星の海へ   作:ステルス兄貴

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これにて完結編は終了です。

クロノファンの方々には申し訳ございません。




二百七十一話 ガイアよ‥さらば‥‥

 

 

ウルクを舞台としたアクエリアスのワープ攻防戦は、ディンギル側に軍配が上がり、アクエリアスは最後のワープをしてしまう。

 

最後のワープを許してしまい、もはやミッドチルダの水没を防ぐ手立てはもうないのではないかと誰もが絶望感を抱いた。

 

しかし、最後の賭けとしてチンクとクロノはある方法を思いつく。

 

それは、アクエリアスに存在するディンギル軍のエネルギー補給プラントからトリチウムを満載した艦を自爆させてその爆発でアクエリアスの水柱を断ち切ると言う作戦であった。

 

ただし、その作戦において重大な問題があった。

 

それは自動制御では失敗する可能性があると言う点だ。

 

チンクは自ら志願してその役を引き受けようとするも却下され、代わりにクロノがその役を務めると言い出した。

 

乗艦を自沈されると言う作戦内容について、当然乗員たちからは反発が起きた。

 

しかし、それをチンクが説得を行い、ガイアの艦内にはトリチウム満載された。

 

そして、ミッドチルダ近海へと向かおうとした最中、ウルクから脱出したルガールたちディンギルの残存艦隊が襲撃して来た。

 

今のガイアはトリチウムを満載した動く燃料タンク状態で一発でも被弾すれば、それが引き金となり大爆発を起こし、アクエリアスの水柱を断ち切る作戦は失敗してしまう。

 

そのため、ギンガもクロノも戦闘はせずにワープでこの宙域から離脱しようとした。

 

だが、ディンギルの岩石ロケットはその快速を活かして、包囲網を敷き、攻撃態勢をとる。

 

このままガイアはディンギル軍の攻撃を受けて目的地前に爆沈してしまうのかと思われた時、まほろばを捜索していた防衛軍の艦船‥ヤマト、ヱクセリヲン、ヒューベリオン、そしてランダルミーデがディンギル軍に対して強襲をかけた。

 

突然の奇襲攻撃を受けたディンギル軍は大混乱となる。

 

良馬はこの混乱の隙にまほろばとガイアにはワープでこの宙域からの離脱を指示する。

 

まほろばとガイアは後ろ髪を引かれる思いを抱きつつもミッドチルダに残された時間もないので、ワープしてこの宙域から離脱した。

 

 

ヒューベリオン 艦橋

 

「まほろば、管理局艦の離脱を確認」

 

(ギンガは無事にこの宙域から離脱したようだな‥‥)

 

「敵艦隊後方に大型の円盤を確認!!」

 

「その円盤が敵の旗艦だ‥‥第一主砲、波動カートリッジ弾を装填!!目標、敵旗艦!!」

 

(敵の大将を失えば敵の混乱は更に増す筈だ)

 

「周囲の敵を掃討しつつ、敵旗艦への必中距離まで接近!!」

 

ヒューベリオンは第一砲塔に波動カートリッジ弾を装填してルガールが乗艦している巨大な円盤、プレ・ノアへと接近する。

 

 

プレ・ノア 艦橋

 

「ええい、敵は少数だと言うのに何故撃沈出来ん!?」

 

「敵艦の火力、装甲が強力で我が方の岩石ロケットではなかなか致命弾を与える事が出来ません!!」

 

「くっ、せめて水雷母艦とドウズ型は残しておくべきであったか‥‥」

 

ルガールは決戦に向かうザールにウルクに居た全ての戦闘艦艇を預けた事で、ディンギル軍の十八番でもあり切り札のハイパー放射ミサイルを搭載している移動要塞母艦も、水雷艇も‥その母艦である水雷母艦もなく、ディンギル軍の主力を担うドウズ型重装戦艦もカリグラ級高機動巡洋戦艦も居ない。

 

それらの艦艇は全てまほろばの波動砲によって消滅していた。

 

本来ならば、アクエリアスをワープさせた事で勝利を確信した筈にもかかわらず、そのアクエリアスの海上に建設したエネルギー補給プラントがどういう訳か作動を示した。

 

モニターで確認するとガイアがプラントを使ってトリチウムの積載作業をしているではないか‥‥

 

勝利は確定している筈ではあるが、ルガールには一抹の不安が過る。

 

(彼奴等は一体何を‥‥)

 

(既にミッドチルダは我が手に落ちたも同然なのだが、なんだ?この不安は‥‥?)

 

(一体、彼奴等は何を‥‥)

 

(ええい、やはりアヤツ等を確実に葬らなければこの不安は払拭出来ぬ!!)

 

心の中にもやもとした不安を抱き、その不安を払拭するためにアクエリアス沖にてまほろばとガイアを待ち伏せたルガールであったが、艦隊は突如第三者の乱入で混乱し、数少ない従属艦は次々と撃破されていく。

 

 

「食い破るぞ!!行けぇ!!」

 

ランダルミーデの艦橋では、バーガーが巧みな指揮を執っていた。

 

ガミラス、ガルマンと常に前線で指揮を執っていた経験から見事な電撃戦法を繰り広げ、次々と岩石ロケットを葬っていく。

 

「艦長、我々も戦闘に参加されますか?」

 

四隻の宇宙戦闘艦が無双している中、ジャガーノートはまさに置き去り状態となっており、グリフィスは、はやてにあの四隻と共に戦闘に参加するかを問う。

 

「私らが参戦しても正直足手まといや‥‥幸い例のミサイルを使用する小型艇の姿は見えへんようやし、それならこっちに向かってくる敵艦だけを相手にして観戦させてもらおう‥‥それと可能な限り、戦闘データは取っといてや」

 

「了解」

 

ジャガーノートは自分たちに向かって来る敵艦以外の相手はせずにもう一つの地球の宇宙戦艦の性能をサーチする事に専念した。

 

 

プレ・ノア 艦橋

 

「まほろば、ガイア、共にワープをした模様です!!」

 

「なにっ!?くっ、ならばこちらもワープをして彼奴等を追うぞ!!」

 

味方の岩石ロケットも突如襲撃して来た敵艦もどうでもいい‥‥

 

今は何としてでも、まほろばとガイアの二隻は確実に葬りたい。

 

まほろばとガイアの二隻がこの宙域からワープをして離脱したのであるならば、それを追って仕留めればいい‥‥

 

幸いガイアはトリチウムを満載して動く燃料タンク状態‥‥

 

攻撃手段はこのプレ・ノアにも備わっている。

 

一発の命中弾で決着はつく。

 

ルガールは急ぎ、この意味の無い戦闘からまほろばとガイアの追跡に移ろうとした。

 

その矢先、

 

「敵艦一隻、本艦へ急速接近!!」

 

「なにっ!?」

 

オペレーターからの報告を聞いたルガールがモニターを見ると、一隻の宇宙戦艦が近づいて来る。

 

「くっ、大型ビーム砲発射準備!!」

 

ルガールは面倒だと思いつつ、このままではワープの準備も出来ないと判断し、戦闘指揮所の直下に備わっている巨大なビーム砲の発射準備を命じる。

 

 

ヒューベリオン 艦橋

 

「敵艦、大型のビーム砲の砲口を本艦にロック」

 

プレ・ノアが大型ビーム砲の発射準備をしているのはヒューベリオンからでも確認出来た。

 

(敵のビーム砲の発射にかかる時間がどれくらいかかるのか分からない‥‥)

 

(でも、此奴を葬らなければ‥‥)

 

「第一主砲、照準良し、射撃用意良し」

 

「撃て!!」

 

ヒューベリオンの第一主砲からは波動カートリッジ弾がプレ・ノアに向けて放たれた。

 

ヒューベリオンから放たれた波動カートリッジ弾は三発、プレ・ノアに全弾命中した。

 

命中した衝撃で艦が揺れて照準がブレて、プレ・ノアが放った大型ビーム砲はヒューベリオンの艦橋右舷側を掠めた。

 

 

プレ・ノア 艦橋

 

「敵の砲弾が命中!!」

 

「艦内で誘爆が広がっています!!」

 

プレ・ノアに命中した波動カートリッジ弾はプレ・ノアの外部装甲を貫通して艦内で爆発した。

 

その爆発は凄まじい勢いで広がっていき、プレ・ノアは爆発を繰り返していく。

 

それはルガールが居る艦橋にも到達する。

 

「な、何故だ‥‥神に選ばれた我々がこんな所で‥‥ぬわぁぁぁぁぁー!!」

 

プレ・ノアは大爆発を起こして消滅した。

 

脱出者は一人も居らず、全員が艦と運命を共にした。

 

その中にはディンギル帝国大神官・大総統のルガールも含まれていた。

 

プレ・ノアの撃沈は残存していた岩石ロケットからでも確認出来た。

 

「プレ・ノアが沈んだ!!」

 

「大総統は!?‥‥ルガール大総統はどうなられた!?」

 

「脱出艇は確認できたか!?」

 

良馬の予想通り、プレ・ノアが沈んだ事でディンギル軍に混乱が生じた。

 

独裁国家で軍事も一点集中方式の弱点である指揮官を失った事で、その後の対処が出来なかった。

 

「どうする?」

 

「俺たちはどうすればいいんだ!?」

 

「こうなれば徹底抗戦をするか!?」

 

「バカ言うな!?あれだけ居た味方艦が今では半数以下になったのだぞ!?」

 

「この艦では奴等には勝てない‥‥」

 

「では、どうする!?」

 

「に、逃げろ、此処に居ては死ぬぞ!!」

 

ルガールを失い指揮系統が混乱する中で、彼らはルガールの敵討ちよりも自分たちの命を優先し、次々とこの宙域からの撤退行動に入る。

 

 

ヒューベリオン 艦橋

 

「波動カートリッジ弾、敵旗艦に命中」

 

「敵旗艦の撃沈を確認」

 

「旗艦を失い、敵に混乱が見られます」

 

(この敵、指揮系統を一本に絞り過ぎていたな‥‥)

 

(一体どれだけ絶大な権限を持っていたんだ?)

 

敵旗艦の撃沈後、敵の動きが明らかに混乱している様子に撃沈した敵の旗艦に乗艦していた人物の権限の大きさを伺わせる。

 

「敵の残存艦、撤退を開始しました」

 

「追撃しますか?」

 

「‥‥いや、いい」

 

良馬は逃げて行くディンギル軍を追撃せずに見逃す。

 

はやてとしては此処でディンギル軍を完全に撃滅して欲しかったが、敵の大半を撃破してもらった身として、追加注文をしづらかった。

 

「それよりも、まほろばがワープした宙域に行ったかもしれない。こちらも急ぎ、まほろばがワープした宙域へワープする」

 

「了解」

 

ヒューベリオン以下の捜索隊、そしてジャガーノートはまほろばとガイアがワープした宙域を目指してワープした。

 

一方、まほろば捜索隊がディンギル軍を相手にしている頃、一足先に戦闘宙域からワープで離脱したまほろばとガイアでは‥‥

 

「総員退艦‥総員退艦用意」

 

ガイアでは乗員たちが荷物を纏めて退艦準備を行う。

 

まほろばでもガイアの退艦者たちの受け入れ準備が行われる。

 

「医務室、ガイアの退艦者の中には負傷者も居る。彼らの受け入れ態勢の準備をしてちょうだい」

 

『了解』

 

ウルクでの戦いで負傷したガイア乗員たちの受け入れ態勢を医務室に整えさせる。

 

「航空隊は直ちに発進し、周辺の哨戒をしてもらいたい」

 

『了解』

 

次に航空隊にはディンギル軍の襲来対策のために全機出撃させて周辺宙域の哨戒をさせる。

 

今のガイアの状態、そして乗員たちの退艦作業が行われているので、そんな中でディンギル軍が襲来すればミッドチルダを救うどころではない。

 

そのため、ギンガは航空隊に周辺の哨戒を命じたのだ。

 

「それと、ガイア乗員の退艦作業をこちらでも援護する。コスモハウンド、救命艇を発進させてガイアの乗員たちを移乗させて」

 

「はい」

 

ガイアが搭載している内火艇シャトル、救命艇だけでは時間がかかるので、ギンガはまほろばが搭載しているコスモハウンド、救命艇を使用して退艦者たちの退艦作業の時間の短縮を行う。

 

周囲にコスモパイソンが飛び交う中、ガイアの艦内では乗員たちが荷物を片手に次々と救命艇、内火艇、コスモハウンドに乗り、ガイアを後にしてまほろばへと移乗していく。

 

退艦者の中にはガイアとの別れを惜しむかのように通路を見たり、壁や手すりを愛おしそうに撫でる者も居た。

 

「展望室、中央コンピューター室、通信科総員退艦しました」

 

通信科員の退艦報告をするのは通信長のミリアリア。

 

「機関科、総員退艦しました」

 

機関科員の退艦報告をしたのは機関長であるコウラン。

 

「戦術科、総員退艦しました」

 

砲術を含む戦術科の退艦報告をしたのは戦術長のチンク。

 

「航海科、総員退艦しました」

 

航海科の退艦報告をしたのは航海長のレイセン。

 

『艦長、医務科、主計科、総員退艦完了じゃ』

 

医務、主計科の退艦報告をしたのは医務長のバン。

 

ガイアの各パートの乗員たちは既に退艦して残っているのは艦長のクロノと各パートの長たちであった。

 

各パートの長たちはクロノに敬礼し、クロノも返礼する。

 

「戦術長、機関長、すまないが、二人はネオ・アルカンシェルの制御室に行き、ネオ・アルカンシェルの発射回路を内部爆破に切り替えてくれ」

 

「「了解」」

 

クロノはチンクとコウランにネオ・アルカンシェルの発射回路の変更を頼んだ。

 

「他の皆は先に行ってくれ」

 

チンクは自分たち以外の乗員には先に退艦してくれと言った。

 

「戦術長」

 

「はい」

 

「これを‥僕の家族に渡してくれ」

 

クロノはチンクに数枚の封筒を渡す。

 

それはクロノが家族に宛て認めた遺書であった。

 

「‥分かりました。必ずやご家族の方々に渡します」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

クロノから託された遺書を受け取った後、チンクは制御室へと向かった。

 

「はぁ~‥‥自沈か‥‥」

 

制御室に行く中、コウランは深いため息をつく。

 

「ん?どうした?機関長」

 

「ミッドを救う‥それは分かっているんやけど‥‥こうして誰も居なくなるとそれが嫌でも実感させられるんや‥‥ガイアはウチの家そのものやったんや‥‥」

 

「機関長にもミッドには家も家族もあるのだろう?」

 

「んにゃ、ウチは天涯孤独の身や」

 

「そ、そうだったのか?それはすまない」

 

共にガイアに乗艦していたのだが、チンクは今初めてコウランに家族が居ない事を知った。

 

実際にコウランが、ガイアがドック入りしている際も寮には戻らずガイアで過ごしていた。

 

「せやから、ガイアはウチの家で、ガイアの皆はウチの家族やったんや‥‥」

 

「‥‥」

 

寂しそうにガイアを見渡すコウラン。

 

そんな彼女にチンクは申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

 

「すまない。機関長の事を知らずにあんなことを言って‥‥」

 

チンクは展望室で皆を説得した言葉がコウランに残酷な宣言であった事を謝る。

 

「いやぁ~戦術長が言っていたことは最もや‥‥生き残るのはガイアやのうて、ミッドの方や‥‥ガイアはミッドのために‥‥大勢の人々のために逝くなら、それは管理局の艦として本望やないか」

 

コウランは何だか無理をしている様に言う。

 

しかし、この後の結末を知っているチンクもコウランの気持ちが痛い程理解できた。

 

やがて二人はネオ・アルカンシェルの制御室へとやってきた。

 

チンクは早速、コントロールパネルにキーを差し込む。

 

「ネオ・アルカンシェル、セーフティロック・ボルト、オープン」

 

ネオ・アルカンシェルのセーフティロック・ボルトが解除されると、ネオ・アルカンシェルの砲身からエジェクターが抜き取られる。

 

「エジェクターの解除を確認」

 

それをパネルで確認し、作業を続ける二人。

 

「砲口閉鎖用ボルト装填、強制前進装置セット」

 

「戦術長、いよいよ最終作業や」

 

「う、うむ」

 

チンクは目の前にあるレバーをジッと見つめる。

 

後はこのレバーを下ろすだけとなった。

 

チンクは恐る恐るレバーに手をかける。

 

レバーを握る手には自然と力が入る。

 

そして、チンクは意を決したかのようにレバーを一気に下げた。

 

金属が擦れるような轟音を立てて閉鎖用ボルトがネオ・アルカンシェルの砲身を前進する。

 

やがて閉鎖用ボルトはがっちりとネオ・アルカンシェルの砲口を塞いだ。

 

「‥‥戦術長、これで全部の工程は終了や」

 

「う、うむ」

 

レバーから手を離したものの、なお立ち去り難い思いがチンクにはあり、それはコウランも同じであった。

 

「艦長、内部爆破への回路の切り替え作業、終了しました」

 

制御室から艦橋にチンクが内線をかける。

 

『そうか‥ご苦労‥君たちも退艦するといい』

 

「‥はい。機関長、行こう」

 

「せやな‥‥」

 

二人は制御室を後にしてシャトルの格納庫で待機していたコスモハウンドに乗った。

 

ガイアを発進したコスモハウンドは、まほろばのコスモハウンド専用の格納庫に着艦した。

 

格納庫扉が閉まり、コスモハウンドのハッチが開くと、チンクとコウランはコスモハウンドを降りる。

 

(ん?艦長の姿が見えへん)

 

(先に艦を降りたんかな?)

 

コウランはコスモハウンドにも周囲にもクロノの姿が無かった事に違和感を覚えた。

 

チンクとコウランを出迎えたのはまほろばの艦長であるギンガであった。

 

(むっ?この人、何だかスバルに似ている‥‥)

 

(それに雰囲気的に人間と言うよりも私たち戦闘機人に似ているのだが‥‥)

 

チンクはギンガの容姿、雰囲気からスバル‥そして自分たち戦闘機人に似ていると感じた。

 

「機関長、すまないが、私はこの人とちょっと話があるので、先に行ってくれ」

 

「えっ?あっ、うん。了解や」

 

コウランはまだクロノの所在不明と言う点についてモヤモヤした思いがありつつもまほろばの乗員の案内の下、格納庫から展望室へと向かった。

 

「身なりからしてこの艦の艦長とお見受けします」

 

チンクはギンガの服装、軍帽からギンガがまほろばの艦長と予測する。

 

「はい。私はまほろば艦長の月村ギンガです」

 

「私はガイア戦術長のチンク・ナカジマです」

 

「っ!?‥ナカジマ」

 

ギンガ、チンク、互いに自己紹介をした際、ギンガはチンクのファミリーネームを聞いて思わず目を見開く。

 

(ああ、そうか‥この子が以前、フェイトさんが言っていたJS事件後に父さんが引き取ったスカリエッティの戦闘機人‥‥)

 

日本では『なかじま』と言うファミリーネームは珍しくはない。

 

しかし、ミッドチルダにおいては『ナカジマ』と言うファミリーネームはギンガの知る限り、自分の実家くらいしか知らない。

 

なので、まだ確実とは言えないが、ギンガは眼前に居るガイアの戦術長はゲンヤが引き取ったスカリエッティ側の戦闘機人なのだと推測した。

 

此処までの間、ギンガはクロノとガイアの艦内で会談をしたが、クロノとフェイト以外の乗員とは深く交流をしていなかった‥‥

 

なので、チンクとはこれが初邂逅だったので、ギンガにとってチンクとの邂逅は色々と驚く事ばかりであった。

 

「月村艦長、本艦の艦長の事なんだが‥‥」

 

チンクが気まずそうにクロノについて語る。

 

「ええ、ハラオウン艦長からは事前に聞いています‥‥彼がガイアに残る事を‥‥」

 

「そうですか‥そのことを知っているのは?」

 

「まほろばでもごく一部の乗員だけで、フェイトさんもこの事実はまだ知りません」

 

「そうですか‥‥しかし、いずれは分かってしまう事なのだが‥‥」

 

「ええ‥‥でも、ハラオウン艦長の決意を無駄にする訳にはいきません‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガもクロノの決意を尊重し、ギリギリまでクロノがガイアに残っている事実を秘匿する事にした。

 

「ガイア全乗組員収容完了。まほろばを予定地点まで艦をまわして」

 

『了解』

 

格納庫にあった内線で敢えてガイアの乗員全てを収容したと伝えた。

 

ギンガはこの後も艦の指揮があるので、艦橋へと戻り、チンクは先ほどコウランが案内された展望室へと向かった。

 

まほろばの展望室では、ガイアの乗組員たちが居り、ガイアとの別れを惜しんでいる。

 

やがてガイアも最後の船出に出る。

 

まほろばから徐々に離れて行くガイア。

 

航空隊はディンギル残存艦隊の襲来を予見してガイアの周囲を飛行している。

 

安全が確認されるギリギリまでガイアを護衛しようと言うのだ。

 

そんな中、山本機がガイアに接近した中、

 

「えっ!?」

 

ガイアの艦橋内が視界に入り、驚愕した。

 

艦橋内にはまだクロノが残っていたのだ。

 

「な、なんで‥‥」

 

何かの間違いかと思って、山本は急ぎまほろばに通信を入れる。

 

「こちら、山本!!ガイアの艦橋内に艦長らしき人物がまだ残っています!!」

 

「何っ!?」

 

「どういう事だ!?」

 

「自動制御で発進させるんじゃなかったのか!?」

 

まほろばの展望室、艦橋内ではまだガイアにクロノが残っている事に驚愕と困惑が起きる。

 

ガイアの乗員たちにとってもこの報告は寝耳に水だった。

 

展望室でクロノからの説明では自動制御でガイアを発進させて自動で自爆させて犠牲者は出さない筈だった。

 

しかし、実際にクロノはまだガイアに残っている‥‥

 

「艦を止めろ!!艦長をお連れするんだ!!」

 

「そうだ!!まほろばを止めてくれ!!」

 

展望室に集まったガイアの乗員たちは騒然となる。

 

クロノがガイアに踏みとどまっているのに、自分たちが助かるなんて心外だ‥‥と、みんなはそう思ったのだ。

 

そんな中、チンクとコウランの様子を見て、はっと胸を衝かれた。

 

チンクは左目から、コウランも両目から溢れる涙を拭おうともせずに直立し、遠ざかっていくガイアに向かって敬礼している。

 

その手は小さく震えているが、二人はガイアを凝視して微動に動かない。

 

チンク、コウランの姿勢を見て先ほどまで展望室で起きていた大声は静まり返り、次第に嗚咽が広がる。

 

展望室でガイアの乗員たちが驚愕したのと同じく、艦橋に居たフェイトもクロノがガイアに残るなんて知らず、ギンガに詰め寄る。

 

「ギンガ、どういう事なの!?クロノが残るなんて聞いてないよ!!ギンガは知っていたの!?」

 

しかし、ギンガは何も言わず展望室のチンク、コウラン同様、艦長席から立ち、ガイアに対して敬礼をしている。

 

「か、艦長‥‥」

 

「ギンガ‥‥」

 

ギンガの姿勢にまほろばの艦橋員たちも席から立ち上がり、ガイアへ敬礼をする。

 

「‥‥」

 

フェイトもギンガや他の艦橋員たち同様、遠ざかっていくガイアに敬礼をした。

 

 

なお余談であるが、アクエリアスの接近前に親族と共に壊れかけの次元航行船でミッドチルダから逃げ出した“海”の高官たちについてだが、ミッドチルダ近海ではまだ次元震騒動は収まっておらず、ミッドチルダを捨てた彼らはその次元震に巻き込まれてしまった。

 

しかし、満足に宇宙へ出る事が出来ない管理局は彼らが発する遭難信号を受信しても救助へ向かう事は出来なかった。

 

そもそもディンギル軍の空襲を受けてまともに修理も出来なかった次元航行船を強引に接収しミッドチルダを捨てたので、通信設備でさえまともに直っていないので、遭難信号を送ったつもりでも実際に届いていなかった。

 

(カレル‥‥リエラ‥‥)

 

皆が退艦した事で、無人の如く静まり返った艦橋でクロノは自分の家族が写った写真を見つめる。

 

(二人はそろそろ進路に悩む時期だな‥‥)

 

(人が何と言おうと、お前たちのやりたいようにやるといい‥‥)

 

(お前たちの人生は、お前たちのモノだ‥‥)

 

クロノは管理局の現状から子供たちにはなるべく魔法にも管理局にもあまり関わってもらいたくはなかった。

 

しかし、自分の進路も人生も子供たちのモノであるので、子供たちの意思を尊重するつもりであった。

 

あの高町なのはのように自分の信念を貫く強い人物になってもらいたいと願った。

 

「さあ、ガイアよ‥‥これまでミッドのために戦って死んだ勇敢なる魔導師たちの下へ行くか‥‥」

 

自分はもうすぐで死ぬと言うのにクロノに、この時のクロノには死の恐怖は不思議となかった。

 

そしてガイアはアクエリアスとミッドチルダの最接近点に達していた。

 

氷塊の三つのリングを纏いながら青く輝く水惑星がついに見えて来た。

 

ミッドチルダの地上本部ビルの会議室の大モニターでもミッドチルダに接近してくるアクエリアスの姿は確認出来ていた。

 

「アクエリアス接近!!」

 

これまで様々な事件を経験して来たリンディも迫りくる宇宙の自然の驚異を目の当たりにして、顔色を青くし、震えていた。

 

そして、アクエリアスとミッドチルダの中間点に居るガイア‥‥

 

モニターでは、拡大しなければ小さな点にしか見えないが、地上本部ビルのモニターでもそれはギリギリ確認することが出来たが、リンディはまさかこの時、この艦に自分の息子が残っているなんて知る由もなかった。

 

アクエリアスがミッドチルダに接近するにつれ、ミッドチルダの引力干渉を受け始めて、アクエリアスに変化が生じ始めた。

 

引力の干渉を受けて荒れているアクエリアスの海からは水の塊が宙に浮き始め、それがまるで流れ星のようにミッドチルダへと降り注ぎ始めた。

 

その影響を受けてミッドチルダ全体は厚く黒い雲に覆われ、稲光が走り、大粒の雨が降り出した。

 

地上本部ビルに居る局員たちはいよいよミッドチルダに最後の時が来たのだと覚悟する者、絶望する者と別れた。

 

ガイアでもミッドチルダとアクエリアスの干渉しあう引力とアクエリアスから飛んでくる大粒の水の塊は船体にぶつかりガイアが揺れる。

 

艦橋ではクロノが接近しつつあるアクエリアスを睨みつけつつネオ・アルカンシェルの発射トリガーを握りしめる。

 

何時、アクエリアスからミッドチルダへ水柱が飛び出すのか分からない。

 

その時のタイミングを見誤れば、折角の作戦も台無しになり、ミッドチルダは水没してしまう。

 

ミッドチルダ、周辺の月、アクエリアスの引力、それぞれの軌道、回転速度などいくら計算をしても正確な時間は図れない。

 

「自動制御では到底不可能であったな‥‥」

 

クロノはそれらの要素からコンピューター、AIによる自動制御では絶対に成功しない作戦だと実感する。

 

アクエリアスとミッドチルダとの距離はどんどんと縮まっていき、アクエリアスの海面は小山の様に盛り上がって来た。

 

それが次第に高くなり、ついには巨大な水柱となり、アクエリアスからミッドチルダへと迫って来た。

 

「やっと出たな‥‥」

 

アクエリアスから出現した水柱を見てクロノは一層表情を険しくする。

 

一方、ミッドチルダでも更に異変が激しくなっており、豪雨は勿論の事であるが、引力の歪みのせいか各地で地割れが起こり、豪雨で地盤が脆くなり山間部では土砂崩れ多発し、川が増水し始めて床上・床下浸水が起き始め、場所によっては建物が地面ごと盛り上がったりしていた。

 

流石に不安に駆られた人々が降りしきる雨の中、あちこちで騒動が起きている。

 

“陸”と“空”の局員たちが緊急出動し、騒ぎを鎮める一方で、家を失った人々の避難誘導もしているが、どこに人々を避難をさせればいいのか分からない。

 

このまま豪雨が続けばミッドチルダ全体は水没してしまう。

 

だが、住民たちを見捨てるなんて“陸”と“空”の局員たちにそんな選択肢はない。

 

一先ず、少しでも時間が稼げるように高い建物や高台にある建物へと避難させる。

 

アクエリアスからミッドチルダへと迫る水柱はまるで生き物のように蠢きながら伸びて来る。

 

「十‥‥九‥‥八‥‥七‥‥六‥‥五‥‥四‥‥」

 

迫りくる水柱を前にクロノはタイミングを見計らう。

 

「発射!!」

 

そして、クロノはネオ・アルカンシェルの引き金を引いた。

 

その瞬間、想像を絶するすさまじいばかりの白熱の閃光がガイアを包み込むと、ガイアは大爆発を起こした。

 

内部爆破の影響でガイアの船体は真っ二つに折れた。

 

しかし、その大爆発と衝撃はミッドチルダに迫る巨大な水柱は飛散させるには十分な威力であった。

 

水柱は大飛瀑となって宇宙へと飛散していく‥‥

 

その後、アクエリアスは何事もなかったかのようにミッドチルダの傍を通り抜け、漆黒の宇宙へその姿を消した。

 

水柱が消滅し、アクエリアスが再び宇宙の彼方へと姿を消した事でミッドチルダは水没を免れた。

 

まほろばの展望室からチンクたちはその光景を見て、唖然としていた。

 

艦橋でもギンガ、フェイトを始めとして艦橋員たちも敬礼した姿勢を崩さずにガイアの‥‥クロノの最後を見届けた。

 

ガイアの爆発によって飛散したとは言え、水柱の水の量は途方もない量だったので、飛散した水柱はミッドチルダ近くの宇宙空間に川を形成する。

 

しかしその川もいずれ、宇宙空間の低温で凍ってしまうだろう。

 

まだ水の状態であるアクエリアスの川‥‥

 

その川にガイアの艦橋部分がまるで木の葉の様に流れていく。

 

艦橋内部には水が浸水していたのだが、艦長席は通常の席よりも高く、艦橋内も完全に水没していなかった。

 

そしてその艦長席ではクロノがネオ・アルカンシェルの発射トリガーを握りしめたまま息絶えていた。

 

クロノを乗せたガイアの艦橋部はアクエリアスの川を流されていたが、浸水が徐々に広がり、やがて艦橋部はアクエリアスの川の中に沈んでいった。

 

艦橋部が沈み、チャプ、チャプと小波を立てているアクエリアスの川‥‥

 

すると、

 

ザバァー

 

突如、アクエリアスの川からガイアの艦首部分が飛び出してきた。

 

その姿はまるで、ミッドチルダへと帰ろうとしているかのように見えた。

 

しかし、機関部が切り離された状態のガイアではアクエリアスの川から出る事も出来ず、やがてガイアの艦首部もアクエリアスの川に沈み始めた。

 

ガイアの艦首がアクエリアスの川へと沈むと宇宙は再び静寂の空間に戻った。

 

「‥終わった‥の?」

 

フェイトが恐る恐る声を出す。

 

「‥はい‥終わりました‥‥ミッドは‥救われたみたいです‥‥」

 

アクエリアスの脅威からミッドチルダを救えたのだが、何だか実感が薄く、高揚感もなく、むしろ喪失感の方が大きい。

 

「っ!?艦長、本艦周辺に空間歪曲反応を確認」

 

「もしかして、ディンギル軍が!?」

 

「‥‥いえ、味方識別信号に反応‥ヒューベリオン以下の艦艇です」

 

まほろばの周囲にワープアウトしてきたのはディンギル軍の足止めをしていたヒューベリオン以下の捜索隊であった。

 

「ヒューベリオンから通信が入っています」

 

「繋いで」

 

「了解」

 

『ギンガ、アクエリアスはどうなった?』

 

「無事に対処する事が出来ました‥‥ディンギル軍の方はどうなりましたか?」

 

『あらかた片付けたが、何隻かは逃亡した。だが、そちらに来た様子は無さそうだな』

 

「はい‥後は、本艦に収容しているガイアの乗員たちをミッドに還すだけです」

 

『その役割は八神艦長の艦にやってもらおう。丁度行動を共にしている事だしな』

 

「そうですね」

 

良馬としてもギンガとしてもガイアの乗員たちをミッドチルダに還したいがこのままミッドチルダに行くと、大勢の管理局員が乗り込んできて艦を占領されるのではないかと言う不安があった。

 

ならば、此処でジャガーノートにガイアの乗員たちを移送し、彼らにはジャガーノートでミッドチルダに戻ってもらい、自分たちは地球へ戻る事にした。

 

「艦長、そのジャガーノートから通信が入っております」

 

「はやてさんから?分かったわ。そちらにも繋いでちょうだい」

 

「了解」

 

メインがジャガーノートとの通信回路を開くと、艦橋のメインモニターにはやての姿が映し出される。

 

「八神艦長、今回の作戦は‥‥終了しました」

 

『‥うん、どうやらそうみたいやな』

 

(カリムの予言がまたもや当たってしまったみたいや‥‥)

 

はやてもミッドチルダが無事でガイアの姿がない事によって、ガイアの自沈により、ミッドチルダが救われた事を確認した。

 

それと同時にミッドチルダを出発する前にカリムから聞かされていた予言がまたもや当たってしまった事も実感した。

 

「ハラオウン艦長の‥ガイアの最後は、まさにミッドの救世主でした」

 

気休めにもならないがギンガは、はやてにガイアの‥クロノを最後を伝える。

 

『そうか‥‥クロノ君が命がけでミッドを救ったんやな』

 

「はい。それで、本艦に収容したガイアの乗員たちの移乗をお願いします」

 

『分かった。実は、私の方もギンガに用があったんや』

 

「えっ?私に?」

 

『うん。詳しい事はそっちに行ってから話すわ』

 

「わ、分かりました」

 

(はやてさんが私に用‥‥一体何だろう?)

 

作戦は終わり、後はガイアの乗員たちをジャガーノートに移乗し、自分たちは地球に還るだけだ。

 

(ま、まさか、はやてさん、私にミッドチルダに戻るように説得してくる気じゃあ‥‥)

 

ギンガは、はやてが自分はミッドチルダに戻り、再び管理局員になるように説得してくるのではないかと思った。

 

ディンギル軍との戦いで管理局はまたもや大きなダメージを受けた。

 

まほろばそのものもそうだが、防衛軍の軍人としての経験も今の管理局にとっては必要な人材だ。

 

(でも、はやてさんは私の今の家庭環境を知っている筈だけど‥‥)

 

はやてはギンガが現在、もう一つの地球で結婚をして子供が居ることを知っている筈だ。

 

そんな状況のギンガを再び管理局員にするとは考えにくい。

 

では、はやては一体自分に何の用事があるのだろうか?

 

(まぁ、はやてさんはこっちに来るみたいだし、来た時に聞けばわかるか‥‥)

 

と、はやての用事については、彼女がまほろばに来れば判明すると思い、ガイアの乗員たちの移乗作業の準備をするのであった。

 

一方、はやての方は、ギンガとの通信で、「ギンガに会わせたい人が居る」と伝えなかったのはギンガにサプライズで、スバルたちを会わせるつもりだったので、詳しい内容は言わなかったのだ。

 

ギンガとの通信を終えたはやては、ジャガーノートの艦橋を降りて客室区画へと向かった。

 

「スバル、ゲンヤさん。お待たせしました。これからギンガの下へ行きます」

 

「やっと会えるんだ‥‥ギン姉に‥‥」

 

「ああ」

 

(ん?ギンガ?ギン姉?)

 

(えっ?誰だ?)

 

(ギン姉って誰っスか?)

 

スバルとゲンヤは何だかワクワクした様子であったが、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディの三人は頭に?マークを浮かべて、首を傾げていた。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
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