星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百九十四話 敗北

 

 

地球連邦政府より、惑星国家ディスティニーとの「恒久平和同盟」締結という重大な使命を帯びて発進した漆黒の宇宙列車・二号列車。

 

その先遣隊の指揮官を任された月村良馬は、その冷徹な鋼鉄の装甲の内に、愛する妻であるギンガとユリーシャから託された『地球の心』という温かな贈り物を抱いて次元の海を渡った。

 

道中、空間鉄道警備隊(SDF)の象徴『ビッグワン』を騙る偽物による襲撃事件に遭遇した良馬たちは、絶望の淵にあった本物のシリウス小隊を救い出し、事態の収拾を図りながらディスティニーへと到着する。

 

迎賓室にてレイラ総司令への親書と「地球の心」の引き渡しを無事に終え、両国の間に確かな絆が結ばれたのも束の間、銀河鉄道の根幹を揺るがす恐るべき陰謀の全貌が明らかとなる。

 

偽ビッグワンの正体――それは、SDF上層部の承認のもとで軍需企業ヘッケラー社が極秘裏に建造していた次世代SPG専用戦闘列車『ブラック・ワン』であった。

 

宇宙海賊ジャック・ブルームの手によって強奪されたその“最強の盾”は、今や凶悪な牙となり、旧型の性能を遥かに凌駕する圧倒的な火力で、追撃に向かった本物のシリウス小隊を蹂躙せんと待ち構えていた。

 

保身のために事実を隠蔽しようとする上層部の腐敗。

 

友の危機。

 

事態を重く見た良馬は、一人の軍人として、そして共に銀河を救った戦友として、レイラ総司令に出撃を直訴する。

 

最強の敵を打ち砕くため、漆黒の走る要塞『宇宙列車・二号』は再び冷たい次元の海へと発進した。

 

 

宇宙空間をひた走る偽ビッグワンこと、ブラック・ワン。

 

それを追尾しているのはベガ小隊のアイアンベルガーだった。

 

アイアンベルガーの司令車両では既にブラック・ワンを捕捉していた。

 

「目標をレーダーに捕捉」

 

「移動速度、変わらず」

 

「逃げる気配はないか‥‥奴さん、俺たちとやり合うつもりの様だ」

 

ベガ小隊・隊長の村瀬はモニターに映るブラック・ワンを睨みつける。

 

「まさか、ビッグワンを追いかけて、ビッグワンと戦う事になるとは‥‥」

 

戦闘パート担当のシルバーが複雑な心境を口にする。

 

「とは言え、奴はビッグワンの名を語る偽物だ。容赦するな。射程に入り次第、撃て」

 

「了解」

 

アイアンベルガーは戦闘車両の砲口をブラック・ワンへと向ける。

 

すると、ブラック・ワンの方でも動きがあった。

 

後部の車両の内、最後尾を含む三両の屋根が開き、そこから巨大な砲身が出現し、一つに合体すると、アイアンベルガーに向けて砲撃して来た。

 

それはアイアンベルガーが装備している素粒子砲と似た格納・分裂式の巨大砲であったが、射程、威力はブラック・ワンの方が上であった。

 

「高エネルギー反応!!急速接近中!!」

 

「っ!?いかん!!緊急回避!!」

 

アイアンベルガーが咄嗟に左側に回避した事で、直撃は免れたが、それでも掠った程度でアイアンベルガーの戦闘機能を喪失する程の威力であった。

 

「偽ビッグワンを追尾していたアイアンベルガーのシグナルロスト」

 

「アイアンベルガー、応答なし!!状況は不明!!」

 

ルイとユキの報告を聞き、

 

「まさか、ベガ小隊がやられたのか!?」

 

アイアンベルガーが撃破されたのかとデイビッドは動揺する。

 

「でも、相手はビッグワンの見かけを真似ただけの偽物じゃあ‥‥」

 

学は自分たちの乗っているビッグワンと同じならば、アイアンベルガーが‥ベガ小隊がこんな短時間で負けるなんて信じられなかった。

 

「有紀!!敵を舐めるな。第一級戦闘配備だ」

 

「はい」

 

「コスモボイラー出力最大、ビッグワン第一級戦闘速度」

 

「了解」

 

デイビッドはビッグワンの速力を上げる。

 

「圧力弁解放、出力最大!!」

 

「コスモ・カノン、発射準備。射撃管制システム、異状なし」

 

「ボイラー内、圧力120%」

 

「目標まであと二分‥‥あっ、高エネルギー反応、急速接近!!」

 

「まだ射程距離圏外だぞ!?」

 

「左に捻れ、緊急回避」

 

デイビッドはビッグワンの進行方向を左側にきる。

 

アイアンベルガー同様、ブラック・ワンの高エネルギー砲が掠っただけで、ビッグワンもダメージを負う。

 

「機関部損傷、出力低下。速度40%ダウン」

 

「あの距離で撃って来るとは‥‥他に被害は?」

 

「主砲伝達回路、断線!!発射不能です!!」

 

「電磁シールド発生装置損傷。シールド展開不能」

 

「偽ビッグワンからミサイルが発射されました‥‥機数十二‥‥えっ?‥‥ミサイル無数に増加!!数え切れません!!」

 

「機関全速、緊急加速」

 

「無理です!!機関システムが損傷し、これ以上の速度が出ません!!」

 

デイビッドの悲痛な叫びが、シリウス小隊の司令車両に響き渡った。

 

主砲は沈黙し、電磁シールドは展開不能。

 

頼みの綱である機動力すらも失われた満身創痍のビッグワンに向け、漆黒の宇宙空間を埋め尽くすほどの多弾頭ミサイルが、死の雨となって殺到してくる。

 

「くそっ……!ここまでなのか……っ!」

 

学は拳を強く握りしめ、ギリッと奥歯を噛み鳴らした。

 

自分たちが信じてきたビッグワンの姿をした『偽物』に蹂躙されるという絶望感が、乗組員たちの心を黒く塗り潰していく。

 

「総員、衝撃に備えろ!!」

 

バルジ隊長の鋭い号令が飛ぶ。

 

全員が最期を覚悟し、目を閉じたその瞬間だった。

 

『――諦めるな、シリウス小隊!!』

 

突如として通信回路に割り込んできたのは、聞き覚えのある力強い声だった。

 

それと同時、ビッグワンの後方宙域から、目も眩むような無数の閃光が放たれた。

 

「後方より高熱源体多数!! こ、これは……熱源放射ミサイルです!」

 

レーダーを注視していたユキが、驚愕と安堵の入り混じった声を上げる。

 

ビッグワンを飛び越えるようにして宇宙空間へと散布された無数のデコイ(囮)ミサイルは、強烈な熱と疑似シグナルを放ちながら広がっていく。

 

ブラック・ワンから放たれた多弾頭ミサイルの群れは、その強烈な熱源に欺瞞され、次々と標的をビッグワンから熱源放射ミサイルへと変更した。

 

宇宙の闇に、無数の爆炎の華が咲き乱れる。

 

ビッグワンの車体を激しい衝撃波が揺さぶったが、致命的な直撃は見事に避けられていた。

 

「助かった……のか?」

 

学が信じられないといった表情でメインモニターを見上げる。

 

晴れゆく爆炎の向こう側、ビッグワンの傍らに寄り添うようにして姿を現したのは、重厚にして冷徹な鋼鉄の装甲を纏った漆黒の巨体――地球連邦軍が誇る走る要塞、『宇宙列車・二号』であった。

 

『遅くなってすまない、バルジ隊長。どうやら間一髪だったようだな』

 

メインモニターに、ディスティニーでの任務を終えたはずの月村良馬の姿が映し出される。

 

その表情は軍人としての厳しい引き締まりを見せつつも、友の無事を確認できた安堵の色が微かに滲んでいた。

 

「月村司令……! なぜあなたがここに?」

 

「レイラ総司令から事の顛末は聞いた。君たちだけに、あんな化け物の相手をさせるわけにはいかないからな……急いでディスティニーを出発して、全速力で飛ばしてきた甲斐があった」

 

一方、暗黒の宙域に鎮座するブラック・ワンの指令室。

 

宇宙海賊ジャック・ブルームは、新たに現れた漆黒の列車をモニター越しに不敵な笑みで見つめていた。

 

「チッ……邪魔が入ったか。だがまあいい、強奪したばかりでこっちもエネルギー残量が心許ないしな。旧型のビッグワンとアイアンベルガーを圧倒できたんだ。性能試験としては十二分にデータは取れた」

 

ブルームは操舵桿を乱暴に倒し、ニヤリと凶悪な口角を上げる。

 

「引き上げる前に、挨拶代わりの手土産をくれてやる。次はまとめて沈めてやるぜ……本物のビッグワンも、その黒い邪魔者もな!」

 

ブラック・ワンの砲身が鈍く光り、二号列車を捉えて強烈なエネルギー波を放った。

 

「敵艦より高エネルギー反応! 撃ってきます!」

 

二号列車のオペレーターの叫びに、良馬は即座に反応した。

 

「迎撃システム起動!主砲で対エネルギー防御システム作動!!」

 

「了解!!防御システム作動!!」

 

「撃て!!」

 

漆黒の車体から瞬時に砲身が展開され、正確無比な迎撃ビームが放たれる。

 

迎撃ビームは複数の束に枝分かれし、ブラック・ワンから放たれた破壊の光線と二号列車の迎撃ビームが宇宙空間で激突し、凄まじい光の奔流となって相殺された。

 

宇宙空間を揺るがす爆発の衝撃波が広がったが、二号列車はその冷徹な鋼鉄の装甲に傷ひとつ負うことなく、ただ悠然とビッグワンを庇うように立ち塞がっていた。

 

「ほう、やるじゃねぇか。ただのデクの坊ってわけじゃないらしい……急速反転。次元断層へ跳べ!」

 

「了解」

 

ブルームの命令により、ブラック・ワンは次元の波の彼方へと機首を翻す。

 

良馬はオペレーターへと視線を向けた。

 

「敵『ブラック・ワン』の動向は?」

 

「敵ブラック・ワン、急速に反転! 次元断層への突入シークエンスに入りました! 追撃しますか!?」

 

二号列車のオペレーターの報告に、良馬は一瞬だけ悔しそうに目を細めた。

 

ブラック・ワン――銀河鉄道上層部の独断の象徴であり、圧倒的な牙を持つあの偽物をここで逃せば、再び銀河の脅威となるのは火を見るより明らかだった。

 

二号列車の無傷の戦力ならば、今追撃すればあるいは仕留められるかもしれない。

 

だが、良馬の決断は早かった。

 

「……いや、追撃は中止だ。それよりも、アイアンベルガーの救助信号を急ぎ探れ。村瀬隊長の事だ。絶対に生きているはずだ!」

 

良馬にとって、どんな戦果よりも優先すべきは共に銀河を護る『仲間』の命だった。

 

ここで無理な追撃をかければ、損傷したビッグワンと連絡を絶ったベガ小隊を見捨てることになる。

 

それは、妻たちから『地球の心』を託された良馬の信念が絶対に許さなかった。

 

「敵車両、ロストしました。完全に逃げられました……」

 

「構わん。今は人命救助が最優先だ。本列車はこれより、シリウス小隊及びベガ小隊の救助・復旧支援に当たる!」

 

良馬の力強い号令のもと、二号列車は救助活動のためのアームと牽引ワイヤーを展開し始める。

 

その隙を突き、ブラック・ワンは次元の波の彼方へと完全に姿を消していった。

 

「月村司令……恩に着る」

 

バルジ隊長がモニター越しに深く頭を下げる。

 

「気にしないでください。バルジ隊長。借りは、あの偽物を叩き潰す時に返してもらおう。……さあ、急いでベガ小隊を助け出し、立て直すぞ!」

 

次元の海に逃れ去った凶悪な黒い影。

 

だが、それに立ち向かうための希望の絆は、決して折れてはいなかった。

 

良馬の指揮のもと、SDFと地球の誇る二つの列車は、次なる激闘へ向けて静かに傷を癒やし始めるのだった。

 

「艦載機『コスモ・シュヴァルベ』発進! 宙域の広域探査を行い、アイアンベルガーのシグナルを特定しろ!」

 

良馬の鋭い声が指令室に響く。

 

漆黒の車体の屋根が開き、折り畳み式のカタパルトの上に宇宙戦闘機『コスモ・シュヴァルベ』が折り畳まれていた主翼を広げ、宇宙へと飛び立って行く。

 

青白いバーニアの光を曳きながら、コスモ・シュヴァルベは漆黒の闇の中へと散開していった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「コスモ・シュヴァルベ、全機発進完了」

 

「よし、次にビッグワンの牽引作業に入る。牽引ワイヤー射出、ロックオン!」

 

「了解。牽引ワイヤー射出します」

 

宇宙列車二号の後部から放たれた頑強なワイヤーが、満身創痍のビッグワンの先頭車両にガッチリと固定される。

 

「バルジ隊長、そちらの推進器は完全に切ってくれ。こちらで引っ張る」

 

『すまない、月村司令。世話をかける』

 

「お互い様ですよ」

 

モニター越しのバルジ隊長に微かに微笑みかけると、良馬は再び厳しい顔つきに戻った。アイアンベルガーの安否が知れない以上、一分一秒の遅れが致命傷になりかねない。

 

『――こちらコスモ・シュヴァルベ隊。座標マル・サン・フタ・ハチにて、アイアンベルガーと思われる車体を発見!』

 

「被害状況は!?」

 

『……酷い有様です。動力は完全に停止、生命維持装置もギリギリのラインかと!』

 

「分かった。すぐにビーコンを上げろ!」

 

『了解!!』

 

通信機から飛び込んできた報告に、司令車両に微かな安堵と新たな緊張が走る。

 

「永倉君、非常弁を開放しろ! コスモボイラーの圧力を限界まで上げるんだ!」

 

「し、しかし司令! 巨大なビッグワンを牽引したまま非常弁を開ければ、二号列車の機関部にも相当な負荷が掛かりますぞ!」

 

「構わん、やれ! あの列車には、共にアルフォート星団帝国と戦った俺たちの戦友が乗っているんだ! 彼らを見殺しにはできない!」

 

良馬の決死の覚悟を宿した目に、永倉は短く「アイ、サー!」と応え、制御パネルを叩いた。

 

「圧力弁、リミッター解除! コスモボイラー出力150%!!」

 

ゴゴゴゴゴォォォッ!!

 

漆黒の走る要塞が、悲鳴にも似た重低音を響かせる。

 

巨大なビッグワンを引き摺りながらも、宇宙列車二号は機関の焼き付きを覚悟した決死のフル稼働で、虚空を切り裂き進んでいく。

 

冷徹な鋼鉄の装甲の内側で、仲間を救いたいという良馬の、そして『地球の心』の熱い想いが、巨大な列車は限界を超えて突き動かしていた。

 

やがて、メインモニターの暗闇の中に、見覚えのある深緑色の車体が浮かび上がってきた。

 

「見つけた!!アイアンベルガーだ!!」

 

(頼む、間に合ってくれ……!)

 

良馬は祈るような思いで息を呑んだ。

 

その姿は、かつて共に銀河の危機を救った誇り高き戦闘列車のそれとは程遠かった。

 

装甲はひしゃげ、各所から火花と黒煙が噴き出している。

 

ブラック・ワンの圧倒的な火力の前に、為す術もなく蹂躙された爪痕が生々しく刻まれていた。

 

「宇宙列車二号、アイアンベルガーに接舷! 横付けしろ! 救護班は直ちにベガ小隊の救助に向かえ!」

 

ドンッ、と鈍い衝撃と共に、二つの巨大な列車が連結される。

 

エアロックが結合されるや否や、良馬は自ら救護班の先頭に立ち、アイアンベルガーの車両へと飛び込んだ。

 

「村瀬隊長!!無事か!?村瀬隊長!!」

 

薄暗く、非常灯の赤い光だけが点滅する車内。

 

煙が立ち込める指令室の奥で、頭から血を流し、コンソールに寄りかかっている男の姿があった。

 

「‥‥誰かと思えば‥‥月村か?久しぶりだな‥‥」

 

かすれた声で顔を上げたのは、ベガ小隊隊長、村瀬だった。

 

「村瀬隊長……! よく生きていてくれた!」

 

「へっ……俺としたことが、偽物のビッグワンなんぞに……派手にやられちまったよ……」

 

村瀬は力なく自嘲気味に笑う。

 

アルフォート星団帝国軍との激闘を共に生き抜いた、もう一組の戦友。

 

半年という月日は、宇宙のスケールから見れば瞬きのような時間かもしれない。

 

しかし、互いに死線を潜り抜けてきた男たちにとって、この再会は言葉では言い表せないほどの重みがあった。

 

良馬の胸の内に、無事であったことへの歓喜と積もる話の数々が込み上げてくる。

 

(地球での生活のこと、ディスティニーでの出来事、そして何より、共に無事で再会できた喜びを分かち合いたい……)

 

だが、良馬はその熱い感情をグッと心の奥底へと押し込んだ。

 

「話は後だ、村瀬隊長。今は手当てが先決だ」

 

「ああ……すまねぇな、月村……」

 

救護班のストレッチャーに乗せられる村瀬の肩を、良馬は力強く叩いた。

 

再会を祝う祝杯は、まだ挙げられない。

 

銀河の平和を脅かす、あの忌まわしき偽物――ブラック・ワンが暗躍している限り。

 

「……あの化け物は、必ず俺たちが仕留める。だから今は、ゆっくり休んでくれ」

 

傷ついた二つの列車と誇り高き戦友たちを背負い、漆黒の宇宙列車二号は静かに、しかし確かな闘志を燃やして暗黒の宇宙に留まっていた。

 

次なる反撃の狼煙を上げる、その時を待って‥‥

 

とは言え、流石に宇宙列車二号でもビッグワン、アイアンベルガーの二両の戦闘列車を牽引するのは無理があり、宇宙列車二号の機関室から、限界を知らせるけたたましい警報音が指令室にまで鳴り響いていた。

 

「永倉君、状況は?」

 

「月村司令、流石に無理です! ビッグワンとアイアンベルガー、二両もの戦闘列車を同時に牽引しながら宇宙を走行するとなれば、本列車のコスモボイラーが破裂しかねません!」

 

機関長の悲痛な報告に、良馬は苦い顔で舌打ちをした。

 

流石に宇宙列車二号の力をもってしても、二つの重厚な装甲列車を引き摺っての航行は無謀だった。

 

「仕方ない……無理をしてここで三両とも立ち往生しては本末転倒だ。銀河鉄道管理局へ緊急通信! 救援を要請しろ!」

 

良馬の決断からほどなくして、漆黒の宇宙空間に一筋の優美な光が差し込んだ。

 

流線型の赤と白の美しい車体――救援の要請を受け、次元の彼方から駆けつけてきたのは、空間鉄道警備隊スピカ小隊の専用車両『フレイムスワローⅡ』であった。

 

『こちらスピカ小隊、ジュリアです。月村司令、大変な状況のようですね。私たちがアイアンベルガーの牽引を引き受けます』

 

メインモニターに映し出されたのは、スピカ小隊の隊長ジュリアの凛とした姿だった。

 

「恩に着る、ジュリア隊長……しかし、まさかあの漂流船ヒューベリオンとの初邂逅の一件以来、こんなにも早く君たちスピカ小隊と再会することになるとはな」

 

『ええ、本当に。ゆっくりと再会の挨拶を交わしたいところですが……それは無事にディスティニーへ帰還してからにしましょう』

 

ジュリアが微笑みを浮かべつつも真剣な眼差しで頷くと、フレイムスワローⅡは素早くアイアンベルガーへと接近し、牽引ワイヤーを接続した。

 

こうして、宇宙列車二号がビッグワンを‥フレイムスワローⅡがアイアンベルガーを牽引する形で、傷ついた列車たちは惑星国家ディスティニーへと重い歩みを進めていった。

 

ディスティニーへの帰還中、スピカ小隊から銀河鉄道管理局へと、シリウス小隊およびベガ小隊の惨状が詳細に報告された。

 

ディスティニーの管理局本部。その厳かな一室で、空間鉄道警備隊司令兼銀河鉄道運行司令の藤堂平吾郎は、運命の女神であり、銀河鉄道総司令官のレイラ・ディスティニー・シュラへと事の顛末を報告していた。

 

「……以上が、シリウス及びベガ両小隊の被害状況です。また、特務情報部の調査により、あの偽ビッグワンこと、『ブラック・ワン』に関する裏付けも取れました。ヘッケラー社と銀河鉄道上層部の一部が結託し、独断で推し進めていた次世代SPG計画の産物です」

 

藤堂のギリッと奥歯を噛みしめるような報告を聞き終えると、レイラは静かに目を伏せ、酷く悲しげな表情を浮かべた。

 

「銀河鉄道に必要なのは最強の『盾』であって、『剣』ではありません。ソレが分からない人たちも居るのです……試練もまた運命」

 

ポツリとこぼれ落ちたレイラの哀惜の言葉は、銀河の平和を願う彼女の心を踏みにじった者たちへの静かな、しかし深い悲しみに満ちていた。

 

一方、ディスティニーの巨大な車両整備場では、けたたましい金属音と溶接の火花が飛び散っていた。

 

「損傷の大きい所は全とっかえだ!!かまわんからひっぺがせ!!」

 

「断線した回路は半日で繋ぎ直せ!!火器管制システムのチェックも同時にやれ!!」

 

「無理です!!動力系の修復も見通しが立たないのに‥‥」

 

「や・る・ん・だ!!」

 

「は、はい」

 

整備班長の暁を筆頭に、整備員たちが総出で満身創痍のビッグワンとアイアンベルガーに取り憑き、不眠不休の復旧作業に当たっていた。

 

重傷を負った村瀬たちベガ小隊の面々は、直ちにディスティニーの最新鋭の医療施設へと搬送され、治療を受けている。

 

幸運にも直接的な怪我がなかった学たちシリウス小隊は、ビッグワンの修理が終わるまで基地内での待機を命じられていた。

 

「くそっ……!」

 

待機室の壁を、学は拳で強く叩いた。

 

自分の無力さが、歯痒くて仕方がなかった。

 

自分たちがこうして待機しているこの瞬間にも、あの悪魔のようなブラック・ワンは我が物顔で宇宙を走り回り、どこかで罪なき列車や人々を襲っているかもしれない。

 

そう考えると、居ても立っても居られなかった。

 

だが、肝心のビッグワン自体が動かないことには、追撃に出ることすらできない。

 

ただ待つことしかできない時間が、学の心を狂おしいほどに焦燥させていく。

 

「おい、学。そんなところで壁と喧嘩していても、ビッグワンは直らねぇぞ」

 

苛立ちを隠せない学の肩を、後ろからデイビッドが強引に掴んだ。

 

「デイビッド……! でも、俺はっ……!」

 

「分かっている。だがな、腹を空かせたままであのバケモノにリベンジできるか? 少しは頭を冷やせ。メシに行くぞ」

 

「食事なら一人で行ってきてください。俺はそんな気分じゃ……!」

 

「いいから来い!これも先輩からの命令だ!」

 

暴れる学の首根っこを掴むようにして、デイビッドは半ば強引に彼を食堂へと引きずっていった。

 

戦うためには、まず自分たちの心と体を保たなければならないことをデイビッドは熟知していたのだ。

 

 

その頃――。

 

漆黒の宇宙空間に浮かぶ、冷たい金属の塊のような巨大なコロニー。

 

それは惑星ディスティニーの衛星軌道上に位置するヘッケラー社の極秘研究所兼・車両製造コロニーであった。

 

そこへ接近する一隻の小型高速艇の中に、シリウス小隊隊長バルジの姿があった。

 

彼の隣には、SDF司令兼銀河鉄道運行司令の藤堂平吾郎、そして特務情報部のフーバーが座っている。

 

藤堂平吾郎からバルジに知らされた真実。

 

銀河鉄道上層部がビッグワンの設計図をヘッケラー社へ独断で提供し、SPGの新型車両としてあの凶悪な『ブラック・ワン』を建造させて、おそまつにもその完成した車両を宇宙海賊に盗まれてしまったと言う事実。

 

友であるベガ小隊の隊員たちを傷つけ、何より自分たちの誇りである『ビッグワン』の名を穢し、大勢の民間人を死傷させた元凶‥‥

 

「……この扉の向こうに、すべての元凶があるというわけですね?藤堂司令」

 

「ああ、ヘッケラー社の幹部ども、果たしてどんな言い訳を述べる事やら」

 

高速艇のドッキングハッチが開く重低音が響く。

 

バルジは決意の足取りで、ヘッケラー社のコロニーへと足を踏み入れていった。

 

バルジ、藤堂平吾郎、フーバーの三人を出迎えたのは先日、銀河鉄道管理局にやって来たケッセルリンクであった。

 

「此処では我が社の最新の研究開発が行われております」

 

「人を殺す為のな‥‥」

 

バルジが皮肉を込めてケッセルリンクに言い放つ。

 

「それは心外ですな。私共は銀河鉄道から依頼を受けて研究・開発を行っております」

 

「それが何故、ビッグワンなのだ?」

 

「銀河鉄道管理局に残る全てのデータを検討した結果です」

 

バルジの問いに答えたのはケッセルリンクではなくフーバーであった。

 

「これまでビッグワンはSPGの戦闘列車をも凌ぐ、高性能を発揮してきました。時には本来のスペックを遥かに凌駕した働きをしています。そこで我々はSPGの新型車両を開発するにあたり、ビッグワンをベースモデルにしようと考えたのです。しかし‥‥」

 

通路の奥‥車両製造区画まで到着すると、そこにはもぬけの殻の製造場の姿があった。

 

「出来上がった車両は強奪されてしまったか‥‥」

 

「まったくお粗末な話だ」

 

バルジも藤堂平吾郎も今回のヘッケラー社の耐性に呆れる。

 

「こんな宇宙空間のコロニーで建造するからそうなったのではないか?」

 

そこで、バルジが宇宙空間のコロニーで秘密裏に戦闘列車を建造した結果このような事態になったのではないかとヘッケラー社側の態勢を非難する。

 

ディスティニー本土で建造されればコロニーよりも警備の数も増やすことができたので、宇宙海賊に強奪される事もなく、今回の様な事件も起こらなかった筈だ。

 

「ですが、あの列車の建造は極秘事項でした。機密保持の観点から、ディスティニー本土での製造所ではそれが維持できないと判断し、情報が遮断しやすいコロニーでの建造となったのです。それにセキュリティに関しては万全を期していたのですが、相手があのジャック・ブルームでは‥‥」

 

「ブルームだと!?」

 

今回のブラック・ワン強奪犯の名を聞きバルジは目を見開く。

 

「御存じでしょう?SDF第一級指名手配犯であり、元傭兵の凄腕の宇宙海賊‥‥」

 

「まさかあのような海賊が我が社のブラック・ワン建造の情報を入手していたなんて思ってもおりませんでした」

 

「なぜ、このことを隠していた!?強奪されてから直ぐに被害届を出していれば、警戒情報を早く出せていたし、我々も迅速に対処出来たのだぞ!?」

 

バルジがケッセルリンクを睨みつけながら問う。

 

「それはあの列車の建造が銀河鉄道内でも最高機密でしたから‥‥しかし、こうなった以上、各星間国家に軍の出動を依頼して目標の対処をしてもらうのもやむを得ないかと‥‥」

 

フーバーはこの一件は既に銀河鉄道だけで解決できる問題ではないと判断し、銀河鉄道が乗り入れている各星間国家に宇宙軍に出動してもらい対処を依頼しようと提案する。

 

しかし、バルジは、

 

「銀河鉄道の安全と問題はSDFの仕事だ」

 

と、軍ではなくSDF内で対処する旨を伝える。

 

「銀河鉄道は我々が守る」

 

「分かっておられない様ですな、我々が建造した新型車両に今のSDF車両が勝てるはずが‥‥」

 

ケッセルリンクがビッグワンは現有の戦闘列車の中でもトップクラスの性能を持ち、SDFが現在使用している戦闘列車では勝てない事を伝えると、

 

「分かっていないのはお前たちの方だ」

 

藤堂平吾郎はケッセルリンクとフーバーに言い放つ。

 

「ビッグワンが優れているのは、高性能だからではない。彼らが乗っているからだ」

 

と、マシーンのカタログスペックだけでなく、機械を使用するマンパワーが優れているからこそ、ビッグワンはカタログスペック以上の性能を引き出しているのだと宣言した。

 

バルジは早々とコロニーを後にするが、その際、

 

「キリアンか?一つ調べてもらいたい事がある‥‥」

 

と、以前シリウス小隊に研修として一時入隊していた幹部候補生のキリアン・ブラックにある事を調べてもらいたく連絡をとった。

 

その頃、ディスティニーの医療センターでは‥‥

 

医療施設の白く清潔な廊下を良馬とスピカ小隊の隊長ジュリアは並んで歩いていた。

 

二人が向かっているのは、先ほどの激戦で重傷を負い、緊急搬送されたベガ小隊の面々が収容されている病室であった。

 

「アイアンベルガーの損傷具合からして、村瀬隊長たちも相当なダメージを負っているので、面会謝絶になっていなければいいが……」

 

良馬が沈痛な面持ちで呟くが、良馬よりも村瀬たちの付き合いが長いジュリアは平然とした様子で、

 

「あの村瀬たちがそう簡単にくたばるとは思えないわ。きっと今頃、病室で暇をもてあそんでいる筈よ」

 

と、あっさりとした口調で言う。

 

それは彼女なりの村瀬たちに対する信頼の現れなのかもしれない。

 

やがて、目的の病室の前にたどり着いた二人。

 

良馬がノックをして静かにドアを開けようとした、その瞬間だった。

 

「おらぁっ!!これが俺のレイズだ!! ビビって降りるなら今のうちだぞ!」

 

「へっ、舐めるなよ、シルバー! こっちのカードを見たらひっくり返るぜ!」

 

「フンッ……フンッ……! まだまだ……こんなモンじゃ筋肉が鈍っちまう……!」

 

病室の中から、怪我人とは思えない野太い怒声と重い金属が擦れるような音が漏れ聞こえてきた。

 

良馬とジュリアは顔を見合わせて、恐る恐る病室の扉を全開にする。

 

そこには、二人の予想を遥かに裏切る光景が広がっていた。

 

頭や腕に痛々しい包帯を巻き、点滴の管を繋がれているにもかかわらず、ベガ小隊のシルバー、シュナイダー、ホセがベッドを囲んで熱中しながらポーカーに興じていた。

 

そして病室の奥では、隊長の村瀬がベッドの上であぐらをかき、ギプスで固定されていない方の腕で、巨大なダンベルをリズミカルに持ち上げて筋力トレーニングを行っていたのである。

 

「……む、村瀬隊長?」

 

良馬が呆然と声をかけると、村瀬はダンベルを下ろし、ニカッと豪快な笑みを浮かべた。

 

「おおっ、月村じゃないか!?それにジュリアもわざわざ見舞いに来てくれたのか!?」

 

「え、ええ……見舞いに来たつもりだったんだが、どうやら心配はなかったようだな」

 

良馬は肩から力が抜けるのを感じながら、思わず苦笑した。

 

アイアンベルガーの惨状と救助した際の村瀬の状態を見て、最悪の事態すら覚悟していたというのに、この生命力はどうだ。

 

「ふふっ、流石は自称『宇宙一の猛者』ね」

 

ジュリアもまた、口元に手を当てて上品に笑いをこぼした。

 

「へっ! 俺たちベガ小隊が、あんな偽物の砲撃ぐらいでくたばるもんかよ……とは言っても、流石にドクターストップがかかっちまってな。退院許可が下りるまでは、こうして鈍らないように体を鍛えておくしかねぇのさ」

 

村瀬はそう言いながら、ドンッと自分の厚い胸板を叩いた。

 

しかし、その顔に一瞬だけ悔しげな影が差す。

 

「……だが、あいつの火力は本物だった。俺たちのアイアンベルガーの装甲を、まるで紙切れみたいにぶち抜きやがった。……月村、あのブラック・ワンとかいう化け物、シリウス小隊やアンタたちの二号列車でも、正面からやり合えばタダじゃ済まねぇぞ」

 

歴戦の勇士である村瀬の言葉には、確かな重みがあった。

 

「分かっている。奴の強大な火力とシールド……まともに撃ち合えば分が悪い。だが、打つ手がないわけじゃない」

 

良馬の瞳に静かな闘志が宿る。

 

「今はバルジ隊長たちが、奴の足取りや弱点を探っている。ビッグワンの修理が終わり次第、必ず我々があの偽物を叩き潰し、君たちの借りを返してみせる」

 

「ああ、頼んだぜ。俺たちの誇りを穢したあの真っ黒な野郎に本物のSDFの、そして地球の軍人の意地ってやつを見せつけてやれ!」

 

村瀬は良馬に向けて、力強く拳を突き出した。

 

良馬もまた、その拳に自分の拳をコツンと合わせ、固い約束を交わす。

 

「約束しよう……だから村瀬隊長たちは、一日も早くその『宇宙一の猛者』の体を完全に治すことだ」

 

「へへっ、言われるまでもねぇよ!」

 

病室には再びタフな男たちの笑い声が響き渡った。

 

満身創痍でありながらも決して折れることのない彼らの闘志は、これから待ち受ける決戦に向けて、良馬の心にさらなる熱い炎を灯すのだった。

 

「それにしても、心配して損をしたとは、まさにこの事だな」

 

良馬は呆れたように息を吐き出しながらも、その口元には自然と安堵の笑みが浮かんでいた。

 

激しい戦闘の爪痕を身に受けながらも、彼らの心は少しも折れてはいない。

 

その逞しさが、今は何よりも頼もしく、嬉しかった。

 

「そういえば、村瀬隊長。見舞いの品を持ってきたんだ。受け取ってくれ」

 

良馬はそう言うと、手提げ袋から色鮮やかなフルーツの盛り合わせを取り出し、ベッド脇のテーブルに置いた。

 

急遽ディスティニーの市場で手配した瑞々しい果物が籠いっぱいに盛られている。

 

「おおっ、こいつは美味そうだな! 気が利くじゃねぇか、月村」

 

村瀬は目を輝かせてフルーツ籠を覗き込んだ。

 

「本当は……前回別れる時に約束した通り、地球産の美味い酒をドンと持って来たかったんだが‥‥」

 

良馬は少しだけ申し訳なさそうに肩をすくめた。

 

「流石に、重傷人にアルコールを飲ませるわけにはいかないと言う事で、ドクターストップがかかっているなら尚更だ」

 

「ちぇっ、そりゃあ残念だ。この筋肉の痛みには、アルコール消毒が一番効くんだがなぁ」

 

村瀬が大げさに溜息をついて見せると、良馬はふっと笑った。

 

「まぁ、安心してくださいな、約束通り、とびきり美味い日本酒をはじめとし、地球中の銘酒をたっぷりと持って来た。お預けなのは今だけだ。退院した暁には、嫌というほど飲ませてやるさ」

 

「本当か!? そいつは楽しみだ! 早くこのギプスを叩き割って、退院しねぇとな!」

 

村瀬の顔に真剣な喜びが走る。

 

良馬は傍らで微笑ましく見守っていたジュリアへと視線を向けた。

 

「ジュリア隊長にも、地球産の上等なワインとシャンパンを用意してきました。こんな物騒な事件が片付いて、全てが無事に終わったら……その時は、一緒に祝杯をあげてくれないか?」

 

「まあ……!」

 

突然の申し出に、ジュリアは少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに花が咲くような美しい笑みを浮かべた。

 

「嬉しいですわ、月村司令。ええ、必ず……その日を楽しみにしています」

 

優雅に微笑むジュリアと、照れくさそうに頷く良馬。

 

だが、そんな穏やかな空気を切り裂くように、背後から野獣のような叫び声が上がった。

 

「おいっ! そのメロンは俺が狙っていたんだぞ! 手ぇ出すな!」

 

「馬鹿野郎、早い者勝ちに決まってんだろうがぁ! いただきだ!」

 

「ああっ、俺のイチゴが!? お前ら、少しは怪我人を労われっての!」

 

振り返ると、ベガ小隊の面々がテーブルの上のフルーツ盛り合わせを巡って、血で血を洗うような激しい争奪戦を繰り広げていた。

 

包帯姿のシルバーがリンゴを奪い取れば、隣のシュナイダーがそれを横取りし、さらにはホセがブドウの房を丸ごと口に放り込もうとしている。

 

「こらっ、お前ら! 隊長の俺を差し置いて、美味いとこばっかり持っていくんじゃねぇよ!そのバナナは俺のだ!」

 

あぐらをかいていた村瀬までもがベッドから身を乗り出し、一本しかない腕を必死に伸ばして参戦し始めた。

 

「わははははっ! 隊長、隙ありぃ!」

 

「うおぉぉっ、俺のバナナがぁぁっ!!」

 

病室は一瞬にして、戦場さながらの騒ぎに包まれた。

 

点滴の管が揺れ、ギプスがベッドの柵にぶつかる音と男たちの笑い声と怒号が入り混じる。

 

「……ジュリア隊長。本当に、彼らは病人なのでしょうか?」

 

あまりの惨状(?)に、良馬が呆気にとられたように呟く。

 

「ええ、間違いなく、宇宙一元気な病人たちよ」

 

ジュリアは肩を揺らして笑いを堪えきれなかった。

 

偽ビッグワンの脅威は未だ去らず、銀河鉄道の未来は暗雲に包まれている。

 

しかし、この病室に満ち溢れる強靭な生命力と明るさを見ていると、どんな絶望的な状況であっても、彼らと共になら必ず乗り越えられると、良馬は確信するのだった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

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