星の海へ   作:ステルス兄貴

277 / 294
二百六十八話 ウルク攻防戦

 

 

此処で視点はウルクに強行着陸をしたまほろばとガイアから、ミッドチルダに帰還後にナカジマ一家を乗せて宇宙へとんぼ返りしたジャガーノートへと移る。

 

なお、時系列はまほろばとガイアがアクエリアスの十九回目のワープ地点を目指している時まで時間を遡る。

 

大急ぎでミッドチルダを出航したジャガーノートは、機関を全開にしてある場所を目指していた。

 

途中経由する管理世界に関しては直ぐに補給できるように補給艦を手配していた。

 

そして、補給終了と同時にフルスピードで何処かへと目指して行く。

 

次元跳躍も出来る距離最大の次元跳躍を行う。

 

「あの‥八神艦長、一体何処に向かっているんですか?ギン姉の所に向かっているんですよね?」

 

ジャガーノートに乗艦していたスバルが艦橋に来てはやてに訊ねる。

 

ゲンヤは管理局を退職し、今は民間人なので、管理局の艦内を好き勝手にうろつく事は出来ない。

 

なので、現役局員であるスバルがナカジマ家代表で、はやての下へと赴き、ジャガーノートの目的地を訊ねて来たのだ。

 

「勿論、ギンガの所に向かうで、でも、その前にどうしてもよらなければならない場所があるんや‥‥」

 

「えっ?それって何処なんですか?」

 

「それは秘密や」

 

「は、はぁ‥‥」

 

はやてが自分と違って“海”に所属しているから、“陸”所属の自分には詳しい行き先を教えてくれないのかと思った。

 

しかし、はやての言う事も分からなくはない。

 

なので今は、はやての言葉を信じてギンガとの再会を待つしかなかった。

 

「八神の奴はなんて?」

 

スバルがナカジマ一家のために用意された客室に戻るとゲンヤがジャガーノートの行き先を聞いて来た。

 

「『秘密』だって」

 

「そうか‥まぁ、八神の奴が無駄な行動をとる訳がねぇし、何か策でもあるんだろう」

 

「そ、そうかな?」

 

ゲンヤは、はやての行動を信じているのだが、スバルとしては一分一秒でも早くギンガと会いたいので、この艦が何処に向かっているのか?

 

いつになったらギンガと会えるのか知りたかった。

 

やがて、ジャガーノートはとある星系にたどり着くのだった‥‥

 

 

此処で時間を元に戻し、視点もウルクに強行着陸をしたまほろばとガイアへと戻る。

 

まほろばとガイアはアクエリアスの二十回目のワープを阻止するために、

 

一方のディンギル軍はアクエリアスをワープさせるために必死の攻防を繰り返していた。

 

そんな中、ディンギルのルガール大総統は決定打を決めるために自身が指揮をしてウルク後部にある山の頂上にある神殿に配置されていたロボットホースに跨り、騎兵を組織して山を駆け下りて奇襲をかけてきた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

山間部をロボットホースで駆け降りている中、まほろばとガイアの主砲が沈黙する。

 

多数の小型戦闘機の攻撃を受けて射撃システムに損傷を受けたみたいだ。

 

しかし、パルスレーザー砲塔は健全で未だに対空戦闘を継続している。

 

ロボットホースで山を駆け降りているルガールは、沈黙したまほろばとガイアの主砲を見て、

 

「見よ!!敵の砲塔は沈黙し始めたぞ!!兵士たちよ進め!!敵艦を占領するのだ!!」

 

ルガールは目を吊り上げ、声を上げて兵士たちを鼓舞する。

 

「第一砲塔、第二砲塔損傷!!砲撃不能!!」

 

「第三、第五主砲沈黙!!」

 

「敵の戦闘機は?」

 

「まだいます!!」

 

「パルスレーザー砲塔及び副砲は健全で対空戦闘を続行中!!」

 

「ん?艦長、山間部より敵の騎兵がこちらに駆け降りてきます!!」

 

「騎兵!?」

 

「はい。モニターに表示します」

 

艦橋のメインモニターにはロボットホースで山間部を駆け下りて来るディンギル軍の兵士たちの姿が映し出される。

 

「‥‥本当に騎兵ね」

 

「ですが、兵士たちが乗っている馬‥あれは生物ではなく機械に見えますが‥‥」

 

(機械で出来た馬‥‥もしもJS事件前にスカリエッティが知ったら、馬型のガジェットなんてモノを造り出していたかもしれないわね)

 

モニターに映るロボットホースを見て、フェイトはそんな風に思っていた。

 

「連中の目標は本艦とガイアよ。手空きの者は全員、第一級白兵装備で前甲板に集結!!迎撃用意!!」

 

「ガイアでも確認できていると思うけど、ガイアに援軍を回す余裕は残念ながらないわ。ガイアも白兵戦の用意をしてもらうように伝えて」

 

「了解」

 

ティアナは乗員に白兵戦の用意をする様に指示を出し、ギンガはメイリンにガイアでも白兵戦の用意をする旨を伝えるように指示を出す。

 

メイリンはガイアにロボットホースに乗ったディンギル軍の兵士たちが接近している事、

 

彼らの目的がまほろばとガイアの占領若しくは内部へ侵入し、艦内を破壊するのが目的である事を伝える。

 

「医務室は負傷者の受け入れ態勢をしておいて」

 

『了解』

 

白兵戦となれば、敵味方問わず死傷者が出る。

 

助けられる命ならば、助けたい。

 

ギンガは医療班には万全の治療体制をとらせた。

 

白兵戦の準備を進めている中、ティアナとうららもヘルメットを被り、コスモガンを取り出す。

 

「艦長、私たちも白兵戦に参加します」

 

「それじゃあ、俺も‥‥」

 

ノイマンも座席から立ち上がると、

 

「いえ、航海長はこのまま待機しておいて」

 

「えっ?でも‥‥」

 

「いつ、艦を動かす事態になるか分からないでしょう?」

 

「は、はい」

 

ティアナとうららはノイマンには待機を促して艦橋を後にする。

 

「ぎ、ギンガ、私も行った方が良いのかな?」

 

ティアナとうららが白兵戦に参加していく光景を見て、フェイトはギンガに恐る恐る自分も白兵戦に参加した方が良いのかを問う。

 

「いえ、フェイトさんはあくまでも本艦のオブザーバーで乗艦しています。そのゲストを危険にさらす訳にはいきません」

 

「‥‥」

 

ギンガはフェイトに白兵戦に参加する必要は無いと言うが、ティアナやうららたち大勢のまほろばの乗員たちが自分たちの為に命を懸けて戦っていると言うのに、自分はただ見ているだけの現状にフェイトは無力感を覚える。

 

まほろばからディンギル軍の騎兵隊が山間部より接近している知らせを受けたクロノも、

 

「武装隊及び手空きの者も武装して迎撃準備!!」

 

白兵戦の準備を命じる。

 

「デバイスの設定は非殺傷設定から殺傷設定に変更せよ」

 

「えっ?殺傷設定ですか!?」

 

クロノの命令にミリアリアが思わず声が裏返りつつも聞き返す。

 

「向こうはこちらを殺す気で来るんだ。ならば、こちらもそれ相応に迎え撃つ」

 

「は、はい」

 

ガイアの武装隊もクロノの命令に戸惑いつつもデバイスを非殺傷設定から殺傷設定に変更し、ディンギル軍の騎兵隊を迎え撃つ。

 

「いい?行くわよ!!」

 

『応!!』

 

まほろばの前甲板には、コスモガン、AK-01 レーザー自動突撃銃、メタルストック・G88 大型手榴弾で武装した乗員たちが出ると、白いロボットホースに跨ったルガールを先頭にディンギル軍の騎兵隊が迫って来る。

 

上空を飛んでいた戦闘機群は味方‥特にルガールへの誤射を防ぐためにまほろばの上空からガイアの方へと向かう。

 

まほろばの乗員たちは甲板に上がって来たディンギル軍の騎兵に向かってコスモガン、AK-01 レーザー自動突撃銃で攻撃する。

 

山間部をロボットホースで駆け降りて来たディンギル軍の騎兵は一ノ谷を下り下りて来た義経たち源氏軍の様であったが、甲板上では長篠の戦における武田軍の様にバタバタとコスモガン、AK-01 レーザー自動突撃銃の銃撃を受けてロボットホースから落馬していく。

 

しかし、ディンギル軍側も射的の的になる訳でもなく、手にしたビームライフル、ロボットホースの頭部に武装されていた小口径のパルスレーザーで攻撃して来る。

 

ロボットホースは地球に生息しているサラブレッドと同じ大きさで、ロボットなので、普通の馬と違って息疲れなどはしない。

 

ロボットホース自体が被弾して壊れるか、騎乗している兵士が落馬しない限り動き続ける。

 

そして、騎乗している兵士も一見、重そうな鎧を身に纏っているが、意外にもロボットホースの動きは軽く素早かった。

 

これも生物の馬ではなく、ロボットである事が大いに関係している。

 

まほろばの乗員たちからの攻撃を受けたディンギル軍の騎兵はその快足を活かしてまほろばの甲板上を縦横無尽に暴れまわる。

 

その間もワープ光線はアクエリアスへ放射され続けており、

 

「アクエリアスが変化し始めました!!」

 

「‥‥」

 

アクエリアスの青かった色が段々とオレンジ色に変化していく。

 

(アクエリアスが‥‥急がないと‥‥でも‥‥)

 

ティアナは前方から迫って来たディンギル軍の騎兵に向けてコスモガンを撃つ。

 

当然、殺傷設定だ。

 

ティアナからの銃撃を受けた騎兵は喉と額にコスモガンを浴びてロボットホースから落馬して斃れる。

 

その間に、別の騎兵がロボットホースに装備されているパルスレーザーでティアナを撃って来た。

 

「うわっ。危なっ!!」

 

ティアナは咄嗟に身を翻して物陰に隠れる。

 

「ふぅ~‥‥あの馬自体にも攻撃機能があるなんて‥‥まさに馬型ガジェットね」

 

ティアナもロボットホースを見て、図らずもフェイトと同じ印象を抱くのだった。

 

そんな中、多数のディンギル軍の騎兵たちの中で、黒いロボットホースの中で一騎だけ、白いロボットホースが居た。

 

白いロボットホースに乗った人物はまさに三国志に登場する呂布‥鬼神の如き無双でまほろばの乗員たちを銃撃している。

 

「あっ‥‥」

 

その様子をまほろばの艦橋後部から一人の少年がジッと見つめていた。

 

「あの白いロボットホースに乗った奴が指揮官‥アイツを何とか斃せれば‥‥」

 

ティアナは白いロボットホースの後を追う。

 

白いロボットホースに乗った人物は、背後から迫るティアナの存在に気づいたのか、ロボットホースのパルスレーザーでティアナを銃撃して来る。

 

ティアナは伏せになりつつも応戦する。

 

すると、白いロボットホースの人物は翻り、どこかへと行ってしまった。

 

「くっ‥‥逃げられたか‥‥」

 

ティアナは遠ざかっていく白いロボットホースを悔しそうに見つめる。

 

そして、ティアナとは別にまほろばの艦橋から見ていた少年も何を思ったのか行動を開始する。

 

白いロボットホースに乗った人物は何処かに消えたが、まだ黒いロボットホースに乗ったディンギル軍の騎兵は大勢居る。

 

「このままあの連中を相手にしていると、時間が‥‥」

 

既にまほろば、ガイアの主砲は機能しておらず、ワープ光線はアクエリアスへと放射され続けている。

 

ディンギル軍はアクエリアスのワープ終了まで時間を稼げばいい‥‥

 

この状況下ではディンギル軍側が有利だ。

 

主砲に代わって総統府へ打撃を与えてワープ光線を止めなければならない。

 

「航海長!!」

 

『は、はい!!』

 

ティアナはインカムを操作して艦橋に居るノイマンに通信を送る。

 

「このままだと時間がなくなって、アクエリアスがワープしてしまう‥私はコスモゼロで攻撃を防ぐから、艦を持ち上げて航空隊を出撃させて」

 

『りょ、了解』

 

「通信長」

 

次いでティアナは通信長のメイリンに通信を繋ぐ。

 

『はい』

 

「航空隊には一時、白兵戦を取りやめて急ぎ格納庫に集合させて出撃準備をさせて、それとカタパルトにコスモゼロをセットして」

 

『了解』

 

艦載機を出撃させるようにノイマンに伝えたので、艦が持ち上がり準備出来次第すぐに出撃させるためにパイロットたちを予め機体に搭乗させるようにパイロットたちには格納庫に集めた。

 

ティアナはノイマンとメイリンに指示を与えると、まほろばの艦尾にあるカタパルトへと走る。

 

ティアナが艦尾のカタパルトに辿り着くとコスモゼロが用意されていた。

 

ティアナはコスモゼロに飛び乗り、コックピットの計器を急いでチェックする。

 

そして操縦桿を握りしめてコスモゼロを発進させる。

 

コスモゼロは噴射口から爆発したような火を噴きカタパルトから発進する。

 

カタパルトから発進すると、ティアナは操縦桿を引いて、コスモゼロを急上昇させる。

 

コスモゼロの発進を確認した敵の小型戦闘機がガイアからコスモゼロへと迫る。

 

ティアナはそれら敵の小型戦闘機を攻撃しつつ、まほろばの甲板上を走っているロボットホースに対して機銃斉射をする。

 

一騎、二騎と正確にロボットホースを撃破していくティアナ。

 

ロボットホースは地上兵器なので、空からの攻撃・防御対策はされておらず次々と撃破されていく。

 

小型戦闘はまほろば、ガイアの主砲にダメージを与えるだけではなく、空からの攻撃に対してロボットホースを守護する任務を与えられていたのだが、ティアナのコスモゼロをなかなか撃墜出来なかった。

 

それはこの小型戦闘機は大気圏内での使用を目的されている機体であり、速度もキャノピーが設けられていない事から、パイロットを保護するためにそこまでの速度はでない造りとなっている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

一方、コスモゼロは大気圏・宇宙空間の両方で使用出来る機体なので、速度の差が大きく出たのだ。

 

ティアナは、不図ウルクの上空を見上げて蒼からオレンジ色になったアクエリアスの姿を睨む。

 

(航海長、急いで!!)

 

ロボットホース、そして敵の小型戦闘機を撃破しながらティアナは味方の航空隊の出撃を待った。

 

その頃、艦橋ではノイマンがティアナの指示通り、航空隊を出撃させようとしていた。

 

「艦載機発進口オープン」

 

『あいよ!!艦載機発進口オープン!!』

 

ノイマンは機関室に居る柳原に連絡する。

 

機関部の修理のために柳原は艦橋から機関室に下りていた。

 

ノイマンから急遽航空隊を出撃させる旨の連絡を受けた柳原はパネルを操作するが、艦底からは不気味な軋み音が鳴り、艦底部がウルクの地面にめり込んで行く。

 

『だ、ダメだ!!航海長!!艦底部が地面にめり込むだけだ!!』

 

「出力は上がりませんか!?」

 

『まだ、エネルギー伝導管の修理が終わってねぇ!!』

 

「航海長、急いだ方が良い!!計測の結果、アクエリアスが二十回目のワープをするまであと一時間しかない!!」

 

(あと一時間‥‥どうしよう‥‥)

 

アクエリアスの状態を経過観察していたアルバートが二十回目のワープまでのリミットをノイマンに伝える。

 

アルバートの報告はフェイトにも聞こえており、思わず窓外のアクエリアスに眼をやる。

 

一時間と言う時間の長さを 『まだ一時間もある』 『あと一時間しかない』 とどちらにとらえるかは人それぞれだろうが、今戦っているまほろば、ガイアの乗員たちは『あと一時間しかない』 そしてディンギル側は『まだ一時間もある』 と捉えるだろう。

 

とは言え、既にアクエリアスは星全体がオレンジ色から赤く透け始めていた。

 

状況はJS事件の際、聖王のゆりかごが大気圏上に浮上するタイムリミットよりも切迫している。

 

まほろばの周囲ではティアナがコスモゼロで敵の小型戦闘機を迎撃し、甲板では乗員たちがロボットホースとの攻防を繰り広げている。

 

ガイアの甲板、周囲でも似たような光景が繰り広げられるおり、武装隊はデバイスで必死にロボットホースと敵の小型戦闘機を迎撃していたが、まほろばよりも対空火器が少ないガイアでは、空戦魔導師に大きな被害を出していた。

 

チンクも甲板でロボットホース相手に奮戦しており、

 

「ランブルデトネイター‥‥」

 

スティンガーを投擲してまるで地雷の様に爆発を起こさせてディンギル軍の騎兵をロボットホースから落馬させていた。

 

「くっ、キリがない‥‥」

 

しかし、次から次へと湧き出るように迫って来るディンギル軍の騎兵にチンクは思わず顔を歪ませる。

 

(こいつらはこいつらなりの正義があっての事なのだろうが、此方にもミッドに居る家族や仲間たちのためにも負ける訳にはいかぬのだ!!)

 

JS事件時、管理局と敵対し、今はその管理局に所属しているチンクだからこそ、正義は決して一つではない事を理解している。

 

彼らは彼らなりの理由を持ってミッドチルダを欲している。

 

だが、既にミッドチルダに住んで居る自分たちからしてみたらそれは決して受け入れざる正義だ。

 

だからこそ、自分たちは大切な人を守るために戦う。

 

それが今、ディンギル軍と戦っているチンクたちの正義なのだ。

 

まほろば周辺でロボットホース、敵機の相手をしているティアナは未だに航空隊が出撃する様子がない事にノイマンにあとどれくらいかかるのか、現状確認をするために通信を送る。

 

「航海長、航空隊はまだ出撃できないの!?」

 

『すみません、もう少し待ってください。エネルギー伝導管の修理が終わっておらず、艦が上手く動かないんです。‥‥えっ?あっ、副長。機関長からまほろばを浮上させる方法が見つかったみたいです!!』

 

「何でもいいから早くして!!」

 

『わ、分かりました』

 

柳原がノイマンに提案したまほろばを浮上させる方法‥‥それは、ロケット・アンカーを岩山へ打ち込み、鎖を巻き取ると同時に補助エンジンを作動させ、潜水時に使用する圧縮空気を放出すれば、発進口が開くくらいは浮上できるらしい。

 

タイムリミットも迫っているので、四の五の言っている暇はない。

 

ノイマンは直ちに実行した。

 

「ロケット・アンカー、発射!!」

 

まほろばの艦首から勢いよく放たれたロケット・アンカーは岩山にがっしりと打ち込まれた。

 

ノイマンはそれを確認すると、連動装置のスイッチを入れてレバーを引くる。

 

すると、金属が擦れるような摩擦音を立ててロケット・アンカーがゆっくりと巻き取られはじめた。

 

「補助エンジン、点火」

 

続いて補助エンジンの作動レバーを引くと補助エンジンが点火する。

 

補助エンジンが点火した後もロケット・アンカーの鎖の巻き取りの速度を調節する。

 

「圧縮空気口オープン」

 

艦底部にある空気口からも勢いよく大量の空気が噴射される。

 

「たのむぞ‥‥なんとか浮いてくれ‥‥」

 

ノイマンは祈るように呟く。

 

まほろばの艦尾は徐々に動き始め、わずかながらも浮上した。

 

まほろばが突如、動き始めた事で乗員たちは一時戦闘を止めて何かに掴まり振り落とされない様にする。

 

ロボットホースに乗っていたディンギル軍の騎兵たちもまほろばの甲板が動き始めた事で一次攻撃を止めた。

 

まほろばの艦尾は更に浮上し、艦首部の艦底部がウルクの地面に接触する。

 

艦底部からは圧縮空気が放出され続け、ロケット・アンカーはギリギリまで巻き取られていく。

 

まほろばがある程度の高度で浮上している状態を保つとまほろばの乗員たち、ディンギル軍の騎兵たちともに再び戦闘を継続する。

 

格納庫では、パイロットたちが既に自分の機体に搭乗しており、発進口の開口扉が開くのを待っている。

 

「まだ開かないの!?」

 

山本はイライラしながら眼前の開口扉を見ながら声を上げる。

 

艦尾が振動しつつ少しずつ浮上しているのはコスモパイソンのコックピット内にいてもはっきりと分かった。

 

だからこそ、浮上速度がゆっくりな事にイライラが募る。

 

やがて、発進口が開く。

 

「開いた!!全機発進!!」

 

格納庫内はコスモパイソンの噴射音で満たされる。

 

そして、山本機を先頭にコスモパイソンは次々とまほろばを発進していく。

 

まほろばの医務室では白兵戦前に負傷者の受け入れ態勢を整えていたが、甲板で負傷者を医務室へ運ぶ医療班・生活班も戦闘とは別の意味で悪戦苦闘していた。

 

負傷者を運んでいる最中は両手が塞がっているので、敵に反撃する事が出来ない。

 

その為、戦場から負傷者を運ぶのは敵の兵士と戦う事よりも危険が伴う。

 

第九管理世界での戦いで彼らは撃沈された管理局艦の乗員を救助中の救助隊員たちに向かって機銃斉射して来た連中だ。

 

赤十字マークがあるから敵は自分たちを狙ってこないなんて理屈はディンギル軍には通じない。

 

「倒れている者は生死問わず、運び込め!!」

 

「は、はい」

 

しかし、負傷者をこのまま甲板に放置すれば、助かる命も助からない。

 

仲間の命を助けるために医療班・生活班所属の乗員たちも必死に戦った。

 

それは負傷者を収容した医務室も同じで、医務室からは負傷者たちの悲痛な声があちこちからしており、野戦病院さながらの光景であった。

 

「歯を食いしばって!!」

 

「うっ‥あぁぁ‥‥」

 

「こっちも手当お願いします!!」

 

「すぐに看るから安静な体勢で置いて!!」

 

「先生!!また怪我人です!!」

 

「そこに寝かせて!!」

 

石田も医務官として運ばれてくる負傷者の手当てを行っていた。

 

そんな中で、ふと医務室に設置されているモニターをふと見ると、まほろばの格納庫から次々と発艦していくコスモパイソンの姿が映し出されていた。

 

(コスモパイソンが発進した‥‥これで少しは形勢を有利に進められるかしら?)

 

石田はコスモパイソンが発進した事で、現状を打開できるのか不安そうにモニターを見つめていた。

 

まほろばから発艦したコスモパイソン隊はティアナのコスモゼロと合流を果たす、

 

「第一班は私とこのまま敵司令部の攻撃、第二班はまほろば、ガイア周辺の敵機とロボットホースを攻撃!!」

 

『了解!!』

 

ティアナは時間が無い事から航空隊を二分させて一方はワープ装置が設置されていると思われる総統府へ、もう一方はまほろば、ガイア周辺の敵の一掃に回した。

 

まほろば、ガイア周辺に展開している敵の一掃を任されたコスモパイソン隊はロボットホースに機銃斉射をする。

 

乗っていた騎兵たちは次々とロボットホースから落馬する。

 

敵の小型戦闘機もガイアの空戦魔導師、まほろばのパルスレーザー、そしてコスモパイソン隊の攻撃を受けて次々と撃墜されていく。

 

上空と甲板‥両方からの攻撃で次第にロボットホースは甲板から追われて地上に降りて行く。

 

(くっ、あと一歩だった所を‥‥)

 

数を減らしていく味方のロボットホースの様子を見たルガールは、騎兵たちに

 

「やむを得ない‥退け、退けいっ!!神殿まで急ぎ後退せよ!!」

 

騎兵隊に対して撤退命令を下した。

 

ルガールの命令を受けた騎兵隊は全速で山間部にある神殿まで撤退して行った。

 

「敵の騎兵隊が‥‥」

 

「撤退していく‥‥」

 

「防ぎ切ったみたいだな‥‥」

 

甲板で応戦していたまほろば、ガイアの乗員たちは騎兵の動きに戸惑いつつも眼前の脅威が去った事を確認し、医療班・生活班の手伝いとして、負傷者の搬送を手伝った。

 

ロボットホースを走らせて山間部の神殿前広場まで来たルガールは、まほろばから発進していくコスモパイソン隊を一睨みした後、ロボットホースで神殿内へと入って行く。

 

他の兵士たちもロボットホースを広場へと起き、ルガールの後を追って神殿内へと入って行く。

 

そして、誰も居なくなった神殿前広場に現れたのはまほろばに居たディンギルの少年であった。

 

まほろばから此処まで隠れつつ走って来たのか少年の息は上がっていた。

 

しかし、少年は止まることなく神殿内へと走って行った。

 

一方、総統府への爆撃に向かったティアナたちは‥‥

 

総統府周囲に張られていたバリアも既にエネルギー切れを起こしたのか、展開されていらなかった。

 

「撃て!!」

 

そんな総統府へティアナのコスモゼロ以下、コスモパイソン隊はパルスレーザーやミサイルで攻撃をする。

 

ティアナと山本は同じ攻撃を何度もしかける。

 

「飛行長!!今度は同時に急降下攻撃をするわよ!!」

 

「了解!!」

 

ティアナのコスモゼロと山本のコスモパイソンは左右からそれぞれ急降下し、総統府の至近距離からミサイルを放った。

 

そのミサイルは総統府の装甲を貫通し、司令部まで届くと内部で爆発した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁー!!」

 

司令室内でワープ装置を操作していた兵士たちはたちまちその爆発と衝撃に巻き込まれる。

 

「わ、ワープマシンが‥‥」

 

床に倒れた兵士が見たのは司令部に設置されたワープ装置が使い物にならない程の損傷を受けた姿であった。

 

コントロールを失った事で、アクエリアスへ放射されていたワープ光線は消えた。

 

「攻撃成功‥ワープ光線の消失を確認‥‥副長、どうやらワープ装置を破壊したみたいです」

 

「ええ‥‥やったわね」

 

既にもう一つの地球の住人となっていたティアナであるが、ミッドチルダに何の思い入れがないとは言えず、これでミッドチルダに居るスバルやなのはたちが助かったとホッと胸をなでおろした。

 

「艦長、ワープ光線が消失しました!!」

 

「航空隊がワープ装置を破壊したみたいね」

 

「よかった‥これで、ミッドチルダは救われる‥‥」

 

林から報告を受けて、ギンガとフェイトもティアナ同様、ホッとする。

 

ワープ光線の消失はガイアでも当然、確認出来た。

 

「ワープ光線消失を確認!!」

 

「やった!!」

 

「ふぅ~‥‥ギリギリ間に合ったようだな」

 

ガイアの艦橋でも歓喜の声があふれ出た。

 

「これで、アクエリアスは次元跳躍は出来ない」

 

「此処からの位置なら、光速二分の一の速度でもミッドに到達するまで三百年かかります」

 

「三百年の時間があれば、十分に対策はとれるな‥‥」

 

本来の接近予定の六千年から大分短縮してしまったが、それでも管理局にとっては、三百年の時間でも十分な時間だ。

 

次元航行艦隊の編制、住民の避難用の次元航行船の建造も三百年の時間があれば、揃える事も出来る。

 

ミッドチルダをアクエリアスの水害から救えた事に歓喜するが、それは束の間の出来事であった。

 

停止したはずのワープ光線放射口から再びワープ光線がアクエリアスへ放射された。

 

「えっ!?」

 

「あ、アクエリアスへのワープ光線の放射が再開されました!!」

 

「なっ!?」

 

「ど、どうして‥‥」

 

「なんで‥止まったんじゃないの!?」

 

誰もがもうアクエリアスの脅威が去ったと思った中でのワープ光線の復活はまさに青天の霹靂であった。

 

「‥‥」

 

誰もが驚愕している中、アルバートだけは冷静にこれまでの地形探査から得たウルクの全体像を確認しており、

 

「ん?これは‥‥副長!!」

 

何かを見つけてティアナへと連絡を入れた。

 

「恐らく何処かにサブコントロール機構があるのだろう」

 

「サブコントロール‥‥それって何処に!?」

 

総統府以外にもこのウルクにはもう一つ、ワープ光線を放射出来るシステムが存在する事をアルバートから聞いたティアナはウルクの地表を凝視する。

 

全長が数十キロと限定的であるが、それでもこの状況下でウルクの地表全てを攻撃する時間はない。

 

短時間で尚且つピンポイントで攻撃しなければ、アクエリアスが最後のワープをしてしまう。

 

最後のワープを許せば解決策は現状残されていない。

 

「彼らが古い文明を継承している民族ならば、都市は神殿を中心に構成されている筈だ。もう一つのコントロール機構は山頂にある神殿にあるのかもしれない!!」

 

ティアナはアルバートの指摘された山頂を見るとそこにはピラミッドみたいな建造物の姿を確認する事が出来た。

 

(あれが技師長の言う神殿ね‥‥)

 

「了解!!全機、山頂にある神殿へ向かえ!!」

 

ティアナはもう一つのワープ装置を破壊するためにコスモゼロの機首を総統府から山間部の頂上にある神殿へと向ける。

 

山本たちコスモパイソン隊もコスモゼロの後に続く。

 

総統府はバリア機能はあったが、防御兵装は無かった。

 

しかし、山間部には対空砲台が多数設置されており、コスモゼロ、コスモパイソン隊の接近を察知すると、対空砲台は火を吹いて来た。

 

コスモゼロと山本のコスモパイソンは上手く、その対空砲火を潜り抜けて神殿に接近する事が出来たが、中には被弾して撃墜される機体も居た。

 

だが、ティアナたちは仲間たちの犠牲を悲しむ間もなく、眼前の目標地点を目指す。

 

「神前の下部に広場のような場所があるわ」

 

「ええ、此方でも確認出来ました」

 

「あそこに着陸するわ!!」

 

「了解」

 

ティアナはコスモゼロの機首を下げて着陸態勢をとる。

 

対空砲火を潜り抜けたコスモゼロ、コスモパイソン隊は次々と神殿前の広場に強行着陸していく。

 

その様子をまほろばの艦橋からモニター越しで見ていたフェイトは、

 

(私たちの為に‥‥)

 

対空砲火で撃墜されたコスモパイソンの姿を見てギュッと心が締め付けられた。

 

やがて、神殿前の広場に強行着陸をしたコスモゼロ、コスモパイソンの姿が映し出され、コックピットからは次々と隊員たちが降りて行くのが確認出来た。

 

そして、その中にはティアナも居た。

 

(ティアナ‥‥)

 

フェイトはティアナの無事と同時にワープ装置の破壊が達成される事を祈った。

 

「再計測の結果、最終ワープまであと、ニ十分」

 

アルバートが二十回目のワープまでのタイムリミットを再計測し伝える。

 

(あと二十分‥‥)

 

一時的にワープ光線が止まったが、それは焼け石に水であり、タイムリミットは確実に迫っていた。

 

「時間がない急ぐわよ!!」

 

「はい!!」

 

ティアナたちが神殿内の通路を警戒しながら進んで行くと、神殿の中央部らしき場所に巨大な邪神像が姿を現した。

 

「うわっ、趣味悪‥‥」

 

山本が巨大邪神像を見て、顔を顰める。

 

「多分、あの像は彼らが信仰する神の姿なのでしょうね‥‥確かに趣味が悪いわ」

 

眼前に現れた巨大邪神像に驚きつつも時間がないので、この神殿内のワープ装置を捜すために再び動き出すティアナたち。

 

すると、バルコニーから敵の兵士たちがビームライフルで銃撃して来た。

 

ティアナは咄嗟に避けて、バルコニーに居る敵の兵士を撃つ。

 

「うわっ!!」

 

「ぐわっ!!」

 

バルコニーに居た兵士たちの銃撃を皮切りに神殿内の柱や祭壇の影から兵士たちが飛び出してきてティアナたちに銃撃を加えて来る。

 

ティアナたちも柱の影に隠れて応戦する。

 

「あくまでも連中は時間稼ぎに徹底しているわね‥‥」

 

ワープ装置がこの神殿の何処にあるのか分からない状況下で敵の兵士の相手を一々していたら時間が無くなってしまう。

 

「副長!!此処は私たちに任せて、副長はワープ装置の破壊を!!」

 

「分かった!!援護してくれる!?」

 

ティアナが周囲を見渡すとエレベーターを見つける。

 

背を屈めてティアナは一目散にエレベーターに向かって走る。

 

そして、エレベーターの中に飛び込むと扉を閉めようとする。

 

しかし、ミッドチルダ、地球のエレベーターとは異なるので、どのボタンが扉を閉めるのか分からない。

 

そんな中、エレベーターの中に何者かが入り込んで来た。

 

「っ!?」

 

敵兵かと思いティアナはコスモガンの銃口をその人物へと向ける。

 

その人物の正体を見た時、ティアナはある意味で驚愕した。

 

「ちょっと、どうした貴方が此処に!?」

 

エレベーターの中に跳び込んで来たのは先日、まほろばの医務室で出会った少年であった。

 

少年は以前、此処に来た事があるかのようにエレベーターのボタンを押して扉を閉めた。

 

「機械のある部屋、僕知っている」

 

「えっ?どうして貴方が知っているの?」

 

「僕、此処に何度も来た事があるから」

 

「‥‥」

 

(ちょ、ちょっと、待って‥えっ?『此処に来た事が何度もある』‥それって、この子がミッドチルダを水没させようとしているディンギル星人って事じゃない‥‥!!)

 

少年が放った何気ない一言で、眼前に居る少年の正体を知ってしまったティアナ。

 

(でも、どうしてディンギル星人の子が管理世界に居たのよ!?)

 

(もしかして、管理局がディンギルにちょっかいをかけた?)

 

(確かに管理局なら考えられなくもないけど‥‥)

 

ディンギルがミッドチルダを狙う理由は管理局がディンギルにちょっかいを立てたからなのではないかと思ってしまう。

 

(でも、フェイトさんたちからはそんな話は聞いていないし‥‥)

 

この子がまほろばに乗艦したのは、まほろばが整備を受けていた第六十一管理世界だ。

 

しかし、フェイトからはディンギル星について何も情報を貰っていない。

 

フェイトたち管理局側が意図的に自分たちへ情報を隠していたのか?

 

そして、この少年は管理局が捕えた捕虜なのか?

 

でも、少年がまほろばに乗艦している時のフェイトの反応から見ると、少年がディンギル出身である事を知っている様にも見えなかった。

 

ましてや、まだ見た目、十代になったばかりの少年がスパイだなんて考えにくい。

 

一応、同僚でエリオ、キャロと言う特殊な事情を持った子たちも居たが、そんな特殊な前例がホイホイある訳がない。

 

管理局が既にディンギル星の存在を自分たちが遭難する前から知っていたのか定かではないが、一先ずは眼前の問題の解決が優先される。

 

この少年はワープ装置の制御室を知っている。

 

でも、この少年の出身は今、自分たちが敵対しているディンギル‥‥

 

罠の可能性もあるが、時間がない現状‥この少年の言葉を信じて制御室に案内してもらうしか手はなかった。

 

それはアクエリアスのワープ完了前の時間内で敵の目を掻い潜り、ワープ装置を破壊するのは不可能である。

 

ティアナは少年の案内の下、神殿内に設置されているワープ装置の制御室へと向かった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。