「大帝、もはや猶予の時間は過ぎました」
ゲーニッツがズォーダーに報告をする。
ズォーダーが提示した降伏勧告を受諾するか拒否するかの猶予時間二十四時間を過ぎたのだ。
「野蛮な愚か者ども故、決断もつきかねるのでしょう」
サーベラーはやはり地球を嘲笑うかのように言う。
「大帝ご裁断を‥‥」
ゲーニッツがズォーダーに今後の決断を迫る。
ズォーダーが玉座から立ち上がり、地球への攻撃を開始する号令をかけようとしたその時、
「申し上げます!!」
「何事だ?」
「只今、地球連邦政府より入電しました」
幕僚の一人がズォーダー宛の緊急伝が入った事を伝える。
「読め」
「ハッ、『我々は貴下の勧告を受諾し、此処に貴下の帝国に対し、無条件降伏するものである。地球連邦政府大統領』‥‥以上であります」
「フフフフフ‥‥ハハハハハハハ‥‥」
幕僚が読み上げた電文を聞き、ズォーダーはご満悦に高笑いをした。
ズォーダーのその様子にサーベラー、ゲーニッツ、ラーゼラーを含む官僚全員が少し引いていた。
ディアーチェ特製の赤飯とトンカツが振舞われ、皆は満足のいく食事を済ませた翌日、まほろば と 薩摩 はカリスト基地にて、弾薬の補充と最終調整を行っていた。
防衛軍本部の動きは源三郎が逐次、秘匿回線にて まほろば へ情報を送っていた。
その情報では、地球連邦政府は、彗星帝国に対し、無条件降伏を受諾し、明日の日本時間午前十時にて、地球側の降伏使節団と白色彗星側が接触するとの最新情報が入っていた。
先行するヤマトは降伏式で地球が彗星帝国の降伏文章に調印する前に、着水、潜航し、コスモタイガーによる空爆と潜航したヤマトの魚雷攻撃による空海同時の直接攻撃をかけるつもりらしい。
攻撃方法を伝えた後、ヤマトは彗星帝国攻撃まで無線を封じる旨を伝え、それ以降ヤマトからの通信は無い。
また、降伏に反対する日本や中国、韓国、台湾、フィリピン等のアジア諸国、ロシアの極東部方面、マリアナ諸島方面に展開している各国の空軍部隊(コスモタイガー隊)の出撃可能機や、海軍の攻撃潜水艦も呼応するとのことだ。
出来れば海上にて決着がつけば良いのだが、そんな簡単な相手ではないだろう。
せめて、あのガスバリア発生装置を破壊できれば御の字だ。
最終作業は順調に進み、日本時間の夕方頃には終わった。
作業が終わり、艦内はひと時の静けさを取り戻していた。
カリストへの上陸は出来ないが、当直以外の乗組員はつかの間の休息に入っている。
どのみち、この先は地獄すら生温いことになるのだから、休める時に休まなければならない。
そして、いよいよ出撃時間となり、良馬は艦内一斉放送で まほろば の乗組員に呼びかけた。
「この先に待つ戦闘は、恐らく誰もが未経験の激しいものになる。それはあのガミラスとの戦闘以上のモノと思われる。全員が無事に地球へ戻る事は極めて困難になると思う‥‥しかし、俺は絶望などしていない。共に戦いあった まほろば の戦友、僚艦のヤマト、薩摩の‥‥そして地球にいる志を同じくする多くの戦友ならば、彗星帝国を倒すことも決して不可能ではないと信じる。皆、各々が胸に描いている未来を信じて戦おう!‥‥以上だ」
艦橋で、それぞれの持ち場で、応!と掛け声が響き、敬礼が戻ってきた。
良馬も艦橋要員に返礼する。
「戦艦、まほろば 出撃!!」
良馬の命令に応じ、まほろば の船体を固定していたガントリーロックが外され、まほろば の巨体が上昇していく。
まほろば に続いて、戦艦、薩摩もその身をカリスト基地から舞い上がらせる。
出撃した二艦にカリスト基地は発光信号で、他の衛星基地からは激励の電文が各艦に送られている。
地球防衛艦隊の最後の剣が地球に向けて‥‥
都市帝国に向けて進み始めた――。
カリスト基地を出撃した まほろば と 薩摩 の二艦は、予定通りの時間で地球に向かっている。
木星圏を抜けた後、ワープにて地球圏まで一気に距離と時間を稼ぐ予定だ。
「皆の者!!戦闘配食だ!!」
ディアーチェたち炊事班員がランチボックスに入った朝食を持ってきた。
警戒態勢なので艦内食堂は閉店。炊事班と医療班の手で臨時救護所に模様替えだ。
事前に和・洋・朝粥を指定できるが、やはり和食の注文が多かった。
飲み物はミネラルウォーターだ。
茶やコーヒーは利尿作用があるので、戦闘糧食には向かない。
各々、コンソールのテーブルを引き出して朝食を口にする。
口には出さないが、これが最後の朝食になるかもしれないと心しているのだ。
食事を摂っていると、地球にいる源三郎から連絡が入った。
使節団の団長は地球連邦首相、副団長は藤堂司令長官との事だ。
(藤堂長官が加わっているのは僥倖だ。反乱に等しい行為だが、少なくともあの人はわかってくれるだろう‥‥)
良馬は源三郎からの調印式に参加する人員を見てそう思った。
降伏使節団と白色彗星帝国側の接触まであと僅かである。
日本や中国、韓国、台湾、フィリピン等のアジア諸国、ロシアの極東部方面、マリアナ諸島方面の地下格納庫には戦闘攻撃機が並び、空対地ミサイルの取り付けと最終整備を受けていた。
また、太平洋・日本近海には、日本・アメリカ・ロシア・中国・韓国海軍の攻撃潜水艦が、集結し、最後の補給、調整を行っていた。
これらの艦艇、攻撃機はヤマトと共に彗星帝国攻撃に参加するための降伏反対派の勇士たちであった。
宇宙艦隊の主力と月基地が壊滅しても、地球上には空軍・海軍の部隊がまだ戦力を有していたのだ。
「地球には、まだヤマトや宇宙艦隊以外にもまだ戦う力があることを、侵略者たちに見せてやる!!」
皆、思いは同じだった――。
その彗星帝国である男がゲーニッツに話しかけた。
「ゲーニッツ総司令」
「ん?なんだ?ザイゼン」
ゲーニッツに話しかけた男はザイゼンと言う男で、役職は彗星帝国艦隊副総司令‥ゲーニッツに次ぐ、彗星帝国艦隊の№2にあたる人物だった。
ザイゼンは官僚上りのゲーニッツと違いゴーランドやバルゼーの様に艦船乗りからの叩き上げで副総司令という役職に着いた男で、ゲーニッツの副官・参謀の役割も担っていた。
そのザイゼンは、艦船乗りだった軍人だからこそ、抱いた不安をゲーニッツに相談した。
「地球攻略について一つ気がかりな事が‥‥」
「ん?何だ?」
ゲーニッツはザイゼンの言葉に首を傾げる。
「土星圏の戦闘において我々は全ての地球艦隊を撃滅したわけではありません。それに例のヤマトも行方不明と聞きます」
「ふむ、それで?」
「彼らが残存艦を纏め、我々に逆劇を仕掛けてくる事も十分考えられると言う事です」
「ふん、敗残兵どもに何ができるというのです!?」
ゲーニッツとカンメルの会話の間にサーベラーが割り込んできた。
「太陽系内にはちゃんとあのゴミどもを駆逐するための警備艦隊も配置しているのですよね?ゲーニッツ?」
「も、勿論だ」
「ザイゼン副指令、貴方の抱く不安は最もかも知れませんが度が過ぎればそれは臆病と言えますよ」
「ですが、我々は既にナスカ艦隊、ゴーランド艦隊、ゲルン機動部隊、バルゼー艦隊を失っております。皆、地球を舐めてかかった慢心では無いですかな?」
「それはどれもこれもあの者たちの無能ゆえの失態でしょう?大帝陛下の神聖なる軍にあの様な無能者が居たこと事態、この帝国の汚点だったのよ。今回の事でその汚染物質が消えた事で帝国の繁栄は揺るぎないモノになったにすぎません」
地球艦隊の実力が予想以上に高い事は彗星帝国の花形とも言えるバルゼー艦隊やゲルン機動部隊が斃された事で証明されている。
それにヤマト一隻に ナスカ、デストール、ゴーランドの艦隊とザバイバルの陸上部隊が撃破されたのだ。
ヤマトを完全に撃沈していないので、それぐらいの被害想定は容易に算出する事が出来た。
しかし、サーベラーはヤマトと戦った提督たち、そして、地球軍と戦ったゲルン、バルゼーが無能だったから地球艦隊に負けただけであって、帝国の力はその者たちが居らずとも盤石だと言う。
「ヤマトや地球艦隊の敗残兵どもについては大帝には私からお伝えしておきます」
「りょ、了解しました」
サーベラーが足早に去った後、
「‥‥総司令、この一件、総参謀長殿に一任するのは不安過ぎませんか?」
ザイゼンはゲーニッツに問う。
「う、うむ‥‥しかし‥‥」
デスラーがいた時は、彼への反発で手を組んでいたサーベラーとゲーニッツだが、デスラーが出奔した後は、両者は以前の様に溝が深くなっていた。
デスラーが出奔する際、サーベラーとゲーニッツの二人はズォーダーから虚偽の報告を問責されており、処分こそ保留になっているが、このままでは征服事業が一段落するごとに大帝が行う指導部人事に引っ掛かり、降格あるいは粛清の対象になりかねない。
それに今回の地球攻略においては、過去最悪とも言える損失を出している。
あれだけ、自信満々で太陽系へと侵攻したバルゼーの敗死を大帝は、
「敵に地の利はあったが、その敵に勝る戦力と新兵器搭載戦艦(メダル―ザ)を有しながらも、目の前の優勢に眼が眩み、むざむざと敵の罠に自ら嵌まった。実に愚かで無様である」
と不快を示していた。
これ以上、この地球攻略作戦で艦隊と人材を失えば、自分は間違いなく失脚する。
「ザイゼン」
「はっ!!」
「地球艦隊の残党については万全をつくせ!!戦力に不安があるようならば、アンドロメダ星雲にある他の植民地からも援軍の要請をしても構わん!!何としても地球艦隊は一隻残らず撃滅するのだ!!よいな?」
「承知しました」
地球との降伏調印までゲーニッツは気が収まらないと思ったが、彼の不安と不運はまだまだこれからだった。
彗星帝国の要塞都市は地球との降伏文章調印の為、地球の海へと降り立った。
その際、大きな津波が起こり、沿岸の町を大津波が飲み込んだ。
幸い住民は地下都市へと避難済みだったので、無人となった港湾施設や停泊していた無人の船舶の被害だけで済んだ。
「とにかく生き残る事だ‥‥そこから次の出発も始まろう‥‥くれぐれも地球人としての誇りを捨てず、大役を果たしてもらいたい」
海に着水する彗星帝国の要塞都市を見ながら大統領は調印式に参加する藤堂と地球連邦首相に言った。
港には水上艦艇が用意され、調印式に参加する地球連邦政府、軍部高官はその艦船に乗り込んだ。
「出航準備‥整いました」
艦長が藤堂らに準備が出来た事を告げる。
「うむ、出発しよう」
やがて、機関音を奏で艦が動き出した。
「大使が行くぞ‥‥」
「降伏か‥‥」
「もう、これで終わりだ‥‥」
「なんて事だ‥‥」
その光景をモニターで見ている地球市民はどの人も絶望に染まった顔色をしていた。
「そうか、降伏使節が来たか?」
「ハッ、代表は地球連邦政府首相他二名と聞いております」
ゲーニッツは警備艦隊の件についてはザイゼンに任せ、自らは使節団が接近している事をズォーダーに報告した。
「分かった。ゲーニッツ‥客の接待はお前に任せる。敗軍の将だ。よろしくもてなしてやれ」
「心得ております」
たかが辺境の一惑星国家の調印式に国家元首たる自分が参加する程の事でもないと、ズォーダーは降伏調印式についてはゲーニッツに任せた。
その頃、地球へ密かに降下し、雲の中を航行するヤマトはコスモタイガーを発進させた。
そしてヤマト自体は魚雷の準備を行いつつ、使節団の艦に通信を送った。
「何!?ヤマトから入電?読め」
ヤマトからの通信に艦橋内の全員が驚いた。
その通信文は「これより彗星帝国に対し、奇襲攻撃を行う旨、至急戦闘海域より退避されたし」と言うものだった。
「いかん!!もう遅い!!」
首相は慌てて前を見る。
既に都市要塞とは目と鼻の先の距離である。
更に、
「都市帝国上空に友軍機!数、三十機以上!!高度三万五千‥‥北方、南方からも機影多数接近!これは、ヤマト所属機、空自機(日本)、アメリカ空軍・海軍・海兵隊機に、ロシア空軍、中国、フィリピン、台湾、韓国、タイ、ベトナム空軍機もいます!!」
CICにいたオペレーターが艦橋に報告する。
「海中ソナーにも反応多数!ヤマトの他に、海自(日本)、アメリカ、ロシア、中国、韓国、台湾、ベトナム、フィリピンの攻撃潜水艦が展開しています!!」
「長官、攻撃を中止させたまえ!!」
都市帝国周辺に次々と集結してくる戦闘機に戦闘艦艇‥‥。
彼らがこの後、何をするのかは目に見えている。
だからこそ、首相は防衛軍の長官である藤堂に攻撃中止命令を打電するように言う。
「無駄です」
しかし、藤堂は首相の頼みを断った。
「何!?」
「覚悟の行動でしょう。説得に応じるとは思えません」
「バカな!!我々が敢えて降伏の道を選んだのを忘れたのか!?」
「艦を反転せよ!!」
「長官!!」
「やらせてやってください。これが最後の‥‥賭けなんです」
藤堂もやはり降伏には反対であり、ヤマトを含む、地球軍軍人の奮闘に期待した。
ヤマトは通信文を発進後、海中へと潜った。
その海域には事前の打ち合わせ通り、既に各国の潜水艦隊が集まっていた。
空では各国のコスモタイガー隊の艦載機が合流、雲の中で何時でも急降下爆撃の体制をとれるようにしていた。
一方、調印式を準備していたにも関わらず、肝心の地球側の降伏使節を乗せた艦が突如、反転した為、彗星帝国では困惑する事態が起きた。
「何!?降伏使節の艦が反転した!?」
「バカな!?この期に及んで何を!?」
「報告!!高度約三万に地球編隊を確認!!」
「お、おのれぇ~!!」
ゲーニッツはザイゼンの予想が現実のものになったと共に降伏を翻した地球側に忌々しさを感じた。
ヤマトが攻撃態勢をとる少し前、カリスト基地から出撃した まほろば と 薩摩 はワープにて、地球圏まで来ていた。
「艦内全システム異常なし」
「全兵装異常なし」
ワープアウト後、各部署から報告が入る。
ハード面は異常なし。医務室からも今のところ異常の報告はない。
ソフト面、特にメンタル面も問題ないようだ。
その まほろば にガニメデ基地より通信が入り、木星圏の近海にて、彗星帝国の艦隊が確認され、現在木星圏の各基地で修理補給中の防衛軍残存艦隊はこれの迎撃に当たると言う内容だった。
「第十一番惑星に居た艦隊か他の星系の艦隊を呼び寄せたな‥‥」
通信内容を読んだ良馬は、木星圏に迫っている艦隊の推測をたてた。
挟み撃ちにされかねないが、此処は木星圏にいる友軍の残存艦隊に今は期待するしかなかった。
「都市帝国の様子は?」
「今の所、変化はありません!」
「よし‥‥」
どうやら連中は完全に油断してくれているようだ。
やり方が汚いと言われようが、戦争に綺麗も汚いもない。
第一、宣戦布告もなく、地球側に奇襲をしてきたのは彗星帝国の方だ。
それに連中は地球人を奴隷か弾除けにして使い潰す気なのだ。
そんな奴らに払う礼儀なんかない。
良馬は内心で自嘲したが、負ければ全てが無に帰るのだ。
もう後に退けないことはわかりきっている。
表現の違いこそあれ、皆、考えることは似通っていた。
そんな思いと共に反攻の艦隊は地球に迫っていった。
蒼く澄んだ大空を三十数機のコスモタイガーが飛行している。
「こちらコスモタイガー隊、加藤。只今高度三万五千」
ヤマトのコスモタイガー隊隊長の加藤がヤマトに現状を報告した時、雲の切れ間から友軍のコスモタイガーが多数飛来した。
「おい、加藤。アメリカやロシア、韓国に中国、日本のコスモタイガーだぞ」
副隊長の山本が味方識別を確認する。
「恐らくは降伏に反対する奴らだろうな」
その時、航空機から通信がきた。
どうやら当たりであり、ヤマトの攻撃隊と同行したいとの事だった。
加藤は幸先がいいと思いながら同行を受け入れた。
「こちらコスモタイガー隊、加藤。これより急降下による都市帝国のてっぺんを攻撃す る!! 行くぞ!!」
加藤は叫んで、操縦桿を倒して急降下に入った。
「コスモタイガー、都市帝国頂上部より攻撃を開始せよ!!」
ヤマトから攻撃命令が下り、コスモタイガーは急降下爆撃を開始した。
コスモタイガー隊は搭載していたミサイルや爆弾で都市帝国のビル群を爆撃する。
ズォーダーを始めとして、彗星帝国幕僚達はモニターを介してその様子を見ていた。
「大帝、上空より地球側の攻撃が始まりました」
「うむ」
ズォーダーも地球側の奇襲攻撃に顔をしかめる。
「降伏を翻すとは何という恥知らずな地球人め!!」
サーベラーは怒りで顔を歪める。
その時、モニターの映像が乱れた。
「どうしたんだ!?」
ゲーニッツが機器の操作をしていたオペレーターに訊ねる。
「ハッ、都市帝国のコントロールセンターの一部が破壊された模様です!!」
「な、なにぃ!!」
「大帝!!都市上方で戦うのは不利です!!要塞都市を浮上させて、迎撃機を発進させては!?」
ラーゼラーが迎撃機の出撃を意見具申し、
「大帝その通りです。早くご判断を!!」
サーベラーもラーゼラーと同意見の様だ。
「うろたえるな、地球人があくまで戦うと言うのであれば、我が帝国の力を見せるまでだ」
奇襲攻撃を受けてもズォーダーは慌てることなく、毅然とした態度でいた。
その風格はまさに王者と言う名に相応しものであった。
その頃、海中では‥‥
ヤマトと同じく各国の攻撃潜水艦が魚雷の発射準備を行っていた。
「コスモタイガー隊が急降下爆撃を開始します」
レーダーを見つめていた雪が古代に報告する。
「魚雷発射用意!!」
「一番発射用意完了!!」
「二番発射用意完了!!」
魚雷室から発射用意完了の知らせが届く。
「発射管ゲート開け!!目標、都市帝国‥魚雷発射!!」
古代の命令に魚雷が発射された。
ヤマトと攻撃潜水艦から多数の魚雷が都市帝国の下部に向けて魚雷が放たれた。
魚雷を受け、都市帝国に地震の様な揺れが襲い掛かった。
「どうしたのですか?これは!?」
突然の揺れにサーベラーは何が起きたのか事態の説明を求めた。
「ハッ、都市の下部に魚雷が命中した模様です!!」
「海中の映像を出せ!!」
「ハッ」
モニターの映像が切り替わり、海中の映像が映し出された。
「何が映っているんだ‥‥?」
ゲーニッツが唸りながらモニターの映像をのぞき込むと、
「むっ!?や、ヤマトだ!!」
其処には、多数の攻撃潜水艦と共に魚雷を撃つヤマトの姿が映し出された。
「小癪なヤマトめ!!」
サーベラーは苦虫を噛み潰したような顔でモニターに映るヤマトを睨んでいる。
そんな中、ズォーダーは、取り乱すサーベラーたち側近の醜態には関心を示さず、冷静にこの同時攻撃を分析していた。
(果たしてこれは偶然だろうか‥‥?真上と真下から同時に攻撃を仕掛けてくるとは‥‥)
(あのヤマトをはじめ、地球軍にもまだ、出来る者がいるということか‥‥)
(やはり、あのガミラスを相手に屈しなかっただけのことはあるようだ。だが、我が帝国はガミラスほど甘くはないぞ‥‥)
(宇宙唯一にして絶対の支配者たるこの私の慈悲を振り払い、なおも戦いを挑んできた以上、その罪はお前たち地球人全ての命で贖わせてやる)
「浮上用意!!」
ここに来てズォーダーも都市上方だけで戦うのは不利だと判断し、都市要塞を浮上させることにした。
ズォーダーの全く取り乱さないその姿を見て、うろたえていた側近たちも落ち着きを取り戻しつつあった。
地球側にとっての不幸はズォーダーが血筋をよりどころにするような単なる世襲君主ではないことだった。
都市要塞の浮上と共に回転履帯からガスバリアも噴射され、運悪くその空域を飛行していたコスモタイガーや攻撃を終え、退避行動を取ろうとしたコスモタイガーは噴射したガスバリアに接触しバラバラとなった。
同じく回転履帯の対空砲火も火を噴き始め、上空を飛行していたコスモタイガーは次々と撃ち落され始めた。
「全機、攻撃中止!!射程距離外へ退避せよ!!」
あまりに友軍機の被害に加藤は攻撃の中止命令を出し、コスモタイガー隊は一時、攻撃を中止し都市要塞から退避した。
都市帝国は海から浮上すると、瞬く間に地球の成層圏、重力圏を脱していく。
ヤマトは都市帝国を追って上昇し、宇宙へと向かう。
潜水艦群は、浮上してしまった都市帝国にはご自慢の攻撃能力は発揮できず、後はヤマトと航空隊に任せるしかなかった。
「ヤマト頑張れ!!」
「あんな要塞ふっとばしちまえ!!」
地球市民は、宇宙へ舞い上がって行くヤマトとコスモタイガーに声援を送っていた。
宇宙へ上がった都市帝国、それを追ってきたヤマトとコスモタイガー隊。
そこへ、援軍として追いついた まほろば と 薩摩。
「ヤマト!!コスモタイガー隊と共に既に都市帝国との戦闘状態に入っている模様!!」
「此方も攻撃に参加する!!コスモタイガー隊発進!!」
良馬が まほろば 所属のコスモタイガー隊に発進命令を出し、まほろば からはコスモタイガーが次々と発進していく。
そしてヤマトと共に戦闘に参加する事とコスモタイガー隊には、国籍、所属に関係なく、補修、補給が必要な機体は まほろば への着艦を許可する旨を伝えた。
都市帝国は、上部はガスバリアで守られ、その回転履帯に砲塔が上げられ、下部の小惑星部分にある艦載機射出口からは迎撃戦闘機のパラノイア戦闘機が射出され、コスモタイガー隊と激しいドックファイトを繰り広げている。
だが、パラノイア戦闘機の戦闘よりも都市帝国の対空砲火の激しさに、コスモタイガー隊は次々と撃ち落とされる。
「くそっ!!」
まほろば のコスモタイガー隊隊長の坂井は、悪態をつきながらも、回転履帯へミサイルを撃ちこむ。
すると、命中した回転履帯に装備されていた砲台を破壊する事が出来た。
破壊された砲台の砲手には数名が負傷しながらも生きている者がいたが砲台の残骸と共に宇宙空間へ放り出される。
「う、うわぁぁぁぁぁぁー!!」
その中で、一人の砲手は必死に回転履帯にしがみついていたがやがて力尽き宇宙空間へと投げ出された。
坂井に習い、まほろば のコスモタイガー隊は回転履帯に攻撃を集中し始め、少しでも敵の攻撃を黙らせようとした。
この敵の攻撃にズォーダーやサーベラーは、「小癪な敵」と言う認識しかしていなかったが、ゲーニッツとザイゼンは回転履帯が途中で止ってしまうのではなかと、ヒヤヒヤしていた。
テレザートの爆発の折、回転履帯の一部が崩れる被害があった。
応急修理でなんとなった中、今度はアンドロメダの体当たりを喰らったのだから、回転履帯への被害も当然あるだろう。
しかし、ゲーニッツとザイゼンの心配を余所にヤマト まほろば 薩摩 の三艦は回転履帯の攻撃を免れるために、都市帝国の下部へと潜る。
上部はあのガスバリアに包まれている。
あのガスバリアが有る以上、都市部にショックカノンもミサイルも通じない。
波動砲を使いたくても、波動砲のエネルギーを充填させる時間も余裕も恐らく相手は与えないだろう。
この状況で止れば射的場の的である。
良馬はやむを得ず波動砲による都市帝国攻略を諦めざるを得なかった。
「現在、敵艦載機編隊、我が防空戦闘機隊と接触し戦闘中です!!」
「地球艦隊、要塞都市の直下に向かいます!」
「小癪な虫けら共が!下部砲座を出して砲撃しなさい!!」
こめかみに血管を浮き立たせながら、サーベラーは対艦戦闘を命じた。
本来ならば、回転装甲帯砲やミサイルで迎え撃とうとしたが、地球艦隊は艦載機を発進させながら一気に艦首を下に向け、射界の外に出てしまった。
土星の時と同じ轍は踏まない。
だからこそ、武装が無いと思われる下部へと潜り込んだのだ。
しかし、都市要塞ガトランティスに隙は無かった。
下部の小惑星部分のクレーター部分からは無数の回転式の砲塔が出てきた。
回転式砲は長砲身なので、戦艦の装甲をも貫徹する威力を誇っていた。
「地球艦隊、下部に回り込んできます」
「砲撃開始!やっておしまいなさい!!」
「はっ!!」
長砲身を四本スクエアに配置した回転式砲からは、ビームの矢が地球艦隊に対し、雨の様に降り注いだ。
「都市帝国の下部から砲撃が始まりました!!」
まほろば はもとより、ヤマト も 薩摩 もその砲撃を当然受けた。
「被害状況の把握を急げ!僚艦の状況もだ!」
「は、はい!!」
「左舷!!高射砲群被弾!!」
「ヤマトと本艦に敵砲撃が集中しています!!」
彗星帝国側としては今下部にいる三艦の中で一番彼らが恨みを抱いているのはヤマトだ。
故に回転式砲台の砲手はヤマトの方に攻撃を集中してきた。
しかし、まほろば はヤマト改級の戦艦‥彗星帝国の下っ端兵士にはどちらがヤマト か まほろば なんて区別がつかない。
その為、自分たちに降りかかる火の粉を振り払う為、容赦なく攻撃をして来る。
「しつこい地球人め!!いい加減諦めろ!!」
都市要塞下部の回転式砲台の一つを預かる砲手は照準器に一隻の地球艦を捉えた。
煙を吐きながら執拗に抵抗する地球艦隊の中に一隻だけ他の艦とは全く異なる艦形をした艦がいる。
土星で見た量産型と思われる戦艦とヤマト、そのヤマトと似た戦艦であるが一回り大きい。
あの大きな艦が旗艦なのかもしれない。
「いい加減に沈め!!お前の‥お前たちのせいで俺たちは!!」
呪詛の声を上げながら照準装置を調整し、トリガーに指をかける。
ガトランティスには勝利しか許されない。
構造上、この砲座には負傷したから回収、交代‥‥などと言う状況は存在しない。
被弾すれば、あっという間に砲手は宇宙空間へ投げ出されるかこの砲台と共にバラバラになるしかない。
文字通り生か死かのどちらかしかない。
生き抜くためには勝利を得るしかない。
つまり地球艦隊を殲滅しない限り、砲手はこの地獄の様な状況から抜け出せない。
更に敵前逃亡を防ぐため、出入用ハッチは内側から施錠されている。
砲手は恐怖とも戦いながら狂ったようにトリガーを引き、エネルギー弾を撃ちまくった。
「帰る‥‥帰るんだ‥‥絶対に!!」
(新居で帰りを待つ妻ともうすぐ生まれてくる子供の為にも俺はこんな所では死ねない!!死ねないんだ!!)
心の中で叫びながら、その砲手は狂気に取りつかれるかのようにトリガーを引き続けた。
まほろば は右舷艦首の装甲に敵のビームを受け火花をあげながら、対空砲火を続けつつ航行をしていた。
「煙突ミサイル撃て!!」
まほろば は直ぐに反応し、艦橋後部にある煙突ミサイル、薩摩は艦橋両舷にあるVLS、ヤマトは煙突ミサイルに搭載されているミサイルを一斉に発射した。
ミサイルは件の砲座近くに着弾して岩石や他の砲台を吹き飛ばし、隣接したあの砲手が担当していた砲台を砲手もろとも消し飛ばした。
しかし、砲台はこれだけに留まらずまだまだある。
三艦のミサイル一斉攻撃は一部の兵装を破壊しただけに留まった。
ヤマトの艦橋では、彗星帝国の攻撃を受けつつも、真田は冷静に現状を観察していた。
「このままじゃ、敵の餌食になるだけですよ」
戦況が進まない中、太田が声をあげる。
「くそぉっ!!」
古代も悔しそうに顔を歪める。
「デスラーの言ったウィークポイントはどこにあるんだ‥‥?」
ガミラス艦隊との戦闘の最後に、デスラーは、
「真上と真下‥‥脆いものよのう‥‥」
と言い残していた。
デスラーは地球側に彗星帝国攻略のヒントを与えて去っていったのだ。
デスラーのヒントを元に彗星帝国の弱点はこの下部に有るのだと真田はそう踏んで都市帝国の下部が映し出されている艦橋の大モニターを睨むように見ていた。
ガトランティス人と言えども人間。
人間が造ったモノならば、必ず其処かに弱点が有る筈だ。
真田は技術者として、また科学者としてその信念は曲げずにモニターを見続ける。
モニターには、ヤマトと僚艦に攻撃をしてくる砲台とコスモタイガー隊と激しいドックファイトを繰り広げている敵の迎撃機の姿。
「艦載機‥‥艦載機‥‥そうか!!」
真田は敵の艦載機の姿を見て、声をあげた。
「真田さん?」
古代は突然声をあげた真田に首を傾げるが、真田はそんな古代の事を無視して、艦内マイクに向かって叫んだ。
「新米!!新米!!新米!!大至急あの艦載機の射出口を探れ!!」
「了解」
真田は中央コンピューター室(CIC)にいる新米に指示を出した。
真田から指示を受けた新米は早速コンピューターを操作し、彗星帝国の下部を探査し始める。
「た、頼むぞ‥‥データが出るまでは此処には命中しないでくれよ‥‥」
ビクビクと怯えながらもコンピューターを操作する手は止めない新米だが、別の個所が被弾すると身を震わせた。
その時、少し髪が乱れた。
「どんな時でも身だしなみ‥‥お婆ちゃんの遺言だ」
新米は手鏡と手櫛で乱れた髪を直す。
ピピピピピッ
と、検索結果が出た事を知らせるアラームが鳴る。
新米は慌ててコンピューター画面を覗き込む。
「よ、よし、分かったぞ」
彗星帝国の下部にある艦載機射出口の検索結果が出た。
新米は真田にその事を報告しようとした。
だが、その直後中央コンピューター室が被弾した。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
爆風と衝撃波が新米達、中央コンピューター室に居た乗組員たちに襲い掛かる。
「ぐっ‥‥ごほっ‥‥」
衝撃波を受け、体を叩きつけられた新米は肋骨が折れ、肺に刺さったのか、口から大量の血と乾いたような呼吸をする。
「うっ‥‥ぐっ‥‥」
自分はもう助からないだろう。
しかし、探査して導き出したデータは何としても真田に伝えなければ‥‥。
その強い思いで、新米は最後の力を振り絞り、艦内マイクで第一艦橋にいる真田に報告する。
「わ、分かりました真田さん‥‥左四十度‥‥ヤマトより二時の方向に射出口が‥‥うわぁぁぁぁぁぁ!!」
新米が真田に射出口の位置を伝え終えた直後またも中央コンピューター室が被弾し、新米はまたもや弾き飛ばされ、等々力尽きた。
「どうしたんだ!?新米!?新米!?新米!?新米!?しんまぁぁぁぁい!!」
壊れかけた艦内スピーカーからは真田の悲痛な叫びが誰も答える事のない中央コンピューター室に響いた。
「雪、直ぐに中央コンピューター室へ!!」
「は、はい!!」
新米の叫びと爆発音、そしてそれ以降、彼からの応答が無い事から中央コンピューター室が被弾したと判断した古代は直ぐに雪を応急救助の為、中央コンピューター室へ向かわせる。
「‥‥新米」
通信状況から恐らく新米がもう手遅れなのだと悟った真田。
「真田さん‥‥」
「‥‥大丈夫だ‥‥それより古代、新米の残してくれたデータを無駄にするな」
「はい!!二時の方向にパネルチェンジ!!」
古代が表示されているモニターの映像を変える様に指示を出すと、モニターにはパラノイア戦闘機の射出口が映し出され、そこから新たにパラノイア戦闘機が出撃してくる映像が流れた。
「あれだ!!あの射出口を破壊して都市帝国の中へ飛び込み、動力源を破壊するんだ。それ以外に勝つ手段はない!!」
「はい」
古代が都市帝国の内部へ切り込みをかけようとした時、
「俺も行くぞ、古代」
空間騎兵の宇宙戦闘服を纏った斎藤が第一艦橋へと入って来た。
「敵の懐に飛び込むんだ。生きて帰れる保証はないぞ」
古代は斎藤に最終確認をとる。
出撃すれば死亡確率はヤマトに居るよりもグンと上がる。
それでもいいのか? と‥‥
すると、斎藤の答えは、
「俺がそう簡単にくたばるとおもっているのかよ!?」
彼は笑い飛ばしながらそう言った。
そして、
「俺も行くぞ」
と、真田も都市帝国への切込み作戦に参加すると言ってきた。
「真田さん!?」
古代は真田の参加に意外性を感じたのか、驚いた顔をする。
「俺が行かなきゃ、メカの事はどうにもならんぞ」
確かに真田の言う事も一理あった。
「はい」
古代も真田の腕は知っていた。
一緒に来てくれるのであれば、これ程までに心強い人物は居ない。
古代は真田と斎藤と共に都市帝国へ切り込みをかける事を決めた。
彗星帝国に装備されているあの回転履帯についている砲台。
あの砲台の砲手って余程三半規管が強くなければ、酔いそう。
それに常に回転しているの正確な狙いをつけるなんてかなり難しい様な気もする。