星の海へ   作:ステルス兄貴

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ズォーダーは斃れましたが、まだ太陽系にはガトランティスの残党が残っています。

ガトランティスの戦いはもう少し続きます。


三十四話 テレサの愛‥‥

 

 

「くそっ、奴らはマトリョーシカか!?」

 

「だとしたら、最凶最悪なマトリョーシカですね‥‥」

 

メインスクリーンの向こうに現れたソレは、想像を遥かに超える、まさに最凶最悪なマトリョーシカだった。

 

都市帝国を止めるために払った犠牲は多大なものだった。

 

ヤマトの戦闘班、コスモタイガー隊と空間騎兵隊の戦死を含め、半数近い乗組員が戦死またはMIA。

 

艦載機も同様で、真面に跳べそうな機体は既に無く、皆補修が必要だが、もはやその補修に使う資材も艦内には殆どない。

 

まほろぼ、ヤマト、薩摩の三艦の砲雷撃で都市帝国は崩壊したと思われたが爆発と崩壊の光の中から現れたのは漆黒の要塞を思わせる超がつく程の巨大な戦艦。

 

全長はゆうに十キロ近くは有るだろうし排水量は推定するのもアホらしい。

 

武装に関しても細かい兵装を含め、どれ程の兵装を搭載しているのかも一々数えてられない。

 

まほろば の艦橋は皆言葉を失ったが、他の艦や地球全体もそうだろう。皆、脳裏に絶望が渦巻いているはずだ。

 

でも、まだ諦めるわけにはいかない。

 

敵はまだ生きている。

 

良馬は己の心に喝を入れ、闘志の炎に風を送る。

 

使える火器は?

 

戦闘可能な乗組員数は?

 

現在の艦の状態は?

 

あんな規格外の化け物相手では波動砲しか通じないだろうが、あのハリネズミの様に武装された戦艦が波動砲のエネルギーチャージを待ってくれる訳がない。

 

どうすればいい?

 

何か‥何か手はないのか――?

 

 

地球市民、まほろば、ヤマト、薩摩の乗員が誰しも絶望を抱いている中、その件の巨大戦艦では、

 

「ふっふっふっ‥‥驚いたか地球人共め!!報告を‥‥」

 

超巨大戦艦の中に設けられた玉座にズォーダーは座り、動かしたばかりの超巨大戦艦、ガトランティスの状況を訊ねる。

 

「はっ!!超巨大戦艦、ガトランティス‥‥エネルギーチャージ率80%から上昇中!!火器、機関部及びその他の各部、共に異常なし!!万全の状態です!!」

 

「ラーゼラー総議長とゲーニッツ艦隊総司令たちが乗り遅れた様ですが、大帝がお気になさるようなことではないかと‥‥あのような輩は偉大なる大帝の率いるガトランティスには必要ありませんわ」

 

自分の事を棚に上げて、ズォーダーの機嫌を取り持とうとするサーベラー。

 

「地球がこれほどの反抗を見せるとは思いもしなかった‥‥だが、全ては徒労だ!!生き延び、この宇宙を支配し、全ての上に君臨する事を許されているのはこのガトランティスだけなのだ!!」

 

「その通りですわ。今頃地球人共は、ブルブルと震えている事でしょう」

 

平然としつつも、ズォーダーのご機嫌取りに躍起になっているサーベラーだった。

 

「砲撃用意!!目標!!地球残存艦隊!!」

 

ズォーダーの怒りの炎はまさに まほろば や ヤマト、薩摩に向けられようとしていた。

 

サーベラーの言うラーゼラーは都市要塞の瓦礫に埋もれて落命したが、艦隊総司令のゲーニッツはと言うと‥‥

 

 

彗星帝国 潜宙戦艦 艦橋

 

「うーん‥‥まさか、我らが‥‥彗星帝国が辺境の一惑星に此処まで追い詰められるとは‥‥」

 

グラビートと同型の潜宙戦艦にて崩壊する要塞都市から無事に脱出していた。

 

「ですが、なんとか命拾いはしましたな‥‥この上はこの戦域を離脱し、第十一番惑星にある後方基地へ離脱しましょう」

 

副司令官ザイゼンがゲーニッツに助言し、

 

「うーん‥‥この状況ではやむを得んか‥‥」

 

ゲーニッツらはワープにて、地球圏から第十一惑星まで撤退していった。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

「敵巨大戦艦、砲塔を回転させています!!」

 

「っ!!」

 

良馬背を冷たい刃が走った。久しぶりに感じる。

 

それはまさに死の予感。

 

「艦首を下げろ!!最大船速!!僚艦にも伝えろ!!急げっ!!」

 

まほろば が艦首を下に向け、続いて前進を始めた時、頭上に凄まじいばかりの閃光と衝撃が走った。

 

巨大戦艦からの砲撃は熾烈を極めた。

 

咄嗟に回避行動をとっても更なる深手を負った。

 

もし、回避が遅れていれば、一撃で轟沈していただろう。

 

各部からの被害報告が入るにつれ、艦橋の空気は重くなっていく。

 

射撃可能な主砲は第二主砲だけ、艦橋下部に装備されている副砲、ミサイルランチャー、パルスレーザー砲もほとんどがご逝去遊ばした。

 

更に波動砲の発射口も被弾し、発射口が変形し、チャージは出来ても撃つことは出来ない。

 

そして人的被害は、戦死者が全体の三割を越え、重傷者を含めると半数近くが戦闘継続不能になっていた。

 

艦橋要員も皆負傷したが、幸い軽傷で済んだ。

 

一方、他の部署の無傷・軽傷者は総出で消火と応急修理作業に当たっていた。

 

ヤマトに至っては全ての武装が破壊され、乗組員の大半が戦死または負傷という有様。

 

そのヤマトの機関室では、機関長の徳川を含め、機関士たちが懸命に推進力維持の為の作業を続けていた。

 

「消火急げ!!」

 

「こっちだ!!早くしろ!!」

 

ある者は機関室に迫る火の消火作業を行い、

 

「補助電源を切れ!!そこは放っておけ!!」

 

徳川たちは機関出力を落とさないように維持するための作業をしていた。

その機関室にて爆発が起き、

 

「ぐぁぁぁー!!」

 

徳川はその爆発に巻き込まれた。

 

「うぅ‥‥エンジン出力低下‥‥しかし‥‥航行に‥支障‥‥なし‥‥」

 

死に絶えんとる体を引きずり、徳川は最後まで職務を全うしようと、レバーに手をかけ、そのままの状態で息を引き取った。

 

ガミラスとの戦争を始め、沖田十三と共に多くの戦いに身を投じて、戦い抜いた歴戦の老将、徳川彦左衛門は此処で斃れた。

 

「撃て!応戦だ!」

 

主砲制御室へと向かった南部は破壊しつくされ、その場で死亡または重傷により倒れている砲術員の姿を見てはじめてヤマトの主砲が使えないことを知った。

 

「くそっ、どの砲塔も使えないか‥‥うわぁぁぁぁ!!」

 

南部が現状の悲惨さに対して、呟いた直後に爆発が起こり南部はその爆発に巻き込まれた。

 

しかし、彼は重傷を負うも奇跡的に一命は取り留めた。

 

航海長補佐の太田、通信長の相原は艦橋への被弾時に座席から放り出され、体中を強く打ち、太田は脳震盪を起こし意識不明、相原は肋骨をはじめとし、数箇所を骨折した。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦橋

 

冥王星海戦時とは‥‥ガミラスとの戦争時よりも段違いの戦力を得たというのに、この凄まじい損失は何なんだ?

 

相手はたった一隻なのに‥‥

 

ただの一隻なのに‥‥

 

敵と己に憤怒し、アームレストを握る手に力が入った。

 

良馬が思考を巡らせていると、新見の報告で我に返る。

 

「超巨大戦艦、地球に向かいます!」

 

何とか息を吹き返したレーダーで確認したのは、あの凶悪な超巨大戦艦が地球に艦首を向けた。

 

そして、艦低部から迫出てきた巨大砲が火を吹いた。

 

その砲火は余りにも大きく、肉眼で直接確認できたほどだ。

 

「地球が‥‥」

 

「くそっ‥‥」

 

当然その巨大な砲火が放つ傷も直接肉眼で確認できた。

 

超巨大戦艦は初弾が命中すると、一度砲撃を止めた。

 

「敵、超巨大戦艦から地球圏全域に、全周波帯通信が発信されています!」

 

「繋げ」

 

「了解」

 

新見が通信回路を開くと、メインモニターに一人の人物が映った。

 

緑色の皮膚に白い頭髪と眉が繋がっている独創的な髪型を除けば、地球人と大差ない顔立ちだ。

 

年齢に換算すると、土方か藤堂辺りに相当するだろう。

 

テレサがヤマトに提供した白色彗星帝国の情報にあった、彗星帝国ガトランティスの国家元首、大帝ズォーダー‥‥

 

王者らしい際立った覇気とカリスマ性を持ち、あのアンドロメダ銀河を完全征服したという。

 

そのズォーダーが勝ち誇った顔で傲然と口を開く。

 

「ハハハハハハ‥‥どうだ、わかっただろう!?宇宙の絶対者はこの全能なるわしなのだ!生命あるものはその血の一滴までこのわしのモノだ!宇宙はすべて我が意志のままにある!ワシが宇宙の法だ!宇宙の秩序なのだ!よって当然地球もわしのモノだ!ハハハハハハ‥‥」

 

ズォーダーの高慢な演説を聞いた まほろば、ヤマト、薩摩の乗員はズォーダーを睨んだ。

 

しかし、自分たちに出来たのはただ睨むだけしかない。

 

攻撃しようにもミサイルは全弾撃ちつくし、砲撃しようにも砲塔は全損、エネルギーも残り少ない。

 

(違う!断じて違う!)

 

良馬は我慢できなかったのか、果敢にもズォーダー相手に啖呵を切った。

 

「違う!!お前は間違っている!お前は宇宙の真理と平和を消し去ってしまう存在だ!我々は諦めない!!断固として戦う!」

 

「よかろう。だが、慢心傷つきエネルギーすら底をついた貴様らがどうやって戦おうというのだ?」

 

「っ!?」

 

「まぁ、そこで大人しく地球が滅びる様を見ているがいい!!地球が滅んだ後、貴様らも後を追わせてやろう。じっくりと時間をかけていたぶってな。ハハハハハハ‥‥」

 

ズォーダーは高笑いをしながら通信をきった。

 

「フフフ‥‥大帝、ご覧になられましたか?無駄だとも知らずにまだ逆らうつもりですわ。まるで知能の低い、獣同然ですわね」

 

「‥‥」

 

サーベラーは、先程のズォーダーと良馬の通信のやり取りを嘲笑う。

 

「サーベラー‥‥」

 

ズォーダーは、ゆっくりと玉座から立ち上がり、サーベラーへと近づく。

 

その表情はほぼ無表情であった。

 

サーベラーへと近づいたズォーダーは腰に下げていた剣を抜くと、

 

グサッ

 

何の迷いも、一片の躊躇もなくサーベラーの体に突き刺した。

 

サーベラーを一突きし、剣を引き抜くと、彼女の血が付いた剣を一振りし、血を拭う。

 

「た‥‥大‥‥帝‥‥」

 

サーベラーは一瞬自分の身に何が起きたのか理解できなかった。

 

それは近くに居た幕僚や兵士たちも同じで、皆は呆気にとられた顔でサーベラーの最後を見ていた。

 

何故自分は敬愛する大帝から刺されたのか?

 

彼女はその理由を知る前に絶命した。

 

「今度の都市帝国崩壊の件‥‥責任を取るなら、総参謀長であるお前であろう!!無能めが!!お前の独断のせいで多くの兵士たちが命を落としたのだからな!!」

 

絶命し斃れたサーベラーに向かってズォーダーはまるで虫けらを見るかのように言い放った。

 

この場に居る幕僚の中で、一番地位の高かった幕僚はサーベラー一人だった。

 

もし、此処にラーゼラーかゲーニッツが居れば、彼女は持ち前の口八丁で、どちらかに罪を擦り付け、切り抜けられたかもしれなかった。

 

「砲撃を再開しろ!!」

 

「はっ!!」

 

サーベラーを粛清したズォーダーは地球への砲撃を再開した。

 

超巨大戦艦、ガトランティスの下部から強大な大砲が姿を現すとその巨大な口径から放たれる莫大なエネルギー砲は地球へと降り注がれ一撃で小さな島を吹き飛ばし、町を一瞬のうちに消滅させていった。

 

「もはや‥‥これまでか‥‥」

 

半壊した宇宙軍司令部で藤堂は呟いた。

 

「艦長、艦内各部に誘爆が広がって危険だ!!負傷者も応急処置ではもう手におえん!!」

 

ディアーチェから艦の状況報告を聞き、

 

「‥‥副長、現在の生存者は?」

 

「重傷者を含め、二十数名です‥‥」

 

「そうか‥‥総員退艦準備」

 

「艦長?」

 

「勘違いをするな、副長。戦いを諦めたわけじゃない。薩摩は健在か?」

 

「あちらの艦も中破しています。ですが、航行には支障がありません」

 

「通信機能は?」

 

「不安定ですが、短い通信でしたらなんとか可能かと‥‥」

 

「では、薩摩に退艦者の受け入れ態勢をとってもらえ‥‥総員退艦準備!!」

 

何本もの白煙の尾を引き、ボロボロになった まほろば の艦内は慌ただしさを取り戻していた。

 

「副長、君は第一陣の指揮を執れ」

 

「はい」

 

「航海長は第二陣を」

 

「了解」

 

こうして、慌ただしく乗員は退艦準備へと入り、内火艇、救命艇には次々と負傷者が運ばれる。

 

内火艇や救命艇は水平離着陸が可能な機体だった為、ボロボロ状態の甲板からでも何とか発艦する事が出来た。

 

「井上さん‥‥」

 

「ん?何じゃ?」

 

「こんな結果になってしまって残念でたまりません」

 

良馬は機関室にて負傷した井上に肩を貸しながら、格納庫へと向かっている。

 

「言うな。お前さんはよく戦ったよ」

 

「‥‥」

 

「地球はもう星として駄目かも知れぬ‥‥しかし、他の星に移住してでも生き残らねばならん!!生きていれば、いつかは仇をうてるかもしれん!!これからが踏ん張りどころじゃぞ」

 

「井上さん‥‥そうですね」

 

(ん?艦長?)

 

良馬は井上の言葉を聞き、ニッコリと微笑むが、この時、井上には言い知れぬ不安感を抱いていた。

 

「艦長、これが最後の脱出艇です。早く乗ってください!!」

 

フェリシアが脱出艇から身を乗り出して良馬に乗艇するように言う。

 

脱出艇に乗った良馬は、艇内を見渡し、

 

「ん?ギンガとリニスは?」

 

と、二人の行方を訊ねる。

 

「二人とも最初の便で脱出したのではないですか?あの便には重傷者が大勢乗っていましたし‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

フェリシアの予測に良馬は、どこかホッとした様子を見せ、

 

「井上さん」

 

「ん?」

 

「井上さんには色々お世話になりましたね」

 

「何を言うんじゃ?突然。なぁ、艦長。生き延びよう‥‥どんなことがあってもな」

 

「え、ええ‥‥」

 

井上を担架の上に横たえて、良馬は脱出艇の操縦席でコンソールを弄り自動運転に設定すると、彼は脱出艇を飛び降りた。

 

「艦長!艦長!」

 

「あのバカ者が!!」

 

フェリシアが『艦長!』と叫ぶが、自動運転に固定された脱出艇は操縦もきかず、井上とフェリシアに出来るのは敬礼し遠ざかる良馬の姿をただ見ているしか成す術がなかった。

 

艦橋へと戻った良馬は艦長席へと座り操縦系統を艦長席へと移した後、針路を地球へ砲撃を行っているガトランティスへと向けた。

 

(誘爆が広がっている まほろば を一つのミサイルとして敵戦艦へと体当たりを行い、完全破壊は出来なくともせめてあの主砲だけは潰さなければ‥‥)

 

残り僅かのエネルギーを機関へと流す為のバイパス作業を行いながら、ガトランティスを睨む良馬。

 

(政府の降伏命令に背き、大勢の地球市民を危険な目に合わせた‥‥その責任は俺にある‥‥)

 

(忍さん‥‥ノエル‥‥リニス‥‥ギンガ‥‥すまない‥‥)

 

発進シークエンスを終え、後は艦を動かそうとした時、もう自分以外誰も居ない筈の艦橋に人の気配を感じた。

 

「っ!?」

 

まだ人が残っていたのかと思い、気配のする方向を見ると、其処には、

 

「ギンガ‥‥それにリニスも‥‥」

 

其処には山猫状態のリニスを抱いたギンガの姿があった。

 

「なんで‥‥なんで‥‥二人ともまだ残っている?」

 

震える声でギンガとリニスに訊ねる良馬。

 

「良馬さんならきっとこうすると思っておりました‥‥」

 

「バカな‥‥何故‥‥何故そうも死に急ぐ‥‥」

 

「それは貴方も同じですよ。マスター」

 

山猫状態だったリニスが人型モードになる。

ただ、最小限の魔力なので普段の成人ではなく、紅葉の様な少女モードであった。

 

「それに良馬さんが居ない地球に居ても何の意味もありませんから‥‥」

 

ギンガの目には涙が浮かび始めた。

 

彼女には地球で待っている家族が居る。

 

それなのに、ギンガに先程の様な言葉を言わせてしまい、ギンガに対して罪悪感が生まれる。

 

「すまない‥‥ギンガ‥‥リニスもこんなダメなマスターに付き合ってくれてありがとう‥‥」

 

良馬はギンガとリニスをギュッと抱きしめた。

 

「いえ、私には勿体ないくらい貴方は立派なマスターですよ」

 

「これからはずっと一緒ですよ‥‥」

 

「ああ‥‥ずっと一緒だ」

 

三人は共に死を覚悟した。

 

良馬は艦長席に座り、その後ろに新たに座席を設け、其処にはギンガが座り、リニスは再び山猫状態になり、良馬の膝の上に居る。

 

「両舷全速‥‥目標、敵、超巨大戦艦‥‥地球人の意地、連中に見せてやる!!」

 

良馬がレバーを引くと、まほろば はゆっくりと動き出した。

 

既に焼き切れる寸前のエンジンは断末魔の様な轟音を立てている。

 

敵が地球攻撃に躍起になっている間にあの無数の砲塔の死角に入り、下部の巨大な砲塔を潰せれば‥‥。

 

その頃、ヤマト も まほろば 同様に、乗員を退艦させ、隙を見て脱出艇から飛び降りた古代と古代の行動を読んで、退艦せずにヤマトに残っていた雪の二人を乗せて、体当たりを行おうとしていた。

 

その時、まほろば の右舷前方に、黄金色がかった光球が出現した。

 

「待って下さい‥‥」

 

突然脳内に女性の声が聞こえた。

 

「これは‥‥?」

 

「念話?でも一体誰が‥‥?」

 

突然聞こえてきた女性の声に戸惑う良馬たちであったが、モニターに突如、青いドレス姿で金髪碧眼の若い女性の姿が映った。

 

「貴女は‥‥もしかして‥‥テレサ?」

 

「この人が‥‥」

 

テレザートに辿り着いたヤマトが地球へ送ったデータの中に今、モニターに映っている女性の事もあったが、こうして本物を目の当たりにしたのは、これが初めてなので、この女性がテレサなのか確認した。

 

「はい‥‥地球の皆さん‥‥ヤマトの皆さん‥‥待って下さい‥‥」

 

「テレサさん‥‥生きていたんですね」

 

てっきりテレザートと共に死んでしまったかと思ったテレサが今、自分たちの目の前に居る。

 

雪はテレサに確認するかのように訊ねる。

 

しかも、

 

「はい‥‥島さんを届けに参りました‥‥」

 

木星圏でのガミラスとの白兵戦時にて行方不明となったヤマト航海長の島を連れていた。

 

「貴女が島を‥‥」

 

「島さんの命は取り留めました‥後はあなた方の手で地球へ送り届けてください‥‥」

 

テレサは目に見えて弱っていた。

 

それは自分の血液を限界ギリギリまで島に輸血した為であった。

 

テレサはヤマトの第一艦橋に転移し、そこで古代と雪に島を託した。

 

「ズォーダーとの決着には私が参ります‥‥あなた方が生きて地球へ帰る事が、地球の未来に繋がるのです。勝って帰るよりも負けて帰る事の方が、勇気が居る事なのですよ‥‥さようなら‥‥古代さん‥雪さん‥‥地球の皆さん‥‥さようなら‥‥」

 

「テレサ!!」

 

テレサはそう言い残し、ヤマトから消えた。

 

 

超巨大戦艦 ガトランティス 艦橋 兼 王座の間

 

「フハハハハハ、アハハハハハ。愚か者の地球人どもめ!死ぬがいい!滅びるがいい!ハハハハハハハハ‥‥‥」

 

ズォーダー大帝は高笑いしながら主砲を撃ち続け、地球を破壊しつくしていると前方から眩い光を放つものが現れた。

 

「ん?」

 

ズォーダーが目を凝らしてその発光体を見る。

 

発光体の中心には青いドレスのような服に身を包んだ金髪の女性がいた。

 

その女性の姿を見た途端、ズォーダーの顔からは先程まで浮かべていた余裕の笑みが消え、逆に脂汗が滲み出て顔色も悪くなる。

 

「テ、テレサ‥‥い、生きていたのか‥‥!?」

 

ズォーダーがこの世で唯一恐れる反物質を操る能力を持つ女、テレサ‥‥。

 

テレザート星もろとも宇宙の塵にしたと思っていたズォーダーにとって彼女が生きていたことが凄まじい戦慄と恐怖を覚えさせる。

 

しかも彼女の表情はテレザートの時以上に怒りを露わにしている。

 

「こ、攻撃止め!反転180度!」

 

彼は震える声でこの宙域からの撤退を命令する。

 

ガトランティスは地球への無差別砲撃を止め、その巨体を反転させて全速で地球から遠ざかる。

 

しかし、テレサとの距離は一向に開かず、どんどん縮まっていく。

 

「どけ!」

 

ズォーダーはガトランティスの舵を取る操舵手を押しのけ、自ら舵を握るがそれは無駄な抵抗に終わり、テレサが自らの命と引き換えに放った膨大なエネルギーはガトランティスを飲み込む。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

ズォーダーの絶叫と目映い閃光と共に超巨大戦艦ガトランティスは跡形も無く消滅した。

 

ガトランティスが消滅し、引き起こした閃光を見ながら自らの命と引き換えに地球を救ってくれたテレサに対し古代、雪、良馬、ギンガは敬礼を捧げた。

 

 

半壊した地球防衛軍司令部では、

 

「よく調べろ。ワープ反応はあるか!?」

 

「ありません!」

 

「映像を微速再生してみろ!!」

 

「はい!」

 

藤堂がオペレーターにあの超巨大戦艦がワープにて他の星系に脱出したのか、それとも完全に消滅したのかの確認を急がせた。

 

モニターには、黄金色の光を纏ったテレサと敵の超巨大戦艦がぶつかった映像がゆっくりと流れる。

 

そして、あの超巨大な戦艦がまるで硫酸に浸され、溶けていくかのように消滅していく映像が流れた。

 

「‥‥非の打ち所がない、完璧な撃沈‥いや、消滅だな‥‥」

 

「はい‥‥」

 

藤堂は深く息をつき、椅子に腰かけた。

 

超巨大戦艦消滅からすぐに木星圏で戦闘中だった彗星帝国軍の艦隊も第十一番惑星へと撤退を開始したと、ガニメデ基地から連絡が入った。

 

「大統領に報告を‥‥」

 

「はい」

 

オペレーターは早速大統領へ電話を入れ、敵の超巨大戦艦撃沈の報を入れた。

 

その三十分後に世界中継で大統領自らが会見を開き、地球の脅威は去った事を伝えると地球市民は歓喜の声をあげた。

 

地球中が歓喜の声をあげている中、藤堂は未だに顔を強張らせていた。

 

未だ地球の制宙圏には、彗星帝国の残党が存在している。

 

それらの艦隊がまだ存在している内は地球の脅威は完全に取り除かれていないのだから‥‥。

 

そして、またもや壊滅状態の地球防衛軍の再建等、色々課題が山積みとなっていた。

 

テレサの特攻により超巨大戦艦、ガトランティスは消滅し、地球はまたもやギリギリの所で救われた。

 

満身創痍となったヤマト と 薩摩 は地球へと帰還した。

 

しかし、まほろば の方は帰還途中、エンジンの方が遂に限界を超えた為、急遽、タグボートを要請し、地球へ無事に帰還する事が出来た。

 

時に西暦2201年、秋の事であった‥‥。

 

地球は再び静かな平穏を取り戻した‥‥。

 

しかし、そのために払った代償はあまりにも多く、大き過ぎた‥‥。

 

地球が今回の事を教訓とし、再び力をつけるには莫大な時間が必要となる事となった‥‥。

 

 

 

 

此処で舞台は地球近海からはミッドチルダに移る‥‥

 

 

ミッドの北半球の一角にあるベルカ自治領首都、ザンクト・カイゼルブルグの郊外の丘に建つ壮麗な建物‥そこは管理世界最大規模を誇る宗教、聖王教の総本山たる聖王教会本部がある。

 

其処には多くの修道女、神父、教会騎士がおり、その実力は時空管理局の武装隊に拮抗している。

 

更にあのJS事件の際、逮捕された後、厚生施設で更生教育をした戦闘機人たちの内、セイン、オットー、ディードの三人もこの教会で修道女見習いとして此処に住んでいる。

 

その数多く居る教会騎士の中で、高い地位に君臨する一人の女性が居る‥‥。

 

カリム・グラシア。

 

彼女は、穏やかな雰囲気を持つ二十代前半と思しき女性修道騎士であるが、とある先天的稀少資質(レアスキル)の持ち主で、教会内部のみならず、管理局からも注目されており、自身も管理局本局において将官待遇の権限を持つ。

 

そして彼女はあの奇跡の部隊、機動六課の後見人の一人でもあった。

 

そもそも、あの機動六課が生まれたのは、はやて の希望の他にJS事件を予知していたカリムの預言があったからだった。

 

ただあのJS事件以降、彼女のレアスキル‥‥数年先までに発生し得る物事を予想できてしまう、プロフェーテン・シュリフテンは発動する事が無かったのだが、

この日、その能力が突然発動した。

 

カリムは直ぐさま机上の便箋に“預言”を走り書きで記入していくのだが、書き終えた後、穏やかだったその表情は強張っていた。

 

「っ!?これは‥‥!?」

 

彼女がペンを走らせた便箋‥‥。

 

其処に書かれた予言には以下の言葉が書かれていた。

 

 

法の舟、星の海を行く時、

 

忌みし力により業火に覆われ焼かれる。

 

法と管理の番人、地の界の防人と出会いし時、

 

番人は己の力を知る‥‥。

 

されど、番人はその力を認めず、

 

番人たちは、更なる混沌の渦にのまれる。

 

 

カリムは急ぎ、自分の秘書兼護衛役である修道女、シャッハ・ヌエラを呼び、管理局の中でも交友が深い 八神はやて にコンタクトをとった。

 

カリムのレアスキル、プロフェーテン・シュリフテン(予知能力)が発動したと知った はやて は フェイト と共にカリムの待つ聖王教会へとやって来た。

 

「カリム、預言が出たってホンマか?」

 

「ええ‥コレがそうよ‥‥」

 

そう言ってカリムは、予言を書き記した便箋を はやて と フェイト に見せる。

 

「「‥‥」」

 

はやて と フェイト は無言で便箋に書かれた預言を読んでいく。

 

そして、読み終えた後、早速予言の解釈へと入る。

 

「この『法の舟』は管理局の次元航行艦だね」

 

「そうやね。そうすると当然『法と管理の番人』は管理局員‥‥管理局の事やな」

 

「『忌みし焔により業火』‥これはやっぱり‥‥」

 

「十中八九、質量兵器の事やろうな‥‥」

 

「ここ最近多発している管理局の次元航行艦遭難事件が関係しているのかな?」

 

「多分そうやろう‥‥でも‥‥」

 

「『更なる混沌の渦にのまれる』‥‥これはこの先、次元航行艦の被害がもっと増えるってことだよね?」

 

「うん。そうかもしれへん。それと‥‥」

 

「『地の界の防人』‥‥これはどういう意味だろう?」

 

「異世界の軍事勢力の軍人か‥‥あるいは管理局みたいにそれに準じる組織の人間ということやろうね‥‥」

 

「『己の力を知る』って、その軍事勢力かその人たちに会って、管理局は何かを知るってことかな?」

 

「今は何とも言えへんけど‥‥なぁ、フェイトちゃん」

 

「何?」

 

「今度、新人の執務官と補佐官を中心に次元航行艦での遠洋研修があるんやろう?」

 

「うん。私もティアナも参加する予定だよ」

 

「あれ、延期した方がええんとちゃうか?」

 

はやて の言う研修にはベテラン執務官となった自分(フェイト)の他に六課卒業後、補佐官になった元六課、FW陣スターズ分隊所属のティアナ・ランスターらが参加する遠洋研修である。

 

しかし、最近多発している次元航行艦の遭難事件。

 

この不吉な予言。

 

はやて には何か嫌な予感がして溜まらなかった。

 

その為、正規の活動ではなく、新人の研修である今度の航海はもう少し事態の収拾がつくまで延期にした方が良いのではと はやて は フェイト に提案した。

 

「そうだね。私からも義母さんに頼んでみるよ」

 

と、フェイトは後日、研修について義母(リンディ)にこの事を伝え、リンディは本局にこの事案を提出した。

 

しかし、リンディからの提案は、却下された。

 

本局は次元航行艦の遭難が多発しているにも関わらず、

 

「多発しているからこそ、今は一刻も早く優秀な人材を育てなければならない」

 

と、言ってきたのだ。

 

更に今回フェイトたちが乗艦する巡航艦、テリオスもつい最近、大規模な人員異動があり、艦長を含めクルー全員が他の部署や他艦からの異動メンバーで構成されており、クルーの育成も今回の研修に含まれていた為、どうしても延期は出来ないと言うのが理由だった。

 

そこで、リンディらは研修の中止が出来ないのであれば、護衛の艦を着けて欲しいと要望を出したが、本局は、

 

「たかが、新人研修の為に、大事な艦船をそのような任務に就かせる余裕は無い」

 

「それに研修する海域は管理局の管理海域なので、敵の襲撃等ある筈がない」

 

と、言う回答があり、テリオスは、当初の予定通り、単艦で研修に望む事となった。

 

フェイトとリンディが不安を抱く中、予定通り研修は行われる事となり、研修の準備は進められた。

 

そして、時は流れテリオス出航当日‥‥

 

研修に使用する次元巡航艦、テリオスが停泊しているドックにて、はやて、なのは、ヴィヴィオがフェイトたちの見送りに来ていた。

 

「すまんなぁフェイトちゃん。私の方でも今回の研修は延期にした方が良いと提案書を提出したんやけど、やっぱり却下されてしもうて‥‥」

 

「気にしてないよ。それに今回の研修する現場は管理世界内の海域だから大丈夫だよ」

 

「‥‥」

 

フェイトは大丈夫だと言うが、はやてたちにはやはり一抹の不安が付き纏う。

 

「フェイトママ、いってらっしゃい。早く帰ってきてね」

 

ヴィヴィオ も はやて の不安を感じ取ったのか、フェイトに抱き付き、早く帰って来てほしいと願う。

 

「うん。私が帰ってくるまで、なのはママと良い子にして待っているんだよ。ヴィヴィオ」

 

「うん」

 

フェイトはしゃがんでヴィヴィオと目線を合わせながら彼女の頭を優しく撫でる。

 

「フェイトちゃん‥‥」

 

なのは も はやて からカリムの予言の事を聞いており、やはり今回の研修には不安な様子だった。

 

しかも今回は親友のフェイトだけではなく、教え子のティアナも参加するのだ。

 

万が一にも二人の身に何かあったらと思うと心配と不安が尽きない。

 

なのは は はやて 以上に二人の身を案じ、不安で一杯だった。

 

「なのはは心配性だね。大丈夫、すぐ帰って来るから。それまでヴィヴィオの事、お願いね」

 

「う、うん‥‥」

 

「フェイトさん、出航時間みたいです」

 

出航時間になり、ティアナがフェイトにその事を告げる。

 

「わかった。それじゃあ、行ってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

ヴィヴィオが手を振り、フェイトとティアナを見送る。

 

「いってらっしゃい。ティアナも気を付けてね」

 

「はい」

 

二人はテリオスへと乗艦し、予定通り時空管理局所属の巡航艦、テリオスは新人研修の為、本局を出航していった。

 

しかし、これが新たなる悲劇と出会いのきっかけとなる事をこの場にいる誰もが予測をしていなかった‥‥。

 

 

 

 

運命と言う名の歯車は動き続ける‥‥。

 

人はただ‥‥

 

その動きの中に‥‥

 

身を委ねてしまう‥‥

 




宇宙戦艦ヤマト2のズォーダーの最後‥あの部分だけは、ズォーダーが何だか今までの絶対王者から小悪党の様に見えてしまう。

2202はどんな展開になるのか、楽しみです。
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