星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百七十七話 同盟&調査

 

 

此処で時系列を過去に遡る。

 

アクエリアスがミッドチルダへと進んでいる中、クロノはミッドチルダを救うために最後の手段としてガイアの艦内にアクエリアスにあるトリチウムを満載し、アクエリアスの水柱とミッドチルダの中間点でガイアを待機させて、魔力炉のエネルギーとトリチウムを融合させて爆発させてアクエリアスの水柱を断ち切る作戦を取る。

 

しかし、そんなガイアの行動はアクエリアスに建設されているディンギル軍のエネルギー吸収プラントのカメラでバッチリと撮影されており、一抹の不安を抱いたルガールはガイアと護衛をしていたまほろばの息の根を完全に止めるためにアクエリアスから飛び立ったばかりのガイアとまほろばに襲撃をかけた。

 

この時のガイアは艦内にトリチウムを満載しており、動く水爆状態であり、一発でもミサイルかビームを当てればガイアは大爆発を起こす。

 

ウルクを脱出した岩石ロケットはその快速を活かしてガイアとまほろばを包囲し、格納式のガトリング砲と回転砲塔を出して戦闘モードに入る。

 

あとはルガールからの攻撃命令が下れば、周囲を取り囲んだ岩石ロケットからミサイルとビームの雨がガイアとまほろばへと降り注ぐはずだった。

 

しかし、ルガールが攻撃命令を下す前に、ガイアとまほろばを包囲していた岩石ロケットの一群が突如爆発した。

 

突然の攻撃にルガールは攻撃命令を下すタイミングを外してしまい、ディンギル軍はガイア、まほろばを攻撃するタイミングさえも外した。

 

奇襲したのはまほろばを捜索するためにヤマトを中心とした防衛軍の捜索隊であった。

 

捜索隊の艦艇がディンギル軍を相手にしている間にガイアとまほろばはワープで戦闘宙域から離脱した。

 

そして、ディンギル軍の柱であるルガールはこの戦いで戦死したが、ディンギル軍全てがこの戦いで全滅した訳ではなかった。

 

自分たちが崇拝し、畏敬の念を持っているルガールが戦死した時、彼らは敵討ちはせずに自分たちの生命を優先し、次々と戦線から離脱した。

 

その離脱したディンギル軍の残党は、宇宙をあても無く航行していた。

 

一隻の岩石ロケットに各艦のリーダーが集まり、これからについて会議が行われた。

 

「ルガール大総統亡き今、我々は完全な宇宙の放浪者となってしまった‥‥」

 

「くそっ、一度は我らの故郷であるミッドチルダをあと一歩の所まで追い詰めたと言うのに‥‥」

 

アクエリアスによるディンギル星水没時は都市衛星ウルク、そして大総統であるルガールが居たからこそ、宇宙の放浪者となっても彼らには不安はなかった。

 

しかし、今はそのウルクもなければ、ルガールも居ない。

 

絶対的指導者を失った彼らの喪失感は大きく、命からがらあの戦闘宙域から逃れることが出来たのだが、この先の自分たちの運命に強い絶望を覚えていた。

 

自分たちはこれから何処へ行けば良いのか?

 

ミッドチルダへ再び侵攻するにしても岩石ロケットでは兵力として心もとない。

 

そんな中、

 

「レーダーに反応!?」

 

岩石ロケットのレーダーがこちらに向かって来る宇宙船の反応を捉えた。

 

「なにっ!?」

 

「時空管理局か!?それとも先ほど、我々を襲撃して来たあの戦艦群か!?」

 

何者かが自分たちに接近して来ると言う事実に狼狽えるディンギル残党軍の幹部たち。

 

「モニターに表示します」

 

オペレーターが機器を操作すると、岩石ロケットの艦橋にあるモニターに接近中の宇宙船の映像が映し出される。

 

モニターには全体に丸みを帯びた宇宙船が数隻こちらに向かって来る。

 

「どこの所属の艦だ?」

 

「分かりません。ですが、時空管理局の艦ではありません」

 

「管理局ではない‥‥」

 

「はい。例の突然襲撃を仕掛けて来たあの艦隊とも違います」

 

「接近中の宇宙船より、此方側に交信を求めて来ています!!」

 

「よし、翻訳機をセットし通信回路を開け」

 

「了解」

 

通信士が自動翻訳機をセットし、通信回路を開く。

 

すると、モニターには自分たちディンギル人よりも肌の色が薄い色‥水色の肌をした人物が映りだす。

 

『小官はボラー連邦宇宙艦隊所属、ガラク・モロゾフである。貴官らの所属、姓名を聞きたい』

 

「‥‥」

 

相手側の通信内容を聞いてディンギル側の幹部たちは互いに顔を見合わせてどうしたものかと戸惑う。

 

これまで、ディンギルは鎖国政策を取り続けており、ディンギル星系に迷い込んで来た外部の宇宙船に対して警告無しの攻撃を行ってきて撃沈してきた経緯がある。

 

「ボラー連邦と言う星間国家は聞いた事はあるか?

 

「いや。私の知る限り聞いた事も無い星間国家だ」

 

「私も‥‥」

 

もしかしたら、これまでの歴史の中でボラー連邦の宇宙艦船を自分たちが撃沈した事があるかもしれないが、少なくとも此処に居る幹部たちはボラー連邦などと言う星間国家には聞き覚えが無かった。

 

それでは、自分たちの素性を明かしても何ら問題はないのかもしれない。

 

そう判断し、幹部の一人がボラー連邦のモロゾフとやらに返答する。

 

「我々はディンギル帝国の者だ。私はエナント・アルテスだ」

 

『ディンギル帝国?』

 

モロゾフもディンギル帝国とやらに覚えはない様で首を傾げる。

 

『それで、ディンギル帝国の者たちよ、何故君たちはこの宙域を航行している。見た所、貴官らの船は長距離航海に向いているとは思えない艦に見えるのだが‥‥?』

 

モロゾフから見ても岩石ロケットは短距離航行の宇宙艦船に見えた。

 

「じ、実は‥‥」

 

アルテスはモロゾフに自分たちの境遇は語る。

 

自分たちの母星がアクエリアスと言う名の水惑星が突然回遊して来た事により水没し、命からがら宇宙へ脱出し、新たなる故郷となる星へ侵略戦争を仕掛け、あと一歩のとこまで追い込むも、突如邪魔が入り、その戦闘で自分たちの国家元首は戦死し、命からがら戦場から逃げ延びて現在に至る旨を話す。

 

『なるほど‥‥いや、故郷を失ったと言う点では我々と同じですな』

 

「貴方がたと?」

 

『はい。実は我々の故郷も宇宙の大災害によって壊滅的打撃を受けました』

 

「まさか、我々以外にも故郷を失った者が居るとは思いもよりませんでした」

 

『それで、貴方がたが移住しようとした星ですが、邪魔が入ったと言う事はその星には先住民が居たと言う事ですね?』

 

「はい。我々は故郷を水没させたアクエリアスをワープで移住予定の星へと送り込み、先住民たちをアクエリアスの水害で絶滅させた後、移住する予定でした‥‥その作戦もあと一歩のとこまで来たのですが‥‥」

 

アルテスは悔しそうに移住作戦の失敗を語る。

 

ただ、彼は移住予定だったミッドチルダがかつて自分たちの先祖が、ミッドチルダで最初の文明を築いた民族である事を知らなかった。

 

ミッドチルダがディンギルの民たちにとって先祖の星である事を知っていたのはディンギル帝国の中でもルガール王家の王族だけであり、ルガールが戦死した今、その事実は闇へと葬られてしまった。

 

『‥‥よろしければ、その星の名前を訊ねてもよろしいでしょうか?』

 

モロゾフは興味本位で、アルテスたちディンギル人がどんな星へ移住しようとしたのかを訊ねる。

 

「ミッドチルダと言う名の星です」

 

『い、今何と?』

 

「ミッドチルダですが‥‥」

 

『ミッドチルダ‥‥それは間違いないのですか?』

 

「え、ええ‥‥」

 

『‥‥』

 

ボラー連邦にとってもミッドチルダと言う名の星は少なからず自分たちにも因縁のある星であった。

 

ガルマン・ガミラスの建国によってすっかりと忘れ去られていたのだが、まさかに此処に来てその星の名を再び聞くことになるとはあまりにも意外であった。

 

「あの、何か‥‥?」

 

モロゾフの様子が明らかに変化した事をアルテスは見逃さず、モロゾフに声をかける。

 

『実は、ミッドチルダには我々も少なからず因縁のある星でしてね』

 

「えっ?」

 

『何年か前、ミッドチルダに存在する組織‥時空管理局が我が国の輸送船団を襲撃し、返り討ちにしたことがありましてね。その後、彼らは無謀にも我がボラー連邦本星に戦をしかけてきました。まぁ、此方も赤子の手をひねるように返り討ちにしてやりましたけどね』

 

(時空管理局は我々の知らぬ宇宙に手を伸ばしていたと言う事か‥‥)

 

(大総統がとられた鎖国政策が我々ディンギルを世間知らずにしていたのかもしれないな‥‥)

 

ディンギル‥ルガール王家はミッドチルダから元祖ディンギル星人に救助されて、その惑星を逆に乗っ取り、新たな王国を建国してから、宇宙へ出る力を持ちながらもその力を使って他の星への侵略行為はせずに最低限の領地のみの絶対防衛の鎖国政策をとり、領地に不法侵入してきた勢力、ルガール王家に反旗を翻す反逆者のみを叩いて来たので、ディンギル星系外で何か起きていたのか、その情報をディンギルは全く入手していなかった。

 

実際にボラー連邦なんて星間国家の名前は今ここで初めて知り、そのボラー連邦が自分たちと同じミッドチルダ‥時空管理局と戦った事がある事も初めて知る事実であった。

 

『それで、貴官らはこれからどうするおつもりかな?』

 

「どう‥とは‥‥?」

 

『どこか行く宛てがあるのか?』

 

「いえ、我々は既に母国も‥戻る場所も行く宛てもありません」

 

『ふむ、ならば我々と共に来ないか?』

 

「えっ?」

 

『我々は共に故郷を失い、そしてミッドチルダ‥時空管理局には因縁がある。我々の技術、そして貴官らの技術で時空管理局の連中に一泡吹かせてやろうではないか。上手くいけば、ミッドチルダさえも我々の手中にする事だって出来る』

 

モロゾフは宇宙空間を航行できる宇宙船を有し、管理局と戦った経緯からディンギルにも自分たちと同等の技術力を持っている推測し、行き場の無い彼らをボラー連邦の陣営に招くことにより更なる技術革新が得られると思った。

 

「ミッドチルダを‥‥」

 

一方で、ディンギル側はモロゾフの提案を手放しで喜べる訳ではなかった。

 

モロゾフの提案は正直、ありがたかった。

 

しかし、今出会ったばかりのボラー連邦を完全に信じる事も出来ない。

 

だが、このままでは近い内に岩石ロケットのエネルギーも物資も無くなり、全滅は必須だ。

 

此処は彼らに賭けてみるしかなかった。

 

「分かりました。貴方がたの提案、ありがたく受け入れさせてもらいます」

 

これが、ミッドチルダ‥時空管理局に因縁があるボラー連邦、ディンギル帝国が手を結んだ瞬間であった。

 

そして、モロゾフの推測通りディンギルには多くの技術者・研究者が居た。

 

これはルガールがミッドチルダを手に入れた後、失われた軍備を短期間の内に揃えるために、技術者・研究者が乗っていた岩石ロケットを後方に控えさせていたからだ。

 

ルガールのこの判断によってディンギルの技術者・研究者は生き残り、彼らはミッドチルダを手に入れた後、直ぐに軍備を整えられるように軍艦、兵器のデータは持っていた。

 

ボラー連邦はこれによってディンギルの兵器データと技術者・研究者を手に入れる事が出来たのだった。

 

ディンギルの岩石ロケット群はモロゾフの艦の先導の下、ある宙域へと向かう。

 

そこにはいくつもの球体を取り付けた巨大な宇宙要塞が姿を見せる。

 

それは、かつて地球の金星宙域でデスラーのハイパー・デスラー砲によって、当時のボラー連邦の国家元首であるベムラーゼ諸共消滅したボラー連邦が誇る宇宙要塞、ゼスパーゼそっくりの宇宙要塞だった。

 

この宇宙要塞こそ、今現在ボラー連邦の残党が根拠地にしているゼスパーゼⅡである。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ゼスパーゼⅡの周囲にはボラー連邦の宇宙艦艇が絶えず補給と周辺の哨戒を行っている。

 

そもそもボラー連邦の残党がこの宙域に居るのも以前、管理局の艦がボラー連邦に鹵獲されていた事が影響している。

 

ボラー連邦は鹵獲した管理局の艦から管理局がいくつもの有人惑星を植民地化している情報を得たボラー連邦はミッドチルダではなくともどこかの有人惑星を奪う算段でこの宙域まで進出して来たのだ。

 

モロゾフの艦がゼスパーゼⅡのドックに入るのと同じ様に岩石ロケット群も他のボラー連邦の宇宙艦艇に倣ってゼスパーゼⅡのドックへと入る。

 

ガントリーロックで固定された岩石ロケットからアステルは緊張した面持ちでゼスパーゼⅡ内にある艦船ドックに降り立つ。

 

全員で降りて万が一の事があれば、ディンギルの民は全滅してしまう。

 

そこで、アステルが代表として単身で現在のボラー連邦の指導者との面会へと赴いた。

 

やがて、要塞の中心部にある謁見室に一人の男が姿を見せる。

 

「初めまして、私が現在ボラー連邦の首相を務めているグレゴール・ラスプータンです」

 

丁寧な口調と物腰柔らかな態度でアステルに一礼しながら自己紹介をする。

 

その様子はこれまでのボラー連邦の対応から異例に見えた。

 

これまでのボラー連邦ならば、横柄な態度をとり、ボラー連邦以外の星間国家の住民を見下す態度を取って来た。

 

しかし、ベムラーゼ政権からラスプータン政権に代わり、さらに故郷である本星を失った事で、他の星間国家の者に対しても融和な態度となっていた。

 

『初めまして、私はディンギル帝国、第36戦闘大隊を率いておりますエナント・アルテスと申します』

 

翻訳機を使用しながらアステルはラスプータンに自己紹介をする。

 

「話はモロゾフ君より聞きました。我々同様、宇宙災害と時空管理局によって大変な目に遭われたと‥‥」

 

『は、はい。このままでは宇宙を彷徨い、エネルギーと物資が尽きるのを待つだけでした‥‥運よくモロゾフ殿の艦に発見され、こうして迎えられた事に感謝いたします』

 

アステルは放浪者となった自分たちを保護してくれた礼をラスプータンに言う。

 

「まさか、我々以外に時空管理局に因縁がある勢力があるとは思わなかった。今回の出会いはまさに運命であると私は思っている。ボラー連邦は君たちを歓迎する。是非とも力を貸してほしい。我々も君たちに協力は惜しまない」

 

『ありがとうございます。我がディンギルもボラー連邦に協力致しましょう』

 

こうして、ボラー連邦、ディンギルと故郷を失い共に管理局と因縁がある二つの勢力が手を取り合った。

 

ミッドチルダ‥管理局にとってはまさに悪夢とも言える同盟が密かに進んでいる中、

 

ミッドチルダから遥か離れたもう一つの太陽系‥地球では‥‥

 

「もう一度、銀河系中心部へ調査を行いたい?」

 

「はい。ガルマン・ガミラスの惨状はデスラー総統を始めとするガルマン・ガミラス側の方々から既に周知の事実となっています。しかし、ボラー連邦側の宇宙はガルマン・ガミラス同様壊滅したとの予測だけであり、詳しい実態は未だ不明のままです」

 

この日、宇宙戦艦ヤマト艦長の古代進が防衛軍司令部にある意見書を提出した。

 

それはガルマン・ガミラス同様、銀河交叉によって生じたボラー連邦側の被害調査であった。

 

古代から提出された意見書の内容に防衛軍の幕僚たちは『どうしたものかと』頭を抱える。

 

デスラーたちガルマン・ガミラスがあそこまでの被害を受けたのだから、ボラー連邦側もかなりの被害を受けたモノと推察されるが、あくまでも推察であり実際の被害がボラー連邦側はガルマン・ガミラスよりも少なく、現在は戦災復興をしているので、侵攻行為がないのかもしれないと言う疑念はある。

 

「しかし、調査をするにしても二つ問題がある」

 

幕僚の一人が古代にボラー連邦領内への調査に対する危険性を示唆する。

 

「一つは未だに銀河交叉の影響が銀河系中心部では消滅していない事だ」

 

地球‥太陽系、ケンタウロス座アルファ星には銀河交叉による影響は今の所ないが、銀河系中心部では未だにその影響が起きている事だ。

 

この銀河交叉の影響が完全に消滅するには最低でもあと五十年は必要だと指摘する天文学者も居る。

 

「それにボラー連邦の領内に入ると言う事はボラーに対して堂々と領海侵犯を行うと言う事だ。もしも、ボラー側の被害がガルマン・ガミラスよりも軽く、未だにボラーの勢力が健在だった場合、地球は本格的にボラーとの全面戦争をすると言うことになる」

 

「それに同盟であったガルマン・ガミラスは今や新天地を求めて宇宙を放浪している。ボラーとの戦争となれば、ガルマン・ガミラスの力を借りる事は出来ないと言う事だぞ」

 

ボラー連邦領内への領海侵犯、そしてそれが元でボラー連邦との全面戦争‥‥幕僚たちは銀河交叉の影響よりもそちらの方を警戒している。

 

古代も当然、その危険性を理解している。

 

だが、その危険性を理解してもボラー連邦領内の調査の必要性を意見したのは、ボラー連邦の現状の他に理由があった。

 

「その点は私も理解はしています。ですが、その危険を冒してでもボラー連邦領内の調査をするには理由があります」

 

「理由?それはどんな理由かね?」

 

「私はまほろばと共にガルマン・ガミラス本星へ調査に赴きました。そして、同星の荒廃模様を目の当たりにしました。かつて、強大な軍事力と高い技術力を誇ったあのガルマン・ガミラスが短期間の内に滅んでしまった事は信じられませんでした。そして、ガルマン・ガミラス領内、ボラー連邦領内でも同様の被害が有る筈です」

 

ガルマン・ガミラス建国一周年の際、自分たちヤマト、まほろばの乗員たち以外にも親ガルマン派の惑星国家の人間たちもその式典に参加していた。

 

「うむ、バジウド星系に親ボラー連邦派の星間国家があるように当然、ガルマン・ガミラス、そしてボラー連邦領内にもそのような惑星国家は存在しているだろう」

 

「その惑星には残されている人々が居る筈です。それらの星の人々の生活は困窮し、疲弊している筈です。そうした人々の救援を行うべきではないでしょうか?」

 

ガルマン・ガミラス、ボラー連邦、共に多くの有人惑星の同盟、属国があった。

 

銀河系中心部‥銀河交叉の影響をもろに受けたそれらの惑星には荒廃した大地でまだ生き残っている人々が居るかもしれない。

 

それらの人々に救助の手を差し伸べたい‥‥

 

それが、古代が今回の調査を行いたい最大の理由であった。

 

デスラーの場合、自分を慕う臣民たちには寛大だ。

 

ガルマン・ガミラス本星が壊滅した際、デスラーは本星の人間だけでなくそうした親ガルマン派の臣民たちも助けた可能性があるが、銀河交叉は突然の出来事だったので、ガルマン・ガミラス領内の臣民全てを救う事は流石のデスラーでも不可能だ。

 

ボラー連邦領内ではガルマン・ガミラスよりも属国の扱いが雑なので、ガルマン・ガミラス領内よりもボラー連邦領内の方が、苦しんでいる人々が多い筈だ。

 

「‥‥」

 

藤堂長官は目を閉じ、地球はどうするべきか決断を迷っている様だ。

 

「長官、今回の古代艦長の件、どう思いますか?」

 

「やはり、ボラー連邦との全面戦争を考えると、ガルマン・ガミラス領内の調査だけに限定するべきでは?」

 

古代の言う人命救助は理解できる。

 

それならば、それをガルマン・ガミラス領内だけに限定し、あくまでもボラー連邦領内の調査はリスクを伴うので、スルーすべきだと意見も出る。

 

「‥ガルマン・ガミラス領内での救援活動については許可する。ボラー連邦領内の調査については、現状行わず、様子を見る」

 

藤堂は幕僚の一人の意見を採用し、人命救助の範囲をガルマン・ガミラス領内に留め、ボラー連邦領内については様子見‥ガルマン・ガミラス領内での救援中にボラーの動きを観察しつつ、今後ボラー連邦領内への調査を行うのかを精査するとの事だ。

 

古代はボラー連邦領内の調査が現状出来なかった件について若干の不満があったが、ガルマン・ガミラス領内の人命救助が出来、その行動の最中のボラー連邦の動き次第では、ボラー連邦領内の活動も許可できる様なので、一先ずはガルマン・ガミラス領内の人命救助を精一杯行おうと決めた。

 

今回参加する艦艇はヤマトの他にヒューベリオンが参加する事となった。

 

 

海鳴市 月村邸

 

「また銀河系中心部に行くんですか?」

 

司令部からヒューベリオンにヤマトと共にガルマン・ガミラス領内の調査と人命救助の命令が下り、良馬はギンガに暫く地球を留守にする旨を伝える。

 

「うん。でも、戦闘をしに行く訳じゃない。ガルマン・ガミラス領内の調査と領内の惑星に取り残された人々の人命救助だ」

 

「でも、銀河交叉の影響が収まった訳じゃ、ないのに‥‥あそこは本当に危険な所なんです」

 

ギンガ自身もガルマン・ガミラス領内の調査へ赴いた際、ガルマン・ガミラス本星の近くで星の爆発があり、それを回避するためにランダムワープをした結果、ディンギルとの戦いに巻き込まれた経緯があるので、彼女の言葉には現実味を帯びている。

 

「それは分かっている。でも、今回は人の命がかかっている調査なんだ‥‥」

 

最初の調査は銀河交叉の影響とガルマン・ガミラス本星の調査であったが、今回は人命救助を主にしているので、重要度としては今回の調査の方が高い。

 

「‥‥」

 

人の命がかかっていると言う事柄にギンガは強く言えない。

 

「分かりました。気を付けて‥‥」

 

「ああ。しばらく留守にするが、必ず帰って来る」

 

そもそもこの命令は司令部からの命令なので、ギンガにはどう転んでも撤回は出来なかった。

 

後日、司令部の会議室にて古代を始めとするヤマトの幹部と良馬を始めとするヒューベリオンの幹部が集まり、ガルマン・ガミラス領内の調査に対する会議が行われた。

 

「我々は地球からガルマン・ガミラス本星への航路は‥‥」

 

ヤマトの副長兼航海長の島は地球~ガルマン・ガミラス本星までの航路を説明する。

 

「設置した偵察衛星からの情報では‥‥」

 

第一次ガルマン・ガミラス調査の際、ヤマト、まほろばは、ガルマン・ガミラス本星までの航路上に偵察衛星を設置しながら進んでおり、映像から常に様子を観察していた。

 

これまでの偵察によって得られた映像から今回の調査による航路が選定された。

 

「万が一、ガルマン・ガミラス領内でボラー連邦の艦船と遭遇した場合の対処は?」

 

フェリシアが古代にボラー連邦の艦船と遭遇した場合の対処を質問する。

 

「いきなり攻撃するのではなく、此方の所属、目的を伝え、交戦の意志が無い旨を伝えた後、なおも戦闘態勢を解かず、攻撃をしてきたら自艦防衛のため、こちらも反撃をする」

 

古代は最初、警告を送り、それを無視して此方に攻撃を仕掛けてくるようならば、反撃して相手を撃沈すると言う。

 

「被災者へ提供する物資は食料、医薬品を始めとする生活物資ですが、被災者が惑星からの脱出を希望する際はヤマトもしくはヒューベリオンに乗艦させ保護するのですか?」

 

「その星の状態にもよる。惑星の崩壊が近いとされる場合は緊急対処として乗艦させるが、時間的余裕がある場合は、後続の支援を要請する。出来れば、大型輸送艦を引き連れて行ければ、もっと飛躍的に救援活動が出来るのだがな‥‥」

 

古代としては銀河交叉の影響がなければ今回の調査に大型輸送艦を引き連れて行きたかった。

 

輸送艦ならばヤマト、ヒューベリオン以上に食料、医薬品、建築重機を多く持ち運べる。

 

物資が多ければ多い程、人を多く助ける事が出来る。

 

しかし、銀河交叉の影響がある宙域では輸送艦の装甲では心もとない。

 

輸送艦の装甲、速度の問題があるのも古代としては何とも歯痒さを覚える。

 

「では、物資の搬入を急がせ、一日でも早く出航しましょう」

 

「ええ、そうですね」

 

ヤマト、ヒューベリオンは救援物資、そして重機の数々の積載作業を急ぐ。

 

そして、ヤマト、ヒューベリオン共に出航準備が整うと二隻は地球を出航した。

 

ギンガや雪たちは銀河交叉の影響がある銀河系中心部へ行くヤマト、ヒューベリオンの行く末を案じるのだった。

 

ヤマト、ヒューベリオンは太陽系内を連続ワープですっ飛ばし、ケンタウロス座アルファ星、バース星を経由して一路、ガルマン・ガミラス本星を目指す。

 

バース星を通過後は、航行速度を落とし、ガルマン・ガミラスから提供されていた親ガルマン派の星を一つ一つずつ確認して見ていく。

 

ガルマン・ガミラス領内の星の中には新天地へ向かう前にデスラーが共に新天地へ向かう旨を伝えて、その航海に同行する者も居れば、これを期にガルマン・ガミラスから独立を目指し、同行せずにその惑星に留まる星間国家もあった。

 

ガルマン・ガミラスからの独立を目指した星間国家に対して、地球は干渉せずに地球に対して武力行使をするならば敵対国家として対処する旨を伝えるだけであった。

 

「ほんのわずかな期間じゃあ、銀河交叉の影響は解消しないか‥‥」

 

ヤマトの艦橋で島が操舵悍を握りしめながら外の光景を見ながら呟く。

 

航行している宇宙空間では、大小様々な大きさの岩礁が漂っている。

 

これらの岩礁はかつて惑星を構成していた岩礁、異次元の空間から現れたもう一つの銀河系と共に出現した岩礁だ。

 

第二の地球探査の際に通った時は、此処までの量の岩礁はなかった。

 

ただ、ボラー連邦の宇宙艦船の姿は見当たらない。

 

ガルマン・ガミラスが壊滅したのだから、この機を逃さずに再び銀河系中心部を始めとして、かつての領地を取り戻そうと行動を起こしそうなものなのだが、未だにボラ―側にそれらしい動きも兆候も見られない。

 

ガルマン・ガミラスが滅んだので、ボラーはまず、本星の復興を優先しているのだろうか?

 

地球側としても今回の調査にボラー連邦領内の調査は禁止したが、ボラー側の動きが掴めない事に関してもやきもきしていた。

 

だからこそ藤堂は完全にボラー連邦領内の調査を禁止にはせずに様子を見て、可能ならばボラー連邦領内の調査を許可していた。

 

ガルマン・ガミラス領内を航行し、人が残っている惑星を探査し、人命救助を行う。

 

人が残っている惑星にはガルマン・ガミラスからの独立以外にイスカンダルのスターシアの様に自分たちが生まれ育った星に愛着があり、生まれ故郷である星を捨てきれない者たちも居た。

 

残留民たちの説得はあのデスラーでさえ、彼らに理解を示した。

 

それは危険が迫るイスカンダルから梃子でも動かなかったスターシアの姿を彼らに重ねたのだろう。

 

だからこそ、デスラーは彼らの意志を尊重したのだ。

 

とは言え、銀河交叉の影響で荒廃してしまった星に残った彼らをこのまま見て見ぬふりは出来なかったので、デスラーもある程度の物資は残した。

 

そして、今回ガルマン・ガミラス領内の調査兼人命救助に来たヤマト、ヒューベリオンも彼らに食料、医薬品を配給し、瓦礫の撤去と最低限のライフラインの復旧作業を手伝った。

 

「銀河交叉が起きてから、ボラー連邦から何か動きがありましたか?」

 

「ボラー連邦から再びこの星を領土に組み込むとか、『我が陣営に加入せよ』みたいな広域通信や宇宙艦船が来たとか?」

 

古代、良馬は残った惑星の住民にボラー連邦の情報収集も行った。

 

しかし、住民たちからの返答は、

 

「いや、そんなものは来ていない」

 

「ボラーの連中も銀河交叉で大変なんじゃないか?」

 

などの返答で、ボラー連邦はやはりガルマン・ガミラス領内に入って来ていない様だ。

 

これまでのガルマン・ガミラス領内での航海でもボラー連邦の宇宙艦船どころかボラーの偵察衛星の気配も見当たらない。

 

「此処までボラーの影が無いと逆に不気味と言うか‥‥」

 

「やはり、ガルマン・ガミラス同様、ボラー連邦の方も壊滅し、国家としての体をなしていないのかもしれない」

 

「一先ず地球にこれらの報告を伝えよう」

 

古代はこれまでのガルマン・ガミラス領内での活動を報告し、ボラー側の動きが全く無かった事も報告した。

 

 

地球 防衛軍司令部

 

「長官、ガルマン・ガミラス領へ向かった古代艦長からの報告が入っております」

 

「うむ、此方に転送してくれ」

 

「了解」

 

藤堂は自分のパソコンに古代からの報告書を送信してもらい、その報告書に目を通す。

 

「ふむ‥‥」

 

(ボラーに動きがなし‥か‥‥)

 

(ガルマン・ガミラス同様、ボラーにも大きな被害を受けていると言う事か‥‥)

 

藤堂も古代からの報告書を読み、ガルマン・ガミラス同様、ボラー連邦も壊滅的な被害を受けて本星を捨て何処か別の星を求めて本星を捨てたのかと思った。

 

その他にガルマン・ガミラス領内でデスラーたちとは行かず、自分たちの故郷の星に残った者たちについての報告もあり、彼らの現状、星の座標が書かれており、藤堂はこの報告を受けて第二次救援船団の派遣を決めた。

 

ボラーの動きがないのだが、護衛の戦闘艦随伴で、輸送艦はドレッドノート級・改級の輸送艦を手配した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ドレッドノート級・改輸送艦も文字通りドレッドノート級戦艦の船体を使用しているので、大型輸送艦よりは運べる物資の量が多くはないのだが、装甲に至ってはやはり戦艦の船体を使用しているので、通常の輸送艦よりは防御力がある。

 

第一次救援でこのドレッドノート級・改級輸送船の同行案も当然あったが、ボラー連邦の動きが不明だったことから、万が一戦闘となった際、いくら装甲が戦艦並みとは言え、武装を施していない輸送艦では足を引っ張る事になる。

 

なので第一陣は戦艦のヤマトとヒューベリオンが調査を行い、ガルマン・ガミラス領内における人命救助とボラー連邦の動きを探った結果、ボラーの脅威が無いと判断して藤堂は第二陣の派遣を決めたのだ。

 

そして第一陣のヤマト、ヒューベリオンにはボラー連邦領内への調査が命じられたのだった。

 

ヤマト、ヒューベリオンがガルマン・ガミラス領内での調査と人命救助活動を行っている頃、ミッドチルダでは‥‥

 

 

ミッドチルダ 港湾地区 時空管理局 造船所

 

「此方の艦が今回、ハラオウンさんが艦長を務めます艦になります」

 

造船所の職員に案内されたフェイトの眼前には一隻の次元航行艦が鎮座していた。

 

とは言え、ガイアの様なオーダーメイドされた艦ではなく、MS機関が搭載されてから正式採用された量産艦である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

しかし、フェイトにしてみれば初めて自分が艦長を務める記念すべき次元航行艦なので、胸がドキドキしていた。

 

「艦名はイゾルデとなります」

 

「イゾルデ‥これが私の艦‥‥」

 

「はい。乗員についてはガイアの乗員がそのまま採用されるとの事です」

 

「分かりました」

 

「こちらが受領書となりますので、この欄にご署名をお願いします」

 

「はい」

 

フェイトは受領書にサインをする。

 

これでこの艦‥イゾルデは正式にフェイトの艦となった。

 

フェイトは自分の艦を見つめながら、今後の任務に対して不安と期待が入り混じっていた。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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