星の海へ   作:ステルス兄貴

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二十八話 土星圏 フェーベ会戦 殲滅

 

 

敵の機動部隊を見つける為、アナライザーと共に索敵に出た真田。

 

土星圏最果てのフェーベ近海にて、アナライザーは微弱な通信波を捉えた。

 

アナライザーが探知した電波方向に行くと、其処には探し求めていた敵の機動部隊が居た。

 

真田は早速、ヤマトへと敵機動部隊発見の報告を入れた。

 

「敵空母部隊発見!!此方真田、敵空母部隊発見!!」

 

真田の知らせは直ぐにヤマトへと伝わった。

 

「真田機より入電、フェーベの北、3.0地点に敵空母部隊発見」

 

「よし、加藤、山本、それから まほろば の坂井隊に伝えろ!!いいか、敵の艦載機が出る前に空母を叩くんだ。それと、各空母部隊に攻撃機を発進させろ!!」

 

「了解」

 

相原は早速、索敵活動を行っているヤマト所属のコスモタイガー隊の加藤、山本、 まほろば の坂井の隊に伝え、随伴している第20任務部隊の空母部隊にも攻撃隊の発進命令が下された。

 

「ヤマトより入電、フェーベの北、3.0地点に敵空部隊発見」

 

ギンガがヤマトからの電文を読むと、まほろば の艦橋は一気に湧き立った。

 

「よし、第一次攻撃隊発進!!目標、敵機動部隊!!」

 

まほろば からは全てのコスモタイガーが発艦し、同じくヤマト、各空母からも次々と対艦装備をしたコスモタイガー隊が出撃していった。

 

一方、敵に先手を取られたと知る由もない彗星帝国軍のゲルン機動部隊でも、奇襲攻撃を行うべく、対艦装備をしたデスバ・テーターやT-2の発進準備が整いはじめていた。

 

「急降下爆撃隊発進準備完了しました」

 

第一次攻撃隊の飛行隊長が空母艦隊司令のゲルンに攻撃機隊の状況を知らせる。

 

「よし、発進六十ガトランティス秒前!!いいか、合戦の露払いだ。地球艦隊を存分に叩きのめして来い!!」

 

ゲルンが攻撃隊に激を送る。

 

その時、

 

「提督!!」

 

「ん?どうした?」

 

「未確認飛行物体接近!!多数です!!」

 

ゲルンが座乗するアポカリクス級大型空母、ガンビヤ のレーダーが此方に接近してくる未確認飛行物体を捉えた。

 

「何だと!?」

 

ゲルンが確認の為、レーダーパネルを見ると、そこには確かにオペレーターの言う通り、味方の機動部隊に接近してくる多数の小型機らしき反応が多数あった。

 

「ま、まさか‥‥」

 

途端にゲルンの顔色が悪くなった。

 

本来、此方が地球艦隊を奇襲する側の筈なのに、逆に此方が奇襲される側になったのでは?と、ゲルンの脳裏にそんな考えが浮かんだ。

 

その考えは当たってはいたが、気づくのが遅かった。

 

「加藤隊攻撃開始!!空母を潰せ!!」

 

最初に現場へ到着したのは、ヤマトのコスモタイガー隊、加藤三郎が隊長を務める隊だった。

 

加藤隊はまず先頭を航行していたアポカリクス級大型空母に急降下爆撃を行った。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

突然の急降下爆撃を受け、空母の艦橋は大混乱となった。

 

「き、奇襲です!!地球軍の奇襲!!うわぁぁぁぁぁ!!」

 

次に まほろば の坂井健夫率いるコスモタイガー隊が到着し、被弾した空母の艦橋部と甲板部に急降下爆撃を行い、攻撃を受けたこの空母は爆沈した。

 

「迎撃機を発進させろ!!急げ!!」

 

ゲルンが奇襲してきた地球軍側の艦載機を迎撃させようと、イーターⅡ戦闘機の発進を命じるが、

 

「だ、ダメです!!発進口の近くには対艦攻撃用のデスバ・テーターやT-2しかいません!!イーターⅡ戦闘機の発進には少し時間がかかります!!」

 

そう、彗星帝国軍は地球艦隊の奇襲用の攻撃機を出してから、護衛機を出そうとしていたので、発進口の傍には迎撃機となるイーターⅡがおらず、すぐには迎撃機を出せない状況だった。

 

まさか地球側が奇襲攻撃を仕掛けてくるとは思っていなかったゲルン機動部隊は直掩機を空母の周辺に展開していなかった。

 

そんな中、状況は更に悪化した。

 

ヤマトのコスモタイガー隊で山本明夫率いるコスモタイガー隊も戦場に到着したのだ。

 

徐々に悪化する戦況に、

 

「ならば、攻撃機隊を出して迎撃にあたらせろ!!」

 

デスバ・テーターやT-2とて艦載機であり、まったく対艦載機戦が出来ないと言う訳では無かったので、ゲルンはこれ以上被害が大きくなる前に機体を飛ばしてしまおうと考えた。

 

「りょ、了解」

 

対艦戦闘から対艦載機戦闘になったが、予定通り、ゲルン機動部隊は艦載機の発進シークエンスを開始した。

 

しかし、飛び立とうとしたデスバ・テーターの上方からコスモタイガーは機銃斉射を行い、その結果、飛び立とうとしたデスバ・テーターは飛行甲板上で大破し、装備していた対艦装備のミサイルや魚雷、爆弾が空母の飛行甲板で炸裂、飛行甲板で誘爆が起きたり、艦載機発進口にコスモタイガー隊のミサイルが命中し、飛行甲板に出ようとしていた機体がその爆発に巻き込まれ、装備していた対艦装備のミサイルや魚雷、爆弾が空母の格納庫内で誘爆し、そのまま爆沈する空母が多発した。

 

「飛行甲板を狙え!!一機も飛び立たせるな!!」

 

三隊のコスモタイガー隊は機動部隊の護衛を行っている駆逐艦や巡洋艦には見向きもせず、空母の飛行甲板めがけて、攻撃を行ってきた。

 

「撃て!!たかが戦闘機だ!!叩き落とせ!!」

 

空母部隊は兵装されている対空砲火で迎撃し、ゲルンは意気消沈することなく、味方を鼓舞する。

 

そしてゲルンはここに来て、バルゼー率いる太陽系侵攻艦隊の本隊と連絡を取った。

 

「バルゼー提督、ゲルン提督より入電です」

 

無線封鎖していたゲルンから連絡が来たと言う事は、地球艦隊への奇襲が成功したのかと思ったが、最後の通信からあまり時間が経っておらず、奇襲が成功したにしても早すぎると思いつつ、バルゼーはゲルンとの通信回路を開いた。

 

すると、ゲルンからの通信は、バルゼーが望んでいたものとは180度違う内容で、本来地球艦隊を奇襲する側のゲルン機動部隊が地球側の奇襲を受けたと言うものであった。

 

「なにっ!?地球側艦載機の奇襲だと!?」

 

「は、はい。攻撃機発進寸前の出来事で体制を立て直せません‥‥」

 

ゲルンの声は作戦に失敗した事、現在も敵の攻撃を受けていると言う事で少し声が震えている。

 

「むぅ‥‥味なマネを‥‥」

 

バルゼーは、地球側の奇襲攻撃に唸るような声をあげる。

 

「如何いたしましょう、司令?」

 

「ゲルン!!作戦に失敗とやり直しは許されない!!叩け!!護衛の艦隊を集結させて、蛆虫どもを追い払え!!」

 

バルゼーは、ゲルンにそう言って通信を切った。

 

自分の不注意で起きた不測の事態は自分で何とかしろと言う意味合いであった。

 

悪く言えば、バルゼーはゲルンの事を見捨てたと言う事である。

 

ゲルンとしては、バルゼー艦隊の全艦とは言わなくても一個分隊でも救援に回して欲しかった。

 

しかし、総司令であるバルゼーがああ言ったのだから、恐らく本隊からの救援は来ないだろう。

 

ゲルン機動部隊はこの際、地球艦隊への奇襲と言う当初の目的を棄てて何としてもこの場を切り抜けると言う目標となった。

 

(デスラーから提供された地球のデータを軽視した報いか‥‥)

 

被弾し爆発を起こしていく友軍の空母を見てゲルンは後悔した。

 

ゲルンは地球軍の錬度も大した事はないと言うナスカの古い情報を真に受け、さらに艦隊数も此方が上だと言う事実に楽観視していた。

 

それはヤマトとの戦闘で戦死したナスカやゴーランドも同じであった。

 

しかし、デスラーは 「ヤマトを‥‥地球を侮ってはならない」 と、彗星帝国の軍人たちに常々忠告していた。

 

だが、当初からナスカの工作により、自分たちの存在を認知することの出来ない地球、エネルギー系統を破壊され、慌てふためく姿を見せた地球に対して彗星帝国の誰もが、恐るるに足らない敵だと認識してきた。

 

だが、今、自分の目の前で繰り広げられている状況は何だ?

 

少数ながらも敵パイロットの技量は高く、此方の対空砲火を易々とかい潜っては、飛行甲板に急降下爆撃や機銃掃射で滑走路に出たこちらの攻撃機や戦闘機を次々と屠っている。

 

考えれば、地球はガミラス相手にどん底に叩き込まれても、耐え抜き、そして遂には逆撃を喰らわせた。

 

敵を侮っていた事を後悔したが、まだ此方とて、すべての艦船が沈められた訳ではない。

 

そう、まだ我々は負けたわけではない。

 

空母、艦載機の数はまだ此方が優っている。

 

戦力ロスはまだ大した事はない。

 

それにこの戦力を見る限り、今の連中は強行偵察隊に過ぎない。

 

そいつらの母艦を見つけ出す事が出来れば‥‥。

 

「提督、敵の機動部隊を発見。ヤマト及び同型艦と思える戦艦、中型空母四、護衛艦八隻の機動部隊です」

 

ようやく、ゲルンがこの状況を挽回出来そうな情報が入った。

 

「よし、攻撃目標を敵本隊からそいつらに変更する!まだ健在な空母から攻撃機を出せ!返り討ちにしてやる!!」

 

しかし、ゲルン機動部隊が第20任務部隊への攻撃命令を発令したが、

 

「敵機襲来!!大編隊です!!」

 

「むっ!?」

 

艦橋のオペレーターが敵攻撃隊接近を告げた事により、状況は更に悪化した。

 

加藤、山本、坂井の三つのコスモタイガー隊を撃墜する前に第20任務部隊の第一次攻撃隊がゲルン機動部隊に襲い掛かって来た。

 

ゲルンの行動と決断はどちらも遅すぎたのだ。

 

タイタン宙域に展開中の地球防衛軍本隊のアンドロメダに第20任務部隊から通信が入った。

 

「土方提督、第20任務部隊より入電です」

 

「読め」

 

「はい、『7時08分、偵察隊が敵空母部隊発見、同時刻第一次攻撃隊発艦、7時23分、威力偵察隊第一波が敵機動部隊を奇襲。先頭の大型空母一隻に急降下爆撃を敢行、二分後の7時25分、威力偵察隊第二波が到着、攻撃を敢行、第一波攻撃により被弾した空母を撃沈、続いて第一次攻撃隊も敵空母を攻撃中。敵戦闘機の妨害は僅か』‥‥以上です!」

 

「そうか‥‥」

 

第20任務部隊の戦闘途中経過を聞き、土方の厳しい表情が僅かに綻び、艦橋員からも喜びの声が上がった。

 

序盤は上出来だ。

 

後は敵が浮き足立っている間にどれだけ戦果を拡大できるかだ。

 

作戦の要は制宙権を敵よりも多く、そして早く握る事だ。

 

それはつまり、敵の空母を相手よりも早く見つけ、敵攻撃機の発進を阻止することだ。艦載機を発進できない空母など、輸送船同然なのだ。

 

しかし、懸念としては敵の主力艦隊が空母部隊救出の為、第20任務部隊に襲い掛からないかと言う事だ。

 

奇襲に成功したとは言え、敵の主力はかなりの数だ。

 

数VS数の戦いに持ち込まれれば、第20任務部隊はあっという間に殲滅される。

 

土星圏の戦いは未だに予断を許さない状況だった。

 

 

第20任務部隊本隊も一路フェーベ宙域に近づいていた。

 

既に第二次攻撃隊は全機発進し、攻撃を終えた第一次攻撃隊の出撃機が続々と戻って来ている。

 

「奇襲で浮き足立っている中でも第一次攻撃隊にもそれなりの被害が出ている。恐らく第二次攻撃隊はそれ以上の被害を受ける可能性もあるな‥‥」

 

まほろば の艦長席で各空母部隊の帰還状況を見て良馬は一人呟く。

 

ヤマトから出た真田機は無事帰還し、加藤・山本両隊や まほろば の坂井隊は未だ全機が戦闘空域に留まって攻撃隊の援護を行っているが、被弾し、墜ちていく機体、煙を引いたり、傍目からもわかるほど、ヨタヨタしながらやっと飛んでいる機もいる。

 

機体は直ぐに作れても、それに乗り、機体を操る搭乗員の育成は一朝一夕では、出来ない。

 

初実戦を経験し、帰還した第一次攻撃隊の搭乗員の中には、思わず泣き出す者や極度の緊張でコクピットや後部銃座からなかなか降りられずにいる者もいた。

 

戦闘機乗りとして出撃し、生き残ったならば、次に来る新たな恐怖と戦わなければならない。

 

それは軍人全てに言える事なのだろうが、その恐怖を乗り越えて行く事で、軍人として大きく成長して行く事だろう。

 

時間を追うごとにゲルン機動部隊は無残な状況になっていった。

 

最初の奇襲攻撃で旗艦と先頭集団が被弾したため隊列が乱れ、次々とやってくる敵の攻撃機は対空砲火をかい潜り、空母だけに襲い掛かかってきた。

 

直撃を受けたナスカ級の中型空母は次々と針路を外れたり、速度を落として落伍する。

 

そして、搭載していた攻撃機の燃料や弾薬に引火して大爆発を起こして四散するものも出ている。

 

指揮官からの命令が徹底されていたのだろう。敵は護衛の駆逐艦や巡洋艦には一切関心を示さず、空母だけを襲っている。

 

旗艦を含む大型空母は未だ全て残っているが、無傷の艦はなく、肝心の艦載機を出せる状態ではない。

 

敵の機動部隊を見つけながらもその敵に一矢報いことも出来ないこの歯がゆい状況‥‥。

 

ゲルンは悔しそうに歯を喰いしばった。

 

地球連合艦隊旗艦、アンドロメダには逐次、戦況報告が届けられていた。

 

「第20任務部隊より入電、只今第三次攻撃隊が敵残存空母への攻撃を開始しました!」

 

「うむ」

 

通信士の報告に、土方は頷く。

 

第二次攻撃隊の攻撃を辛くもしのぎ切ったったらしい敵空母が、反撃の攻撃隊を向けてきたというから、之が最後の攻撃となるだろう。

 

「第20任務部隊も敵機動部隊に接近し、砲撃戦に持ち込む様です」

 

「‥‥敵本隊に動きは?」

 

「針路・速度とも変わりません。真っ直ぐこちらに向かってきます!」

 

(機動部隊を切り捨てたか‥‥一見冷徹に見えるが、指揮官としてはある意味正しい。混乱を最小限で抑え、艦隊戦で勝てると踏んでいるというわけか‥‥となると、敵にも波動砲の様な切り札となる兵器を持っている可能性があるな‥‥)

 

土方はまだ接触しないバルゼー艦隊の事を思っていた。

 

奇襲の機動部隊が攻撃を受けても救助の為、反転する気配もない。

 

元々数において相手が勝っているが、数の暴力以外に敵には波動砲の様な切り札となる決戦兵器を持っているかもしれないと土方は危惧した。

 

その頃、フェーベ近海の戦場では、

 

ゲルンが座乗する旗艦 ガンビヤ も既に被弾し、格納庫まで火が迫っていた。

 

壊滅していく味方の機動部隊の姿が映るパネルをゲルンは唖然としながら見ていた。

 

「何の働きもせぬうちに‥‥残念だ‥‥」

 

「提督、格納庫に火が迫っています!!スプリンクラーも上手く作動せず、消火器、消火薬剤も使い果たしました。ですが、鎮火の見込みはありません!!このままでは危険です!!総員退艦命令を具申します!!」

 

無念の表情で、幕僚の一人が既にガンビヤが消火不可能になった事を報告する。

 

それはこの艦がもう長くない事を知らせていた。

 

「そうか‥‥」

 

ゲルンは一瞬瞑目し、再び瞼を開く。

 

「総員退艦!!」

 

遂にガンビヤに総員退艦命令が発令された。

 

「提督も脱出艇にお急ぎを‥‥」

 

幕僚の一人がゲルンにも脱出を急がせる。

 

「私はいい‥‥」

 

「そ、そんなっ!?それでは、私も‥‥」

 

「ならん!退艦しろ、これは命令だ!!我が機動艦隊の戦闘は終わりだ。敗戦の全責任は司令官たるこの私にある。諸君らは残存艦をまとめてバルゼー提督率いる本隊に合流せよ。そして、この戦いで散った同胞に報いるだけの働きをしろ!!」

 

これだけの失態を冒したのだ。本国に戻ったところで、あの冷血な女総参謀長(サーベラー)の手によって形ばかりの軍法会議の後、処刑場送りになるのは目に見えている。

 

ズォーダー大帝から直々に死を賜るならまだしも、あの冷血女に裁かれる事がゲルンにとって屈辱以外の何物でもない。

 

司令官の気迫に幕僚はこれ以上抗弁できないと悟り、敬礼してその場から去って行った。

 

その後、ゲルンはホルスターに入った銃を手にして銃口を胸にあて、引き金を引いた。

 

バキューン

 

一発の銃声が艦橋に響いた。

 

「うっ‥‥お‥‥」

 

ゲルンの手から銃が落ち、ゲルンの身体自体も艦橋の床に倒れた。

 

「バルゼー司令‥‥私は負けた‥‥」

 

その言葉を最後にゲルンは息を引き取り、同時にガンビヤも大爆発を起こした。

まだ脱出中の大勢の乗員と共に‥‥。

 

旗艦を失ったゲルン機動部隊へ止めを刺すかの様に戦場に第20任務部隊本隊が到着した。

 

「火器管制システム起動!!艦内隔壁閉鎖!全艦砲雷撃戦用意!!」

 

「了解!!」

 

戦闘宙域に到着した良馬はすかさず、戦闘態勢入りを命じた。

 

敵の機動部隊はもはや、機動部隊と言えるようなものではなく、無傷の空母は既に存在しておらず、艦の各所から火炎や煙を噴き出している。

 

損傷しながらも、この宙域から撤退を図ろうとする空母、敵に一矢報いろうと勇敢にも、此方に向かってくる空母もいる。

 

護衛の駆逐艦や巡洋艦も空母同様、撤退しようとする艦、敵に突撃しようとする艦がおり、ゲルンが戦死してしまった事により指揮系統が完全に働いていない。

 

その光景は、一昨年までの自分たちの僚艦と同じ光景。

 

ガミラスに一方的に追い詰められていく地球艦隊と同じだった。

 

しかし、彼らが地球を侵略しようとしている敵には変わらない事から情けはかけられない。

 

「砲撃準備完了!!」

 

「撃て!!」

 

第20任務部隊の全ての艦船からショックカノンとミサイルが放たれた。

 

やがて、敵艦隊の中に巨大な火球がいくつも閃く――。

 

第20任務部隊の艦船に捕捉され、砲雷撃で次々と爆発炎上し、やがて四散していく。

 

敢に立ち向かう護衛艦等も次々と第20任務部隊の砲撃やミサイル、魚雷に斃されていく。

 

「まさか‥‥こんな‥‥こんな事が‥‥栄光ある彗星帝国ガトランティスがあんな辺境の蛮族共にぃ‥‥ぬわぁぁぁぁあぁぁっ!!」

 

こうして、第20任務部隊は敵の機動部隊を壊滅に追いやった。

 

正直に言うと、この大破した彗星帝国軍の艦艇は全て曳航し、鹵獲したかったが、彗星帝国軍の侵攻艦隊本体との決戦が迫っている中、工作艦をこの宙域に呼び出して、近くの防衛軍基地に曳航する時間的余裕がなかったため、この宙域に漂う敵艦艇の鹵獲は断念せざるを得なかった。

 

「土方提督、第20任務部隊より入電!!『我、敵機動部隊への奇襲に成功!!之を壊滅。喪失艦なし。されど、砲撃戦により、空母 ヨークタウン中破、未帰還機二十九機の損失。これより戦闘宙域を離れ、本隊に合流の予定』‥以上です!!」

 

「そうか‥‥」

 

土方の表情が綻んだ。

 

まずはこちらが先手をとった。

 

これで少しは戦況を有利に進められると、土方は確信した。

 

「機動部隊、奇襲に成功!!敵機動部隊壊滅」

 

敵の機動部隊壊滅の知らせは地球の防衛軍司令本部にも知らされた。

 

その知らせを受け、司令本部に詰めていた幕僚や地球連邦政府高官はホッと息をつく者、味方の勝利に歓喜する者がおり、司令本部は活気に満ちていた。

 

「作戦の第一段階は成功の様だね?」

 

地球連邦大統領も司令本部に詰めており、今作戦の全体内容をあらかじめ、藤堂から聞いており、まずは前哨戦に勝利した事を改めて藤堂に確認する。

 

「はい。しかし、敵は尚強大です。まだ油断はできません」

 

「うむ」

 

味方の勝利に喜んでいる幕僚や政府高官の中で、藤堂だけはまだ油断ならないと、言って表情を崩す事は無かった。

 

そう、まだ前哨戦に勝っただけであり、この先には、彗星帝国軍侵攻艦隊本隊と白色彗星本体との決戦が控えているのだから‥‥

 

フェーベの戦闘宙域からタイタン宙域へと帰投する まほろば の艦橋でも、作戦の第一段階が無事成功した事にホッとした様子と勝ったと言う事で明るいムードが漂っていた。

 

「奇襲作戦は大成功ですね、艦長」

 

新見が良馬に言う。

 

「ああ。しかし、敵の総数は未だに地球艦隊を上回っている。油断は禁物だ。ところで副長、白色彗星の現在位置は?」

 

「地球標準時、十三時に太陽系に突入しました」

 

(今は、敵の侵攻艦隊本隊との決戦に全てを賭ける時か‥‥でも、何か嫌な予感がする‥‥)

 

まだ姿を見せない彗星帝国軍侵攻艦隊の決戦に備えるしかない防衛軍だった。

 

しかし、その後には直ぐに白色彗星本体との決戦が控えている。

 

第20任務部隊の将兵にとっては、連続三戦の内、最初の一戦目が終わったに過ぎない。

 

彼らにとっては長い日になりそうだった。

 

「艦長、連合艦隊提督より入電です。『諸君らの努力に感謝する。直ちに本隊へ帰還せよ。地球防衛艦隊提督・土方 竜』‥以上です」

 

「よし、機関全速、本隊に合流するぞ。ヨークタウンの援護は十分に行え」

 

第20任務部隊は一路、タイタン基地へと急いだ。

 

砲撃戦の中、敵弾を受けて中破したヨークタウンの艦載機は使用可能な機体は搭乗員と共に まほろば へ移乗し、残りの機体は全て廃棄された。

 

本隊到着後、ヨークタウンはタイタンのドックへと回航される事が既に決定された。

 

「なにっ!?全滅だと!?」

 

味方機動部隊の壊滅の報告は当然、侵攻艦隊総司令のバルゼーの下にも届いていた。

 

バルゼーはその情報に間違いがないのか改めてもう一度訊ねるが、

 

「はい。我が軍の空母は全て、地球軍の艦載機、空母部隊とヤマトを中心とする地球軍の艦船による砲撃で全滅し、ゲルン提督も戦死なさいました」

 

情報に間違いはなく、味方の機動部隊は全滅、指揮を執っていたゲルンの戦死も確認された。

 

「し、司令‥‥」

 

幕僚の一人がこの事実に怯えたような声を出す。

 

「うろたえるな!!」

 

バルゼーは味方の士気が落ちぬように、声を張り上げる。

 

「機動部隊を失っても我々には火炎直撃砲がある。地球艦隊など恐れることはない!!速度をあげろ!!一気に蹴散らせてやる!!」

 

機動部隊を失い、敵に先手をとられたにも関わらず、バルゼーの顔は自信に満ちていた。

バルゼーの鼓舞により、彗星帝国軍は士気の低下を免れた。

 

そう言った点では、やはりバルゼーには指揮官としてのカリスマ性があるのかもしれない。

 

土星圏を舞台にした地球と彗星帝国との決戦、第二ラウンドはすぐそこまで、迫っていた。

 

 

 

 

ここで舞台は土星圏からミッドチルダに移る。

 

 

はやて の家から戦艦大和に関する本を持ったフェイトはミッドにある高町家に戻った。

 

何故、フェイトがミッドの高町家に戻ったのかと言うと、彼女はミッドでは高町なのはと同棲しているのだ。

 

現在ミッドの高町家には、家主の なのは の他にフェイトとJS事件の折、街中で保護し、その後養子縁組をした高町ヴィヴィオの三人で暮らしている。

 

夕食後、フェイトはリビングにあるテーブルの上にはやての家から持ち帰った本を読みふけっていた。

 

そこに、

 

「フェイトママ、それ何のご本?」

 

お風呂上りなのか、肩にバスタオルを掛け、パジャマを着て、髪の毛はほんのり濡れているヴィヴィオがフェイトに声をかけてきた。

 

「ん?お仕事に関係あるご本だよ。ヴィヴィオ」

 

「ふぅ~ん、どんなご本なの?」

 

ヴィヴィオが覗き込む形でフェイトが読んでいる本を見てくる。

 

「お船?」

 

ヴィヴィオの目には海上をテスト航行している時の戦艦大和の白黒写真が掲載されていた。

 

しかし、ミッドには海上戦艦と言う物は管理局の歴史史上存在するはずが無く、之が船なのかヴィヴィオには確信が無かったので、疑問形となったのだ。

 

「うん、これは、なのはママの生まれた世界で作られた昔のお船なんだよ」

 

フェイトが戦艦大和について簡単にヴィヴィオに教える。

 

「どうしたの?フェイトちゃん?」

 

そこに、ヴィヴィオと入浴していた なのは がやって来た。

 

なのは もヴィヴィオ同様、髪を濡らし、濡れた髪にバスタオルを当て寝間着姿である。

 

「なのは‥‥」

 

フェイトは、はやて に話した先日のプレオとヤマトについて なのは に話そうか話さない方がいいか迷った。

 

フェイトが迷っている間に なのはは、フェイトに近寄りヴィヴィオ同様に本を覗き込む。

 

「ん?これ、戦艦大和?」

 

流石、生まれ故郷で作られた有名な軍艦だけになのはは本に載っている軍艦の正体にすぐに気付く。

 

「あっ、うん。そう‥‥」

 

「どしたの?急に?」

 

なのはは、何故フェイトが急に日本の歴史に‥‥しかも旧海軍の軍艦に興味を持ったのか疑問に感じた。

 

フェイトが六課時代の同僚、ルキノ・リリエみたいに艦船マニアになったのかとさえ思った。

 

「実は‥‥」

 

フェイトは なのは にヤマトの事を話す事にした。

 

はやて やシグナム達に教えて、なのは に秘密にしておくと後になって涙目で責められそうだからだ。

 

下手をしたら、ディバインバスターを撃ち込んできそうだ。

 

「なのは、今から見せる映像は誰にも言わないって誓える?」

 

「えっ?」

 

フェイトの真剣な表情で なのは に訊ねる。

 

それは、親友のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンではなく、執務官、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの顔をしていた。

 

フェイトの表情に少々戸惑う なのは。

 

互いに はやて が立ち上げた試験部隊、機動六課の時代、寮に居る時フェイトは仕事の話を一切なのはにはしなかった。

 

そのフェイトが今、こうして執務官としてなのはに問うてきた。

 

「うん。分かったよ、フェイトちゃん。誰にも言わない」

 

なのは もフェイトの親友の なのは ではなく、管理局員としての顔をして、フェイトの問いに答える。

 

フェイトは なのは にヤマトの映像を見せる前にヴィヴィオを寝かしつける様に頼んだ。

 

ヴィヴィオは最初、自分だけが除け者にされるのだと思い駄々をこねたが、なのはが優しく何度もヴィヴィオに言い聞かせ、ヴィヴィオは渋々自分の部屋へと行き、ベッドの中へと入った。

 

ヴィヴィオを寝かしつけた後、フェイトはなのはに例のヤマトの映像を見せた。

 

「‥‥」

 

映像を見た後、なのはは、目を見開いたまま、固まる。

 

それは、この映像を見た管理局関係者全員と同じリアクションだった。

 

「なのは?大丈夫?」

 

フェイトが なのは に声をかける。

 

「っ!?だ、大丈夫だよ」

 

「そう?‥‥それで、どうだった?」

 

「‥‥これ、本当にあった事なの?」

 

なのは は教導隊所属と言う事で、プレオが破壊された事を知らない。

 

いや、なのは だけでなく、今現在、プレオが破壊されたことは管理局でも一部の人間にしか知らされていない。

 

それ故、プレオがミサイル攻撃で破壊された事実にショックを隠せない。

 

しかし、この後、管理局はプレオが破壊されたことを公表しなければならないだろう。

 

プレオに居たのが、管理局の自然保護官のみだった場合は、殉職した局員の遺族のみに知らせ、プレオが破壊されたことを秘匿できたかもしれないが、今回プレオの破壊による犠牲者の中には、管理局の自然保護官以外にも惑星開発事業の作業員が多数含まれていたため、秘匿するのは難しく、秘匿すれば、また管理局のイメージダウンに繋がりかねない。

 

映像を見て、少なからずショックを受けた なのは の心中には、もしかしたら今後、ミッドや両親や親友が住んでいる地球がこのミサイル艦隊の攻撃を受ける可能性もあるかもしれない‥と言う、心配と同時にプレオを破壊したミサイル艦隊を一撃で消滅させたヤマトにも なのは は脅威を抱いた。

 

管理局の次元航行艦なんて話にならない攻撃力と航行能力を有した強力な戦闘艦。

 

そのヤマトが所属している組織と管理局が敵対した時、自分の教え子もその戦火で命を落とすかもしれない。

 

そんな先行き不安な未来を予想し たなのは。

 

そんな、なのは の不安を感じ取ったのか、

 

「大丈夫だよ。なのは」

 

「え?」

 

「このミサイル艦隊が所属している組織とは話す余地はないけど、私はこのヤマトとは、話し合える気がするの‥‥こっちに敵意がないってことを示して、ちゃんと話合いをすれば、きっと分かり合えると思うの。だから、なのは は心配しないで、ねっ?」

 

「う、うん」

 

なのは は不安を抱きつつも、過去の例からきっと大丈夫だとフェイトの言葉を信じた。

 

なのは がヤマトの映像を見ていたその頃、

 

ミッドの西部、エルセアにあるナカジマ家のリビングにて、家主のゲンヤ・ナカジマが一人で晩酌をしていた。

 

手には昔、妻が亡くなる前に家族全員で撮った写真とつい最近に撮った写真の二枚があった。

 

ゲンヤは目元を緩め、笑みを浮かべながらその写真を見ていた。

 

「クイント‥‥ギンガ‥‥スバルに沢山の姉妹が出来た‥‥皆、最初は戸惑っていたが、今では本当の姉妹の様に仲が良いぞ‥‥お前たちも向こう(天国)で仲良くやっているか?」

 

殉職した妻と娘に語るゲンヤ。

 

しかし、妻のクイントの方は殉職したことがはっきりと分かっているのだが、ギンガの方は、実は生きていると言う事実をゲンヤは知る由もない。

 

そして、ゲンヤの言うスバルの姉妹たち‥‥。

 

それはJS事件の後、管理局によって捕縛されたスカリエッティ側の戦闘機人たちの事だった。

 

全部で十二人居た戦闘機人の内、一名が死亡し、後の十一人が捕縛された後、管理局側から彼女たちに司法取引が持ち掛けられた。

 

その内、七名がその取引を受け海上にある厚生施設にて更生プログラムを受けた。

 

そしてその担当にゲンヤとスバルの二人が自ら志願して行った。

 

更生プログラムを受けた戦闘機人の中で稼働日数が最年長のチンクはこの二人がかつて、自分たちが壊滅に追いやったゼスト隊の関係者であると知ると、チンクは二人の前で土下座をして謝罪した。

 

その時、チンクは、

 

「自分の事はどう処分しても構わない。どんな処分も甘んじて受けるが、此処に居る妹たちはゼスト隊の事件には無関係なので、どうか、手は出さないで欲しい」

 

と、涙を流しながら妹たちの助命を乞うた。

 

そんなチンクの姿に他の妹たちもチンクに習い土下座をし、

 

「チンク姉を助けてほしい」

 

と、チンクの助命を乞うた。

 

助命も何も、元々処分や手を下すと言う選択肢はなかったので、彼女たちの行動にゲンヤとスバルは驚いたが、戦闘機人である彼女達にも自分たち同様家族愛がちゃんと存在しているのだと実感した。

 

スバルはチンクの肩を叩き、

 

「お母さんの事は、悲しい事だけど、貴女たちはこうして罪を認め、償おうとしている‥‥復讐はまた新たな恨みを生む。そんなことは、お母さんはきっと望んでいない。だから、アタシたちは貴女を許します」

 

と言ってチンクの罪を許した。

 

その後、スバルは赤い髪をした自分にそっくりな戦闘機人ノーヴェともよく話をした。

 

彼女は姉妹の中でもチンクを一番に尊敬し大切にしていた。

 

スバル自身もギンガの事を自慢の姉だと思っており、更生施設の休憩スペースにて二人で姉自慢に花を咲かせる場面が多々あった。

 

でも、ギンガはもうこの世に居ない‥‥。

 

公式では殉職扱いになっている姉‥‥。

 

母親同様もう二度と会えない姉‥‥。

 

そんな姉の話をするスバルの姿にノーヴェは切ない思いを抱いた。

 

その後、更生プログラムが終了し、彼女たちの見受け先が決まった。

 

チンクとノーヴェの他にディエチとウェンディの計四人がナカジマ家の養子となり、セイン、オットー、ディードの三人がベルカ地区にある聖王教会と言う教会で修道女として引き取られた。

 

ナカジマ家に引き取られた彼女たちは、司法取引の条件通り、管理局の適材適所と言うべき部署に配置されるべく、それぞれ訓練校へと入校した。

 

元々司法取引の内容も管理局か教会に関係するものだったので、仕方が無かったが、全くの自由が無いと言う訳でもない。

 

チンクは訓練校卒業後、下士官候補生として、訓練校よりも更に上の養成学校へと進み、その後、要人警護を専門とする部署、警備課へと配属され、ノーヴェは姉のスバル共々救助隊へと入隊し、スバルとコンビを組み、休みの日にはジムへと足を運び、ストライクアーツと言う格闘技を始めたヴィヴィオのコーチをしている。

 

ディエチとウェンディの二人は捜査官として父、ゲンヤが隊長を務めている108部隊へと配属となった。

 

地上配置となった彼女たちの下には、当然優秀な人材を貪欲に欲する本局からのしつこい程のスカウトがきたが、彼女たちは皆、そのスカウトを断り続けた。

 

彼女たちが“陸”よりも給料も昇進スピードが早い“海”のスカウトを蹴り続けた。

 

その理由は、

 

「自分たちのせいで、ミッドに住む大勢の人達に迷惑をかけた。その人たちに償うためにも、自分たちは、ミッドを離れるわけにはいかない」

 

と、本局の人事部の人間に言い続けた。

 

(司法取引だから仕方ないとは言え、アイツらも管理局員になっちまったか‥‥)

 

妻と娘の二人が管理局員となり、そして二人とも殉職してしまった。

 

そして新たな娘たちも管理局員になってしまった。

 

願わくば、スバルを含めてこれ以上新しい家族が失われない事を切に願うゲンヤだった。

 

 

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