また、旧作の加藤三郎の弟、加藤四郎は『ヤマトよ永遠に』からヤマトに乗艦しますが、四郎に関しては卒業年数が原作よりも早くなっている設定となっています。
訓練航海の出発日。
宇宙戦士訓練学校・士官学校の卒業生たちが、それぞれ配属された乗艦に向かおうとしていた。
ヤマトに乗り組むのは、士官学校を主席卒業した北野哲を含む、士官学校・訓練学校卒業生の航海部、戦闘部・砲術科の卒業生合計二十九名。
訓練学校を卒業した徳川太助を含む、機関部卒業生三十名。
飛行科の卒業生五十四名の計百十三名が乗り込む。
彼らはそれぞれ内火艇に分乗し、沖合に錨泊しているヤマトに乗り組む予定となっている。
一方、まほろば の方は、士官学校を次席卒業した星名透以下の新人七十五名が乗艦した。
まほろば の方は桟橋に接岸している為、こちらは徒歩乗艦となった。
そして、まほろば 所属の飛行科の新人たちは まほろば 飛行隊の隊長を務めている坂井の引率の下、木更津航空基地から合流する事になっている。
乗艦した新人たちの中で、代表の星名が艦長の良馬に申告をする。
「申告します!星名透以下、戦闘部、航海部、機関部、技術部、船務部・医療科卒業生七十五名、まほろば 乗り組みを命ぜられました!」
卒業生代表である星名の申告と敬礼に、良馬は答礼し、指示する。
「乗艦を許可する。卒業生は直ちに指定された居住区の部屋に荷物を置き、指定の制服に着替え、十五分以内に各配属先で着任を申告しろ」
「了解しました」
「星名君、君は艦橋勤務だ。着替え終わったら、艦橋へ上がって来い」
「はっ!!」
緊張した面持ちで星名が駆け出して行く。
一方、ヤマトの方では、
ヤマトに一番先に近づいている内火艇は宇宙戦士訓練学校の機関部卒業生を乗せた内火艇だった。
「新しい乗組員がやってくるわい」
「昔の古代君たちを見る様だわ‥‥」
ヤマトのウィングデッキから佐渡と雪が新人たちを乗せてヤマトへ近づいて来る内火艇を見ながら呟く。
これからヤマトへの乗艦を控えた新人たちは海上に浮かぶヤマトを見て、興奮している。
何せ、地球を二度も救った英雄でもあり、彼ら宇宙戦士にとってヤマトはまさに憧れの艦でもあった。
その艦にこれから自分たちは乗れるのだから、興奮するのも無理はない。
「これがヤマトだ!!」
「まるで海に浮かんだお城だな、まったく」
新人たちがヤマトに見とれていると、
「ハッ!?」
ヤマトに見とれていたため、内火艇はヤマトの至近距離に来ていた。
彼らの目の前にはヤマトの分厚い装甲板がある。
「ウワッ!!」
内火艇を操船していた太助は慌ててハンドルを切るが、急ハンドルをきった為、内火艇はバランスを崩し、転覆した。
幸い内火艇がヤマトにぶつかる事は無かったし、乗っている新人たちも全員海に投げ出されたが、怪我人や行方不明者、死者を出す事も無かった。
「何たることじゃ先が思いやられるわい」
と、必死に泳ぎながら転覆した内火艇の底にしがみついている新人たちを見て、佐渡は呆れ、雪は苦笑していた。
出発前に余り幸先の良いとは言えない出来事であったが、死傷者や行方不明者が出なかった事だけは奇跡と言うしかなかった。
ヤマト機関部の乗った内火艇転覆の様子は、まほろば の方でもモニターを通して伝わっており、
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥あれは機関部の連中じゃのう」
「どうやらそうみたいです‥‥」
呆然とする者、額を抑える者、反応は様々だ。
井上は同じ科の後輩たちの恥かしい光景に顔を少し引きつかせている。
ギンガも反応に困りながらも井上に答える。
「‥‥」
良馬も苦笑しながら、
(山崎新機関長も就任早々苦労するな‥‥)
と、この先苦労しそうな山崎を労うが、出発したら此方側もヤマトの心配をする余裕はないだろう。
宇宙戦艦 ヤマト 第一艦橋
「申告します!徳川 太助以下、機関部卒業生三十名、ヤマト乗り組みを命ぜられました!」
機関部代表の太助はびしょ濡れ姿でヤマトの第一艦橋へとあがり、古代に乗艦申告する。
「徳川、何だ?その恰好は?」
びしょ濡れ姿の太助に山崎は一体何が有ったのかと訊ねる。
「実は、兵員輸送艇が転覆しまして‥‥」
徳川が申し訳なさそうに何故、自分がずぶ濡れになっている訳を話す。
「馬鹿者!!それでもヤマトの機関部員か!?」
「以後気を付ける様に」
「はい。気をつけます」
びしょ濡れ姿の太助に山崎は叱咤し、古代は注意を促す。
「申告します!!」
そこへ、士官学校を主席卒業した北野が乗艦申告をしに来た。
「北野哲以下戦闘部、航海部、砲術部卒業生合計二十九名、ヤマト乗り組みを命ぜられました!!」
「よし、全員を部署につかせろ!北野、お前は第一艦橋勤務だ」
「はい!!」
古代が北野に命じていると、
「へっくしょん!!」
太助が盛大にくしゃみをした。
「徳川、早く着替えて来い。そのままだと風邪をひくぞ」
島が徳川に早く着替えて来いと促す。
「は、はい」
太助は大急ぎで更衣室へと向かった。
これから訓練航海だと言うのに、風邪を引かれて早々にダウンされてはかなわない。
走り去っていく太助を見て、
「徳川さんの息子さんにしては出来が悪いな」
と、相原が呆れる様に言うと、
「お前だって新人の頃はああだったんだぜ」
と、南部に突っ込まれる相原。
まぁ、彼は最初のイスカンダルへの航海時、ヤマトを脱走して、宇宙遊泳をして地球に戻ろうとした事が有るので、あまり人の事は言えない気がする。
「なあに、一航海すれば、一人前になるさ」
と、島は新人達の成長に期待している様子だった。
続いて、
「申告します。坂本茂以下、飛行科卒業生五十四名、ヤマト乗り組みを命ぜられました!!」
太助と入れ違う様に飛行科の卒業生を代表して坂本茂が乗艦申告をしに来た。
「よし、全員を格納庫へ集合させ、コスモタイガー隊隊長である山本の指示を仰ぐように」
「はっ」
坂本は敬礼し、その場を後にした。
宇宙戦艦 ヤマト コスモタイガー格納庫
古代の指示により、坂本以下の飛行科卒業生たちはヤマトのコスモタイガー格納庫へと集合した。
「申告します。坂本茂以下、飛行科卒業生五十四名、ヤマト乗り組みを命ぜられました!」
第一艦橋で古代に乗艦申告した内容と同じ事を坂本はコスモタイガー隊隊長である山本に報告する。
「坂本?そうか、お前が坂本か。お前の事は聞いているぞ。なかなかいい腕を持っているらしいな」
山本が坂本の噂を聞いており、坂本を褒める。
「でなきゃ、ヤマトに配属されたりしませんよ」
坂本は自信満々で答える。
「鼻っ柱の強い奴だ。へし折られない様に気を付けるんだな。よし、新入り共!!俺がコスモタイガー隊隊長の山本明夫だ‥‥ん?お前、女か?」
山本は新人のコスモタイガー隊の中で女性の新人が居るのに気が付いた。
「椎名晶です。よろしくお願いします」
「アキラ?へぇ~‥俺の妹と同じ名前だな」
「ええ、彼女とは士官学校の同期でライバルでもありました。でも、知りませんでした。玲のお兄さんが‥‥エースパイロットの山本さんが性別にこだわる人だったなんて」
「こいつ、揃いも揃って生意気な新人ばかりかよ‥‥まぁいい‥よく聞け、新人ども!!いざ戦いとなれば、俺達は最前線に飛び出さなきゃならない。文字通り宇宙に『飛び出す』んだ。そのためにも、訓練は厳しいモノにする。覚悟しておけ!!」
「望むところですよ」
「ええ」
「その元気がいつまで続くか試してやるさ」
ノリがまさに体育会系なヤマト航空隊だった。
各部署での申告報告が終わると、新人たちは訓練校・士官学校の制服からヤマト乗員の制服へと着替える為、順次更衣室にて着替えを行う。
勿論、女性用の更衣室もちゃんとあるので、椎名ら女性の乗組員はそこで着替える。
彼らはヤマト乗員の証である錨模様が大きく描かれている制服へと次々と着替えていく。
「よう、似合うぞ」
「やっと之を着れたかぁ‥‥」
ヤマトの制服は他の防衛軍艦艇の制服とは異なる為、この制服を着れる事は、正式にヤマトの乗組員となった証でもり、宇宙戦士としては一種のステータスでもあったのだ。
「でも務まるかな?」
期待と不安を抱える新人たちに古代は艦内放送を通じて、この後の予定を伝える。
その内容がいきなりの出航と本格的な実戦形式の訓練に新人たちは戸惑いながらも出航配置へとついて行った。
「ふふ、張り切っておるわい古代の奴」
古代の艦内放送を聞き、佐渡は医務室の自分の居住スペースにて、酒の入ったコップを傾けながらニッと笑みを浮かべていた。
一方、まほろば の方では、
星名が艦橋で良馬に申告をしてから各部署から新人の着任報告が届き始めた。
リニスが軍医長を務める医務室では、
「原田真琴衛生士以下、三名。まほろば、乗り組みを命ぜられました!」
茶色い髪で、おかっぱ頭(ショートボブ)でアホ毛が特徴的な女性新人隊員、原田真琴が着任の挨拶をする。
「着任を許可します。この艦の乗員の生命は私たちの尽力によって生死を分けます。皆さん、全力で、最後まで諦めずに任務をこなしてください」
『了解!!』
原田以下の新人がリニスに敬礼すると、リニスも返礼する。
新人たちが乗り込んで、十三分程で全新人乗組員の着任が終わった。
「遅いな、せめて十分以内に揃わないと‥‥」
良馬は着任終了時間の報告を聞き、呟く。
最初は命じた時間の八割以内で揃わなければならないのだが、
「次からは五分前集合を新人全員に徹底してくれ」
「わかりました。直ちに‥‥」
良馬の命令に新見が直ぐに対応した。
「ヤマトの方も新乗組員の着任が完了した模様です」
「よし、予定通り10:03時に出航する。通信長、艦内のスピーカーの電源を入れてくれ」
「了解」
ギンガに指示すると、良馬は艦内マイクを手に艦長席から立ち上がる。
「新乗組員諸君。艦長の月村だ。本艦及びヤマトはこれより訓練航海に出発する。今航海の目的はただ一つ。諸君らに一日も早く一人前の宇宙戦士になってもらうことだ。故に、訓練は全て実戦同様にて行う。各チーフ、パートリーダーの指示に従い、十分に注意して訓練に臨んでほしい。出航は三十分後の10:03だ。総員直ちに出航配置につけ!」
良馬の艦内放送を聞き、艦内は、
「いきなり出航とは驚きだなぁ‥‥」
「先輩の動きを見たり、のんびりと講義かと思っていたぜ‥‥」
まほろば の新人たちもまさかいきなりの出航に戸惑っていた。
「ボヤボヤするな!!お前ら!!出航配置につけ!!」
「は、はいっっ!」
各部署で、新人たちがチーフ(班長)に叱咤されながらわらわらと出航配置についていった。
「星名君」
「は、はい」
艦長の良馬に話しかけられ、緊張した面持ちで返事をする星名。
「星名君、君が出航の指揮を執れ」
「っ!?じ、自分がでありますか!?」
まさかいきなり指揮を執れと言われ、戸惑いしまくる星名。
「君は士官学校を優秀な成績で卒業したんだ。それに近い将来はこうした指揮を当たり前に執らなければならない。心配せずとも、ちゃんと皆でバックアップはする。だから今のうちに慣れておいた方が良い」
「は、はい」
元々今回の航海は新人の研修が目的だったので、反対意見等は出なかった。
緊張した面持ちで席に着く星名。
「星名」
「は、はい」
「深呼吸して肩の力を抜け」
隣に居る永倉がガチガチに緊張している星名にアドバイスをする。
「は、はい‥‥すぅー‥‥はぁ~‥‥」
星名は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をする。
そして予定時刻の10:03に まほろば は離岸し、離水海域へと向かう。
「補助エンジン動力接続」
「補助エンジン動力接続‥‥スイッチオン。補助エンジン定速回転1600、両舷推進力バランス正常」
「微速前進0.5」
ゆっくりと離水海域へと向かう まほろば。
「波動エンジン内エネルギー注入」
「補助エンジン、第二戦速から第三戦速へ!」
「波動エンジンシリンダーへの閉鎖弁オープン、波動エンジン始動五分前!」
「波動エンジン内、圧力上昇エネルギー充填90%」
「補助エンジン最大戦速」
「波動エンジン内、圧力上昇エネルギー充填100%」
「現在補助エンジンの出力最大」
「波動エンジン内、圧力上昇エネルギー充填120%、フライホイール始動」
「フライホイール始動」
「波動エンジン点火10秒前‥‥9‥8‥7‥6‥5‥4‥3‥2‥1‥‥」
「波動エンジン接続‥点火」
「まほろば、発進!!」
まほろば は幾分ヨタヨタしながらも予定海域に到達し、その後は宇宙を目指し、上昇していった。
ヤマトの方も10:03に予定通り錨を上げ、まほろば 同様離水海域へ向かい出航する。
しかし、ガチガチになった新人がポカを連発し、離水に四苦八苦していた。
太助が閉鎖弁をオープンするのを間違って非常制動装置を起動させ、ヤマトを止めてしまったり、発進指揮を任された北野がガチガチになってなかなか離水せず、制限区域ギリギリになってようやく離水する有り様だった。
そんな不安が入り混じる航海の中、医務室の佐渡は、
「大丈夫なんか?この艦は?何だかヨタヨタしとるようじゃぞ」
と、艦の動きに不安を抱きながらも愛猫のミー君と共に酒を飲んでいた。
まほろば は高度二万でいったん水平飛行に移り、木更津航空基地から発進するコスモタイガー隊と合流し、その後月軌道にてヤマトと合流し訓練に入る予定だ。
「後方、七時の方向に飛行編隊を確認。友軍機です」
「星名君、味方識別確認はした?」
星名が飛行編隊接近を報告したが、味方識別確認がない事を良馬は指摘する。
「も、申し訳ありません!味方識別信号、確認しました。木更津航空基地より発進したコスモタイガー隊です」
「いくら地球圏内とは言え、もう訓練は始まっている。ちゃんと味方識別の確認は行うように」
「も、申し訳ありません。以後、気をつけます」
「うん。ただ実戦でやり直しはないからね」
「はいっ!!」
叱る時は厳しく、しかしいつまでもネチネチと言わない。これが宇宙戦士流だ。
「通信長」
「はい」
「接近するコスモタイガー隊と通信回路を開け」
「了解」
ギンガがコスモタイガー隊と通信回路を開くと、
「此方、まほろば航空隊隊長、坂井健夫以下飛行科卒業生四十五名。まほろば への着艦を許可されたし」
スピーカーからは まほろば にてコスモタイガー隊の隊長を務めている坂井の声がした。
「通信長、返信‥『着艦を許可する』‥だ」
「了解」
ギンガは坂井に着艦許可の通信を送ると、コスモタイガーは次々と まほろば へと着艦していった。
やがて、飛行科の卒業生代表が艦橋へと申告をしに来たのだが、その代表の新人の顔を見た時、星名を除く、艦橋内に居た者たちがギョッとする程、驚きの表情を浮かべた。
「か、加藤‥‥」
「い、いや‥彼は確かこの前の戦いで戦死した筈じゃあ‥‥」
艦橋に来た代表の新人は、彗星帝国との戦いで戦死したヤマト、コスモタイガー隊隊長、加藤三郎と瓜二つの顔をしていた。
「申告します。加藤四郎以下飛行科卒業生四十五名、まほろば 乗艦を命じられました」
「し、四郎?それじゃあ、君は‥‥」
「はい、加藤三郎は自分の一つ年上の兄です」
「お、弟っ!?」
四郎の弟発言で納得した皆であった。
「それにしてもお兄さんと瓜二つだな」
一つ年下の弟と言うが実際は双子の弟と言った方が正しい。
それほど、四郎は加藤と瓜二つの容姿をしていた。
「声までそっくりだ‥‥」
「昔からよく間違われました」
本当に一つ年下の弟なのか?
双子の弟の方が正しいのではないか?
と思う艦橋のメンバーだった。
「ま、まぁ兎に角。君たちの着任を許可する。今後も訓練に励み、腕を磨いてくれ」
「はっ!!」
加藤は敬礼し、その場から去って行った。
やがて まほろば、ヤマトの両艦は、月軌道を過ぎ、ワープテストを行う宙域へと入った。
「総員に告ぐ、これより本艦はヤマトと共に火星宙域へ向けてのワープに入る。新乗組員は、これが初のワープ体験となる。くれぐれも事故が無いように十分に気を着けてくれ!!」
良馬が艦内放送を入れ、まほろば の乗員はワープ時の配置についていくが、新人たちは不安げな様子だった。
一方、ヤマトの方でも乗員たちはワープ配置についていく。
その中で、太助が機関室に備え付けられた椅子に座り、シートベルトを着けながら、
「ワープって一瞬気を失うそうだぜ」
と、隣に座った同期の新人機関員にワープ中に起こる現象を言う。
「そのまま元に戻らなかったらどうするんだ?」
太助からワープで気絶する事を不安に思った新人が太助に訊ねると、
「お前の泣き言を聞かずに済むから助かるよ」
と、他人事な返答をした。
「ちぇっ」
太助から他人事な返答をされた新人が少しムッとした顔をした。
とは言え、ヤマト と まほろば に乗艦した新人は皆、ワープ初体験なので、不安や戸惑う気持ちは当然だった。
「ワープ5秒前‥‥4‥‥3‥‥2‥‥1‥‥ワープ!!」
まほろば と ヤマト は火星圏へ向け、ワープした。
ワープ終了後、両艦は早速座標位置の確認、艦の損害点検へと入ったが、新乗組員の中には初めてのワープによるワープ酔いを訴える者が多数おり、医務室は最初のワープでいきなり仕事をする羽目となった。
この後、まほろば、ヤマトの両艦は火星沖のアステロイドベルトにて、一大訓練を行った後、対彗星帝国残党軍との最前線である木星圏、土星圏へと向かう予定となっている。
一方その頃、故郷であるガミラス星へと向っていたデスラー一行は、ガミラス星のある大マゼラン銀河・サンザー星系まで来ていた。
「総統、艦隊はマゼラン星雲に入ります」
「そうか‥‥十八ヶ月と二十三日ぶりだな、タラン」
デスラーは艦橋に設置された玉座に座ると、静かに目を閉じ、一時過去への思い出に浸る。
「私は諸君ら全軍に指令する!!このガミラス本星そのものを持って『ヤマト』の前に立ち塞がれ!!」
デスラーの脳裏にはかつてヤマトと雌雄をかけて戦ったガミラス本土での一大決戦の出来事が蘇ったのであった。
「ガミラスをこの目で見るのも最後かもしれぬ‥‥そして‥‥あのイスカンダルも‥‥」
デスラーは自らの故郷の星に想いを馳せるのと共に、双子星であるイスカンダルとその星の女王スターシア・イスカンダルの事も思い出す。
(スターシア‥‥私はいつも君を忘れた事は無かった‥‥)
(今の私にこよなく懐かしい人は君だよ‥‥スターシア‥‥)
デスラーの心の中にはあのイスカンダルの女王スターシアの姿が寸分変わらず蘇ってくる。
「マゼラン星雲太陽系サンザー、ガミラス星まであと三十六宇宙キロ」
オペレーターの報告を聞き、デスラーは過去の思い出から現在に戻り、玉座から立つと、ゆっくりした足取りで艦橋前部へと移動する。
次第にデスラーの目には懐かしい故郷の星と愛しい人が住む星の姿が見えてきた。
何事もなく、ガミラスを見た後、新天地への大航海へと向かう筈のガミラス艦隊であったが、オペレーターの次の発言でその予定は全て一転してしまった。
「ガミラス星付近にて艦船のエネルギー反応を探知!!」
「何っ!?」
「友軍艦艇か?」
「エネルギー反応は友軍反応とは異なります。むろん地球の艦船とも彗星帝国の艦船とも違います!!」
「パネルに回せ!!」
「了解」
ゲルバデスのメインモニターには、円盤型の艦がガミラスの周辺に多数存在していた。
その形状は今までガミラスが戦ってきた星間国家とは見た事もない形状をしていた。
以前グラーフ将軍が撃退した時空管理局と言う治安維持組織の艦とも違う。
さらに、
「ガミラス星内部でも多数の熱源反応を確認!!映像映します!!」
別のモニターにはガミラス星の地表に採掘用のドリルを打ち込む作業船団の映像が映し出された。
作業船団はガミラスの地下資源『ガミラシウム』を採掘している様だった。
外敵にガミラス本星を蹂躙されたのはヤマトに続いてこれが二度目だ。
しかし、ヤマトはこちらの挑戦に応え、たった一隻で突入し、満身創痍になりながらも互いに死力を尽くし戦かった。
だが、今デスラーたちがモニターで見ている連中は地球人たちと比べる事すらおこがましいく図々しい連中である。
連中が行っている行為は明らかな盗掘行為である。
あの連中は自分たちが留守中、勝手に故郷の星へと無断で侵入し、自分たちの故郷の地下資源を盗もうとする空き巣連中である事は明白であった。
この映像を見たデスラーは怒りを露わにし、
「許せん!!我らの母なる星を傷つけるとは‥‥全艦戦闘配備!!密集隊形で続け!!非武装艦は後方へ退避!!」
デスラーは引き連れている武装艦艇に戦闘準備を命じると、先陣をきってガミラス星へと接近していく。
「主砲発射準備!!」
「戦闘甲板開け!!戦闘用意!!」
ゲルバデスの飛行甲板が反転しそこからは副砲である無砲身連装フェーザー光線砲塔が四基、無砲身連装フェーザー光線砲塔、多連装ミサイルランチャーがそれぞれ二基出現した。
またガイペロン級多層式航宙母艦(空母) ブリウド ガリウド レリウド の三隻も133ミリ三連装陽電子カノン砲塔が五基、33ミリ四連装陽電子速射砲塔を八基備えていると言う事で、戦闘に参加する事となった。
「全艦攻撃準備完了!!」
「撃て!!」
デスラーの命令一下、ガミラス軍の将兵たちは、盗掘者への怒りと憎しみを込めて連中に叩き付けた。
ガミラス軍からの一斉射を受け、多くの円盤が爆沈していく。
突然不意を突かれた盗掘団連中は大混乱に陥った。
その中の一隻が何処かへと通信を送った。
マゼラン星雲某宙域・サンザー星系外縁部‥‥。
其処には、今ガミラス星でデスラー率いるガミラス艦隊と交戦中の円盤と同じ型の艦やそれを更に発展大型させた艦がいた。
その中でも一際大きく、強力な武装をした円盤に通信が入る。
「デーダー司令!!」
「何事だ?」
デーダーと呼ばれたスキンヘッドで顔は白灰色、服装は白い全身タイツに紺色の手袋とブーツ、そして黒いマントといった、地球ではファッションセンスを疑う服装の男が突然の通信に声をあげる。
「緊急事態発生!!ガミラス星にて作業中、正体不明の敵の攻撃を受けました!!今なお護衛艦隊は交戦中です!!」
「なにぃ!?」
突然、作業中の作業船団の奇襲に思わず声が裏返るデーダー。
「未確認ですが、旧ガミラス帝国の艦という情報も‥‥」
「‥‥面白い。よし、すぐ援護艦隊を差し向ける。それまで戦闘を支えるのだ!!」
「はっ!!」
デーダーは巡洋艦を中心とした高速部隊を自らの艦隊から割き、ガミラス星へと援軍として派遣した。
「これでいいのだ‥‥」
デーダーはこれで全ては終わると思っていた。
しかし、事態はそう簡単にはいかなかった。
本星を勝手に蹂躙されたガミラス艦隊の怒りは凄まじく、次々と作業船団とその護衛を務めていた戦闘艦艇、更にはデーダーが援軍として差し向けた巡洋艦を中心とする援軍までもが、全滅すると言う事態となった。
だが、事態はさらに深刻化する事となった。
被弾した大型作業船がガミラス星へと墜落し、採掘したてのガミラシウムに誘爆した。
ガミラシウムは、宇宙船のエネルギー源となる地下鉱石で地球に例えるならば、石炭と似た様な鉱石だった。(ただし石炭と比べると、とつてもない量のエネルギー源を含む。)
その強力なエネルギー源の鉱石が大量に採掘されていた場所に宇宙船が墜落したのだ。
結果、誘爆によるエネルギー量は凄まじいものとなり、ガミラスの地殻は大きく裂け、そこから大量のマグマが噴き出てきた。
「マグマが噴き上げてくるぞ!!全艦反転上昇!!」
「対ショック準備!!急げ!!」
ガミラス艦隊は大急ぎでガミラス星から離れる。
誘爆は治まる動きを見せず、ガミラス星全体へと広がり、最終的にはガミラス星は大爆発をし、宇宙から消滅してしまった。
ガミラス艦隊に降り注ぐガミラス星の破片‥‥。
しかし、そのどれもが細かく砕けていたため、艦に大きな損害を与える程の被害は無かった。
ガミラス星が大爆発を起こし、消滅した光景をデスラーは、最初は唖然として見ていたが、やがて崩れ落ち、
「ガミラスが‥‥我々の母なる星が消えてしまった‥‥例え滅びゆく星であったとは言え‥‥こんな残酷な結末を迎えるとは‥‥この目でそれを見る事になろうとは‥‥」
デスラーは目の前の現実に打ちのめされていた。
タラン以下の重臣や将兵たちも力なく項垂れ、瞑目する者もいれば嗚咽を堪える者もいた。
ガミラスは老朽化した星で、星としての寿命が尽きようとしていた。
そんな中、自分たち、ガミラス人が移住できそうな星を探している中、彼らは地球を見つけた。
しかもおあつらえ向きにファーストコンタクトをとろうとしたガミラスに対して地球側はいきなり攻撃してきた。
ガミラス側はこの出来事を最大限に利用する事にし、地球人類を遊星爆弾で滅ぼした後、ガミラス製のコスモクリーナーで地球をテラーフォーミングして移住しようと計画した。
イスカンダルにコスモクリーナーが在ったように当然、お隣のガミラスでもコスモクリーナーを製造する技術は存在していた。
しかし、そのガミラスの地球移住計画もヤマトとの戦いで全ておじゃんとなった。
そして、今回の大航海は再び第二のガミラス星を探す旅となったのだが、その別れ際に自分たちの故郷は粉々になってしまった。
だが、事態はガミラス星の消滅だけには留まらなかった。
「総統!!イスカンダルが軌道を外れていきます!!」
先程まで静止していたイスカンダルが急に動き始めたのだ。
「っ!?」
(っ!?‥‥私とした事が、何たる失態だ!!)
デスラーは自分を罵った。
ガミラスとイスカンダルは共にサンザー(太陽)を公転する二連惑星‥‥。
どちらか一方が消滅すれば、互いの引力バランスが失われ、もう片方は簡単に軌道から外れる。
そして、イスカンダルもガミラス同様、星としての寿命はもうないも同然の老朽化した星‥‥。
地殻等もボロボロで地震が頻発し、イスカンダルの大陸の多くは既に海に没している。
そんなボロボロの状態で宇宙を漂流し続ければ、星自体が崩壊するか、他の星と衝突してしまう。
いや、それどころかサンザー(太陽)に吸い寄せられてしまう危険もある。
そうなったら、スターシアは‥‥
「追え!!イスカンダルを追うのだ!!」
デスラーは反射的に勢いよく立ち上がり、急ぎ全艦にイスカンダルの追跡命令を下す。
こうしてデスラーとガミラス艦隊のイスカンダル追跡劇が始まった。
「タラン」
「はっ」
「この状況を地球に‥‥古代に知らせろ‥‥」
「はっ!!」
デスラーはガミラス星の消滅とイスカンダルの暴走の件を地球へと打電した。
時を同じくしてサンザー星系外縁部‥‥
「マゼラン方面軍総司令、メルダース長官が出ました!!」
「うむ」
モニターにはデーダー同様、スキンヘッドに全身白タイツ、黒マントを来た男が写った。
「どうしたのだ?デーダー」
「はっ!!突然、正体不明の敵の攻撃を受け、戦闘中にガミラス星が大爆発を起こしてしまいました」
デーダーはガミラス星での出来事をモニター前の上官に報告をする。
「なに?」
「作業船団はガミラスと共に爆発で全滅。護衛艦隊も大半が撃滅されたもようです‥‥」
「イスカンダルはどうなっている?」
メルダースは失った作業船団や護衛艦隊よりもイスカンダルの方が気になる様子。
「軌道を外れ、太陽に引き込まれ始めました」
「太陽‥‥サンザーにか!?」
「この二つの星は二連星ですから、一方が無くなったせいで自転と公転を支えている微妙な均等が失われたためと思われます‥‥」
「うむ‥‥ただちに追跡するのだ。イスカンダルを失ってはならん。イスカンダルの地下に眠る『イスカンダリウム』は我が帝国が現在遂行中の宇宙間戦争に必要なエネルギー変換鉱石‥‥採掘できずに帰還することは許されん」
「承知しております‥‥が、長官、考えてみればこの事故は我々にとって有利に働くかと‥‥」
「なに?」
メルダースは、イスカンダルが暴走し、イスカンダリウムが手に入らなくなる恐れがあるにも関わらず、イスカンダルが暴走して有利になると言うデーダーの言葉を聞き、不機嫌そうになるが、
「イスカンダリウムはイスカンダルの固い地殻の奥に眠っております。それ故に我々はまず先に地殻内部が露出しており採掘を行いやすいガミラスから同種の鉱石であるガミラシウムを採掘していた次第‥‥イスカンダルがこのまま落下を続けますと、いずれサンザーの潮汐力によって星の表層が剥げ落ち、地殻は吹き飛んでしまうでしょう。その後、マントルと核だけとなったイスカンダルを星系外へ曳航すれば、労せず莫大な量のイスカンダリウムを手に入れる事が出来ます」
「ふむ‥‥」
「ガミラシウムは失いましたが、純度の高いイスカンダリウムをより多く手に出来れば、聖総統閣下にもご満足いただけるかと‥‥」
「なるほど、面白い。では、手始めにその謎の艦隊とやらを蹴散らせ!!何としてでもイスカンダルを手に入れるのだ!!」
メルダースはデーダーの追加報告を聞き、不機嫌から一転し、満足したように納得して、イスカンダルを追跡するのと同時に、ガミラス星で自分たちの作業の邪魔をした謎の艦隊(ガミラス艦隊)を撃破せよとデーダーに命じた。
「はっ!!」
デーダーは敬礼し、通信をきった。
こうしてデーダー率いる艦隊もイスカンダルを追撃する事となった。
もし、暗黒星団帝国より先に管理局が無人のガミラスを見つけていたら、暗黒星団帝国の様にガミラシウムを採掘していたでしょうし、イスカンダルに対しても管理世界入りを強制していたかもしれませんね。
そうなったら、ミッドにも遊星爆弾が降り注いでいたかも‥‥