星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回はヤマト側と管理局側の視点の話です。


二十三話 好敵手

 

小犬座プロキオン、双子座ポルックス、カストルを抜け、牡牛座アルデバランへと向かう途中、イレギュラーで地球からは観測されていない気流星団にて、援軍の すくね を失いながらも、ようやく牡牛座アルデバランを経て、ヒアデス星系へと到着したヤマト。

あとは、そこからテレサが待つとされるテレザートまであと少しまでの所に来た。

そのヤマトは現在、ヒアデスの灯台星系を航行していた。

この灯台星系の名前の由来は、ヤマトが勝手につけた名前であるが、それはこの星系の形をそのまま表していた。

ヒアデス星団は星や小惑星の数が多く大ワープは不可能で地道に星の間を潜り抜ける通常航行で進むしかなかった。

ヤマトがヒアデス星団への航路に選んだこの星系の形状は湾状で恒星系が三つ存在した。

そしてその星系は湾の岬や海峡の部分にあたる場所に位置していたため、この様な名前がつけられた。

 

ヤマトが二つ目の灯台星系へと差し掛かった時、ヤマトの周りを沢山の小さな発行体が飛んでいた。

それは宇宙ボタルと呼ばれるモノだった。

見かけは地球に居る蛍そっくりに発光するモノで、一見生物にも見える。

しかし、その実態は放射性のチリの一種と言われ、放射能の濃度が高ければ人体にとってそれは有害な物質となる。

その宇宙ボタルを新米が幾つか捕獲してヤマトの艦内に持ち込んだ。

そこを加藤と山本に見つかり、「念のため、艦長代理と真田技師長に見せておいた方が良い」と言われ、新米は真田の下へ宇宙ボタルを持って行った。

真田は新米と共に宇宙ボタルの放射能レベルを測定するため、ヤマト艦内の研究室へと運び調査に入った。

そして調査した結果、この宇宙ボタルは放射性のチリではなく、特殊な発光性の宇宙バクテリアである事が判明した。

宇宙ボタルの正体がバクテリアである事が判明したが、これが安全なバクテリアなのか、それとも人体に対して有害なバクテリアなのかは、まだ確認できていない為、宇宙ボタルは艦内持ち込み禁止となったが、空間騎兵隊の斎藤も宇宙ボタルを艦内に持ち込んでおり、古代とアナライザーは斎藤に宇宙ボタルを捨てる様に言うが、斎藤は宇宙ボタルを捨てる気は無く、古代と斎藤が取っ組み合いを始めそうになった時、突如、ヤマト艦内の重力がゼロになった。

古代はこの原因を確かめるべく、苦労しつつ第一艦橋に戻り、真田に原因を聞くが、真田は第一艦橋にはいなかった。

真田の代わりに彼からこの原因を聞いた島が古代に原因を話した。

それによると、あの宇宙ボタルは放射性の有害物質はなかったが、その正体は鉄を捕食する特殊なバクテリアで、ヤマトの重力コントロール装置の一部がそのバクテリアによってダメージを受けた為であると判明した。

そして、艦内の重力がゼロと言う事は格納庫も当然重力がゼロと言う事で、コスモタイガーも発進不能と言う事態に陥った。

 

重力が無く、戦闘力が半減したヤマトに突如、どこからともなく艦載機部隊がヤマトの至近距離に現れ攻撃を行ってきた。

 

「レーダーはどうした!?捕捉しなかったのか!?」

 

古代はレーダー担当の雪に問うが、

 

「レーダーには、何も映りませんでした!!」

 

雪の答えは、攻撃を受けるその瞬間まで反応が無かったと言う。

 

「真田さん、重力装置の修理はまだかかりますか?」

 

島が真田に重力装置の修理状況を問う。

 

「幸い軽傷だ。もうすぐ終わる。だが、他の部分が心配だ。かなりの部分を食い荒らされているからな」

 

「真田さん、それよりも今、突然現れた敵から攻撃を‥‥」

 

古代がヤマトの現状を真田に報告する。

 

「ああ、俺もついさっき、確認した。俺の見る所、あれは潜宙艦の様に次元潜行していたわけではない。かといって、ワープとも違う。小型の艦載機にはワープ装置なんか積めんからな‥‥考えられるのは‥‥‥」

 

真田が突然現れた艦載機の出現原因の答えを言おうとした時、またも艦載機がヤマトの至近距離に現れ、再び奇襲攻撃を行ってきた。

 

「間違いない‥‥あれは瞬間物質転送機で送り込まれてきているんだ。それにあの艦載機の形状‥‥かつて七色星団で見たのと同型の艦上攻撃機だ!!」

 

真田の言う通り、突然ヤマトの至近距離に現れ、奇襲攻撃をしてきた艦載機は第十一番惑星から今まで戦ってきたカブトガニこと、ガトランティスの艦載機、デスバ・テーターではなく、ガミラスの空間艦上攻撃機DMB87 スヌーカであった。

 

「そんな、まさか‥‥」

 

島が瞬間物質転送機とスヌーカからかつて自分たちが戦った星間国家の国家元首の名前が脳裏を過った。

 

「瞬間物質転送機‥‥ドメル戦法‥‥!?」

 

「ガミラスの艦載機!?そんなっ!?」

 

南部と太田が島の脳裏に過ぎった相手の戦法と名前を口にする。

しかし、この時点ではガミラスの残存艦隊が死亡した国家元首の敵討ちに現れたのかもしれないという可能性もあった。

そこへ、一通の通信がヤマトに入る。

 

「艦長代理、通信が‥‥」

 

「どこからだ!?」

 

「そ、それが‥‥」

 

相原が通信をしてきた相手の名前を見て、戸惑いが隠せない様子。

 

「どこからなんだ!!相原!!」

 

そんな相原に古代は相手の名前を早く言えと言わんばかりの大声で、通信源を訊ねる。

 

「で、デスラーです!!」

 

「なに!?」

 

通信を送って来た人物の名を聞き、古代は驚愕した。

瞬間物質転送機とスヌーカで相手がガミラスだと十中八九予想は出来た。

古代は他のヤマトの乗組員たち同様、デスラーの仇を撃ちに来たガミラスの残党かと思っていたが、通信を送って来たのが、そのガミラスの指導者だった事は十分驚愕に値した。

 

「デスラーが‥‥」

 

「生きていただって‥‥」

 

「バカな、奴は確かに死んだ筈じゃあ‥‥」

 

「とても信じられん‥‥」

 

艦橋の乗組員達も古代同様、デスラーが生きていた事がとても信じられない様子で困惑している。

そんな中、ヤマトのメインパネルに一人の男が映し出された。

 

「ヤマトの諸君、お元気かな?待っていたよ。また会えて光栄の至りだ」

 

艦橋の大モニターに映し出された男は紛れもなくガミラスの総統、アベルト・デスラーその人だった。

 

ガミラスの総統、デスラーは遊星爆弾で地球を赤い大地と放射能まみれの星に変え、地球人類をあと一年で絶滅に追いやるも、隣の双子星、イスカンダルの女王スターシアが、イスカンダルまで来るようにと妹のサーシアを地球へ使者として送った。

地球で初めて光速を超えた宇宙戦艦ヤマトは地球から14万8000光年の彼方にあるマゼラン星雲、イスカンダルへと旅立った。

その航海の最中、ガミラスはいくつもの兵器を使い妨害するも、ヤマト艦長、沖田十三の卓越した指揮の前にことごとく破られていった。

そしてヤマトは等々、イスカンダルの目の前まで辿り着いた。

しかし、イスカンダルの双子星ガミラスはガミラス本星をヤマトとの決戦の場とし、ヤマトをガミラスへと引き寄せ、ヤマトとの決戦を行った。

濃硫酸の海に酸性雨、陸上砲台からの砲撃、次第に追い詰められて行くヤマトは起死回生の手で一度濃硫酸の海へと入り、船体が溶ける前に海底火山脈を波動砲で撃ちぬいた。

その結果、ガミラスの地上にある火山という火山は連鎖反応で大噴火を起こし、陸上のありとあらゆる物を溶岩に飲み込んだ。

決戦前、ガミラスの天井都市に移り、指揮をとっていたデスラーは次に天井都市のビル群をミサイルにしてヤマトにぶつける作戦をとった。

当然、ヤマトも反撃し、無差別に天井部の都市に砲撃を行いその一発が天井都市の総統府に命中。

総統府は天井部から崩れ落ち、下に広がる濃硫酸の海へと落ちて行った。

流石のガミラス人でも濃硫酸の中を生きていられる筈がない。

この時、ヤマトの乗組員たちはこれでデスラーは死んだと思った。

そして、イスカンダルにて無事にコスモクリーナーを受け取ったヤマトは地球への帰路へとついた。

しかし太陽系に入ったその時、ヤマトの艦体に見慣れぬ艦が追突してきた。

それはガミラスの天井都市にあった総統府だった。

この総統府、実はただの建物ではなく、天井都市の総統府としての役割の他に総統専用の緊急脱出用の宇宙船でもあった。

デスラーはヤマトの艦内に放射能ガスを送り込み、白兵戦を仕掛けるが、艦内工場で完成されていたコスモクリーナーの力によって、放射能ガスは効力を失いデスラーは一端撤退した。

やがて、ヤマトが地球へ目前の距離まで来ると、デスラーはヤマトに対しデスラー砲(ガミラス式の波動砲)を放った。

ヤマトの乗組員達は真田以外の誰もが「もうだめだ」と絶望し、デスラー砲を撃ったデスラーは「勝った!!」と、思ったが、真田が密かに開発していた空間磁力メッキの力でヤマトはデスラー砲を反射、攻撃を凌いだ。

そしてデスラーは跳ね返ってきたデスラー砲の砲撃によって艦ごと爆死した‥‥と、思われていたが、デスラーはこの時、間一髪で艦外へとその身体を投げ、仮死状態のまま宇宙を漂流していた。

そこを、彗星帝国の長距離偵察機に発見され、ガトランティス本国にて蘇生手術を受け、こうして再びヤマトの前に姿を現したのだ。

 

「デスラー!!貴様!!死んだ筈じゃあ!?」

 

古代はこのデスラーが偽物かと一瞬思ったが、

 

「大ガミラスは永遠だ!!我がガミラスの栄光は不滅なのだよ‥‥そしてこのデスラーもな‥‥」

 

パネル越しでも伝わってくる覇気と闘争心。

それは紛れもなく、デスラー本人であると、直接対峙した古代には分かった。

 

「古代進‥‥誉めてやろう。よくここまで来た‥‥」

 

デスラーは不敵に笑みを浮かべ、古代に語り掛ける。

 

「我々の中には沖田艦長の遺志が生き続けている。例え、どんな苦難にあっても、一歩も退くつもりはない!!」

 

「それにしても、すいぶんお楽しみのようだね‥‥諸君の長旅をお慰めしようと思い、心ばかりの贈り物をした‥‥早速受け取ってもらえたようで恐縮している。せいぜいお楽しみいただきたい。それでは、ヤマトの健闘を祈る‥‥ふはははははは‥‥」

 

デスラーは不気味な高笑いを残し、通信をきった。

 

「デスラーめ‥‥」

 

「宇宙ボタルはデスラーがまき散らしたものだったのか‥‥それにしても、どうしてデスラーが生きて‥‥」

 

「わからん‥‥」

 

何故、死んだ筈のデスラーが生きていたのか困惑したが、今はそんな事を悠長に考えている暇はなかった。

デスラーは次々と瞬間物質転送機で攻撃機を送り込んでくる。

一刻も早く、デスラー艦隊の位置を突き止め、デスラー艦ないし、空母を沈める必要があった。

艦内が無重力で戦いにくい中、ヤマトは必死の抵抗を見せた。

その間にバクテリアによって破壊された重力装置の修理が終わった。

修理完了直後、重力レベルを間違えて、身体に地球より重いGが働き、一時身動きが取れなくなると言うアクシデントも起こったが、重力が無事に元に戻ったと言う事で、コスモタイガーも発進可能になり、直ちに発進、ヤマトの直掩につき、次々と転移してくるスヌーカの迎撃にあたった。

 

ヤマトの予想以上の抵抗から、予想していた作戦時間の経過でデスラーは突然、艦載機部隊に帰還命令を出しこの宙域から撤退した。

その理由は、あまりこの宙域に長居をすると自らが放った宇宙ボタルの餌食になり、瞬間物質転送機はおろか、航行用の機関、攻撃用の火器管制システムが食い破られる恐れがあったためだった。

ヤマト側もガミラスの事情を察したが、追撃は行わなかった。

今のヤマトは艦体に宇宙ボタルを張り付けている状態で、デスラーを追いかけている余裕はなく、早く宇宙ボタルを除去しなければ、艦が虫食い状態となるためだった。

デスラーが撤退した後、真田と島は、白色彗星はただの彗星ではなく、デスラーと何か関わりがあるのではないかと疑ったが、未だに明確な確証が無かったため、口にはしなかった。

 

ヤマトは二つ目の灯台星系の主星の近くに、竹輪状の小惑星を発見し、之幸いとその小惑星の内部に入り、早速宇宙ボタルの除去作業を行った。

宇宙ボタルの除去作業が間もなく終了と言うとき、突然ヤマトは強力な磁力線につかまり、行動不能となってしまった。

ヤマトが行動不能になった瞬間、小惑星の周りに多数のワープアウト反応を感知、ワープ開けをした時、姿を見せたのは先ほど、撤退を行ったデスラーで、彼は多数のガミラス艦を率いて戻って来た。

デスラーはこの竹輪状の小惑星に罠を仕掛けていた。

当初の予定されていた戦闘時間の長期化もデスラーは読んでおり、こうして二重の罠を張り巡らしていたのだ。

 

「‥‥ヤマトの諸君‥‥私と君達の戦いも、いよいよこれで幕が降りる‥‥もう、奇跡は期待しても無駄だ。誇りを持って、王者らしく死にたまえ‥‥慎んで哀悼の意を表する‥‥」

 

「デスラー‥‥」

 

ヤマトとの通信をきった後、デスラーは少し早いが祝勝の杯をあげた。

 

「諸君‥‥ヤマトの最後を祝し‥‥乾杯!!」

 

『乾杯!!』

 

デスラー艦に乗艦しているガミラス将兵達もデスラー同様、杯を掲げる。

 

「デスラー砲発射用意」

 

杯に入っていた酒を一飲みした後、グラスを叩き割るとデスラーはヤマトに止めを刺さんとデスラー砲の発射準備を行う。

ヤマトでは、何か打開策は無いかと真田が模索している中、宇宙ボタルの除去作業から戻った新米が、「波動砲を使えば、その反動で後ろにバックできるのではないか?」と真田に言うと、「それだ!!」」と言って打開策を打ち出した。

真田が打ち立てた策は通常、波動砲を使用する時、その反動を重力アンカーで制御するが、その反動制御を全て無しにすれば、先程、新米が言ったように、物凄い反動で後ろへとバックする事が出来るのだ。

古代は早速波動砲の発射準備に取り掛かった。

 

一方、デスラーの方も着々と、デスラー砲の発射準備を整えてきており、デスラーは既に勝った気でおり、思わず笑みを浮かべていた。

そこへ、

 

「デスラー総統」

 

デスラー艦に連絡将校として乗艦していたガトランティス監視艦隊司令のミルが携帯型の通信機を持ってデスラーに話しかけてきた。

ミルは表向きは彗星帝国の連絡将校として乗り込んできたが、その実、総参謀長であるサーベラーから送り込まれたスパイあり、デスラーの行動を逐一本国のサーベラーに暗号電文で送っていたのだ。

そしてサーベラーはミルを使って、デスラーを蹴落とす機会を窺っていたのだが、そのチャンスが漸く到来し、それを行動に移した。

ミルの行動は全てサーベラーの策略の開始を意味していた。

 

「‥‥ああ君か居たのかね?君のことなど、すっかり忘れていたよ」

 

完全にミルの事をアウト・オブ・眼中だったデスラーはミルに話しかけられて、此処で初めて、ミルの存在を思い出した。

 

「なっ!?」

 

デスラーの発言に少しムッした表情になるミル。

 

「失礼。それで何か用かね?」

 

「彗星帝国からデスラー総統宛てに伝令です。直ちに作戦を取りやめ帰還せよと命令が出ております」

 

少しムッしながらも、ミルはデスラーに彗星帝国(サーベラー)からの命令を伝える。

 

「なに?」

 

デスラーは突然の帰還命令に顔をしかめながらも通信機を手に取った。

 

「私だ‥‥何の御用かな?」

 

「デスラー‥‥直ちに作戦を中止して帰還しなさい」

 

「サーベラー総参謀長‥‥御冗談なら後にしていただきたい。私は今、忙しいのだ」

 

「これは大帝のご命令なのですよ。大帝は‥‥‥」

 

サーベラーがまだ喋っている途中にも関わらず、デスラーは通信をきった。

 

「デスラー砲、発射準備完了!!」

 

「フッ、さらばだ‥‥ヤマト」

 

やがて、デスラー砲の発射準備が終わり、デスラーがヤマトの居る小惑星に向けてデスラー砲を撃つと、それとほぼ同時にヤマトも波動砲を撃ち、小惑星から脱出、デスラー砲が当たった小惑星は粉々に砕けた。

 

「くっ、惑星諸共消し飛んでいたものを‥‥」

 

デスラー砲が外れた事は直ぐに肉眼で捕捉出来、デスラーは悔しそうに顔を歪める。

そこへ、

 

「デスラー総統、貴方は大帝の帰還命令に背き、ヤマトまで仕損じた!!直ちに彗星帝国に出頭しなければなりません!!」

 

ミルが大声でデスラーに詰め寄ると、

 

「呼ばれるまでもない。此方から行かせてもらう。私の作戦に散々水を差してくれたそのお礼をたっぷりと言う為にな‥‥」

 

怒りで闘争心と殺気を露わにしたデスラーはミルの胸ぐらを掴むと、そう言い放ち、帰還行動に移った。

しかし、彗星帝国に戻ったデスラーはサーベラーの策略に嵌まり、敵前逃亡罪の罪を着せられ、幽閉されてしまった。

サーベラーの一連の動きを見たラーゼラーは、

 

(おやおや、食えない御方だ。デスラーを使う事を最初に私に持ち掛けたのは、貴女ではありませんでしたかね?それが、デスラー本人を貶める為の策だったとは‥‥さて、こうなれば私もこの後の進退を考えねばならないか‥‥)

 

と、自らの保身の為の思考を巡らせた。

しかし、幽閉されても尚、デスラーは内心で「ヤマトを倒すのは自分であり、彗星帝国ではヤマトに勝てまい」と、同盟国である筈のガトランティスとそろそろ見切りをつけようとしていた。

実は、ガミラスと彗星帝国とはある因縁があった。

それはガミラスがまだ大マゼラン星雲で覇を唱えていた時、小マゼラン星雲からマゼラン星雲へと侵入した彗星帝国軍と何度も衝突していた。

ガミラス側の討伐指揮官は、ガミラスの英雄で七色星団に戦死を遂げたエルク・ドメル将軍だった。

ドメルの電撃戦で彗星帝国軍は幾度も侵略に失敗している戦歴があり、彗星帝国では、そのガミラスの国家元首であるデスラーを快く思う者が居る筈が無かったが、彗星帝国の国家元首であるズォーダー大帝は武人としてデスラーの勇猛さと指導者としてのカリスマ性を評価していた。

その結果、デスラーは彗星帝国の軍上層部や政府上層部から煙たがられていた。

しかし、デスラー本人はその事を自覚しており、ヤマトに対して復讐できるのであれば、誰とでも手は組んでも良いとその時は思っていた。

そしてデスラーは幽閉されてもなお、ヤマトへの復讐を諦めておらず、機会が来るのを待った‥‥。

 

 

此処で時系列は少し過去に遡る。

 

デスラーがヒアデスの灯台星系でヤマトと戦っている時、テレザート宙域に展開していたゴーランド提督は非常に不機嫌であった。

気流星団での演習宙域からヤマト討伐にかかろうとした時、ズォーダー大帝からの突然の異動命令でテレザート星に着いたゴーランドはデスラーの指揮下に着くように言われた。

テレザート方面軍の総司令官とはデスラーの事だったのだ。

彗星帝国の提督と言う地位でありながら異星人であるデスラーの指揮下につくという事は、ゴーランドにとって余りにも屈辱的な事であった。

しかし、大帝御自らの命令では従わない訳にはいかず、ゴーランドは渋々デスラーの指揮下に入ったが、そのデスラー本人があまりゴーランドの事を信用もしていなければ、期待もしていない様子で、その事でゴーランドの不快指数は益々募るばかりであった。

そんな中、デスラーがヒアデス方面へ出撃しゴーランドにはテレザート宙域での待機命令が出された。

ゴーランドはこのウサを晴らす為、艦隊の一部をテレザート宙域に残し自らは直掩艦隊を率いてテレザート宙域の近くで見つけた恐竜惑星へとハンティングに向かった。

 

恐竜惑星近海へと到着したゴーランドは艦に搭載されていた小型艇に乗り恐竜惑星へと向かった。

そして、恐竜惑星に小型艇で降り立ったゴーランド一行。

そのゴーランド一行に興味があるのか、または自分たちの縄張りを荒らしにきた敵対者だと思ったのか恐竜たちがゴーランドの傍に寄って来た。

ゴーランドはそんな恐竜たちに対して愛用している狩猟用の大型連装式レーザーライフルで恐竜たちを次々と撃ち始めた。

レーザーライフルの銃撃を受けて、断末魔の悲鳴を上げながら絶命していく恐竜たち。

 

「ふぅーすっきりしたぜ」

 

「いつもながらお見事な腕前です。提督」

 

自分の近くに居た恐竜たちを狩りまくり、ウサを晴らしたゴーランドは満足そうな表情で小型艇に乗り込み自分の指揮する艦へと戻って行った。

しかし、空へと浮かび上がっていくゴーランドの小型艇を見ている人物がいた。

それは時空管理局の自然観察保護官であった。

この恐竜惑星の存在は管理局の方でも既に認知していた。

この星は、ミッドを始めとする近代管理世界では既に絶滅してしまった恐竜を始めとする多くの古代生物が生息しており、更にデバイスや次元航行艦の製造に必要な鉱物資源も多くある事が判明し、管理局は早速この恐竜惑星を自然保護管理世界と認定し、ここに自然観察保護官を赴任させていた。

 

六課卒業後のキャロやエリオがなった自然観察保護官の主な任務は保護対象の貴重生物達を密猟者から守る事やケガや病気になった古代生物の保護と治療にあり、その日もこの世界に駐在する自然観察保護官は恐竜惑星の彼方此方をパトロールしていた。

すると、ある自然観察保護官は担当のパトロール区域で多数の恐竜の死骸を発見した。

死骸をよく見てみるとその巨体には、レーザーで出来た銃創があり、これはケガや病気、恐竜同士の争いによって死んだのではないとすぐに分かった。

自然観察保護官はこれが人為的なモノでもしかしたら密猟者が近くに居るのではないかと思い辺りを見回すと小型の宇宙船の様な物が空に飛んでいくのを目撃した。

自然観察保護官は急いでこの惑星にある管理局の本部に連絡を入れ、本部はこの惑星の近くを航行している次元航行艦に連絡を入れた。

 

 

恐竜惑星の近くを航行していたのはクロノ・ハラオウンが艦長を務める次元航行艦クラウディアだった。

此処最近、このヒアデス星団近海では資源物資を輸送している次元航行船が消息不明になる事件が相次いで起き、更に調査・救助に向かった管理局の次元航行艦‥それも最新のXV級の次元航行艦が行方不明になる事件が多発しており、管理局では警戒を強めていた。

一番最近になって消息をたった次元航行艦、ノアは、消息を絶つ直前、正体不明の艦隊と遭遇し交戦中と連絡してきた。

管理局の次元航行艦には大口径魔導砲『アルカンシェル』や、少なからぬ小口径速射魔導砲も装備されていたが、それらを使う暇もなく撃破されたものと予想された。

そんな中、恐竜惑星こと、第102自然保護管理世界、プレオから密猟者が恐竜を多数殺して、逃亡したと連絡が入った。

一連の次元航行艦、次元航行船の行方不明事件に何か関係があるかもしれないと思ったクロノはプレオにある管理局の支部に連絡を入れると、急いで第102自然保護管理世界、プレオへと向かった。

 

恐竜惑星(プレオ)でのハンティングを終え、自身が将旗を掲げるゴストーク級ミサイル艦 ルーベルグⅢに戻ったゴーランドはテレザートへと帰るのかと思いきや、

 

「全艦!!戦闘隊形FZ!!」

 

と、艦船が居ないにも関わらず、率いてきた他のミサイル艦に戦闘態勢をとらせた。

 

「全艦!!破滅ミサイル発射用意!!目標、恐竜惑星!!」

 

なんとゴーランドは先程、自分がハンティングを行っていた恐竜惑星に対して、艦首に装備されている超大型ミサイルである『破滅ミサイル』を撃ち込もうとしていた。

 

「全艦!!戦闘隊形FZ配置完了!!」

 

「破滅ミサイル安全装置解除、発射準備良し!!」

 

「破滅ミサイル発射!!」

 

ゴーランドの命令の下、ミサイル艦隊からは二十数発の破滅ミサイルが恐竜惑星へと撃ち込まれた。

やがて、恐竜惑星は、何度も爆発を繰り返し、表面に幾つもの亀裂を作りながら崩壊していき、最終的には眩い閃光と共に宇宙から消え去った。

 

「見たか?俺の作戦を。間もなくヤマトもああなるのだ。ハハハハハ‥‥」

 

ゴーランドは恐竜惑星を粉々にした破滅ミサイルの威力を見て、勝利を確信したかのように高笑いをした。

 

破滅ミサイルを撃ち込まれた直後、第102自然保護世界プレオの管理局支部はクラウディアに通信を入れた。

 

「クロノ提督!!プレオから緊急通信です!!」

 

「なに!?通信回線を開け!!」

 

「了解」

 

通信士がプレオからの通信回線を開き、パネルに映像を映すが向こうの通信状況が悪いのか、パネルには砂嵐の様な映像しか映らず、通信を送っている通信員の声も所々飛んでいる。

 

「・・・・こち・・・・プレ・・・・オ・・・・とつ・・・・ぜん・・・・ミサ・・・・攻撃・・・・・受け・・・・・惑星・・・・・崩壊・・・・・しつつ・・・・・あり・・・・・・至急・・・・・・きゅうえん・・・・・・もと・・・・・・・救援を!!・・・・・・・・求む!!・・・・・・・・」

 

その通信を最後にプレオとは通信が出来なくなった。

 

「これはっ!?」

 

「救援を求めているんじゃないですか!?」

 

クラウディアに研修乗艦している執務官であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと六課卒業後、フェイトの下で執務補佐官を務めているティアナ・ランスターがクロノに訊ねる。

 

「事態は一刻も争うって事か‥‥」

 

クロノは焦りで顔を歪めながら言う。

 

「全速前進!!針路をプレオに向けろ!!」

 

「了解」

 

クラウディアは全速でプレオへと向かった。

やがて、プレオのある宙域にクラウディアが到着すると、クルーの目の前には‥‥。

 

「そ、そんな‥‥」

 

「プレオが‥‥」

 

「こ、こんな‥‥」

 

「一体、何が‥‥」

 

「ひどい‥‥」

 

「‥‥」

 

そこにあるはずだった綺麗な緑と水、古代生物に満ちた惑星(世界)はもはや痕跡すら留めず、宇宙に無数の岩くれが漂うだけだった。

プレオには管理局の自然観察保護官の他、惑星資源開発の作業員や観光スポットとして整備するための開発業の作業員ら数千人の人間がいたのに彼らは自分たちが居た星もろともこの暗黒の虚空に命を散らされた。

 

「誰が、こんなひどい事を‥‥」

 

ティアナが痛憤の呻きを漏らし、クロノやフェイトの胸にも抑えがたい憤怒が込み上げていた。

プレオからの最後の通信では、「ミサイル」と言う質量兵器の名前がはっきりと聞こえた。

つまり、そのミサイルを所持していた者とプレオで、恐竜を密漁していた者は同一人物と推察され、クロノ達管理局の中では敵であるのだと認識された。

クロノは早速、プレオの事を管理局、本局の次元航行艦隊司令部に伝えた。

クラウディアからの報告を聞いた司令部の幕僚たちの驚愕は計り知れなかった。

直ちにクロノの下には犯人の捜索と可能ならば首謀者を逮捕するよう命令が下された。

しかし、現状では敵が何者なのか分からない。

まずは敵の正体を掴まなければならないが、質量兵器を多数搭載する艦艇を多く擁する武装勢力など、管理局至上初の事ではないかと思うフェイトとティアナであった。

 

ヒアデス星団を調査して早数日が経過したが、未だに敵の正体も手掛かりもつかめないままの状況が続いた。

 

「周辺空域に異常はないか?」

 

「ありません」

 

「そうか‥‥」

 

クロノがブリッジで周囲の状況をオペレーターに訊ねるが、何の変化もない安全な航海が続いていた。

本来ならば喜ぶべき事なのだが、それは今の所何の成果がない事を物語っていた。

 

「せめて、敵の正体だけでも掴まないとな」

 

クロノには焦りの色が窺えた。

大勢の同僚や貴重な古代生物、鉱物資源がなす術無く無残に殺され、破壊されて失われたのだ。

彼らやその家族の為にも必ず首謀者を逮捕する。

その為にもまずはその首謀者を見つけてその正体を知らなければならない。

そんな焦りがクロノにはあった。

 

「艦長、間もなく第132管理外世界テレザートに近づきます」

 

クラウディアは何事もなく、プレオに隣接する惑星、第132管理外世界テレザートに接近しつつあった。

第132管理外世界、テレザート‥‥此処にはおよそ十年前まで、ミッドをも凌ぐ高度な文明が存在しており、次元航行手段を手中にするのも間近と言われていた為、管理局はコンタクトをとるタイミングを測っていた。

もちろん、コンタクトが成功したらこの世界を管理世界入りさせる魂胆が管理局にあったのは、クロノを始めとするクラウディアのクルーたちは知らない。

恐らく高度に発達した科学技術をロストギアだとか質量兵器所持だとかで難癖をつけて、無理矢理管理世界入りをさせる計画だったのだろう。

しかし、管理局がこの世界を管理世界入りさせる前にこの世界で大規模な内戦が発生した。

管理局はその事態をコレ幸いと思い、内戦終結後に「戦災復興」を名目にテレザートを管理世界へ編入させようと準備を進めた。

だが、管理局の思惑と違い、テレザートの内戦は次第にエスカレートした揚げ句、住民の全てが死亡してしまい、テレザートの文明は完全に滅んでしまった。

その報告を受けた管理局は住民が死んでしまっては管理世界に編入させても意味は無いと判断し以後テレザートはそのまま放置された。

ただテレザートが滅んだ直後、まだ廃墟には多くのロストギアが眠っているのではないかと言われ、遺跡発掘を生業とするスクライア一族がテレザートへと派遣され、現地をくまなく調査したが、あまりにも激しい内戦だった為か目ぼしいロストギアの類は一切見つからなかったと言う事実も管理局がテレザートを放置する要因の一つでもあった。

 

「操舵手、気を付けて進め。この辺は艦船のエネルギーを吸収するバキューム鉱石が多いからな」

 

「了解」

 

クロノは操舵手に細心の注意を払いながら操艦に努める様に指示する。

この辺りには詳しい原理や構造は分からないが艦船のエネルギーを吸い取る特殊な宇宙鉱石が多い。

その為、むやみやたらに動き回るとその宇宙鉱石にエネルギーを吸い尽くされ、航行不能に陥ってしまう。

それは魔導エネルギーで動いている管理局の次元航行艦も例外ではない。

クラウディアはゆっくりではあるが慎重にそして確実にバキューム鉱石の影響を受けることなく、テレザートへと近づいていた。

やがてテレザートの傍に来た時、クラウディアのレーダーが艦船らしき反応をキャッチした。

 

「艦長、本艦の位置から丁度、テレザートを挟んだ反対側に多数の艦船らしき反応があります!」

 

「なにっ!? よし、慎重に近づいて解析するぞ!」

 

オペレーターの報告を受け、クロノが指示を下した。

 

「ビンゴ‥‥かな?」

 

「そうあってほしいがね」

 

クラウディアは注意深く、テレザートの反対側が望める位置に移動する。

すると、すぐさまオペレーターが解析にかかり、ほどなく結果が報告された。

 

「エネルギー反応を二ヶ所で確認。テレザート付近で約三十隻を確認、いずれも大型艦です。さらに付近のアステロイド帯の中にも一つ反応があります。距離があるので詳しくはわかりませんが、此方も大型艦の模様! それもかなりの高速で互いに接近しています!いずれの艦船もエネルギー反応は強大で、我々(管理局)が保有する次元航行艦の動力エネルギーを凌いでいます!」

 

「そんな‥‥」

 

「バカなっ!?」

 

「映像に出せるか?」

 

「手前の艦隊ならば。なんとか投影出来ます」

 

「よし、ただちにパネルに投影」

 

「了解」

 

そしてパネルには白と黄緑を基調とし、艦の全体をまるでハリネズミの様にミサイルで武装した艦隊の姿が投影された。

 

「な、なんだ!?あれは!?」

 

「全身をミサイルで固めている‥‥」

 

「艦首には超大型ミサイルらしき突起物が二本‥‥プレオを破壊した事と言い、一連の輸送船や次元航行艦襲撃の犯人は恐らくこの艦隊だろうな‥‥ギリギリまで接近しろ‥‥ただしいつでも次元転移出来る用意だけはしておけ‥‥」

 

「了解」

 

クロノが怒気を含んだ口調で命令を下す。

人一倍正義感が強いフェイトも拳を固く握り締めた。

何としても彼らを逮捕したい‥‥。

しかし、余りにも数が違い過ぎる上、向こうは全身をハリネズミのようにミサイルで武装した戦闘艦。

一方、こちらはあくまで調査母艦的な艦船でまともに渡り会えるとは思えない。

この場に血気盛んな管理世界拡大派の局員がいれば、「あの艦隊に向けてアルカンシェルを撃ち込め!!」なんて言いそうだが、そんな事をすれば、何隻かは撃沈できるだろうが、その後は残存艦によるミサイルの雨霰の報復を受け、あっという間に此方が撃沈されるだろう。

そう考えると、この場に血気盛んな管理世界拡大・拡張派の局員が居なくて良かったと思う。

それと同時に、今の自分たちには、何も出来ないのだと自分たちの無力さを思い知った。

 

「それにしても、あのアステロイドに居る艦‥早く、あそこを出なければ、バキューム鉱石にエネルギーを吸い尽くされてしまうぞ」

 

クロノがアステロイドに居る艦に対して呟いた。

あのアステロイドを構成するのは例のバキューム鉱石だったのだ。

 

「アステロイド帯に居る艦のエネルギー反応がどんどん下がっています!!」

 

「やはり、バキューム鉱石にエネルギーを吸い取られたか!!映像をまわせるか?」

 

「先程より、距離を縮めたので何とか‥‥」

 

オペレーターがアステロイドから出てきた艦の姿もパネルに投影すると、その艦はどういう訳か、艦の外側にバキューム鉱石を目一杯付着させた状態だった。

 

「い、一体何を考えているんだ?あの艦の乗員は!?あれでは、バキューム鉱石にエネルギーを吸い取ってくれと言っている様なものではないか!!」

 

と、クロノは呆れる様に言う。

やがて、ミサイル艦隊にも動きが現れた。

 

「手前のミサイル艦隊攻撃態勢をとりました!!」

 

オペレーターの報告を受け、クラウディアのブリッジ内に緊張が走る。

 

「ミサイル艦隊、ミサイルを一斉に発射しました。目標は恐らくバキューム鉱石を付着させた艦です!!」

 

オペレーターが緊迫した声を上げた。

無数の中小型ミサイルが奥にいる艦船を見舞う。

 

((逃げて!!))

 

と、フェイトとティアナは心の中で、ミサイルの雨に見舞われる船の無事を祈った。

 

「ミサイル、着弾します!」

 

「やはり、エネルギーを吸い尽くされて身動きが出来ないのか‥‥」

 

誰もがあの艦が撃沈されると思った中、クラウディアのクルーたちは信じられない光景を目の当たりにした。

なんと、艦の周りを覆っていたバキューム鉱石がまるで意志を持っているかのように、張り付いていた艦から離れ、艦の周りをリング状にグルグルと回転し始めた。

そして接近してくる多数のミサイルをまるで、はたき落とすかのように動き回ったのだ。

やがて、ミサイルの第一波攻撃が終わると、そこには無傷の戦艦の姿があった。

あの回転したバキューム鉱石が全てのミサイルを叩き落したのだ。

その艦影は水上艦船を意識した造りで高く塔の様に聳える艦橋らしき構造物に煙突。

さらには、昔、地球の戦艦が使っていたであろう古めかしい砲身を持つ砲塔らしき兵装を装備した艦の姿がそこにあった。

 

「あ、あれだけの数のミサイルを全部叩き落したって言うの!?」

 

「信じられない‥‥」

 

フェイトとティアナはさっき見た光景が未だに信じられず唖然としていた。

 

「バカな!?」

 

突然オペレーターが声をあげる。

 

「どうした?」

 

「あの艦のエネルギーが回復しているんです。さっきまでバキューム鉱石によって、エネルギーを吸い尽くされる寸前だったのに‥‥」

 

クロノが確認のため、エネルギー計測機を見ると、確かに先程までエネルギーが枯渇寸前だった戦艦のエネルギーが一瞬にして回復している。

あのバキューム鉱石の動きといい、瞬時にエネルギーを回復させた事と言い、分からないことだらけだった。

 

「ああっ!!」

 

またもオペレーターが声をあげる。

 

「今度はどうした!?」

 

「ミサイル艦から例の超大型ミサイルが発射されました!」

 

「なに!?」

 

プレオを破壊したと思われる例の超大型ミサイル(破滅ミサイル)があの戦艦へと発射された。

オペレーターの声に思わずモニターを見た。

 

「あのミサイルがプレオを‥‥」

 

ティアナが嫌悪感も露わに呟く。

あれだけの大型ミサイルの飽和攻撃なら、プレオが消滅してもおかしくはないだろう。

第一波攻撃をバキューム鉱石の謎の動きで損害を受けなかったように見えたあの艦だが、今度はそのバキューム鉱石を周りに付着させていない。

さすがにあれだけのミサイル相手では持ちこたえられないだろう。

 

「何をしている!?逃げろ!」

 

思わずあの艦に向けるようにクロノが叫んだが、オペレーターからの報告は予想を完全に覆す内容だった。

 

「奥の艦のエネルギー反応が急激に増加!!エネルギー観測のゲージが振り切れました!」

 

「何!?」

 

急激なエネルギー増大、つまり何らかの超高エネルギー砲による攻撃だろう。

そしてクラウディアは今、ミサイル艦隊の真後ろにいる。

 

「いけない、クロノ!!」

 

「わかっている!!艦首下げろ!!スラスターがいかれてもいい!かわせっ!!」

 

クラウディアは急ぎ艦首を下に向けた。

直後、あの艦がいるあたりで眩い閃光が走ったかと思うと、膨大な光の柱が襲いかかって来た。

次の瞬間、艦尾部に大きな衝撃を受け艦全体が大きく震えた。

 

「うわぁぁぁぁー!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁー!!」

 

「くっ、被害報告急げ!!」

 

「艦尾損傷!!第二装甲板までが剥離または損傷を受けました!!」

 

「第15ブロックにて火災発生!!」

 

「推進力低下!!スラスターも上手く作動しません!!」

 

「消火と応急修理急げ!!」

 

被害報告を聞き、クロノは直ぐに指示を出していく。

クラウディアの損傷は小さくなかったが、次元転移は可能だ。

そこで、クラウディアは現宙域からの撤退をすることに決めた。

艦が万全の状態でもあの艦とやり合えるわけないのに損傷した状態であの場にいるのは危険と判断したのだ。

もし、あの艦が此方を敵と認識したらひとたまりもない。

 

「あのミサイル艦隊はどうなったの?」

 

フェイトがオペレーターに訊ねると、

 

「‥‥い、一隻残らず消滅しました‥‥空間転移の形跡も‥ありません‥‥」

 

「‥‥」

 

オペレーターからは信じられない報告が返ってきた。

 

「あれだけの艦隊をたったの一撃で消滅させたというのか!?あの艦は‥‥」

 

「そんなっ!?」

 

「信じられない‥‥」

 

クロノも信じられない口調だ。

事実ならば、先程あの艦が撃ったエネルギー砲はアルカンシェルとは比較にならない程の威力を持つ文字どおりの大量破壊殺戮兵器だ。

 

「全速で現空間を離脱、一番近い支部は?」

 

「第17管理世界です」

 

「よし、では、そこの支部に連絡。受け入れと修理体制をとって貰え」

 

「了解」

 

クラウディアが撤退を行っている中、

 

「艦長、あの艦は危険過ぎます!ご覧になられたでしょう?あの艦の砲撃の威力を!?ここは、直ちにあの艦に停船命令を出し、その上臨検するべきではありませんか!?それにノアもあの艦に撃沈された可能性があるかもしれませんのに!!」

 

一人の若い士官がミサイル艦隊を葬り去ったあの艦への臨検を主張するが、ブリッジの空気は冷ややかだ。

この士官は、ミサイル艦隊は数が多いため、奇襲する様な形でアルカンシェルを撃ち込もうと進言しなかったが、今は一対一。

数の内では互角でクラウディアが負けることは無いと思ったのだろう。

ティアナに至っては「何、寝言ほざいているの?このバカは?アンタ、そんなに死にたいの?」

と、口を開けばそんな事を言いそうなくらいの呆れ顔をしている。

 

「あれだけの艦隊を一瞬の間に消滅させた艦だ。それにあの超エネルギー砲の矛先がこちらに向いたらどうなるか、それぐらい君にも十分わかると思うが?」

 

クロノ自身も少し呆れた口調で言っている。

 

「あの艦はきっとあのエネルギー砲以外にも飛び道具は持っていると思う‥。それにクラウディアは今傷ついて、怪我人も出ている。ここは、船の修理を優先しましょう。ねっ?」

 

フェイトが宥めるような口調で言う。

 

「わ、わかりました‥‥出過ぎたことを言い申し訳ありません」

 

「わかってくれたなら、それでいい。修理が済み次第またここに戻るが念の為、データ収集ポッドを置いていく」

 

クロノの指示でデータ収集用ポッドを置き、クラウディアはテレザート宙域を後にした。

 

 

第17管理世界へ向かっている途中、休憩室にてクロノとフェイトは休憩していたのが不意に、

 

「今にしてみると、少しもったいないことをしてしまったかな?」

 

「何が?」

 

お茶(リンディ茶にあらず)を口にしながらクロノが残念そうに呟いた。

 

「ミサイル艦隊を一掃したあの艦の事さ‥臨検ではなく、一船乗りとして、あの艦の乗組員と話をしてみたかったよ」

 

「そうだね。でも仕方ないよ」

 

フェイト自身もクロノと同じ思いを抱いていた。

同じ武装をしている艦でもミサイル艦隊はともかく、あの艦にはなぜかさほどの不安は感じなかった。

むしろ、『どこかで見た様な‥‥』と言う懐かしさもあった。

そう思うと、あの艦にノアが撃沈されたと思うのはいささか早急すぎる憶測だ。

憶測のままあの艦を拿捕しようとすれば、あのミサイル艦隊を消滅させたあの超エネルギー砲が自分たちに向けられるかもしれないと思うと少し背筋が寒くなる。

あの艦とコンタクトは取れなかったが、消滅したミサイル艦隊の隊内通信の傍受には成功しており、第17管理世界についたらそこの支部で解析して貰う予定だ。

 

その後の解析結果で分かった事は、ミサイル艦隊はあの艦が発射した超高エネルギー砲撃で全滅したと確認された。

また、ミサイル艦隊内の通信の中に、何度となく『ヤマト』という単語が出ていたことも判明した。

流石にあのミサイル艦隊の乗員の悲痛な最後の叫び等は聞くに堪えられないので、解析を行った技術官の行為で、通信内容は紙に書かれて手渡された。

フェイトはジッと紙に書かれた『ヤマト』と言う部分を見ていた。

 

(ヤマト?)

 

一時期地球に住んでいたフェイトにはその言葉と発音は何度か耳にした事がある。

 

(あの艦はヤマトと言うの?)

 

しかし、フェイトが知る今の地球にあれ程の強力な宇宙戦闘艦を建造する技術などは存在しない。

これはどういう事なのだろうか?

たまたま日本語の『ヤマト』という発音に聞こえただけなのだろうか?

それとも明確に『ヤマト』と発音したのだろうか?

フェイトがその答えを知るのはもう少し時間が経ってからの事だった。

 

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