星の海へ   作:ステルス兄貴

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二十九話 土星圏絶対防衛ライン

 

 

はやてたち、そして なのは に例のヤマトの映像を見せた翌日、

 

「そんなっ!!」

 

フェイトは義兄のクロノから、プレオ、テレザートが存在したヒアデス星団海域の封鎖が正式に決定したことを聞かされた。

封鎖された事で今後、管理局、管理世界の民間の次元航行能力を持つ船がヒアデス星団へ赴くことは無くなった。

 

「プレオ、テレザート共に消滅してしまったので、もう観測する必要性が薄くなったのと、あの海域周辺で大規模な宇宙戦争が発生しているからと上層部が判断したんだ」

 

「それはわかるけど‥‥」

 

尚も言い募ろうとする義妹(フェイト)を抑えて、クロノは続ける。

 

「それにあの近くで中規模な次元余震が発生したらしくて、観測機からのデータも届かなくなったんだ。その為、こちらからの通信もできなくなった」

 

「‥‥」

 

「気持ちはわかる。だが、あの海域では多くの人が亡くなった‥‥そんな危険な海に今後も沢山の次元航行艦を送ってこれ以上の犠牲を増やすことは僕も賛同できない。だから、これはある意味正しい選択なんだよ」

 

フェイト自身だって、わからないわけではない。

しかし、漠然とその現状を受け止めろと言う事実にも納得できなかったが、義兄(クロノ)にそう言われては反論の余地がない。

人命はなによりも尊いものだ。

それを無視するようでは、かつてJS事件後に摘発された人の命を何とも思わず、違法研究を続けてきたスカリエッティを始めとする研究者や局員たちと同じだ。

その一方で、あの海域に行かなければヤマトに会う事も出来ない。

フェイトの心情は複雑だった。

 

「それに、あのミサイル艦隊やヤマトの戦闘力を見せつけられては、プレオ、テレザートと同一次元の世界には手が出せないのが現実だ。こちらの艦船は基本的に治安維持用の母艦かパトロール任務の艦、反対に向こうは純粋な戦闘艦なんだから」

 

「‥‥」

 

「それに、あれだけの戦闘力を持つ艦船を開発建造するには莫大な費用と高度な技術力が要るけど、管理局はその二つとも工面できる目途はたってないんだ。ただでさえ予算面や人材面では、地上本部と冷戦状態なのに、これ以上造艦予算を増やして、地上の予算や人員を減らす様ならば、地上本部がクーデターを起こしかねない。それにミッドや管理世界市民の理解を得られるかどうかさえもわからないんだ」

 

クロノの言うとおり、予算面や人材面でJS事件前から常に冷遇されている地上本部からの本局への反感は相当なものだ。

フェイトも管理局の仕事をするようになって、ある程度はわかってきていた。

“陸”‥‥特に地上本部の局員に対する自分たち本局局員を見る目は決して優しいものではない。

フェイト や なのは は本局が地上本部より上の存在なのだという意識は毛頭ない。

次元世界の平和のために働く同じ仲間だと思っているが、同じ本局所属者の中には“陸”所属の局員を見下す者も少なくない。

事実そういった現場を何度も目撃して気分を悪くしたこともある。

逆に“陸”側からも、自分たちが本局所属と知るや冷たくあしらわれたり、門前払いを受けて、悲しくなったことも一度や二度ではなかった。

特に六課時代は凄かった。

自分たちが地上本部の‥‥“陸”の全権を奪いに来た本局の尖兵だと思われていたからだ。

事実、そういった思惑をもっていた本局の局員も居た。

しかし、彼らの目論見は彼ら自身の汚職と不正によって潰えている。

まさに自業自得の結果と言える。

 

「でも、管理局が未来永劫、次元世界の中心でいられると言い切れるのかな?」

 

フェイトがポツリと呟く。

 

「ん?それはどういう意味だ?」

 

クロノはフェイと(義妹)に聞き返す。

 

「言葉どおりの意味だよ。これまではどこの次元世界でも管理局の次元航行艦を超える能力を持った船もなければ、宇宙戦争なんかもなかった‥‥でも、それは管理局が知らなかっただけで、実際は管理局の艦船を簡単に沈め、惑星を粉々にするミサイル艦やアルカンシェルさえ問題にならない威力のエネルギー砲撃を放つ宇宙戦闘艦が存在していた‥‥一つの次元世界で起きた事が、他の次元世界で起きないとは誰も言い切れないよね? もし、ミッドにあのミサイル艦隊が攻めてきたら、どれだけの被害が出るか‥‥」

 

フェイトの言葉にクロノの脳裏には、あの第58探査部隊をいとも簡単に撃破した深緑色の艦隊が思い出された。

フェイトも自分の主張が、現状では受け入られがたいことは重々承知だった。

ただ、あの艦‥ヤマトを目の当たりにしてから、不安感を抑え切ることができないでいた。

 

 

ここで舞台はミッドから土星圏へと戻る。

 

 

時に西暦2201年。

 

刻一刻と迫り来る彗星帝国の進軍を阻止する為、ここ土星軌道には地球防衛軍の主要艦隊が集結していた。

 

艦隊総司令官である土方竜提督の乗る旗艦アンドロメダをはじめ、全ての艦船がここに集結し、絶対防衛線をしいていたのだ‥‥‥‥。

 

そして、その中には敵の空母部隊を撃破し、本隊へと合流した まほろば や ヤマトの姿もあった‥‥‥‥。

 

これが、後の歴史に残る『土星圏総力戦』である。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「敵艦隊接近!!現在、ヒペリオン軌道を航行中!!」

 

地球防衛軍は彗星帝国侵攻艦隊本隊の姿をようやく捉えた。

 

「全地球艦隊乗組員諸君に告ぐ!!決戦の時はきた!地球の興廃この一戦にあり!各員奮励努力せよ!戦艦部隊、マルチ陣形を取れ!これより拡散波動道の一斉射撃をもって、敵艦隊を正面から迎え撃つ!駆逐艦隊、陽動開始!敵を中央へ!!拡散波動砲の射程圏内へ引き付けろ!」

 

土方の命を受け、戦艦部隊は速やかに陣形を整え拡散波動砲のチャージを開始し始める。

 

「提督!!ヤマトの古代艦長代理より通信です!!」

 

「繋げ」

 

「提督、収束波動砲のヤマトでは広域破壊の任に参加できません。本艦も陽動任務の方に参加します!!」

 

「うむ、頼む!!だが、気をつけろ!!拡散波動砲に巻き込まれれば一巻の終わりだぞ‥‥」

 

「了解」

 

ヤマトを始めとする第20任務部隊は まほろば とヨークタウンを除いた空母部隊、巡洋艦 インディアナポリス を旗艦とする第232水雷戦隊と共同して敵艦隊の陽動に参加する事となった。

まほろば は収束波動砲、拡散波動砲の両方を撃てると言う事で、陽動ではなく、アンドロメダ本隊と合流し、敵艦隊の殲滅任務に当たった。

 

地球艦隊がバルゼー艦隊を捕捉しているのと同時に、バルゼー艦隊も地球艦隊の艦影を捉えていた。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「バルゼー提督、地球艦隊が前方で隊列を組んでいます。レーダー反応の中には例のヤマトとおぼしき艦影も確認されています」

 

「ヤマトか‥‥!!高速艇部隊、前進!一気に蹴散らしてやれ!!」

 

高速駆逐艦を中心とする部隊が地球艦隊めがけて接近してきた。

 

ヤマトと巡洋艦、駆逐艦を中心とする陽動部隊は接近してくる敵を迎え撃つかのような構えをとり砲撃とミサイル攻撃を開始した。

数で圧倒的に劣る敵に挑発され、敵艦隊は怒り狂ったかのようにヤマトへと接近してくる。

それに彗星帝国側としてもヤマトは多くの同胞を殺してきた仇でもあったため、彗星帝国艦隊は猛り狂ったかのように接近してきた。

頃合を見て古代はヤマトを反転させ、後退するかのようにみせる。

他の僚艦もヤマトの動きに合わせ、反転後退する。

それを見た敵艦隊は追撃を行い知らぬ間に拡散波動砲の射程圏内へと入って行く‥‥。

ヤマトと陽動に参加した僚艦はタイミングを図って小ワープをして拡散波動砲の射程圏内から離脱した。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「陽動部隊、全艦離脱を確認!」

 

「拡散波動砲エネルギーチャージ完了!!発射準備完了!」

 

「拡散波動砲‥発射!」

 

戦艦部隊から多数放たれた拡散波動砲はヤマトを追撃してきた敵艦隊を飲み込み一艦残らず消滅させた。

目の前で起こった光景に敵の指揮官バルゼーも戸惑いが隠せなかった。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「な、なんだ!?‥‥あの強力な兵器は!?」

 

「データにありません!!‥‥ど、どうします?提督?」

 

「騒ぐな!まだ本隊全てがやられたわけではない!!戦力の上では、まだこちらが勝っているのだ!!全艦、砲門開け!!総力戦に突入するぞ!」

 

メダルーザを先頭に彗星帝国艦隊は退くことなく尚も進撃を続ける。

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋

 

「すごいな‥‥!!」

 

「あれが、拡散波動砲の威力か!!」

 

友軍の決戦兵器の威力を見た太田と南部も驚愕する。

 

「さすがアンドロメダだ!!」

 

相原も地球防衛軍が総力をあげて建造した戦艦の性能に舌を巻いた。

 

「感心している場合じゃないぞ‥‥敵は全滅したわけじゃない。ここからが勝負どころだ!!」

 

古代が即座に乗員たちに戦闘中故、いつまでも拡散波動砲の威力に驚いている場合じゃないと促す。

 

まほろば の艦橋でもギンガが、拡散波動砲の威力を見て、

 

(あの威力を見せられたら、管理局の艦船なんて話にならないわね‥‥)

 

テスト航海中に まほろば の波動砲の試射の現場を目撃したが、こうして多数の戦艦を並べての波動砲の一斉射撃はそう簡単にみられる光景ではない。

地球防衛軍と管理局との艦船技術の差を改めて実感したギンガだった。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「敵の艦隊前衛を完全に沈めましたが、敵は尚も接近してきます!」

 

「ヒペリオン艦隊に出撃を命令!敵を前後から挟み撃ちにする!!」

 

「了解」

 

バルゼー艦隊の背後にある土星衛星の一つヒペリオンから待機していた艦隊が出撃し、バルゼー艦隊の後方へと迫っていった。

土方はヒペリオン艦隊旗艦の戦艦、陸奥に通信を入れ、作戦内容を伝えた。

 

「ヒペリオン艦隊は側面から攻撃し、敵艦隊を攪乱せよ!!」

 

「了解」

 

 

地球防衛軍 ヒペリオン艦隊 旗艦  陸奥 艦橋

 

「目標!!右舷前方10万宇宙キロ!!」

 

「全艦、主砲発射用意!!」

 

主力戦艦である陸奥を含め、ヒペリオン艦隊全艦がバルゼー艦隊への砲撃準備をしながら敵艦隊へと接近して行った。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「提督!左舷後方に地球艦隊を発見!急速接近中です!」

 

「挟み討つつもりか?後衛の第二艦隊を迎撃に向かわせろ!」

 

「了解」

 

バルゼー艦隊の殿にいた戦艦部隊は反転し、接近してくるヒペリオン艦隊に向け、艦橋に備え付けてある大口径の衝撃砲を準備する。

 

 

地球防衛軍 ヒペリオン艦隊 旗艦 陸奥 艦橋

 

「距離5万5千宇宙キロッ!!」

 

「全艦砲撃開始!!」

 

陸奥の射撃を始めとし、ヒペリオン艦隊の全艦が一斉に砲撃を開始した。

しかし、腕が低かったのか第一斉射目は全弾外れてしまった。

そこから各艦は主砲を修正して砲撃を行う。

だが、敵艦隊からの反撃も始まった。

 

「こちら第二艦隊!各艦の衝撃砲発射準備完了!!」

 

「発射!」

 

バルゼーは不適な笑みを浮かべ発射命令を下す。

 

先頭を航行していた一隻の防衛軍駆逐艦が衝撃砲を受けて爆発四散した。

 

「全艦散開だ!! 個艦で之字運動を開始せよ!!全艦最大戦速!!」

 

ヒペリオン艦隊は白色彗星艦隊の主砲の射程距離の長さに若干の焦りを感じて、艦隊を散開させて個艦で回避航行と攻撃を開始した。

 

そしてようやく、ヒペリオン艦隊が放ったショックカノンも敵第二艦隊に命中し始めた。

 

「敵戦艦一隻撃沈!!」

 

「その調子だ!! どんどん撃て!!」

 

敵艦隊に損害を出す事は出来たが、相手との数が違いすぎる。

しかも艦種が相手は全て戦艦なのに対し、ヒペリオン艦隊は旗艦の陸奥以外戦艦は含まれておらず、ほとんどが、巡洋艦、駆逐艦、パトロール艦の中小艦艇で構成されている高速艦隊だった。

個艦による之字運動に白色彗星の第二艦隊は当初は混乱したが、次々とヒペリオン艦隊の艦艇に命中弾を出し始める。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「敵艦隊、ヒペリオン艦隊との戦闘に突入しました!!ですが、敵は一部を残してそのまま直進してきます!!」

 

「機動部隊を失っているのだ、短期決戦を狙っているのだろう」

 

「ヒペリオン艦隊の戦況不利ッ!!」

 

「‥‥」

 

レーダー員の報告に土方は思わず拳を強く握りしめる。

 

 

地球防衛軍 ヒペリオン艦隊 旗艦 陸奥 艦橋

 

「ぬぅ‥‥」

 

衝撃砲の命中により艦内のあちこちで火災や電気がバチバチと火花を上げている。

 

「こ、こちらヒペリオン艦隊旗艦。本艦及び我が艦隊は‥‥うわぁぁぁぁぁ‥‥!!」

 

ヒペリオン艦隊司令のその言葉を最後にヒペリオン艦隊との交信は途絶した。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「ヒペリオン艦隊壊滅!」

 

「くっ‥‥」

 

「提督、ヒペリオン艦隊所属の駆逐艦、時雨より入電。『ヒペリオン艦隊の残存は本艦のみ‥旗艦、陸奥は敵艦隊の集中砲撃により撃沈』‥以上です」

 

アンドロメダの通信長は悲痛な顔と声で生き残った駆逐艦時雨からの通信文を読んだ。

 

「‥‥そうか、時雨には艦隊に加わるように伝えろ。全艦砲撃用意!!ヒペリオン艦隊の仇を討つ!!」

 

「了解しました。全艦砲撃用意!!」

 

地球艦隊はアンドロメダを先頭に接近してくるバルゼー艦隊を迎え撃つ陣形をとった。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「地球艦隊の中央を突破する全艦隊集結せよ!」

 

バルゼーは艦隊を密集させ、突撃陣形をとった。

 

「火炎直撃砲用意」

 

バルゼーはメダルーザの切り札ともいえる火炎直撃砲の発射準備を整えさせる。

 

「瞬間エネルギー転送装置作動!」

 

「照準よし!」

 

「火炎直撃砲発射準備完了!」

 

「フフ‥‥発射」

 

バルゼーは不敵な笑みを零しながら、発射命令を下した。

そしてメダルーザの艦首にある発射口から莫大な量のエネルギー砲が発射された。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「敵旗艦より発射反応あり」

 

「?」

 

オペレーターが敵の発射反応を捉えたが、距離がまだまだあるので、試射かと思ったが突然、アンドロメダの隣を航行していた味方の戦艦が大爆発を起こした。

 

「な、なんだ!?」

 

「前方から敵弾です!」

 

「弾道は!?」

 

「確認できません!」

 

(一体どういうことだ‥‥?)

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「な、なんだ!?」

 

味方艦の突然の爆発は、当然 まほろば でも確認でき、永倉が声をあげた。

 

「いきなり爆発しおったぞ!!敵の新兵器か!?」

 

「でも、弾道なんて見えなかったし、敵艦の主砲射程からもかなり離れている筈じゃあ‥‥」

 

井上とフェリシアも現状を理解できずにいる。

 

「味方艦の爆発前、敵の旗艦から高エネルギー反応がありました!!なんらかの攻撃だと考えられます!!」

 

新見がタイムレーダーの観測結果を報告する。

 

(弾道が確認できない‥‥しかし、敵旗艦からは高エネルギー反応が有る‥‥波動砲ですら弾道は確認出来るのに‥‥)

 

良馬は、敵の未知なる新兵器について思考を巡らし、

 

「副長!!敵旗艦で観測された高エネルギー反応‥その観測をもう少し、詳しく測定してくれ!!」

 

「了解」

 

良馬は敵の新兵器の詳細を調べるため、観測結果をもう少し詳しく新見に調べる様に命令する。

 

「艦長、結果が出ました。敵旗艦が高エネルギー砲を撃つ直前、僅かですが空間歪曲反応も感知できました」

 

「空間歪曲反応‥‥通信長!!」

 

「はい」

 

「ヤマトの真田技師長に通信を繋ぎ、敵の新兵器について、今のデータをヤマトに転送してくれ!!」

 

「了解」

 

ギンガがヤマトに通信を送ると、すぐにメインモニターに真田の姿が映った。

 

「月村、データを解析したが、之は‥‥」

 

「何か心当たりがあるのですか?」

 

「うむ、之はガミラスが使用していた瞬間物質転送機と同じモノだ」

 

「ガミラスの‥‥?」

 

「ああ‥実はテレザートへ向かう途中、ガミラスの総統、デスラーと戦う機会があった。恐らく彼は彗星帝国に保護ないし彗星帝国と同盟を結んでいるのだろう」

 

「では、ガミラス独自の技術も‥‥」

 

「うむ、恐らくデスラーの手から彗星帝国に瞬間物質転送機の技術が渡ったのだろう。しかし、物質ではなくエネルギー弾を直接転移させるとは予想外だった‥‥」

 

「それじゃあ、その兵器が敵の切り札‥‥」

 

「そうだ」

 

「しかし、ワープで撃ち込んでくる高エネルギー弾なんて、回避しようが‥‥」

 

「確かに回避は不可能だ。だが性質上、恐らくそう連射は出来んだろう。高エネルギー砲のチャージと瞬間物質転送機の作動だけでもかなりのエネルギーが必要になるからな。だが、あの艦を早く沈めなければ、此方の被害が増すだけだろう」

 

真田の見解通り、あの新兵器が此方の切り札でもある拡散波動砲の射程をも上回るとは始末が悪い。

しかも事実上回避は不可能。

命中率100%の強力な兵器。

その威力は先ほどの味方艦を一撃で吹き飛ばしたのを見れば一目瞭然だ。

しかし、人間が作った物故、長所ばかりではない。

数少ない救いは一発撃った後、次弾を撃つのに時間がかかる事、一発の被害範囲が拡散波動砲や波動砲と比べ広範囲ではないことである。

一撃で沈められるのは先程の威力から見て戦艦1~2隻程度だろう。

それでも、手をこまねいていれば一方的に撃ち続けられて潰滅は必至だ。

アンドロメダ と まほろば は周囲の量産型の艦船と形状が異なる。

その為、敵がいつ、アンドロメダ や まほろば を狙って来るのか分からない以上、早めにあの艦を撃沈しなければならない。

 

「分かりました。では、この情報を直ぐに土方さんの下にも送ります!!通信長、聞いての通りだ。すぐに敵の新兵器の情報をアンドロメダに送れ!!」

 

「はい!!」

 

ギンガはすぐに敵の新兵器の情報を土方の下に送った。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「成程、ワープで撃ち込んで来る高エネルギー弾か‥‥」

 

「はい、ヤマトの真田副長の見解では、そう連射はできないようですが、早めに対策をしなければ此方の被害が増えます」

 

土方と良馬が敵の新兵器について通信をしているとまた例の敵超兵器によって味方艦が沈んだ。

 

「提督!敵の超兵器はこの艦隊を狙っています!!感知した熱反応は着弾点で約七万度!!いくらアンドロメダと言えども、さすがにそんな高熱を受ければひとたまりもありません!!」

 

オペレーターの報告を受け、土方は何か策は無いかと考える。

 

(止まれば狙い撃ちにされる‥‥敵は拡散波動砲を撃たせないつもりか‥‥)

 

「提督、このままでは!!」

 

(‥‥熱‥‥高熱‥‥そうかっ‥‥!!)

 

「提督!!」

 

「全艦、針路を土星のリングへ向けろ!敵は拡散波動砲を搭載している我々を狙っている!ならば、誘い出して決着をつけるのみ!!ヤマトと空母部隊は艦載機による艦載機支援を行え!!敵を土星のリングの中へ引きずり込むのだ」

 

土方の命令を受け、程なくヤマトと戦闘空母から爆装したコスモタイガーが発進し、一路敵艦隊に向かった。

 

「航海長!いっときたりとも立ち止まるな!静止すれば、あの超兵器の的になるぞ!」

 

「りょ、了解」

 

アンドロメダ以下の第一戦隊は急遽転進し、土星のリングへと全速で向かった。

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋

 

「地球艦隊針路を変更し、土星本星まで撤退していきます!!」

 

太田がアンドロメダ率いる地球防衛軍第一戦隊の動きを報告する。

土方司令の反転命令を受け、地球艦隊は敵艦隊を引き連れる形で土星の環に向けて後退していく。

 

「形勢は全くの不利じゃな」

 

「凄い兵器だ。あのアンドロメダが、歯が立たないなんて」

 

徳川と南部が不安げな声が上がる。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「地球艦隊転進」

 

「後衛の第二艦隊合流しました。如何なさいますか?」

 

「決まっとる、追撃せよ。あの艦隊を逃がしてはならん!!」

 

「しかし、逃亡しているのは敵の一部隊のみで、まだヤマトを含む敵の巡洋艦や駆逐艦部隊は逃亡せず、我々の分艦隊と戦闘状態のままですが‥‥」

 

「ヤマトなどもうどうでもよい!!危険なのはあの広域破壊兵器を搭載したあの戦艦部隊の方だ!それ以外の敵は分艦隊に任せておけ!我々本隊はあの艦隊を追うのだ!!」

 

ヤマトもこれまでの事を踏まえると厄介な敵であるが、地球艦隊のあの拡散波動砲の威力を見せつけられては、今はヤマトよりも地球艦隊の戦艦部隊の方が厄介である。

バルゼーはヤマト一隻など、いつでも撃沈出来る為、今はヤマトよりも厄介なアンドロメダを始めとする地球艦隊の戦艦部隊の殲滅を優先した。

 

「はっ!!」

 

メダルーザ以下の主力艦隊は土星の環へと転進をしている地球防衛軍第一戦隊を追撃していった。

 

「さぁ、どうした?もう逃げ場はないぞ。ハハハハハ‥‥もはや地球艦隊の壊滅も時間の問題だな」

 

バルゼーはこの時、既に勝利を確信していた。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「現在位置、カッシーニの間隙‥‥敵もリングの中に突入してきた模様です!」

 

アンドロメダ以下の主力艦隊は何とか土星のリングを通過した。

それまでに少なからずの被害を敵の転送砲で被害を受けた。

 

「よし、減速開始!!火器管制システム、ロック解除!!砲撃戦用意!」

 

「し、しかし減速しては狙い撃ちにされてしまいます」

 

「他に手はない‥‥いいからやれ!!」

 

「りょ、了解」

 

アンドロメダは減速をはじめ、他の艦もそれに習い減速を開始した。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「ようやく諦めたか‥‥よし、とどめだ!この土星の輪と同じく宇宙を漂う灰燼と帰すがよい」

 

減速を開始した敵戦艦部隊を見てバルゼーは勝利を確信し、火炎直撃砲の発射命令をだした。

 

「火炎直撃砲、発射!!」

 

しかし、勝利を確信して放った火炎直撃砲の弾道を確認することはできなかった。

火炎直撃砲が発射された直後、メダルーザの至近距離で大爆発が起こった。

そして、間髪入れずに周辺で激しい乱気流が発生。

バルゼー艦隊は中央突破に備えて密集隊形をとっていたため、殆どの艦がこの乱気流圏内に入っていた。

発射した一瞬の後、メダルーザは突然激しい振動に襲われ操舵困難に陥った。

 

「な、なにごとだ!?」

 

「火炎直撃砲、エネルギー転送システム破損!!火炎直撃砲発射不能!!」

 

「原因はなんだ!?」

 

「原因は‥‥す、水蒸気爆発です!!」

 

「何ぃっ!!水蒸気だと!?ば、バカな!」

 

「提督!!気流の影響で艦のコントロールが上手くいきません!!」

 

「乱気流に流されて味方艦同士の衝突・接触が続発しています!」

 

突然発生した気流に流され、前を航行していた艦が後続の艦に衝突、航行不能に陥る艦が多発した。

 

「機関全開!早く気流圏から脱出しろ!!」

 

言われるまでもなく、メダルーザは機関をふかしてこの大乱気流からの脱出を図った。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「い、一体何があったんでしょう?」

 

突然、リング内でおこった大爆発を見て一体何が起きたのかを訊ねるギンガ。

 

「水蒸気爆発だ」

 

「水蒸気爆発?」

 

「そう、土星のリングの組成はそのほとんどが、大きな氷の破片で構成されていて、突然七万度なんていう超高熱で熱せられれば一瞬で昇華して水蒸気爆発が起こるのは当然だよ」

 

ギンガの質問に良馬が答える。

 

「さあ、敵の超兵器は封じた。ここから逆転するぞ!!砲雷長!!攻撃準備!!」

 

「了解!!」

 

まほろば は他艦同様反転し、気流により混乱している敵艦隊に対し、砲雷撃戦の準備に入った。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「提督!!敵の隊列が乱れました!!」

 

「よし!全艦集結反転180度!」

 

土方はこの敵の混乱を見逃さなかった。

敵の超兵器を封じ、なおかつ動きのとりにくいリング内に閉じ込めたことにより、戦況は地球艦隊に有利となりなった。

 

「反撃に出る!全艦、砲門開け!」

 

「主砲!発射準備完了!」

 

「発射!」

 

カッシーニで待機していた予備軍と合流した地球艦隊は水蒸気爆発により混乱したバルゼー艦隊に砲撃を加え、次々とバルゼー艦隊の艦艇を沈めていく。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

「地球艦隊が反撃に出ました!!」

 

「くそっ、火炎直撃砲はまだ使えんのか!?」

 

「大規模な破損が起きており。修理に時間がかかります!!それにこの気流の中では狙いがつけられません!!」

 

「くっ‥‥!」

 

バルゼーは思わず毒づいた。

 

(おのれ、あの敗走は火炎直撃砲を封じるための罠だったか!)

 

火炎直撃砲は確かに超長射程だが、艦が安定していなければ照準をつけられない。

ここに来てバルゼーは自分が土方の弄した罠にかかった事を悟った。

バルゼー艦隊の状況は最悪だった。

敵将の悪辣な罠にまんまと嵌められ、攻守は完全に逆転してしまった。

侵攻するにあたって敵地である土星の環の組成を詳しく調査していなかったリサーチ不足が招いた敗因だった。

 

「早くこの気流圏から脱出しろっ!!」

 

メダルーザはスラスターを全開させ乱気流からの離脱を図る。

僚艦もそれに倣うが、なかなか艦を安定できないまま、次々と地球艦隊の砲火の餌食となっていく。

やがて、バルゼーが座乗するメダル―ザにも地球艦隊の砲撃が命中した。

 

「左舷破損!!」

 

「うっ‥‥くっ‥‥」

 

混乱の中、土星のリングを無事に出ることのできたのはメダルーザ以下一個分隊のみでしかも皆、中破程のダメージを受けている。

それでもメダルーザは火煙を噴きながら脱出に成功し味方の合流を図った。

しかし、それもつかの間の事で、側面から何本もの火線が伸びてきて隣を航行していた戦艦の艦橋が崩壊したかと思うと、次の砲撃で串刺しにされて轟沈した。

アンドロメダをはじめとする敵の主力は後方にいる筈。

 

「なんだ!?どうした!?」

 

「ヤマトです!!ヤマトからの長距離砲撃です!!」

 

「何っ!?」

 

スクリーンに映し出されたのは、ヤマトを含む小規模な艦隊の姿があった。

迎撃に向かった分艦隊もヤマトと戦闘空母群、巡洋艦 インディアナポリスを始めとする巡洋艦群の波動砲の餌食になったのか、既にその姿は無かった。

迂闊だった。

地球の本隊に気を取られ、ヤマトの存在を疎かにしていた。

後方からは敵の主力艦隊、前方にはヤマト率いる機動部隊。

バルゼー艦隊は挟み撃ちの状態となった。

 

「提督、我が艦隊は八割以上の損害を出しました」

 

「補助機関停止!生命維持装置機能低下‥‥提督、このままでは!!」

 

「不覚か‥‥地球人の艦にここまで押されるとは‥‥地球人をあなどっていたか‥‥」

 

どのみち、自軍の勝利は消えた。

このまま戦場を脱出して、帝国に戻ったところで、あのいけ好かない冷血女総参謀長(サーベラー)によって、敵前逃亡罪の名目を突きつけられ、処刑場送りだろう。

艦隊総司令のゲーニッツも恐らくは、自分を切り捨てるだろう。

自分がゲルンを切り捨てたのと同じように‥‥。

しかし、同じ切り捨てると言ってもバルゼーの場合は戦略上の上でゲルンを切り捨てたがゲーニッツは恐らく自分の保身の為に切り捨てるだろう。

 

「提督?」

 

黙りこむバルゼーに幕僚の一人が恐る恐る声をかける。

 

「もう、火炎直撃砲は役には立たん‥‥かくなるうえは、敵を一艦でも多く道づれにしてやるわ!艦首を敵に向けよ!全艦、特攻準備!!」

 

メダルーザ以下、残存艦は反転し地球軍の戦艦部隊へと向かう。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「敵艦隊、反転してきます!!」

 

(あいつら、刺し違えるつもりなのか?)

 

パネルを見ると、土星圏からの撤退を図るかと思いきや、敵艦隊は、撤退せずにあくまで徹底抗戦をするつもりの様だ。

その意気は認めるが、侵略者共にかける情はひと欠片とてない。

 

「砲雷長!!回頭中の敵艦を狙い撃て!!情けは無用!全て討ち取る!!」

 

「了解!目標、回頭中の敵艦隊!」

 

「主砲、斉射三連!――撃てっ!!」

 

地球艦隊はバルゼー艦隊の残存艦に一斉砲撃を加えた。

しかし、敵もただ射的上の的になるつもりはなく、果敢にも反撃してきた。

その敵の攻撃が、西郷が艦長を務めている薩摩の艦橋部付近に命中した。

 

「艦長、薩摩が被弾しました!!」

 

観測をしていた新見が、薩摩が艦橋部に敵弾を受けた事を報告する。

 

「っ!?通信長、薩摩に回線を繋げ」

 

「了解」

 

ギンガは薩摩に通信を繋ぎ、良馬が西郷の安否を確認する。

 

「参謀長!!西郷参謀長!!」

 

「此方、戦艦薩摩!!艦橋と機関部に直撃を受けました!!火器管制機能停止!!コントロールも不安定です!!」

 

通信に出たのは艦長である西郷ではなく、薩摩の副長であった。

彼の報告では薩摩は艦橋以外に機関部にも被弾していた様だ。

 

「参謀長は!?西郷参謀長はどうなさいました!?」

 

「艦長‥いえ、西郷参謀長は艦橋の被弾時に負傷なさいました。今、治療中ですが‥‥くそっ!!それまで、この艦が持つかどうか!!とにかく、これ以上の戦闘続行は無理です!!このまま戦線を離脱します!!」

 

「了解!!」

 

戦闘艦の頭脳と言える艦橋部に被弾し、艦を指揮する艦長(西郷)までもが、倒れた今、薩摩にまともな戦闘が出来る筈が無く、戦線離脱もやむなしの判断だった。

 

 

白色彗星帝国軍 太陽系侵攻機動艦隊本隊(バルゼー艦隊) 旗艦 メダル―ザ 艦橋

 

薩摩が戦線離脱をしても、炎上しながら突撃をかけてくるメダルーザを含むバルゼー艦隊、残存艦には地球艦隊から無数の火線が襲いかかった。

旗艦を守るように並航していた僚艦は次々と炎に包まれ、爆発四散していく。

メダルーザは一際強固な装甲を持つが、いくら装甲が強固でも多数の戦艦を含む艦砲を防ぎきることは不可能だ。

遂に敵戦艦からの直撃弾が装甲を食い破って艦内部で爆発と火災が発生。続けざまに撃ち込まれる敵弾で艦体をズタズタに切り裂かれていくメダルーザは断末魔の悲鳴を始めた。

艦橋内でも幕僚や運用クルーたちがバタバタと死傷している。

恐らく艦内の他の部署も似た様な状況だろう。

何がいけなかった?

一体どこで間違えたのだ?

出撃当初は、辺境の蛮族共の艦隊など簡単に蹴散らせると思っていたのに‥‥。

現に空母部隊を失っても此方の戦力は地球より勝っており、追い詰めることは出来た。

しかし、それ以上考える暇を天はバルゼーに与えられなかった。

再び艦橋で猛烈な爆発が起き、

 

「ぐはっ!!」

 

バルゼーは爆風と衝撃で壁に叩きつけられた。

 

「くっ‥‥うっ‥‥ごはぁ!!」

 

ようやく起き上がるも体内から何かが込み上げバルゼーは口から大量の鮮血を吐き出した。

視界も意識も薄れていく‥‥。

 

「死して‥‥死して、大帝にお詫びを‥‥」

 

誰にも聞こえない声を発するとバルゼーは意識を手離し息を引き取った。

その直後、メダル―ザは爆散した。

 

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