星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回は管理局視点でのディンギル戦役の総集編みたいな形となっております。


二百七十三話 戦況報告会

 

 

ディンギル、そしてアクエリアスからの脅威が去り、ミッドチルダは再び平穏を取り戻し、まほろばは無事に捜索隊と合流する事が出来、地球へと戻って行った。

 

喪失感を抱きつつもフェイト、チンクを始めとするガイアの乗員たちは、はやてが艦長を務めるジャガーノートでミッドチルダへと帰還した。

 

ミッドチルダに戻ったはやての下に管理局上層部から一連の騒動に関して報告する様に出頭命令が下る。

 

本来ならばそれはクロノの役目であるのだが、彼は既に殉職しており、はやては彼の殉職をまだ秘匿しており、上手く誤魔化した事でクロノに代わり自分に出頭命令が来た。

 

フェイトもはやて一人では大変だと思い自らも証言者として一緒に向かう。

 

はやてとフェイトが会場となっている地上本部ビルの会議室に辿り着くと、そこには“陸”“海”“空”の高官たちが揃っていた。

 

「では、早速始めてくれるかね?」

 

高官の一人に促され、はやてはまず第九管理世界の戦いについて説明する。

 

「今回の敵‥ディンギル帝国軍が使用するこのミサイルは私たち管理局がこれまで遭遇して来た敵対勢力‥ボラー連邦を含めて所有していないミサイルであり、その威力は極めて危険なレベルです」

 

会議室のモニターにはディンギル軍が使用したハイパー放射ミサイルの映像が映し出される。

 

第九管理世界の戦いでハイパー放射ミサイルに被弾した管理局の艦の映像が映し出される。

 

「一見被弾して爆発したように思えますが、その実、このミサイルの内部には我々人類には有害な放射性物質を艦内へ放出して乗組員を殺傷する兵器です」

 

「放射性物質‥‥」

 

「その放射性物質はバリアジャケットで防ぐ事は出来ないのかね?」

 

「はい。バリアジャケット程度では無理です。防護服を着ても仮死状態になります」

 

「それほどの威力が‥‥」

 

「恐らくミッドからの避難船団も主力艦隊もこのミサイルによって壊滅されたものと思われます」

 

「くっ、だから質量兵器など野蛮なのだ」

 

「それを使用する連中も野蛮人と言う事だな」

 

所々でディンギル人を野蛮人だと呟く高官の姿が確認される。

 

「このミサイルは兎も角、彼らがいかに非道な勢力なのかは次の映像で証明されました」

 

戦況はディンギル軍優勢に進んでいる中、突如彼らは撤退し始める。

 

「私は敵の攻勢点が限界になったものと思い、被弾した艦の乗員たちの救助を行いました‥ですが‥‥」

 

救助活動中、その現場に突如、ディンギル軍の大型戦闘機が来襲し、救命艇、救助活動中の乗員たちに機銃斉射を行って来た。

 

「なっ!?」

 

「何て奴等だ‥‥」

 

「野蛮人が‥‥」

 

流石にディンギル軍のこの行動には高官たちも憤りを覚える。

 

「それで、こんな野蛮な連中相手にどうやって勝利したのかね?」

 

「それにはまほろばの協力が大きく貢献しました」

 

モニターには偵察機からの情報で敵本隊の位置を突き止めたまほろばが長距離射撃を使用としている姿が映し出される。

 

五つの主砲が旋回し、砲身の仰角を上げて射撃準備を行う。

 

やがて主砲から波動カートリッジ弾が放物線を描きながら敵旗艦へと向かっていく。

 

波動カートリッジ弾を受けた敵旗艦はあっという間に火だるまとなり、旗艦喪失が決定打となり、ディンギル軍は第九管理世界から完全撤退した。

 

「「「「‥‥」」」」

 

まほろばが使用した波動カートリッジ弾も管理局のカテゴリーには質量兵器に当たる。

 

しかし、その威力はあまりにも強大だ。

 

十五発全てを命中させた事もあるが、数キロの大きさはあろう移動要塞母艦を十五発で火だるま状態にしたのだ。

 

質量兵器を使用する敵に対して質量兵器を使用する協力者の手によって敵を退けた事実に高官たちは何とも言えない顔になる。

 

「此処で私が艦長を務めるジャガーノートは負傷者を乗せて一度ミッドチルダへと帰還しました。この先はガイアとまほろばが作戦を続行しました。なので、此処からはガイア副長のフェイト・テスタロッサ・ハラオウン氏に代わります」

 

はやては隣に控えていたフェイトに視線を移すと、フェイトは頷いてからはやてとバトンタッチする。

 

「第九管理世界の戦いの後、ガイアとまほろばはアクエリアスの最後の次元転移を阻止すべく、十九回目の次元転移明けの地点まで進出しました。アクエリアスのコースは簡単に把握できたので‥‥」

 

モニターにはワープアウトしたばかりのアクエリアスの姿が映る。

 

ガイア、まほろばがアクエリアスに降下した事によって、アクエリアスの地表の様子が映し出される。

 

宇宙から見たアクエリアスは勿論の事、アクエリアスの地表も美しかった。

 

澄んだ水に浮遊大陸が幾つも浮いているアクエリアスの地表は魔法が存在するミッドチルダから見てもファンタジー感がある世界であった。

 

かつてそこに栄えていたであろう文明の遺跡群もノスタルジックさを感じさせる。

 

高官の中にはアクエリアスの美しさに目を奪われる者も居た。

 

「このアクエリアスにて、私たちはミッドチルダ‥そして、ディンギル帝国の秘密を知る事になりました」

 

とある浮遊大陸のある湖に着水し、ワープ装置の探査を始める。

 

すると、アクエリアスの空に一人の女性の姿が浮かび上がる。

 

彼女こそ、かつてこのアクエリアスを統治していたクイーン・オブ・アクエリアスであった。

 

魔法文明が発達したミッドチルダでもこのような現象はなく、高官たちは表情をこわばらせる。

 

映像が進み、クイーン・オブ・アクエリアスから語られる衝撃の事実‥‥

 

ミッドチルダに存在する人類はアクエリアスの命の水から誕生した事、

 

そして、アクエリアスを接近させ、ミッドチルダを水没させようと目論むディンギル帝国の人間たちは古代ベルカ時代よりも更に古代のミッドチルダの地に最初の文明を築いた民族であった事‥‥

 

「ばかなっ!?あんな野蛮な種族がミッドに最初の文明を築いた民族だと!?」

 

「ばかばかしい戯言だ!!」

 

「そもそもこの空に浮かんでいる女性の存在も疑わしいモノだ」

 

「敵が放映したホログラではないのか?」

 

クイーン・オブ・アクエリアスの姿に顔をこわばらせた高官たちであったが、その内容には懐疑的でクイーン・オブ・アクエリアスの姿を敵の策略だと思う者も居た。

 

その後、映像は進み、アクエリアス近海にて再びディンギル軍との戦闘が開始される。

 

ディンギル軍は、自分たちの切り札であるハイパー放射ミサイルにてガイア、まほろばを撃沈しようとする。

 

しかし、まほろばの技師長であるアルバートが考案・開発した対ハイパー放射ミサイルビーム砲であれだけ対処に苦労していたハイパー放射ミサイルは次々と撃破されていく。

 

「あのミサイルがあんなにも簡単に‥‥」

 

「まほろばにはあんな凄い兵器があったんか‥‥」

 

アクエリアスの戦いには不参加だったはやてもこのビーム砲の威力には舌を巻く。

 

ディンギル軍の侵攻、そして第九管理世界の戦いでは、ハイパー放射ミサイルに管理局は大変苦戦を強いられているからだ。

 

「ううん、あれは第九管理世界の戦いの後でまほろばの技師長さんが急ごしらえで作った武器みたい」

 

「急ごしらえ!?しかも第九管理世界の戦いの後で!?」

 

ビーム砲の威力もそうだが、製作された期間が短期間であった事にもはやては驚いた。

 

しかし、ハイパー放射ミサイルが封じられてもディンギル軍は数でガイア、まほろばを圧倒して来る。

 

二隻は果敢に応戦するも、敵の数と周囲に存在する小惑星帯で敵にダメージをなかなか与えられない。

 

ディンギル軍は数と速射性が高いガトリング砲でガイアとまほろばを追い詰めて行く。

 

はやてや高官たちはこの状況下を二隻がどうやって潜り抜けたのかと思うと、まほろばが放った波動砲の一撃がこの戦況をひっくり返した。

 

一応、編集で波動砲の閃光は抑えてあるので、ゴーグル無しで見る事が出来たのだが、まほろばから放たれた波動砲は、ディンギル軍は勿論の事、周囲に存在していた小惑星を粉々に粉砕する。

 

集まった高官たちの中には今回初めて波動砲を見る者もおり、その威力に唖然とする。

 

波動砲から運よく免れた敵の旗艦らしき戦闘艇は反転して、本拠地であるウルクへと逃げ込もうとする。

 

だが、戦闘艇がウルクに逃げ込む前にウルク全体がピンク色のバリアの幕に包まれる。

 

戦闘艇は回避しようとするも間に合わず、バリアの幕に突っ込み消滅する。

 

「フェイトちゃん、敵さんは味方の収容をせずにバリアを張ったんか?」

 

「敵の司令官が一体何を考えていたのか分からないけど、結果的にそうなるね‥‥」

 

「収容してからじゃあ、間に合わないと判断したんか?いや、それでも別の場所に逃げるように指示を出せる筈やし‥‥」

 

はやては敵の行動に違和感を覚える。

 

実際は二度の敗戦という失態を犯したザールをルガールが処刑したなんてディンギル側の人間でなければ分からない事実であった。

 

ガイア、まほろばは敵の戦闘艇がバリアに突っ込んで消滅した光景を目撃して、態勢を立て直そうとして、反転する。

 

しかし、敵は守りだけでなく追撃もしてくる。

 

ウルクにはバリアと同じニュートリノ・ビームを放つ砲台があり、ガイア、まほろばに向けてニュートリノ・ビームを放って来た。

 

この時、ガイアは何とか逃げる事が出来そうであったが、まほろばはニュートリノ・ビームを振り切るどころか速力が落ちている様に見えた。

 

「な、なぁ、フェイトちゃん」

 

「ん?なに?」

 

「気のせいかもしれへんけど、まほろばのスピード遅ない?」

 

「ああ、その事なんだけど、この時のまほろばは波動砲を撃った影響でエネルギー漏れを起こしてスピードが出なかったんだよ」

 

「えっ?それ、ヤバいんとちゃう?」

 

「うん。ヤバかったよ。あの時、まほろばの艦橋と機関室はかなり焦っていたもん」

 

「そらそうなるわな」

 

背後からは強力な威力があるビーム砲が迫ってきているのに、速力がでないとなると、焦りもする。

 

「実際にあの時は私も死ぬんじゃないかって思ったもん」

 

「でも、フェイトちゃんがこうして此処に無事で居るっちゅう事は逃げ切る事が出来たんやな?」

 

「ううん、飲み込まれたよ」

 

「えっ?」

 

フェイトの回答にはやては目が点になる。

 

その瞬間、モニターにはまほろばがニュートリノ・ビームに飲み込まれる光景が映し出される。

 

これには、はやてもそうであるが、他の高官たちも唖然とする。

 

しかし、消滅したと思われるまほろばはニュートリノ・ビームの中から無傷で出て来た。

 

「フェイトちゃん。まほろばはどうやってあのビーム砲の中から生きて出る事が出来たんや?」

 

「まほろばが使っているエネルギーとあのビーム砲は相性が悪いみたいで、まほろばから漏れたエネルギーがまほろばを守るように幕を展開していて、それで助かったの」

 

「怪我の功名みたいな展開やな」

 

「うん。ギンガがあの時、波動砲を撃たなかったら、ヤバかった」

 

流石にギンガもこの展開を読んでいた訳ではなかったが、結果的に二度も敵の猛攻を防ぐ事が出来た。

 

ニュートリノ・ビームを交わしたまほろばはそのままウルクへと強行着陸を敢行する。

 

「敵の根拠地に強行着陸とはギンガも大胆な事をするな」

 

「うん。でも、この時は時間もなかったから遠方でちまちまと攻撃をするよりも敢えて敵の懐に飛び込んだ方が、効率がいいと判断したんだと思う」

 

「なるほど」

 

はやてはフェイトからの説明を受けて、大胆ながらも時間制限のある中での最善の一手だったのだと、ギンガが行った行為に納得すると共に参考にした。

 

まほろばの侵入を許した事により、ウルクはバリアを切り、そのエネルギーをワープ装置へと回し、アクエリアス最後のワープを強行させる。

 

バリアが切れたことでガイアもウルクへと強行着陸し、ワープ装置があると思われた総統府へ砲撃を行う。

 

ディンギル側もワープ装置を破壊されまいと総統府周囲にバリアを張り、多数の小型戦闘機でガイア、まほろばを攻撃する。

 

その様子はまさに死力を尽くす激戦であり、はやても息を呑んで戦いの行方を見つめる。

 

戦が激化していく中、ディンギル軍は山頂からロボットの馬‥ロボットホースに跨って白兵戦を仕掛けて来た。

 

「なんやあれ!?ロボットの馬?」

 

「うん。ディンギル軍の陸上兵器なんだと思う」

 

「変に機械化しているのに、戦車やのうて、ロボットの馬って‥‥」

 

「でも山間部からの奇襲なら、戦車よりもああいった兵器の方が向いていたんだと思う」

 

ロボットホースの襲来を受けてガイア、まほろばの甲板部分でも激しい戦闘が開始される。

 

「戦況的にガイア、まほろばの方が不利やったんやな」

 

戦闘映像をみながら、はやてはポツリと呟く。

 

「はやてもそう思う?」

 

「うん。相手はアクエリアスをワープさせる時間を稼げればええんやからな。反対にこっちは時間内に敵の防衛網を突破してワープ装置を破壊せなあかんのやから‥JS事件の聖王のゆりかごを浮上させたらアカン状況と似とるな‥‥」

 

自分たちは時間制限があり、相手は時間稼ぎが出来れば勝敗がつく状況はこのウルクでの戦いの他にJS事件の決戦時‥聖王のゆりかごの浮上阻止の状況に似ているとはやては思うも、規模に関しては一テロリストと星間国家なので全然違う。

 

時間が過ぎ、アクエリアスの色がオレンジ色から赤くなりその姿も段々と薄くなってくる。

 

このまま時間が過ぎればアクエリアスは最後のワープをしてしまう。

 

まほろばは船体を持ち上げて、そこから航空隊を出撃させて総統府を空襲し、総統府内に設置されていたワープ装置の破壊に成功し、ワープ光線は止まる。

 

「ワープ光線は止まったのに、どうしてアクエリアスは最後のワープをしたんや?」

 

一見するとワープ光線が止まったので、ガイア側の勝利かと思われる。

 

実際にウルクで戦ったフェイトたちもこれでアクエリアスはワープが出来ず、ミッドチルダの近くに来るのは三百年後かと思われた。

 

しかし、停止していたワープ光線が再びアクエリアスへと照射される。

 

「えっ?機械は破壊したんとちゃうんか?」

 

「戦略については敵の方が上手で、アクエリアスを次元跳躍させる機械は二台あったみたいなの」

 

「二台!?そんなバカな‥‥ズルいわ‥‥それでどうなったん?」

 

「二台目の機械がある神殿にティアナたちが向かったみたいなんだけど、間に合わず、アクエリアスは最後の次元跳躍をしちゃったの‥‥」

 

フェイトの言葉の後、真っ赤になったアクエリアスは消えてしまい、最後のワープを許してしまった。

 

アクエリアスが最後のワープを行うと、突如ウルクのあちこちで爆発が起きる。

 

「どうしたんや?都市が爆発しとるけど‥‥」

 

「あの様子から敵は自爆装置を作動させてあの衛星都市ごとガイアとまほろばを葬ろうとしたみたい」

 

ガイアは直ぐに浮上してウルクから離れるが、まほろばは未だにウルクの地表に居る。

 

「まほろばはどうして浮上せんの?」

 

「エネルギー伝導管の修理が終わっていなかったから、飛び上がれなかったんだよ」

 

「えっ?それってマズいんとちゃう?」

 

「うん。だからギンガは飛び上がるんじゃなくて、地下に潜ることにしたんだよ」

 

「地下?どういうこっちゃ?」

 

フェイトの言葉にはやては首をかしげる。

 

しかし、その言葉の意味は直ぐに分かった。

 

エネルギー漏れを起こして出力が上がらないまほろばはフェイトの言葉通り、飛び上がるのではなく、地下に潜っていく。

 

「えっ?えっ?まほろばの船底にはドリルでもついていたんか!?」

 

「ううん。爆発であの都市の地盤が脆くなっていたから、まほろば自体をドリルみたいにして地下に潜るようにして、あの都市の地下から脱出したんだよ」

 

「フェイトちゃん、まほろばに居て怖かったんとちゃう?」

 

「そりゃあ、怖いと思ったよ。でも、それは管理局の艦でも同じことが言えるでしょう?」

 

「ま、まぁ、そうやな‥‥」

 

アクエリアスが最後のワープをしてしまい、このままではミッドチルダは水没してしまう。

 

水没を避けるため、最後の手段として、アクエリアスに存在するトリチウムをガイアの艦内に入れて、自爆による衝撃でアクエリアスの水柱を断ち切ると言う作戦を実行する事となった。

 

その後は、はやても知る通り、トリチウムを満載したガイアがアクエリアスを後にすると、ウルクを脱出したディンギル軍の残存艦隊が襲撃して来た。

 

トリチウムを満載したガイアは動く燃料タンク状態で一発でも被弾すれば大爆発を起こす状態となっている。

 

絶体絶命の危機にまほろばを捜索していた防衛軍の部隊が奇襲を仕掛ける形でディンギル軍へ襲い掛かる。

 

突然の奇襲でディンギル軍は大混乱となる。

 

「八神艦長」

 

「はい?」

 

「この艦隊はもしや例の世界の艦隊かね?」

 

ジャガーノートと行動を共にしているまほろば捜索隊について、高官の一人がはやてに訊ねる。

 

「はい、そうです。もう一つの地球がまほろばを捜索するために艦隊を派遣している情報を掴んでいたので、その艦隊と合流できれば強力な戦力になると思い、全速でまほろばが発見された海域まで行き、合流を果たし向こうの艦の艦長さんと話協力体制をとり、アクエリアス近海まで急行しました」

 

「だが、そうなると一つ釈然としないのだが?」

 

「何です?」

 

「まほろばの発見地点とこの時のアクエリアスの位置‥いくらMS機関を有する艦とは言え、次元跳躍では間に合わないのではないか?」

 

「おっしゃる通りです。まほろばの発見地点からミッドの近くまで進出していたアクエリアス近海まで来ることが出来たのは、もう一つの地球の艦の技術によるものです」

 

「それはどういう事かね?」

 

「もう一つの地球の艦艇は連続次元跳躍が可能で、ジャガーノートは牽引される形でアクエリアス近海まで短時間で来ることが出来ました」

 

はやてが短時間でまほろば発見地点から遠く離れたアクエリアス近海まで来ることが出来た理由を話すと、高官たちは何やらひそひそ話をする。

 

まほろば捜索隊の到着で形勢は逆転する。

 

捜索隊がディンギル軍の相手をしている間にガイア、まほろばはワープをして戦闘宙域から離脱する。

 

ディンギル軍は混乱の最中でガイア、まほろばを追う余裕がなかった。

 

しかも旗艦であるプレ・ノアがヒューベリオンの攻撃で沈んでしまった。

 

これにより、ディンギル軍は旗艦と指揮官であるルガールを失った事で戦線を支える事が出来ず、戦闘継続や自分たちの国家元首の敵討ちよりも自分たちの生命を優先として、蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

 

「地球の艦隊は敵を全て殲滅しなかったのかね?八神艦長」

 

「はい。逃げ散った敵がガイアの方に向かった可能性もあったので、追撃はせずにガイア、まほろばの下へ向かいました」

 

「そ、そうか‥‥」

 

ディンギル軍が完全に壊滅した訳ではなく、残っている事に高官たちは顔を顰める者も居た。

 

一足先に戦闘宙域からミッドチルダ近海にワープをしたガイアでは、乗員たちがまほろばへと移乗していく。

 

やがて、ガイアの乗員たちの移乗が終わると、ガイアはミッドチルダとアクエリアスの中間地点へと移動する。

 

そこからは、ミッドチルダでも確認出来た様にミッドチルダの引力に干渉したアクエリアスがミッドチルダへ水柱を伸ばしてきた所をガイアが自爆をして、その衝撃で水柱を断ち切った映像がモニター映し出される。

 

ただ、ガイアにクロノが残っていた事はあの時、まほろばに乗った居た者たちとはやてだけしか知らない。

 

しかし、フェイトもはやてもクロノの殉職はこの場では言わなかった。

 

「ハラオウン副長、八神艦長」

 

「はい?なんでしょう?」

 

そんな中、高官の一人がフェイトとはやてに声をかける。

 

「まず、ハラオウン副長。君を含めたガイアの乗員たちは一時的とはいえ、まほろばに乗艦していた訳だ」

 

「はい」

 

「その際、君たちはまほろばの臨検・強襲を行おうとは思わなかったのかね?」

 

「は?」

 

高官の言葉を聞いて、フェイトは『何を言っているんだ?こいつは?』みたいな表情と声を出す。

 

「臨検に強襲‥ですか?」

 

「そうだ。君は間近で見たのだろう?まほろばの驚異的な兵器を‥‥」

 

「はい」

 

まほろばの波動カートリッジ弾、波動砲、対ハイパー放射ミサイルビーム砲をフェイトはまほろばの艦橋でその威力を間近で見ていた。

 

「そんな危険な兵器の威力を見て、君たちは何故臨検・強襲を行おうとしなかったのかね?」

 

「そうだ。そのまほろばに乗っていたのだから、絶好のチャンスではなかったのか?」

 

「‥‥」

 

フェイトは高官たちの言葉に呆れて言葉を失う。

 

「八神艦長ももう一つの地球の宇宙艦船と行動を共にするのならば、臨検をするなり、言葉巧みにミッドチルダまで連れ込めば我々が強襲をかけて、拿捕する事が出来たのだぞ」

 

「‥‥」

 

フェイト同様、はやても“海”の高官たちの言葉に呆れる。

 

(それを危惧してギンガはミッドには近寄らず、ガイアの乗員たちを私の艦に移乗させたんや‥‥)

 

高官の言葉を聞いて、ギンガがガイアの乗員たちを自分たちに託した事を理解するはやて。

 

「お言葉ながら、まほろばとは協力体制にありました。その協力者に対して臨検や強襲など出来る訳がありません!!」

 

フェイトが高官たちへまほろばに臨検をかける事も拿捕する事も出来ない訳を話す。

 

「しかし、君も見たのだろう?あの世界の戦艦の戦闘能力はあまりにも危険すぎる!!」

 

「しかもミッドの近くまで誘い込んだ事で、連中にミッドの座標を特定されてしまった可能性もあるのだ」

 

「その通りだ!!あのような危険な兵器を保有・運用する世界を野放しにしてはいずれ、ミッドを始めとする管理世界に牙を剥く危険性もあるのだぞ!?」

 

「今回のディンギル軍との戦闘がその証拠ではないか!?」

 

「幸いディンギル軍は根拠地となる世界がアクエリアスで滅んだ事で戦力が少ない中での襲撃でかろうじて勝利する事が出来たが、もう一つの第九十七管理外世界は根拠地もあり、戦力に関してもディンギルを凌ぐのだぞ!?」

 

(はぁ~質問攻めで終わるのかと思ったんやけど、やっぱりこうなるんやな‥‥)

 

もう一つの地球に関係すると管理局はこうもあの世界の情報、宇宙艦船を欲しがる。

 

(管理局もMS機関搭載の艦で少し前よりも十分に戦力が充実したやないか‥‥)

 

自分が管理局に入った頃、機動六課を率いていた頃、ボラー連邦との邂逅に武力制裁の失敗直後に比べると今の管理局は充分に力をつけたと思うはやて。

 

第三者視点のように現状を見るはやてと違ってフェイトは自分たちが力をつけるために協力者を裏切るべきであったかのような発言をする高官たちの言葉にやや熱くなる。

 

「ならば、あの世界とは関わらなければいいではありませんか!?あの世界の軍は此方から手を出さなければ、手出しはしません!!それ以前に他所の世界の技術を奪うことよりも自分たちの手で技術発展をする努力をするべきではありませんか!?」

 

フェイトから正論を突きつけられてまほろば、捜索隊艦艇の臨検・拿捕を主張する高官たちは気まずそうにフェイトから視線を逸らす。

 

「今回の作戦の経緯から私は此処である事を提案いたします!!」

 

フェイトは今のこの場がチャンスだと思い、前々から思っていた提案を発する。

 

「今回の作戦では、まほろば所属の航空隊の活躍があってこそでした。そこで私は管理局‥ミッド、管理世界の今後の防衛の要として、次元の海、大気圏内での運用が可能な戦闘機の開発・導入を進言します!!」

 

会議室に凛としたフェイトの声が響く。

 

「ふぇ、フェイトちゃん‥‥」

 

フェイトの宣言とも言える言葉にはやても驚いた。

 

会場は一時、シーンと静まり返るが、フェイトの発言の意味を段々と理解した高官たちは、

 

「いきなり何を言い出すのかね?君は!?」

 

「戦闘機の導入などと管理局の信念に背くような真似など出来るか!?」

 

声を荒げているのは“海”“陸”よりも“やはり”空“の高官たちからが多い。

 

自分たちが有する空戦属性と言うスキルを空戦属性を持たぬ者でも扱える戦闘機に地位を奪われると思ってこその発言だ。

 

「では、空戦魔導師の方々は真空の次元の海でも戦えるのですか!?魔導師全員が空戦属性をお持ちなのですか!?」

 

「次元の海については“海”が不甲斐ない故に戦闘機などと言う質量兵器が必要になったと錯覚しているのだろう?」

 

「その通りだ!!現にディンギル軍がミッドを空襲した際、我々“空”の魔導師たちは奮戦し、ディンギル軍を追い返している!!」

 

「それは追い返えしたのではなく、ディンギル軍が攻撃目標を破壊したので、撤収しただけなのでは?」

 

「なんだと!?」

 

「あの現場に居なかったお前に何が分かる!?」

 

「先ほど“海”が不甲斐ないと仰いましたが、“空”も空港、港に停泊していた次元航行船、次元航行艦を死守する事が出来なかったではありませんか!?ミッドに居た大勢の人々を避難させることが出来なかったのは、“空”にも原因があるのではないのですか!?」

 

「何だと!?」

 

「貴様!!言うに事を欠いて責任転嫁する気か!?」

 

「そもそもディンギル軍を次元の海で撃破していれば、ミッドが空襲を受ける事はなかったのだぞ!?」

 

「その点については“海”の不甲斐なさは認めます」

 

フェイトはミッドチルダがディンギル軍に空襲されたのは“海”が宇宙でディンギル軍を撃破する事が出来なかった事が原因である事を認めると、“海”の高官たちの一部がムッとした表情をする。

 

「ですが、その時、次元の海を飛び回れる戦闘機があれば、防ぐ事が出来たでしょう‥‥第九管理世界の戦いの映像を見ても、あの凶悪なミサイルを搭載した敵の戦闘艇は次元航行艦よりも小回りが効きます。その戦闘艇をまほろば所属の航空隊はいとも簡単に撃破する事が出来ました。残念ながら機数が足りず、防空網を突破されて味方の艦に被害が出ましたが、十分な機数があれば、防空網で敵の戦闘艇を撃破する事は出来ました」

 

フェイトは映像を巻き戻して、第九管理世界の戦いの映像をモニターに再び映す。

 

モニターにはティアナが操縦するコスモゼロ以下のコスモパイソン隊が次々とディンギル軍の水雷艇を撃破する映像が映し出される。

 

ディンギル軍の水雷艇よりもさらに高速で小回りが効くまほろばの航空隊‥‥

 

フェイトの言う通り、機数が足りず、水雷艇の防空網突破を許してしまったが、捜索隊所属の航空隊が居れば、敵水雷艇の防空網突破を許さなかっただろう。

 

防空網突破を許さなければ、味方の被害はもっと少なかった筈だ。

 

「この映像から分かる通り、次元の海での戦闘機の優位性をご理解できたでしょうか?」

 

「しかしだ‥その映像の戦闘機はあの世界の戦闘機だ。仮に管理局でも開発した所で、あの世界並みの機体が作れるのかね?」

 

「艦の性能だって完全にあの世界の艦を凌駕した訳ではない。そんな中で戦闘機の開発何て、次元航行艦の進化・発展を止めることにもなりかねん」

 

“海”の中でも戦闘機の開発・導入に関して消極的な意見が出始める。

 

“海”としてはやはり、次元航行艦をもう一つの地球並みの性能に引き上げたいと言う思いが強く、戦闘機の開発・導入はその後でも良いと言う空気だ。

 

結局、フェイトがここぞとばかりに主張した戦闘機導入論は先送りにさえ、管理局はまほろばと捜索隊艦艇の戦闘力を見てますますもう一つの地球に関心を示すのであった。

 

会議室を出るフェイトはがっくりと項垂れていた。

 

「フェイトちゃん‥フェイトちゃんの気持ちも分かるで‥‥でも、管理局にはまだ頭の固い連中が多いんや‥そんな連中が多い中で新しい技術はなかなか受け入れられにくいんや‥‥」

 

はやてはフェイトを励ますが、

 

「でも、MS機関はすんなりとうけいれたじゃない!?あの映像を見ても何も響かない事の方が異常だよ!!いきなりあの世界並みの性能何て私だって期待していない!!失敗と経験を積んでいけばいいじゃない!!」

 

「フェ、フェイトちゃん‥‥」

 

「そもそも“海”も“空”も関係ない‥クロノが死んだのだって、管理局全体がしっかりしていなかったから、ディンギルに勝てなかった‥‥あの時、ギンガが協力していなかったらこんなくだらない会議だって開けなかった事も分からない連中ばかり‥‥」

 

フェイトはクロノから今後の管理局を託された事、そしてそんなクロノが命をかけてまで守ろうとしたミッドチルダ‥管理局が此処まで話の分からない者ばかりなのかと嘆く。

 

「クロノ君が死んだ事がまだ公に出来ない事も影響して居るんや‥‥クロノ君の件が公になれば、考え方も変わるかもしれへんし‥‥」

 

「‥‥」

 

本当にはやての言う通りの展開になるのかと疑問に思いつつもフェイトは待合室に居るチンクの下へと向かった。

 

「お待たせ、チンク」

 

「ああ‥‥その様子ではかなりつまらない会議だったのか?」

 

「古い考えで、新しいモノを受け入れない頭の固い人ばかり‥‥伝統が大事なのも分かるけど、もっと新しい技術を導入していかないと新たな侵略者に勝てない事を理解出来ない連中ばかりだよ。ボラーの時も今回のディンギルの時も何とかなったから次も大丈夫みたいな楽観視している」

 

「そうか‥‥それは由々しき事だな」

 

「流石に今日明日で変わる事はないって分かっていたけど、ディンギルだって完全に滅んだわけじゃない‥‥長期的な目で見ればいつかリベンジ戦を仕掛けてくる可能性は十分にあるのに‥‥」

 

ディンギルも体制を立て直す時間があるだろう‥‥

 

その時間を管理局は有効活用して、次なるディンギルの再来に備えなければならない。

 

彼らの執念と国家元首の敵討ちを考えれば、連中は必ず復讐戦を仕掛けてくるに違いないとフェイトは予測していた。

 

「ディンギル‥そして、管理局の技術革新についてはこの後で方法を考えよう‥‥まずはコレを届けなくては‥‥」

 

チンクはフェイトに懐から取り出した封筒をチラッと見せる。

 

「うん。そうだね」

 

別の意味で気が重くなるが、此方の件も先延ばしにする事は出来ない。

 

重い足取りでフェイトたちはリンディの執務室へと向かった。

 

コン、コン、コン

 

「はい、どなた?」

 

「フェイトです」

 

「あら?フェイト?どうぞ」

 

リンディの応答があり、フェイトたちは執務室に入る。

 

「あら?チンクさんも‥どうしたの?一体」

 

「ああ、うん‥ちょっとリンディ義母さんに話す事があって‥‥」

 

「私に?何かしら?」

 

「その前に人払いをお願いできるでしょうか?」

 

チンクがチラッと秘書官を見る。

 

「分かったわ。少しの間、席を外してくれるかしら?」

 

「わ、分かりました」

 

秘書官は戸惑いつつも訪問者がリンディの義娘たちであったので、すんなりと執務室から出て行った。

 

「それで、話って何かしら?」

 

「‥‥クロノ・ハラオウン艦長についてです」

 

「クロノの?」

 

「はい‥‥単刀直入に言います‥‥クロノ・ハラオウン艦長は‥‥殉職‥しました」

 

「えっ?」

 

チンクが発したクロノが殉職したと言う言葉を聞いてリンディは目を点にして唖然とする。

 

「く、クロノが殉職?な、何を言って‥‥」

 

「事実です。ハラオウン艦長は迫りくるアクエリアスの脅威からミッドチルダを守るためにガイアに単身残り、ガイアを自爆させてアクエリアスからミッドチルダを守りました‥‥こちらは艦長がご家族に残した遺書になります」

 

チンクはクロノが認めた遺書が入った封筒を差し出す。

 

震える手でリンディはその封筒を受け取る。

 

「ほ、本当にクロノは‥し、死んだの?」

 

「はい。それは間違いありません‥‥」

 

フェイトはバルディッシュが記録していた映像を再生させる。

 

そこには山本がガイアの艦橋にクロノが居ることを確認して報告する映像と音声が残されていた。

 

此処最近は意見の食い違いから親子の間に溝が生じていたが、ちゃんと向き合って話す間もなく、クロノは死んでしまった。

 

ガイアがアクエリアスの水柱を断ち切るために自爆した光景はミッドチルダからでも確認出来ていた。

 

あの時は無人のままかと思っていたが、まさかその艦内にクロノが残っていた何て、リンディにとってはまさに寝耳に水だった。

 

息子の死が間違いない事実にリンディの目には涙があふれると同時にもっと息子と話をするべきだったと後悔の念が渦巻く。

 

「‥‥ごめんなさい‥しばらく一人にしてくれるかしら?」

 

「は、はい」

 

リンディの言動にフェイトとチンクは理解できたので、何も言わずリンディの執務室から出た。

 

彼女一人になった執務室では、今頃リンディが声を上げて泣いている事だろう。

 

ゲンヤとスバルは再会の涙を流したが、リンディは永遠の別れの涙を流す事となった。

 

後日行われた会議にて、クロノの殉職が正式に発表され、アクエリアスからミッドチルダを救った英雄として盛大な葬儀が行われることが決まったのだった‥‥

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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