星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百七十八話 調査・人命救助活動

 

 

地球防衛軍がガルマン・ガミラス領内での人命救助活動を行っている中、ミッドチルダでもディンギル戦役からの再建を行っており、その中の一環でフェイトは次元航行艦の艦長職に親補された。

 

そして、量産艦ではあるが、いよいよフェイトが艦長を務める艦が完成した。

 

艦の受領を済ませたフェイトにはやてから連絡がきた。

 

その内容は、

 

『今日の夜、フェイトちゃんの艦長就任のお祝いをしないか?』

 

と言うモノだった。

 

親友からの誘いをフェイトは快く承諾した。

 

そして、夜になり、はやてとの待ち合わせ場所であるレストランに来た。

 

まだクラナガンではディンギル軍による空襲の戦禍の痕が残っているが、メイン通りを始めとする市街地は復興されており、店も開店し始めている。

 

店内に入り、周囲を見渡すと、

 

「あっ、フェイトちゃん!!こっちや!!こっち!!」

 

一つのテーブル席には、既にはやてがおり、手を振りながらフェイトに声をかける。

 

フェイトもそれに気づき、はやてが座っているテーブル席へと向かう。

 

「ごめん、はやて。待った?」

 

「うんにゃ、私もほんの今さっき来た所や」

 

「あれ?なのはは?」

 

フェイトは此処にもう一人の親友であるなのはの姿が見えないので、辺りを見渡す。

 

もしかしたら、まだ来ていないのかもしれない。

 

「あぁ~‥なのはちゃんは呼んでへんのや‥‥」

 

はやては若干、気まずそうに今回のフェイトの艦長就任祝いの席になのはが欠席であると告げる。

 

「えっ?どうして?なのはに声をかけていないの?」

 

「‥‥なのはちゃん、ちょっと今は色々と立て込んどるんよ」

 

「それって、ディンギルとの戦闘後の後始末や書類仕事に追われているの?」

 

フェイトがはやての向かいの席に座りながら訊ねる。

 

「それもあるけど‥‥今のなのはちゃんの家庭環境も影響して居るんや」

 

「なのはの家庭環境?」

 

「本局崩壊後にユーノ君、色々とショックを受けてな‥‥司書長である自分が生き残ってしまった事、職場だった無限書庫が無くなって職も失くして事が重なって‥‥」

 

「あっ‥そうだね。あの日、たまたまユーノは非番で友人の大学の教授の所に出かけて難を逃れたって‥‥」

 

「せや‥‥そんなユーノ君の姿を見て、なのはちゃんが声をかけて一緒に暮らし始めてな」

 

「えっ?何それ?私、全然知らないんだけど‥‥」

 

「フェイトちゃんはその頃には次元航行艦乗りで次元の海に居る事が多かったからな」

 

ユーノとなのはが同棲している件についてフェイトは知らなかったので、はやてからの言葉はまさに寝耳に水だった。

 

「なのはちゃんもユーノ君もまんざらな様子でもなかったんで、二人の時間に水を差すのは野暮っちゅうもんやろう?」

 

「う、うん‥そうだね‥‥」

 

(ま、まさか、あのなのはが‥‥)

 

はやてからなのはとユーノとの関係の発展にフェイトは内心驚愕していた。

 

「まぁ、ユーノ君はなのはちゃんの魔法の師匠でもあるしな‥‥」

 

「でも‥その‥‥闇の書事件以降、なのはとユーノはあまり接触しているとは思えなかったけど‥‥?」

 

闇の書事件以降、なのはは自分やヴィータと行動を共にする事が多くなり、自分が知る限りユーノとの接触は減った気がした。

 

ユーノ自身も無限書庫の司書の資格をとるために勉強の毎日だったり、同族たちと共に遺跡調査に行ったりと、なのはと一緒に過ごす時間が減っていた。

 

そんな中で、まさかのなのはとユーノの同棲を知ったフェイト。

 

「なのはちゃんもお年頃を気にして来た‥‥ってことやないか?」

 

「‥‥」

 

はやての推測の言葉にフェイトは何も言えなかった。

 

実際に自分たちが確実に年齢を重ねているのは事実なのだから‥‥

 

やがて二人の前に、シャンパングラスに入ったシャンパンが用意され、

 

「それじゃあ、フェイトちゃんの艦長就任を記念して‥‥」

 

はやてとフェイトは互いにシャンパングラスを手にして、

 

「「乾杯」」

 

カチンと小さな音を立ててグラスを鳴らす二人。

 

そして、シャンパングラスに口をつけた。

 

「ふぅ~‥‥それにしても艦長か‥‥」

 

シャンパンを飲み、自分がいよいよ次元航行艦の艦長になると思うと考え深いモノがある。

 

とは言え、士官学校に入るきっかけはもう一つの地球での経験を経て次元航行艦の艦長を目指したのだから、今ようやくその夢が叶ったのだが、フェイトにはどうも不安がある。

 

「まほろばに乗った時にね‥‥ギンガはまさに艦長って感じだったよ‥‥」

 

「うん。私も第九管理世界の戦いの後のまほろばの映像を見て、大胆な事をするって思ったわ」

 

「うん。まさか、敵の根拠地に強行着陸をするなんてね‥‥」

 

「あの決断を即決出来たのを知って、ギンガの成長の凄さにはびっくりやで‥‥」

 

「そんなギンガを間近で見ていたからこそ、『私もギンガみたいな艦長になれるんだろう?』って思いがあってね」

 

「でも、フェイトちゃんはクロノ君やギンガの間近で二人の指揮を見ていたんやから、大丈夫やって」

 

「そうかな?」

 

「そうやって、自分に自信をもってや」

 

「うん‥‥」

 

「はぁ~それにしても‥‥」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あっ、いや‥ギンガの名前が出て来て、もう一つの地球でのギンガとティアナの生活の事を思ってな‥‥」

 

「ん?ギンガとティアナの生活?」

 

「せや‥ギンガとティアナ、二人とも結婚して子供が居るんやろう?」

 

「そうだね」

 

「なのはちゃんもユーノ君をゲットしたし‥‥」

 

「‥‥」

 

「私らもなぁ、そろそろ彼氏でも欲しいわぁ‥‥」

 

乾杯のシャンパン以降、ワインを頼みそれを飲んでいたはやて‥‥

 

酔いが回って口が軽くなったのか、異性関係について愚痴りだした。

 

ワイングラスを揺らしながら、少しだけ頬を赤くして零したはやての言葉にフェイトは苦笑するしかなかった。

 

「はやて、今は復興でそれどころじゃないっていうのが本音じゃないかな。はやても自分の艦の指揮もあるし、八神家の主としての責任もあるでしょう?」

 

「それはそうやけどぉ。仕事とプライベートは別腹やん? なのはちゃん見てみぃな。あの『不屈の魔導師』が、今頃マンションのキッチンでエプロンを着てユーノ君のために甲斐甲斐しく夕食を作ってるんやで? そのギャップにやられる男がおらんのが不思議なくらいや」

 

はやてはグラスに残っていたとワインを一気に煽り、グラスにおかわりを注ぐ。

 

「……でも、意外だったな。なのはとユーノがそこまで進展していたなんて‥‥ユーノは無限書庫の一件で相当落ち込んでいたみたいだけど、なのはが傍にいてくれるなら、きっと立ち直れるね」

 

フェイトは窓の外、再建のクレーンが並ぶクラナガンの夜景を見つめた。

 

ディンギル軍によるその戦禍は、時空管理局の本拠地であるミッドチルダにも深い爪痕を残した。

 

多くの犠牲者が出て、管理局の権威も揺らいでいる。

 

そんな激動の時代だからこそ、人は誰かとの繋がりを求めているのかもしれない。

 

「そうやね。ユーノ君も、今はなのはちゃんの存在に救われているんやと思うわ‥‥反対になのはちゃんもユーノ君とヴィヴィオの存在に救われ、互いに支え合っているんやろうな‥‥それで、フェイトちゃんはどうなん?」

 

「えっ、私?」

 

不意に矛先を向けられ、フェイトは目を丸くした。

 

「艦長さんになったら、今度は部下もたくさんできるやん?出会いとか期待してへんの?」

 

「そんな‥‥私はまだ、自分の艦を預かるだけで精一杯だよ。ギンガみたいに、有事の際に即座に『全艦、突撃!』なんて言える自信はまだないし‥‥」

 

「あはは、まほろばの時のギンガは確かに凄かったなぁ。でも、あの自信はきっと、守るべき家族……もう一つの地球におる旦那さんや子供たちの存在があったからこそやと思うんよ」

 

はやては少し真面目な顔になり、フェイトの目を見つめた。

 

「フェイトちゃん。真面目に仕事に向き合うのはええことやけど、あんまり自分を追い込みすぎたらあかんで? 寂しい時は、いつでもうちに連絡してきな。八神家はいつでも、フェイトちゃんの居場所なんやから」

 

「……ありがとう、はやて」

 

フェイトの胸に、じんわりと温かいものが広がる。

 

かつて孤独だった自分に居場所をくれた、かけがえのない親友であるなのはが別の誰かとの時間を大切にし始めたとしても、この絆が変わることはない。

 

「よし!!しんみりするのはここまでや!! 今日はフェイトちゃんのお祝いなんやから、もっと美味しいもん食べよう!!すいませーん!!この『子牛の香草焼き』を追加で!!」

 

「ちょっと、はやて、頼みすぎだよ。明日も早いんでしょう?」

 

「ええねん、ええねん。フェイトちゃんの艦長就任祝いやもん、景気よくいかな!!」

 

賑やかにはしゃぐはやてを見ながら、フェイトは小さく微笑んだ。

 

新しい階級章、新しい役職、そして自分に託された新しい艦。

 

不安はあるけれど、こうして帰ってこられる場所がある限り、自分はどこまでも飛んでいける。

 

(なのは、ユーノ……おめでとう。私も……艦長として、恥ずかしくないように頑張るからね)

 

心の内で親友への祝福を送りながら、フェイトははやてとの賑やかな夜を、存分に楽しむことにした。

 

それから数時間後‥‥

 

結局、すっかり出来上がってしまったはやてを支えながら、フェイトはレストランを後にした。

 

夜風が火照った体に心地よい。

 

「フェイトちゃぁん……もし、イケメンな乗員が居たら紹介してなぁ……」

 

「はやて、さすがにそれは無理だと思うよ……」

 

そんな他愛もない会話を交わしながら、二人の影は復興が進む街並みへと溶けていった。

 

明日からは、また忙しい日々が始まる。

 

それでも、この夜の温かさが、フェイトが指揮を執る艦の羅針盤を正しく導いてくれるような、そんな気がしていた。

 

 

ミッドチルダから視点は銀河系中心部へと移る。

 

ガルマン・ガミラス領内での人命救助活動を行っているヤマトとヒューベリオン。

 

古代からの報告書を受けて地球は報告にあったガルマン・ガミラス領内での残留住民たちの救済のために第二陣の投入を決め、その旨をヤマト、ヒューベリオンへと伝える。

 

そして、これまでの活動中にボラー連邦からの攻撃や接触が無かった事を踏まえて、いよいよヤマト、ヒューベリオンにボラー連邦領内での調査を許可した。

 

「ボラー連邦領内、威力偵察を兼ねた生存者探索か……」

 

「まさか、ボラー連邦領内の調査に許可が下りるなんてな‥‥」

 

「やはりこれまでの活動中にボラーからの接触が一切無かった事から、ボラー領内でも大きな被害があったと事なのだろうな‥‥」

 

良馬はメインパネルに映し出されたボラー領の境界線を見つめた。

 

デスラーがガルマン星を奪還するまで銀河系北部、中心部、そして東部のバジウド星系まで勢力を伸ばしていた銀河系の一大星間国家であったボラー連邦‥‥

 

しかし、今やその版図からは、国家としての公式な信号は一切途絶えている。

 

「艦長、ヤマトより通信です。『これよりヤマト及びヒューベリオンはボラー領内への進入を開始する』と‥‥」

 

隣接する宙域を並走するヤマトの姿を視界に入れ、

 

「古代艦長に返信。『了解』と‥‥」

 

「分かりました」

 

通信長の武部沙織がヤマトに返信文を送信する。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「しかし、どうにも嫌な予感がする‥‥これほどの巨躯を誇る帝国が、悲鳴一つ上げずに静まり返っているというのは‥‥」

 

良馬は眼前の宇宙空間‥‥ボラー連邦領内を見つめながらポツリと呟いた。

 

ガルマン・ガミラス領内からヤマト、ヒューベリオンは地球艦としては初めてボラー連邦領内へと進出する。

 

ただ進出航路は銀河の中心部ではなく、若干の迂回コースを通って入る。

 

中心部はガルマン・ガミラスとボラー連邦との国境線なので、互いの監視網が激しかった。

 

銀河交叉の影響があるとは言え、無数にあるボラー連邦の監視網全てを掻い潜るのは不可能だ。

 

もしも生きている監視網に引っかかり、艦隊が出動してきたら厄介だ。

 

「‥‥ひでぇな、これが、あのボラー連邦の成れの果てだっていうのか?」

 

「‥‥」

 

航海長の永倉の言葉に、良馬は無言で頷いた。

 

メインパネルに映し出されるのは、惑星の残骸である大小様々な大きさのアステロイドの中に漂うボラー連邦特有の丸みを帯びた設計の戦艦が残骸と化して浮遊する絶望的な光景だ。

 

これらの艦艇はボラー連邦のパトロール隊だったのだろうか?

 

それらすべてが、外部からの攻撃ではなく、内側から引き裂かれたような、あるいは空間そのものに押し潰されたような奇妙な壊れ方をしていた。

 

「生存者反応‥依然として確認できません。救難信号すら出ていないなんて‥‥」

 

沙織の声が震える。

 

「この残骸群の中には生存者はいないと言う事か‥‥」

 

アステロイドとボラー連邦の宇宙艦船の残骸を尻目にヤマトとヒューベリオンはボラー連邦領内を突き進む。

 

その後の調査でボラー連邦領内でもやはり住民が残っている惑星があった。

 

そして、その数はガルマン・ガミラス領内の惑星よりもボラー連邦領内の方が多く、残留している理由も自分たちの故郷に愛着で残っている訳ではなく、ボラー連邦本星から半ば見捨てられていた。

 

それらの星の住人たちはガルマン・ガミラスの同盟国である地球に対してもはや抵抗する術さえもなかった。

 

ヤマト、ヒューベリオン側としても彼らを攻撃するために来たのではないので、事情を話すとすんなりと住民たちはヤマトとヒューベリオンが差し伸べた救助の手を受け入れた。

 

そして、とある惑星にて、人命救助作業を行う中で、その星のトップであるモーリスと言う人物との会談の場で良馬は、

 

「ボラー連邦に対する忠誠心はもうないのですか?」

 

と、銀河交叉が起こる前まで、自分たちが所属していた陣営のトップに対しての忠誠心を問う。

 

「忠誠心ですか‥‥美しい響きの言葉です。しかし、それは都合のいい時に乱用されている様ですな‥‥私たちは長きに渡ってボラー連邦の発展のために命がけでガルマン・ガミラスを始めとする星間国家と戦って来ました。ですが、あの銀河交叉の影響で私どもの星を始めとして領内の沢山の星が被災し、住民たちの生活は苦しいモノへと変貌しました」

 

銀河交叉が起こる前までは高い文明を持っていた星が、銀河交叉の影響であっという間にその文明が滅ぶか文明の利器が使えなくなり、人々の生活は一変した。

 

「そんな苦しい状況下の中でもボラー連邦の本星の連中は我々に救いの手を差し伸べる事もなく、音信不通となりました」

 

「本星も通信が遅れない程の被害を受けた‥‥と言う可能性は?」

 

「いえ、あの大災害の直後に宇宙軍に本星からの招集命令が下ったので、少なくとも通信網はまだ生きていた筈です」

 

「招集命令‥‥救助ではなく、戦力の再編を優先したということですか?」

 

「左様です。それも、残された乏しい資源や、まだ動く重機、そして……動ける若者たちを根こそぎ徴集していくための命令でした。彼らは『本星防衛こそが連邦存続の要である』と宣い、我々のような辺境惑星の窮状には目もくれなかった。救援物資の一ひとつも落とさず、ただ奪うだけ奪って去っていったのです。これが、我々が命を賭して守ってきた国の正体でした」

 

モーリスは震える手で、瓦礫の山となったかつての市街地を指した。

 

「銀河交叉の衝撃で地軸が狂い、異常気象と地震がこの星を襲った時、我々が真っ先に求めたのは『連邦』という名の絆でした。しかし、返ってきたのは冷徹な徴集記録の受理通知のみ‥‥貴公たちは、自分たちを飢えと寒さの中に置き去りにし、子供たちの口から食べ物を奪い去った国と組織に、なお忠誠を誓えますかな?」

 

「「‥‥」」

 

良馬と古代は絶句した。

 

地球もかつて滅亡の危機に瀕し、ガミラスとの戦いの中で過酷な選択を迫られた歴史がある。

 

ヤマトが建造された当初はイスカンダルまでの航海ではなく、選ばれた人間と動植物を乗せて新たな新天地へと目指すノアの箱舟となる予定であった。

 

しかし、ヤマトが完成直後にイスカンダルからのメッセージを受け取り、計画は変更された。

 

もしも当所の計画通りであった場合、残された人々はモーリスたちのように荒廃した土地で絶望を抱きながら死を待つしかなかったのだ。

 

ボラー連邦視点で言えば、モーリスたちの行動は手のひら返しと思われるが、先に切り捨てたのは彼らの主たるボラー連邦の方だ。

 

モーリスたちは生き残るためにボラー連邦から離脱し、本来ならば敵である筈の地球からの救助を受け入れたのだ。

 

「ボラー連邦本星の座標とかは分かりますか?」

 

「はい。勿論知っています」

 

モーリスの協力のおかげで、ヤマト、ヒューベリオンはボラー連邦本星の座標、ボラー連邦領内の精密な航路図を手に入れる事が出来た。

 

「ボラー連邦領内にはきっと私どもと同じ境遇の星がまだいくつもあるでしょう‥‥どうか、彼らにも救助の手を差し伸べて下さい」

 

「ええ、勿論です」

 

「そのために我々はこの地へと来たのですから」

 

古代と良馬は頷き、まだボラー連邦領内で困っている人々を一人でも多く救う決意を固めた。

 

ボラー連邦領内にある住民たちが残された惑星の救済活動が行われ、古代はそれらの報告を地球へと送る。

 

古代からの報告を受けた地球防衛軍司令部は、ボラー連邦領内の現状に衝撃を受けつつも、迅速な意思決定を迫られた。

 

銀河系を二分した巨大帝国の崩壊と、その裏にある冷酷な切り捨て行為‥‥それは、地球にとっても決して他人事ではなかった。

 

藤堂は、幕僚たちを前に、古代からの通信記録を何度も読み返していた。

 

「多くの属国を従えつつも、いざとなれば辺境の民を見捨てるか‥‥ボラー連邦の支配体制は、我々の想像以上に硬直化していたようだな」

 

「長官、ボラー領内の混乱は、銀河全体の治安悪化を招きます。放置すれば、難民化した星々が武装化し、新たな紛争の火種になりかねません」

 

幕僚の一人が進言する。

 

藤堂は頷き、隣に座る新見に視線を向ける。

 

まほろばの副長だった新見薫は、人事異動でまほろばを降りた後、科学局の所属となっていた。

 

新見はボラー連邦本星へと続く航路図を分析した。

 

「新見君、科学局としての見解は?」

 

「はい。ボラー本星が戦力を集中させている理由は、単なる内乱対策ではない可能性があります。銀河交叉の影響で、ボラー連邦の母星系そのものに、物理的な『致命的欠陥』が生じているのではないでしょうか?だからこそ、彼らは他を捨ててでも、本星の維持に固執している‥もしくは、デスラー同様新天地への航海のために戦力と物資を必要としている‥‥のではないでしょうか?」

 

「新天地への航海か‥‥」

 

「長官、もしも彼らが新天地への大移動をするとなると、その行き先はバジウド星系、ケンタウロス座方面、そして地球‥とは考えられませんか?」

 

幕僚の一人のこの言葉に会議室は重い空気が流れる。

 

バジウド星系はバース星を始めとしてボラー連邦の属国であった惑星国家が多数存在していた星系であり、地の利も彼らは熟知していた筈だ。

 

ケンタウロス座も地球側は誤解したままであるが、実際にバジウド星系から脱出を図ったボラー連邦の人間たちから攻撃を受けた。

 

地球圏に関しても金星宙域までボラー連邦は進出し、そこでかつての国家元首であるベムラーゼが戦死した宙域であるので、ボラー連邦が地球を恨んでいないと言えば噓になる。

 

「確かにその可能性は十分にあるな‥‥バース星及びケンタウロス座のアルファ星駐屯艦隊に念のため警戒警報を発令、太陽系の外周・内周艦隊にも哨戒行動の警戒ランクを当分引き上げさせろ」

 

「了解です」

 

「それと、ヤマト、ヒューベリオンには引き続き、ボラー連邦領内の調査及び人命救助の続行を下令」

 

「はっ!!」

 

防衛軍司令部からの命令を受け、ヤマトとヒューベリオンは、モーリスから提供された航路を辿り、ボラー連邦の内懐へと進んでいた。

 

ボラー連邦本星へと近づくにつれ、宙域の様子は異様さを増していった。

通常なら無数に輝くはずの星々の光は、濃密なガスや宇宙塵に遮られ、赤黒い澱みのように視界を覆っている。

それだけではない。空間そのものが不規則に歪み、時折、音のない稲妻のような次元の亀裂が走っては消えていく。

 

それはこの空間の不安定さを物語っていた。

 

 

ヒューベリオン 艦橋

「これが銀河交叉の震源地に近い宙域か‥‥」

 

ヒューベリオンの第一艦橋で、良馬は目の前のメインパネルに映し出される荒れ狂う宇宙を見つめながら、重い声で呟いた。

 

「艦長、前方の暗黒星雲内に大規模な質量反応を探知。これは‥‥」

 

ヒューベリオンのオペレーター担当の星名百合亜が何かの反応を発見し、報告する。

 

その声は微かな緊張を帯びていた。

 

「アステロイドではありません。人工物の群れ‥‥っ!?艦隊です!!数はおよそ三百隻!!」

 

「三百隻!?」

 

「ヤマトからも入電!! 同様の目標を探知したとのことです!!」

 

沙織がヤマトからの通信内容を報告する。

 

「古代艦長に通信を繋げ。本艦はこれより第一種戦闘配置。ただし、こちらから攻撃は絶対にするな。相手の出方を見る」

 

司令部からの事前の指示通り、ボラー連邦の艦隊と遭遇した際、まずは相手との通信を送り、相手の出方を待ち、武力ではなく交渉によって物事の解決を図ろうと言うのだ。

 

モニターにヤマトの艦橋に立つ古代の姿が映し出される。

 

「古代艦長、少々厄介な事になりましたね」

 

『ええ、あれは間違いなくボラー連邦の宇宙艦船です』

 

古代の表情は険しい。

 

おそらく良馬自身も古代と同じく険しい表情だ。

 

「此処までボラーの宇宙艦船の姿を全くと言っていい程、見ていなかったのにまさかこんな所で遭遇するとは‥‥」

 

『やはり、ボラーは辺境の惑星を見捨てて本国周辺の身の強化を行っていたと言う事になるのでしょうか?』

 

「此処で出会ったと言う事はその可能性が高いが、まずは相手と交信をして、相手の状況と此方の目的を伝えてみよう」

 

『分かりました。ボラーとの交信は此方でやります』

 

「頼んだ。ただ、一触即発の事態でもある。いつでも戦える用意だけはしておいた方がいい」

 

『はい』

 

ヤマトと通信を終えると、

 

「艦長」

 

百合亜が声をかける。

 

「ん?どうした?」

 

「ボラー連邦の艦隊ですけど、ちょっと妙なんです」

 

「妙?」

 

「はい。拡大投影します」

 

ヒューベリオンの艦橋のメインモニターに捕捉したボラー連邦の艦隊の映像が映し出される。

 

「こ、これはっ!?」

 

モニターに映し出されたその艦隊の姿は、かつて銀河を席巻した大帝国の威容とは程遠いものだった。

 

塗装は剥げ落ち、多くの艦が装甲に深刻なダメージを負っている。

 

陣形はやや乱れ、戦闘艦に守られるようにして、巨大な輸送船や旧式の移民船が群れを成していた。

 

確かに数では三百隻とかなりの多さではあるが、その大半は非武装の輸送船だった。

 

「ボラー連邦の輸送船団?いや、それにしては護衛の船が少ないし、使用している輸送船もボロボロだ‥‥」

 

「あの傷は戦闘によるものじゃない。空間の歪みに巻き込まれて、無理やり航行を続けているような状態だ」

 

百合亜の言う通り、ボラー連邦の艦隊に違和感を覚える中、ヤマトではそのボラー連邦の艦隊とコンタクトを取っていた。

 

 

ヤマト 第一艦橋

 

「艦長、ボラー連邦の艦隊との通信回路が開きました」

 

「よし、メインパネルに投影してくれ」

 

「はい」

 

ヤマトの第一艦橋にあるメインモニターにはボラー連邦の軍服を着て、顔には大きな傷のある初老の将官が映し出された。

 

その目は血走り、異常なまでの敵意と疲労が入り混じっている。

 

『その艦影‥貴様たち、地球の艦だな!?私はボラー連邦、北部方面司令、ニコラフ・ヴェンスキーだ!!貴様ら、我々の母星が崩壊する隙を突いて、とどめを刺しに来たか!?』

 

ヴェンスキー司令はヤマトとヒューベリオンが地球のボラー連邦攻略部隊の先遣隊と誤解している様だ。

 

「ヴェンスキー司令、それは違います!!我々は侵略に来たのではない!!銀河交叉による被災者の救助と現状の調査のために派遣されたのだ!!」

 

古代はまず誤解を解こうとする。

 

しかし、ヴェンスキー司令は嘲笑うように顔を歪めた。

 

『救助だと!? ガルマン・ガミラスと手を結んだ憎き地球人が、我々を救うなどと本気で信じるとでも思っているのか!! デスラーの犬め!!我々が深手を負っている今なら勝てると思ったのだろうが、我々とて埃あるボラーの武人!!荒廃したとは言え、みすみす我が故郷を敵の手に堕とさせるものか!?ボラー連邦軍人の意地と誇りを侵略者たる貴様らに見せてやる!!全艦、戦闘用意!!』

 

そして、ボラー側も戦闘艦を前に出し戦闘態勢をとる。

 

戦闘艦隊の主砲はヤマトとヒューベリオンへとロックする。

 

「艦長、ボラー艦隊は戦闘態勢をとっています」

 

『古代艦長、誤解されたままではあるが、このままでは‥‥』

 

良馬が古代に声をかける。

 

古代は拳を握りしめ、ギリッと奥歯を噛み締めた。

 

ここで応戦すれば、せっかくの救助任務がただの殺し合いに変わってしまう。

 

何より、あの艦隊の後ろには無数の非戦闘員が乗った移民船がいるのだ。

 

「波動防壁展開!!回避運動のみで凌ぐんだ!! 絶対に撃つな!!このまま此処で戦闘をすれば、後方の輸送船団も巻き添えにしてしまう!!全速でこの宙域から離脱する!!」

 

古代は誤解が解けなかったのは悔しい思いがあったが、輸送船団を戦闘に巻き込むよりはマシだと判断し、現宙域からの離脱を指示する。

 

その時だった。

ヤマト、ヒューベリオンとボラー艦隊の間にあった空間が、突如として赤黒く発光し、凄まじい重力震が発生した。

『な、何だ!?』

モニター越しのヴェンスキーが驚愕の声を上げる。

「宇宙震です! 銀河交叉の余波による局地的な重力崩壊が起きています! 発生源は‥‥ボラー艦隊の至近距離です!!」

 

ヤマトのオペレーターである西条未来の悲鳴のような報告と同時に、巨大な空間の裂け目が生じ、強烈な引力がボラーの艦列を飲み込み始めた。

 

防御力の低い輸送船や移民船が、木の葉のように裂け目へと引きずり込まれていく。

 

『い、いかん!!移民船団を離脱させろ!!機関最大!!』

 

ヴェンスキーが叫ぶが、傷ついたボラー艦の推力では重力の渦から逃れることは不可能だった。

 

このままでは、数万、数十万の命が空間の歪みに呑まれて消滅する。

 

 

ヒューベリオン 艦橋

 

「綺羅技師長、波動防壁を最大出力で重力震の震源へ向けて展開! 空間の崩壊を相殺することは可能か!?」

 

良馬はヒューベリオンの技術長である綺羅大和(キラ・ヤマト)に訊ねる。

 

良馬の問いに綺羅は即座に計算を弾き出す。

 

「ギリギリですが、なんとか可能です。しかし、ヒューベリオンの機関にも相当な負荷がかかります!!」

 

「それでもやるしかない‥‥航海長、ヒューベリオンを重力震の縁へ進めろ!!ヤマトには引き寄せられている民間船の牽引を頼むように通信を送れ!!」

 

「は、はい!!」

 

良馬が古代に救助作戦の概要をヤマトへと送る。

 

『随分と無茶な事をしますね』

 

「それでもだ‥‥古代艦長、我々の今回の任務は人命救助なのだからな」

 

『了解です。機関、最大船速!!牽引ビームでボラーの輸送船を救助するぞ!!』

 

ヒューベリオンは自ら危険地帯へと艦首を向け、猛烈な重力流に逆らいながら突き進んだ。

 

「波動防壁、最大出力! 空間相殺、開始!」

 

ヒューベリオンの艦体を覆う青白いエネルギー波が、前方の空間へ向けて扇状に照射される。

赤黒い重力の渦と波動エネルギーが激突し、宇宙空間に凄まじい閃光と雷鳴のような衝撃波が奔った。

 

ヒューベリオンの艦内は激しく揺れ、警告音が鳴り響く。

 

同時にヤマトが牽引ビームを展開し、吸い込まれかけていたボラーの巨大移民船を強引に引き戻していく。

 

「な、何故だ‥‥?何故、地球人は、敵である我々を助ける‥‥?」

 

ヴェンスキーは眼前で繰り広げられる光景が信じられないと言う表情を浮かべ、戸惑いの声をあげる。

 

砲門を向けたはずの地球の艦が、身を挺して自分たちの同胞を助けようとしている。

 

その事実は、彼の凝り固まった復讐心と絶望を根本から揺さぶっていた。

 

「耐えろ‥‥ここで踏ん張らなければ、救える命も救えないぞ!!」

 

(早く閉じろ‥‥閉じろ‥‥)

 

良馬が血の滲むような声で叫ぶ。

 

そして、心の中でこの重力震が収まるのを祈るように呟く。

 

数分間の死闘の末、波動防壁のエネルギーと中和された重力震は、徐々にその勢いを弱め、やがて空間の裂け目は嘘のように閉じていった。

 

「じゅ、重力震の消滅を確認‥‥」

 

百合亜が恐る恐る報告をあげる。

 

「ふぅ~‥‥なんとかなったな‥‥」

 

良馬が軍帽を脱ぎ、ハンカチで額に浮かんだ汗を拭う。

 

「いやぁ~一時はどうなるかと思いましたね」

 

航海長の永倉もホッとしたように呟く。

 

「ああ‥‥でも、守れたようだな‥‥」

 

良馬もホッとした表情で眼前の宇宙空間に存在するボラー連邦の輸送船の姿を見て呟く。

 

静寂が戻った宙域にて、ボラー艦隊も、ヤマトとヒューベリオンも致命的な被害は免れていた。

 

『ち、地球の艦隊よ‥‥』

 

再び通信を開いたヴェンスキーの顔からは、先程までの敵意は消え失せていた。

 

代わりにあったのは、深い疲労と、そして戸惑いを隠せない武人の顔だった。

 

『貴官らの行動に感謝する。我々は、本星から見捨てられ、当てもなく彷徨う亡霊のような存在だったのだ。それでも……貴官らは我々を救ってくれた‥‥本来ならば敵対者である我々を‥‥』

 

『ヴェンスキー司令、先程申し上げた通り、私たちは、敵を滅ぼすためにここに来たのではありません。生き残るために手を取り合うために来たのです」

 

古代の真っ直ぐな言葉に、ガルタンは深く目を伏せた。

ボラー連邦という巨大な軛が外れ、母星すら失いつつある彼らにとって、ヤマトが示した行動は、新たな道を示す一筋の光になり得るのかもしれない。

 

「ヴェンスキー司令、お訊ねしてもよろしいでしょうか?」

 

『なんでしょう?』

 

「先ほど、司令は『本星から見捨てられた』と仰いましたが、ボラー連邦の本星で一体何があったのですか?」

 

ヴェンスキーは纏っている軍服、肌の色、そして先ほどの口調からして生粋のボラー連邦の人間だ。

 

そのボラー連邦の人間が『本星から見捨てられた』と言うのだから疑問がある。

 

ヴェンスキーの顔に深い苦渋と悔恨の色が広がった。

 

彼は重い口を開き、自分たちを襲った残酷な真実を語り始めた。

 

『……我々の母星、ボラー本星は、あの『銀河交叉』によって致命的なダメージを受けたのだ。地殻は砕け、大気は汚染され、惑星を維持するための環境システムそのものが崩壊を始めた。もはや、星としての寿命は幾ばくもない状態だった』

 

『なっ!?ボラーの本星が‥‥』

 

(やはり、ボラー連邦もガルマン・ガミラス同様滅んでいたのか‥‥)

 

ヤマトの艦橋で、古代が息を呑むのがモニター越しに伝わってきた。

 

『政府高官や軍の最高指導部たちは、早々に本星の放棄を決定した。だが、彼らが選んだのは『全国民の脱出』ではなかった‥‥『優秀な遺伝子と忠誠心を持つ者だけの選民脱出』だったのだ』

 

ヴェンスキーの話によれば、銀河交叉の影響で稼働できる艦船や資源が極端に制限される中、首脳陣は非情な決断を下した。

 

辺境の属国を見捨てたばかりか、本星にいる一般市民すらも切り捨て、一部の特権階級と彼らを守る親衛艦隊だけで、新たな居住地へと向かう「脱出計画」を実行に移したという。

 

『私はその脱出計画に対してそれに異を唱えた』

 

ヴェンスキーは自嘲気味に笑った。

 

『軍人として、力なき民草を見捨てて自分たちだけが生き延びるなど、到底承服できなかった。結果、私と同調した部下たちは反逆者として本星から追放され、旧式の輸送船に乗せられた市民たちと共に、この死の宙域へ放逐されたというわけだ』

 

良馬と古代は無言で顔を見合わせた。

 

地球防衛軍司令部で藤堂長官や新見が危惧していた最悪の推測は、見事に的中していたのだ。

 

『ヴェンスキー司令、その本星を脱出した特権階級の主力部隊は、どこへ向かおうとしているのかご存知ですか?』

 

古代が鋭く問い詰める。

 

『確かな座標までは分からん。脱出計画の全容は最高機密だったからな。だが、奴らが『水と緑に溢れた星系』を標的にしているという噂は聞いている。……バジウド星系か、あるいは……』

 

「太陽系‥‥地球か‥‥」

 

良馬が低い声で、その言葉を継いだ。

 

ヴェンスキーは重く頷いた。

 

『奴らは全てを失い、後がない。生き残るためならば、どんな犠牲も他星への侵略も厭わない狂気の集団と化している……地球の武人たちよ。貴官らの故郷が狙われている危険性は、極めて高い』

 

ヤマトとヒューベリオン、両艦の艦橋に重苦しい沈黙が降りた。

 

ボラー連邦の崩壊は、単なる一帝国の滅亡にとどまらず、難民と化した巨大な軍事国家が、新たなる災厄となって地球圏や同盟国に襲い掛かろうとしていることを意味していた。

 

「……古代艦長」

 

良馬が通信越しに呼びかける。

 

『ええ。我々は直ちにこの情報を地球の防衛軍司令部へ打電し、太陽系全域および同盟星系の警戒レベルを最大に引き上げてもらう必要があります』

 

良馬は頷き、再びヴェンスキーへと視線を向けた。

 

「ヴェンスキー司令。我々はこれから、あなた方の船団に水と食料、そして医療物資を提供します。その後、ガルマン・ガミラス領内にある、比較的安全な避難宙域までの航路データをお渡ししよう。そこならば、我々の同盟軍が一時的に保護してくれるはずです」

 

『なっ!?我々を、助けてくれるというのか?同胞からは反逆者の烙印を押され、あなた方とは敵対した国の難民なのだぞ!?』

 

ヴェンスキーは信じられないといった表情で目を丸くした。

 

「我々の任務は『人命救助』です。そこに国境も、過去の恩讐も関係ありません」

 

良馬は力強く断言した。

 

古代もそれに続く。

 

『生き延びてください、ヴェンスキー司令。あなた方のように、民を思いやれる人々が残っている限り、ボラーの誇りは決して失われないはずです』

 

モニター越しの老将の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。彼は深く、深く頭を下げた。

 

『……恩に着る、地球の勇者たちよ。この御恩は、我らボラーの民が生き継ぐ限り、決して忘れない』

 

通信が切れ、良馬は大きく息を吐き出した。

 

「艦長、地球への超空間暗号通信、送信完了しました!ヤマトからも同時に発信されています」

 

沙織が手早くコンソールを操作して、報告を上げる。

 

「よし。ヒューベリオンはヤマトと連携し、ボラー難民船団への物資補給と艦船の応急修理を支援する。各員、手際よく頼むぞ」

 

「了解!!」

 

第一艦橋に、乗組員たちの力強い返事が響き渡る。

 

窓の外では、満身創痍のボラー船団に向けて、ヤマトとヒューベリオンから補給物資を積んだ小型の輸送艇や工作艇が次々と発進していく光景が広がっていた。

 

(ボラーの狂気……もし本当に地球やミッドチルダのような、我々の大切な場所を狙っているのなら、我々がここで防波堤にならなければならない)

 

帰るべき場所があり、愛する人々がいるからこそ、彼らはこの過酷な宇宙の海を恐れずに突き進むことができる。

 

「……さあ、忙しくなるぞ」

 

良馬は、遠く渦巻く暗黒星雲の奥底‥ボラー本星があるであろう方向を鋭く睨みつけた。

 

未知の脅威へと立ち向かう決意を胸に秘め、ヒューベリオンはヤマトと共に、新たなる波乱の渦中へとその船首を向けていった。

 

ただ、ボラー連邦の主力?とも呼べる脱出船団が向かったのはバジウド星系でも太陽系でもない事を彼らは知る由もなかった‥‥

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
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