フェイトら管理局組との話し合いも終わった頃、木星から超ワープに必要な実験デバイスを曳航してきたパトロール艦が接近してきた。
「艦長、木星のガニメデ基地より、ワープ機関の実験デバイスが到着しました。曳航してきた艦の艦長から通信が入っております」
「繋いでくれ」
「はい」
パネルには茶髪でボブカットの髪型をした女性士官が映し出された。
「地球防衛軍、ガニメデ基地所属パトロール艦、畝傍艦長の美咲七波です。第二世代型のワープ機関実験デバイスをお届けにあがりました」
パトロール艦、畝傍の美咲艦長が要件を伝えると、
「「えっ!?」」
良馬とギンガは要件よりも美咲艦長の声を聞いて驚いた。
「あ、あの~どうかしましたか?」
「い、いえ。何でもありません。態々ご苦労様です」
良馬はお茶を濁し、体裁を整えた。
((この人‥‥声がティアナ(さん)にそっくり‥‥))
先程、話し合いを行っていた管理局執務補佐官のティアナ・ランスターと今、パネルに映っている美咲艦長は、容姿は似ていないが声だけは二人ともそっくりだった。
目を閉じて、同じセリフを言われたら、恐らく人間の耳では判別できないだろう。
第二世代型のデバイスを受け取り、早速設置を開始する。
デバイスの設置に関しては、ヤマトの大山や真田ら技術班が中心となって進められた。
その間、イスカンダルまでの航路設定がヤマト、まほろば の両艦で話し合われた。
ヤマトがイスカンダルへ向かった航路データがあるので、どの宙域が危険地帯かは既に把握されている。
しかし、事態は一刻も争う為、安全な迂回ルートばかりはとれない。
そこで航路はオリオンのα星、七色星団を経由しながらの連続ワープ航路となった。
しかし、この航路を通るには連続ワープ機関の必要が不可欠だ。
次にそのデバイスの調整を行っている真田は浮かない顔をしていた。
真田によると、改修した第二世代型のデバイスにはある欠陥があった。
第一世代型は正確なワープが出来たが、艦内に人間では耐えられない加速度がかかり、第二世代型は、ガミラスの技術によりその点は改善された。
だが、エネルギー干渉で衝撃を和らげる分、正確なワープが出来なくなった。
送られてきたデータは完全なものではなかった‥‥。
元は完全なデータであったのであろうが、肝心な部分がノイズで掻き消されてしまっていたのだ。
恐らくイスカンダルから地球に届くまでの間に恒星などの出すノイズの影響を受けてしまったのだろう。
元々14万8千光年という距離は通常ならば通信が不可能な距離だ。
だからスターシアは、波動エンジンの設計図をメモリーに入れ、妹のサーシアを使者として地球へ向かわせたのだ。
詳細を聞きたくてもイスカンダルまで送信できる通信設備は地球にはない。
短距離ならば使えるのだが、長距離の連続ワープとなると、その誤差がどれくらい出るのか測定不能で、ワープアウトした所が隕石群や恒星にぶち当たったら、それこそひとたまりもない。
だが、真田は技術者魂に火が入ったのか、何としてでも使用可能にして見せると言った。
地球とガミラスの技術を合わせれば、連続ワープ機関は理論上十分に実現可能なのだ。
真田は大山と共にデバイスを使用可能までに改良しようとしたが、大山はワープデバイスの搭載、波動エンジンの改良は可能だが、それでは時間がかかるので間に合わない。
それならば、引っ張ればいいと言う。
大山は、まず初期型デバイスを搭載した無人艦を正確な座標にワープさせ、その次にそれが作り出す空間歪曲口に同調させた第二世代型搭載艦を送り込む曳航方式を採用させればいいと説明した。
幸い先導する無人艦には雪風・改がある。
雪風は元々古代守が艦長を務めていた艦。
必ず嘗ての主であった守の下まで連れて行っていってくれるだろう。
真田は科学者・技術者としては超がつくほど優秀であったが、機械ばかりに頼る無人艦に対して苦手意識を持った為、雪風・改の存在を忘れていた。
その為、大山の提案した曳航型と言うアイディアをすっかり失念していた。
方針が決まり、早速大山の立てた曳航型ワープ機関が設置され始めた。
その間、まほろば、ヤマト の両艦において、メディカルチェックが行われた。
この航海は訓練ではなく実戦だ。
しかも長距離の‥‥
途中で白色彗星の残党軍との交戦もあり得る。
従って、体調が特に悪い者には下艦を命じ、また、精神的に遠征任務に耐える自信がない者も同じく下艦を命じた。
己の状態を客観的に把握するのも宇宙戦士の能力だ。
無理をした挙句に潰れ、仲間に迷惑をかけることは絶対に許さないが、事前に申し出て下艦した者を低く評価するようなことはしない。
と、良馬は新人にそう確約した。
そして、今回のイスカンダル救援では、ガミラスとの共闘もある。
ガミラスと一緒に戦いたくないと不満を持つ者にも下艦を命じた。
下艦を希望する者は、艦長、副長、医務長、船務科長また各部署のチーフのいずれに申告せよと放送を入れた。
良馬は、フェイトとティアナの二人にも事情を説明し、下艦するかどうかを確認したところ、二人ともイスカンダルへの航海に同行すると言ってきた為、同行を許可した。
もしかしたら、イスカンダルまでの途中で管理局の艦と遭遇する可能性もあるからだ。
今、地球に戻ればギンガの時の様に中嶋家か月村家はフェイトとティアナを預かってくれるだろう。
しかし、それでは確実に管理局との接触は無い。
此処は僅かな可能性に賭けて、星の海で管理局と出会える事を願うばかりであった。
それにフェイトとティアナの二人も実際に自分の目で見て、体験したかった。
管理局ではない、宇宙船同士の戦いを‥‥
それらを見聞することによって、きっと何かが変わる‥‥そう確信していた。
メディカルチェックが一通り終わり、下艦者はそのまま畝傍に移乗し、ガニメデ基地へ帰還する予定となった。
そして、ヤマト、まほろば の下艦者の他にテリオスの乗員の遺体も畝傍に移送された。
地球側が着々とイスカンダルへ救援準備を行っている頃、
マゼラン星雲サンザー星系では‥‥
暴走するイスカンダルを追尾しているガミラス艦隊では、デスラーがイスカンダルのスターシアとコンタクトを取ろうとしていた。
「タラン‥‥スターシアはまだ出ないのか?」
しかし、通信環境が悪いのか、なかなかイスカンダルとの通信が繋がらない。
「もうしばらくお待ちください‥‥出ました」
「・・・・・・ちら・・・・・・ダル・・・・・こちらは、イスカンダル・・・・・そちらは・・・・・・?」
ようやくイスカンダルとの通信が繋がった。
通信当初はやはり通信環境が悪いため、通信内容にノイズが混じったが、やがて正常な通信が可能となった。
「スターシア‥‥私だ。ガミラスの総統、デスラーだ」
「デスラー・・・・生きていたのですか?」
ガミラスがヤマトとの決戦に敗れ、その決戦の中、デスラーは死んだものだと思っていたスターシアはデスラーからの通信に驚いていた。
「スターシア、これ以上イスカンダルに居る事は危険だ。私の船に移るがいい」
「・・・・」
「私を信じてくれ。私は隣の星の友人として君を救いに来た。これは、星を統治する者同士としての友情だ‥‥」
「ありがとう・・・・デスラー。貴方からこのような厚意を示して頂けるとは思いませんでした・・・・でも、私はこの星から離れる訳にはまいりません」
スターシアはデスラーからの誘いを断った。
当初は、全宇宙支配を目論み、守(夫)の故郷をめちゃくちゃにし、使者として地球から此処(イスカンダル)まで向かっていたヤマトの航路を妨害しまくったデスラーからの誘い‥‥何か裏があるのではないかと思ったが、
「何故だ?このままでは、イスカンダルはサンザーに引き込まれてしまう。太陽に飲み込まれてしまえばどうなるか‥‥それこそ火を見るより明らかではないか」
どうやらデスラーは本気で自分たちの事を心配している様子だった。
「私はイスカンダルに生まれ、イスカンダルで生きてきました。この星が有る限り、離れる訳にはまいりません。おわかりでしょう?デスラー。ガミラス星の最後をご覧になった時の貴方の気持ち・・・・私も同じです・・・・」
「デスラー・・・・僕たちはもう、この星と運命を共にする事に心を決めている。もし万が一、君が弟の進に会う事があったら伝えてくれ・・・・『古代守はイスカンダルに残り、スターシアと共に・・・・本当に幸せだったと・・・・』‥‥」
今度はスターシアの代わりに古代の兄、古代守がデスラーと通信を行い、スターシアも自分も、イスカンダルと運命を共にする。
つまり、イスカンダルを枕に死ぬ事を言って弟の進に伝言を頼み、通信を切った。
「総統‥‥どうなされますか?」
「イスカンダルを追い続けろ」
「はっ!!」
デスラーの命令一下、ガミラス艦隊は引き続きイスカンダルを追う。
イスカンダルを追う中、デスラーはガミラスから避難したガミラス市民を乗せた避難船団を小マゼラン星雲へと離脱させた。
この先もあのガミラス星を破壊したあの艦隊が襲い掛かってくる可能性もあり、非武装の避難船団など、格好の的となってしまう。
デスラーは幕僚の一人、ネルン・キーリングに避難船団護衛を命じ、彼にゼルグート級一等戦艦一隻(船団護衛旗艦)、メルトリア級航宙巡洋戦艦十隻、ケルカピア級航宙高速巡洋艦四隻、クリピテラ級航宙駆逐艦三隻を与え、もし、あの敵が避難船団に襲い掛かってきたら、何が何でも市民を死守しろと言明した。
避難船団は、ダール・ヒステンバーガーが指揮を執り、キーリングが指揮する護衛艦隊に守られ、小マゼラン星雲方面へ離脱していった。
イスカンダルのマザータウンの宮殿では、守がコンピューターにより、イスカンダルの動きを観測していた。
「サンザーを中心とする軌道の幅が狭まってきた‥‥サンザーに引き込まれてしまうまで後どれくらいの時間が残されているかまでは分からないが‥‥」
「脱出するなら、今の内ね‥‥」
「何を言うんだ、いきなり。僕たちは‥‥」
「でも守‥‥せめて私たちの‥‥」
スターシアは、少し顔を伏せながら、ある方向へと視線を向ける。
守もスターシアの視線を追うかの様にスターシアが見ている方向へと視線を向ける。
そこにデスラーから再び通信が入った。
「スターシア・・・・今からイスカンダルに向かう。私の言う事を聞いてくれ」
「デスラー‥‥」
「もう一度言うぞ、スターシア・・・・早く私の船に乗り移るのだ。聞こえないのか、スターシア!!」
「スターシア‥‥脱出するなら、君も一緒だ」
「‥‥」
「スターシア、時間が無い。早くするのだ!!」
「いいえ‥‥貴方の方こそ、此処から立ち去って‥‥!!」
そう言ってスターシアは通信をきった。
スターシアはイスカンダルから動くつもりはなく、デスラーは自分がイスカンダルから動かない限り、ずっと後を追いかけ続けるだろう。
そうなれば、デスラーもサンザーに引き込まれてしまう。
いや、彼だけではない。
彼を指導者として支持するガミラスの多くの人々も巻き添えにしてしまう。
だからこそ、デスラーには自分の事は諦めて、引き返して欲しかった。
「私の言う事を聞くのだ、スターシア!!」
デスラーの叫びが空しくゲルバデスの艦橋に響いた。
しかし、スターシアと守の意志が固く、サンザーへと吸い込まれそうになっているイスカンダルから脱出しようとはしなかった。
スターシアの説得に失敗したデスラーであったが、このままイスカンダルを見捨てる等と言う選択肢は無く、彼は次なる一手を打つことにした。
「‥‥タラン」
「はっ」
デスラーが突然タランに話しかけた。
「遊星爆弾の原理を憶えているか?」
と、地球を赤く放射能塗れにしたあの遊星爆弾について訊ねた。
「遊星爆弾‥‥と言われますと、地球侵攻作戦で使用したあの遊星爆弾でございますか?」
「そうだ」
「あれは、まず小惑星の前方にマイクロブラックホールを作ります。そして、マイクロブラックホールの質量誘導により小惑星に運動エネルギーを加え、遊星爆弾とする‥‥っ!?」
タランは遊星爆弾についての説明でデスラーが何を考えているのかが察しがついた。
「まさか総統はマイクロブラックホールでイスカンダルを牽引すると‥‥!?」
「その通りだ、タラン。イスカンダルを救う方法は、もはやそれしかない」
スターシアは梃子でもイスカンダルを離れないだろう。
このままでは、イスカンダルはサンザーに引き込まれてしまう。
ならば、動いているイスカンダルを安全な宙域まで引っ張ればいい。
「しかし、総統、現在我々はマイクロブラックホールの材料となるべき超質量物質を有しておりません」
「かつてのガミラス領だった旧サファイア戦線跡には、まだ超質量物質が多数残っている筈だ‥‥タラン、お前が行くのだ」
「そんなっ!?‥‥このタランに、総統を残して行けと申されるのですか!?此処に留まっていればいつ敵の攻撃を受けるやもしれません!!その事を考えると、旧サファイア戦線跡に向かわれるのは総統の方がよろしいかと思われます。敵はどうやらイスカンダルが目的の様ですから、後を追ってきたりはしない筈です」
タランはデスラーの身を案じ、少しでも敵の危険が少ない方を薦めた。
「ならん!!私は此処に留まり、イスカンダルを見続けなければならんのだ。イスカンダルはガミラス星と共にサンザーの太陽を回る二連星だった‥‥いわば、我らは兄弟!!そして、その一方‥‥我々は母なる星を失ってしまった‥‥残る一方から例え一時たりとも眼を離したくはないのだ‥‥」
だが、デスラーもスターシア同様、イスカンダルの近くからは離れたくないと言う。
「しかし‥‥」
タランが心配しているのはイスカンダルの動きもそうだが、敵は明らかにイスカンダルを狙っている。
恐らくガミラシウムと同じ構成のイスカンダリウムを狙っているのだろう。
その為、敵が来るのは十分わかっている。
それを防ぐ為の戦力を心配しているのだ。
ガミラスからの避難船団護衛の為、かなりの数の艦船をその護衛に当ててしまった。
もちろんこれが正しい判断だと言う事はタランも十分理解している。
それでも、今の残存兵力で不安が解消されるかと問われるとそれは、否である。
「此処に残る戦力の事なら心配するな‥‥既にマゼラン一帯に、我が軍に合流する呼びかける通信を放っていたのを忘れたのかね?マゼラン各地に広がるガミラスの生き残りたち‥‥屈辱の日々を耐えきって来た我らが同胞は必ず‥‥必ず此処に集結してくれる筈だ」
しかし、デスラーは同胞たちを信じている様で心配無用だと言う。
「‥‥」
「タラン‥‥お前にしか頼めぬのだ」
「分かりました」
デスラーのこの言葉が決め手となり、タランは旧サファイア戦線跡に向かう決心をつけた。
「ふふふふふふ‥‥」
「総統?」
「皮肉なものだな、タラン‥‥地球を我がガミラスのものとするために造り出した遊星爆弾の技術がイスカンダルを救うかもしれないとは‥‥」
「総統‥‥」
「旧サファイア戦線跡へと向かう準備を!!頼んだぞ、タラン。無事に帰って来てくれ」
「総統こそ、御無事で‥‥このタラン、必ずや任務を果たして帰ってまいります!!」
ガミラス式の敬礼をデスラーにして、旧サファイア戦線跡へと向かう準備を進めるタラン。
そしてタランはガイデロール級航宙戦艦、カンプルードⅢに移乗し、超質量物質捕獲の為にデストリア級重巡洋艦を二隻くっつけた様な艦、特務艦、ハーゲルを連れて、旧サファイア戦線跡へと向かった。
(頼むぞ‥‥タラン)
見送くるデスラーはタランに全幅の信頼を寄せて、遠ざかって行くタランたちの姿が見えなくなるまで、タランたちを見送っていた。
イスカンダルの位置から旧サファイア戦線跡までは距離が有ったため、タランは艦隊をある程度イスカンダルから離すと、ワープにて旧サファイア戦線跡に来た。
マゼラン星雲 旧サファイア戦線跡
「減速終了、座標誤差許容範囲‥‥タラン様、旧サファイア戦線跡です」
「何時訪れても美しいな‥‥此処は‥‥」
タランは外に広がる旧サファイア戦線跡を見て呟く。
「死に絶え‥‥もはや輝く事も叶わぬ無数の黒色矮星‥‥そしてそれらが放出した星間ガスから生まれたばかりの若く青い恒星たち‥‥まさしく、宇宙の死と再生を垣間見れる場所‥‥」
「黒色矮星‥‥超質量物質星の走査を開始します」
「超質量物質捕獲艦、ハ―ゲル、磁力ケージの展開準備完了です」
ハ―ゲルは早速、超質量物質捕獲の準備を始める。
「うむ‥‥友軍への呼びかけは行ったか?」
超質量物質捕獲の準備が進めている報告を聞きながら同時にこの付近の宙域にいるかもしれない友軍への参軍要請の状況を聞く。
「はっ‥‥この宙域に到着直後より召集をかけておりますが‥‥反応はありません‥‥このサファイア戦線跡には超質量物質以外の資源はほとんどありません‥‥恒星は若すぎ、居住可能な惑星もありません。この一帯では、我々の同胞は生き残っていないのかもしれません‥‥」
「‥‥」
「タラン様?」
オペレーターの報告を聞き、タランは黙り込んで、外の景色を睨むように見ている。
その様子にオペレーターは恐る恐る訊ねる。
「たった二年前‥‥たった二年前にはガミラスはマゼラン一帯を‥‥そして銀河系の三分の一を手中に収める大帝国だったのだ‥‥」
「‥‥」
「それが今ではかつて勝利を収めたこのサファイア戦線跡においてさえ、ガミラスの灯火一つ見る事はできんのか‥‥」
「‥‥」
帝国の繁栄と落日を経験したガミラスの将兵たちは、皆黙ってタランの呟きに耳を傾ける。
そこへ、
「タラン様、手ごろな黒色矮星を発見しました。大きさ、比重共に申し分ありません」
と、調査していたハ―ゲルからちょうど良い黒色矮星があったと連絡が入った。
「超質量物質の採取により、星が崩壊する危険性はないか?」
「はっ、問題ありません」
「うむ、いくら死に絶えた星とは言え、その星が経てきた悠久の歳月には敬意を表さねばな‥‥よし、目標の黒色矮星に接近!!超質量物質捕獲艦ハ―ゲル、磁力線ケージ開放!!重力臨界制御、開始!!」
「磁力線ケージ開放!!」
「重力制御、開始!!」
ハ―ゲルが黒色矮星に接近し、作業を開始した。
「ハ―ゲル、超質量物質捕獲開始しました。磁力線を縮退してマイクロブラックホール化を開始します!!縮退完了まで21時間!!」
「焦らず、かつ急いで作業を進めよ。縮退に失敗しては元も子もないが、我々が少しでも遅れれば、それだけイスカンダルに‥‥そして総統閣下の身に危機が迫るのだ!!」
「はっ!!」
ハ―ゲルが作業を進める中、
タランが座乗するガイデロール級航宙戦艦ガンプルードⅢのレーダーが艦船の反応を捉えた。
オペレーターは、最初は友軍かと思ったが、そのエネルギー反応を見て、顔色を変えた。
「た、タラン様!!」
「どうした?」
「レーダーに反応が!!パネルに映します!!」
「‥‥敵‥‥敵だと!?この旧サファイア戦線跡にか!?」
「敵のエネルギー放射パターンは、ガミラス星を破壊した艦隊のものと一致します!!」
接近してくる艦船は友軍のものではなく、あのガミラス星で無断でガミラシウムを採取し、今なおもイスカンダルを狙っているあの謎の艦隊であった。
「奴らめ!!‥‥サンザー星系だけでなく、マゼラン一帯に勢力を伸ばしてきているのか‥‥!?」
「敵が加速を開始!!気付かれました!!」
「いかん、縮退作業中のハ―ゲルは動かせんぞ!!それどころか、縮退作業中のマイクロブラックホールに被弾でもすれば‥‥」
「だ、大爆発を‥‥!!」
「総員、戦闘配置につけ!!敵も超質量捕獲艦の存在に気付いているはずだ!!何としてでもハ―ゲルを守り通すのだ!!」
「しかし、戦力が違いすぎます!!」
確かにオペレーターの言う通り、戦えるのはこのガンプルードⅢと搭載している僅かな数の艦載機のみ‥‥。
「だが、引く分けにはいかん‥‥!!サンザーで待っておられる総統閣下のためにも‥‥ガミラスの盟友イスカンダルのためにも‥‥引く訳にはいかんのだ!!」
だが、事態はさらに悪化した。
「我々の後方に、更にワープアウト反応!!敵の援軍と思われます!!」
敵が後方にも表れたのだ。
「挟み撃ちかっ!!」
タランは拳を握り、苦虫を潰したような顔で言う。
「ワープアウトしてきた艦隊より入電‥‥た、タラン様‥これは!!」
通信兵が入電してきた文を読んで声をあげる。
「降伏の勧告なら受けぬと答えよ!!」
ガミラス軍人として、祖国を滅ぼした敵にむざむざ降伏などしない。
降伏するくらいならば、一人も多く敵を道連れにしてやると、意気込んでいたタラン。
しかし、
「いいえ!!‥‥読み上げます!!『我、貴艦ノ召集ヲ受信セリ!我、長キ屈辱ニ耐エコノ時ヲ待ツ!』『我等全テ、再ビ偉大ナルガミラスノ旗ヲ掲ゲラレル事ヲ誇リニ思ウ!!』」
後方の艦隊のエネルギー反応は友軍のもので、味方識別信号も送って来た。
「識別信号確認!!タラン様!!後方の艦隊は友軍です!!」
てっきり後方の艦隊も敵で挟み撃ちかと思ったが友軍が駆けつけてくれた事にガンプルードⅢの艦橋は歓喜に満ちた。
「‥‥返信しろ‥‥『我等もまた、貴君を誇りに思う。ガミラスに‥‥栄光を!!』」
「はいっ!!」
「勝機は我等に有る!!数の上では、以前不利だが、数だけにものを言わせる烏合の衆など、我等の敵ではない!!ガミラスの鋼の如き強き意志、彼奴等に思い知らせてやるのだ!!」
友軍の戦力は、デストリア級航宙重巡洋艦一隻、ケルカピア級航宙高速巡洋艦一隻、 クリピテラ級航宙駆逐艦三隻と言う少数だが、ガミラス側の士気は大いに高まっていた。
「タラン様!!小型のエネルギー反応多数!!敵が展開した対艦爆撃機と思われます!!」
「むぅ‥‥小癪な!!ハ―ゲルには一機たりとも近づけるな!!残らず撃ち落とすのだ!!」
ガンプルードⅢからは搭載していた空間駆逐戦闘機DDG110 ゼードラーⅡが全機発艦し、ハ―ゲルの直俺についた。
艦隊は爆撃機の母艦となる空母を撃沈するため、出撃した。
艦載機を発艦させるには、小惑星やアステロイドベルトが少ない宙域が好ましい。
タランはこのサファイア戦線跡の宇宙海図を見て、どこに空母が潜んでいるのかを検討した。
そこに目についたのが、アステロイドとアステロイドの間に、障害物の無い宙域があった。
(空母を展開出来る宙域は此処だ!!)
タランは敵の空母が潜んでいるであろう宙域へ、針路を向けた。
その間に敵の駆逐艦と巡洋艦がまるで行く手を塞ぐように展開し、タラン艦隊を攻撃してきた。
「小癪な!!蹴散らせ!!」
敵の艦隊はどうやら戦艦を配備していないようで、敵艦隊はタラン艦隊に決定的なダメージを与えられない状況下にいた。
一方、ハ―ゲルの方も直俺のゼードラーⅡが奮戦し、敵の対艦爆撃機を近づけなさせない。
またハ―ゲル自身も全くの非武装と言う訳ではなく、
防御力は、戦艦並みに高く、艦砲は備えていなくとも対空砲は備えているため、敵の爆撃機もそう簡単にハ―ゲルを撃沈させる事が出来ない。
やがて、敵の迎撃艦隊網を突破した、タラン艦隊が敵の空母を捉えた。
「全艦!!空母のみに砲火を集中せよ!!他の艦には構うな!!」
タランの命令一下、各艦艇は空母の傍にいる護衛艦を無視し、空母のみにショックカノンとミサイルを浴びせた。
戦艦を含む多数の艦艇のショックカノンとミサイルを浴びた敵の空母は瞬く間に火達磨となった。
タランが敵空母を撃破した直後、
ハ―ゲルの周りに居た敵の爆撃隊は急に針路を変更して、ハ―ゲルから離れて行く。
味方の空母の窮地だと思い、離れたのか、それとも空母の仇打ちに行ったのか、敵の行動は不明だったが、何時引き返してハ―ゲルを再び襲うか分からないため、ゼードラーⅡは敵の爆撃機を追っていく。
敵の爆撃機を追い掛け、ゼードラーⅡとハ―ゲルとの間が有る程度開いたその時、
「敵機!!本艦直上!!急降下!!」
ハ―ゲルのレーダーが、自艦に接近する敵機の姿を捉えた。
「バカなっ!?敵機は別方向に言った筈‥‥」
ハ―ゲルの艦橋で動揺が広がり、
「タ、タラン将軍にすぐに救援を求めろ!!」
「は、はいっ!!」
ハ―ゲルはすぐにタランに救援を求めた。
ガイデロール級航宙戦艦 ガンプルードⅢ 艦橋
「なにっ!!ハ―ゲルの至近距離に敵機だと!?」
「はい!!別方向から突然現れたようです!!」
「まさか、あの空母は囮か!?」
タランはこの時、敵の空母はあの一隻ではなく、もう一隻いたのではないかと、悟った。
やはり、味方の戦力が少ない分、索敵に穴があった。
「敵機!!ハ―ゲルに接近!!」
「くそっ、こいつら囮かよ!!」
ゼードラーⅡのパイロットたちは今、自分たちが追撃している敵の爆撃機が囮なのだと知ると、急いでハ―ゲルの直俺に戻ろうとした。
しかし、敵の爆撃機が爆撃機にも関わらず、まるでゼードラーⅡを足止めするかのように、戦いを挑んできた。
「くそっ!!こいつら!!」
ゼードラーⅡのパイロットたちは、本来艦載機戦向きの機種ではないにも関わらず、艦載機戦を挑んできた敵爆撃機のパイロットたちに苛立ちを覚え、歯ぎしりしながら敵の爆撃機を撃ち落としていった。
しかし、ハ―ゲルに迫る敵の新たな爆撃機を撃ち落とすには間に合わない。
一方、タランの方も、
「急げ!!」
ハ―ゲルからの救援を聞き、タランの方も急ぎ、ハ―ゲルの下へ急行しようとしたが、先程撃沈した空母を護衛していた護衛艦隊と此処まで来る途中に遭遇した迎撃艦隊の残存艦がタランたちを足止めするかの様に立ちはだかった。
「ええい、どこまでも小賢しい奴らだ!!」
敵の動きにタランも憤慨したが、目の前の敵艦を沈めない限り、ハ―ゲルの下へ向かえないため、早急な敵艦の撃沈を行う事となった。
「何をしているのかは、分からないが危ない芽は早めに摘み取るに限るぜ!!」
敵の爆撃機のパイロットはハ―ゲルに照準を合わせながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
敵の爆撃機のパイロットが爆弾装のハッチを開け、後は発射ボタンを押すだけとなったその時、
バババババババ‥‥
ダダダダダダダダ‥‥
何処からともなくレーザ―が飛んできて、敵の爆撃機を攻撃してきた。
「ぐわっぁぁぁぁ‥‥」
突然の奇襲により、ハ―ゲルを奇襲しようとした敵爆撃機の第二陣を撃墜していった。
「何事だ?」
自分たちを奇襲してきた敵の爆撃機が更に別方向からの奇襲により撃墜された事に戸惑うハ―ゲルの乗組員。
すると、彼らの目には、
「友軍機だ!!」
「味方だ!!」
そう、味方の戦闘機、空間格闘戦闘機DWG262 ツヴァルケが映った。
ツヴァルケは次々と迫りくる敵の爆撃機を撃ち落していく‥‥
「どういう事だ!?敵の艦載機は引き離した筈だぞ」
一方、第二陣の爆撃機を発進させた敵空母では、突然の敵機の奇襲により味方の爆撃機隊が壊滅状態となった報告を聞き、艦長が憤慨していた。
そんな中、
「敵艦!!本艦に急速接近!!」
「なに!?」
オペレーターの報告に驚く艦長。
しかし、時既に遅し、空母の近くには、褐色のガイデロール級航宙戦艦一隻、同じく褐色のゼルグート級一等航宙戦闘艦一隻、メルトリア級航宙巡洋戦艦一隻、デストリア級航宙重巡洋艦三隻、ケルカピア級航宙高速巡洋艦一隻、クリピテラ級航宙駆逐艦三隻の艦隊が迫って来た。
新たなる敵の援軍に空母の艦長は慌てふためいた。
当初は此方の方が、数が優っていたのだが、敵はそんな事はお構いなしに味方の艦船を次々と沈めていき、いつの間にか此方側が劣勢になっていた。
そんな中、さらに敵の援軍が現れたのだ。慌てるのは当然であった。
「た、退却だ!!」
「しかし、まだ艦載機隊を収容していませんが?」
艦長はまだ味方の艦載機部隊に撤収命令を出していないにも関わらず、この宙域から撤退しようとする。
「バカか?貴様は!?連中が狙っているのは我々なんだぞ!!艦載機の連中を待っていたらあっという間に撃沈されてしまうぞ!!死にたいのか!?貴様はっ!?」
空母はまだ戦闘宙域で戦っている味方の爆撃機隊を見捨ててこの宙域からの撤退を図るが、
「ぜ、前方から敵の更なる増援です!!」
「なにっ!?」
逃走を図る空母の前に更にガミラスの援軍、ケルカピア級航宙高速巡洋艦が一隻、デストリア級航宙重巡洋艦二隻が立ちはだかった。
「何故探知できなかった!?」
艦長はオペレーターに「居眠りでもしていたのか?」と、物凄い剣幕で訊ねる。
「アステロイドに上手く隠れていた模様です!!」
前方のガミラス艦は空母に対し、一斉射撃をしてきた。
「回避!!」
空母は被弾しながらも針路を変更し逃げ回る。
だが、
「前方にも敵艦隊!!これはっ!!」
「どうした!?」
「これは、先程友軍の空母を撃沈した敵の主力艦隊です!!」
「なっ!?」
後方から自分達を追い掛けてくる敵は、上手く空母を誘導して、タランが率いる主力部隊の射線に誘導していたのだ。
「攻撃来ます!!」
タランが率いる主力部隊、援軍として現れたガミラス艦隊。
この二艦隊の集中砲火により、
「あ‥‥あ‥‥こ、こんなバカなぁぁぁぁー!!」
艦長の絶叫を最後に空母は爆散し、宇宙を漂う残骸となった。
敵艦隊を殲滅したタラン。
「敵の全滅を確認」
オペレーターの報告でこの宙域にいた敵の完全殲滅を確認後、
「よし、ハ―ゲルの損傷を調べろ!!」
「はっ!!」
そしてハ―ゲルに被害の確認をとった所、
「超磁力線ケージ、超質量縮退装置共に正常に稼働中。幸運な事に目だった損傷は見受けられません」
「そうか‥‥よし、縮退作業を継続させろ。だが、警戒態勢は崩すな‥‥それと、援軍艦隊に物資を補給してやれ」
「はっ!!」
ハ―ゲルを守るようにこの宙域に集まったガミラスの戦闘艦艇がハ―ゲルの傍に寄り添う。
その中に、先程ハ―ゲルのピンチに馳せ参じた艦載機隊の母艦であろう、一隻のガイデロール級航宙戦艦が接近してきた。
その艦の色はタラン自らが乗艦する同じガイデロール級航宙戦艦よりも艦齢が古そうに見えた。
そんな中、
(総統閣下は無事だろうか?そして、ヤマトは‥‥)
と、タランがサンザー星系に残して来たデスラーと地球側の動向を思案していると、
「タラン様」
「何だ?」
「援軍に来た友軍艦艇から通信が入っております」
「繋げ」
「はっ!!」
通信を送って来たのは例の褐色のガイデロール級航宙戦艦からだった。
「貴官はっ!?」
モニターに映った指揮官の顔を見て、タランは声をあげる。
「第307哨戒艦隊司令官、ヴォルケ・コルサックであります」
モニターに映った司令官の顔は、かつてガミラス軍冥王星基地司令官、ヴァルケ・シュルツにそっくりの男だった。