奴等を抑えればそれでいい。それと総統府周辺には防御スクリーンは展開しておけ」

 

「承知しました」

 

ルガールの命令を受けてウルク周辺に展開されているニュートリノ・ビームは消えた。

 

その代わりに総統府周辺にはバリアが展開された。

 

ウルクにある建造物の中で、総統府が一番高い。

 

まほろばの乗員から見れば、総統府を敵の司令部と判断して、総統府へ集中攻撃をしかけてくるとルガールは判断した。

 

なので、アクエリアスをワープさせるまでワープ装置はなんとしてでも死守しなければならなかった。

 

「ウルクの地上戦闘機隊も全て出撃させろ。まほろばの砲塔を潰せば彼奴等はこの総統府を攻撃出来ん!!」

 

「はっ、地上戦闘機隊、全機出撃せよ!!」

 

ルガールも黙ってまほろばの攻撃を耐える訳でもなく、まほろばの武装を潰してしまえば、時間稼ぎは容易だと判断し、ウルクに配備されている地上戦闘機隊全機に出撃を命じた。

 

 

ガイア 艦橋

 

「艦長、都市衛星周辺に展開していたビームバリアが消えました!!」

 

「連中は一体何を‥‥まぁ、いい。あのビームバリアが消えたのなら、本艦もまほろばに続いて敵本拠地へ強行着陸する」

 

「えっ?敵の上に‥ですか?」

 

クロノの命令を危機、オペレーターはギョッとする。

 

「月村艦長の言う通り、アクエリアスを次元跳躍させている機械は敵の根拠地にある。ならば、多少の危険をおかしてでもその機械を破壊しなければ、ミッドチルダを救う事はできない」

 

「は、はい」

 

「航海長、頼んだぞ」

 

「うむ、任せろ」

 

レイセンはガイアをウルクへと強行着陸させた。

 

まほろばが最初に強行着陸をして、ウルクの建造物を薙ぎ倒していたので、ガイアは比較的ソフトにウルクへ着陸できた。

 

ニュートリノ・ビームを始めとし、ウルクの各所からかき集めたエネルギーをバイパス接続して、ワープ装置を強制作動させる。

 

 

まほろば 艦橋

 

「艦長、アレを!!」

 

うららが総統府に気づき、指をさしながらギンガに声をかける。

 

ギンガも総統府を見た時、ウルク後部にある山岳部の下部にあるワープ光線発射口からアクエリアスに向かってワープ光線が照射される。

 

「あれが、アクエリアスをワープさせているワープ光線‥‥」

 

「となると、あの建物が敵の司令部‥‥あそこにワープ光線を制御する機械が‥‥艦長、あの建物に主砲を集中させてワープシステムを破壊します」

 

「うん」

 

「主砲発射用意!!目標、敵司令部!!撃て!!」

 

まほろばの第一~第五までの主砲が全て総統府へと照準を合わせて砲撃を開始する。

 

 

ガイア 艦橋

 

「まほろばが砲撃を開始しました」

 

「目標はあの一番高い建造物です」

 

「どうやらあの建物が敵の司令部みたいだな」

 

「となると、あそこに次元跳躍をする装置が‥‥」

 

「ああ、あの建物を破壊すれば、アクエリアスはもう次元跳躍は出来ない。こちらもあの建造物にジャスティス・カノンを撃ち込め!!」

 

まほろばが総統府を砲撃した事で、ガイアの方も総統府へジャスティス・カノンを撃ち込み始めた。

 

「全然被害がない‥‥」

 

「あの建物周辺に強力なバリアが張られている模様です」

 

「またバリアか‥‥くっ、連射してブチ破れ!!バリアのエネルギーとて永遠に持つ筈がない!!」

 

まほろばのショックカノン、ガイアのジャスティス・カノンの連射をくらっても総統府に張られたバリアは強力なモノの様で、総統府には被害を与えられないが、エネルギーを使用し続ければ、バリアも時期に切れると判断し、まほろばとガイアは攻撃の手を緩めない。

 

一方のディンギル側も総統府のバリアだけで時間稼ぎをする訳でもなく、多数の迎撃機を出撃させてきた。

 

迎撃機が出て来たと言う事はクロノの予見通り、総統府のバリアにも限りがあると言う事だ。

 

せめて主砲だけでも潰して時間を稼ごうと言う事なのだろう。

 

 

まほろば 艦橋

 

「敵戦闘機、多数来襲」

 

「高角砲群、対空戦闘開始!!」

 

総統府への砲撃だけでなく、襲来して来た迎撃機を迎え撃つために、まほろばは対空砲を撃つ。

 

建造時、まほろばのパルスレーザー砲塔は左右に三基、計六基しかなかったが、これまでの航海から、まほろばの防空性能の脆弱性が指摘されてヤマトの様にパルスレーザー砲塔を増設していた。

 

その為、襲来したディンギル軍の迎撃機を次々と撃ち落していくが、如何せん数が多い。

 

しかし、ディンギル軍は味方の犠牲を気にする事も無く、まほろばとガイアに攻撃を仕掛けてくる。

 

まほろばとガイア、ディンギル、共に時間との勝負であり、なりふり構ってはいられない混戦のような状況だった。

 

 

ウルク 総統府

 

「急げ!!二十回目のワープを急ぐのだ!!この防御スクリーンは長くはもたん!!」

 

強力なバリアであったが、まほろばのショックカノンとガイアのジャスティス・カノンの連射を受け続け、徐々にバリアも薄くなってきて総統府にも被弾し始めた。

 

一応、総統府なので、ウルクの中にある多数の建造物の中でも、装甲板が張られていて頑丈に出来ているのだが、やはりこのまま攻撃を受け続ければ総統府内にあるワープ装置が破壊されてアクエリアスをワープさせることが出来なくなってしまう。

 

ルガールにも焦りが出始める。

 

(こうなれば、直接乗り込んで根切りにしてやる!!)

 

「陸戦隊を神殿エリアに集結させろ!!アクエリアスのワープ終了まで何としてでも奴らを抑えるのだ!!私が指揮を執る!!」

 

ルガールは傍に控えていた幕僚数名を連れて、総統府の地下にある神殿までの直通リニアに乗って、短時間で神殿まで辿り着く。

 

そして、神殿内に入ると邪神像の前に鎮座してあるロボットの馬‥‥ロボットホースへと騎乗した。

 

ルガールが神殿の外に出るとそこには同じ様にロボットホースに騎乗した兵士たちの姿があった。

 

眼下にはウルクに着陸したまほろばとガイアの姿がある。

 

「総攻撃は今だ‥‥怯むな!!進め!!」

 

ルガールは先陣をきって山間部をロボットホースで駆け降りる。

 

「神々よ!!我を護れ!!」

 

ルガールその姿はまさに源平合戦にて一ノ谷の崖を降りて平家に奇襲をかけた源義経を彷彿とさせた。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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