星の海へ   作:ステルス兄貴

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四十一話 O・HA・NA・SHI・・・・もとい、お話をしましょう 前編

 

 

「では、改めて‥‥」

 

ギンガ、良馬、リニスがそれぞれティアナ、フェイトに対面する様に座り話し合いが行われた。

 

「これは、あくまで互いの立場などを理解し合うことが目的で、取り調べや尋問の類いではないことを予め宣言する。また、それぞれの組織の機密事項については答える義務はない‥‥ということでいいかな?」

 

「はい」

 

良馬の言葉に皆が頷いた。

 

「では、まずハラオウン執務官にお尋ねしますが、執務官とはどういう職務を?」

 

と、良馬がフェイトの職務について質問をした。

 

「簡単に申しますと、時空管理局が管理する世界で発生した犯罪のうち、特に凶悪犯罪だったり、規模が大きい事件の捜査を担当するものです」

 

フェイトの職務を聞き、良馬が頷く。

以前遭難し、曳航した管理局の艦から回収した資料で下調べはしたが、彼女の言っていることはそれと合致している。

 

(執務官は多分古代君たちと同世代だろう。補佐官はどう見ても十七、八‥‥と言う事は、彼女たちは魔導師としても優秀なんだろうな。けど、時空管理局は魔導師でないと出世できないのかな?)

 

と、内心そう思った。

それはある面、当たっていた。

そして今度はフェイトが質問してきた。

 

「何故、月村艦長は魔法の存在を知っていたんですか?」

 

まず、フェイトが質問内容は、やはり管理外世界の住人である良馬が魔法の存在を知っていた事が気になっていたからだ。

 

「リニスやギンガが居たと言う事もあるけど、まずは、之を見て欲しい‥‥実は、我々地球防衛軍は既に時空管理局の艦に一度接触しているんだ‥‥」

 

良馬の話を聞き、フェイトとティアナは揃ってギンガを見る。

 

「あっ、ギンガの乗っていたのは民間の貨物輸送船だったから、管理局の艦には、分類されていないよ‥‥えっと‥‥あっ、コレだ」

 

そう言って、タブレットを操作し、ある艦船が映った画像をフェイトとティアナに見せる。

 

「っ!?」

 

「これはっ!?」

 

「‥‥ギンガにも確認をとって貰ったのだけれど、この艦は君たちが所属する時空管理局の艦で間違いないかな?」

 

「は、はい」

 

「間違いありません」

 

タブレットに写っていたのは、以前遭難して行方不明となっていた管理局の次元航行艦、ノアであった。

その痛々しい姿にフェイトは俯いたまま答えた。

ティアナも悲痛な表情になっている。

 

「以前、太陽系内に突然現れた艦で、その時も君たちが乗っていた艦同様、激しく損傷しており、救助を行ったのだが、残念ながら、この艦には生存者が居なかった」

 

「「‥‥」」

 

ノアの乗員全員が殉職していた事実を知り、いたたまれなくなるフェイトとティアナ。

 

「救助作業が終わり、本国に曳航してこの艦のコンピューターを調べたら、時空管理局に関する資料が散乱しているのを発見したんだ‥‥無論、資料の収集・解析は自分が命じて行われたのだから、管理局や魔法の情報流出は君たちの過失じゃない」

 

「は、はい」

 

力なくフェイトも頷いた。

ギンガやリニスが居たとはいえ、防衛軍側としたら、管理局は未知の組織である。

その未知の組織についての情報収集は当然の事だろう。

自分たち、管理局がその立場にあれば同じ事をするだろうから、目の前の彼らを責めるのは筋違いと言うものだ。

ただ問題は、もし本局がこの事を知ったらどんな事になるのだろうかと言う事である。

 

ノアの船体は曳航された後、月村造船のドックで調査の為に解体されたが、機関部やアビオニクス等重要部分は白色彗星帝国軍との激突前に地球の技術本部に搬入されていた。

 

「我々の話は一旦置くとして、君たちから訊きたい事はあるかな? 軍の機密事項は話せないが、それ以外の事は可能な限り答える」

 

「ありがとうございます。では我々、管理局でもそうなのですが、地球防衛軍の方も人材不足なのですか?」

 

と、フェイトとは良馬の見ためと役職が釣り合わない事に疑問を感じてこの質問をしたのだ。

恐らくティアナも同じ事を思っているだろう。

 

「我々の地球は、九年前からガミラスと言う異星人に攻められて、地球の総人口が半分以下に激減してしまってね‥‥それは当然、防衛軍も例外ではなかった…ほんの十年前なら艦長は早くても三十代後半、司令官は若くても四十代半ばが普通だったんだよ‥‥でも、戦争で上も下もバタバタ戦死していって人材が少なくなってからは年齢にこだわってはいられなかった‥‥」

 

「「‥‥」」

 

良馬の話を聞き、黙り込むフェイトとティアナ。

戦争と言う理由ならば、目の前の光景も納得できる。

若手でも才能と技術があれば、どんどん抜擢するということなのだろうが、目の前の彼らはそんな悲惨な戦争をくぐり抜けてきたのかと知り、フェイトは沈黙してしまった。

 

「あの‥‥」

 

今度はティアナが恐る恐る質問をしてきた。

 

「リニスさんとギンガさんは何故、防衛軍に任官しているのですか?」

 

まぁ、リニスに関してはマスターである良馬が防衛軍に志願したから使い魔であるリニスも共に志願したと言う理由で分かるが、元管理局員のギンガが防衛軍に任官しているのはティアナとしては解せない様子だった。

 

「リニスとギンガがこうして防衛軍に任官しているのもその戦争が原因なのだが‥‥」

 

良馬は二人が防衛軍に任官している理由を話していいものかと視線をフェイトとティアナ二人から逸らし、リニスとギンガに移す。

すると、

 

「フェイト、ティアナさん‥‥私たちが経験した戦争‥‥映像ではありますが、それを見る勇気はありますか?」

 

「えっ!?」

 

「戦争の‥‥映像ですか‥‥?」

 

リニスがフェイトとティアナの二人にガミラス、そして白色彗星帝国との戦闘記録映像を見るかと訊ねる。

 

「ギンガはそれを見たの?」

 

「はい‥‥ガミラスとの戦争をこの目で見てこの身で体験し‥‥彗星帝国との戦争に関しては私も防衛軍士官として、その戦いに参加しましたから‥‥」

 

「「‥‥」」

 

二人はしばし黙り込んだが、

 

「「お願いします」」

 

と、もう一つの地球が辿った歴史を見る事にした。

 

 

「「‥‥」」

 

フェイトとティアナの二人は俯いて身を震わせていた。

彼女らの正面には、ブラックアウトしたモニターの画面がある。

つい数分前まで彼女たちが見ていたのは、約十年前に始まった星間戦争、あるいは絶滅戦争の当事者にされた地球人類が辿った、運命と呼ぶには余りにも苛酷で悲しく、残虐な戦いの記録‥‥。

最初は西暦2192年に始まるガミラスの遊星爆弾による地球本土爆撃の映像からだった。

ニューヨーク、パリ、モスクワ、ロンドン、ベルリン、北京等、世界の主要都市が宇宙から降り注ぐ遊星爆弾によって被爆、壊滅していき、多くの生命が消えていく‥‥。

海もすっかり干上がり、水深1000メートル台の海底も露になり、青い地球の姿はみるみるうちに赤茶けた大地へと変わり、そこには地球生物には有害な放射線がまき散らされている。

 

(これが、未来の地球の姿だと言うの‥‥?)

 

(これが、宇宙戦争で死んでいく星の姿‥‥)

 

地球とは縁が薄いティアナは、死の星と化しつつある惑星の姿に衝撃を受けていた。

それは恐らくフェイトも同様だろう‥いや、一時的とは言え地球に住み、親友が住んでいる星だからこそ、ティアナよりも衝撃は大きい。

そして、これらの映像が創作されたものには見えなかったし、自分たちの愛機、バルディッシュもクロスミラージュも同様の見解を示した。

声を失ったフェイトたちだったが、さらに驚愕する事実を告げられた。

ガミラス帝国軍の遊星爆弾が日本に初めて着弾したのが、よりにもよって“海鳴市”だった事がフェイトを打ちのめしていた。

今、リニスとギンガが住んでいる地球が自分の知る第97管理外世界の‥‥地球の未来が辿る歴史だと決まった事ではないが、フェイトがよく知る人たちの子孫が犠牲になったとしたら‥‥。

 

(こんな映像、はやてとなのはにはとても見せられないよ‥‥それにすずかやアリサにも‥‥)

 

この世界の地球と第97管理外世界が同一の星か否かは分からないが、地球をミッドに継ぐ第二の故郷と思っているフェイトはひどく動揺する自分と闘っていた。

映像は地球が徐々に荒れていき、人類が地下に追い詰められていく光景に変わる。

地球防衛軍も懸命に迎撃するが、科学技術力の差はいかんともしがたく、奮闘空しく壊滅していく地球防衛軍の宇宙艦隊。

絶望的な戦況の中で数多の人々が命を落とし、宇宙戦士たちも星の海に散華していく‥‥。

良馬はガミラスが地球に遊星爆弾を降らせる頃、防衛軍へと志願し、リニスも良馬の使い魔と言う事で共に防衛軍に志願したが、これはあくまで形式状のもので、リニス自身も自分の住む地球を守りたいが為に防衛軍に志願したのだ。

そして士官学校卒業後、良馬は最前線で戦い続け、リニスも医務官として、戦場で傷ついた多くの宇宙戦士たちの命を救うと同時に多くの死を看取って来た。

空しく散っていった戦友である宇宙戦士や同胞たちにどんな思いを抱いていたのか、共に映像を見ていた良馬とリニスの表情からは窺えなかった。

そして、西暦2199年の冥王星海戦を最後に地球防衛艦隊は事実上壊滅し、地球の命運は決したかと思われた。

しかし、その事態を激変させたのは、絶望の縁に立たされた地球にもたらされた、波動機関ことタキオン粒子を応用した超高エネルギー機関を始めとする数々のオーバーテクノロジー‥‥。

地球から約十五万光年離れたマゼラン星雲の中にあるイスカンダル星から、何の見返りも求めず、命懸けでそのデータを地球にもたらしたイスカンダルの王女サーシア・イスカンダルと彼女を送り出し、ヤマトを待ち続けた姉のイスカンダル女王、スターシア・イスカンダルには驚愕したが、一年も経たずにそれを実体化し、地球脱出艦に搭載した地球人たちとぶっつけ本番で出発し、少なからずの犠牲を出しながらも成功させたヤマトの偉業には言葉もない。

しかも、タキオンテクノロジーを応用した超高エネルギー砲こと“波動砲”を地球独自に開発した事と波動砲が一撃でオーストラリア大陸と同じ大きさの浮遊大陸を破壊したのには怖れを抱かずにはいられなかった。

 

((テレザートで見たあの光はこの波動砲かもしれない))

 

と、予測をするフェイトとティアナ。

一撃でオーストラリア大陸と同じ大きさの浮遊大陸を破壊する威力を持ち、アルカンシェルが比較にすらならない程の威力と破壊力を持つ質量兵器。

そんなものの存在、管理局側にすれば到底容認できないだろう。

ヤマトは約十ヶ月の航海の中、ガミラスや宇宙気象等の様々な妨害を潜り抜け、114名中47名の戦死者を出しながらも、無事にイスカンダルへと辿り着き、放射能除去装置コスモクリーナーを持って地球へと帰還した。

ヤマトがイスカンダルへ向かっている間、地球でも各惑星からの資源開発が行われようとしていた。

それもイスカンダルからの波動エンジンと土星衛星、タイタンで鹵獲したガミラスの強襲揚陸艦のおかげだった。

その最中、ギンガはこの世界の中嶋家に養子入りをして、良馬やリニスの様に防衛軍に志願した。

この映像の地球が今後、ミッドチルダや各管理世界が迎えるかもしれない可能性の一つである事実に二人は戦慄した。

 

「あの‥‥大丈夫ですか?フェイトさん、ティアナ」

 

ギンガが心配そうに二人に声をかける。

自分も救助された時にガミラスとの戦いは同じ映像を見たが、見た当初は、やはりフェイトたち同様言葉をなくした。

 

「ご、ごめんギンガ‥‥」

 

「何て言ったらいいか、言葉が見つからなくて‥‥」

 

二人は顔色を青白くしたまま俯く。

しかし、地球防衛軍側からの説明はまだ続く。

つい最近の出来事であり、ギンガも参戦したあの白色彗星帝国との戦争が‥‥。

 

 

ガミラスとの戦争の映像を見て終わった後、フェイトはギンガ自身の事を思った。

 

(私はティアナと一緒だけど、ギンガはこの世界に次元漂流した時は、一人ぼっちだった‥‥)

 

突然、自分の知らない世界に放り込まれ、当然そこには知り合いなど居る筈もなく、また漂流した世界は、管理局や当時の地球よりも科学技術が進んだガミラスとの戦争の真っただ中だった。

戦時中の世界に突然一人ぼっちで放り出されたギンガはどんなに不安だっただろうか?

どんなに怖かっただろうか?

今のギンガを見る限り、そのような不安や恐怖といった感情は感じられないが、漂流当時はきっとそんな思いが強かっただろう。

声を上げて泣きたかっただろう。

それに比べ、自分たちは、まだマシな方なのだから、くよくよしてられない。

と、自分を奮い立たせた。

 

 

 

モニターの映像の場面は変わって西暦2201年‥‥。

つまり今年の夏頃、第三外周艦隊の一員として太陽系外縁部の警備についていたヤマトは、地球への帰路の途中に謎の敵からの襲撃を突如受ける。

同じく味方艦の数隻も同様の被害に遭う。

また第十五空間輸送補給護衛艦隊も遭難信号を発した後、通信が途絶した。

良馬が艦長を務める まほろば が現場に到着すると、そこには残骸と化した第十五空間輸送補給護衛艦隊の姿だった。

この謎の敵の襲撃に相前後して確認された謎の警告通信と地球に近づく巨大な白色クエーサー‥‥。

これこそが白色彗星帝国ことガトランティス帝国の本体だった。

たった一年も満たない短い平和にどっぷり漬かり、事の重大さを全く理解しない政府・軍の上層部に業を煮やした旧ヤマト乗組員のメンバーたちは改装工事中のヤマトを奪取して、宇宙へと飛び出した。

脱出したヤマトは地球圏にて、戦闘衛星や無人攻撃ステーション、無人艦隊を撃破して太陽系からの離脱を図った。

そこを竣工間もない宇宙艦隊総旗艦アンドロメダと、まほろばがヤマトを追尾し、アステロイド帯でラリーの様な追尾戦、続いてはチキンレースまがいのニアミスまでした後、アンドロメダ艦長兼防衛艦隊総司令、土方竜の独断でヤマトは見逃されたという。

これにはフェイトもティアナも驚く。

自分の組織に疑念や不信を抱いても、大抵は我慢したり、妥協してしまうものだ。

しかし、目の前の彼らは反乱行為を冒してまで飛び出していった。

この行動は組織人としては許されない行為だ。

もはや反乱もいいところだ。

撃沈されてもおかしくは無いし、文句も言えない。

だが、ヤマトの乗員以外にも事態を深刻に捉えていた人が意外と多かった。

良馬もその一人であった。

組織人としては彼らを認めることはできないが、人として彼らを全否定することができるのか?

時空管理局と地球防衛軍は違うのだ。

別の世界で生きる自分たちの定規で彼らを測ることができるのだろうか?

しかし、藤堂司令長官や土方提督など、ヤマトを理解する上官も少なからずおり、ヤマトはその後、大した追撃を受けることなく太陽系を離れ、一路テレザート星に向かう。

 

((テレザート!?))

 

その名はフェイトとティアナにとっても馴染み深い星の名前だった。

 

ヤマトの汚名が雪がれたのは、第十一番惑星にて、ナスカ司令率いる白色彗星帝国、太陽系侵攻前衛艦隊と交戦し、その戦いに勝利して、明確に地球を狙う侵略者の存在が明らかとなってからだった。

その後もヤマトはテレザートへ向けての航海を続けるが、その途中、友軍の すくね と共に小犬座プロキオン宙域にて、第十一番惑星での雪辱を果たそうとナスカ司令率いる潜宙艦隊と遭遇した。

ナスカはソーサナーにて、罠を張るも返り討ちに遭い、形振り構わずその場から撤退しようとしたら、逆に白色わい星の重力井戸に捕まり、自滅すると言う末路を辿った。

双子座宙域では、彗星帝国が建造したと思われる二基の宇宙要塞との戦闘がおこった。

この宇宙要塞が搭載していた要塞砲の威力も波動砲並の威力があり、この要塞の存在は管理局としても十分脅威かと思われたが、この要塞は全て無人のコンピューター制御で、例え自走出来てもシステムが簡易型だったのか、敵味方(IFF)の判別がプログラミングされておらず、双子座のポルックスとカストル以外の一定の大きさの物は破壊する様にプログラムされており、この要塞も互いの要塞砲で自滅すると言うお粗末な展開を迎えた。

当然フェイトとティアナはこの要塞が持つ要塞砲の威力にもド肝を抜いた。

そして、アルデバラン前の宇宙気流が走る宇宙気流帯で僚艦 すくね は ヤマト を守るために、自らがミサイルの楯となり、沈んだ‥‥。

三木を始めとし、乗組員全員が戦死した。

すくね の撃沈シーンでは良馬とリニスは顔を伏せた。

共にガミラス戦役を乗り切った戦友の最後に胸が痛んだ。

ギンガ、フェイト、ティアナの三人も友軍を助ける為、自ら進んで犠牲となった すくね の三木艦長ら乗員たちに哀悼の意を表した。

 

 

すくね の犠牲を払いながらもテレザートを目指すヤマトはヒアデス宙域にて、ヤマトへの復讐に燃えるデスラー率いるガミラス残存艦隊の攻撃を堪え、テレザートを守護する白色彗星帝国のゴーランド提督率いるミサイル艦隊を叩き潰し、ヤマトはテレザートに迫る。

いつの間にか、フェイトとティアナは身を乗り出していた。

 

「あっ、あの艦は!?‥‥フェイトさん!!」

 

「うん。私たちを襲ってきた艦と同型の艦‥‥それにプレオを破壊した艦‥‥」

 

「あれは、彗星帝国ガトランティスの艦船だ」

 

「ガトランティス‥‥ですか?」

 

良馬はフェイトに自分達を襲ってきた艦船の所属を教える。

 

「そうだ。こいつらがつい先日、地球を侵略しようとしていた敵‥‥そして君たちの船を襲った連中の艦なんだが、君たちも前から奴らと戦っているのか?」

 

「はい、数ヶ月前から、しばしば管理局の艦船が襲われたり、駐在していた局員もろとも世界を‥‥惑星を壊滅されたりしています」

 

良馬の問いにフェイトもまた敵だと言い切った。

その瞳にはガトランティスに対して明確な敵意が含まれていた。

 

ヤマトはミサイル艦隊主力の熾烈な攻撃を、反重力感応機を使い艦の周りにアステロイドリングを形成してミサイル攻撃をやり過ごすと敵艦隊を波動砲で掃滅してしまった。

 

(やはり、あそこで私たちが見たヤマトは今、まほろば の近くに居るあの艦だったのか‥‥)

 

フェイトは自分の予感が当たっていたことに、安堵とも驚きともつかない長い溜め息をそっとついた。

 

「で、この巨大な白色彗星が、ガトランティスの本土。我々が連中の国を白色彗星帝国と呼んだ由縁だ」

 

「えっ?」

 

良馬は、理由はすぐにわかると言いながら映像の再生を続けた。

 

(やっぱり、あの彗星はただの彗星じゃなかったのね‥‥)

 

ティアナはあの不気味で巨大な白色彗星が自然の物ではないと判断した。

ヤマトはテレザート星を占領していたガトランティス帝国軍の地上部隊を殲滅し、地下に幽閉されていたこの星唯一の生存者、テレサを解放した。

テレサの容姿を見て、フェイトとティアナは、

 

(この人はっ!?)

 

(あの時、テレザートで見たあの女性そっくり‥‥)

 

フェイトとティアナはテレザートと白色彗星がぶつかり合う寸前、テレザートの表面に浮かび上がって来た女性とテレサがそっくりだと思った。

 

「ヤマトからの資料では、テレザートは今の地球よりも優れた文明を持っていたが、大規模な内戦が起き、星全体が壊滅してしまったらしい」

 

「はい、それについては管理局にも資料がありました」

 

「‥‥あの星を全滅させたのは自分だと、テレサはそう言ったらしい‥‥」

 

「テレサ自身が‥ですか?」

 

「ああ‥‥本当にそれが事実なのかは分からないが、少なくとも之を見れば、納得してもらえると思う」

 

映像は、テレザート星が自爆し、白色彗星がスピードダウンを余儀なくされたところだ。

 

「この爆発は、テレサの祈り‥‥つまり莫大な思念エネルギーによってもたらされたものらしい」

 

「「‥‥」」

 

((やっぱり、あの時、テレザートで見た女性はテレサだったんだ‥‥))

 

テレサの力は大魔導師だった母、プレシア・テスタロッサはおろか、ミッドチルダの歴史上に名を残した大・名魔導師やヴィヴィオの元となった聖王オリヴィエや覇王イングヴァルトら古代~近世ベルカの諸王ですら、これほどの力はないだろう。

 

「ガトランティスの危険を訴える超空間あるいは次元跳躍通信も彼女自身が先天的に持ち合わせた思念エネルギーを用いたんだと思う。テレザートの内戦の時も平和の祈りをしていたようだが、精神の制御ができずに暴走してしまい、地表の全てを灰塵にしてしまったことを心底悔いていたと聞く」

 

映像を見てあまりにも常識外れな出来事にフェイトもティアナも頭の中がいっぱいになった。

そこで、少し心の整理をつける為、休憩となった。

 

「ふぅ~」

 

ミネラルウォーターを一口飲んだ後、一息をつくフェイト。

 

「大丈夫ですか?フェイトさん」

 

ティアナが心配そうにフェイトに声をかける。

 

「ええ、大丈夫よ。ティアナの方は?大丈夫?」

 

「はい‥‥それにしても遭難してから非現実めいた事ばかりですね」

 

「そうね‥今も夢かSF映画を見ているかの様よ‥‥」

 

「はい‥でも、あの映像に遭ったことはこの世界では実際に全部現実にあった事なんですよね?」

 

「‥‥夢かSF映画ならどれだけ楽な事だったか‥‥」

 

「そうですね‥‥」

 

休憩なのに一段と疲労感を覚えたフェイトとティアナだったが、記録映像はまだまだ続く様だ。

管理局員として、執務官として、フェイトもティアナも全てを見なければならないと言う使命感の様なモノも疲労感と同時に感じていた。

フェイトは鋭気を養うかの様にミネラルウォーターを一気に飲み干した。

 

休憩を挟んで見せられた記録映像は、この白色彗星帝国自体の補足説明となった。

これは要塞都市ガトランティスの瓦礫を調査した際に入手した情報で彼らのこれまでの旅の記録(侵略日誌)でもあった。

 

「次の映像は彗星帝国がこれまで何をして来たのかを知る記録映像だが、正直言って胸糞が悪くなるような映像だ‥‥見る覚悟はあるかな?むろん強制はしない」

 

「いえ、大丈夫です‥‥見ます」

 

「私も見ます」

 

良馬は先に断りを入れてから、彗星帝国の映像を見せると言い、内容が軍人としてとても許容できる内容でない事から、強制はせず、フェイトたちが「見ない」と言えば、とばすつもりであったが、フェイトたちは「見る」と言った。

フェイトたちにとっても敵(白色彗星帝国)を知る絶好の機会だと思ったからだ。

そして、映像がスクリーンに映し出された。

宇宙を我が物顔で進む白色彗星。

その針路上にある小さな星は粉々に砕かれ、有人惑星があれば、彗星の中から艦隊が出撃し、その惑星を攻撃、侵略していき、その惑星を従属する植民地化していく。

ある有人惑星では、住民全てが奴隷とされ、豊富にある鉱山資源の採掘を強制的にさせられていた。

作業は昼夜問わず、休みなしで行われ、その際、事故や病気・怪我、老いや飢えで体力が低下した者、動けなくなった者たちは手当や休みを与えられることなく、監視をしていた兵士が射殺していく。

また、別の有人惑星では、ナスカ級高速空母から出撃したデスバテーターがミッドや今の地球と同等‥いや、それ以上の近未来都市の空を縦横無尽に飛びかい、対空陣地、都市部に爆撃を敢行する。

星を脱出しようとする非武装の宇宙船や逃げ惑う人々に対しても爆撃や機銃斉射を行う。

これはもはや戦争ですらなく、ただの虐殺に他ならない。

 

「「‥‥」」

 

良馬にあらかじめ「胸糞悪い映像だ」と言われたが、まさにその通りであった。

管理局の歴史の中でもここまで酷い戦争の歴史は無いし、管理世界の住人に対してもここまでひどい扱いはしていない。

フェイトとティアナの二人は無意識に拳を作り、ギュッとその拳に力が入る。

やがて、その白色彗星は本格的に地球へと侵攻を開始し、次の映像は土星圏を舞台に地球防衛軍とガトランティス、太陽系侵攻艦隊の主力部隊との決戦映像となった。

 

(ヤマトも十分強力なのに、これだけの艦船がそろったら戦闘力は桁違いなんだろうなぁ‥‥)

 

フェイトは土星圏、タイタン基地に集結した防衛軍の艦船を見て防衛軍の力を測りかねていた。

 

(あれだけの艦船をこんな短期間で揃えるなんて‥‥マリエルさんやシャリオさん、ルキノさんが見たら狂喜乱舞するだろうな‥‥)

 

ティアナはギンガ同様、土星圏に集結した防衛軍の艦船を見て、知り合いの技術者たちと艦船マニアがこの映像を見た時のリアクションを想像した。

一方、集結している艦船を見てフェイトは、

 

(管理局はいずれ大きな組織改革を迫られるかもしれない。その時、それを認め、実行しなければ、ガミラスやガトランティスの様な‥‥侵略と破壊を楽しむような凶悪な連中に食い荒らされて滅びの道を辿る事になる‥‥)

 

と、胸中に冷え冷えとした予感めいたものが沸き上がって来るのを抑えられなかった。

映像は続き、ヤマト、まほろば を中心とした機動部隊が彗星帝国の機動部隊とのやりあいから、この土星圏を舞台にした地球攻防戦は幕を上げた。

その結果、敵の空母は殲滅する事が出来たが、地球側も参加した艦載機とパイロットの約三割を失った。

そして味方の空母も撃沈までは至らないが、ヨークタウンが戦線離脱する程の損害を受けた。

そして、敵機動部隊殲滅後、双方の主力艦隊同士が激突した。

主力艦隊同士の決戦でフェイトとティアナが驚いたのはまず、アンドロメダ以下の主力戦艦部隊の拡散波動砲の一斉射撃だった。

 

(ヤマト一隻でも強力なのに、あれだけの数の戦艦の波動砲を受けたら‥‥しかもヤマトが収束型なのに対し、映像の戦艦部隊はすべて拡散型‥‥)

 

(あんな強力なエネルギー砲を受けた敵の方がなんだか可哀想に思えるわ‥‥)

 

と、拡散波動砲の威力を映像越しに見たフェイトとティアナだったが、敵は更にそれよりも強力な兵器で応戦してきた。

映像の中で、突然地球の戦艦が爆発をした。

波動砲を撃った反動で、エンジントラブルでも起こし爆発したのかと思ったが、

 

「敵の旗艦は、人工的に物質移送空間を作り、そこに高エネルギー砲を叩き込んできた。回避は事実上不可能。命中率は100%を誇る強力な兵器だった」

 

と、良馬は補足としてこの時の敵旗艦メダル―ザの切り札とも言える『火炎直撃砲』の説明をした。

ガトランティス艦隊の空間転移砲は緒戦で絶大な威力を発揮し、地球艦隊は僅か数分の間で一割強の戦艦を失った。

波動砲の威力に驚き脅威を抱いたフェイトとティアナだったが彗星帝国のこの兵器にも当然同じような脅威を抱いた。

あんな兵器を搭載した艦とまともに戦えるのか?

管理局がもし、あんな兵器を搭載した艦と戦うとしたら、当然アルカンシェルを使うだろうが、敵が射程に入る前に一体何隻の艦と乗員を生贄にするのだろうか?

しかし、現に良馬やリニス、ギンガが自分たちの目の前に居るということは、あの艦に勝ったという事だ。

一体どのようにして勝ったのか、六課時代にFW陣でセンターガードを務めていたティアナとしてはそれが気になった。

 

「敵の決戦兵器は射程が極めて長く、正確な命中率を誇るかわりに照準がデリケートだったようだ。この時、艦隊司令を務めていた土方提督はそこにつけ込む戦法をとった」

 

地球艦隊の土方提督は敗走を装って全艦隊を土星の環の中、カッシーニの隙間まで艦隊を後退させ、潜ませていた予備部隊と合流した。

一方、追撃してきた敵艦隊は土星の環の中であの転移砲を放った。

その結果、土星の環を形成していた無数の氷塊が一瞬で蒸発して水蒸気爆発を誘発。

水蒸気爆発の影響で大規模な乱気流が発生し、その気流に飲まれ、メダル―ザを含めて敵艦隊は全て操艦不能に陥り、味方同士で衝突したり、地球艦隊の砲撃を受けて壊滅した。

 

「おそらくこの時の敵の司令官は『これで勝った』と慢心していたんだと思う」

 

良馬の意見からティアナもそれに同意した。

圧倒的優位は人の思考を鈍らせ、緊張感と警戒心を大いに緩める。

その結果、敵艦隊は地球艦隊のどんでん返しを受けたのだ。

気流圏から何とか脱したメダル―ザは、既に満身創痍の状態で、切り札となる火炎直撃砲も使用不能状態で、最後はアンドロメダに特攻をしようとするも地球艦隊の一斉射撃の前に撃沈され、敵艦隊の司令官バルゼー提督も艦と運命を共にした。

 

「でも、本当の戦いはこの後からだった‥‥」

 

敵艦隊には勝ったが、その直後に白色彗星が土星圏へワープアウト。

戦闘空母ら一部の艦が飲み込まれてしまった他、ヤマトも味方艦と衝突し、大ダメージを被って戦線離脱を余儀なくされた。

アンドロメダ以下の波動砲装備の艦は白色彗星に対する拡散波動砲一斉発射を行ったのだが、周囲のガス帯を取り去ることしか出来なかった。

 

(あれだけの波動砲が効かないなんて‥‥)

 

(どんだけ、堅いのよ‥‥)

 

艦隊ならば全滅をしても可笑しくは無い程の拡散波動砲を受けながらも傷ついていない様子の要塞都市ガトランティスを見て、思わず冷や汗が流れるフェイトとティアナ。

 

白色彗星の中から現れた要塞都市ガトランティスに戦いを挑んだ地球艦隊であったが、結果は散々で、旗艦アンドロメダは敵要塞のミサイル攻撃を受け、操艦不能に陥り、要塞都市に特攻し爆沈。

土方提督以下乗組員全員が戦死した。

しかし、アンドロメダの特攻を受けても要塞都市に決定的なダメージを与えられなかった。

波動エンジンに波動砲を装備した地球艦隊ですらこの有り様では、管理局の艦ではアルカンシェルを撃つ前に強力な重力圏に引きずり込まれてしまうし、例え撃てたとしても波動砲と比べるとその威力は話にならない。

恐らく全ての次元航行艦をかき集めてもガス帯を取り払えるかどうかも怪しい。

 

(ギンガさんやこの人たちは、どうやってこんな化け物と戦ったって言うの?)

 

ティアナは瞬きをするのも忘れ、モニターの映像に見入った。

 




我々からすれば、アニメ映像を見ているだけなのでしょうけど、アニメの中のキャラにはアレが実際の戦闘映像として描かれている訳ですから、実際の第二次世界大戦の記録映像を見ている感じなのでしょうな‥‥

彗星帝国の映像は旧作の さらば宇宙戦艦ヤマト の冒頭でガトランティスが鉱山惑星の住人を奴隷化した場面及び何処かの星を攻撃していた場面をご想像してください。
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