星の海へ   作:ステルス兄貴

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三十三話 挺身隊

 

まほろば、ヤマト、薩摩、コスモタイガー隊と都市帝国との戦闘は地球側に好転の兆しが無いまま続けられている。

都市帝国の下部からは相変わらず容赦ない砲撃が続いている。

 

「くそ、しぶとい奴等だ!!」

 

とある砲台の砲手は悪態をつきながらもトリガーを引き続け、エネルギー弾を撃ちまくる。

しかし、地球艦隊は有効射程ぎりぎりのところにいる為、思うような戦果もない。

着実にダメージは与えられているのだが、未だ健在で、しかも指揮系統にも何ら混乱がみられない。

 

「これだけの砲火を集中しながら、なぜあの野蛮人共を撃破できないのです!?」

 

苛立つサーベラーはゲーニッツを詰問するが、彼は顔色一つ変えない。

 

「こちらの有効射程いっぱいの位置にいる為、威力が減殺されていることもありましょうが、地球戦艦の防御が予想以上に強固だったこともあるでしょう」

 

「おのれ、忌々しい劣等民族が‥‥」

 

サーベラーは苦虫を噛み潰したような顔をして、戦況が進まない映像が映し出されるモニターを睨んだ。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「艦長、ヤマトからの通信です」

 

「繋げ」

 

都市帝国の下部にある砲台と戦闘中の まほろば に ヤマト から通信が入り、モニターには古代が映る。

 

「これよりヤマトは都市帝国の内部に潜入して破壊活動をします。まほろば と 薩摩の皆さんにはその支援をお願いしたいのですが‥‥」

 

「古代君、君は死ぬ気か!?」

 

「死ぬつもりは毛頭ありません。ですが、危険なのは十分承知の上です」

 

「‥‥分かった、此方のコスモタイガー隊も応援に向かわせる‥‥死ぬなよ」

 

「ありがとうございます。月村艦長」

 

互いに敬礼し、通信を終える。

 

「艦長」

 

「ん?」

 

永倉が良馬に声をかける。

 

「艦長も行って下さい。艦長も元はパイロッ トだったんでしょう?今は一機でも多くの戦力が欲しいはずです」

 

「ちょっ!?航海長!!」

 

永倉の言葉に新見が声をあげる。

 

「艦長、まさか『行く』なんて仰いませんよね?」

 

新見が良馬を睨みながら訊ね、ギンガは不安そうに良馬を見る。

敵の心臓部に突入するのだ。

彼らの大半ないしほとんどは生還できないだろうことは容易に想像がつく。

 

「いや、航海長の言う通りだ。今は一機でも多くの戦力を投入して、成功率を少しでも上げたい‥‥副長、すまないが少しの間、艦を頼む」

 

「艦長!!」

 

「大丈夫だ。必ず生きて帰ってくるから」

 

そう言って軍帽とジャケット、スカーフ、手袋を脱ぐ良馬。

 

「良馬さん!!」

 

「艦長!!」

 

「では、艦を頼む」

 

そう言って良馬は、足早に艦橋を出て格納庫へと走って行く。

格納庫では、既にコスモゼロがスタンバイしている状態だった。

しかし、

 

「ん?複座?」

 

スタンバイしていたコスモゼロは複座型に調整されていた。

 

「整備長、これはどういう‥‥」

 

良馬はコスモゼロの整備をした整備長に事情を訊ねようとしたら、

 

「私が整備長に頼みました」

 

「っ!?」

 

良馬が慌てて声のした方に顔を向けると、其処には普段の軍医の衣装から女性用の艦船乗りの制服に着替えたリニスが居た。

 

「り、リニス」

 

「まったく、貴方は何を考えているんですか!?艦長なのに敵陣の真っただ中に切り込むなんて‥‥」

 

リニスは良馬の行動を軽率だとお説教をし始めようとするが、

 

「リニスだってそれを知ったからこそ、着いて来ようとしているんじゃないか?それに医務官が、負傷者が続出している中、抜け出していいのか?」

 

服装の違うリニスの姿を見れば、彼女も良馬と共に切込み作戦に参加しようとしているのは明らかであった。

 

「私のマスターは貴方なのですから、マスターが危険な所へと行くのであれば、それにお供するのは使い魔として当然の事です!!医務室はディアーチェさんたちが頑張って私の居ない穴を埋めてくれています‥‥と、言うよりディアーチェさんが私に良馬さんの下に着いて行くように言っていましたから‥‥」

 

照れ隠しなのか、良馬から視線を逸らしながら言うリニス。

 

「リニス」

 

「はい?」

 

「すまない‥‥そして、ありがとう‥‥」

 

「いえ‥‥」

 

「リニス」

 

「はい」

 

「必ず、生きて戻って‥‥そして奴等に勝つぞ!!」

 

「はい!!」

 

良馬とリニスを乗せたコスモゼロはカタパルトへと上がり発進シークエンスを開始した。

まほろば からは良馬が乗るコスモゼロの他に補給や補修が終了した機体、まほろば に搭載されていた予備機のコスモタイガーが次々に発艦して行く。

同様にヤマトの方でも補給し終えたばかりの機体、予備機のコスモタイガー(三座席タイプ)が次々と発艦した。

そんな中、

 

「俺たちを置いていくなんて、そんな野暮なことはしないよな」

 

「加藤‥‥それに山本!!お前たち、大丈夫なのか!?」

 

補給の為、一時ヤマトに帰還した加藤、山本の両機は被弾し、パイロットである二人も負傷していた。

それにもかかわらず、二人は医務室へは行かず、簡単な応急処置をしただけで予備機に乗り、またもや出撃してきた。

 

「なぁに、これしきの傷‥‥今のヤマトに比べたら、軽いもんだよ」

 

「二枚目は不死身ってね‥‥」

 

二人は心配する古代に笑みと冗談を交え飛行を続ける。

そして、古代の目に まほろば から出撃したコスモタイガー隊が映り、その中には、良馬が乗るコスモゼロがいた。

 

「月村艦長!!貴方まで何故!?」

 

「古代君、今は地球を滅亡から救う事が第一優先だ。そんな時に、艦長だのパイロットだの関係ないよ。一人でも多くの戦力が必要だろう?」

 

良馬はニッと笑みを浮かべると、古代もつられて苦笑しつつも笑みを浮かべた。

 

突入部隊は間隔を取りながら、全機が集結し、敵艦載機の射出口目がけて一気に突っ込んで行く。

そこをパラノイア戦闘機が襲い掛かり、激しいドックファイトが起こり、更に迎撃機の猛攻を突破すると、今度は都市帝国の下部の砲台が突入部隊に襲い掛かる。

当然、まほろば、ヤマト、薩摩の三艦も援護射撃を行い、決死隊の針路上の敵砲台を潰すが如何せん数が多い。

その中で、古代と真田が乗ったコスモゼロが敵砲台に狙われるが、そこを山本機が庇い山本機が被弾した。

 

「くそっ!!」

 

加藤が「仇だ」と言わんばかりにミサイルを撃ち、山本機を被弾させた砲台にミサイルを叩き付けた。

 

「山本ッ!!」

 

山本機の近くを飛行していた古代は被弾し、コントロール不能になった山本機に向かって叫ぶ。

炎上するコスモタイガーの操縦席で山本は古代に敬礼をして敵対空砲火に体当たりをした。

誰もが山本明夫の戦死を覚悟したが、山本は間一髪の所で機体からベイルアウトし、スペースパラシュートにて戦線を離脱した。

 

「あとは‥‥あとは任せたぞ‥‥」

 

脱出したが、自分はこれ以上戦闘に参加できないと悔しそうな顔で山本は都市帝国から離れて行った。

 

「古代君、大丈夫だ!!山本君は無事に脱出できたようだ!!」

 

良馬は一瞬であるが、無事に機体から脱出した山本の姿を確認していた。

その為、古代に山本の無事を伝えた。

 

「そうですか‥‥よかった‥‥」

 

山本の無事を伝えられた古代はホッとした。

 

「敵艦載機発進口の破壊成功!!」

 

「よし、全機突入!!」

 

ヤマト砲術長の南部が精密射撃により、敵の艦載機射出口の防御シャッターを破壊し、其処からコスモタイガー隊は都市帝国内部へと突入する。

 

「ヤマトから入電!挺身隊が都市帝国内部に突入しました!!」

 

ギンガがヤマトから受信した通信内容を艦橋要員に報告する。

 

「そうか、何とか無事に入り込めたか‥‥」

 

「しかし、大変なのはこれからです」

 

「うむ‥‥」

 

敵のホームグラウンドに入るのだ。

当然敵も万全の迎撃態勢をとって居る筈‥‥。

 

(良馬さん‥‥)

 

突入部隊に参加した恋人(良馬)の身をギンガは案じた。

そこへ、

 

「ギンガ!!」

 

「ディアーチェさん?」

 

白い衛生士の服装に着替えたディアーチェが艦内通話をかけてきた。

 

「すまん!!人手が足りなくて困っている。ギンガは確か士官学校で、医務科も受講していたな?」

 

「は、はい」

 

「ならば手伝ってくれ!!」

 

「わ、分かりました」

 

「では、待っている」

 

そう言い残し、ディアーチェは通信をきった。

 

「副長、すみませんが、私は負傷者の応急手当にまわります」

 

ギンガは通信業務から外れるため、その旨を副長の新見に報告する。

 

「ええ、通信業務は私が兼任するからいってらっしゃい」

 

新見は快く通信業務を引き受け、ギンガは医務室へと向かった。

 

「うっ‥‥」

 

医務室へ入ったギンガは、一瞬眩暈を起こしそうになった。

医務室の床や通路には負傷者が沢山おり、其処に居る者は皆、血が滲んだ包帯をして、苦しそうな声をあげ、顔を歪ませている。

中には手足が千切れている者も居り、床には血だまりが出来、切断された手足も転がっている。

そこはまさに地獄絵図の様だ。

管理局時代では考えられない光景が今、ギンガの目の前にあった。

 

「来たか!?早く手伝ってくれ!!」

 

負傷者の返り血を浴びながらも応急処置をしていたディアーチェがギンガの存在に気が付き声をかける。

 

「は、はい!!」

 

ギンガも手術用の殺菌ゴム手袋と前掛け、マスクをつけ、負傷者の応急救護に取り掛かる。

応急処置をしながらギンガはある事に気が付く。

 

(あれ?そう言えばリニスさんはどこへ‥‥?)

 

そう、まほろば の医務官を務めているリニスの姿が見当たらないのだ。

 

(艦内を回っているのかな?)

 

ギンガはリニスが艦内を回り、医務室へ運べない重傷者の応急救護をしているのかと思いつつ、ディアーチェにリニスの行方を訊ねた。

 

「ディアーチェさん、リニスさんは?」

 

「医務官か?医務官は今、艦長と共に敵陣に切込みをかけにいっている」

 

「えっ!?」

 

ディアーチェの予想外の言葉にギンガは手を止める程、驚いた。

 

「リニスさんが‥ですか?」

 

「そうだ。切込みとなれば、当然その先でも負傷者はでるだろう‥‥一人でも多く、生きて帰ってほしいからな‥‥」

 

ディアーチェは手を止めることなく、リニスを向かわせた理由をギンガに話す。

 

(うーん‥‥納得出来る様な、出来ない様な‥‥)

 

ギンガは応急救護コースを士官学校で受講していたのだから、自分の方を連れて行って欲しかったと思いつつ、負傷者の救護を再開した。

 

 

都市帝国内部へと辿り着いたコスモゼロとコスモタイガー隊。

次々と都市帝国内部に飛び込んでくるコスモタイガーに迎撃戦闘機が襲い掛かり、都市帝国内部でも激しい艦載機戦が発生した。

 

「古代、あそこが滑走路だ!!着陸しろ!!」

 

「了解!!」

 

敵戦闘機との戦闘中の間にも真田が飛行場の位置を見事に看破。

古代のコスモゼロに続いて、次々と敵の滑走路に強行着陸していくコスモタイガー。

そこへ、滑走路守備隊は彗星帝国軍で正式採用されているアストロレーザーライフルで迎撃にかかるが、迫り来る戦闘機と武装しているとは言え、生身の体の人間‥‥。

勝敗は目に見えている。

着陸しながらパルスレーザーを撃つコスモタイガーに滑走路の最前線にいた守備隊の兵士は次々と蜂の巣にされ斃れていく。

また滑走路の奥に居た兵士もコスモタイガーの体当たりとも言える強行着陸によって、コスモタイガーに轢かれる者も居た。

しかし、そんな決死隊もコスモタイガーの機体から降りると彗星帝国兵からのレーザー銃の熱烈な歓迎を受ける。

 

「くそっ‥‥」

 

「このっ‥‥」

 

普通のレーザーライフルの他、滑走路にはレーザー機関銃が設置された防御施設もあり、突入部隊は滑走路でいきなり足止めを食らったが、

 

「古代君!!真田さん!!此処は俺たちに任せて、君たちは動力炉の破壊へ行ってくれ!!」

 

良馬が応戦しながら古代らに動力炉の破壊を任せる。

 

「し、しかし‥‥」

 

そんな良馬の行為に古代は煮え切らない様子。

 

「コスモタイガーが無いと帰れないだろう!!」

 

「此処は俺たちが死守する!!だから行け!!」

 

「くっ‥‥」

 

「行こう古代!!」

 

「真田さん‥‥」

 

「彼らの行為を無駄にしてはいけない。それに何時までも此処で足止めを食らう訳にはいかない!!」

 

「分かりました」

 

古代、真田、斎藤他、ヤマトの戦闘班と空間騎兵隊の隊員たちはレーザーの雨を掻い潜り、一路動力炉を目指していった。

 

古代たち、動力炉破壊組が滑走路を後にしても守備隊は彼らを追わず、滑走に残りっている良馬たちに攻撃を行っている。

良馬は両手にコスモガンを持ち、壁や滑走路で破壊されたコスモタイガーや敵の戦闘機を蹴って跳んだりして、滑走路内を駆けまわりながら敵兵を打倒していく。

 

「くそっ、アイツは本当に地球人なのか!?」

 

良馬の人間離れした動きに敵の兵士は悪態をつきながら良馬を狙うが、ことごとく返り討ちにされていく。

 

「マスター。攻撃準備完了しました。何時でもいけます」

 

リニスは周囲に光の玉を無数に出していた。

良馬が派手に滑走路内を駆けまわっていたのは敵兵の目をリニスから逸らす役割も担っていた。

 

「な、なんだ!?アレは!?」

 

「俺が知るか!!」

 

「う、撃て!!アイツを撃つんだ!!」

 

両軍の兵は皆、リニスの周りに光の弾が無数に浮いている光景を見て唖然としている。

 

「今だ!!リニス!!やれ!!」

 

「バルニフィカス!!」

 

リニスの攻撃に察知し、ガトランティスの兵士は地球側の新兵器かと思い、ガトランティスの兵士たちが銃を構える。

 

だが、もう遅い‥‥

 

「安らかなる死を‥‥プラズマバイオレット!!」

 

球体状だった玉が氷柱のように鋭くなり、

 

ズガガガガガッ!!

 

一斉に彗星帝国の兵士に襲い掛かった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

「うげぇぇぁぁ!!」

 

リニスの攻撃魔法は次々と彗星帝国の兵士を撃ち抜き、至近で爆発を起こし、敵兵を死傷させていく。

勿論、殺傷設定にしてあるから辺り一面は大量の血や焼け焦げた死体、バラバラになった死体や内臓、千切れた手足や首が転がり、一命は取り留めたものの腕や足を無くしたり、全身を焼かれ、その激痛に苦しむ兵が居る地獄の様な戦場風景となった。

 

その頃、動力炉を破壊しに行った古代達は出合い頭に出現した敵兵を倒しながら着々と動力炉を目指していた。

しかし、その様子は監視カメラによってサーベラーたちにたちまち知れる事となった。

 

「あっ!?内部まで侵入してきたか!?」

 

「艦船乗組員も迎撃に回しなさい!何をやっているのですか!?」

 

「既に命じております!」

 

司令部は半ばパニックに陥っていた。

そもそも敵兵が直接上陸してくる事自体、彗星帝国は想定していなかった。

それだけ白色彗星・首都星要塞のガスバリアや防御力に対する自信が大きかったのだが、それが今回は裏目に出てしまった。

 

「飛行場管制室、応答が途絶えました!」

 

「おのれぇ~劣等人種の分際で~!!直ぐに近くの部隊も飛行場に回しなさい!!」

 

サーベラーは顔をどす黒く歪めながら報告を聞く。

しかも入ってくるのはどれも此方側が不利な情報ばかり。

辺境の野蛮人にこの首都を踏み荒らされるという、これ以上ない屈辱に、自棄酒か物に八つ当たりたい気分であるが、無論、そんな事で事態が改善するわけがない。

今は一刻も早くあの不逞の輩を始末することが先だ。

 

「サーベラー様、動力炉エリアに近衛兵の配置を大帝にご奏上下さい!!」

 

「そんな事ができますか!私に恥をかかせるつもり!?」

 

「っ!?」

 

「それに大帝をお守りする近衛を野蛮人との戦いに晒すわけにはいきません!」

 

「しかし、万一主動力炉を破壊されれば首都機能の大半が奪われます。此処はやはり大帝にご報告すべきでは?それに動力炉に通じる通路のシャッターを下ろしましょう!」

 

ラーゼラーがズォーダーに報告し、動力炉の区画に通ずる通路のシャッターを下ろそうとするが、

 

「お待ち、ラーゼラー。たかがあれしきの賊、袋の鼠同然ではありませんか。第六ブロックと第五ブロックへ兵を差し向けよ!!それから各エレベーター、階段、通路も警備を固めよ!!」

 

地球攻略作戦やデスラーの出奔騒ぎと多くの失点を重ねてきたサーベラーにとって、今回自分たちの神聖不可侵領域へ侵入してきた蛮族共の討伐はこれまで失点してきた汚名を雪ぐべく千載一遇の機会。

同じく失点を重ねたゲーニッツに功績を奪われぬ様、此処は自分が主導権を握り、この事態を解決に導けば、きっと大帝もお喜びになるに違いないと、思ったサーベラーはズォーダーには報告せず、自らが指揮を執った。

しかし、その中には『通路のシャッターを下ろす』と言う命令は含まれなかった。

これが後に、彼女自身の身を破滅させる事とはこの時のサーベラーは知る由も無かった。

 

動力炉を目指している古代たちは、都市帝国の地下層に居た。

 

「古代、ちょっと待て!!」

 

先行する古代を真田が呼び止めた。

 

「うーん‥‥こっちだ‥‥」

 

真田は手に電卓の様な端末を持ち、その画面を見て動力炉が、古代が今進もうとした通路ではなく、脇にそれている通路の先だと言う。

 

「なんだいそりゃ?」

 

斎藤が真田に持っている端末の正体を訊ねる。

 

「動力炉の位置を探るためのエネルギーカウンターだ」

 

真田の持っている端末は、ある特定のエネルギー反応を探知する小型のレーダーの様な機械だった。

 

真田の誘導の元、動力炉を目指して行く中、

 

「見ろ、エネルギー中継所だ」

 

そこは幾つものパイプがまるで蜘蛛の巣の様に張り巡らされた場所で、電灯も無く、薄暗い場所だった。

 

「しかし、どのパイプが動力炉に続いているんです?」

 

「パイプの流れを見ろ、あっちが動力源だ」

 

真田が指摘するパイプは中継所に存在する無数のパイプの中でも一番太いパイプがあり、その太いパイプが動力炉から直接エネルギーを供給され、此処から都市帝国の各部署へ伝達供給されているのだと言う。

 

「よし!!だったら行こうぜ」

 

斎藤が号令をかけ、一同は太いパイプに沿って進んでいく。

その様子を彗星帝国の兵士達は物陰から伺っており、ライフルを構え、待ち伏せていた。

そして、探照灯を一斉に照射し、古代らの目を一瞬くらませると、一斉射撃をしてきた。

 

「こっちだ!」

 

咄嗟に古代が脇にある通路へと逃げ込み、真田と斎藤も後に続く。

しかし、随伴していた空間騎兵隊員三人が逃げ遅れ、そこで射殺された。

 

「この分じゃ、どのエレベーターも敵に守られているな」

 

敵が待ち伏せをかけてきた事から、真田がこの先は敵の襲撃が多くなると予想する。

 

「階段じゃ敵の絶好の的になるぜ」

 

陸上戦闘の専門家である斎藤が階段で行く危険性を言う。

 

「途中、ゴンドラがあった。使えるかもしれない。行ってみよう」

 

手榴弾を待ち伏せしていた敵に向かって投げ、敵が怯んだ隙を見て、古代たちは中継所を後にし、来た道を引きかえした。

そして古代が見つけたゴンドラに乗ってみるとそれは残飯輸送用のゴンドラで、ゴンドラの中は生ゴミと腐敗臭でとんでもなかった。

 

「残飯輸送用のゴンドラか‥‥」

 

斎藤は足元の広がる残飯の海に顔をしかめる。

 

「彗星帝国の連中も飯は食うみたいだな」

 

斎藤は足もとの残飯を見ながら軽口を叩く。

その言葉に若干緊張がほぐれた古代と真田だった。

そして真田は再びエネルギーカウンターで動力炉の位置を探る。

 

「この辺だな‥‥」

 

「よし、あのパイプに飛び移ろう」

 

ゴンドラが近くにあったパイプの傍を通った時、三人はそのパイプに飛び移った。

流石の彗星帝国の兵士たちもまさか通路でもない所から侵入して来るとは思っていなかったようで、古代たちは敵兵に見つからず、動力炉のある区画まで無事に来る事が出来た。

もう間もなく動力炉だと言う所で、

 

「ぐあぁぁ!!」

 

敵兵の狙撃を受け、真田の左足が吹き飛んだ。

真田を狙撃した敵兵は古代と斎藤の二人によって斃された。

 

「真田さん!!」

 

「心配ない‥‥お前も知っているだろう‥‥俺の脚は義足‥‥作り物だ」

 

「そうだったのかよ」

 

古代はイスカンダルへの航海の時、ガミラスの宇宙要塞爆破作戦時に真田の四肢が全て義手、義足だと知ったが、此処で初めて真田の四肢が義手、義足だと知った斎藤は驚いていた。

真田はガミラスとの戦争前‥‥。

幼少期の頃、月の遊園地へ家族と遊びに来て居た際、姉と共に遊園地の遊具の事故に遭い、姉は死亡、真田自身は四肢を失った。

その時から真田は科学者、技術者を目指すようになった。

事故の前は画家を目指していたのだが、真田は姉を殺し、自らの四肢を奪った科学技術力を恨み、「科学は俺の屈服させるべき敵だ」をモットーに科学を屈服させるべく科学者の道を選び、地球防衛軍の科学・技術者となったのだ。

義足と言う事で、命に別状はないものの、行動不能となってしまった真田。

 

「俺は此処からは動けん。二人とも、此処から先は俺の指示に従って動力炉を爆破してくれ」

 

真田は古代と斎藤の二人をオペレートしながら二人を動力炉へと導いた。

 

「この通路だな」

 

「間違いなさそうだ‥‥真田さん。動力炉の前に着いた爆薬はどうやってセットすればいいんだ?」

 

斎藤が真田に爆薬のセット方法を訊ねる。

 

「場所は出来るだけ高い所が良い。起爆装置と爆薬を繋げるのを忘れるな。お前はそそっかしいからな」

 

「了解。行くぜ、古代」

 

「ああ!!」

 

古代と斎藤は動力炉区画の最深部へと到達した。

 

「なに!?動力室へ入った!?」 

 

古代と斎藤が動力室へと到達したその報は、直ぐにサーベラーの下に入った。

サーベラーにとっては、最も恐れた報告であった。

 

「まずい事になった‥‥だからあれほど私が申し上げたのに!!それを貴女は!!」

 

ラーゼラーは自分の意見を聞かず、精鋭部隊を動力室の前に配備しなかった事、通路のシャッターを閉めなかったサーベラーを追求しようとしたが、サーベラーには全く聞こえておらず、ズォーダーが知る前にこの事態を収拾しなければならなかった。

 

「早く、大帝がおいでになる前に片付けなさい!!」

 

報告を知らせてきた兵にサーベラーは命ずるが、

 

「何事だ?サーベラー」

 

運は彼女の味方にはならなかった。

 

「っ!?」

 

作戦室にズォーダーが姿を現した。

 

「わしが来る前に誰を片付けるのだ?」

 

しかも、ズォーダーは、先程のサーベラーの発言を聞いていた様だ。

 

「あっ‥‥あっ‥‥」

 

サーベラーは顔を真っ青にしてズォーダーを見た。

 

漸く目的地である動力炉を目の前に古代たちは上から敵兵の攻撃に足止めを余儀なくされた。

敵は動力室の上部にある通路からレーザーを撃ってきている。

下部にいる古代達は地理的に不利な状況。

しかしモタモタしていると来た道からも敵が来て、挟み撃ちに遭う。

 

「これじゃあ、とても向こうへはいけねぇ‥‥古代、頼む援護してくれ」

 

「分かった」

 

「俺が向こうについたらお前は帰ってくれ」

 

「なにっ!?」

 

斎藤のこの発言に驚く古代。

 

「向こうへ行ったらとても生きちゃあ帰れねぇ‥‥お前まで死んだらヤマトはどうなるんだ!?それに真田さんはどうする!?」

 

「斎藤‥‥」

 

「古代」

 

斎藤は古代の肩に手を置き、

 

「古代、俺はお前が好きだ。上手くは言えねぇが、俺より年下のお前を兄貴のように思っていた」

 

「うっ‥‥」

 

斎藤の言葉を聞き、思わず涙が流れる古代。

 

「泣きっ面なんて見たかねぇぜ。兄貴よ‥良い艦長になってくれよ‥‥行くぜ!!」

 

そう言って斎藤は動力炉めがけて、隠れていた通路を飛び出していった。

 

「斎藤!!」

 

当然敵の兵士たちは斎藤を狙うが、その隙に古代が敵の兵を狙撃していく。

 

「古代!!早く行け!!」

 

そして無事に斎藤は動力炉の前に辿り着いた。

斎藤は向かい側でまだ援護射撃をしている古代にヤマトへ戻る様に伝える。

 

「真田さんを連れてヤマトへ戻れ!!行け!!この野郎!!早く行け!!」

 

「くっ‥‥」

 

古代は後髪を引かれる思いで、その場から走り去り、真田の下へと向かった。

 

「真田さん!!」

 

「早いな。セットはもう終わったのか?」

 

「‥‥」

 

「っ!?斎藤‥‥」

 

動力炉から戻ってきたのが古代のみで其処に斎藤の姿が見えなかった事から真田は動力炉で何があったのかを察した。

動力炉爆破のため一人残った斉藤を残し、苦悩のうちに古代と真田は飛行場に向かって走り続けた。

時折現れる敵兵は殆ど反射的に射殺した。

斃した兵士の中には女性兵やまだ若い、少年兵もいたようだが振り返らずに駆け抜ける。

そして、ようやく辿り着いた飛行場もまた血と骸の溜まり場と化していた。

敵の守備兵も滑走路に残ったコスモタイガーのパイロットも殆どが物言えぬ状態と化している。

機体も大半が再び飛び立てる状態ではない。

古代はこの際、動けるのであれば敵の機体でも仕方ないかと思った。

 

「月村さん!!加藤!!無事か!?」

 

「こっちだ!!早く乗れ!!」

 

滑走路で帰りの分のコスモタイガーを死守していた良馬と加藤は無事な様子で未だに戦闘を行っていた。

 

「生存者は全員、近くに倒れている者を担げ!!」

 

良馬が声を張り上げ、近くで倒れている味方を一人でも多く連れて帰る様に言う。

それぞれが撤退準備をし、整った機体からこの場を後にしていく。

 

「乗ったか?発進するぞ?」

 

「頼む」

 

加藤は古代、真田を三座のコスモタイガーに乗せ、滑走路を後にしていく。

 

「それじゃあ艦長!!お先に!!」

 

坂井も負傷したコスモタイガー隊員を担ぎ、近くの機に乗り込む。

 

「ああ、まほろば で会おう!!」

 

そして、最後に良馬とリニスだけとなり、

 

「リニス!!最後にとっておきをお見舞いしてやれ!!」

 

盛大な置き土産を残してやれと良馬はリニスに命じ、

 

「はい!!バルニフィカス、最大出力!!‥‥サンダーレイジ!!」

 

リニスはMaxパワーで殺傷設定の攻撃魔法を放つ。

 

リニスが放った止めの一撃で滑走路は見る影も無くし、生き残っていた敵の兵士も全て物言わぬ屍となった。

当然綺麗なままで残った死体などは一体もない。

それは、戦死した味方の兵の死体も同様だ‥‥。

またリニスも限界まで魔力を使い、技を放った後は山猫の姿に戻った。

山猫姿のリニスと彼女のデバイスを脇に抱え、良馬はコスモゼロに乗り、滑走を後にした。

 

一方、動力炉では、

 

「くそっ、もう少しだ‥‥心臓には当てるなよ‥‥」

 

斎藤が一人、動力炉の前で爆弾を仕掛けようとしていた。

敵の兵士はしぶとい蛮族兵に怒りを抱きながらただ一人その場に残った斎藤に十数人が襲い掛かり、斎藤の体はたちまち銃創だらけとなる。

 

「うっ‥‥くっ‥‥うおっ‥‥」

 

斎藤は最後の力を振り絞り、爆弾をセットした。

 

「よし、OKだ‥‥」

 

爆弾をセットした斎藤はその場に倒れる。

敵の兵士は斎藤に止めをさそうとしたのか、または生死を確認し来たのか、それとも斎藤が仕掛けた爆弾を除去しようとしたのか、兵士たちはライフルを構えながら斎藤に近づいてくる。

 

「ヤロウ‥‥消えやがれ‥‥」

 

近づいてくる敵兵を見て、ニヤリと笑みを浮かべながら斎藤は起爆スイッチを押した。

その直後、動力炉は眩い光に包まれ、大爆発が起こった。

 

『うわぁぁぁぁぁぁー!!』

 

斎藤に近づいて来た兵士たちは逃げ出す暇もなくその爆発に巻き込まれた。

 

 

宇宙戦艦 ヤマト 格納庫

 

ヤマトに無事に戻った古代は早速加藤に労いの声をかけた。

 

「加藤!!よく頑張った!!生きて帰って来られたのは‥‥どうやら俺たちだけらしいな‥‥」

 

確かに古代の言う通り、ヤマトの格納庫へ戻ってきた機体は古代たちが乗ったこの一機だけだった。

もしかしたら、まほろぼ の方へと向かったのかもしれないが、ヤマト所属のコスモタイガーならば、ヤマトに戻って来る筈だ。

ヤマトに戻って来た機体が、古代たちが乗った一機だけと言う事は、やはり‥‥

 

「‥‥」

 

古代の言葉に何らリアクションを示さない加藤。

 

「ん?加藤?」

 

不審に思った古代が前の操縦席を覗き込むと、

 

「っ!?」

 

そこには息絶えた加藤の姿があった。

加藤がいつ、息を引き取ったのかは分からないが、彼は死に体ながらも古代と真田が乗る機体をヤマトに戻す為、おそらく最後は無意識の内に操縦桿を握っていたのかもしれない。

 

「‥‥」

 

「加藤‥‥」

 

加藤の死に顔は、血で汚れながらも満足そうな笑みを浮かべていた。

 

動力炉を失った都市要塞は瞬時にその機能を停止した。

回転履帯は回るのを止め、ガスバリアは薄れていき、最終的には消失した。

都市部のビル群はその全て明かりが消え、停電している。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「都市要塞のエネルギー反応が突然消失しました!どうらや都市要塞の動力炉の破壊に成功した模様!!」

 

「やったー!!」

 

「よっしゃあ!!」

 

新見の報告を聞き、フェリシアや永倉は声をあげて喜んだ。

そこへ、艦橋のドアが開き良馬が帰って来きた。

 

「艦長!!」

 

「ご無事でしたか!!」

 

「都市要塞は?」

 

「全ての機能を停止した模様です」

 

「そうか‥‥」

 

良馬はゆっくり目を閉じる。

 

(大きな‥‥大きな代償だった‥‥)

 

此処までの戦闘で地球側が出した代償はあまりにも大きすぎた。

彼らを悼むには、絶対に生きて勝利しなければならなかった。

 

「よし!!使用可能な武装で都市要塞を攻撃しろ!!」

 

まほろば、ヤマト、薩摩からは無数のショックカノンとミサイルが無防備となった要塞都市に降り注いだ。

地球ではその映像を見て、皆が歓喜の声をあげた。

 

崩壊していく彗星帝国ご自慢のビル群‥‥。

その内部ではまさに大混乱となった。

あれほど地球市民のパニック状態を見て、無様だの野蛮だのと言っていたガトランティス人が、今度は自分たちがその醜い醜態を晒す事となった。

上からは降り注ぐ瓦礫の雨‥‥。

彼方此方で起こる爆発。

その最中、

 

「ぐわぁぁぁっ!!」

 

ラーゼラーが瓦礫の下敷きとなった。

一瞬で押し潰されれば幾分、楽だったのだが、彼は運悪く両足の骨が砕かれ、下半身が瓦礫に埋もれた状態でまだ生きていた。

必死に逃れようと身体を動かすラーゼラー。

その彼の傍をサーベラーが走り去っていった。

 

「サーベラー‥‥総‥‥参謀長‥‥」

 

彼は救いを求めるかのように手を伸ばすがサーベラーは見向きもせず、通路を走り去っていった。

 

「フ‥‥フ‥‥フハハハハ!!ハーハハハハハハッ‥‥」

 

ラーゼラーは、突然体を動かすのを止め、狂ったかのように笑い出した。

いや、本当に狂ってしまったのかもしれない。

そして、壊れた様に笑うラーゼラーの下にまたもや爆発が起こり、彼の下には瓦礫の雨が容赦なく降り注いだ‥‥。

 

「終わった‥‥」

 

「長かった‥‥」

 

崩壊していく都市帝国を見て、誰もがコレで終わったかと思った。

しかし‥‥

崩壊していく都市帝国のビル群の下からソレは現れた。

 

「おいおい‥‥」

 

「嘘‥‥だろう‥‥?」

 

爆炎の中から、禍々しい黒い影が姿を現した。

それは、地球の歴史史上見た事もない程の巨大な戦艦だった‥‥。

 

 

全宇宙は我が故郷‥‥。

 

不滅の大帝国ガトランティスに敗北はない‥‥‥。

 

愚か者よ。戦いはこれからなのだ‥‥。

 

大帝ズォーダーの胸に怒りの火が燃える。

 

はたして地球を守る術はあるのだろうか?

 

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