星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回、フェイトとティアナが防衛軍の制服に着替えるシーンがあるので、イメージとして防衛軍の制服を着たフェイトとティアナ、そしてギンガのイラスを書いてみました。

しかし、手描きなので、見る場合は自己責任でお願いします。




四十二話 O・HA・NA・SHI・・・・もとい、お話をしましょう 後編

 

記録映像は続いていき、フェイトとティアナはモニターを夢中になって見ていた。

 

土星圏では太陽系に侵攻して来たバルゼー提督率いる太陽系侵攻機動艦隊本隊、通称バルゼー艦隊との決戦には勝利した地球艦隊であったが、その直後に白色彗星が土星圏にワープアウトしてきた。

 

戦力の要であるヤマトは白色彗星の突然のワープアウトと味方艦との衝突で戦線を離脱する程のダメージを負う。

 

アンドロメダを始めとする地球艦隊は白色彗星に対して拡散波動砲の一斉発射を行うが、白色彗星の防御力は地球側の予想を遥かに超えており、拡散波動砲の一斉発射を受けても周囲のガス帯を取り払う事しか出来なかった。

 

白いガス帯から出てきた要塞都市ガトランティスへ地球艦隊は果敢に攻撃するが回転履帯から発せられる分厚いガスバリアで地球艦隊の攻撃は通じず、逆にミサイルと砲撃で地球艦隊はアンドロメダを失う被害を出した。

 

土星圏での要塞都市の戦いに敗れた地球艦隊は木星圏へと退避した。

 

そして木星圏で補給、修理を受けたヤマトと地球残存艦隊は地球連邦政府が発表した無条件降伏に反対して、徹底抗戦の意思を見せた。

 

まほろば よりも先に地球へ向かったヤマトにガミラスのデスラー総統が立ちふさがった。

 

瞬間物質移送機を駆使した“ドメル戦法”でヤマトを追い込んだが、ヤマトは小ワープでデスラーの旗艦、ノイ・デウスーラに接舷、移乗して白兵戦を挑んだ結果、デスラー艦は大破。

 

その後、デスラーに心境の変化があったらしく、ヤマトや地球との和解と白色彗星帝国の弱点を匂わせる言葉を残して退去し、ガミラス艦隊を率いて太陽系から立ち去っていった。

 

そして映像はいよいよ彗星帝国との最終決戦となる。

 

降伏調印式が始まる前に上空からはコスモタイガー隊が急降下爆撃を行い、海中では、ヤマト以下、周辺各国の攻撃潜水艦が魚雷を要塞都市ガトランティスの底部へと叩き込む。

 

突然の奇襲を受けたガトランティスであったが、すぐに態勢を立て直し、激しい対空砲火とミサイルでコスモタイガーを撃ち落し、ヤマトと戦線に参加した まほろば 薩摩にミサイルや砲撃を加えてくる。

 

このまま戦闘が長引けば、なぶり殺しにされる。

 

そこで、状況打開のためにガトランティス帝国本星に上陸・突入し、動力炉を破壊した。

 

作戦には成功したはいいが、突入部隊の八割強を失い、支援にあたった艦載機部隊にも多大な犠牲を出した。

 

ヤマトの戦闘機隊も生還したのは当時副隊長だった山本の一人だけだった。

 

突入隊員は、全滅‥つまり死ぬことを承知でありながら自ら志願して出撃していったという事実にフェイトとティアナは愕然としていた。

 

飛行場は防衛軍の突入隊員とガトランティス兵の屍で半ば埋まり、双方の将兵たちの血がまるで沢のようにチョロチョロと流れていたという。

 

想像するだけでも恐ろしい光景だ。

 

この時、リニスは生涯初めて殺傷設定の魔法を魔力が擦り切れるまで放ちまくったと言う。

 

それは魔導師である二人には狂気の沙汰で、フェイトに関しては、「あのリニスが人を殺すなんて‥‥」という思いがあった。

 

フェイト自身、これまでの魔導師生活の中で殺傷設定の魔法を使ったことなんてない。

 

それが自分に魔法を教えてくれたリニスが殺傷設定の魔法を異星人とは言え人に向けて放ったのだから驚愕に値する。

 

ティアナはあまりの凄惨な光景に「こんなの戦闘じゃない!」と叫びたかった。

 

おそらくスバルやエリオ、なのはやキャロが見ればそう叫んでいたに違いない。

 

反対に管理局の魔導師至上主義の局員が見たら、「なんと野蛮な連中だ」 と、鼻で笑っていただろうし、一般の局員から見れば、彼らは完全にイカれた狂戦士化にしか見えなかっただろう。

 

彼らの行動を割り切れるのは精々シグナムたち、ヴォルケンリッターの面々ぐらいだ。

 

しかし、フェイトとティアナの二人は、地球防衛軍の軍人はそこまでしなければならなかったのだ、と自分たちを無理矢理にでも納得させるしかなかった。

 

地球側としては降伏調印を反故にしてまでの戦闘行為は、まさに背水の陣であった。

 

負ければガトランティスに滅ぼされるのは目に見えていた。

 

故に同胞を‥地球に居る大切な者を守る為、彼らは己の命を賭けて戦ったのだ。

 

動力炉を破壊され、機能を停止した要塞都市が ヤマト まほろば 薩摩 の艦砲射撃やミサイル攻撃で破壊されていくと今度はその中から漆黒の巨大戦艦が現れた。

 

(まだ生きていたの!?)

 

絶望を通り越して、連中のしぶとさに呆れたティアナ。

 

まるでハリネズミのように武装した巨大戦艦の一斉射で、ヤマト、まほろば は大破した。

 

そして巨大戦艦は地球へと針路を向け、その巨大な砲身で地球に狙いを定めた。

 

「ハハハハハハ・・・・・・どうだ、わかっただろう!?宇宙の絶対者はこの全能なるわしなのだ!生命あるものはその血の一滴までこのわしのものだ!宇宙はすべて我が意志のままにある!わしが宇宙の法だ!宇宙の秩序なのだ!よって当然地球もわしのものだ!ハハハハハハ・・・・・・」

 

彗星帝国ガトランティス元首ズォーダーの言葉を聞き、フェイトとティアナは明らかに不機嫌な顔となった。

 

管理局の上層部でも同じような事をほざいている輩がいる。

 

この場合、同族嫌悪という言葉が当てはまる二人だった。

 

(管理局の上層部にも似たような事を言っている連中もいるけど、管理局の戦力とガトランティスの戦力を比べたら、ネズミが飢えたドラゴンに戦いを挑むようなものね‥‥勿論ネズミは管理局の方ね‥‥)

 

ティアナは自分が知る限りの管理局の戦力を集めたとして、ガトランティスに戦いを挑んでも負けるな‥‥と言うイメージしか思い浮かばなかった。

 

そして、巨大戦艦はその巨大な砲で地球を砲撃し始めた。

 

「ひどい!」

 

巨大戦艦の無慈悲な攻撃に、フェイトは思わず声をあげ、ティアナも顔をしかめる。

 

だが、そんな巨大戦艦も最期はテレサと刺し違える形で呆気なく消滅してしまった。

 

テレサの力は確かに凄まじいものだ。

 

もし、彼女が自分たちの前に現れたら、説得して保護するだろうが、それが彼女自身の為になると断言できる自信はないし、なのはの様に魔法を使ってのO・HA・NA・SHIをしたとしても、テレサに勝てる姿が想像できない。

 

「この映像もかなりの部分をショートカットしたものだ」

 

映像が全て終わり、二人の周りには重い空気が漂っている。

 

ミッドや他の管理世界が此処までの窮地に陥ったら、自分たち、管理局の局員は死ぬ覚悟で、そして相手を殺す覚悟で此処まで戦えただろうか?

 

管理する他の管理世界がガミラスやガトランティスの様な侵略星間国家から襲撃を受けたら、その世界の為に命をかけて戦えるだろうか?

 

そんな疑問を自問するフェイト。

 

だが、答えは自ずと出ている。

 

しかし、その答えは認めたくはないモノだ。

 

ミッドが侵略されれば、管理局は早々にミッドを放棄し、他の管理世界に遷都するに決まっているし、他の管理世界が侵略されれば、その世界をあっさりと切り捨てる。

 

映像の様な強力な星間国家と戦えば、管理局は一気に戦力と貴重な人材を失う。

 

だから、犠牲を少なくする為にミッドを捨てるか、侵略された世界を見捨てるしかない。

 

でも、そんな事をすれば管理局は一気に信頼を失うかもしれない。

 

そうならない為にも、地球連邦と同盟を結ぶことが出来ればどれだけ頼もしいことだろうか?

 

だが、その為には、管理局には様々な改革が必要である。

 

だからこそ、自分は生きて見届け見極めなければならないと、心に決意するフェイトだった。

 

「あの‥‥」

 

「ん?何かな?」

 

ティアナは恐る恐る良馬に声をかけた。

 

「良馬さんは、大切な人たちを根こそぎ奪っていったガミラス帝国や彗星帝国を憎んだことはありますか?」

 

「‥‥憎しみがなかったとは言わない。でも、ガミラスの巡洋艦を仕留めた時だったか、通信機から敵艦の乗員たちの絶叫が聞こえてきたんだ‥‥言葉自体はわからなかったが、あれは故郷の母親か大切な人の事を言っていると直感したんだ。それでわかったよ。連中も俺たちに近いメンタリティを持っている人間なんだ、とね‥‥」

 

良馬の言葉にフェイトはかつて、PT事件の折、なのはと敵対していた時の事、闇の書事件でヴォルケンリッターたちと戦った事、JS事件の折、逮捕した戦闘機人たちの事を思い出した。

 

(この世界の地球の人たちは、皆、あの戦争で、何かしら大切な人を失ったんだろうね。そして今回の白色彗星帝国との戦争でも‥‥)

 

(ここの人たちは、強い‥‥だからこそ、決して敵にはしたくないわね‥‥)

 

ティアナはつくづく、この地球の軍人たちの屈強さを噛みしめる。

 

それはハード面でもソフト面である。

 

ハード面ではこの世界では、艦載砲は元より拳銃に至るまで、光学兵器が普及している。

 

管理局の言う「質量兵器禁止」自体が意味をなしておらず、彼らからすればお笑い草か戯言、呆れる事でしかないだろう。

 

それに、この部隊の戦闘力の高さは自分たちも目の当たりにしている。

 

さっきの映像で見た「波動砲」に至っては言葉が出ない。

 

その波動砲は、地球防衛軍では戦艦は元より、護衛艦クラスの小型艦艇にまで搭載されているという。

 

今、此処に居る二隻だけで、XV級の一個艦隊位は簡単に瞬殺されてしまうのではないか?

 

防衛軍と全面対決なんてすれば、僅か一日で管理局の次元航行艦全てが波動砲の餌食になっても不思議ではないと思うティアナ。

 

次にソフト面でも、地球防衛艦隊の生き残りとなった彼らは圧倒的に優勢な都市帝国相手に一歩も退くことなく戦い、夥しい犠牲を出しながらも、ついには逆転してみせた。

 

翻って自分たちはどうだろうか?

 

常に管理局(味方)の手厚いサポートと支援があり、相手方より劣勢な状況で戦闘を続けたことはないし、人員の三割が戦闘続行不能になれば部隊壊滅と判断される。

 

せいぜい、JS事件の決戦時ぐらいに似た体験をしたぐらいだった。

 

第一、自分たちは故郷が滅ぶという心配をすることがない。

 

と言うか、そんな心配を抱いたこともないし、する必要もなかった。

 

それは、ミッドの‥‥管理局のこれまでの歴史から、管理局が保有する次元航行艦よりも優れた艦船を持つ世界(惑星国家)と遭遇していない為、管理局はもとより、ミッドの住人全てが、そう思っている共通認識であると言っても過言ではない。

 

事実、ミッド出身の自分も六課時代までそんな心配を抱いてはいなかった。

 

しかし、地球防衛軍が全滅すれば地球の人たちは間違いなく命脈を絶たれていた。

 

だからこそ、彼らは大部分の戦力を失っても、死兵と化してでも戦ったのだ。

 

良い悪いは別にして、彼らと自分たちでは戦闘の質も覚悟も違う。

 

彼らは殺し殺される覚悟で戦っている。

 

到底自分たちの及ぶところではない。

 

次に、フェイトたちによる時空管理局についての説明が行われる。

 

実際のところ、地球防衛軍側はノアから回収した資料である程度の事は把握しているのだが、フェイトたちの説明は事前に得た情報と概ね合っていたので、良馬がフェイトたちに質問攻めにする事はなかった。

 

彼我の世界観の違いは大きく、一言で言えば、時空管理局側の世界観はさしづめ折詰重箱のようなものだ。

 

反対に地球防衛軍側の世界観は一つの宇宙空間というもの‥‥

 

まあ、どちらが正しいとか誤っているとかの問題ではないだろう。

 

「そういえば、君たちの出身を聞いていなかったが、二人とも『ミッドチルダ』の出身かな?」

 

「はい、共にミッドチルダ出身です。ですが、私は小学三年の冬から中学卒業までは地球に一時住んでいる時期がありました」

 

良馬の出身地を訊ねる質問にフェイトが肯定の返事を返した。

 

リニスやギンガから次元世界や管理局の事、ノアから押収したデータ、記録からある程度は次元世界や管理局の事を理解していたが、たとえ住む世界が違い、魔法が使えようが、人間とて数多の動物の一つに過ぎず、自然や宇宙の力に比べれば、人間の力など微々たるものでしかない。

 

世界が異なるというが、フェイトたちと話してみた限り、彼女たちのメンタリティは自分たちとさほど変わらない。

 

だが、管理局の態勢‥‥ノアの犠牲者の中に物事を多面的に見ることができない年頃の子供を危険が多い前線任務に投入した時空管理局。

 

ミッドチルダが次元世界とやらの「中心世界」と言う考え方‥‥。

 

それはまるで自分たち、魔法の使える人間が神にでもなったつもりでいる傲慢さを感じる。

 

目の前に居るフェイトたちは兎も角として、彼女たちの属する組織に対しては好意的になるのは正直困難ではないかと思う良馬だった。

 

「それで、今後についてなのだが、我々は特別かつ緊急の任務を帯びての作戦行動中だ。申し訳ないが、君たちの仲間が此処に到着するのをのんびりと待っているわけにはいかない」

 

地球側からすればもっともなことで、自分たちが彼らと同じ立場ならばそうするだろう。

 

「だが、君たちが乗っていた艦から通信機器を回収し、それらを通信ポッドとし、近くの宙域に設置し、何とか管理局とは、コンタクトをとるつもりだ」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

フェイトとティアナは揃って良馬に頭を下げた。

 

暫くの間、まほろば に乗艦し、彼らと行動をする事となったフェイトたちにリニスは軍支給品の着替えと艦内制服、ヘルメットとジャケット、気密手袋、ブーツなどの装備一式を持ってきた。

 

「今回の任務は、今日以上に激しい戦闘もあり得ます。この制服は簡易宇宙服の機能もあって、ヘルメットとこの気密手袋とブーツを着用すれば、ある程度宇宙空間でも活動できます。危機管理のためにも着替えておいて下さい」

 

と言われ、フェイトとティアナは、この艦が紛れもなく戦闘艦であることを実感させられた。

 

その時、艦内通信装置(内線電話)の呼出音が鳴った。

 

ギンガがそれに応対すると、厨房のディアーチェからで、食事の準備をするので、その注文をお願いしたいという。

 

ギンガがその事をフェイトとティアナに伝える。

 

正直、喉を通らない気分なのだが、これからの事態に立ち向かうには、腹が減っては戦にならないともいう。

 

備え付けのテーブルの引き出しにメニュー表が有るとの事で早速メニュー表を取り出してフェイトたちに見せる。

 

フェイトは消化の良い中華がゆを頼み、ティアナは野菜のサンドイッチを注文した。

 

あれだけの惨事を体験し、人の死を目の当たりにして、戦争映像を見たのだ。

 

当分二人は、肉料理やトマトソースを使った料理は喉を通らないだろう。

 

食事を注文した後、ギンガは思い出す様にして、フェイトとティアナに言う。

 

「ああ、フェイトさん、ティアナ」

 

「何かしら?」

 

「何でしょう?」

 

「此処(まほろば)の厨房長は、はやてさんにそっくりな方なんですよ」

 

「えっ!?」

 

「はやてさんに?」

 

「はい。それと砲術長はフェイトさんにそっくりな方で、厨房長は砲術長の士官学校の先輩にあたる人なんです」

 

「そんなに?」

 

「まぁ、実際に会ってみれば分かると思います。私自身も初めて会った時、はやてさんとフェイトさん本人かと思いました」

 

ギンガの言うはやてにそっくりな まほろば の厨房長とフェイトにそっくりな砲術長‥‥。

 

その二人にも興味が湧いたフェイトとティアナであった。

 

食事が来る前、一度、良馬は部屋を退室し、フェイトとティアナはリニスとギンガのレクチャーの下、今着ている検診衣から渡された防衛軍の制服に腕を通した。

 

当然、救助者なので、二人にはコスモガンは支給されていない。

 

(うーん‥‥ちょっと恥ずかしいわね‥‥)

 

ティアナは女性用の防衛軍の制服がボディースーツっぽいデザインである事にちょっと羞恥した。

 

 

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フェイトにそっくりだと言う砲術長は後日として、厨房長との邂逅は意外と直ぐに訪れた。

 

着替えが終わった後、少しして、

 

「ほれ、食事だぞ!!」

 

先程、フェイトとティアナが注文した食事を持ってきたはやてにそっくりな厨房長こと、ディアーチェ・K・クローディア。

 

「っ!?」

 

「っ!?」

 

その姿を見たフェイトとティアナは目を見開く。

 

はやてとそっくりと言うから、当初は声か料理の腕が良い程度に思っていたのだが、ディアーチェの姿を見て、そのままの意味だったと思い知らされる。

 

今、自分たちの目の前に居るディアーチェとはやてとは、髪の色と瞳の色が違うだけで、容姿も声もそっくりだった。

 

二人は思わず、

 

「「はやて!?(さん!?)」」

 

声を揃えて、ディアーチェにそっくりで、自分たちの知る人物の名を口にする二人。

 

「ん?ギンガも初めて会った時に我を『はやて』と間違えたが、お主らもか?」

 

ディアーチェは呆れる様な様子で言う。

 

「そんなに我とそのはやてとか言う者は似ているのか?」

 

「え、ええ‥‥」

 

「物凄く‥‥」

 

フェイトとティアナは、ただディアーチェの言葉に頷くしかなかった。

 

「我はそこの金髪が青ひよこに似ていた事に驚きなのだが‥‥」

 

ディアーチェはディアーチェで、フェイトが自分の士官学校時代の後輩に似ていた事に驚いていた。

 

「青ひよこ?」

 

ディアーチェの言う『青ひよこ』と言う単語にティアナはチラッとギンガを見る。

確かにギンガの髪は藍色で青と言えば青っぽくは見えないが‥‥

 

ギンガはティアナの視線に気が付いた様で、

 

「ああ、ディアーチェさんの言うその『青ひよこ』って言う人がこの艦の砲雷長を務めている人なの」

 

「そ、そうなんですか‥‥」

 

(後輩を『ひよこ』って‥‥)

 

後輩をひよこ呼ばわりするディアーチェとひよこと呼ばれ、反論しないフェイト似の人を想像し、その人の性格が何となくスバルと同族なのかもしないと思った。

スバルも訓練校や六課でよくバカをやってはティアナに「馬鹿スバル」と言われていたし、髪の色も青‥‥

 

スバルと同じような性格を持つフェイトさんなんて、管理局にいるフェイトファンの人はどう思うだろうか?と、想像を膨らませるティアナだった。

 

しかし、「アホの子のフェイトさんも良い!!」とか言われて受け入れられそうだ。

 

ディアーチェははやてと容姿が似ているが、料理の腕もそっくりで、ディアーチェの作った食事はとても美味く、フェイトとティアナの緊張をほぐすには十分な効果があった。

 

 

時間は少し進み、フェイト達が所属する時空管理局では‥‥

 

(これは一体、何の冗談だ?)

 

クロノ・ハラオウンは先ほど入って来た報告に自分の気が遠くなる思いだった。

 

自分の義妹のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンが乗った巡航艦、テリオスが新人研修のための航海に出てから少しして、

 

「第37探査部隊が消息不明」

 

その報告が入った。

 

聖王教会のカリム・グラシアのレアスキルの事は自分も知っていた。

 

その中で、つい最近彼女のレアスキルが発動したことも、友人の八神はやてから聞いていた。

 

その内容は次元航行艦乗りとしては、看過できない内容だった。

 

しかし、上層部はその予言を軽視した。

 

そして、何ら変わることなく、日々が流れていたのだが、そんな中でのこの探査部隊の消息不明事件。

 

管理局全体が大騒ぎになる中、すぐさま捜索隊が出動し、最後の通信にあった位置まで行くが、そこで彼らは、探査部隊の残骸はおろか、何も発見することが出来なかった。

 

数日にわたる広範囲で大規模な捜索にも関わらず、探査部隊の痕跡は全く見つからず、管理局は、第58探査部隊の時と同様に突如発生した次元震またはブラックホールに巻き込まれ、消滅してしまったという結論を出した。

 

そんな中、捜索を止め、本局へ帰還中のクラウディアに更なる凶報が舞い込んだ。

 

義妹を乗せ、新人研修に出航した巡航艦、テリオスが行方不明になったという知らせだった。

 

本局へ帰還途中でありながらも、クロノはテリオスの航跡と座標の検証の一方で捜索隊の編成を進め、次元震の鎮静化で大まかな座標が算出できた段階で、自らが指揮をとり、クラウディアを含むXV級次元航行艦三隻で慌ただしく、現場へ急行した。

 

それから実に三昼夜をかけてようやく現場に到着したのだ。

 

だが、現場についてみると、そこにはやはり何もなかった。

 

テリオスは次元震をさけるため、転移したと思われるが、その転移先が次元震の余波の影響で特定することが出来なかった。

 

そこでクロノはフェイトと精神リンクしているフェイトの使い魔であるアルフがいる海鳴の実家ハラオウン家に連絡を入れた。

 

フェイトの状態を知るにはアルフの存在は持ってこいだったからだ。

 

もし、フェイトの身に何かあれば、アルフの身にも何かしらの変化が有る筈だ。

 

「誤報‥じゃ、ないんだよね?」

 

フェイトの遭難の報告を聞き、エイミィ・ハラオウンは夫(クロノ)に弱弱しく訊ねる。

 

テリオス遭難の件についてはリンディの耳にも入り、彼女もフェイトの身を案じている。

 

「そうあってほしいと、今でも思っているがね‥‥」

 

夫(クロノ)のジョークセンスのなさをよく知るエイミィは、この時ばかりは彼の生真面目さを恨めしく思った。

 

「それで、アルフの様子はどうだ?」

 

アルフはフェイトの使い魔であり、万一フェイトが重傷を負えばアルフの体にも何らかの変化が現われるし、フェイトが命を落とせば、主(フェイト)と運命を共にすることになる。

 

「今のところ変わった様子はないけど‥‥」

 

「そうか。でも、しばらくはアルフから目を離さないでいてくれ」

 

「分かった」

 

クロノ自身は、妻のエイミィから、フェイトの使い魔であるアルフの健康状態には何ら変わりないと聞いていたため、フェイトが生きている可能性が高いと確信していた。

 

次にクロノは、フェイト(義妹)の親友である 八神はやて と 高町なのは に事の真相を話した。

 

「そんなっ!?」

 

「それは本当に間違いないんやな‥‥?クロノ君」

 

「残念だが、事実だ‥‥テリオスは『巨大な次元震を回避する‥‥』と言う連絡を最後に、消息を絶った‥‥その後、一切の応答がなくなったし、シグナルもロストした‥‥遭難現場にも言ったが、船体はおろか、残骸の欠片も影も形も無かった‥‥」

 

クロノの報告を聞き、当然二人ともショックを隠せなかった。

 

「フェイトちゃん‥‥ティアナ‥‥」

 

「なのはちゃん!!」

 

よろめき、倒れそうになった なのは を はやて が慌てて支える。

 

はやては、「また覆すことが出来なかった」と悔しそうにつぶやいていた。

 

そもそも六課の時もカリムの予言の中に管理局への襲撃めいたものが含まれていた。

 

それがいつとは分からなかったが、知っていると、知っていないとでは、対処時に大きく違うと思っていた。

 

だが、現実はそんなに簡単ではなく、九月に開かれた公開陳述会の日に、スカリエッティ側の襲撃を受け、地上本部ビルと六課隊舎を同時襲撃され、ヴィヴィオを攫われると言う後手、後手にまわり、最後は何とかスカリエッティとその一味を逮捕出来たからいいものの、完全にこれははやての‥機動六課の戦略的負けと言ってもよかった。

 

そして今回の件‥‥。

 

はやては六課の時同様、管理局‥‥次元航行艦隊に何らかのアクシデントが発生するのではないかというカリムの予言を知っており、様々な手を尽くした。

第37探査部隊が消息不明になったときは、カリムの予言はこの事を指しているのだと思った。

 

だが、現実はどうだ?

 

第37探査部隊もフェイトとティアナが乗ったテリオスまでもが、消息不明になってしまった。

 

自分の無力さを痛感せざるを得なかった。

 

「だが、絶望の結論は時期尚早だ。エイミィの話では、アルフの体調に異変は出ていない‥‥」

 

「そう‥‥」

 

アルフの様子を聞いた はやて と なのは は、僅かに表情を緩める。

 

フェイトとシンクロしている使い魔のアルフの身体に大きな異変がない以上、フェイトの身に重大な危機は起きていないと言っても過言ではないのだ。

 

フェイトが無事ならば、ティアナも無事かもしれない。

 

今後も管理局ではテリオスの捜索は何とか続ける様に頼んでみると、クロノはそう言って通信をきった。

 

 

クロノからフェイトたちが乗った次元航行艦が行方不明になったと言う報告を聞き、はやては辛そうだったが、それはなのはも同じである。

 

今は内々で抑えられているが、いずれは公表され、世間が知ることとなる。

 

「はぁ~」

 

なのはは、家路を辿りながら、これからの事に思いを馳せていた。

 

映像を見た後、なのは と はやて はそれぞれフェイトと特に親しかった人、ティアナが親しかった人に連絡を入れる事となった。

 

エリオとキャロには、はやて が伝えることになり、そしては なのは は‥‥。

 

「フェイトちゃん、ティアナ‥‥」

 

地球のハラオウン家にいるアルフは、ひどく落ち込んでいるものの、特に変わりないと聞いているので、フェイトは何とか脱出できたかも知れない。

 

しかし、ティアナはどうなったのか?

 

アルフの体調に変化が無いと言う事でフェイトは生きているかもしれない。

 

それならば、ティアナも生きているかもしれないと言う希望を抱いたが、時間が経つにつれ、その希望も薄れて来た。

 

敵対魔導師相手ならば、フェイトはもちろん、ティアナもそう簡単に負けるようなことはない。

 

しかし、宇宙空間では‥‥以前フェイトに見せられた映像のような戦闘艦艇に襲撃されたら‥‥?

 

XV級次元航行艦を簡単に撃沈する艦艇が存在することは、あの映像で証明済だ。

もし、フェイトが乗った艦がそんな目に遭っていたら‥‥?

 

それに生きているかもしてないフェイトがいつミッドに帰れるのか全然わからない。

 

今、こうしている間もフェイトやティアナは、どうしているのだろうか?

 

なのは自身もくじけそうな状態で、一人きりの時は涙が滲んでしまいそうになる。

 

しかし、今日はもっと辛い役割を果たさなければならない。

 

一人娘――養女だが――ヴィヴィオにフェイトたちが遭難したことを伝えなければならない。

 

フェイトをもう一人のママと慕っている彼女には余りにも酷だろう。

 

でも、たとえ娘が泣きじゃくっても伝えなければならない。

私は彼女の母親なのだから‥‥

 

そう意気込んでいたが、

 

もう一人、この事実を伝えなければならない人が居た‥‥。

 

訓練校、六課と長い時間をティアナと共に相棒として駆け抜けてきた彼女、スバル・ナカジマにも伝えなければならない。

 

姉(ギンガ)を次元震の事故で失い、今度は親友までも‥‥。

 

きっと、彼女もヴィヴィオ同様泣きじゃくかもしれない。

 

でも、彼女にも伝えなければならない。

 

なのはは、娘とかつての教え子のメンタルケアーを考えながら、どのようにして、伝えるべきかを考えながら、重い足取りで家に続く道を歩いて行った。

 

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