星の海へ   作:ステルス兄貴

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十九話 離反

 

 

防衛軍科学局分析室、そこには昨夜、就役したばかりの最新鋭艦、アンドロメダを見学した真田、良馬、古代の三人の姿があった。

 

「真田先輩、解析の方はどうでしたか?」

 

「その前にまず、コレを見てほしい」

 

真田は昨日良馬から渡された記憶媒体の解析結果より先に昨日、真田が言った『見せたいもの』から見せた。

真田がキーボードを操作すると、パネルには宇宙海図が表示され、その一点に光る点があった。

 

「これは、突然三日前から見え始めた光球だ。現在、太陽系外約170光年の位置にある」

 

「突然見え出した理由は?」

 

「加速して太陽系へ迫り、前面に発光ガスを伴った重力波が発生しているからだ。まぁパルサーとかクエーサーとか呼ばれている。電波星と同じパターンだ」

 

「クエーサー?でも、今まで確認されたクエーサーは赤色変化ばかりで地球から遠かって行くはずじゃあ‥‥」

 

「そうだ。遠ざかっていく物体のスペクトルは常に赤方向へずれる。だが、こいつは見ての通り、青方向にスペクトルが偏差している。これは歴史上はじめて発見された地球に近づくクエーサーなんだ‥‥拡大投影するぞ」

 

再びキーボードを弄り、めいっぱい光点を拡大するするとパネルには、

 

「これは彗星だ。しかもかなり巨大な‥‥」

 

パネルを見た古代が驚きの声をあげる。

古代と良馬の見ているパネルには巨大な白色彗星が映っていた。

 

「彗星状のクエーサーなんて初めてだよ。どんなものなのか想像もつかん。しかも前面に発生した恐ろしい重力波と高速中性子が針路上の遮るものを押し潰している」

 

「ですが、この巨大な彗星が例の通信と関係していると?」

 

良馬がこの彗星とあの謎の通信が関連しているのかと真田に問うと、

「そうだな。アナライザー、例の記憶媒体の中身を再生してくれ」

 

真田がアナライザーに解析した記憶媒体の再生を指示する中、古代は何の話だ?と首を傾げたので、良馬が古代に事情を説明した。

 

「デハ、再生シマス」

 

アナライザーが解析されたデータを再生すると、最初はピィー、ガーと言うノイズの雑音しか聞こえなかったが、徐々に人の声がし始めた。

 

『・・・・今・・・・私達の・・・・・巨大な・・・・・・あなた方・・・・・かも知れません・・・・・危機が・・・・・時間が・・・・・早く・・・・・誰かが・・・・・この通信を・・・・・早く・・・・・・立ち上がって・・・・・・・・・・』

 

「アト、再生不能デス」

 

真田の腕をもってしても記憶媒体に記録された音声をこれ以上再生するのは不可能だった。

 

「これは!?」

 

「救いを求めているんじゃないですか?」

 

「そのようだな」

 

「発信源は分からないんですか?」

 

「ここのコンピューターでは限界があってな‥‥ただ、エネルギーの強さと受信フィルターの消耗度から推測してかなり遠距離である事は間違いない。そして、発信された方角は、あの白色彗星が飛来してくる方向と奇妙に一致している」

 

「偶然にしては何か出来過ぎていますね。あの白色彗星と何か関係があるとみて良いでしょう」

 

「月村さんの言う通りです。それに俺達が攻撃を受けた未確認飛行物体とも無関係とは、とても思えない」

 

「古代君の言う通りならば早めに手を打っておくべきでしょう。もしこれが、宇宙の何処かで起こっている異変を誰かが知らせようとしているのならば‥‥そしてその異変が地球に向けられているのであれば、尚更です」

 

「それにこの通信が途切れ途切れになっているのは遠距離のせいではなく、妨害電波の影響かもしれません」

 

古代は通信の感度が悪いのは妨害電波の影響だと主張する。

遠距離から来た通信だが、あそこまでの強大なエネルギー通信だ。遠距離と言う理由で感度が悪くなるとはとても思えない。

ならば、誰かが意図的に通信を妨害していると、古代は思ったのだ。

 

「妨害電波?」

 

「そうです。かつてスターシアの通信がガミラスに妨害されていたのと同じように‥‥」

 

「それじゃあ、その妨害者が危機の張本人で、地球を狙う新たな侵略者かもしれないと?」

 

良馬はイスカンダルへの航海には参加していないがガミラスの強さは知っている。

もし、古代の推測通り、地球がその侵略者に狙われているのだとすると、その侵略者はガミラスと同等‥‥いや、それ以上の科学技術力と軍事力を持つ星間国家だと推測した。

 

「否定はできんな‥‥よし、この事案を防衛会議に提出して検討してもらおう」

 

「はい、それとヤマトの改造も急がないと」

 

「そうだな」

 

良馬と真田は謎の通信、白色彗星、第十五空間輸送補給護衛艦隊の遭難事件の事を資料に纏め、更に真田はその件と同時に第三ドックに係留中のヤマトの改造作業に取り組んだ。

ヤマトはガミラス戦役時のまま、辺境パトロール任務に就いていたが、防衛軍の武器や造艦の技術力はヤマトが地球を留守にしている間、格段に進歩していた。

今回、ヤマトはそれらの技術を用いて大改装する事となった。

従来の主砲を取り外し、射程距離が延びた新型の砲塔に変え、動力部を縮小し、その余裕が出来たスペースには中型雷撃艇を搭載した。

そして、艦首のバルバスバウ(球状船首)の内部にはタイムレーダーを搭載した。

これは、有効エリア内で、過去に起こった事をパネルで見ることが出来る優れもので、敵を追撃する際に有効となる代物だ。

ヤマトの改装は順調に進んでいたと思えたが、その途中で待ったがかけられ、改装計画の一部変更‥‥ヤマトの火器管制システムと機関制御システムをアンドロメダと同様の自動管理方式に切り替えよと言う、司令部から命令が下った。

古代はこの命令に不服で司令部へ殴り込みをかけ、藤堂長官に命令の撤回を求めたが、決定が覆る事はなかった。

その直後、地球全土は突然の大停電に陥った。

原因は金星のエネルギー集積システムが停止した事だった。

突然の停電で交通網は麻痺、リニア路線ではリニア同士の接触事故や脱線事故が起こり、火災や爆発を起こす建物もあった。

リニア以外の交通でも信号機能の停止に伴う事故が各所で多発した。

この停電で、改装中のヤマトの改装作業はストップし、それどころか、クレーンで吊り上げていた資材がヤマトに落下し、一部改装作業をやり直さなければならない部分さえもあった。

この時、日本は夜であり、突然の大停電で辺りは真っ暗闇になった。

古代は暗闇の中、車を走らせ、ヤマトや真田の事が気がかりで車内電話でヤマトが係留されている第三ドックへ電話を入れたが、繋がらない。

焦る気持ちを抑え、古代は車を第三ドックへと急がせる。

しかし、その途中、瓦礫で道が塞がれており、進むことが出来なかった。

古代が車から降り、道を塞いでいる瓦礫を睨みつつ、ふと空を見上げると、人工の明かりの灯らない夜の空をあのカブトガニが飛び去るのを目撃した。

 

「あれは!?あの時の‥‥」

 

それを見て、古代はやはり地球は何者かの侵略を受けつつあるのだと確信した。

 

大停電は翌朝までには何とか復旧し、朝早くから瓦礫や事故車両の撤去作業が行われた。

そんな中、アンドロメダは金星へと出発した。

目的はテスト航海及び金星エネルギー集積基地の事故調査だった。

ヤマトは改修工事を再開し、遅れた分のスケジュールを取り戻さんと、機関部では徳川が作業員と共に作業を行っていた。

そんな中、真田と良馬が防衛会議用に纏めた資料が出来上がり、真田と古代はオブザーバーとして、良馬は第十五空間輸送補給護衛艦隊遭難の事件の救助者として防衛会議に参加した。

 

防衛会議は防衛軍司令部庁舎の会議室にて、防衛軍上層部と地球連邦政府高官との間で行われた。

 

「すると何かね?このままだとその彗星が地球に衝突する恐れがあるという事なのかね?」

 

彗星の資料を見た、政治家が防衛軍の幕僚に訊ねる。

 

「いえ、目下の所まだ詳しい針路は掴んでおりません。ですが、今のうちに対策を協議しておかねばと思い、この度、防衛会議を招集したわけであります」

 

防衛軍側は少々曖昧な答えとなる。

しかし、

 

「なあに、例え地球に接近しても先ごろ完成したアンドロメダをはじめ、波動砲装備の戦艦だけでも今や地球には数十隻、彗星の一つや二つ簡単に破壊してごらんにいれます」

 

軍の官僚の中で、参謀長の西郷は自信ありげに宣言した。

ヤマトの航海にて波動砲の威力は軍関係者ならば、ほとんどの者が知っている。

故に大型の彗星だろうと、防衛軍の波動砲搭載艦全てを当てれば、簡単に破壊できるだろうという自信が軍にはあった。

 

「大昔、ハレー彗星が接近したときにもそうした騒ぎがあったと聞きますぞ」

 

「はっきりとした針路が分からないのでは対策の立て様がないのではないか?公表して悪戯にパニックを引き起こすことになりますし」

 

政府はこの事実に関し、公表せず秘匿‥‥ひいては無視を決め込もうとしている。

 

「いや、古代艦長代理があえてこの資料を防衛会議に提出したのは地球だけの問題だけではないのだ。太陽系‥‥引いては銀河系全体に関係する問題でもある」

 

政治家どものお気楽思考に藤堂は待ったをかけるように発言する。

だが、

 

「しかし、長官、こんな不確かな情報だけで、事実を公表するわけにはいかんよ」

 

政府の高官はあくまでもこの件を無視しようとする意向を改めない。

政府高官のこの発言に古代はムッとした。

 

「くだらん、ガミラスとの戦争も終わった今、地球に危機などありゃせん、ありゃせん」

 

「やれやれ、人騒がせな話はいい加減にしてもらいたいですな」

 

(平和ボケ、ここに極まれりだな)

 

政府高官のこの言葉と態度に良馬は無表情のまま受け流すが、熱血漢の古代はそうはいかず、遂にキレた。

 

「お訊ねします!!」

 

古代の大声は会議場に響いた。

 

「地球は宇宙の平和を守るリーダーではなかったのですか?」

 

古代はアンドロメダの進宙式で大統領がスピーチで言った言葉を言い返し、政府高官に問う。

アンドロメダの進宙式の様子は、古代はその日の夕刊で知った。そこには進宙式で大統領が演説したスピーチ内容も記載されていた為、古代はその内容を知っていたのだ。

古代はこのスピーチの内容と今の地球連邦政府の姿勢に矛盾を感じ、政府高官にこの言葉を問うた。

古代のこの問いに政府高官は少し顔を歪めた。

自分達より若い若造が何を偉そうなことを・・・・とでも思っているのだろう。

 

「古代、やめろ」

 

真田は古代を宥めるが、それでも古代の怒りはおさまらない。

 

「もし、地球人が真に、宇宙の平和と人々の共存を願うなら、あのメッセージの内容を真剣に分析し、解明して、宇宙の果てだろうと何処だろうと救済の手を差しのべるべきなのではなないのですか!?」

 

古代の主張に藤堂はジッと目を閉じている。

 

「やめたまえ!!いつまで英雄気取りでいるんだ!!君はオブザーバーだ。防衛会議を批判する権利はない!!」

 

一人の高官が古代を黙らせようと机を拳で叩いた後、古代を指さしながら古代に負けない程の大声で言う。

その言葉に古代は黙って唇をかんだ。

結局謎のメッセージ通信も白色彗星の件についても政府は一切公表せず、無視を決め込む形となった。

次に良馬が遭遇した第十五空間輸送補給護衛艦隊遭難事件について話し合いが行われた。

良馬が証人として、経緯を話した。

当初は、ガミラスの残党の仕業ではないかと示唆されたが、現在の護衛艦の能力ならば、ガミラス艦と十分やり合える能力を有しており、残党と言う事で、そこまでの数ではないと推察され、現場にはガミラス艦の残骸は確認されていない事からガミラス残党の可能性は良馬自身が否定し、古代同様ガミラスとは違う他の星系からの侵略者の仕業ではないかと示唆する。

しかし、この事件に関しても政府は未知の惑星の侵略者との仕業ではなく、ガミラス残党の仕業ではないのならば、反連邦政府のテロリストか海賊の仕業か単なる偶発的な事故だと言い、決めつける始末だった。

 

(防衛軍でさえ、まだまだ艦艇が必要な時期に海賊やテロリストが最新鋭の護衛艦を撃沈できる艦艇を用意できるとはとても思えない。防衛軍の艦艇がテロリストや海賊に強奪されたという情報も無い。それに輸送船と護衛艦十数隻が一斉に事故?それこそありえないだろう)

 

良馬は何とか、第十五空間輸送補給護衛艦隊の遭難事件の件から謎のメッセージ通信と白色彗星の件を結び付けようとしたが、失敗に終わった。

この時、良馬は古代の時の様に政府高官や防衛軍上層部から生意気な若造が、と思われたが、発言を途中で止めさせられる事はなかった。

良馬はこの件に関してはオブザーバーではなく、ちゃんとした発言権を有しており、なにより良馬は世界中の政財界と深い関わりがある月村の家の出身者故、政府高官も下手に黙らせることは出来なかった。

遭難事件に関しては専門の事故調査委員会が設けられる事になったが、良馬や古代は防衛会議の様子から真面目に調査しないなと思った。

古代や良馬の求めた結果とは180度違う形で防衛会議は終了し、三人は庁舎の休憩室へと入った。

 

「くそっ!!」

 

古代は悔しさの余りに休憩室の壁に拳を叩き付けた。

 

「あいつら、最初からやる気が無いんだ。何が事故調査委員会だ。突然襲撃されたらどうなるんだ?しかも、それがガミラスを上回る敵だとしたら‥‥」

 

「古代君、落ち着け。地球はようやくガミラスから破滅の魔の手を逃れ、平和を取り戻したんだ。新たな敵‥そんなモノの存在を認めたくない地球連邦の高官連中の気持ちもわからない訳じゃない」

 

「古代、月村、その事だが、先日の大停電の原因だが、どうも金星のエネルギー集積基地が破壊されたためだそうだ」

 

「「破壊!?」」

 

大停電の原因がシステムのエラーやショートならば、特に気にも留めなかったが、原因が何者かによる人為的な破壊工作ならば話が違う。

 

「テロリストの仕業ですか?」

 

「アンドロメダの調査結果を待たなければはっきりした事は分からんが‥‥」

 

「敵の攻撃を受けたのかもしれないな‥‥もし、それがテロリストではなく、侵略者による攻撃だとしたら、相手は確実にガミラス以上の力を持っていますよ!!」

 

地球は今、冥王星までの宙域に無数の監視衛星やパトロール艦隊を周回させ警備にあたっている。

それらの防衛ラインを難なく突破し、更に地球をすり抜け、金星の基地を攻撃するのだから、その技術はガミラス以上のモノなのは明白だった。

休憩室が重い空気の中、

 

「月村良馬さん、月村良馬さん、至急、司令室へお越し下さい」

 

突然良馬の呼び出し放送が流れた。

 

「やれやれ、大方、政府や軍の上層部が煩い若造は宙(そら)に飛ばしてしまおうって魂胆だろうな」

 

良馬は軍帽を被り直し、この呼び出しの目的と政府高官連中の思惑を呟き、

 

「それじゃあ」

 

古代と真田に一声かけ、休憩室を出て行った。

良馬が休憩室を出て行った後、古代は真田に現在の状況でもヤマトを飛ばす事は出来るかと訊ねる。

古代の質問に真田は瞬時に古代が何をしようとしているのかすぐに察しがついた。

 

司令室に出頭した良馬にある命令が下された。

それは、良馬の予想通り、まほろば は本日18:00に出航し、訓練航海を再開せよと言う命令だった。

この状況下で地球を離れるのは悔しいが、自分は軍人である事から、良馬はこの命令に従った。

良馬は急ぎ まほろば の乗員に連絡を入れ、多少の混乱と出航時間のオーバーはあったが、まほろば はまた地球を離れ、再び星の海へと飛び立った。

そんな、良馬の下に数日後、司令部からヤマト追討令が下された。

なお、今回は良馬とギンガの二人は出発前、肌を重ねてはいない。

最初の訓練航海に出た際、良馬とギンガは帰ったら、互いに身体を重ねようと約束をしたのだが、今回の地球帰還は突発的な出来事であったし、いつまで地球に滞在出来るか、滞在期間が不明であり、尚且つ良馬にはやるべき仕事が沢山あったためである。

本音を言うと、二人ともベッドの上で互いの身体を堪能したかったのだが、今回は事態が事態なだけに諦めた。

 

まほろば が訓練航海に出てから数日後、

地球防衛軍司令部司令室にて西郷は藤堂にある事を報告する。

 

「長官、ヤマトに不穏な動きがあります」

 

「不穏な動き?」

 

「はい、現在、旧ヤマト乗組員が職場を放棄し、次々とドックに集結しています。ご覧下さい」

 

西郷がキーボードを操作しヤマトが係留されている第三ドックの映像をパネルに映すとそこには、旧ヤマト乗組員の制服を着た防衛軍軍人達がタラップを昇り次々とヤマトに乗艦していく姿が映っていた。

 

「おわかりでしょう!?直ちに退艦命令をだします!!」

 

「待ちたまえ、西郷君。あれは偉大な儂の友人の子供たちのようなものだ」

 

「しかし、これを放置すれば規律を維持する事は出来なくなります!!」

 

「う‥‥む‥‥」

 

「いいですね?長官?」

 

「やむを得まい‥直ちに退艦命令を出したまえ」

 

「はっ」

 

西郷はヤマトの乗員に退艦命令を出した。

しかし、ヤマトはこの命令を無視し、黙々と出航準備を進める。

そこで、司令部はドックの出入り口を閉鎖するもヤマトはゲートを吹き飛ばし、海中から出航していった。

次に司令部はヤマトに機雷攻撃と魚雷攻撃を仕掛けるが、藤堂の命令で信管は抜かれており、ヤマトは不発弾である機雷と魚雷攻撃の中を止まることなく、進んでいった。

海中、海上でヤマトを止める事の出来なかった司令部は続いて地球の周りに配備されている無人戦闘衛星を起動、これでヤマトを止めようとしたが、ヤマトは戦闘衛星を破壊、月をすり抜けて地球軌道を脱出した。

ヤマトが敢えて月の傍を通り抜けたのは、月方向には比較的、戦闘衛星の展開数が少なかったからだ。

これは月には大規模な駐屯基地がある為、この方向にはそこまで多くの戦闘衛星は配備する必要はないと言う司令部の盲点だった。

更に月基地所属の艦載機部隊がヤマトに合流。

そのままヤマト艦載機隊となった。

この部隊を率いていたのはかつてヤマト航空隊に所属していた加藤や山本らの航空兵が多く、ヤマトが行くなら俺たちも‥‥と言う思いの中、月基地を出撃しヤマトと合流したのだ。

この光景を見た西郷は憤慨する。

 

「月の艦隊は何をしている!?」

 

「衛星の破壊で防空ネットワークに乱れが生じています。出撃までには時間がかかるかと‥‥」

 

艦載機は兎も角、艦隊となると出撃まで時間がかかる。

そんな中、戦闘衛星が破壊され、防空ネットワークに乱れが生じた事により月の艦隊の出撃は更に遅れる事となり、月の艦隊ではもはや、ヤマトを追いかけるのは無理だった。

 

「ぬうぅ~金星基地の土方艦長に連絡、直ちにヤマトを追尾させろ!!それと、ヤマトとアンドロメダの中間に位置し、合流できそうな艦は?」

 

「月村艦長の戦艦 まほろば がその宙域で訓練航海中です」

 

「よし、月村にも至急連絡を入れろ!!」

 

「了解」

 

オペレーターは早速、アンドロメダ と まほろば に通信を入れた。

 

そして訓練航海の まほろば に防衛軍司令部から緊急伝がはいった。

 

「艦長、司令部からの緊急通信です」

 

「内容は?」

 

良馬はギンガに電文を読むよう促す。

 

「戦艦、まほろば は アンドロメダ と合流し、同艦と共にヤマトを追跡。太陽系への脱走を阻止すべし‥‥以上です」

 

次いで合流する座標と時刻が伝えられてくる。

当然、艦橋要員は戸惑いと緊張を隠せない。

まさか、あのヤマトが‥‥という思いなのだろう。

しかし、良馬はヤマトが何故そのような行動を取ったのか察しがついた。

 

(まぁ、あの平和ボケをして、危機感がまるでない政府や軍上層部連中を見れば無理もないか‥‥)

 

そう思いつつ、良馬は艦長席から立ち上がると艦内一斉放送で呼びかける。

 

「艦長の月村だ。たった今、入った艦隊司令部からの緊急命令を伝える。本艦はこれより総旗艦、アンドロメダと合流し、太陽系脱出を図るヤマトの脱走を阻止する。これは演習ではない。繰り返すこれは演習ではない。総員、気を引き締めて任務遂行にかかれ!」

 

いきなりの戦闘、しかも相手はよりによってあのヤマト。

ルーキーたちを中心に、乗員に戸惑いと不安が広がるであろうことは想像に難くないが、命令は命令だ。やれません、出来ませんでは済まされない。

案の定、ベテランの永倉と井上も戸惑いが隠せない表情をしている。

 

「航海長、針路変更、面舵十五、機関全速」

 

「面舵十五、両舷全速、宜候っ!」

 

良馬の指示を航海長の永倉が復唱し、操縦桿とスロットルを操作した。

主機関の回転が上がり、まほろば はぐんぐん増速した。

新型の高出力機関とバーニア、スラスターだけに加速や回頭の速度はガミラス戦役に使用していた艦と比べるまでもなく速い。

まほろば は僅か二時間足らずで、アンドロメダとの予定会合宙域に到着。

しかし、会合宙域にはまだアンドロメダは到着していなかった。

 

「ふぅ~土方司令の雷を受けずに済みそうですね」

 

永倉が安心したかのように言う。

 

「ああ、基本十五分前集合が絶対厳守だからな」

 

そして、予定会合時刻のきっかり十五分前にアンドロメダも会合宙域に到着した。

「アンドロメダから発光信号‥‥『我二続ケ・・我二続ケ』‥‥以上です」

 

「うむ、通信長返信の発光信号を」

 

「了解」

 

通信長のギンガはアンドロメダに『宜候』と返信の発光信号を打ち、アンドロメダと まほろば の二艦はヤマト追跡に向かった。

 

一時間半程経った時、先行していたアンドロメダからヤマト発見の報が入る。

その直後、まほろば のレーダーもヤマトの姿を捉えた。

艦の種類状、まほろば も優秀なレーダーや通信機器を搭載しているのだが、やはり総旗艦だけあり、レーダーの性能はアンドロメダの方が一枚上手だった。

 

「総員戦闘配備、航空隊スクランブル発進用意!!」

 

艦内に警戒警報のアラームが鳴り渡る。

 

アンドロメダ と まほろば は急速にヤマトとの距離を詰めていった。

程なくしてヤマトもこちらの存在に気付いたらしく、急に増速して小惑星帯に針路をとった。

 

「副長、君はヤマトの狙いをどう見る?」

 

まだ余裕があるのか、良馬は、ヤマトの行動を副長の新見に訊ねる。

 

「速度で我々に劣るのですから、ここはやはり、小惑星帯に入り、我々を振り切るつもりでしょう。彼らは一刻も早く太陽系からの脱出を試みているので、小惑星帯に隠れると言うことはしない筈です」

 

「多少危険だが、やはりそれがベストだろうな‥‥航海長、多少の無茶や船体に傷がついても構わない。ヤマトを見逃すな!!」

 

「了解」

 

まほろば はセミオート操舵にはせず、そのままマニュアル操舵のまま小惑星帯を航行している。

 

「通信長、アンドロメダに先行許可を申請」

 

「はい」

 

アンドロメダの航海長がどんな人物なのかは知らないが、小惑星帯内でのオールマニュアル操舵では恐らくヤマトには追い付かないだろう。

その理由として、艦長があの土方提督なので、船体をぶつけたり、擦れば強烈な叱咤がくると思い操艦には慎重になる筈、それ故に操艦を自動航行モードに置き換えるだろうが、フルオートやセミオートでの操舵は回避優先でスピードダウンは否めない。

例え土方が先程の良馬の様に「多少船体が傷ついてもかまわない」と命令しても、乗艦している艦が総旗艦で船体に傷をつけてはならないと言う心理が働き、船体を傷つければ配置転換処分を受ける可能性もあると思い込むだろう。

それ故、この小惑星帯でアンドロメダはヤマトを捕捉できないだろう。と、良馬はそう踏んだ。

 

アンドロメダから許可の回答が来た まほろば は アンドロメダ を左舷から一気に追い越し、先行した。

一方のヤマトも高速を保ったまま小惑星帯に突入した。

障害物だらけの宙域をオールマニュアルで操艦にも関わらず、ヤマトの航海長である島も まほろば の航海長永倉も猛スピードの中、小惑星帯の中を航行している。

 

(航海長もだいぶこの艦に慣れたな)

 

元々、操艦技術がずば抜けている永倉であったが、当初この艦の操艦には多少手こずった。

その理由はやはり、まほろば がこれまで永倉が操艦した事の無い程の大きさの艦だったからだ。

しかし、今では十分な操艦が出来る所を見ると、彼は操艦技術に関して天才の部類に入るだろう。

 

まほろば が猛スピードでヤマトを追跡して居る頃、まほろば の後方を航行するアンドロメダでは、

 

「何をしている、もっと増速しろ!」

 

アンドロメダの副長が焦った声を上げる。

小惑星帯に入った途端、アンドロメダはヤマト、まほろば に引き離された。それこそあっという間に‥‥

正確には、ヤマト、まほろば が速度を維持したまま小惑星を走り抜けているのに対し、アンドロメダはセミオート操舵のため、こういう障害物だらけの空間では自動航行システムが航行よりも回避優先と認識してしまい、減速してしまうのだ。

アンドロメダの行動は良馬の予想通りだった。

小惑星帯を航行中、艦橋部のアンテナ部分が微小惑星に接触したのか、ドーンという音響と衝撃が艦を震わせる。

 

「うわっ!?」

 

「‥‥‥」

 

艦橋が揺れ、席から立っていた副長が床に転倒するが、艦長席の土方は腕を組み、瞑目したまま一言も発しない。

 

「艦長、ヤマトと まほろば は全速で小惑星帯をすり抜けて行きます!!」

 

航海長が二艦の動きを土方に報告するが、その反面、内心は悔しさで満ちていた。

あの二隻は明らかにフルマニュアルで操舵しながら速度を維持しているのに自分にはそれができない。

カタログデータではこのアンドロメダはヤマトをも上回る加速能力と軽快な機動性を持っている筈なのに、自分ではアンドロメダの性能を十分発揮できていないのが明らかだからだ。

しかし、彼の名誉のために書き記すが、仮にも総旗艦の航海長に抜擢される程であるから、彼も十分優秀な宇宙戦士なのである。

ただ実践と経験が不足しており、何度も修羅場の様な実戦で鍛えられた手練れの航海士二人を相手に回しては余りにも分が悪かったのだ。

 

「艦長、とてもこんな所は航行できませんよ」

 

副長が柄にもなく、弱音を吐く。

 

「ヤマトは?」

 

土方はオペレーターにヤマトの行方を訊ねる。

 

「見失いました。小惑星が邪魔でレーダーが上手く作動しません」

 

「艦長!?」

 

もしかしたら、このままヤマトを見失い、太陽系からの脱出を許してしまうかもしれないと焦った副長が土方に声をかける。

 

「慌てるな。二隻のペースに乗せられることはない。ヤマトの追尾は月村に任せて、今は確実に小惑星帯から出ることを優先しろ。アンドロメダの船脚なら十分間に合う。小惑星帯を出た後、ヤマトの前面に立ちはだかるのだ!!急げ!!」

 

「了解しました!」

 

土方の命令を聞き、航海長はいくらか落ち着きを取り戻し、小惑星帯を抜け出る事に専念した。

 

小惑星帯を抜け目の前に再び星の海が広がる。ここでようやく障害物レースは終わりをつげた。

 

「小惑星帯を抜けました!」

 

「艦の損傷は?」

 

「ありません!」

 

「よし、ヤマトの現在位置は?」

 

「本艦の前方、六宇宙キロ‥速度を維持したまま、木星方面に向かっています」

 

「如何いたしますか?艦長?」

 

新見が今後の動きを訊ねてきたので、

 

「このままの速度と間隔を維持したまま追尾する。アンドロメダは?」

 

「レーダーには映りませんが、まだ小惑星帯の中と思われます!」

 

「わかった。ヤマトとアンドロメダの現在位置は逐次報告せよ」

 

アンドロメダの船脚は防衛軍ピカイチだ。恐らく大きく迂回してヤマトの前面に先回りするだろう。

それから暫くの間、まほろば は ヤマト と着かず離れずの追跡を続けた。

ヤマトは時折、急転舵等で まほろば を振り切ろうとするが、永倉は彼我の間隔を保ったまま、まほろば を ヤマト主砲の有効射程ぎりぎり外につけ続けていた。

やがて、ヤマトの前方十二時の方向にアンドロメダが姿を現わし、ヤマトの針路を塞ぐように回頭する。

アンドロメダの動きを見て良馬も指示を出す。

 

「航海長。下げ舵二十、ヤマト後部の下腹につけろ」

 

まほろば は ヤマトの第三主砲搭の死角になる後下部につけた。

これでヤマトから まほろば に向けられるのは、後部発射管のミサイルと艦底部のミサイルだけになる。

その反面、まほろば は ヤマト の機関部、第三艦橋、艦載機発進口を主砲、副砲、ミサイルで狙える位置になる。

卑怯、姑息と言われるかもしれないが、相手はあのヤマトなのだからこれくらいの戦術をとらなければ、此方は大きな被害を受ける。

アンドロメダに針路を塞がれたヤマトだが、ヤマトは速度を落とさず、また針路も変えずにアンドロメダへと直進し続け、まほろば も ヤマトの後下にぴったりつけて続航を続ける。

やがて、土方がヤマトに通信を送り始めた。

良馬はそれをギンガに傍受させ、聞いていた。

 

「古代、多くは言わん、戻れ。私がどういう男か、お前たちはよく知っているだろう?」

 

(ええ、それは嫌と言うほどにね‥‥)

 

土方の発言に良馬はそう思ったが、彼以外にも同じ事を思った者は何人も居た筈だ。

 

「お断りします。あのメッセージについては土方司令もご存じの筈でしょう?あれは紛れもなく宇宙の危機を訴えているんです!!何も確かめずにいて、危機が目の前に来てからでは遅すぎます!」

 

古代らヤマト側の乗員最初から譲歩する気はないようだ。

当然古代は土方の命令を拒否した。

士官学校で教官職を務め、古代の性格をよく知っている土方は古代のこの行動と回答は十分予想していたのだろう。別段気分を害した風もなく、再び口を開いた。

 

「否定はしない‥‥が、ヤマト一隻で何が出来るのだ?悪い事は言わん。今なら私が今回の件を何とかしてやる。戻れ!!」

 

「お断りします!」

 

「‥‥そうか分かった。ならば、仕方ない。我々は実力を以って行使する。いいな?」

 

「‥‥残念ですが、仕方ありません。しかし、我々の考えは変わりません!!」

 

「‥‥分かった」

 

そこで、通信が切れた。

 

(是非に及ばずか‥‥やれやれ、古代君も土方さんも頑固だからな‥‥)

 

良馬は目を瞑り、首を横に振る。

そして、目を見開くと指示を出す。

 

「全砲門開け!一番主砲はヤマトの艦載機発進口に照準を合わせろ!!二番主砲はヤマトのメインノズルを狙え!!三番砲塔はヤマトの第三艦橋をロック!!ミサイル発射管には対艦ミサイルを装填!!パルスレーザー砲スタンバイ!!航空隊はいつでも発進できるようにパイロットはコックピット内で待機‥‥ぼやぼやするな、急げっ!!」

 

良馬の命令が慌ただしく艦内各所に指示が届けられる。

第一、第二、第三、主砲が動き、砲身に仰角がかかり、ヤマトを指向する。

 

「主砲、発射準備完了!!」

 

「全ミサイル発射管、発射準備完了!!」

 

「パルスレーザー砲、発射準備完了!!」

 

「艦載機隊、いつでも発進出来ます!!」

 

次々と戦闘準備完了の報告が届く。

初回よりも練度は上がっているとは言え、まだ満足できるレベルには程遠いが、仕方あるまい。

 

「艦長、このままではヤマトと本艦はアンドロメダの針路に交差、接触または衝突の恐れがあります」

 

新見が三隻の軍艦の現状と予想される事態を報告する。

 

「ヤマトの針路は?」

 

「速度と共に依然変わりません」

 

「ならば、本艦もこのままの針路と速度を維持」

 

「了解」

 

外見は冷静な様子の良馬も顔には薄らと汗を浮かべる。

多少は修羅場をくぐり抜けてきた自分でさえ、こうなのだから、任官したてのルーキーたちはさぞや生きた心地がしないだろう。

しかし、それはヤマトやアンドロメダの新人の乗員も同じだ。

否、一番しんどいのは土方以外のアンドロメダの艦橋乗員だろう。

そして、この状況下で一番冷静なのは恐らく土方ただ一人だろう。

 

「ヤマト、あと二十秒でアンドロメダに最接近。 本艦もあと三十秒でアンドロメダに最接近します」

 

まほろば の艦橋乗員は皆押し黙り、手に汗握っている。

新見のカウントダウンの声だけがブリッジに響き渡る。

ヤマトはアンドロメダの艦橋直前を直進。やや経ってから まほろば も アンドロメダの艦底部を通過した。

ヤマトがアンドロメダの目前を通過してもアンドロメダには何の動きもない。

攻撃を仕掛ける様子もヤマトの後を追う様子もなく、ただ静かにその場に鎮座している。

 

「アンドロメダに動きは?」

 

「ありません。攻撃命令も追撃命令も出ていません」

 

(やれやれ、そういうことか。土方さんも人が悪い)

 

土方の真意を認識し、良馬はフッと小さく口元に笑みを浮かべ、表情を緩めた。

 

「減速、左舷スラスター起動、上げ舵二十、面舵二十五、アンドロメダの右舷につけろ。警戒態勢解除」

 

まほろば は良馬の独断でヤマト追跡を打ち切り、アンドロメダの横に着ける動きを見せ、アンドロメダの艦橋では、

 

「 まほろば が追跡を‥‥反転してヤマトを追え!!」

 

副長がヤマトを追跡とすると、

 

「待て!!」

 

土方がそれに待ったをかけた。

 

「し、しかし!司令‥‥!」

 

なおも言い募る副長だが、土方は頑としてそれを突っぱねた。

 

「行かせてやれ‥‥沖田の子供達だ‥‥」

 

土方はパネルに映り、遠ざかっていくヤマトをジッと見つめていた。

その後、土方は司令部に『我、遭遇予定地点二達スルモヤマトヲ確認シエズ』と言う通信を送り、さらに秘匿通信でヤマトに『航海ノ安全ヲ祈ル』と言う文を送った。

良馬もヤマトに『死ヌナヨ』と一言秘匿通信を打った。

 

(死ぬなよ‥皆‥‥沖田艦長は死ぬことは教えなかった筈だぞ)

 

あの冥王星海戦で沖田は守と恭介に必死に諦めず、生き残ることを説いた。

きっとイスカンダルへの航海でもそれをヤマトの乗員に説いたはずだ。

土方同様、良馬も遠ざかっていくヤマトをジッと見つめていた。

かくしてアンドロメダと まほろば のヤマト追跡任務はこれにて終了したわけでが、それだけで、終わらせるほど、土方は甘い人物ではなかった。

先程の小惑星帯の近くまでくると、土方は、

 

「 まほろば は確か訓練航海中だったな?」

 

「え?は、はい」

 

(何か嫌な予感がする‥‥)

 

ヤマトが出撃していったあの日、同様なにか嫌な予感がした。

それはギンガを除く、艦橋乗員が感じた。

 

「アンドロメダもまだテスト航海日程が残っている‥‥これより、アンドロメダと まほろば で大規模な模擬戦闘訓練を行う」

 

と言い出した。

しかも、

 

「諸君、喜べ。私自らが教導してやるからな」

 

とても、とても有難いお言葉つきで‥‥。

 

『ギャ―――!!』

 

土方の人となりと訓練の厳しさを知る乗員は顔を真っ青に染め、悲鳴をあげる。

年長者の井ノ上はそんな乗員らの姿を見て苦笑する。

一方、土方の事をあまり知らないギンガたちルーキーらは何故先輩たちが此処まで悲鳴を上げるのか不思議がっていたが、その理由は直ぐに判明した。

この模擬戦とその結果について、どんな目に遭ったのか、関係者の口は堅く、詳しい事は未だ判明していない。

 

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