星の海へ   作:ステルス兄貴

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二十七話 土星圏 フェーベ会戦 索敵

 

 

第十一番惑星にて、敵の兵站基地と守備艦隊を破壊した ヤマト と 渦潮 は、冥王星軌道へと到達した。

既に基地の職員は退避しているので、今は無人となっている冥王星。

しかし、その軌道を回っている戦闘衛星や無人攻撃ステーションは稼働しており、敵が通過した時、少なからずの損害を与える様に設置されている。

それが、確実に破壊される運命だとしても‥‥。

 

第十一番惑星での戦闘により、予定時間をロスした為、ヤマトは冥王星を通過した後、土星までの大ワープを行う事となった。

その時、ヤマトのレーダーが一瞬何らかの反応を捉えた。

 

「っ!!レーダーに今、なにか‥‥」

 

「どうした?雪?」

 

「レーダーに一瞬、反応が出た様に思ったんだけど‥‥消えてしまったわ‥‥ちょっと待って。記録をさかのぼってみるわ」

 

雪はタイムレコーダーの履歴を遡って、先程捉えた反応を調べる。

 

「何もなければいいんですけど、こういう時の悪い予感って当たっちゃうんですよね‥‥」

 

相原がフラグをたてるような台詞を吐く。

 

「見つけたわ!!微弱だけど、潜宙艦が空間潜航時に出すパルスよ!!ヤマトのコンピューターに潜宙艦の交戦記録が残っていたから、一瞬でも感知出来たのね」

 

雪が過去の履歴と先程の反応を照らし合わせた結果、先程捉えた反応は敵の潜宙艦の反応だと判明した。

相原の言う悪い予感は奇しくも当たってしまった。

 

「潜宙艦がこのあたりにか?敵の偵察隊‥‥いや、奇襲隊の可能性もあるな」

 

島がこの辺りに潜んでいる潜宙艦の目的を推察する。

確かに島の言う通り、潜宙艦の構造上、潜宙艦は偵察か奇襲攻撃には持って来いの艦艇だ。

ドイツのUボートによる群狼戦術しかり、第二次世界大戦の折、日本軍が真珠湾攻撃の際に行った特殊潜航艇による攻撃、アメリカの潜水艦による通商破壊同様、十分奇襲攻撃の可能性はあった。

 

「土星で待っている土方さんの下には潜宙艦のデータが無い!!もし、それが奇襲艦隊だとすると‥‥」

 

「まずいぞ、これは‥‥!!」

 

古代と徳川も敵潜宙艦の狙いが集結中の防衛軍への奇襲攻撃を危惧する。

 

「相原、急いで潜宙艦の分析データを土星へ転送するんだ!!」

 

古代は相原に防衛軍本体へ、潜宙艦のデータを送るように指示する。

 

「了解!!でも、ただでさえ、バカでかいデータです‥‥収束通信で送ってもかなりの時間がかかります!!」

 

「仕方がない‥‥艦載機を展開して警戒しながら進もう!!なんとか土星到着前に潜宙艦を発見して撃破しなければ‥‥相原、土星への通信を並行して、周囲を探針で探ってくれ!!」

 

「了解‥‥ふぅ~いきなり忙しくなるな‥‥」

 

相原は土星へデータを送るのと同時に、以前プロキオン宙域にて探針で潜宙艦を探り当てたのと同様の方法で、潜宙艦の捜索にあたった。

渦潮 にも発光信号にて潜宙艦の存在を知らせる。

その結果、相原は次々と潜宙艦を発見し、コスモタイガー隊にその位置を通達して、コスモタイガー隊は潜宙艦を次々と撃沈していった。

コスモタイガー隊の雄姿は、渦潮でもパネルで投影されており、その様子をレーダー員見習いで、艦橋に居た士官候補生の椎名晶はその活躍ぶりをジッと見ていた。

 

「‥‥」

 

彼女の瞳には尊敬の眼差しが含まれていた。

カイパーベルトで助けられた時は、ゆっくりとその雄姿を拝む余裕はなかったが、今は艦の機能も正常に働き、何よりヤマトと言う頼もしい味方がいるので、コスモタイガー隊の働きを見る事の出来る余裕があった。

 

ヤマトが冥王星付近にて、敵の潜宙艦と交戦して居る頃、

 

「艦長、前方にガニメデ基地、着陸用ドックを確認」

 

良馬が艦長を務める まほろば は木星のガニメデ基地に到着した。

 

「ようこそガニメデへ」

 

基地管制塔からの通信が入る。

 

「こちら地球防衛軍、戦艦、まほろば。藤堂司令の命令を受け、西郷参謀長を乗せ、ただいま到着しました。誘導をお願いします」

 

「‥‥IFFを確認‥‥了解。第二ドックへの着陸を許可します」

 

「了解、戦艦、まほろば 第二ドックへ着陸します」

 

ギンガはガニメデ基地とコンタクトをとり、まほろば はガニメデ基地の艦船第二ドックへ着陸した。

 

既に木星圏に駐屯している艦隊は土星のタイタン基地に向かっていたので、ドック内に艦船の姿が見えない‥‥と、思ったら、まだ一隻だけ戦艦がドックに残っていた。

 

「西郷参謀長、ガニメデ基地に到着しました」

 

良馬が西郷のいる部屋へ行き扉の前で まほろば がガニメデ基地に到着したことを知らせる。

 

「うむ、今行く」

 

「さ、参謀長!!その恰好は!?」

 

部屋から出てきた西郷の姿を見て、良馬は声をあげる。

目の前にいる西郷はいつもの防衛軍司令部の幕僚が着ている深緑色の軍服ではなく、良馬が着ている宇宙艦隊の艦長が着ている黒いジャケットタイプの軍服に白い軍帽を被っていた。

 

「ん?この服装のことかね?見ての通りだ。私も今回の作戦では、一艦長として、戦場に赴く。既に長官の許可を得ている」

 

土方が独断で艦隊配置を変えた時、西郷は藤堂に自分も艦長として前線に赴くのでその許可を出してもらうよう頼んでいたのだ。

 

「では、横に泊まっている艦は‥‥」

 

「私が艦長を務める艦だ」

 

そう言って、西郷は荷物を纏め、まほろば を降り、横に泊まっている戦艦へと移乗していった。

その時の西郷の様子は、普段防衛軍司令部庁舎に居る時よりも、何だか嬉しそうと言うか、輝いていた。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「へぇ~あの参謀長殿が‥‥」

 

良馬が艦橋員に西郷が隣に泊っている艦の艦長を務める事を伝えると、永倉が意外そうに言う。

まぁ、確かに司令部の幕僚が好き好んで前線勤務を志願するなんて、珍しい事なので、永倉が意外そうに言うのも分かる。

 

「戦艦、薩摩より通信、出撃準備が整ったそうです」

 

宇宙戦艦、薩摩‥‥それが、西郷が艦長を務める艦の名前だった。

ギンガは良馬に薩摩の出航準備が出来た事を伝える。

 

「 まほろば の補給も既に終了しています」

 

新見が土星圏での戦いにむけて、まほろば の最後の補給が出来た事を報告する。

 

「よし、では此方も出発するか‥‥出航用意!!」

 

「出航用意!!」

 

「機関始動!!」

 

「ガントリーロック解除」

 

「補助エンジン低速回転、微速前進」

 

まほろば と 薩摩 はガニメデ基地を出撃、タイタン基地へと向かった。

 

「艦長、薩摩が通信を送っています」

 

タイタンへ向かっている中、 まほろば が、薩摩の通信を傍受した。

 

「薩摩が?どこに?」

 

「冥王星付近です」

 

「冥王星?あそこにはもう、誰も居ない筈だが‥‥?」

 

「確認してみます」

 

ガニメデ基地を出撃直後、薩摩が冥王星付近へと通信を送り出した。

新見が冥王星付近に何があるのかを確認する。

 

「‥‥確認できました」

 

「それで、薩摩はどこに通信を?」

 

「ヤマトです」

 

「ヤマト!?それは間違いないんだな?」

 

「はい、間違いありません」

 

「そうか‥‥ヤマトか‥‥帰ってきたんだ‥‥」

 

ヤマトがテレザートから帰還した。

となれば、ヤマトの援軍に赴いた三木が艦長を務める巡洋艦 すくね も帰ってきたことになる。

今度は三木と艦長同士で肩を並べて戦うのだと思う良馬だった。

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋

 

「これで‥‥全部か?」

 

古代が雪にもう敵潜宙艦が全滅したのか訊ねる。

 

「レーダー反応、空間歪曲反応ともにありません」

 

雪の報告では、この辺りに潜んでいた潜宙艦は撃破できたようだ。

 

「なんとか間に合った様ですね‥‥」

 

相原は潜宙艦のデータ送信を土星の友軍の下に送り終え、更に潜宙艦も全て撃破できたことに一息つく。

 

冥王星付近で敵潜宙艦を撃破したヤマトの下に通信が入った。

 

「艦長代理、木星軌道から通信です」

 

「木星から?‥‥繋いでくれ」

 

相原が通信回路を開くと、

 

「元気かね?諸君」

 

パネルには西郷参謀長の姿が映った。

 

「参謀長!?」

 

「また、俺たちの邪魔をしてくる気なのか!?」

 

古代と南部はヤマトがテレザートに向かう途中、太陽系内で参謀長がヤマトに対し、戦闘衛星や無人攻撃ステーション、更には木星圏では無人艦隊を差し向けてきた事から、参謀長がまた何らかの妨害をしてくるのではないかと警戒した。

 

「ははは‥‥いや、安心したまえ。あのテレサと言う女性が伝えたかったこと‥‥私なりにだが、理解したつもりでおるよ。もはや、ヤマトを責める気はない。それどころか、諸君に謝罪せねばと思っている‥‥すまなかった‥‥」

 

西郷はヤマトの乗員達に対し、頭を下げて謝罪した。

 

「そんな‥‥参謀長の立場からすれば、謀反にあたる我々の行動を許す事は出来ません。あの時は、ああされるしかなかった‥‥そう、理解しています」

 

「そうか‥‥」

 

謝罪し、立場を理解した上で、ヤマトの乗員と西郷は和解した。

 

「それで、参謀長‥‥どういったご用件でしょうか?」

 

両者が和解した後、古代は西郷に通信を送って来た要件を訊ねた。

 

「うむ、今度の事は、かつてのガミラス軍侵攻と同じく、地球の存亡がかかった一大事だ。防衛軍上層部が地球でぬくぬくと過ごしている訳にはいかん。地球本土の防衛は長官に任せて私も艦長として、戦線に赴くことになった。それを知らせておこうと思ってな。今、月村君の まほろば と共に木星のガニメデ基地を発った所だ。土星では肩を並べて戦う事になるだろう」

 

「参謀長自ら戦場へ!?そんな事をされてもよろしいのですか?」

 

防衛軍上層部の一員である参謀長が前線に立つと言う事で驚き、職務に影響がないのか訊ねる古代。

 

「こう見えても昔は君たちと同じ船乗りだったんだよ。彗星帝国の件が片付くまで、参謀長としての地位は返上だ。昔の血がうずくというか、な‥‥土星では君たち同様、土方君の指揮下につくことになる。お手柔らかに頼むよ」

 

「はい」

 

「では、土星で会おう‥‥」

 

そう言って、西郷は通信を切った。

良馬が見た西郷が何だか嬉しそうにしていたのは、昔懐かしい頃を思い出していたためなのかもしれない。

 

「参謀長‥‥」

 

「あの参謀長がねぇ‥‥信じられませんよ」

 

南部は永倉同様、参謀長が自ら前線に立つ事に意外性を感じていた。

 

「人は変わる。変わる事が出来るから人なんじゃよ。古代だって、ヤマトに乗りたての頃は沖田艦長に反発ばかりしておったじゃろう?」

 

「はは、その事は言わないで下さいよ」

 

古代にとっては、イスカンダルへの航海、そして沖田艦長との思い出は懐かしくも恥ずかしい思い出なので思わず苦笑する。

 

「でも、参謀長の言っていた『テレサの伝えたかったこと』って一体何だろう‥‥?我々がテレサから聞いたのは白色彗星の事だけですよね?」

 

太田が西郷の言葉に疑問を感じ、首を傾げる。

 

「ああ‥‥」

 

「あの不毛な大地‥‥」

 

「えっ?」

 

島が突然ポツリと呟く。

 

「テレザートはそこに住む者同士が起こした戦争によって荒廃し、人も住めない星へと変わり果てていた‥‥平和を祈るテレサですら、テレザートが崩壊に至る過程の一端を担っていたんだ‥‥」

 

「‥‥」

 

「俺たちにその惨状を見せ‥‥いや、実際に俺たちをテレザートの大地に立たせ、争いがどれだけ無意味なのか理解される‥‥白色彗星の事以外、テレサが伝えたかったことと言うのは、それなんじゃないかと俺は思う‥‥テレザートの悲劇を繰り返さないためにな‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

テレサの言葉と行為を独自ではあるが、解釈し、それを伝える島。

 

「こうして、今地球に住む者が一丸となって、平和を維持しようとしているんだ‥‥‥それも、全てテレサのおかげなんですね‥‥彼女には感謝しても足りないですね‥‥」

 

相原も島の解釈に同意して、改めてテレサに感謝した。

その後、冥王星軌道を抜けた ヤマト と 渦潮 は土星圏まで一気にワープした。

 

 

ヤマトよりも先に土星圏タイタン基地に到着した まほろば と 薩摩 はタイタン基地から誘導された停泊地へと着陸する。

 

「これは‥‥」

 

「壮観な眺めじゃわい」

 

タイタン基地に集結した地球防衛軍主要艦艇の姿を見て、永倉と井上は声をあげる。

基地周辺とそのドックに身を休める艦艇の数は物凄いもので、その姿だけでも圧巻である。

 

(マリーさんが見たら、狂喜乱舞するかも‥‥)

 

集結した防衛軍の艦艇を見て、ギンガはミッドに居る知り合いの科学者の事を思った。

軍艦はその世界の科学技術の結晶とも言える。

その科学技術の塊である軍艦がここまで居るのだ。

軍人だけでなく、未知の技術を秘めた艦のオンパレードとなれば、科学者ならば興奮もするだろう。

しかし、土方が提言したアンドロメダ以降のアンドロメダ級二番艦以降の艦とアンドロメダ・改級の建造は結局この決戦には間に合わなかったが、現在も地球の造艦ドックで建造が行われている。

 

召集命令が太陽系内を駆け巡り、防衛軍の艦艇がほぼ終結完了したタイタン基地の近くに彗星帝国軍の強行偵察機が密かに接近していた。

この機体は彗星帝国軍で正式採用されている攻撃爆撃機デスバ・テーターを主体に機体色は潜宙艦と同じ漆黒色をし、武装を大幅に削る変わりに高感度のレーダーと通信機器を装備している強行偵察機だった。

 

「こちら偵察艇B-27。ただいま土星軌道に到達。地球艦隊まで1200」

 

「まず己の敵を知ることだ!心して行け!」

 

「はっ!!」

 

バルゼーの命を受け、確実にタイタン基地まで距離を縮めていく強行偵察機。

 

その頃、バルゼー艦隊も太陽系へと突入した。

バルゼー艦隊の太陽系突入は防衛軍の監視衛星から周知される事となった。

 

「総司令、只今、監視衛星M103が敵艦隊の姿を捉えました」

 

「回路を繋げ」

 

パネルには彗星帝国軍の大艦隊が映った。

 

「艦隊の構成を分析しろ!!急げ!!」

 

「はい!!」

 

土方は監視衛星の映像から敵艦隊の構成を分析しようとしたが、防衛軍の監視衛星はたちまち、彗星帝国軍に発見された。

 

「敵、監視衛星発見!!」

 

「始末しろ!!」

 

バルゼー艦隊の一斉射を受け、監視衛星はいとも簡単に破壊された。

太陽系に入ってから、バルゼー艦隊は防衛軍が設置した戦闘衛星や無人攻撃ステーション、カムフラージュ砲台の攻撃によって、かすり傷程度ではあるが損害を受けていた。

更にヤマトが第十一番惑星で兵站基地を全滅させた影響で、急遽、後方支援の工作部隊を第十一番惑星へと戻し、基地の再建、更にその守備等で艦隊の数は当初の予定よりも減少し始めた。

防衛軍が設置した罠により、損害を被った艦も第十一番惑星へと戻している。

しかし、バルゼーは艦隊の速度を緩めることなく、土星圏を目指していた。

一方、タイタン基地に接近していた強行偵察機はというと、

 

「艇長、左舷後方に何かがワープアウトしてきます」

 

「なに?」

 

突如、強行偵察機の左舷後方しかも至近距離に空間歪曲反応が現れた。

やがて空間歪曲反応がおさまるとそこに現れたのは‥‥

 

「や、ヤマトだ!!」

 

「ヤマト!!」

 

そう、冥王星軌道から土星圏までワープを行ったヤマトだった。

突如、ワープアウトしてきたヤマトに強行偵察機は衝突され、偵察機は機体を真っ二つにされ爆発した。

 

暴れ馬の様にヤマトは地球を飛び出して行った時と同様の派手な帰還ぶりだった。

 

「相変わらず、荒っぽい連中だ」

 

その様を見た土方は苦笑したが、各艦隊の司令官や艦長、幕僚は、呆れ返る者、土方同様苦笑する者、眉を潜める者と反応も様々だった。

ヤマトはタイタン基地の管制塔に誘導され、指定されたドックへと着陸したが、渦潮は士官候補生達を乗せていると事と完全な状態では無いと言う事で、第十一惑星での戦闘で負傷したヤマトの乗員とタイタン基地での退避員を乗せ、地球へと帰還して行った。

 

連合艦隊司令長官の土方を議長に各艦隊の司令官や一部の戦隊司令官が召集され、敵艦隊を迎撃の最終作戦会議が行われようとしていた。

その会議に良馬と古代も土方から出席を命じられ、会議場へ向かう途中、良馬は古代の姿を見つけて声をかけた。

 

「古代君」

 

「月村さん」

 

「お久しぶり、元気そうで何より」

 

「ええ、まぁ‥‥」

 

「それで、古代君、早速聞きたいことが有るのだが‥‥」

 

「なんでしょう?」

 

「すくね は‥‥三木君はどうした?」

 

「‥‥」

 

すくね の三木艦長の事を訊ねられた古代は顔を俯かせる。

良馬はヤマトがタイタンに帰還した時、ワープアウト反応が二つあったことで、てっきりヤマト と すくね がワープアウトをしてきたのだと思ったが、ワープ明けをした時、姿を見せたのは、ヤマトとパトロール艦、渦潮 で、 ヤマト の援軍として向かった すくね の姿は見られなかった。

その事で すくね はテレザートまでの航海中、撃沈ないし、廃棄されたものだと推察された。

もし、廃棄ならば、すくね の乗員も ヤマト に移乗しているだろうと思い、古代に三木の事を訊ねたのだ。

撃沈か、廃棄か、その結果は‥‥

 

「‥‥戦死なされました」

 

古代は重くそして辛そうに三木の‥すくね の事を話した。

 

「そうか‥‥ヤマトを守って‥‥」

 

「はい。宇宙戦士らしいご立派な最後でした‥‥」

 

「古代君‥‥」

 

「はい」

 

「この決戦、何としても勝とう‥‥死んでいった三木君を始めとする大勢の宇宙戦士たちの為にも‥‥」

 

「はい」

 

(三木君、地球は必ず守るからな)

 

今は三木の死を悲しんでいる時ではない。

この後すぐに地球の命運をかけて、彗星帝国の侵攻艦隊と白色彗星本体との決戦が控えている。

三木の死を悲しむのはこの決戦に勝った後だ。

そう自分に言い聞かせ、良馬は拳にギュッと力を込め会議場へと向かった。

 

 

タイタン基地 大会議場

 

タイタン基地の大会議場には各分艦隊の指揮官や艦長ら艦隊の幹部が集まっていた。

 

「我が艦隊はこのタイタンの主力艦隊を中心として、前衛はヒペリオン、後衛はレア及びディオネ、そして予備軍は土星本星、カッシーニの隙間に配備する」

 

まず、土方が艦隊配置の説明をしたところから、作戦会議が始まった。

 

「何か質問は?」

 

作戦内容を一通り説明した後、土方は作戦内容に関して質問を受け付ける。

 

「敵艦隊の針路はどうなっているのでしょうか?」

 

一人の幹部が質問すると、

 

「太陽系に突入後は、まだ詳しい事は分かっておりません」

 

と、土方に代わり戦務幕僚の一人が答える。

 

「それでは、我々の裏をかくことをも考えられるわけですな」

 

「そうですな、もし、側面を突かれれば、この陣形では‥‥」

 

と、陣形配置について論議が起こる。

艦隊幹部は敵の針路が不明な今、どこから敵が襲い掛かってくるか分からないので、不安な様子だ。

しかし、

 

「敵の針路は分かっている」

 

と、土方は自信満々で答える。

 

『えっ!?』

 

土方の答えに一部の中から驚愕した声が聞こえる。

 

「敵は必ず正面からくる。数においても戦力においても我々よりも遥かに勝る彼らが戦う前にして、逃げ隠れする程、腰抜けではあるまい。敵は正面からくる‥‥我々は‥‥これを叩く!!‥‥では、質問が無ければこれまでだ諸君、各自各々の部署に就いてくれ」

 

土方が解散をかけると幹部たちは椅子から立ち上がり、それぞれの受け持ちの部署へと戻って行く。

ただ、会議散会後、土方から指名された数名はそのままタイタン基地の長官室への出頭が命じられた。

その中には良馬と古代も含まれていた。

司令長官室の前には、良馬と古代の他、第二艦隊航空戦隊司令の山口司令と第五艦隊航空戦隊司令のフレッチャー司令が立っていた。

四人の男たちが司令長官室へと入ると、そこには土方が待っていた。

 

「諸君らに来てもらったのは、他でもない‥‥君達には、これより敵機動部隊への索敵及び奇襲攻撃を行ってもらいたい」

 

冒頭、土方はそう告げた。

 

「奇襲‥‥ですか?」

 

「うむ、まずは之を見てもらいたい」

 

土方がパネルを操作するとそこには敵の陣容図が表示された。

 

「太陽系外周に設置された監視衛星から、敵艦隊の大まかな陣容は明らかになった。敵の旗艦と戦艦を中心とする戦闘艦隊‥‥そして、別ルートで太陽系に突入してきた空母を中心とする機動部隊‥‥しかも両艦隊の距離は相当開いている。問題はこの機動部隊だ」

 

土方は指揮棒で、機動部隊を指す。

すると、皆の視線は敵の機動部隊へ注がれる。

 

「我々の機動部隊とは比較にならん大部隊だ。敵は恐らくこの機動部隊を使い、艦載機による奇襲攻撃を行ってくるつもりだろう。敵艦載機の航続距離は長い、直接本体を叩かれれば、艦隊決戦を待つまでもない、我々は全滅だ。この決戦の勝敗は艦載機戦だ。どちらが先に制宙権を握るかによって勝敗が決まる。なんとしても、敵の機動部隊を叩き潰し、戦艦同士の砲撃戦に持ち込まなければならない」

 

土方の言葉に全員が頷く。

 

「つまり、我々の任務は、かのミッドウェー海戦の再現をすると言う訳ですね?」

 

フレッチャーが返した言葉に土方が我が意を得たりと頷いた。

確かに敵艦隊の陣形が、ミッドウェー島攻略を目指した南雲忠二中将率いる機動部隊と山本五十六率いる連合艦隊本体と似た様な陣形であった。

戦艦部隊と距離が開いている事と言い、旧日本海軍がミッドウェー攻略に四隻の空母を出撃させ、それを迎撃したアメリカ軍が三隻の空母を使用した事で、互いの空母の数も彗星帝国軍の方が多勢で地球側が少数と言う、戦力差も似ていた。

 

「そうだ。あのカブトガニが発進する前に空母を叩く。これがこの作戦の鍵となる。やってくれるか?」

 

土方が四人の男たちに訊ねると、男たちは全員土方に敬礼をする。

それは、自分たちに任せてくれと言う意志表示だった。

そんな男たちに土方はフッと笑みを浮かべた後、返礼する。

 

その頃の彗星帝国軍侵攻艦隊旗艦、メダル―ザでは‥‥

 

「提督」

 

「なんだ?」

 

「本隊から発進した強行偵察機が、提督との直接通信を終えてから、全く連絡がとれません」

 

「なにっ!?」

 

つい先ほど、交信を行った強硬偵察機が行方不明となった事実にバルゼーは驚愕する。

その強硬偵察機は、ヤマトがワープアウトした際、そのヤマトと衝突し消失した事など、バルゼーは知る由もない。

 

(敵の警戒網に捉えられ、撃墜されたのか‥‥?)

 

バルゼーが連絡の途絶えた強硬偵察機の行方について思考を巡らせている時、

 

「バルゼー提督、空母艦隊司令、ゲルン提督より入電です」

 

別ルートから太陽系へ入った空母艦隊の司令官、ゲルンから通信が入った。

バルゼーは取りあえず、行方不明となった強硬偵察機の事は放っておき、これより地球艦隊に奇襲攻撃を行うであろうゲルンに作戦の最終確認をする事にした。

 

「よし、繋げ」

 

「バルゼー総司令、当艦隊はまもなく土星圏へと入ります」

 

「よろしい。君の艦隊は、第一警戒態勢に入れ‥‥それと、私と君との交信も暫く絶つことになるだろう。その前に作戦を指示しておく。敵の主力は土星衛星タイタンにいる。土星空間に入り次第攻撃を開始しろ!!叩き潰すんだ!!一気にな!!」

 

「承知しました」

 

バルゼーとゲルンはそのやり取りを終え、通信を切った。

しかし、これが互いに最後の通信になるとはこの時二人は思いもよらなかった。

 

ゲルン機動艦隊が土星圏に接近する中、ゲルン提督率いる機動部隊を奇襲すべく、特別攻撃隊は出撃準備を行った。

 

出撃まであまり時間がなく、作戦の詳細は各艦隊が通信を行って決められた。

今回の作戦内容は、

偵察機隊の編成は、ヤマトのコスモタイガー隊(加藤隊、山本隊)と まほろば のコスモタイガー隊の一個部隊を対艦爆装して出撃。

敵艦隊を発見し次第、偵察隊は空母を攻撃して艦載機発進を阻止。

その後は空域に留まり、制空戦闘を行う。

敵艦隊発見の連絡があり次第、各空母から攻撃隊と第2次制空戦闘機隊が出撃、敵空母を攻撃・無力化する。

航空攻撃が成功した後、特別攻撃隊全艦は前進し、砲雷撃戦に持ち込み、空母部隊を殲滅する。

戦況によっては、第三次、第四次、攻撃隊を発艦させる。

攻撃において護衛の敵艦艇は原則として無視し、空母を優先的に攻撃する。

等々――。

この急造機動部隊は、第20任務部隊と命名された。

その艦船編成は、

 

遊撃戦隊

戦艦 まほろば

戦艦 ヤマト

 

第一航空戦隊

空母 ヨークタウン 

空母 ワスプ

 

第二航空戦隊

空母 飛龍

空母 蒼龍

 

護衛艦八隻

 

急造ながらも、機動部隊、第20任務部隊は敵機動部隊を求めて、タイタン基地をひっそりと離れていった。

 

まほろば の作戦室では、良馬と航空隊のメンバーが集まり、今作戦の内容を説明した。

恐らく、ヤマトや各空母でも同様の会議が行われているだろう。

 

「予想される敵、機動部隊の針路はコレだ。我々はイアペトゥス、フェーベを迂回し、敵艦隊の側面に出るコースをとる。しかし、これはあくまで予想だ。敵が本当にこの針路をとるかは、分からない。だが、今は時間が無い、ここは、土方提督を信じて行動するしかない。坂井大尉」

 

「ハッ」

 

「君は、自分の隊を率いて、ヤマト所属のコスモタイガー隊と共に索敵活動に参加してくれ。ただし、敵に傍受されないように、敵を発見するまで、通信の使用は禁止する。もちろん、敵が先に此方を察知するのを防ぐため、レーダーの使用も禁止する」

 

「承知しました」

 

作戦内容を説明した後、良馬は艦橋に戻る時、通路の途中で永倉と井上と出会った。

 

「艦長」

 

「ん?」

 

「三木さんは‥‥」

 

永倉と井上もヤマトが帰還した時、すくね の姿が無かった事に不安を感じていた。

そして、タイタンで、古代と接触したと思われる良馬に訊ねてきたのだ。

 

「‥‥」

 

永倉の質問に良馬は無言のまま、首を横に振った。

 

「そうですか‥‥」

 

「もう一度、みんなで会って、酒を飲み交わしたかったのう‥‥」

 

永倉と井上は残念そうに言う。

 

「三木君の為にもこの戦い何としてでも勝つぞ。三木君の弔い合戦だ」

 

「了解ッス」

 

「うむ」

 

三人の男たちは勇んで艦橋へと戻った。

やがて、第20任務部隊は土星衛星の一つイアペトゥスの軌道を通過した。

イアペトゥス通過を合図にヤマト と まほろば は対艦装備の偵察機隊を発艦させた。

ヤマトはコスモタイガー隊の加藤隊と山本隊の他に複座式のコスモタイガーにアナライザーと共に搭乗した真田が参加した。

まほろば は 航空隊隊長の坂井が隊を率いて索敵活動に参加した。

 

索敵範囲はイアペトゥス~フェーベまでの宙域とされた。

しかし、いくら捜索範囲が限定されているとは言え、あまりにも広大でしかもレーダーの使用は禁止、索敵は困難なものとなった。

 

「たく、レーダーも無線も使えないなんて、何時代だよ。大昔の零戦に乗っている気分だぜ‥‥」

 

坂井は索敵しながら、愚痴る。

それは、ヤマトのコスモタイガー隊も同じで、

 

「ちくしょう、レーダーなしか、目隠しして相手を見つけるなんて無茶苦茶だぜ」

 

「これじゃあ、太平洋で小魚一匹見つけるようなもんだな」

 

と、加藤も山本も愚痴りながら索敵していた。

 

一方、真田とアナライザーの方は、特に愚痴る事もなく、黙々と索敵活動を行っていた。

 

「どうだ?アナライザー?」

 

「何ノ反応モアリマセン。ボリュームヲ上ゲナイト無理カモシレマセンヨ」

 

アナライザーが探査波の感度を引き上げようか?と訊ねる。

 

「ダメだ、そんな事をすれば、敵に気づかれてしまうぞ。よし、もう少し足を延ばしてみるか‥‥」

 

真田機は土星圏の辺境へと向かっていった。

 

索敵隊から未だに空母発見の報告が入らず、古代には焦りの色が窺えた。

その間、各空母では攻撃隊の発進準備が終わり後は出撃命令を出すだけであった。

 

「落ち着けよ、古代。敵はきっと近くに居る‥‥今にきっと網にかかるさ」

 

島が古代を宥めた。

 

その頃、真田機は土星圏の一番外れフェーベに来ていた。

 

(フェーベか‥‥土星圏の外れの星だな‥‥)

 

「アナライザー反応は?」

 

「別ニ無シ」

 

土星圏の一番外れまで来て、反応がない。

もしや敵は既に我々よりも後方のタイタンに接近しているのでは?と真田の脳裏に最悪の事態が過ぎった。

 

古代が敵空母の発見の報が来ない事に焦りを覚えている頃、タイタンを飛び立った地球防衛軍本体の旗艦、アンドロメダの艦橋内でも土方は今か今かと敵空母の発見ないし敵空母部隊の撃滅の報を待っていた。

当然、ヤマトが索敵に失敗し、泊地がいきなり、敵機の襲撃を受ける可能性もあり、土方も気が気でなかった。

 

「第20任務部隊からの連絡は無いか?」

 

「はい、まだ何も‥‥」

 

副官の返答を聞き、土方は渋い顔をする。

 

「タイタン基地所属の直掩機を全部あげろ‥‥それと万が一を考え、ヒペリオン艦隊にはいつでも出撃出来るように命令、同時にヒペリオンとタイタンの戦闘衛星と攻撃ステーションを外縁部に移動させ、警戒にあたらせろ、それから当然艦隊には第一種警戒態勢を敷け」

 

「了解」

 

万が一の事を含め、土方は防空警戒を始めた。

 

その頃、真田はフェーベ周辺を念入りに索敵していた。

 

「反応は無いか?」

 

「相変ワラズ無シ」

 

(まずいな‥‥ココまで来て居ないとなると‥‥)

 

土星圏最果てのフェーベまで来て、敵がいない事に流石の真田も焦りの色が隠せなかった。

その時、

 

「ン?」

 

アナライザーの探査波が微弱な電波を捉えた。

 

「来タカナ?」

 

「どうした?アナライザー」

 

「近クデ、誰カ交信シテイマス」

 

「なに!?」

 

真田は操縦桿を動かし、アナライザーが交信電波を捉えた方角へと機首を向けた。

交信電波を捉えたのは、真田の居る位置と丁度反対側の位置だった。

フェーベの影から接近すると、其処に居たのは‥‥

 

「いたぞ、アナライザー‥‥あれだ‥‥」

 

そこには、探し求めていた敵の機動部隊が居た。

 

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