星の海へ   作:ステルス兄貴

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三十話 地球防衛艦隊壊滅

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋

 

メダル―ザを含む彗星帝国軍太陽系侵攻艦隊を壊滅させた直後、勝利の余韻を感じる間もなく、

 

「消エタ 消エタ 消エチャッタ!!」

 

慌てた様子でアナライザーが第一艦橋へ入って来た。

 

「どうした?アナライザー」

 

「何が消えたんだ?」

 

アナライザーの只ならぬ様子に真田と古代がアナライザーに訊ねる。

 

「イイカラ 早ク 新米サンノトコロヘ 行ッテ下サイ!!」

 

アナライザーの言うまま、古代と真田は新米がいる中央コンピュータールームへ向かった。

その中央コンピュータールームでは、

 

「おかしいな‥‥」

 

新米がモニターを見ながら首を傾げていた。

そこへ、

 

「新米、何が消えたって?」

 

真田が新米に訊ねた。

 

「白色彗星です」

 

ヤマトは戦闘中にも関わらず、常に白色彗星の動きは観測を続けていた。

それはやはり、地球の本当の敵はバルゼー艦隊ではなく、白色彗星本体だからだ。

白色彗星の今後の動きが、これからの戦闘に大きく左右され、引いてはそれが地球の運命を決定づけると言っても過言では無い。

しかし、その白色彗星本体が突如、姿を消したと言うのだ。

 

「なんだって!?」

 

人工の彗星とは言え、姿が消えるなんてありえなかった。

驚愕の事実に古代は声をあげる。

 

「観測ミスじゃないのか?」

 

真田が新米のミスではないかと指摘する。

事実、新米はヤマト乗艦当時、今の技術班ではなく、レーダー要員として、ヤマトに乗艦していたのだが、旧型で慣れないヤマトのレーダーの取り扱いに敵の存在に後手後手に回ったことがあった。

しかし、技術班に所属してからはそうしたミスはかなり減っている。

だが、新米も人間故にミスはあるだろうと思い訊ねたのだ。

 

「いえ、そうじゃないと思うんですが‥‥記録した映像を再生します」

 

しかし、新米は自分の観測ミスではないと思いつつ記録した映像を再生して、これが観測ミスなのかどうか、真田にも見てもらった。

新米が再生した映像には、白色彗星の姿は映っているのだが、次第に彗星の姿が薄く小さくなっていき、最後には完全にその姿は消えてしまった。

 

「本当だ‥‥エネルギー反応まで消えている‥‥」

 

「どういうことなんだ?」

 

原因は不明だが、白色彗星が消えたのは新米の言う通り確かに観測ミスではなかった。

その直後、

 

ドゴォォォンー!!

 

ヤマトを凄まじい衝撃波が襲った。

 

「な、なんだ‥‥!?」

 

「これはただ事じゃないぞ、古代!!お前は早く戻れ!!俺は此処に残って白色彗星が消えた原因を調べねばならん!!」

 

「わかりました」

 

古代は急いで第一艦橋へ戻った。

 

 

それは突然現れた‥‥。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「超巨大質量のワープアウト反応を感知!!極めて至近です!!」

 

「なにっ!?」

 

新見が叫ぶように報告した直後、艦に衝撃が走り針路を外れる艦が続出した。

 

「な、なんだ!?この振動はっ!?」

 

「い、一体何がワープアウトした!?」

 

「わ、ワープアウトしたのは‥‥は、白色彗星です!速度、40宇宙ノットで此方に接近してきます!!」

 

「っ!?」

 

ワープアウト‥‥。

白色彗星が消えたのは観測ミスではなく、ワープした事によるものだった。

迂闊だった‥‥。

彗星状の星間国家だから、移動も常に彗星の様にしか動けないだろうと思い込んでいた。

しかし、ワープ機関を有する艦船を保有している移動型の星間国家なのだから、その本体にもワープ機関が備わっていても何らおかしくは無かった。

幸い まほろば や アンドロメダ を始めとする第一戦隊は白色彗星のワープアウト地点から離れていたが、運なく白色彗星に吸い込まれていく艦も少なくなかった。

 

「ああ、ヤマトと空母部隊が‥‥」

 

艦橋に新見の悲鳴があがる。

 

「ヤマトと空母部隊、第232水雷戦隊が白色彗星に飲み込まれます!!」

 

「何!?」

 

ハッとした良馬が仰ぎ見たメインモニターには、

白色彗星に飲み込まれていく、飛龍以下の全ての戦闘空母とヤマト、巡洋艦、インディアナポリス以下の第232水雷戦隊の艦艇が映った。

 

「飛龍と蒼龍が‥‥!!」

 

「ワスプとインディアナポリスも!!」

 

新見とギンガ息を飲みながら吸い込まれていく艦艇を見る。

 

(くそっ‥‥!)

 

良馬は歯を食い縛り、拳を握り締めて激しい憤怒を堪える。

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋

 

「一体何があったんだ!?」

 

古代が第一艦橋に戻ると、

メインパネルには白色彗星が映っていた。

 

「は‥‥白色彗星が‥‥!!」

 

「っ!?白色彗星が‥‥こんな距離に‥‥!!」

 

太田が、顔面白色になりながら、古代に事態を説明しようとしたが、余りの驚愕に上手く説明できなかった。

古代自身も何故白色彗星がこんな所にいるのか分からなかった。

 

「突然‥‥突然現れたんです‥‥!!」

 

太田に代わり、南部が、白色彗星がこの至近距離に現れた事を古代に説明する。

しかし、彼の声は突然の事態に声が震えている。

 

「‥‥ワープアウト‥‥白色彗星が消えたのは・‥‥こういう事だったのか!!」

 

ここに来て、古代も白色彗星が消えた原因が分かった。

 

「島!!舵を戻せ、艦位を維持するんだ!!このままでは、白色彗星に引きずり込まれるぞ!!」

 

古代が島に何としても白色彗星から少しでも離れろと指示を出す。

 

「あ、ああ‥‥機関長!!エネルギー増幅!!」

 

「機関室!!エネルギー増幅!!オーバーブーストが焼き付いても構わん!!」

 

島と徳川もヤマトを脱出させようと、奮闘する。

そこに、白色彗星の重力波に捕まった巡洋艦 インディアナポリス が ヤマト の左舷に衝突。

この衝突により、ヤマトは左舷に破口が生じ、火煙を噴き上げながら艦列から脱落していった。

だが、インディアナポリスとの衝突により、ヤマトは何とか白色彗星の重力波から脱出できたが、空母部隊とインディアナポリス以下の第232水雷戦隊の艦艇は全て白色彗星に飲み込まれた。

そしてそのヤマトの方はと言うと‥‥

 

「機関長、エンジンがやられました!!‥‥機関長‥‥!!‥‥うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

機関室からは機関員の悲鳴がこだました。

 

「いかん!!波動エンジンが‥‥!!」

 

機関員の断末魔を聞き、波動エンジンに大規模な損傷を受けたと判断した徳川はエンジンの状況を確認する為、第一艦橋から機関室へと降りた。

 

「機関長、俺も行く!!」

 

真田も徳川の後を追った。

 

「島!!船をキープしろ!!」

 

古代は何とかヤマトの姿勢を制御しようと、島に現状を保たせようと指示を出すが、

 

「駄目だ!!操舵不能!!」

 

島は懸命に舵を操作するが、ヤマトは全く言う事をきかない。

更に、ヤマトの損傷は機関だけでなく、

 

「通信設備も大破!!友軍艦と連絡がとれません!!」

 

通信機を操作していた相原がヤマトの通信設備が使用不能に陥った事を報告する。

 

「こんな時に‥‥くそっ!!急いで修理を!!何としてでも友軍と連絡をつけたい!!」

 

「は、はい!!」

 

白色彗星のワープアウト時に発生した巨大な衝撃波の影響を受け、通信アンテナも損傷した。

相原は身に着けていたインカムを取り外し、早速、備え付けの修理道具を手にして通信機の応急修理に取り掛かった。

その間にもヤマトは手負いのまま宇宙の彼方へと落ちて行った。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「ヤマト、戦列を離脱していきます!!」

 

「っ!?通信長、ヤマトに繋げ、ヤマトの相原通信長を呼び出すんだ!」

 

「は、はい!!」

 

何とか、白色彗星の重力圏から逃れたヤマトであったが、戦列に復帰することなく、落伍していったヤマト‥‥あのヤマトが損傷するや否や落伍していったのだ。

ただならぬ事態が発生したとしか考えられない。

 

「ヤマト!!応答してください!!ヤマト!!此方、戦艦 まほろば!!ヤマト、応答してください!!」

 

ギンガは何度もヤマトに通信を送ったが応答は無く、ヤマトの状況がわかるまでには、今しばらくの時間が必要だった。

そこへ、アンドロメダから集結指示を受け、地球防衛軍の波動砲搭載艦は波動砲戦フォーメーションを取るように指示が下された。

波動砲を搭載している まほろば も当然、このフォーメーションに参列したのだが、

 

(まずいな‥‥もし、波動砲が白色彗星に効かなかった場合、この陣形じゃあ逃げ道が限定されるんじゃないかな‥‥左右の端は兎も角、中央に位置する艦は白色彗星に飲み込まれるぞ‥‥)

 

良馬はこの隊形に問題があるのではないかと思うが、白色彗星本体の対策を考える前に彗星本体がこうしてきてしまったのだから、対策を考える暇が無かったのだろう。

土方もまさか、彗星がワープしてくるとは予想もしていなかったのだから‥‥。

艦橋員も皆顔を強張らせ、緊張した面持ちである。

真正面から対峙する白色彗星はあまりにも巨大で白く、禍々しい光を放っていた。

 

「砲雷長、波動砲へエネルギー充填‥‥」

 

「りょ、了解‥‥波動砲へエネルギー充填‥‥」

 

良馬自身も緊張した面持ちで波動砲へのエネルギーチャージを砲雷長であるフェリシアに命じた。

 

地球防衛軍の波動砲搭載艦は上下の二段横列隊形をとり、波動砲のチャージを行う。

その間にも白色彗星は地球艦隊へと近づいてくる。

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋

 

戦列から落伍したヤマトは、レーダーは何とか無事だったようで、地球艦隊の様子をキャッチする事は出来た。

 

「地球連合艦隊が白色彗星に総攻撃を開始するもようです!!」

 

雪が地球艦隊の動きを報告すると、

 

「なんだって!?」

 

古代は声をあげる。

先程まで、彗星帝国の侵攻艦隊本隊と戦って、間髪入れずに白色彗星本体と戦う事となったのだ。

補給を取る暇もなく、連戦で大丈夫なのかと言う懸念があった。

 

「雪、パネルにまわしてくれ!!」

 

「了解!!」

 

ヤマトのメインモニターには、接近して来る白色彗星に対して二段横列に隊形を組み、波動砲を撃ち込もうとする地球艦隊の姿が映し出されていた。

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

「波動砲チャージ開始、総員、対ショック・対閃光防御!」

 

照準やエネルギー拡散点の調整はアンドロメダの中央コンピューターがやってくれる。

あとはアンドロメダからのカウントダウンに応じて全艦が波動砲のトリガーを一斉に引けば良いのだ。

いくら相手が侵略者とはいえ、人間がコンピューターの指示に従って大量破壊や殺戮をするなんて何とも皮肉だ。

まるで、機械が人間を操っている様だ。

土方は内心そう思いつつ、波動砲の発射準備を進める。

 

「発射10秒前、9‥8‥7‥6‥5‥4‥3‥2‥1‥‥」

 

接近してくる白色彗星の光が強くなっていく中、カウントダウンの声が響く。

 

「‥0‥全艦、拡散波動砲発射ッ!!」

 

敵艦隊との戦闘や白色彗星の突然のワープアウトと言うアクシデントで少なからぬ犠牲を被った地球艦隊だが、波動砲搭載艦はまだ多数が健在であった。

それらの艦から動砲が一斉に放たれた。

辺りは波動砲の発射による閃光と波動砲が白色彗星に着弾した閃光でゴーグルを掛けていても目を細めるくらい眩しかった。

やがて眩い閃光が収まると、そこには薄らとガス帯を纏った白色彗星があった。

 

「まったく効いていない‥‥」

 

「バカな‥‥」

 

「あれだけの数の波動砲だぞ‥‥」

 

アンドロメダの副長を始め、乗組員たちの誰もが驚愕した声で言う。

 

アンドロメダをはじめとする戦艦、その戦艦を改良した戦闘空母はあのヤマトの波動砲よりも強力な増幅装置を搭載している。

当然、ヤマト改級の まほろば も例外ではない。

そのヤマトの波動砲よりも強力で、尚且つ多数の波動砲を食らっても消滅しなかったのだから、十分驚愕に値する事実だ。

土方も顔を引き攣らせている。

しかし、相手も全くの無傷と言う訳では無く、白色彗星を構成している白色のガス帯が消え去るとそこからラ○ュタの様な姿をした要塞都市が現れた。

 

「これが、白色彗星の正体か‥‥」

 

土方が‥‥いや、地球人類が初めて見た白色彗星の正体を見て、誰もが唖然とする。

ゴクっと土方が生唾を飲み込むと、

 

「全艦砲撃開始!エネルギーが尽きるまで、怒りを込めて撃ち尽くせ!」

 

土方司令の号令下、地球艦隊は都市帝国に向けて苛烈な砲雷撃戦を挑んだ。

地球艦隊は都市帝国に向けて砲雷撃戦を挑むと、要塞都市は都市部と下部の中間地点にあるシリンダーの様な物を回転させ始めた。

するとそのシリンダーの上部から白色彗星周りを纏っていたガス帯と同じようなガスを噴射しだした。

地球艦隊の艦艇は上部にある都市部へと攻撃を行うが、そのガスバリアーのせいで砲撃もミサイルも全て無効にされてしまった。

そして、回転装甲帯からは大型ミサイルと大口径エネルギー砲を撃って来た。

 

大口径砲は戦艦をも一撃で轟沈させ、飛んで来るミサイルの中にはクラスター弾みたいな物を射出する物まであって、艦体をボロボロにされ爆沈する艦が続出した。

 

「面舵40!急げ!」

 

まほろば は要塞都市の攻撃よりもミサイル迎撃に徹していたが、転舵した直後、前方に閃光が走った次の瞬間、左舷に大きな衝撃が走り、爆発が発生した。

さらに、右舷と第一主砲搭付近にもミサイルが命中して右舷の傷が広がり、第一主砲搭は使用不能になってしまった。

今までは何とか上手く回避できたが、遂に まほろば も被弾する結果となった。

 

「右舷第六から第十ブロック被弾!!」

 

「第十五から第十八ブロックを閉鎖!」

 

「風呂場の残り湯を消火に回すんだ!!手空きの者は消火作業を手伝え!!」

 

外装は皆同じに見えるが、日本籍の宇宙艦の艦内には、基本的に男女ともに大浴場が設けられ、風呂の湯水は非常時における消火用水の用途を兼ねていた。

 

「破損部の応急修理急げ!!」

 

まほろば の艦橋もあわただしく指示を出す良馬と新見が居た。

 

良馬と新見の指示は的確で、乗組員たちも常にダメージコントロールの訓練は日常茶飯事の如く行っていた為、まほろば は何とか持ちこたえていた。

 

(やっぱり、あの時真田先輩に言われた通り、最後に頼りになるのは人の力だな‥‥)

 

まほろば の艦長に就任仕立ての時に真田に言われた事を良馬は忘れていなかった。

その結果が、今こうして生かされた。

しかし、こうした奮戦がいつまでも続くはずが無く、まほろば は右舷にまたミサイルが二発命中・炸裂したことで、影響は機関室に及び針路と速度を維持できずに等々 まほろば も落伍を余儀なくされた。

 

「艦長、火器管制システムに異常発生!!攻撃不能!!」

 

「機関推進力も低下し始めとる!!」

 

「操艦機能にも支障を出し始めました!!」

 

フェリシア、井上、永倉がそれぞれの受け持ち部署にて、まほろば の機能が落ち始めている事を報告する。

 

「くっ‥‥反転120度‥‥当戦線を‥‥離脱する‥‥」

 

良馬は悔しそうに拳を握り、小さく唸る様に撤退命令を出した。

まほろば は火煙を噴き出しながら針路を一路木星圏に定め、木星方向へと撤退行動に移った。

 

その頃、まほろば よりも先に戦線を離脱したヤマトはと言うと、

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 機関室付近の通路

 

「メインエンジンに火が付いたら事だぞ!!」

 

真田と徳川はヤマトの波動エンジンの動力源に火が回って居ない事を祈りながら機関室へと降りた。

しかし‥‥

 

「機関長‥‥」

 

「エンジンに火が入るのは時間の問題だ‥‥」

 

機関室の火災は徳川や真田が予想していたよりもはるかに酷かった。

 

「こうなったら、伝導管を塞ぐしかない‥‥技師長消火班を!!」

 

徳川は機関室の制御盤の下へ向かい、隔壁を操作し、真田は技術班に応急修理と消火を命じた。

消火作業にはアナライザーの他に斎藤をはじめとする空間騎兵ら手空きの者たち全員が行った。

真田も備え付けの消火器で機関室の消火作業を行う。

しかし、焼け石に水だった。

しかも‥‥

 

「最悪だ!!隔壁もスプリンクラーも全部イカレとる!!」

 

「ええぇっ!!」

 

制御盤を操作していた徳川の口から最悪の言葉が放たれる。

防火用の隔壁も消火用のスプリンクラーも故障で作動しない。

まさに最悪の事態だ。

そして、これ以上の、最悪の事態を防ぐため、徳川はある決断をする。

 

「やむを得ん!!伝導管をぶった切る!!」

 

「えええっ!!それは危険です!!もし、一つでも間違えたら‥‥」

 

真田は伝導管を切断すると言うリスクを徳川に言う。

 

「だが、技師長、このままでは、ヤマトは消し飛ぶ」

 

徳川が伝導管を睨みながら言い、真田も緊張した面持ちでエネルギー伝導管を見る。

 

「何!?伝導管を切る!?」

 

真田は機関室の火災状況を第一艦橋の古代に伝え、

このままではヤマトが機関室から内部爆発をする可能性があるため、それを防ぐため、これからエネルギー伝導管を切る事を伝える。

 

「それしかない!!一か八かだ!!古代、全員を退艦させてくれ!!艦に居ては危険だ!!」

 

「わかりました」

 

真田からヤマトの現状を知った古代は、

 

「総員退艦せよ!!エンジンルームに火が迫っている総員直ちに退艦せよ!!加藤、山本!!出来るだけ多くの乗員を収容して艦を離れろ!!飛ばせる機体は全て使うんだ!!」

 

真田の進言を受け、ヤマト乗員に退艦命令を下す。

負傷者は優先的に救命艇へと割り当てられ、単座のコスモタイガーには搭乗員の他、小柄または痩せている乗員を乗せ、救命艇、中型雷撃艇、上陸用舟艇などのヤマトに搭載されている機体全てをフル活用し、乗員はヤマトを退艦していく。

乗員の退艦作業が行われている中、機関室では、徳川、真田、アナライザーがレーザーカッターで伝導管を切り取る作業を開始した。

乗員が退艦していく中、古代は最後までヤマトに残っていたのだが、退艦作業を見守る中、退艦した機体がヤマトの周辺から離れない。

このままでは万が一、ヤマトが爆発した時、発生した衝撃波に巻き込まれ機体そのものが巻き込まれ、破壊されてしまう。

そうなれば、当然搭乗している乗員もただでは済まない。

 

「何をしているんだ!?加藤、山本!!早くヤマトから離れろ!!」

 

このままでは、危険だと判断した古代は、退艦者の指揮を執っている加藤と山本に通信を送り、ヤマトからもっと離れる様に言うが、

 

「嫌です!!ヤマトを見捨てるわけにはいきません!!」

 

加藤らは古代の命令を拒否した。

 

「加藤命令だ!!早く安全な宙域まで離れろ!!」

 

古代はもう一度、加藤らに命令を下すが、

 

「嫌です!!」

 

加藤らは、頑なに命令を拒否し、ヤマトの至近距離から離れない。

やむを得ない、古代はヤマトを何としても爆破しないようにと機関室へと赴き、徳川らの手伝いをしようと、第一艦橋を降りようとした。

そこへ、

 

「古代君!!」

 

負傷者の退艦作業を行っていた雪が戻って来た。

 

「雪、まだいたのか!?」

 

てっきり、負傷者と共に退艦したと思った雪がまだヤマトに残っていた事に驚いた古代。

 

「古代君も早く」

 

「僕は、まだやるべきことが残っている。雪こそ、早くヤマトを降りるんだ」

 

「嫌よ、古代君も一緒に‥‥」

 

加藤に続き、雪までもヤマトの退艦に渋った。

 

「何をしとるんじゃ!!急がんと危ないぞ!!」

 

艦内を回り、負傷者やまだ退艦していない者が、居ないかチェックしていた佐渡が第一艦橋へと入り、イチャツイテいる?二人に声をかける。

 

「あっ、先生。雪を‥雪を頼みます」

 

古代は佐渡に雪を託すと機関室へと向かった。

 

「古代君!!」

 

雪は古代の後を追おうとするが、そこを佐渡に止められる。

 

「離して先生」

 

「落ち着くんじゃ雪、古代なら大丈夫じゃ」

 

佐渡は必死に軽いパニック症状を起こしている雪を宥めた。

 

機関室に来た古代は作業をしている真田に声をかけ、作業を手伝ったが、その最中に起きた爆発に巻き込まれた。

 

「古代!!」

 

真田がかけより、倒れた古代を抱き上げる。

 

「古代、しっかりしろ!!古代!!」

 

「うっ‥‥うっ‥‥」

 

古代は苦痛で顔を歪めるが、意識はしっかりとあった。

 

その頃、依然と要塞都市を攻撃しているアンドロメダはと言うと、

 

 

地球防衛軍 連合艦隊 旗艦 アンドロメダ 艦橋

 

艦隊旗艦、アンドロメダは一番先頭で攻撃を行っていた為、まほろば よりもダメージは深刻で左右の両舷に多数のミサイル攻撃をくらい、艦橋にも二発被弾し、もはや艦の制御すらままならない状況となっていた。

特に艦橋への攻撃が致命的で、航海長、副長、砲雷長がその攻撃により、死傷した。

アンドロメダがここまでのダメージを受けながらも攻撃した都市帝国は、ガスバリアーにより無傷だった。

艦橋要員に多数の死傷者を出し、エネルギーも残り僅かなアンドロメダに勝機はなくなった。

しかも、運が悪いことに、航行用システムにも異常が生じ、艦の制御が行えず、真っ直ぐ要塞都市へと向かっていく

そんな中でも土方は、絶望やパニックを起こすことなく、冷静に戦力分析をし、その結果を通信で送った。

 

「そうか!!‥‥ヤマト、まほろば!!生きていたら聞いてくれ!!彗星帝国を攻めるのはあの下の部分だった。我々はあの都市に目を奪われ過ぎていた‥‥」

 

土方の通信は感度が悪いながらもヤマトに届いた。

しかし、肝心の彗星帝国を攻める部分については届いていなかった。

 

「ヤマト・・・・まほろば・・・・我々は負けた・・・・だが、古代、月村、お前たちは・・・・死ぬな・・・・・生きて・・・・生きて・・・・・最後まで・・・・・戦え!・・・・・・・」

 

土方の最後の通信を古代は真田と徳川に肩を支えられながら聞いていた。

 

「地球の未来は君たちの肩にかかっているのだ!!月村、古代・・・・地球を・・・・地球を・・・・頼む・・・・諸君らと共に戦えたことを誇りに・・・・・・・・・・」

 

「土方さぁぁぁぁぁ――――ん!!」

 

古代は聞こえていないにも関わらず、土方の名を大声で叫んだ。

 

「地球‥万歳‥‥」

 

土方のその言葉を最後に、アンドロメダは都市帝国の回転装甲帯部分に突っ込み土方提督以下全員が戦死した。

しかし、アンドロメダの特攻を受けたにも関わらず都市帝国は無傷だった。

 

その後、ヤマトは何とか消火作業を終え、内部爆発の危機を脱し、木星圏を目指した。

ちなみに負傷した古代は目を離すとまた無茶しかねない為、医務室にて佐渡と雪の監視下に置かれていた。

 

「‥‥」

 

アンドロメダの最後は地球防衛軍本部でもモニターで映されていたが、誰もが顔を強張らせ、何も言う事が出来なかった。

 

アンドロメダが要塞都市に突っ込む少し前、土方の通信は まほろば でも傍受されていた。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「アンドロメダから全周波帯通信です!」

 

ギンガの緊迫した声がブリッジに響いた。

総旗艦からの全周波帯通信――。

宇宙戦士に、それが何を意味するか理解しない者はいない。

アンドロメダの‥‥土方総司令の命運が尽きようとしている――。

それでも、自分が斃れた後も戦い続けようとしている宇宙戦士たちへの最期のメッセージなのだろう。

 

「通信長、艦内全域に流れるように‥‥」

 

「はい」

 

良馬は、ギンガに艦内一斉放送で全員に聴かせるよう指示した。表情は変えず、艦長席コンソールの下で拳を強く握り締め、震わせながら‥‥。

 

まほろば の艦内にはノイズや空電混じりながらも、土方の肉声が艦内に流れる。

それには、都市帝国のウイークポイントは要塞都市の下部にあること、生き延び、まだ戦う意思と気力がある者は、最後まで諦めることなく戦えということ。

最後に‥‥

ヤマトと共に地球を託されたことを‥‥

土方の通信を聞き、啜り泣く者、鼻を啜る者が大勢居た。

 

「‥‥」

 

良馬は立ち上がり、虚空に向かって挙手の礼をとった。

艦橋員をはじめ、重傷者以外の乗組員も各々の持ち場で敬礼を捧げた。

良馬は知っていた。

ガミラス戦時、士官学校の校長であった土方は送り出した教え子たちが次々と戦死していくことに自分と同じく苦悩し悲しんでいた事。

彼が肌身離さず持っていた黒皮の手帳には沖田同様、先に逝ってしまった教え子や部下の全員の名前が書いてあった事を‥‥。

彼自身の家族も沖田同様、既になく教え子に厳しくも愛情を持って接していた事を‥‥

だからこそ、訓練生時代や部下として仕えた時、どんなに厳しい指導や罰直を受けても一度たりとも不満を持ったことはなかった。

リニスが育ての母であるならば、良馬にとって土方は父親の様な存在だった。

良馬は涙を流し、泣きたい気分であるが、艦長たる者、それをぐっと飲み込んで表情には出さない。

それに今泣くことはきっと土方も望んではいないだろう。

彼から言わせれば、

 

「泣いている暇なんてあるのか!?泣いている暇が有るなら戦え!!」

 

と、言いそうである。

そう、泣くのはあの侵略者共を叩きのめした後だ‥‥

今成すべき事は、あの白色彗星を叩きのめすこと‥‥

地球を救う事である。

そこれこそが土方をはじめとするこの戦いで散っていった宇宙戦士たちへの手向けなのだから‥‥

まほろば も ヤマト 同様、傷ついた残存艦と共に木星圏を目指した。

 

 

それは、防衛軍にとって最大の誤算であった‥‥

 

敵主力艦隊と見えた大艦隊も、その後に控える白色彗星にとっては、ただの露払いでしかなかったのだ‥‥

 

白色彗星の巨大な力は、地球の頼みとしたアンドロメダを一瞬のうちに葬り去ってしまった‥‥。

 

ここに、地球防衛軍連合艦隊は完全に壊滅し、地球の滅亡は決定したかに見えた‥‥。

 

時に西暦2201年‥‥‥

 

この戦いにおける戦死者は、艦隊総司令である土方提督を始め、数千人にのぼった‥‥

 

地球に奇跡は起こらないのか‥‥?

 

要塞都市は不気味に沈黙して地球を見つめている‥‥

 

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