星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百八十二話 アルフォート星団帝国軍進撃

 

 

銀河鉄道が運行する別宇宙へ偶然にも漂流したヒューベリオン。

 

空間鉄道警備隊の手を借りて傷ついたヒューベリオンの修理を行っていたが、その宇宙にある脅威が迫っていた。

 

ヒューベリオンが所属している地球の連邦政府・地球防衛軍が当時、アンドロメダ星雲から飛来して来る白色彗星に対して脅威を抱かず、慢心していた様に、銀河鉄道の一部の上層部は『新たなる脅威など存在しない』と言わんばかりに無視を決め込んでいた。

 

だが、実際に交戦をした者たちにとってこの新たなる脅威に対して現在自分たちが保有している兵器では太刀打ちできないと現実をしっかりと見ていた。

 

このまま自分たちに迫りつつある脅威を無視すれば、銀河鉄道は大きなダメージを受ける所か存続の危機さえあった。

 

残されている時間がどれくらいあるのか分からなかったが、一分一秒と時間を無駄に出来ない状況で、彼らは自分たちに出来る対策をとった。

 

しかし、その脅威は銀河鉄道へと向けられようとしていた‥‥

 

 

とある宇宙空間‥‥

 

銀河鉄道が運行する宇宙とは別の宇宙空間に戦艦が陣形を組んで停止していた。

 

「先遣隊から入電。反乱分子の確保に失敗するも、別次元の銀河への進出へ成功」

 

「フォレシス将軍、ディメンションオープナーの設置、完了しました」

 

「発射しなさい」

 

「了解」

 

すると、戦艦部隊は宇宙空間へエネルギー波を放つ。

 

放たれエネルギー波は円形に拡散すると、まるで壁に穴をあけるかのようにいつくものワームホールを形成させる。

 

それは別次元の宇宙と銀河鉄道が運行している宇宙を繋げるゲートとなる。

 

「エネルギー安定。周辺に敵は認められません」

 

「ディメンションホールが完全に開くまでにどのくらいの時間が必要か?」

 

「二十ウィブ必要かと‥‥」

 

「遅い‥十ウィブで終わらせろ」

 

「しかし、それではシステムに危険性が‥‥」

 

技術官が別次元に人工的に穴をあけるため、そのリスクを回避するために時間をかけて行うべきだと進言すると、フォレシスはその技術官を睨みつける。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うっ‥‥ぐっ‥‥がはっ‥‥」

 

すると、技術官は突如苦しみだしその場に倒れる。

 

「これは命令です」

 

フォレシスは戦艦内の艦橋を見渡し、銀河鉄道が運行している銀河への進出を急がせた。

 

この戦艦部隊こそ、シリウス小隊が掴んだ宇宙の脅威‥アルフォート星団帝国軍の宇宙艦隊であった。

 

アルフォート星団帝国軍はついに人工的に銀河鉄道が運行している宇宙への行き来を可能とするゲートを開くことを可能とした。

 

アルフォート星団帝国軍がついに本格的に銀河鉄道の宇宙へと侵攻を開始した頃、銀河鉄道の始発駅の惑星であるディスティニーでは‥‥

 

深夜、SDF車両の整備場に忍び込む数名に人影があった。

 

彼らは整備員が来ている作業服を着て、目には暗視ゴーグルを装着し、周囲を確認しながらシリウス小隊の戦闘列車‥ビッグワンへと近づく。

 

「おっし、暁のおっちゃんが言う通り、誰も居ないな」

 

「では、早い所、作業を始めましょう」

 

「ああ」

 

ビッグワンの指揮車両の中で、限られた光源の中で、シリウス小隊の隊員、デイビッドとヒューベリオンの技師長である綺羅がビッグワンのコンピューターを作動させて、コンピューターに新たなシステムをインストールする。

 

「うわっ、なんだ?コスモ・マトリックスのシステムをインストールするだけなのに、こんなにも時間がかかるのかよ」

 

デイビッドはインストール終了予定時間を見て思わず声を上げる。

 

「ただでさえ、莫大な量のデータですからね」

 

「こりゃあ、一回で全てのデータをインストールするのは無理だな」

 

コスモ・マトリックスのシステムデータは、ビッグワンのメインシステム、運行システム、そして火器管制システムの三つで、まずはメインシステムにコスモ・マトリックスのデータをインストールしてから、運行システム、火器管制システムと順番にインストールしなければならない。

 

しかし、インストール終了予定時間から一晩で三つのシステムをインストールするのは不可能だった。

 

日中も出来ればいいのだが、昼間は特務情報部からの監視があり、コスモ・マトリックスのシステムのインストールなんて出来る状況ではなかった。

 

「時間が無いのは分かりますが、見つかっては元も子もありません。一つずつ着実に行いましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

デイビッドと綺羅はゆっくりだが、確実なやり方でビッグワンのシステム強化を行う。

 

そして、二人は日の出前に整備場を後にした。

 

やがて、日が昇り、勤務時間になると特務情報部の陰からの監視の下、整備員たちが集まり、ビッグワンの整備・補修作業を行う。

 

「おはようございます」

 

「ん?ああ、おはよう」

 

ビッグワンの整備・補修を指揮していた暁に声をかけたのはシリウス小隊の隊長であるバルジだった。

 

「これ、差し入れです」

 

「おう、すまんな」

 

暁はバルジから紙袋を受け取る。

 

「いや、気にせんで下さい」

 

「まっ、ホイットマンの親父の件では世話になったし、これで貸し借り無しだな」

 

「ところで、例の件は?」

 

「あれはちょっと厄介だぜ、時間が少々かかりそうだ」

 

「事は急を要します」

 

「そんなに危険な状況なのか?」

 

「はい」

 

バルジも暁からアルフォート星団帝国軍とは別の宇宙からの訪問者の事を聞き、彼らと自分たちの部下が陰ながら動いている事を聞いた。

 

しかし、バルジ本人は学やルイに以上に特務情報部からの監視が厳しいので、表立って動くことは出来ない。

 

この整備場に来るのも今回がおそらく最後になる。

 

シリウス小隊の隊長としての権限は剝奪されたが、空間鉄道警備隊の隊員資格はまだ剝奪されていないので、この整備場に来ることは出来たが、この後の査問委員会の正式な判決が下された時、自分は空間鉄道警備隊の隊員資格も剝奪される事をバルジは予感していた。

 

それと同時にアルフォート星団帝国軍の襲来も同じく予感していた。

 

そして、その予感はまさにしく的中する事になる。

 

バルジに正式な処分が下されてから直ぐに、

 

「大隊出動指令!!各小隊は指示に従い出動してください!!」

 

SDF本部に警報が鳴る。

 

「クーロン宙域で姿を消した正体不明の戦艦の位置を確認」

 

「パルーム分岐点駅の路線上の空間に出現、警戒レベル最大」

 

「各小隊は各軌道分岐点に出場!!」

 

藤堂平吾郎はSDFの各小隊へ出動命令を下すが、

 

(ついに来たか‥‥アルフォート星団帝国軍が‥‥)

 

(はたして現状の戦力で対抗できるだろうか‥‥?)

 

クーロン宙域での戦闘から現状のSDFの戦力でアルフォート星団帝国軍とまともに戦えるのか不安が強かった。

 

 

惑星ディスティニー 某所 ヒューベリオン 第一艦橋

 

「艦長、SDFの無線を傍受した所、アルフォート星団帝国軍がこの宇宙に侵攻してきたようです」

 

沙織がSDFの無線傍受の結果を報告する。

 

「なにっ!?奴等、もうこの宇宙へ来たのか!?」

 

「こっちはまだコスモ・マトリックスのインストールが完全に終わっていないってのに‥‥」

 

アルフォート星団帝国軍の進撃速度の早さに良馬たちは顔を歪める。

 

「現在、SDFの各小隊が現状に出撃したみたいです」

 

「無茶だ。コスモ・マトリックスを装備していない今の状態じゃあ、アルフォート星団帝国軍には勝てない」

 

「本艦も出る事が出来ればいいのだが‥‥」

 

「こちらもコスモ・マトリックスシステムのインストールがまだ完全に終わっていません」

 

アルフォート星団帝国軍の宇宙艦船に波動エネルギーが有効なのか現状不明であるが、コスモ・マトリックスシステムの強化が有効なのはクーロン宙域でのビッグワンの戦闘で証明はされていた。

 

クーロン宙域で出現したアルフォート星団帝国軍の戦艦は二隻おり、内一隻はコスモ・マトリックスを使用したビッグワンの戦闘車両の砲撃で撃沈したのだが、不完全でなおかつ強制的なインストールからの使用だったので、異常な負荷がかかり戦闘車両の砲塔が爆発して使用不能となった。

 

確実に敵を撃破するためにはコスモ・マトリックスシステムのインストールを待たなければならなかった。

 

 

アルフォート星団帝国軍の出現を受けて、各SDF小隊はパルーム分岐点に近い他の分岐点の警護に向かい、艦隊が出現したパルーム分岐点にはSDFの中でも戦闘任務に特化された精鋭部隊‥SPGの666号が向かい、後方支援としてスピカ小隊もパルーム分岐点へと向かった。

 

「ベガ、リゲル、カペラ、アルファード、デネブ、アンタレス、SDF各小隊警護任務につきました」

 

スピカ小隊以外にもSDFの小隊も他の各分岐点へと護衛に向かった。

 

「艦隊が出現したからと言ってガタガタ騒ぐな、みっともない。そんなものSPGがあっという間に片付けてくれるわ」

 

運行指令室にはイワノフの姿があった。

 

既に藤堂平吾郎の動きを察知していた事から牽制の意味を含めて指令室に詰めているのだろう。

 

勿論、イワノフが指令室に居る意味を藤堂平吾郎自身も理解していた。

 

(慢心している様だな、イワノフ‥‥)

 

イワノフはSPGに過大な期待を寄せているが、藤堂平吾郎はいくら空間鉄道警備隊の精鋭であるSPGでも、今回の任務は荷が重いと思っていた。

 

(死ぬなよ、ヨハンソン‥‥勝てないと察したら、直ぐに逃げてくれ‥‥)

 

彼は最前線へと向かったSPGの無事を祈った。

 

そのSPGはディスティニーからワープでアルフォート星団帝国軍が出現したパルーム分岐点へと到着しようとしていた。

 

 

SPG戦闘車両 666号 指揮車両

 

「ワープアウトまであと三十秒」

 

「ワープアウト地点はパルーム分岐点より、ポイント006地点」

 

「しかし、相手の戦力が不明なまま出動だなんて‥‥せめてSDFとの連携ぐらいは取らせてもらいたいものです」

 

正体不明の相手に対してSPGだけで対処しろと言う今回の命令に対して愚痴を零すSPG隊員。

 

「管理局上層部の決定だ。俺たちは従うしかない」

 

「ですが、隊長‥‥」

 

「どんな困難な状況でも最善を尽くして敵に立ち向かう。それがSPG魂だ」

 

「ワープアウトします」

 

やがて、666号は目的の宙域へとワープアウトした。

 

「なっ!?」

 

ワープアウトした666号で、SPG隊長のフレデリック・ヨハンソンは目を見開き、絶句する。

 

 

【挿絵表示】

 

 

パルーム分岐点は完全に破壊され、宇宙空間を漂う残骸と化していた。

 

パルーム分岐点で働いていた銀河鉄道職員、利用客を始めとして大勢の人々の命の火が消えていた。

 

「パルーム分岐点、エネルギー反応、生命反応ありません。全滅です」

 

「周囲にワープアウト反応、多数感知」

 

666号の周囲にワープアウト反応が出現するとそこから多数のアルフォート星団帝国軍の宇宙戦艦が出現する。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「戦闘態勢をとれ!!」

 

ヨハンソンは臨戦態勢を命じる。

 

「目標、左上方敵戦艦!!全砲門、発砲用意!!‥‥撃て!!」

 

SPGの専用列車である666号はSDF車両と違い、そのほとんどが戦闘車両の編成となっている。

 

その為、戦闘能力で言えばSDFよりも上であった。

 

666号から放たれたエネルギー波は敵艦に全弾命中するが、

 

「全弾命中!!」

 

「やったか?」

 

「だ、ダメです。こちらの攻撃をまったく受け付けません!!」

 

666号の砲撃を受けたアルフォート星団帝国軍の宇宙戦艦は無傷であった。

 

「回避行動に入れ」

 

お返しと言わんばかりにアルフォート星団帝国軍の宇宙戦艦は666号に砲撃して来る。

 

第一斉射は回避する事が出来たが、敵は数で圧倒し始めた。

 

666号の周囲にはアルフォート星団帝国軍の宇宙戦艦と艦載機が展開し包囲網を形成し始める。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「‥‥記録カプセルの用意‥‥SDFへメッセージを残す」

 

既に周囲を敵に取り囲まれ、撤退は不可能‥‥

 

攻撃をしても相手を撃破する事も出来ない。

 

ならば、少しでも敵の情報を味方に残そうとヨハンソンは記録カプセルの用意をさせる。

 

「SDFの識別信号で起動する様にセットしておけ」

 

「記録カプセル、準備完了」

 

「ただちに放出しろ」

 

「了解」

 

この宇宙空間にはパルーム分岐点の残骸も漂っているので、敵も記録カプセルなのか残骸なのか判断がつかないだろうとヨハンソンはソレを期待して記録カプセルを放出した。

 

「敵艦、接近。先頭車両に照準を合わせています」

 

(SDF‥後は頼むぞ‥‥)

 

記録カプセルとSDFに思いを託したヨハンソン。

 

その直後、666号を凄まじい衝撃が襲い掛かった‥‥

 

 

惑星ディスティニー 銀河鉄道管理局 運行指令室

 

「666、応答してください!!666!!ヨハンソン隊長!!」

 

オペレーターが666号に通信を送っても666号から応答が返ってくることはなかった。

 

「ヨハンソン‥‥」

 

藤堂平吾郎は666号が撃破され、ヨハンソンたちが戦死したのを察した。

 

「ば、バカな!?SPGが、歯がたたんだと!?ええい、何が精鋭部隊だ!!敵の一つも倒せん役立たずが!!」

 

イワノフはヨハンソンたちの死を悲しむどころか彼らを役立たずと罵る。

 

(だったら、お前が前線に行って敵を斃してみせろ)

 

イワノフの言動に藤堂平吾郎は冷たい視線を送るが、イワノフはそんな視線に気づかずにいた。

 

「アルフォート軍、分散していきます」

 

「それぞれ、周辺の軌道分岐点へ向かう模様!!」

 

「SDF各隊に第一級警戒態勢発令!!」

 

アルフォート星団帝国軍は各部隊に分散し、パルーム分岐点近くにある他の分岐点に向かって進撃する。

 

その各分岐点に展開するSDF各小隊も戦闘態勢をとり、アルフォート星団帝国軍と戦闘を開始した。

 

 

惑星ディスティニー 某所 ヒューベリオン 第一艦橋

 

「おいおい、マジかよ‥‥あのSPGがまともに戦えず全滅だなんて‥‥」

 

デイビッドは無線傍受の内容を聞いて、顔を引き攣らせる。

 

「SPG?」

 

「SDFとどう違うんですか?」

 

「SPGは空間鉄道警備隊の中でもエリート中のエリートで構成された精鋭部隊で、戦闘に特化した部隊だ‥‥装備も空間鉄道警備隊の中で最新鋭のモノを装備していた筈だったんだが‥‥」

 

「その精鋭部隊が手も足も出ずに全滅した‥‥」

 

「藤堂司令やバルジ隊長、暁のおっちゃんが気を利かせて此処までやって来たって言うのに‥‥」

 

「敵の侵攻速度が早すぎる‥‥」

 

「アルフォート星団帝国軍、分散して各分岐点に向かった模様。SDF各小隊は分岐点にて敵を迎撃するみたいです」

 

「精鋭のSPGが勝てなかったのにSDFが勝てるのですか?」

 

「いや、多分無理だろう‥‥せめてSDFの被害が大きくならない事を‥各隊の隊長の判断に委ねるしかない」

 

デイビッドや良馬たちは現状の装備のSDFではアルフォート星団帝国軍に勝てないことを知っているので、被害が少ない内に撤退してくれることを願った。

 

そんな中、先ほどSPGとアルフォート星団帝国軍と戦闘が行われたパルーム分岐点にフレイムスワローが到着した。

 

「他の小隊も各宙域で敵と接触、戦闘に入った模様です」

 

愛が他のSDF小隊の現状を報告し、

 

「パルーム分岐点です。666を含めて生存者は‥‥見当たりません」

 

マギーが周辺宙域に生存者が居ない事を報告する。

 

「隊長、記録カプセルの反応があります。これは‥‥666の物です」

 

生存者も居らず、動く物も存在しない静寂な宇宙空間‥‥

 

そんな宇宙空間に記憶カプセルの反応をシェリーが捉える。

 

それは先ほど、アルフォート星団帝国軍に撃破された666号の記憶カプセルであった。

 

ヨハンソンの期待通り、666号が残した記憶カプセルは無事にSDFの手に渡った。

 

「通信回線を開いて」

 

「了解」

 

666号が放出した記憶カプセルに並走し、レーザー通信回路を開き、記憶カプセルの内容を確認する。

 

「記録内容をスクリーンに投影」

 

通信回路を開き、カプセルの中に映像記録があったので、スクリーンに投影するとそこにはヨハンソンの姿が映し出される。

 

『この記録がSDFの下に残る事を祈っている。カプセルには敵の暗号通信を傍受するようにセットしておいた。奴らも我々を壊滅させた直後は通信管制が甘くなる筈だ。何としても敵の目的を探り出してほしい‥‥以上だ』

 

ヨハンソンの映像メッセージが終わると、カプセルが射出されたのか、遠ざかる666号の姿となり、やがて666号はアルフォート星団帝国軍の集中攻撃で撃破される映像となり、そこで映像は終わる。

 

「マギー、暗号解読プログラムを作動。メイン回路を使って良いわ」

 

「はい」

 

マギーはフレイムスワローのメイン回路を使用してカプセルに記録されたであろうアルフォート星団帝国軍の暗号通信の解読を行う。

 

すると、スピーカーからノイズに紛れて音声が再生される。

 

『‥‥ガ—‥‥ガ—‥‥アルフォート星団帝国軍第一侵攻軍へ、速やかにステップⅡへ移行‥銀河鉄道防衛網を壊滅‥‥しかる後、惑星ディスティニーへ侵攻‥‥その破壊を最終目的とする‥‥銀河鉄道を壊滅、惑星ディスティニーを破壊せよ。繰り返す‥‥惑星ディスティニーを破壊せよ』

 

「愛、至急管理局に報告」

 

「了解」

 

「銀河鉄道の壊滅と惑星ディスティニーの破壊‥それがアルフォート星団帝国軍の目的だなんて‥‥」

 

アルフォート星団帝国軍の目的‥‥それが銀河鉄道の壊滅とディスティニーの破壊であると知り、ジュリアは急ぎその旨を銀河鉄道管理局へと報告しようとしたその時、フレイムスワローが大きく揺れる。

 

「敵襲です!!」

 

フレイムスワローの車体をアルフォート星団帝国軍の艦載機が攻撃して来た。

 

このパルーム分岐点から他の空間の分岐点に向かったと思いきや、この宙域に留まった部隊も居たみたいだ。

 

後続のSDFを狙ったのか?

 

それともこの宙域を橋頭堡として使用するためなのか?

 

彼らの目的は不明であるが、確実に言える事は、フレイムスワローはアルフォート星団帝国軍に完全に捕捉されたと言う事だ。

 

「やるわね‥フレイムスワローの探知装置を掻い潜るなんて‥‥」

 

スピカ小隊の主な任務は情報収集・解析任務なので、フレイムスワローのレーダー、探知装置はSDFの中でも精巧で精密なモノを搭載していた。

 

しかし、アルフォート星団帝国軍はそのフレイムスワローに気づかれることなく接近し、奇襲をかけて来た。

 

このことからアルフォート星団帝国軍は火力だけでなく、ステルス性能も銀河鉄道より上であることが証明された。

 

「迎撃用意、主砲発射用意」

 

いずれにせよ敵に捕捉された以上、スピカ小隊も戦わなければならなくなった。

 

スピカ小隊がパルーム分岐点で戦っている頃、ベガ小隊もアルフォート星団帝国軍と接触し、戦闘を行っていた。

 

「アルラキス分岐点、被弾しました!!」

 

「主砲、直撃するも敵艦にダメージなし!!」

 

「隊長、まもなく弾薬も其処を尽きます。一時撤退もやむを得ませんぜ」

 

「隊長、スピカ小隊がパルーム分岐点で敵と接触、交戦状態に入りました!!」

 

「なにっ!?」

 

「スピカ小隊が!?」

 

「‥‥これより、アイアンベルガーはこの宙域の敵を一掃!!しかる後、スピカ小隊の救援に向かう!!」

 

「「「了解!!」」」

 

アイアンベルガーはスピカ小隊救援の為、客車三両に分割格納されている素粒子砲で一気に片を付けようとしていた。

 

その頃、スピカ小隊は苦戦を強いられていた。

 

「メインエンジン被弾!!出力低下!!」

 

「なんとか持たせて、どうあってもヨハンソン隊長からの情報を持ち帰らないと」

 

敵艦載機は何とか主砲で迎撃出来るが、いかんせん数が多い。

 

「こう一方的にやられっぱなしじゃあ芸が無いわね‥‥マギー、アレ行くわよ」

 

「操縦系統、戦闘回路と接続」

 

「エネルギー臨界点まで上昇」

 

「正面装甲板オープン」

 

フレイムスワローの先頭車両前部が左右に開口すると大口径の砲門が現れる。

 

この大口径の砲門こそ、フレイムスワローの切り札であった。

 

「各自、衝撃に備えて‥‥撃て!!」

 

フレイムスワローが放った大口径の砲撃は射線上の敵艦載機を粉砕し、敵戦艦の右舷側を直撃する。

 

「敵右舷大破!!」

 

「敵主砲、沈黙」

 

敵艦の主砲管制室を破壊したのか、撃沈には至らなかったが敵戦艦からの砲撃は止んだ。

 

しかし、艦載機からの攻撃はなおも続行される。

 

その攻撃を受けてフレイムスワローの切り札であった大口径主砲も破壊されて射撃不能となる。

 

そして、指揮車両には警報が鳴り響く。

 

「‥‥此処までね」

 

「ジュリア隊長」

 

「よく、頑張ったけど、ちょっとやられ過ぎたわ‥‥これより、スピカ小隊はフレイムスワローを放棄します」

 

ジュリアは敗北を悟り、総員に退避を命じた。

 

そして、敵の手に堕ちて解析されるのを防ぐために自爆装置を作動させる。

 

乗員たちはフレイムスワローに搭載されているスペース・イーグル、救命艇に乗り、フレイムスワローから退避する。

 

しかし、周囲の空間には敵艦載機が居るので、フレイムスワローから脱出した所で、無事にディスティニーへ戻れる保証はなかった。

 

とは言え、フレイムスワローに残れば確実に待っているのは『死』だったので、隊員たちは僅かな可能性に賭けた。

 

『自爆装置ガセットサレマシタ。乗員ハ至急退避シテクダサイ』

 

ジュリアはスピカ小隊の隊長として最後にフレイムスワローから退避するつもりで、ギリギリまで指揮車両に居た。

 

「さようなら‥‥フレイムス‥‥今までありがとう‥‥」

 

「ジュリア隊長。急いでください」

 

ルイがジュリアに退避を促す。

 

「ええ‥‥」

 

ジュリアが指揮車両から離れようとした時、指揮車両が被弾し、その爆発の衝撃と瓦礫の破片がジュリアを襲う。

 

「ジュリア隊長!!」

 

ルイが倒れたジュリアを抱き起すが、彼女は意識不明の重体となっていた。

 

そこへ、敵艦載機がとどめて言わんばかりにミサイル攻撃を仕掛けてくる。

 

しかし、ミサイルはフレイムスワローに命中する前に何処から飛んできたエネルギー波によって爆破される。

 

スピカ小隊の窮地を救ったのはベガ小隊のアイアンベルガーだった。

 

だが、アイアンベルガーも無理な戦闘をしてきたのか車両のあちこちが傷だらけであった。

 

アイアンベルガーも満身創痍の状態の中で無理をし、尚且つ周辺にはまだアルフォート星団帝国軍の艦載機が多数展開している。

 

長時間持ちこたえるのは無理だった。

 

幸いスピカ小隊の隊員はルイを含めて五人だったので、救助はスムーズに進んだ。

 

フレイムスワローを離れ、ルイが操縦する救命艇が被弾するが、アイアンベルガーの近くに居たので、ルイはジュリアを抱えて宇宙空間からアイアンベルガーへと乗り移る。

 

ジュリアは無事に収容されたが、アイアンベルガーが敵艦載機の攻撃を受けて被弾し、車体が大きく揺れた。

 

「きゃあ!!」

 

「ルイ!!」

 

その衝撃でルイは車外に放り出されてしまった。

 

学が助け出そうとするも無常にもドアは閉められ、アイアンベルガーは緊急ワープでパルーム分岐点のある宙域から離脱した。

 

村瀬は銀河鉄道管理局へ現状報告を入れる。

 

「こちら、ベガ小隊‥アルフォート星団帝国軍と交戦中のスピカ小隊の救助に成功‥‥フレイムスワローは機密保持のため、自爆‥‥スピカ小隊‥重傷者一名‥軽傷者三名‥死亡‥一名‥‥俺たちの‥‥銀河鉄道の完敗だ‥‥」

 

宇宙空間で行方不明となった場合、よほどの奇跡でも起こらない限り、生存は厳しく、また遺体も残りにくい。

 

ましてや周囲には敵であるアルフォート星団帝国の艦載機がうようよしていたのだ。

 

村瀬はあの状況下でのルイの生存は絶望的だと判断した。

 

そして、彼が銀河鉄道の完敗だと言ったように各分岐点を始めとする戦線でもSDFの不利な報告が相次いだ。

 

 

惑星ディスティニー 銀河鉄道管理局 運行指令室

 

『こちら、ベガ小隊‥アルフォート星団帝国軍と交戦中のスピカ小隊の救助に成功‥‥フレイムスワローは機密保持のため、自爆‥‥スピカ小隊重傷者一名‥軽傷者三名‥死亡‥一名‥‥俺たちの‥‥銀河鉄道の完敗だ‥‥』

 

『アルファード小隊より本部! 敵の装甲を抜けません! このままでは全滅だ!!撤退する!!』

 

「惑星デコア駅、通信衛星を破壊され、通信途絶」

 

「フレアデス分岐点、アルフォート星団帝国軍の攻撃を受け破壊」

 

「アトリア本線、完全に分断」

 

「ベグルス本線も軌道ポイント破壊の為、運行不能です」

 

「リゲル小隊、デネブ小隊、救助活動終了、戦線より撤退します」

 

「‥‥運命の歯車が‥‥闇の本流に人々の運命が‥‥飲み込まれていく‥‥」

 

総司令室でもレイラがアルフォート星団帝国軍の侵攻を受け、床に両ひざをつき倒れる。

 

「どうなっている!?なぜ敵の一つも撃破出来んのだ!?」

 

運行指令室ではイワノフがSDFの戦況不利、銀河鉄道の交通網の分断・運行不能な報告を聞き、声を荒げている。

 

藤堂平吾郎ギリッと奥歯を噛み締めた。

 

(やはり、今の我々の兵器では奴らに通用しない‥‥)

 

現状報告を聞き、藤堂平吾郎は決断した。

 

「全SDF部隊へ通達!! 直ちに戦闘を中止し、各軌道分岐点より撤退せよ! !繰り返す、全小隊はディスティニーまで撤退しろ!!」

 

まだ戦っているSDF小隊も居るが、無駄な犠牲と被害を増やすだけなので、全てのSDFに撤退命令を下した。

 

「な、何を言っているのかね!?藤堂君!!敵を前に背を向けるなど、銀河鉄道の誇りが‥‥」

 

イワノフは撤退などあり得ない事だと反論するが、

 

「誇りで命が守れるか!?」

 

藤堂平吾郎の怒鳴り声が運行指令室に轟き、イワノフはビクッと肩を震わせて口をつぐんだ。

 

「相手はSPGすら一蹴する未知の敵なのですぞ!!現状の戦力で立ち向かうのは戦闘ではなく、ただの玉砕だ。これ以上の犬死には運航司令である私が許さん。各隊、退路を確保しつつディスティニーへ全速で帰還せよ!!」

 

藤堂平吾郎の撤退命令を受け、戦闘を続けていたSDF小隊は次々と戦線を離脱、ディスティニーへの帰還行動に入った。

 

その頃、ディスティニー某所に停泊しているヒューベリオンでも重苦しい空気が漂っていた。

 

「この状況‥波動エンジン技術が齎される前の地球とガミラスとの戦いそっくりだな」

 

「ええ、あの頃の戦闘を思い出します」

 

無線傍受でSDFの状況を聞き、良馬たちはかつてのガミラス戦役を思い出す。

 

地球科学の総力を挙げての宇宙防衛は、更にその上を行く科学力と軍事力を持つガミラスを前に地球防衛軍はなす術無く追い詰められていった。

 

現状の空間鉄道警備隊とアルフォート星団帝国軍との戦いはまさにあの頃の再現と言える惨状であった。

 

「銀河鉄道にとってコスモ・マトリックスが我々の所で言う波動エンジン技術になるのでしょうね」

 

「ああ‥‥」

 

良馬は頷き、チラッと横を見る。

 

「‥‥」

 

そこにはシリウス小隊の隊長であるバルジの姿があった。

 

アルフォート星団帝国軍の艦隊出現と各宙域におけるSDFとの戦闘で本部内も混乱し、特務情報部の監視が緩くなったことで、この先、ビッグワンとの共同戦線もあり得る事から良馬はバルジをヒューベリオンへと呼んだ。

 

「バルジ隊長‥‥」

 

「分かっています、月村艦長。今ビッグワンが出たところで、結果は同じ‥‥いや、それ以上に最悪の事態になります」

 

そう言うバルジであったが、彼の拳は悔しさの表れなのかギュッと固く握りしめられている。

 

彼自身、本当ならビッグワンで宇宙へ出たいのだろう。

 

そこへ、息を切らしたデイビッドと綺羅がヒューベリオンの第一艦橋に駆け込んで来た。

 

「バルジ隊長!!ビッグワンのメインシステムと運行システムへのコスモ・マトリックスのインストールが終りました!!」

 

「火器管制システムはまだですが、これでとりあえず『盾』としては機能するはずです。敵の攻撃をある程度は防げます!!メインシステムへのインストールが終わったので残る火器管制へのインストール時間は大幅に短縮できる筈です!!」

 

「なので、火器管制へのインストールは戦場に向かうまでの間にやれば、アルフォート星団帝国軍と十分に戦えます」

 

デイビッドと綺羅がバルジと良馬にコスモ・マトリックスのインストール状況を報告した。

 

整備場の監視もやはり甘くなっており、デイビッドと綺羅はその隙をついてビッグワンにコスモ・マトリックスのデータをインストールしていた。

 

「上出来だ。シリウス小隊は、これより出撃する」

 

バルジの目に迷いはなかった。

 

「了解。月村艦長、綺羅技師長、お世話になりました」

 

デイビッドは良馬と綺羅に一礼し、バルジと共にヒューベリオンを後にした。

 

「機関長、機関の調子はどうだ?」

 

『メインエンジンの出力は安定しています。こちらのコスモ・マトリックスも、防御シールドと推進器へのバイパス接続はなんとか完了しました。ですが、主砲への完全なエネルギー充填にはまだ時間がかかります』

 

「分かった。そのまま作業を続けてくれ」

 

『了解』

 

「通信長」

 

「はい」

 

「スピカ小隊の被害を詳しく知りたい。情報を集めてくれ」

 

「は、はい」

 

「航海長」

 

「はっ」

 

「ヒューベリオンの出航準備を整えてくれ」

 

「了解しました。ヒューベリオン、発進シークエンスへ移行します。ですが、艦長。良いんですか?」

 

永倉は、出航準備は構わないが、その先に待つ事態について訊ねる。

 

「ん?なにが?」

 

「このまま出航って事はアルフォート星団帝国軍と戦うってことになります。地球とアルフォート星団帝国とは交戦国家ではないし、そもそも空間鉄道警備隊、ディスティニーとも同盟を結んでいない‥‥アルフォート星団帝国軍と戦闘をすれば、それはヒューベリオンが勝手に地球とアルフォート星団帝国との戦端を開くって事になります」

 

「まほろばは、事前に藤堂長官から許可が下りていたので、堂々とディンギル軍と戦闘をしましたが、今の我々にアルフォート星団帝国との交戦許可は下りていません」

 

永倉と綺羅がアルフォート星団帝国と戦うリスクと以前、まほろばが時空管理局と共同してディンギルと戦っていた時と状況が異なる点を指摘した。

 

「それは分かっている。本来ならばディスティニー‥銀河鉄道とアルフォート星団帝国との戦争に介入するのは御法度だが‥‥誰しも自分の身を守る権利はある筈だ。アルフォート星団帝国軍との戦闘は言わば自艦防衛だ」

 

良馬は現在、ヒューベリオンが停泊しているディスティニーが攻撃目標にされているので、この戦闘はヒューベリオン及び同艦の乗員たちの生命を守るための戦いであると言う。

 

「それは詭弁では?」

 

「詭弁でも、噓も方便でも、乗員たち‥そして、このディスティニーに居る人たちを守れるならば、俺はどんな汚名でも悪名でも被り、責任を取る覚悟だ」

 

良馬のその力強い宣言に、第一艦橋に集うクルーたちの顔に迷いは一切無かった。

 

むしろ、誰もがその決断を待ち望んでいたかのように、それぞれのコンソールに向き直る。

 

「艦長がそう言うと思って、発進シークエンスは既に最終段階に入っていますよ」

 

永倉がニヤリと笑いながらコンソールを叩く。

 

「流石だ‥総員に告ぐ!!本艦はこれより、惑星ディスティニー防衛のため、アルフォート星団帝国軍を迎撃する!!各員、出航準備!!」

 

良馬の号令が艦内に響き渡り、ヒューベリオンの各ブロックが一斉に出航準備へと移行していく。

 

その頃、整備場ではパルーム宙域からディスティニーに帰還したアイアンベルガーが到着した。

 

村瀬は傷だらけの車体を見て、

 

「直ぐに出撃する。整備を急いでくれ!!」

 

アルフォート星団帝国の目標がディスティニーの破壊である旨をスピカ小隊から聞いていたので、彼らは必ずディスティニーに向かって侵攻して来る。

 

村瀬はアルフォート星団帝国軍を迎え撃つ、つもりでいたので、整備員にアイアンベルガーの補修を急がせるが、

 

「無茶言わないでください。どうやったって丸四日はかかりますよ」

 

アイアンベルガー以外にも損傷したSDF車両はあるし、アイアンベルガー自体の損傷も激しいので短時間での修復は不可能であった。

 

「ふざけるな、何悠長に構えていやがる」

 

「こっちだって死ぬ気でやっているんだ。戦っているのは貴方たちだけじゃない」

 

「なんだと!?」

 

整備員と村瀬が一触即発の状態となるが、

 

「隊長、ディスティニーに着きましたよ」

 

「もう、大丈夫です」

 

「医務室へ早く」

 

ストレッチャーで運ばれる意識不明のままであるジュリアの姿を見て、村瀬は冷静さを取り戻すが、

 

「くそっ」

 

やりきれない怒りはあるようで、おもわずアイアンベルガーの車体に自身の拳をぶつける。

 

「‥‥」

 

学もルイを目の前で助けられなかった現実に虚無感を覚えていた。

 

そんな学の耳に、

 

ボォォォォォー‥‥

 

「っ!?」

 

聞き慣れた汽笛の音が聞こえた。

 

学はその音が聞こえた方向へと走る。

 

そして、辿り着いたのはビッグワンが鎮座している整備場であった。

 

クーロン宙域での戦闘以降、出撃する機会がなかったビッグワンであるが、暁たちが整備をしていたおかげであの時の戦闘によるダメージはなく、新品同様に整備されていた。

 

「やっぱり、お前も来たな」

 

「デイビッド!!ユキさん!!」

 

学よりも先に整備場にはデイビッドとユキが居た。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「コスモ・マトリックスは!?」

 

「メインと運行システムにはインストール済みだ。残る火器管制システムも暁のおっちゃんたちが戦闘宙域に到着するまでには終わらせてくれる。これで、アルフォート星団帝国軍とも十分にやり合える」

 

「行きましょう、有紀さん」

 

デイビッドの言葉を聞いて学は顔を明るくする。

 

そこへ、

 

「おい!!お前たち!!そこで何をしている!?」

 

「此処は立ち入り禁止区域だ!!ビッグワンには出動命令は出ていない!!」

 

ライフルを持った警備員たちがやって来る。

 

「命令がなんだ?こいつは俺たちシリウス小隊の列車だぜ」

 

「シリウス小隊は現在、無期限の活動停止中の筈だ」

 

「なんだと!?」

 

「さっさと帰れ!!この非常時に隊長もいない小隊が勝手な事を‥‥」

 

警備員たちは学たちにライフルの銃口を向ける。

 

「隊長なら此処にいる」

 

整備場に凛とした声がしたと思えば、そこにシリウス小隊前隊長‥有紀渉の制服を着たバルジの姿があった。

 

ヒューベリオンを降りた後、バルジはデイビッドを先にビッグワンの整備場に行かせ、バルジ本人はシリウス小隊の待機室内の執務室にあるロッカーの中に保管されていた渉の制服に着替えてこの整備場に来た。

 

「バルジ隊長‥‥」

 

「隊長‥‥」

 

「行くぞ。俺たちのやるべき事を成すために」

 

「そうこなくっちゃ」

 

「おい、待て」

 

「どうする?」

 

「本部に連絡だ」

 

警備員たちはあたふたするだけで発砲は出来ず、本部にシリウス小隊のメンバーがビッグワンを勝手に動かそうとしている旨を伝えるしか出来なかった。

 

『待ちくたびれたぜ』

 

ビッグワンの指揮車両に乗ると、暁が通信を送って来た。

 

「暁さん」

 

『と言ってもまだコスモ・マトリックスのインストールが全て終わった訳じゃあない。でも、出張サービスで戦闘が始まる前に何とか終わらせる』

 

「よろしくお願いします」

 

「隊長」

 

「ん?」

 

「どうぞ‥‥」

 

「ユキ‥‥」

 

ユキがバルジに銀河鉄道の制帽を渡す。

 

バルジは制帽を受け取り被ると、

 

「ディスティニー最終防衛ラインに向けてビッグワン、出場準備」

 

高々に出場命令を出す。

 

一方、運行指令室では、ビッグワンの行動が伝わる。

 

「シリウス小隊が出場だと!?ふざけるな!!バルジはもう隊長でもSDF隊員でもない!!止めろ!!命令違反は重罪だ!!」

 

イワノフはビッグワンの出撃を止めようとするが、

 

「ビッグワン発進を許可する」

 

藤堂平吾郎はビッグワンの出撃に許可を出す。

 

「なにっ!?」

 

「了解、シリウス小隊、発進してください」

 

「おい‥貴様等、査問委員会モノだぞ!!」

 

イワノフは相変わらず叫ぶが、彼は特務情報部所属で、運行に関しての命令権は藤堂平吾郎にあるので、オペレーターたちはイワノフを無視する。

 

やがて、ビッグワンは発進準備を整え、ディスティニーを発進した。

 

 

ビッグワンが発進した頃、ヒューベリオンでは‥‥

 

「艦長、スピカ小隊の被害が判明しました」

 

「被害状況は?」

 

「レインハート隊長が重傷、シェリー隊員、レッドフォード隊員、末浦隊員が軽傷‥‥ドレイク隊員が‥‥」

 

「ドレイク隊員がどうした?」

 

「‥‥死亡しました」

 

「死亡?それは間違いないのか?」

 

「正確にはMIAみたいですが、宇宙空間におけるMIAは‥‥」

 

「‥‥」

 

沙織の言う意味を宇宙戦士である良馬はちゃんと理解していた。

 

「すまないが、出航は少し待ってくれ」

 

「えっ?艦長?」

 

良馬は一時、ヒューベリオンを降りて急いである場所へと向かった‥‥

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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