メーザーは出たのに、その存在が完全に消えているデストールはきっと悔しがっているかもしれませんね。
双子座宙域、そしてその後ろに広がるアステロイド帯を抜けて、次なる目的地である牡牛座アルデバラン宙域に向けて大ワープを行った ヤマト と すくね。
しかし、大ワープ中に異常な振動がヤマトを襲った。
宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋
「な、なんだ!?」
突然の振動に古代が声をあげる。
「イレギュラー発生!!航行用安全装置が作動しました!!」
太田がこの異常振動の原因を言う。
「このままじゃまずい!!強制ワープアウトするぞ!!」
島はこのままワープ状態を続けるのは危険と判断し、強制的であるがワープアウトを行おうとする。
そんな島に、
「大丈夫なんですか!?大ワープ航行中の強制ワープアウトなんて、初めてですよ!?」
南部が島に初めての試みに平気なのか?と、訊ねる。
「仕方ないだろう!!みんな、何かにつかまっていろ!!太田!!座標を送るから、減速ルートの確保を頼む!!」
「りょ、了解!!」
その後、一番大きな振動を最後にヤマトは強制ワープアウトを行った。
「つ、通常空間を確認‥‥緊急ワープアウト‥‥成功」
ヤマトは何とか無事にワープアウトに成功した。
すくね の方もヤマト同様、強制的にワープアウトを行い、何とか無事にワープアウトを成功させた。
古代が三木に通信を入れると、三木は特に問題ないと伝えてきたので、古代は三木のその言葉を信じて通信をきった。
しかし‥‥
ヤマトとの通信をきった すくね の艦橋では、乗員が焦りの表情をして機器を操作していた。
宇宙巡洋艦 すくね 艦橋
「どうだ?‥‥様子は?」
「ダメです‥‥エンジンに大規模な破損が起きており、何度試しても出力のコントロールがおぼつきません‥‥現状での航行はどうにか可能ですが、もうこれ以上の大ワープは無理ですね‥‥修理も‥‥おそらく不可能です」
すくね は本来ならばドック入りをしなければならない程の損傷を機関に起こしていた。
戦艦よりも強度が劣る巡洋艦の方では、その影響がすぐに形となって現れたのだ。
「そうか‥‥しかし、ヤマトには伝えられん‥‥彼らの足手まといになってはならんのだ‥‥」
三木は自艦の状況をヤマトに秘匿した。
だが、この行為が後の三木達、すくね の乗員の運命を決定付けた瞬間でもあった。
しかし、三木自身も‥‥いや、この時点ではヤマト乗組員を含む皆がヤマトにも既に異常が出始めている事には気がつかなかった。
「それにしても妙な場所で足止めを食らっちゃいましたね‥‥アルデバラン星域までは一直線で行けると思ったのに‥‥」
観測された宇宙海図を見ながら太田が少し戸惑いながら言う。
「仕方ないさ。宇宙には、地球からまだ観測されていない宙域が山ほどあるんだ」
南部が割り切った様に言う。
そして、ヤマトはこのイレギュラーの原因解明に入った。
その原因は、まだ地球から観測されていない二つの星とその間を流れる宇宙気流によるものだった。
地球から観測されていない星系なので、当然ヤマトの宇宙海図にも記載がされていない。
もし、あの時緊急ワープアウトをしていなければ、ヤマト と すくね はあの星のどちらかに突っ込んでいたかもしれなかった。
ヤマトの乗組員たちにとってこの二つの星も宇宙気流も予想外のイレギュラーであった。
しかし、この宙域は暗黒ガスが多く、その影響で地球からは観測できなかったので仕方がなかった。
宇宙気流の中には物凄い流れのモノもあるが、ヤマトの推進力ならば、渡れるとヤマトの乗組員たちはこの時はそう思っていた。
しかし、暫く通常航行していたヤマトに異常が出始めた。
徐々にエンジンの出力が落ち始めたのだ。
それは先程の緊急ワープの影響が機関に出始めた事を物語っていた。
そこで、ヤマト と すくね は気流圏の手前で停止、ヤマトは艦の総チェックに入った。
しかし、運が悪いことにその姿は今回の敵である彗星帝国軍に探知されることとなった。
ヤマトを捕捉したのはミサイル艦を主力とした彗星帝国軍第一戦闘艦隊、特殊ミサイル艇師団の分艦隊だった。
分艦隊を指揮するデストールは上官である艦隊司令のゴーランド提督に報告した。
彗星帝国軍第一戦闘艦隊、特殊ミサイル艇師団 旗艦 ミサイル艦 ルーベルグⅢ 艦橋
「ゴーランド提督!!先遣隊のデストール副司令より、ヤマトと思しき艦影を捉えたとの報告が入りました。どうやら、気流星団の前で停止している模様です」
「ヤマト‥‥ナスカ艦隊から連絡のあったあの艦か‥‥ふははは!!演習中の我が艦隊に出くわすとは運の悪い奴等だ。デストールの奴に下令!!まずは、挨拶代りにミサイルでもくれてやれ!!」
「はっ!!」
ゴーランドの命を受けた副司令官のデストールは早速ヤマトに向けて長距離ミサイルの発射準備を行った。
ヤマトは自分たちがまさか敵に見つかった事を知る由もなく、一時、行き足を止めて艦の総チェックを行いその結果、艦の至る所に損傷がある事が判明した。
その原因はワープ空間を抜け出る際、艦全体に力の歪みがかかってしまったことが原因だった。
しかし、真田曰くこの程度で済んだのは幸運だと言う。
ヤマトはまず、足である波動エンジンの応急修理に取り掛かった。
修理の間、ヤマトは艦を動かす事が出来ないため、乗組員たちは敵が来ない事を祈り、そして願った、
しかし、そのヤマトは既に敵に探知されており、デストールはヤマトに向けて大型の長距離ミサイルを放っていた。
放たれたミサイルはヤマトのレーダーですぐに探知された。
ヤマトは修理中のため、動かす事が出来ない。
やむを得ず、ヤマトは砲撃によりミサイルを撃ち落そうとするが、エネルギー伝導管の異常で主砲を撃つことが出来ない。
当然、波動砲も発射する事が出来なければ、エンジンの修理中で動かすことも出来なければ、ワープする事も出来なかった。
絶体絶命のピンチの中、ヤマトの至近距離で空間歪曲反応があった。
ヤマトの乗組員たちは一瞬、敵かと思ったがそれは小ワープをしてヤマトの前面に立ちはだかった すくね のモノだった。
宇宙巡洋艦 すくね 艦橋
「ここは我々が食い止めます!!その間に艦の修理を!!」
三木はヤマトにミサイルの処理は自分たちに任せ、艦の修理を優先させるように伝える。
「しかし‥‥」
スピーカーから古代の焦るような声がしたが、突如通信が途切れた。
「通信機器にも異常発生!!通信切れます!!」
その通信を最後に すくね の通信機にも異常が発生し、ヤマトとの交信も不能となった。
(この艦にはもう地球に帰還する余力すら残ってはいない‥‥覚悟は出来ていますよ‥‥古代さん)
三木たち すくね の乗員はこの時点で既に自分の死を覚悟していた。
すくね は残り少ないエネルギーを全て火器管制システムにつぎ込み、ミサイルを撃ち落としていく。
しかし、ミサイルの数が余りにも多い‥‥。
その間にも、すくね のエネルギーはドンドン無くなっていく。
「エネルギー残量‥‥5%‥‥機関、停止します!!」
遂に すくね は機関を動かすエネルギーさえも底をついた。
「残る道は‥‥一つだ‥‥」
三木は真剣な顔で艦橋を見渡す。
「分かっているつもりです‥‥」
艦橋員は誰もが三木のとる最後の手段を感じ取った様子で、乗員は全員覚悟が出来ている表情をしていた。
三木は最後の手段で、すくね の艦体そのものを使い、文字通りヤマトを守る盾となった。
ミサイル着弾の瞬間、すくね の乗員は全員、ヤマト に向けて敬礼をした。
(月村艦長‥‥すみません‥‥どうやら、貴方と再び会えそうにありません‥‥さようなら‥‥月村艦長‥‥地球の事を頼みましたよ‥‥)
やがてミサイルは すくね の第二砲塔と艦橋下部の付近に命中し、すくね は船体が真っ二つに割れ轟沈した。
艦長の三木を始めとして、生存者は一人も居なかった‥‥。
宇宙戦艦 まほろば 医務室
(‥‥さようなら‥‥月村艦長‥‥)
「ん?」
三木の声が聞こえた様な気がした良馬は辺りを見回す。
「どうしました?」
リニスが良馬の行動を疑問に感じたのか、訊ねてくる。
「い、いや‥‥今、三木君の声が聞こえた様な気がしたんだけど‥‥」
「三木さんの?」
「ああ」
「そうですか?私には聞こえませんでしたけど‥‥」
「そ、そうか‥‥気のせい‥‥かな?」
良馬は緑茶が注がれた湯呑に視線を移すがその心境はどうにも不安であった。
それは両親の時、冥王星海戦の時の雪風と冬月が戦場に残った時と似た感覚であった。
(まさか、三木君の身に何かが‥‥)
良馬は三木の身を案じたが、彼が三木の事を知るのはもう少し先になってからのことだった。
「うっ‥う~ん‥‥」
それから暫くして、眠っていたギンガが目を覚ました。
「気分はどう?ギンガ?」
リニスが寝起きのギンガに訊ねる。
「リニス‥‥さん‥‥私‥‥」
「少し疲労が溜まっていた様ね、ギンガ」
「ギンガ‥‥」
良馬はベッドにいるギンガに声をかける。
「良馬さん‥‥」
「初めての戦闘や救助で色々な体験をして、色々と思う事があるかもしれないけど、君は今後どうする?」
「どう‥とは?」
「軍を退役するか、艦隊勤務から外れて地上勤務に移るか、それともこのまま艦隊勤務を続けるかだ」
「‥‥」
良馬の問いにギンガは黙ってしまった。
あの時の夜、良馬が何故、沢山のお酒を飲んでまで無理矢理眠ろうとしていたのか、今のギンガならばその行動が分かる気がした。
管理局の次元航行艦乗りたちも同じ気持ちなのだろうか?
ギンガがそう思っていると、
「悲しむ気持ちは分かる。でも、宇宙の海に一度出た者は、そこで命を落とす事を覚悟しておかなければならない。そして、残された者は、命を散らせて逝った者の心を明日に伝えていく義務がある‥‥宇宙戦士の心は、その肉体が滅んでもなお、生き続けるものなんだよ‥‥まぁ、これは土方さんの受け寄りだけどね」
良馬が、以前土方から教えられた宇宙戦士の心得をギンガに教える。
「それを踏まえて、もう一度聞く。ギンガ、君はこの後どうしたい?軍を辞めるにしても、配置転換を望むにしても、そしてこのままこの艦に居続けるのも全て君次第だよ」
「私は‥‥最初、この世界の人のために役立ちたいと思い、軍に志願しました。でも、戦闘と目の前で人が死んで‥‥正直怖いと思いました」
「うん」
「でも‥‥」
「でも?」
「でも、私はこの艦を降りません!!」
ギンガはしっかりと意思を持った瞳で良馬を見る。
「私が軍を辞めたりすれば、それはあの人の死を無駄にする様なことに思えるんです。それに、あの人は私にこのペンダントを託しました。ミッドに居るあの人の大切な人にコレを渡すか、信頼できるミッドの人にコレを託すのは私の義務です。こうして管理局の艦と会えたのですから、宇宙に居ればきっとまた会える気がするんです!!だから、私は艦を降りませんし、軍も辞めません!!」
ギンガは今回の件でまた一歩、宇宙戦士として成長した。
その頃、気流星団にて、すくね の尊い犠牲によって、機関修理を終えてピンチを乗り切った ヤマト は すくね の乗員に対し、黙祷を捧げ、再び歩み出した。
メッセージの謎を追って‥‥。
気流星団を航行中のヤマトに例のメッセージが入電した。
内容は鬼気迫る声で、「早く」 「白色彗星」 「助けて」 等の内容で、島は急いで向かおうと主張した。
古代は雪にメッセージの来た方向に何があるのか調べてもらうと、メッセージは宇宙気流の中から聞こえてくると言う。
真田はメッセージの内容と送信してきた方向から、どうも腑に落ちず、このメッセージが偽物なのではないかと、疑い始めた。
しかし、真田以外の者は特に不審を抱くことなく、真田の進言を聞かず、『ヤマト』は宇宙気流の中へと突っ込んで行った。
あまりにも気流の流れが激しいため、古代は針路を変更した方がいいのではないかと、島に言うが、彼は『大丈夫だ』の一点張りで気流圏内を突っ切ろうとする。
やがて、気流圏内を航行中、真田はこの気流の流れがおかしいことに気が付く。
その理由は宇宙気流で流されているアステロイドがまるで海峡のように形成されている事、
流されているアステロイドの移動ベクトルを計算した結果、左右両側のベクトルが中心に向かっている事の二点で、それはまるで集まっていると言うよりも、吸い寄せられている様だった。
そしてその中心には異常空間反応があった。
パネルに投影すると、そこにはサルガッソーの入り口があった。
サルガッソーは移動性のブラックホールの様なモノで、近くにあるモノをなんでも吸い込んでしまう。
別命『宇宙の墓場』と言われている危険宙域だ。
この宙域の危険性はイスカンダルへの航海にて、ヤマトの乗員はちゃんと理解している、
何故ならば、ヤマトはイスカンダルへの航海中、次元断層に落ちた経験があるからだ。
そして例のメッセージはそのサルガッソーの中から送信されていた。
此処に来て、ヤマトは先ほどまで送信されてきたメッセージが偽物であり、これはヤマトをサルガッソーへ引き込むための敵の罠だと言う事も察した。
しかし、気が付いたときは既に手遅れで、ヤマトはサルガッソーの中へと引きずり込まれてしまった。
それを確認したデストールは、ゴーランドへその旨を報告した。
彗星帝国軍第一戦闘艦隊、特殊ミサイル艇師団 旗艦 ミサイル艦 ルーベルグⅢ 艦橋
「ゴーランド提督、デストール副司令より通信です。どうやら、上手くヤマトをサルガッソーへと誘い込む事に成功した模様です。我々も現地に向かいますか?」
「放っておけ、デストールの艦隊も我々同様、かなりの重装備の艦隊だ。サルガッソーにはまり込んで身動きの取れない艦など、赤子の手をひねるよりもたやすく沈められるわ!!」
「はぁ‥‥」
ゴーランドはヤマトの処理を全て副司令官のデストールに一任した。
デストールはサルガッソー内にミサイルを撃ち込み、ヤマトに止めをさそうとしたが、これがかえって、サルガッソーの中には出口もあるのではないかという推測を生む結果となり、ヤマトはサルガッソー無事を脱出した。
ヤマトがサルガッソーから、脱出できたのは、敵がミサイルを撃ってきた事と、出口の位置を知らせてきた本物のメッセージのおかげであった。
島はサルガッソーの中に落ち込んでしまったのは、自分の責任だと深く反省したが、サルガッソーからの脱出にて、名誉を挽回した。
彗星帝国軍第一戦闘艦隊、特殊ミサイル艇師団 先遣隊旗艦 ミサイル艦 ルーベルグⅣ 艦橋
「で、デストール司令!!ヤマトが‥‥ヤマトがサルガッソーから脱出しました!!」
「な、なにぃ!!」
デストールがパネルを見ると、そこには、サルガッソーから無事に脱出し、通常空間を航行するヤマトの姿があった。
「い、いかがなさいますか?」
「‥‥後退だ」
「は?」
「全艦後退だ‥‥サルガッソーでヤマトを仕留められなかったのだ。ここで悪戯に戦闘を行い、艦隊を消耗させる訳にはいかん‥‥この先の宙域にて、ヤマトの航路封鎖を行い、そこで艦隊決戦に望む」
「りょ、了解しました」
デストールは、サルガッソー内でヤマトを仕留める作戦に失敗したのを見て、現宙域を離脱した。
罠の一つを破られたので、後方に移り、そこで新たな罠を張り、ヤマトを待つことにしたのだ。
それにサルガッソーに近い宙域で戦闘をすれば、自分たちが逆にサルガッソーに落ちてしまうのではないかと思ったためであった。
宇宙気流を突破したヤマトに今度は本物のメッセージが入電した。
そのメッセージにはサルガッソーから無事に脱出したお祝いの言葉と、メッセージの発信源の星の名前と送信者の名前が判明した。
メッセージの発信源の星は、テレザート‥‥。
そして発信者はテレサと名乗った。
テレザート‥‥それが、ヤマトが目指す星の名前。
テレサ‥‥それが、ヤマトが会いに行くべき人物の名前。
しかし、メッセージは肝心のテレザートの場所を聞く前に妨害電波によって遮られてしまった。
だが、メッセージが発信された方向は次第にはっきりと分かって来た。
方向さえ分かれば、後はその都度、修正を行い、テレザートを目指すしかなかった。
ヤマトはテレザートへ‥‥テレサの下へとただひたすら急いだ。
そんな中、ヤマトの前方に例のカブトガニに似た艦載機一機が飛行していた。
古代は加藤と山本に出撃命令を出した。
加藤が出撃した後、山本がコスモタイガーに乗ろうとした時、斎藤が山本を殴り、山本が倒れている隙にコスモタイガーに跳び乗り、ヤマトを勝手に出撃してしまった。
加藤がカブトガニに対し無線で警告を入れると、カブトガニは突然攻撃をしてきた。
古代は加藤と斎藤に生け捕りにするように命令した。
加藤は上手く、カブトガニの機関部を撃ち、相手を航行不能にしたが、斎藤は第十一番惑星で部下や仲間を大勢殺された指揮官として、古代の命令には我慢ならず、既に航行不能に陥ったカブトガニに対し、機銃掃射を行い、その結果、カブトガニに乗っていた搭乗員三名の内、二名が死んだ。
しかし、機体自体は破壊されなかったので、加藤は牽引ワイヤーにてカブトガニをヤマトへと運んだ。
この出来事はヤマトの針路上で待機しているデストールの耳にも入った。
「デストール司令。ヤマトの針路封鎖作戦に従事していた第307号艇がヤマトに拿捕されました」
「なに!!」
デストールにとってこれは余りにも悪い知らせだった。
搭乗員が捕虜になり、ヤマトに此方の存在ないし、作戦内容を伝えたら、此方が不利になると考えたのだ。
「それで、捕虜になった者はいるのか?」
「そこまでは、確認できていません」
「‥‥」
デストールは現在、ヤマトが航行しているであろう、前方の宙域を無言のまま睨んだ。
一方、ヤマトでは無事だった搭乗員の身体検査が行われた。
その結果、肌の色は地球人と違うがそれ以外では、この宇宙人(ガトランティス人)は全く地球人と変わらないタイプの宇宙人だと判明した。
その後、尋問が行われたが中々口を割らないこの搭乗員に対し電気ショックを浴びせると言うやや拷問まがいの尋問が行われたが、それでもこの搭乗員は口を割らなかった。
業を煮やした尋問官は佐渡に自白剤を打つ様に頼むが佐渡はそれを拒否した。
また、古代の方も搭乗員の口の堅さに敵ながら感服し尋問を取り止め、佐渡にこの搭乗員の面倒を頼んだ。
医務室にて佐渡は搭乗員に対して、酒を勧め、共に酒を飲みながら、互いの故郷の歌を披露し、両者は楽しく酒を飲み、佐渡はこの搭乗員が心を開いてくれたのだと思った。
やがて、佐渡と搭乗員は酒を飲み過ぎ酔いつぶれた‥‥かのように見えたが、酔い潰れたのは佐渡だけであり、搭乗員は佐渡が眠ったのを確認すると医務室を抜け出した。
そして、自分が乗っていた飛行艇の所在を確認し、どうにかして飛行艇へ戻ろうとヤマト艦内を捜索していると彼はあっさり見つかった。
艦内には警戒警報が放送されたが古代は敢えてこの搭乗員を逃がしてやれ、と命令した。
搭乗員はヤマト乗員のロッカー室から宇宙服とコスモガンを手に入れ飛行艇の下へ戻ると、飛行艇を固定していたワイヤーをコスモガンで焼き切り飛行艇へと飛び乗るとヤマトを後にした。
そして搭乗員は、自らが所属する艦隊‥‥デストール艦隊へと通信を入れた。
「デストール司令、デストール司令、此方特別工作員、メーザー!!デストール司令、応答を!!」
搭乗員こと、メーザーの通信はすぐに上官であるデストールの下へ届いた。
「メーザー、何をしていた?」
メーザーからの通信にデストールは冷たい声でメーザーに対して問うように答える。
「ヤマトを引っ張り出してきました!!直ちに戦闘配備を!!」
メーザーはデストールの問いに答えると、
「ふふふふ‥‥メーザー。一工作兵でしかない貴様が指揮官である私に命令をする気か?貴様はヤマトの捕虜になっていたのだろう?」
デストールはメーザーの答えを嘲笑うかのように問い返す。
「し、しかし、私は機密に触れる事は一切‥‥」
メーザーが釈明をするも、
「メーザー、もういい!!どこにでも好きな所へ消え失せろ!!」
と、デストールは捕虜となった自分の部下の帰還を拒み、この場から失せろと言い放った。
この広大な宇宙に独りどこにも行くあてもなく彷徨う。
それは事実上「死ね」と言っている事と同じだった。
「な、何故です!?」
「彗星帝国が捕虜になった者を甘い顔で迎え入れると思ったのか?」
「デストール司令!!」
「無駄だ!!規律は変えられん!!さっさと失せろ!!撃ち落されないのは俺からのせめてもの情けだ!!」
上官から帰還を拒まれても諦めがつかないのか、メーザーは艦隊の周囲を飛び回った。
デストールとメーザーの間でそのようなやり取りが行われている中、ヤマトはデストール艦隊に接近していた。
そのやり取りを見た古代はメーザーに「自分たちは君を戦士として受け入れる用意がある」と通信で送る。
しかし、メーザーは、その受け入れを拒否し、
「大ガトランティスに栄光あれ!!」
ヤマトに特攻して戦死した。
ただ、メーザーは艦橋への特攻コースではなく、途中で針路を変えてヤマト左舷の側面へ特攻した。
あのまま艦橋へ特攻すれば、艦橋員に多数の死傷者を出し、ヤマトは機能的に致命傷を免れず、そこをデストールの艦隊が総攻撃をかけばヤマトは撃沈されていただろう。
では、何故彼はその行動を取らずに致命傷としては浅い側面へ特攻したのだろうか?
その理由は今となっては誰にも分からないが、もしかしたらあの行動はメーザーなりの敵に対する配慮だったのかもしれない。
すくね の犠牲とメーザーの死‥‥それらの弔い合戦だと意気込むヤマト。
主砲の射程距離に入った途端、デストール艦隊に猛攻を加えて中央突破をはかる。
その戦闘の中で一発のショックカノンが、
「直撃弾!!来ます!!」
「か、回避!!」
デストール座乗のミサイル艦へと迫る。
「だ、ダメです!!間に合いません!!」
デストールの眼前にはヤマトから放たれたショックカノンが迫り、
「ぐわぁぁぁぁぁぁー!!」
デストールが座乗するミサイル艦は木っ端微塵になった。
彗星帝国軍第一戦闘艦隊、特殊ミサイル艇師団 旗艦 ミサイル艦 ルーベルグⅢ 艦橋
デストール艦隊の全滅の報は、後方に居たゴーランドの下に知らされた。
「ゴーランド提督、デストール副司令率いる先遣隊が全滅しました」
「なにぃ!!‥‥ふっ、ハハハハハハ‥‥‥」
デストール艦隊の全滅の報を聞いたゴーランドは最初驚いている様子だったが、急に高笑いをしだした。
「提督?」
「気に入ったぞ、ヤマト!!ナスカの坊やデストールの若造では相手にならぬか。かくなる上は、このわし自らが相手になってやるわ!!この宙域に展開している全艦隊に攻撃命令を出せ!!目標、ヤマト!!本艦と直掩艦隊だけは気流星団の出口でヤマトを待ち構える。破滅ミサイルの発射準備を整えておけ」
「破滅ミサイル‥‥!?しかし、提督、あのミサイルの威力は確かに強力無比ですが、まだ実戦では未使用の実験兵器です」
ゴーランドの副官は、ゴーランド艦隊の切り札と目される破滅ミサイルと呼ばれる大型のミサイルの使用をためらう。
「かまわん。もし、ヤマトが包囲艦隊の攻撃をくぐり抜け、我が艦隊まで辿り着いたなら‥‥その時は、ヤマトこそが破滅ミサイルの威力を最初に味わう艦となるわ!!‥‥フハハハハッ!!」
ゴーランドは意気込んでヤマト撃破の作戦を展開しようとしていた。
しかし、そんなゴーランドの下へ、一通の通信文が届いた。
「ゴーランド提督。彗星帝国艦隊司令部から緊急通信です」
「緊急通信?内容は?」
「はっ、此方です」
通信員は恐る恐る通信文が書かれた紙をゴーランドに渡す。
通信文に目を通すゴーランドの顔が次第に険しくなっていく。
「なんだ!?この命令は!?何かの間違いではないのか!?」
そしてゴーランドは、通信文を渡してきた通信員に怒鳴る。
余程頭に来たのか、手に持っている通信文が書かれている紙はくしゃくしゃになっている。
「か、確認した所、間違いはありません」
「ぐっ‥‥」
通信員は怯えながらもこの通信が間違いでは無く、正規なモノであると言う。
ゴーランドが呼んだ通信文には以下の内容が書かれていた。
『第一戦闘艦隊は直ちに気流星団における演習を中止し、テレザート宙域へ赴き、テレザート方面軍司令官の指揮下にはいられたし』
だった。
これが彗星帝国艦隊総司令、ゲーニッツの下した命令ならばゲーニッツに通信を入れてこの命令を撤回することは出来ただろう。
ゲーニッツは彗星帝国ガトランティスの艦隊総司令と言う役職についてはいるが、自らが戦場へと赴くことは無く、彗星帝国本体から各戦線に指示を送るだけの男なので、強い口調で、「現場の人間にしか分からない事がある」等と言えば、この命令を取り下げさせる事は出来たかもしれない。
しかし、今回の命令はゲーニッツではなく、国家元首である大帝からの命令故、ゴーランドは撤回を願い出るわけにはいかなかった。
「ぐっ‥‥ぬぅ~‥‥」
ゴーランドは顔を悔しそうに歪め通信文の書かれた紙を握りつぶす。
「提督‥どうなさいますか?」
副官が今後の艦隊方針を訊ねる。
「どうも、こうもない。大帝陛下、御自らのご命令では従うしかあるまい。全艦回頭、針路、惑星テレザート」
ゴーランドの命令の下、艦隊は艦首を回頭し気流星団から去っていった。
「ヤマトめ‥‥命拾いをしたな‥‥しかし、次に会う時がお前の最後だ‥‥」
ゴーランドは去り際、ヤマトに向けてそう捨て台詞をはいた。
ゴーランド提督の艦隊が撤退した頃、彗星帝国ガトランティスでは、艦隊総司令のゲーニッツが、ガトランティス議会総議長のラーゼラーに食って掛かっていた。
「ラーゼラー総議長!!貴官の提案はまったく信じがたい!!艦隊総司令の私を差し置いて、あのような男にヤマト討伐を任せるのだからな!!」
しかし、ラーゼラーはどこ吹く風の様子でゲーニッツをあしらった。
「戦いの基本は情報ですよ。あの男は我々よりもはるかにヤマトの事を熟知している‥‥それだけでも作戦を遂行する価値はあると思いますがね。では、私は失礼しますよ‥‥」
そう言ってラーゼラーはその場から去っていった。
「ぬぅ~‥‥ラーゼラーめ‥‥調子にのりおって!!大帝も大帝だ‥‥!!ラーゼラーのあのような作戦を了承するとは!!」
ラーゼラーと新たに発案され、実行に移されたヤマト討伐計画に思わず愚痴るゲーニッツ。
そこに、
「あら?ゲーニッツ‥‥それは大帝に対する陰口かしら?」
と、冷たい女の声がその場に響いた。
その声を聞いたゲーニッツは思わず身体を震わせる。
ゲーニッツの前に現れたのは、彗星帝国植民惑星支配庁長官兼彗星帝国軍総参謀長のシファル・サーベラーだった。
彼女は女性ながらも彗星帝国で国家元首の大帝に次ぐ実質的なNo.2の人物である。
「さ、サーベラー総参謀長!!い、いえ、陰口などとは‥‥私は決してそんな‥‥!!」
相手は彗星帝国の実質的なNo.2の人物‥‥。
艦隊総司令と言う立場ながら彼女の方が地位も権力も上で、彼女の機嫌を悪くすれば、艦隊総司令と言えど、冤罪をかけられ死刑にされるかもしれないと思ったゲーニッツは必死に弁解を図る。
「どうかしらね?‥‥でも、お前の気持ちも分からない訳でもないわ。私もお前と同じ‥‥ラーゼラーの作戦も、あの男の事も信用してはいないのよ‥‥大帝はあの男の事をいたくお気に入りになられたようだけどね」
「やはりそう思われますか!?私の虎の子の一つであるゴーランド艦隊を総撤退させると言う暴挙ですからな‥‥」
「そう言う問題ではないのよ。もっと頭を使いなさい、ゲーニッツ。この偉大なる彗星帝国ガトランティスの中核部にあの男の様な異分子をまぎれこませてはならない‥‥それが重要なのよ。あの男は、いずれ帝国に害をなすに違いないわ‥‥」
「さすがはサーベラー様。そこまで先を見通しておられるは‥‥」
サーベラーの先見の目に対し感服したようにゲーニッツはサーベラーを褒めるようにして機嫌をとる。
「ゲーニッツ‥‥ラーゼラーとあの男の事は私に任せてもらえないかしら?」
「それはかまいませんが‥‥大帝をどう説得されるのです?大帝はあの男をいたく信用しておられます」
「でも、このままだと、お前の艦隊総司令と言う地位もあの男に奪われることになるかもしれないのよ?‥‥私にお任せなさい。悪い様にはしないわ‥‥ゲーニッツ」
サーベラーは微笑を浮かべ、ゲーニッツに対してそう言うが、彼女の微笑はまさに魔女の微笑と言っても過言ではなかった。
「はっ、これで気にやむことなく艦隊指揮に戻れますな、ハハハ‥‥では、失礼します、サーベラー様」
ゲーニッツはサーベラーの言葉と微笑を信じ込んだ様子でやや上機嫌でその場を後にした。
去っていくゲーニッツをサーベラーは冷たい目で見ていた。
(ふん、無能め!!お前の立場など、どうでもよいわ。問題はあの男‥‥大帝に気に入られ過ぎている‥‥それが許せない!!大帝は‥‥大帝は私だけのものなのに‥‥!!)
サーベラーはただ単にあの男と呼ばれる男に対して嫉妬していただけであった。
しかし、彼女の嫉妬は腸が煮えくり返る程のモノだった。
女の嫉妬は恐ろしいモノである。
その頃、ヤマトはようやく気流星団の出口まで来た。
此処には、本来ゴーランド提督率いるミサイル艦隊が布陣していたのだが、既にゴーランド艦隊は撤退しており、何事もなく、通過する事が出来た。
気流星団を抜けていく際、古代は展望室から遠ざかっていく気流星団を見みながら思いに耽っていた。
古代が思っていた事‥‥。
それは他ならぬ、三木を始めとする すくね の事、敵ながらも勇敢に散って行ったメーザーの事だった。
古代がそれらの事に思いふけっていると、後ろから雪が来て、古代に声をかけた。
「‥‥」
「古代君‥‥」
「‥‥雪か」
「何を考えていたの?」
「‥‥」
「‥‥ごめんなさい‥わかっていたわ。三木艦長の事ね‥‥」
流石、古代の婚約者(フィアンセ)。
古代の表情だけで、今、古代が何を思っているのかを当てた。
「ああ‥‥でも、悲しんでいたわけじゃない。徳川さんの言った通りさ。三木さんは死んでなんかいない。あの人の信念と心は、俺たちの中に引き継がれていくんだ‥‥沖田艦長と同じように‥‥俺が生きている限り、俺の中では誰も死なない‥‥逆に俺が死んでも、また別の誰かの中に俺の心は引き継がれていくんだ‥‥」
「もう、死ぬなんて、そんな縁起の悪いこと言わないで‥‥ね?」
「ああ、ゴメン」
古代は苦笑いをしながら雪と共に遠ざかっていく気流星団を見つめていた。
再び航海の中、仲間を失いながらも、旅を続けるヤマト。
しかし、ただ失ったわけではない。
宇宙戦士の心は、死してなお、志を同じくする者の中に受け継がれてゆく‥‥。
母なる宇宙が無限の命を生み出し、永遠に広がっていくように‥‥。