星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百七十四話 戦況報告会 地球側

 

 

ミッドチルダにて、ディンギル軍との戦況報告が行われた後、チンクから息子の死を知らされたリンディはこの件をなのは、はやての生まれ故郷の地球‥‥海鳴市に住んで居るエイミィにも伝える。

 

『は~い。あれ?義母さん、どうしたんですか?』

 

転送ポートの修理が未だに終わっておらず、アクエリアスともディンギルとも関係ない地球に住んで居るエイミィにリンディもクロノもミッドチルダの現状は伝えられておらず、エイミィは突然のリンディからの通信に首を傾げる。

 

『あれ?義母さん、目が赤いみたいですけど、何かあったんですか?』

 

ミッドチルダの現状を知らないエイミィであるが、リンディの顔を見て何かあったと察する。

 

『あっ、もしかして転送ポートがやっと直ったんですか?』

 

エイミィはようやく転送ポートが直り、地球とミッドチルダの行き来が出来るようになったことで、二人の孫に会える事の歓喜の涙かと思ったが、同じ涙でも流す理由が一八〇度異なる。

 

「エイミィ‥‥貴女には辛い話になるけど、心して聞いて頂戴」

 

『な、なんですか?そんなに改まって‥‥』

 

「クロノが‥‥」

 

『えっ?クロノ君が?』

 

「‥‥クロノが‥死んだわ」

 

『えっ?』

 

エイミィはリンディの言葉の意味が理解できずに、目が点となり思考が停止する。

 

『ちょ、ちょっと、ちょっと、わ、悪い冗談はやめて下さいよ‥‥く、クロノ君が死んだなんて、そんな訳ある訳ないじゃないですか‥‥』

 

エイミィの声は完全に震え、裏返っているので、彼女が動揺しているのは直ぐに分かった。

 

ただ、彼女としてはどうしてもクロノが死んだなんて信じられなかった。

 

艦隊の大半が沈んだあのボラー連邦への武力制裁でも生き残って還って来たクロノが死んだなんてある訳が無いと思っていた。

 

「嘘でも冗談でもないわ‥‥クロノは‥‥本当に死んだわ。ちゃんと確認も取れているの‥‥」

 

『嘘よ‥‥そんなの嘘よ!!クロノ君が私や子供たちを残して死ぬなんて!!そんなの‥‥嘘よ‥‥』

 

「辛いかもしれないけど、現実なのよ、エイミィ‥‥」

 

リンディはフェイトから貰ったガイアに残るクロノの映像と音声をエイミィに見せる。

 

そこには確かにガイアに一人残ったクロノの姿があり、クロノを乗せたガイアはアクエリアスの水柱を断ち切るために大爆発を起こして自沈する映像が映し出される。

 

『‥‥』

 

エイミィは涙を流しながら呆然とした様子でその光景を見つめる。

 

「‥‥」

 

リンディも悲痛な面持ちでその映像を見る。

 

やはり何度見ても息子が死ぬ映像は心苦しいモノがある。

 

『な、なんで‥‥なんで、こんなことになったんですか?』

 

エイミィはガイアが自爆‥クロノが死ぬことになった経緯をリンディに訊ねる。

 

「実は‥‥」

 

リンディはエイミィについ先日、ミッドチルダで起きた出来事を話す。

 

ただ、もう一つの地球の協力があった件については伏せた。

 

彼女がもう一つの地球が管理局と協力体制を敷いていたとしれば、かつて自分の夫であるクライドの上官であったギル・グレムアが、クライドと共に確保した闇の書の運搬任務に従事していた所、突如暴走し、クライド死に追いやってしまったという負い目があった事から、多少の犠牲を払おうとも闇の書を封印することに拘るようになった経緯を経験している事からエイミィも同じ様にもう一つの地球を憎むかもしれない。

 

もう一つの地球に対して復讐しようとするかもしれない。

 

そんな思いがリンディにはあったからだ。

 

リンディとしても息子の死は悲しい事だが、もう一つの地球に対してちょっかいを出すような事が起きれば、今の自分たちと同じ悲しみを抱く家族が沢山出ると言う事を理解していたからだ。

 

なので、ディンギルの件にもう一つの地球が関係している件について、極力口外しないように緘口令を敷きたい所であるが、人の口に戸は立てられないので、いつか、何処からか、エイミィは知る事になってしまうだろう。

 

「クロノはミッドに居る大勢の人々を救った英雄よ‥‥」

 

それでもエイミィの気持ちを抑えるようにリンディはクロノがミッドチルダを救った英雄である事を告げる。

 

『英雄なんかにならなくてもいい!!』

 

「エイミィ?」

 

『英雄なんかじゃなくて、ただ無事に私や子供たちの下に帰って来てくれればそれだけでよかった!!』

 

今はクロノの死を知り、混乱しているだけで、時間と二人の子供たち、周囲の人たちがエイミィの傷ついた心を癒してくれると信じるリンディであった。

 

後日、正式にクロノの殉職が公表され、葬儀が行われたのだが、クロノの遺体はガイアの船体と共にアクエリアスの氷塊の中なので、収容不能だったので、彼の葬儀は遺体無しで執り行われた。

 

エイミィは転送ポートが未だに使用不能だったので、夫の葬儀にさえ出席する事も出来なかった。

 

ハラオウン家が悲しみの渦に呑まれている中、まほろばと捜索隊も無事にもう一つの地球に帰還した。

 

はやて同様、地球に帰還したギンガは早速司令部に呼ばれた。

 

管理局との協同任務の際、事前に藤堂への許可を得て作戦を実行したので、そこまで大きな問題とはならなかった。

 

もしもこれが藤堂の許可を得ずに行えば、問題となっていただろう。

 

司令部の会議室には藤堂を始め山南、西郷と司令部の重鎮が揃っていた。

 

「では、月村艦長。早速報告を聞かせてもらえるかな?」

 

「はい」

 

藤堂の問いにギンガはミッドチルダ‥管理世界でどのような事があったのかを報告する。

 

「水惑星アクエリアス‥‥その星が様々な星に水と生命を与えたと‥‥」

 

「はい。アクエリアスにて、その星の主とも言える存在‥クイーン・オブ・アクエリアスの話では‥‥」

 

「そして、ミッドチルダに最初の文明を築いたディンギル‥‥」

 

「このディンギルが地球に来襲して来る可能性はあるのかね?」

 

異世界とは言え、ミッドチルダを襲撃してきた勢力と言う事で、ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国のように

 

「ゼロとは言い切れませんが、それでも限りなくゼロに近いと思います」

 

「ふむ、その根拠は?」

 

「彼らはかつての先祖が住んで居たミッドチルダに執着しています。そんな彼らがミッドチルダを簡単に諦めてこの地球に襲来するとは考えにくいので‥‥」

 

「なるほど‥それで、彼らが使用していたこのミサイルだが‥‥」

 

「はい。彼らが使用していたミサイルについてですが‥‥」

 

ディンギルはミッドチルダに固執しているので、地球に襲来する可能性は限りなくゼロに近いが、それでも絶対とは言い切れない。

 

彼らはかつてのガミラスと同じ状態なので、自分たちが生存可能となる星を見つけたら、ミッドチルダの件から言って、共存などはせずにまずはその星に住んで居る原住民を滅ぼしてからの移住を考える可能性が高い。

 

万が一にも地球が彼らに見つかれば、その凶刃な牙を地球に向けて来る可能性は十分にある。

 

ギンガは第九管理世界の戦いの映像と共にハイパー放射ミサイルについての説明を行う。

 

「このミサイルは通常のミサイルではなく、艦内の乗員の殺傷を優先とするミサイルで、このミサイルの弾頭部が装甲を貫通し、装甲を溶融した直後に胴体部が縮んで起爆、艦内に放射性物質を送り込んできます。この放射性物質の威力は物凄く、生身の状態で浴びれば九九%の割合で死亡、宇宙服を着ていても仮死状態となる事が判明しております」

 

「それほどの強力な放射性物質なのか?」

 

「はい。まほろばの技師長の話では、地球には存在しない放射性物質との事です」

 

「万が一、そのディンギルが地球に侵攻でもして来たら、味方の被害はかなりのモノになる恐れがあるのではないか?」

 

山南がディンギル軍の地球侵攻における被害を口にする。

 

「一応、このミサイルに対する対策兵器は既に開発済みです」

 

「なにっ!?」

 

「本当か!?」

 

ギンガがハイパー放射ミサイルの対策について既に解決済みである事を話すと藤堂や山南の顔つきが変わる。

 

「それで、対策が出来ていると言うがそれは一体どんなモノなのかね?」

 

「こちらが、まほろばの技師長、アルバート・ハインラインが製作したビーム砲です。既に実戦投入も致しました」

 

ギンガはモニターに対ハイパー放射ミサイルビーム砲を表示し、次いでアクエリアス沖での戦いの映像を映す。

 

まほろばの艦首から迫り出たビーム砲は迫りくるハイパー放射ミサイルに向かうと、放電現象に近い電流の網の様になり、その電流にハイパー放射ミサイルが接触すると、内部から破裂する様に爆発した。

 

「おぉーこれは‥‥」

 

「凄まじい威力だ‥‥」

 

「このビーム砲があれば、ディンギル軍が使用しているミサイルは十分に対処出来そうですな‥‥」

 

対ハイパー放射ミサイルビーム砲の威力を見て藤堂たちは感嘆の声を漏らし、このビーム砲を褒め称える。

 

「このビーム砲の設計データはあるのか?」

 

「はい。あります」

 

「うむ、では科学技術省にてこのビーム砲の生産準備を整えさせよう」

 

このビーム砲はハイパー放射ミサイルだけでなく、拡散するビーム砲と言う事で戦闘衛星やアステロイド帯に設置するビーム砲台としても使えそうだった。

 

ギンガが司令部にて、今回の管理局との共闘、ディンギル戦線について報告を行っている頃、メガロポリス東京の郊外にある共同墓地にティアナと石田の姿があった。

 

二人の眼前には小さな墓石があった。

 

その墓石は奇妙な墓石で、故人名は書かれておらず、墓石に 『優しく勇敢なる少年此処に眠る』 と書かれていた。

 

そう、このお墓はあのディンギル帝国の少年の墓であった。

 

少年の本名を知る事が出来れば、故人名を刻む事が出来たのだが、名前を聞くことを忘れていたため、墓石に故人名を刻む事が出来なかった。

 

墓石を発注した業者も首を傾げていたが、ちゃんと料金が支払われたので、文句はなかった。

 

「この子にとって此処は異星の大地になってしまうけど‥‥」

 

「ええ‥本当は遠い祖先の星‥ミッドチルダの大地に眠ってもらいたかったけど‥‥」

 

「‥そうね。あそこでは、この子は侵略者側の人間だから‥‥」

 

あの子は確かにディンギル帝国の人間‥しかも国家元首であるルガールの子供であった事で、ミッドチルダでは決して受け入れられなかった事から、こうして地球の大地で眠ってもらう事にした。

 

ミッドチルダを水没させようとし、大勢の人々を傷つけたディンギル帝国であるが、少なくともティアナと石田にとって、この子は残虐なディンギル帝国人ではなく、心優しい少年だった。

 

 

ティアナと石田の二人が少年の埋葬を終えた頃、再び視点を司令部の会議室へと移る。

 

 

「それで、月村艦長。このディンギル軍の武器は例のミサイルの他にどんな兵器があるのかね?」

 

西郷がギンガにハイパー放射ミサイル以外のディンギル軍の兵器について訊ねる。

 

「私たちが遭遇したディンギル軍の兵器ですが、まず例のミサイルを二基搭載した水雷艇です」

 

モニターには上部にハイパー放射ミサイルを二基装備したディンギル軍の水雷艇の姿が映る。

 

 

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「機動性は小型なので、戦艦群よりも快速ですが、艦載機を相手にするとやはり、上部のミサイルがネックとなり機動性は艦載機の方が優れているので、このミサイルを防ぐには艦載機でミサイルが放たれる前にこの水雷艇ごと撃破する必要があります」

 

「制宙権を確保する事が出来れば、防ぐ事が出来ると言う事か‥‥」

 

「はい。ですが、それは運用しているディンギル軍も当然、理解しているので、この水雷艇の護衛機は戦闘に特化している機体で、その運動性能は我々防衛軍の艦載機以上かもしれません」

 

次にモニターに映し出されたのは第九管理世界の戦いで、第二波の水雷艇群を護衛していた小型戦闘機である。

 

 

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「うむ、確かに月村艦長の言う通り、この戦闘機の運動性能は防衛軍の艦載機以上の運動性能だ」

 

「武装もシンプルであり、護衛だけの任務を主とする機体だな」

 

防衛軍の艦載機とは設計・運用思想が異なる機種に山南を始めとする艦隊派の軍人たちはまじまじとディンギル軍の小型戦闘機の姿を見つめる。

 

全長十メートルに満たない小型機で、武装は、コックピット前方に、小柄の機体には不釣合いなはどの大型光線砲を二基、胴体側面にパルスレーザー発射口を四門装備し、主翼の両端にT字ガイド翼と呼ばれる姿勢制御用のスタビライザーを装備している。

 

このスタビライザーの働きが有人型の艦載機とは思えない驚異的な機動性を発揮していた。

 

「次に防衛軍の艦載機に近い大型戦闘機です」

 

第九管理世界の戦いにおいて、救助活動中の管理局員を襲撃し、ミッドチルダを空襲した大型戦闘機の姿が映る。

 

 

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「こちらは戦闘機というよりも攻撃機としての側面が強い機体です。管理局側から齎された情報では、こちらの機体が多数、現在の管理局の根拠地となっているミッドチルダを空襲したとの事です」

 

地球型の戦闘機に近いスマートな外観をし、銃座と一体型のキャノピーにエンジンは単発で、エンジンノズルが台形状に開孔しており、機体下部にエアインテーク状の構造物があり、翼と機体の下部にはハイパー放射ミサイルとは違う形式のミサイルをぶら下げている。

 

「続いてディンギル軍が保有・運用している宇宙戦艦群です」

 

ギンガは次にディンギル軍が保有・運用していた戦艦群の説明をする。

 

「私たちが遭遇した敵戦艦は主に二つの型がありました」

 

ギンガが端末を操作すると、モニターにはアクエリアス近海での戦いが表示され、その映像を止めて、ある箇所をズームする。

 

「まず、こちらがディンギル軍の主力戦艦と思われる大型の戦艦です」

 

ズームしたのはドウズ型重装戦艦。

 

将棋の駒のような船体の上に艦橋部、レーダー、そして多数のガトリング砲を備えている戦艦だ。

 

 

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「ディンギル軍の戦艦は防衛軍の戦艦と異なり波動砲のような戦略砲は装備しておらず、艦首を始めとして、艦全体にガトリング式の砲塔を備えております。このガトリング砲は彗星帝国の回転式砲塔同様、速射性に関して防衛軍の艦船よりも優れています。ディンギル軍の設計思想は多数の艦艇で素早い連射速度で敵を殲滅する戦略と思われます。もう一隻の型の戦艦も似たような構造をしています」

 

次いでギンガはドウズ型重装戦艦よりも一回り小型の戦艦‥カリグラ級中型戦艦の艦影を表示する。

 

 

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艦首部にはドウズ型と同じく四連装ガトリング砲を備え、艦橋周囲にも三連装ガトリング砲四基、艦体下部に二基で計六基の主砲が確認できる。

 

「どちらもガトリング式の砲塔を備えていると言う事で、波動砲のような決戦兵器に頼ることなく、主砲の速射で敵を撃破する方式‥‥」

 

「そう言えば、彗星帝国の戦艦も回転式砲塔、艦橋部に強力な大口径の衝撃砲を備えているだけで、波動砲のような武器は搭載しておりませんでしたな‥‥もっともワープで高火力のエネルギー砲を撃って来る戦艦は居ましたが‥‥」

 

「そして、こちらは先ほどご説明した水雷艇の母艦となります」

 

戦艦に次いでギンガが説明をしたのは、ディンギル軍の水雷艇母艦。

 

 

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「艦首部に水雷艇の格納庫を有し、こちらも武装にはガトリング砲を搭載しております。こうして見ると、ディンギル軍の主兵装は速射性の高いガトリング砲の様です」

 

アクエリアス近海の戦いでは、水雷艇のハイパー放射ミサイルはまほろばの対ハイパー放射ミサイルビーム砲で無力化されたが、水雷艇母艦自体にもガトリング砲が搭載されていたことから、アクエリアス近海での戦いにも参戦していた。

 

もっともこれらの艦艇は全てまほろばの波動砲の一撃で小惑星帯諸共消滅してしまったことから、防衛軍は波動砲と言う武器を捨てるつもりはない。

 

しかし、ディンギル軍の戦艦群の攻撃力、設計思想を前にこれまで波動砲頼りにしてきた防衛軍も戦艦の設計に思想の転換を考慮に入れるべきではないかと思い始めた。

 

波動砲を撃つまでの間‥エネルギーチャージをしている間、敵を抑える役としてガトリング砲搭載艦は役立つのではないかと言う思いだ。

 

「駆逐艦や巡洋艦のような小、中の補助艦艇とは遭遇して居ないのかね?」

 

「はい。ディンギル軍との戦闘では遭遇していません。恐らく戦術的に小型の水雷艇に艦載機群で相手を翻弄し大型の戦艦で止めを刺す‥これがディンギル軍の基本戦術なのかもしれません」

 

「艦載機が存在すると言うことは当然空母も居ると思うのだが?」

 

「存在するとは思います。実際に管理局の艦と共に戦った際の戦闘、アクエリアス近海での戦いでは艦載機の姿が確認されています。ですが、空母に関しては確認できませんでした」

 

ギンガが経験したこの二つの戦闘では小型戦闘機、大型戦闘機の二種類の艦載機の姿は確認されたが、その艦載機の母艦となる空母の存在は確認できなかった。

 

ミッドチルダの空襲に関しては空母を主力とする機動部隊がその任務を担っていた。

 

 

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実際は移動要塞母艦の両舷に接舷されていたのだが、艦載機運用に関しては、空母ほどではないが、ドウズ型重装戦艦も防衛軍の戦艦の様に艦載機が搭載可能な造りになっていたので、両方の戦いではドウズ型重装戦艦が空母の役割も担っていた。

 

「こちらは既に消失していますが、ディンギル軍が根拠地として使用していた都市衛星と移動要塞です」

 

兵器でもなく、既に消失しているのだが、ギンガは都市衛星ウルクと移動要塞母艦についても補足説明を行う。

 

 

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「これがディンギル軍の根拠地‥‥」

 

「彗星帝国との戦いを思い出しますな‥‥」

 

「この移動要塞も暗黒星団帝国のゴルバや同帝国軍が使用していた移動要塞と同じ役割なのかな?」

 

「はい。この移動要塞母艦はディンギル軍のミッドチルダ侵攻艦隊の旗艦として使用されていたみたいで、この巨大な船体の甲板、両舷に艦隊を駐留させて補給を行っていたみたいです。副長が偵察を行いこの移動要塞の位置を特定することができたおかげで、正確な射撃を行う事が出来、波動カートリッジ弾の砲撃によって撃破する事が出来ました。この旗艦喪失により、ディンギル軍は一時撤退を余儀なくされたようです」

 

ティアナのコスモゼロに搭載されていたカメラが記録した波動カートリッジ弾による砲撃で炎上する移動要塞母艦の姿がモニターに映る。

 

「相変わらず波動カートリッジ弾の威力は凄まじいですな」

 

「波動砲に次ぐ威力がありますからな‥開発をした真田君には感謝してもしきれない」

 

暗黒星団帝国が誇るゴルバを撃破した実績を持っている波動カートリッジ弾の前ではあの巨大な移動要塞母艦さえも無力となっている。

 

波動カートリッジ弾の威力もあるが、この時、移動要塞母艦は艦隊の補給中だったこともなり、エネルギー、弾薬に引火した事も移動要塞母艦喪失の要因となっている。

 

「続いてこの都市衛星についてですが、彼らの母星はアクエリアスの水害によって、滅んでしまったみたいで、この都市衛星は、その水没したディンギルから宇宙へ脱出した方舟との事です」

 

「水害で逃げ出した方舟‥‥まさに宇宙版ノアの箱舟だな」

 

「ええ、しかし、彼らは女性・子供・高齢者の民間人を見捨てて逃げ出したみたいです」

 

「民間人を見捨てて軍人だけ逃げ出したと言うのか!?」

 

「はい」

 

「‥‥」

 

本来守る筈の民間人を見捨てて、いの一番で自分たちだけで宇宙へ逃げ出したディンギル軍の軍人たちの行いに顔を顰める藤堂たち。

 

「この都市衛星も彗星帝国の要塞都市同様、防御装備、攻撃装備を持っており、後部の山間部には大型のワープ装置がありました。このワープ装置がアクエリアスをワープさせている原因です」

 

モニターにはウルクの全体像が映し出される。

 

「この都市衛星の前後部、左右に突出しているゼンマイのような機械‥この機械が回転することによりニュートリノ・ビームが発生し、そのビーム幕が都市衛星を包み込む事で強力なバリアとなり、都市中心部にはこのビームを放つ砲台も設置されていました」

 

ニュートリノ・ビームが展開しているウルクにラウゴールムが突っ込む映像が流れ、このバリアの強力性とウルク全体を包み込んだことによる防御の完璧性を見せる。

 

そして、ウルク中心部の砲台からはニュートリノ・ビームが放たれる光景も映し出される。

 

「攻守において完璧と言う事か‥‥」

 

「彗星帝国本土も攻略するのに多大な犠牲を払いましたからな‥‥」

 

「はい。ですが、この都市衛星も人類が造り出したモノである以上弱点はありました」

 

「弱点?」

 

「それは一体なんだね?」

 

「波動エネルギーです」

 

「波動‥エネルギー‥‥」

 

「この衛星都市との決戦前にまほろばはアクエリアス近海でディンギル軍との交戦があり、波動砲による一撃で敵艦隊を殲滅しました。しかし、この波動砲の使用が原因で、エネルギー伝導管からエネルギーが漏れて後部噴射口から波動エネルギーが漏れました。その漏れた波動エネルギーがまほろばの周囲を守る幕となりました」

 

ガイアから撮影された映像からまほろばがニュートリノ・ビームの中から無傷の状態で出てくると、今度は波動砲の発射口から波動エネルギーを出して、ウルクに展開するニュートリノ・ビーム幕の中へと突入し、これまた無傷のままウルクへと強行着陸する姿が確認された。

 

「この都市衛星に強行着陸しましたが、都市衛星地表にも防衛手段がありました。地表に強行着陸後にワープ装置があると思われる建物に主砲で砲撃しましたが、その最中、第九管理世界‥と呼ばれる惑星付近での戦闘で水雷艇の護衛をしていた小型戦闘機とは異なる小型戦闘機が多数襲撃してきました。対空砲で応戦しましたが、その最中、山間部からロボットの馬に跨ったディンギル軍が襲来しました」

 

モニターにはまほろばとガイア周辺を飛び回る一人乗りの小型戦闘機、山からはロボットホースで駆け降りて来るディンギル軍の姿が映し出される。

 

 

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「乗っている馬はロボットなのだが、まさか騎兵で襲撃を仕掛けてくるとはな‥‥」

 

歩兵ならいざ知れず、ロボットホースの姿には藤堂たちも意外そうな表情で見る。

 

防衛軍にも陸戦専門の部隊‥空間騎兵隊が居る。

 

騎兵と名がつくのだが、生物の馬、ディンギル軍のようなロボットホースは使用しておらず、戦車兵に歩兵、ジェットパックを背負っての降下兵などの部隊は存在する。

 

「山間部などの荒野からの襲撃には戦車では機動性が失われますし、歩兵では敵に発見されたり、山を下るのにも時間がかかるので、ロボットで出来た馬と言うのは野戦において合理的な兵器なのかもしれません」

 

一応、管理局では“陸”に所属していたギンガだからこそ、陸戦においてロボットホースは合理的な兵器だと思った。

 

「結果的にアクエリアスの最後のワープを防ぐ事は出来ませんでした。敵は、都市衛星に着陸したまほろば、ガイアを葬るために自爆装置を作動させました」

 

モニターにはウルクの都市部が爆発している光景が映る。

 

「まほろばはこの時、エネルギー伝導管の修理が終わっておらず、浮上する事が出来ませんでした。そこで、私はまほろば自体をドリルとし、都市衛星の地下に潜り都市衛星の地下から脱出しました。なお、この時都市衛星に居たディンギルの方々も脱出しています」

 

山間部からは多数の岩石にエンジンをとりつけた岩石ロケットと一際巨大な円盤が爆発しているウルクから逃げて行く。

 

 

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ディンギル軍、まほろば、ガイアが脱出した後、ウルクは真っ二つになり消滅した。

 

しかし、アクエリアスの最後のワープを許してしまった事で、このままではミッドチルダはアクエリアスのせいで水没してしまう。

 

ミッドチルダを救うためにガイアは艦内にトリチウムを満載して、アクエリアスとミッドチルダの中間点で待機し、アクエリアスから伸びて来た水柱に自爆による衝撃で断ち切る作戦を取る。

 

アクエリアスの海上にディンギル軍が建設した海上プラントでトリチウムを積載し、アクエリアスを出発する。

 

しかし、アクエリアスを出発したばかりの宙域にウルクを脱出したディンギル軍が襲い掛かる。

 

そこへ、まほろばを捜索していたヒューベリオン以下の艦隊がディンギル軍へと襲い掛かる。

 

捜索隊がディンギル軍の相手をしている隙にまほろば、ガイアはワープで離脱。

 

此処からは良馬がギンガに渡した戦闘データからその後の戦闘の経緯が判明する。

 

ヒューベリオンが放った波動カートリッジ弾がディンギル軍の旗艦であるプレ・ノアに命中し撃沈するも、残りの岩石ロケット全てを撃破はしなかった。

 

その後、ガイアは乗員たちをまほろばに移乗し、予定地点にて自爆してアクエリアスからの水柱を断ち切り、ミッドチルダを救った。

 

一連の騒動が終息し、まほろばに居たガイアの乗員たちをジャガーノートに移乗した後、捜索隊と共に地球へと帰還したのだった。

 

「長官の許可があったとは言え、乗員たちに死傷者を出す結果となってしまいました。この件については死傷した本人、そしてその家族の方々には多大なご迷惑をかけたと思っております」

 

そもそも地球とミッドチルダは同盟関係もなければ、国交も結んでいない無関係な星同士‥‥

 

ミッドチルダを見捨てれば本来は傷つかなかった筈の乗員たち‥‥

 

ギンガは彼らが死傷したのは自分の責任だと思い詰める。

 

「いや、そもそもミッドチルダでの作戦に許可を出したのはこの私だ‥‥本来ならば地球とは何の関係もない星の住民とその惑星間での戦争にまほろばを巻き込んだのは私だ‥‥月村艦長、君が責任を感じる事はない」

 

藤堂はあくまでも自分の責任である事を明言する。

 

「今回の作戦で、ディンギルと言う名の星間国家の存在、その兵力、そしてミッドチルダの位置を特定出来た事は今後の防衛軍にとっても大きな収穫だ」

 

ディンギルとの戦いで管理局は戦力を落とした。

 

しかし、存在している以上、時間があれば再び戦力を取り戻す。

 

その時、管理局がこの地球を諦めているだろうか?

 

自分たちは管理局員ではないからそれは分からない。

 

しかし、用心するに越したことはない。

 

万が一、管理局がこの地球に対して侵攻して来るのであるならば、今回まほろばが行った共同戦線は彼らの根拠地であるミッドチルダの所在を知る事が出来た訳なので大きな収穫となる。

 

防衛軍側としては力を著しく落としている今が管理局を叩く絶好の機会なのかもしれないが、地球連邦は侵略国家ではない。

 

地球が管理局からの侵略を受けていない現状、ミッドチルダへの遠征はとても出来ない。

 

「負傷者本人、そして死傷した者たちの関係者には十分な保障を行う。それが上に立つ者の責任であり務めだ」

 

「はい‥ありがとうございます」

 

藤堂の配慮にギンガは頭を下げて礼を述べた。

 

 

まほろばは今回の作戦で機関部と波動砲にダメージを受けた事からしばらくの間、ドック入りとなった。

 

公共墓地で少年を埋葬したティアナは石田と別れ、自宅へと帰宅した。

 

久しぶりに戻ったマイホームは物凄く懐かしさを覚える。

 

「おかえりなさい。ティアナ」

 

「ママ、おかえり!!」

 

玄関の扉を開けると北野と息子の哲郎がティアナを出迎える。

 

「ただいま」

 

出迎えた家族にティアナは笑みを浮かべて答える。

 

そして、息子をギュッと抱きしめる。

 

「ん?どうしたの?ママ」

 

「ちょっと、長い間宇宙に居たせいで、哲郎の事が懐かしくなっちゃって‥‥」

 

母と子のそんな姿を北野はほっこりとした表情で見つめるのだった。

 

 

ティアナが家族と再会をした頃、司令部の会議室から報告を終えたギンガが出ると、

 

「お疲れ様、ギンガ」

 

「お疲れ~」

 

良馬とバーガーがギンガを待っていた。

 

「良馬さん!!それにフォムトさんも!?わざわざ待っていてくれたんですか!?」

 

「ああ、報告を終える頃、ギンガはへとへとになっていると思ってね」

 

「随分と大変だったみたいだな、今回の航海は‥‥」

 

「ええ‥でも、フォムトさんもガルマン・ガミラスが‥‥」

 

「星を失うのは慣れている。生きていりゃあまた新たな故郷を見つける事も出来る。総統閣下もその信念で今、新たな故郷を捜すための旅に出た」

 

「フォムトさんは大丈夫なんですか?」

 

デスラーは既に新たな新惑星探査のための長い旅へと出た。

 

しかし、バーガーはまだ地球に居る。

 

デスラーと一緒に行かなくて良かったのか、ギンガは気になった。

 

「地球の月にはジュラ様も残っている。そんで、俺は駐在武官として地球圏での残留を命じられたからな」

 

「そうだったんですか‥‥あっ、ネレディアさんは無事なんですか?」

 

バーガーの無事は確認できたが、ネレディアの安否確認はまだ出来ていない。

 

ギンガはバーガーにネレディアの安否確認をする。

 

「ネレディアは総統と一緒に旅に出た。アイツは俺よりも武人な奴だからな」

 

女性ながら将校になったのは伊達ではない。

 

部下を指揮するカリスマ性、戦場を生き抜く判断力と戦術知識において、彼女はそこら辺の男性士官よりも優れているのだろう。

 

「ネレディアさんも無事なんですね?良かった」

 

「せっかく、三人再会できたわけだし一緒に食事でもしようか?ギンガもお腹減っているでしょう?」

 

「はい」

 

三人は防衛軍庁舎のレストランで食事を摂った。

 

ギンガの食事量には流石のバーガーもやや引いていた。

 

かつての恋人と容姿は似ているが、食事量は全く異なりギャップを感じたのだ。

 

食事が終わると、バーガーは新たな職場である月面のガルマン・ガミラス大使館へと向かった。

 

良馬とギンガはティアナ同様、家族が待つ海鳴の月村邸へと向かう。

 

月村邸に戻ると、ユリーシャと友莉葉が良馬に抱き着く。

 

その光景にちょっとムッとしつつもギンガは娘の誉を抱き上げる。

 

「ごめんね、誉‥寂しい思いをさせて‥‥しばらくは艦がドック入りしているから、お母さん地球に居るわ。その間、いっぱい遊びましょうね」

 

ギンガ自身、家族が居る中で今の自分の仕事が娘泣かせな仕事だと思っている。

 

自分がミッドチルダのナカジマ家に引き取られた時も、両親は管理局員で共働きなので、家を留守がちであった。

 

それでも家にいる時、養母であるクイントは自分たち姉妹の事を可愛がってくれた。

 

自分の仕事は娘を含めて地球に居る大勢の人の生命を守る仕事‥と言うのは事実ではあるが、同時に言い訳である事もギンガはちゃんと理解している。

 

自分自身の幼少期がそうだったから‥‥

 

自分の娘に自分と同じ事をしていると言う負い目もギンガはちゃんと理解している。

 

それでも、家族を守るために、この仕事を続けたいと思う自分も居た。

 

この日、ギンガは娘優先としていたのだが、ユリーシャに関しては普段から娘と一緒に過ごしており、逆に旦那と離れ離れなので、夜に良馬へ夜襲を仕掛けた。

 

翌朝、良馬とユリーシャの様子からギンガは『やったな‥‥』と思いつつも娘優先を決めた手前、強くは言えなかった。

 

短いながらもギンガは家族との時間を楽しむのであった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
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