星の海へ   作:ステルス兄貴

55 / 294
四十六話 α星の戦い

時空管理局・本局 次元航行艦司令本部。

 

その一室には高町なのは・ヴィヴィオの母娘、スバル、シグナム、ヴィータにグリフィス・ロウランの六人が詰めていた。

いずれのメンバーも非番だった為、此処に来たのだ。

ヴィヴィオに至っては、なのはが珍しく学校を休ませて此処に連れてきた。

生存が絶望視されているテリオスの他の乗組員の家族とは別フロアの部屋なのは仕方ないところだ。

 

さらに、展開されている通信ウィンドウにはフェイトの被保護者のエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、そして 八神はやて の顔が映っていた。

 

「フェイトちゃんたちが生きている可能性が高いのは嬉しいんやけど、よりにもよって、助けてくれたらしいのが『地球防衛軍』とはなぁ‥‥」

 

「でも、私たちの故郷以外に次元の海の中で『地球』が存在するなんて信じられないよ‥‥」

 

「まあ、そろそろクロノから連絡があるだろう。ある程度状況証拠も揃っていれば有り難いが‥‥」

 

『‥‥』

 

エリオとキャロは涙ぐんでいるが、フェイト生存の可能性が高くなったことに一縷の希望を掴んでいるようだ。

それは此処に顔を見せている者に限ったことではない。

皆が顔を合わせてから、大体三十分位経っただろうか、新たな通信ウィンドウが開き、緊張した面持ちのクロノが現れた。

 

「「「『クロノ(君)(提督)!!』」」」

 

いきなり大勢から詰め寄られ、一瞬ギョッと驚いたクロノだが、すぐ気を取り直し、皆を諭す。

 

「皆の気持ちはわかるが、少し落ち着け。現在わかっている事は全て話すから」

 

そう言って、フェイトたちが記録録画した映像をその場にいる皆に見せた。

フェイト、ティアナの二人が自分たちは無事だと説明した映像を見て、

 

「映像を見た限りじゃ、フェイトちゃんたちは大した怪我はしていないと思うし、脅迫されて無理矢理言わされているようにも見えない。私は、フェイトちゃんたちが地球防衛軍という人たちに救出されたと信じるよ。クロノ君」

 

「そうか‥‥なのはが言うなら、きっとその通りだろう」

 

クロノの表情も僅かに緩む。

 

「じゃあ、フェイトママたちは助かったの?なのはママ?」

 

元気を取り戻したヴィヴィオ に なのは は、

 

「まだはっきりとは言えないけどね。フェイトママもティアナもきっと助かっているよ」

 

よかったーと声を上げたヴィヴィオ に なのは は表情を改めて言い聞かせる。

 

「でもね、ヴィヴィオ。フェイトママたちは良かったけど、他の大勢の人たちは助からなかったの‥‥他のみんなは悲しい思いをしているから、喜ぶのはこのお部屋の中だけにしようね?」

 

「う、うん‥‥」

 

ヴィヴィオもなのはの言う言葉の意味を理解したのかシュンとする。

 

フェイトの報告では、まほろば に生きて収容されたのは自分を含めて僅か二人‥‥

他の乗員の家族たちの悲嘆を思うと喜びを表情に出すことは憚られる。

 

「それで、テスタロッサたちを襲った犯人の目星はついているのか?」

 

テリオスを襲撃した下手人の正体を質すシグナムにクロノは、『まずはこれを見てくれ』と別の映像を出した。

クロノが端末の再生スイッチを入れた。

再生されたのは、先日遭難したテリオスが所属不明の艦船に襲撃された時の艦内外の映像とブリッジの音声信号だ。

通信ポッドにフェイトらの五体満足な姿の映像と共に遭難したテリオスに何が起きたのか状況を説明する為に同じく添付されていたものだった。

前半のテリオスが攻撃を受ける場面では、皆表情を憤怒と苦痛に歪めていた。

しかし中盤、地球防衛軍の艦船や宇宙戦闘機が敵艦に攻撃を始める映像に変わると、一同は画面に釘付けになる。

そして、火達磨になった敵艦が高エネルギーの束に串刺しにされ、次々と爆発していった時は、皆一様に声を失った。

やがて、攻撃が終わると、そこには大小無数の金属片と艦体をへし折られて漂う大型艦が映し出されていた。

皆は当初、これは作られた映像なのではないかと思ったが、

しかし、

 

「これはとても作られた映像ではなく、まさしく本当にあった出来事だ」

 

と、事前にチェックしたクロノのお墨付きがあり、各々が所持しているデバイスもフィクション映像ではないという見解を出している。

 

「テリオスを嬲り殺しにした艦隊をろくに反撃させないまま撃破するとは‥‥」

 

シグナムが呻くように呟いた。

 

「まだ断言はできないが、これは以前、テレザートで見たミサイル艦隊と同じ勢力の艦だと思っている」

 

「あの時の艦か‥‥」

 

はやてたちは以前、フェイトからテレザートにて全体をミサイルで武装した艦がヤマトと名乗る艦の超エネルギー砲を受けて消滅した映像を見せてもらっている為、下手人の正体を理解できた。

そして、撃破された艦船の残骸が宇宙を漂っている映像を見ていたなのはは、急いで両手を使いヴィヴィオの両目を覆った。

画面にはテリオスを襲撃したらしい敵艦の乗員らしい死体とテリオスの乗員らしき人の死体が漂っていたからだ。

それも手足や身体が変な方向に曲がり、身体が裂けて内臓がはみ出ている状態や上半身と下半身が分かれている状態など、とても子供には見せられない状態で‥‥

エリオとキャロも思わず目を閉じてウィンドウから目を背けている。

大人たちですら顔を歪める有様であるのだから、流石にこれは子供の教育上よろしくない。

なのははヴィヴィオにトラウマを植え付け無い様に両目を手で塞いだのだ。

クロノはしまったという表情になり、慌てて映像を切る。

なのははヴィヴィオと共に部屋を退室し、はやてもエリオとキャロに退室を命じた。

 

「す、すまん‥‥」

 

子供には辛い映像を見せてしまった事にクロノは謝罪する。

 

「フェイトさんたちが生きていた事に関しては嬉しい事ですが、どうやって地球防衛軍に救助されたのでしょう?」

 

スバルがクロノに質問する。

彼女らは、フェイトたちが無事と言う報告を聞いただけで、そのどのような経緯があったのか知らないし、フェイトも肝心な部分が抜けているのか自分たちが無事と言う事だけで、救助された経緯を映像の中では話していない。

 

「考えられるのは、この艦隊がテリオスを襲撃している所にヤマト、まほろば の両艦が通りかかり、戦闘の結果撃破された‥‥というところだろう」

 

クロノの仮説に在室の一同は無言で頷いた。

 

ヴィヴィオ、エリオ、キャロ、なのはの四人が退室したのを確認した後、クロノは映像を再生する。

やがて、大破したテリオスの近くに一隻の艦船が姿を現す。

その艦は艦首に巨大な発射口らしき大きな口を開け、三連装の砲身着き砲塔が前に三基、後ろにも二基を装備した水上艦を意識して造られた様な艦影をしており、大きさはゆうにXV級を凌ぎ、その姿はまさに戦う為だけに生まれてきた生粋の戦闘艦と言う印象を惜しげもなく出している。

テリオスはブリッジに直撃弾を受けた為、艦内の様子はサウンドオンリーになってしまっている。

しかし、会話の内容からフェイトとティアナ幸いは軽傷で済んだようだ。

その後、地球防衛軍に救助され彼らの艦、まほろば に収容されたのはほぼ確実になった。

 

そして、通信ポッドの最後の映像はこのポッドが設置されていた小惑星から離れていく三隻の艦の姿だった。

一隻は先程見た大型戦闘艦、もう一隻も同じくタワー状の艦橋、煙突らしき構造物、三連装の砲身つきの主砲と副砲を装備した水上艦に近いフォルムの艦。

もう一隻は、葉巻状の船体に砲身がついた連装式の砲塔や長く伸びているアンテナを着けた小型艦。

 

「それで、どの艦がヤマトなんでしょう?」

 

スバルが首を捻るがシグナムが即答した。

 

「ヤマトに関しては恐らく海鳴で暮らしていた頃、映像や写真で見た戦艦大和に似たフォルムをしているあの艦だろう‥‥」

 

シグナムはヤマトと思しき艦を指さす。

 

「私もそう思うわ」

 

はやてもシグナムの予想に賛同する。

 

「そうなると、消去法で、あのXV級よりも巨大でヤマトに似た艦が、まほろば‥‥」

 

「それじゃあ、まほろば と同行しているヤマトっちゅう船は、テレザートでミサイル艦隊を消滅させたあのヤマトと同一の船なんか?」

 

「可能性は大だ」

 

「信じる、信じない、は別として、この謎の敵艦を保有する勢力と地球防衛軍は、我々より格段に進んだ科学技術と軍事力を持っていることは間違いないですね?」

 

グリフィスがクロノに問うように言う。

 

「ああ、本局や“海”の上層部には信じようとしないお歴々もまだ居るがいい加減現実を認識してもらわないとな‥‥」

 

クロノがやれやれと言った感じで言う。

ただこの時、そんな技術力と軍事力を持った勢力を管理局がこのまま野放しにしておく訳がないと言う疑念をこの場にいた誰もが持たなかった。

それほど、フェイトたちの生存や目にした現実が凄まじかったのだ。

 

「私らは‥‥管理局は知らぬ間に『井の中の蛙』になっとったんとちゃうやろうか?」

 

クロノに続いてはやてが一人、ポツリと呟く。

 

「主‥‥」

 

「はやて‥‥」

 

「日本の義務教育の中で宇宙のことも一応は学んだはずやのに‥‥管理局に入って、宇宙(次元の海)は無限の空間であり未知の空間が広がっている事をすっかり忘れとった‥‥私ら管理局は宇宙(次元の海)を全て見通していた訳やないのに‥‥」

 

「耳が痛いが、はやての言うとおりだな。でも、差し当たっての最優先事項は、テリオスを襲った敵について知る事と、何とかフェイトたちとコンタクトを取ることだ」

 

「何か当ては有るんですか?クロノ提督?」

 

グリフィスがクロノに訊ねる。

 

「明確なあてはない。だが、恐らくヤマト と まほろば は任務を終えた後、母国へ帰る途中に此処を通る可能性も十分考えられる。打てる手は可能な限り打っておかなければな‥‥しかし、フェイトたちが救出されたのは確実だし、救出した地球防衛軍も戦闘力は兎も角、思想的に危険なところはなさそうだ」

 

「だが早期に まほろば、ヤマトないし、地球防衛軍と連絡をとり、テスタロッサたちの身柄返還要請をしなければ‥‥」

 

シグナムがクロノを見たが、クロノは厳しい表情を崩さない。

 

「残念だが、彼らの本拠地である地球の位置すら判らない。現時点では、すぐに連絡をとるのは不可能に近い。近々、我々も通信ポッドのあった付近を捜索して、何か手がかりが無いか調べる事になっている。それにこの通信ポッドには次元通信ブイを残しておく。フェイトかランスター補佐官ならわかるパスワードを入力したから、回収されれば連絡がとれるだろう」

 

クロノは今後の予定をはやてたちに伝える。

 

「でも、通信ポッドがある場所は、本局から二、三日かかるんですよね?例え、連絡が取れたとしても、ヤマト や まほろば はその場で待っていてくれるでしょうか?もし、彼らの本国から至急戻れと命令されていたら、当然そちらを優先すると思うんですが‥‥」

 

スバルが最もらしい疑問をクロノにぶつける。

そう、ヤマト と まほろば は地球防衛軍の所属であり、時空管理局が彼らに指示・命令をする権利はない。

むしろ、こちらの要請より地球防衛軍司令部の指示・命令が優先されるのは至極当然だ。

だが、そんな当たり前の事を理解し、納得しない管理局の高官も居るだろう。

 

「まぁ、それは当然だろうな。立場が逆であれば我々もそうする。でも、連絡手段があれば、フェイトたちや地球防衛軍とも話ができるし、座標がわかれば迎えに行ける。しかし、まずは話ができなければ何も始まらないんだ」

 

クロノの言葉に全員が頷いた。

 

「フェイトたちが助かっているってのは良いけどよぉ、一連の遭難事件については本局や“海”のお偉いさんたちはどう考えてんだ?」

 

今度はヴィータがクロノに質問する。

JS事件解決以降、管理局の次元航行艦や各管理世界間を往来する輸送船の遭難や消息不明の事件が多発しており、管理局はその殆どを突発性の宇宙気象や次元震の影響と発表してきたが、それもそろそろ限界が来ている。

今回のテリオスの件を含め、恐らく遭難した次元航行艦や消息不明となった輸送船は、いずれも所属不明の敵勢力に襲撃されたと見て間違いはないだろう。

まぁ、中には本当に宇宙気象の影響を受けて、遭難した船もあるだろうが‥‥。

ヴィータの質問にクロノは、

 

「さすがに皆、青くなっていたよ。管理局が誇るXV級がこうも簡単にやられたかと思ったら、その襲撃した連中も地球防衛軍の艦の前に碌な抵抗も出来ずに全滅した。しかも、その大きさは大型艦では、管理局の艦船を凌ぐかほぼ同じ大きさにも関わらず、加速力、機動力とも段違いに優れており、武装も極めて高熱量の光学兵器が主体だ」

 

と、クロノの説明にまたも頷く一同。

 

「しかも、短時間で高エネルギー波を連射している‥‥管理局の艦船はおろか、あの『聖王のゆりかご』ですら穴だらけにされて撃沈されてしまうだろう。あと‥‥」

 

『あと?』

 

クロノが濁した『あと』と言う言葉を皆がオウム返しすると、彼は深刻な表情を浮かべる。

 

「あと、困ったのは次元航行艦の艦長の中に遠くの世界や探査任務を渋る者が出始めていることだ」

 

遠征の調査任務に出た二つの探査部隊が消息不明となっている現状から、遠征任務を忌避する局員が居ても不思議ではない。

度重なる次元航行艦の喪失と多数の乗組員の殉職・行方不明は管理局の“海”に深刻な打撃を与えていた。

また、管理局屈指のエースであるフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官も遭難し、管理外世界の宇宙船に救助されたらしいが現在も連絡不能と言う事実がその打撃を加速させていた。

時空管理局が最新最強と喧伝しているXV級次元航行艦をあっさり撃破できる強力な宇宙戦闘艦とそれを運用できる軍事組織が管理局のコントロールを受けずに存在する事が明らかになれば、管理世界全体に衝撃と不安をもたらし、管理局への不信感を募らせるだけでなく、反管理局組織や次元犯罪者に要らぬ勢いを与えかねないからだ。

 

「次元世界探査は兎も角、遠くの管理世界に行かないというのは現地の治安維持上も良くない。こちらの方は影響が甚大だよ。どんなに強い魔導師でも宇宙空間で乗っている次元航行艦をやられてしまってはどうしようもないからね‥‥」

 

(次元世界の法と正義の守護者、管理者などと気取っている内に底無し沼に踏み込んでしまったのかも知れないな‥‥管理局は‥‥)

 

クロノは暗然と呟いた。

 

「正直、信じたくない気持ちですが、現実から逃避して対応を誤れば、我々も同じ運命に見舞われることになるでしょうね‥‥」

 

グリフィスもポツリと呟き、皆は頷いた。

 

その頃、別フロアにある大会議室にはテリオスの乗組員の家族が集まり管理局からの説明を受けていた。

こちらは生存がほぼ絶望的であるため、あちこちで怒号や泣き声が上がっていた。

 

 

その頃、星の海では‥‥

 

まほろば に収容されたフェイトたちには、通常航行中は医務室や展望室を含む生活区画内での自由行動が認められていた。

フェイト、ティアナの二人は、太陽系赤道祭以降、食事は会場であった艦内の大食堂で乗組員と一緒にとるようになった。

きっかけは、やはり太陽系赤道祭でのフェリシアとの共演である。

改めて、フェイトの顔を見た乗員たちは、最初は驚いていた。

しかし、少しずつだが打ち解けつつある。

人見知り?をするフェイトや警戒感が強いティアナにとっては、珍しい事だが、何時までも人見知りをしていたり、警戒してはそれこそ、怪しまれるので、割り切ったと言う部分もある。

まぁ、大抵彼女たちが食事をする際は、フェリシア、リニス、ディアーチェ、ギンガ、良馬のいずれかの幹部乗組員が同席して、それとなく目を光らせている。

 

「それにしてもこのO.M.C.Sって凄いですね」

 

ティアナがO.M.C.Sの事を褒め称える。

管理局の艦で長期航海に出ている場合、やはり食糧貯蔵の関係から、日が経つにつれ、食事はレトルトや缶詰、味気の無い宇宙食へとなって行く。

しかし、このO.M.C.Sは新鮮な食糧を無尽蔵に製造してくれるある意味ロストロギア級の機械である。

 

「そうね‥‥ねぇ、ディアーチェ。この機械の原理ってどうなっているのかな?」

 

フェイトが同席していたディアーチェにO.M.C.Sの原理を訊ねた。

厨房責任者のディアーチェならば、O.M.C.Sの原理を知っていると思ったからだ。

 

「‥‥知らない方が幸せだと思うぞ」

 

と、O.M.C.Sの原理についてノーコメントの見解を示した。

まぁ、軍艦の装備なのだから、O.M.C.Sも軍事機密の一つなのだろうとフェイトとティアナはそう思った。

 

管理局の艦船もそうだが、ヤマト、まほろば の乗員も比較的若者が多く、四十代以上はヤマトの医務長の佐渡と機関長の山崎、まほろば では機関長の井上ぐらいである。

大部分はフェイトと同年代か年下で、訓練学校を卒業したばかりの十八歳という者も少なからず乗り組んでいた。

話に聞いたヤマトの初航海も古代ら乗組員の多くが、当時十八~二十代で、実戦経験が少ない者たちや実戦の経験が全くなかった者も居たと言う。

そして太陽系赤道祭にて、お酒を浴び、酔っぱらうと言うロボットにしては、あり得ない行動をした分析ロボットのアナライザーは当初、ヤマト乗り組みの予定はなかったのだが、出発直前に押しかけて、当時のヤマト艦長、沖田十三に直訴した。

普通ならば、許可など出す筈はないのだが、何と沖田艦長は、その場でアナライザーに対し乗艦許可を出したと言う。

しかも即決で‥‥

前代未聞の大事業を手探りで成し遂げようとするのだから、杓子定規に規則を振りかざすだけではダメで、人間として懐が大きい人でなければヤマトの艦長は務まらなかったのだろう。

その状態で往復約三十万光年の航海を成功させたのだから、彼らのスキルやメンタル、当時の艦長の統率力は称賛に値するとフェイトは思った。

管理局ではとても真似出来ない。

 

イスカンダルを目指すヤマト と まほろば、雪風・改はヘリオポーズを過ぎ、オリオンのα星近海へ進出していた。

 

オリオンのα星‥‥その星は、ペテルギウスと言われ、別命、『オリオンの願い星』と言われ、昔の人は地球から見たこの星にいろいろな願いをしていた。

M型の赤色超巨星で、変光星でもあり、星自体の形状が変化する脈動変光星、中でも半規則的に変光するSRC型に分類されている。

かつて、この宙域においてガミラスはこの周囲に強力な磁力線バリアを張り、ヤマトの航路を遮断しつつ、逃げ道をα星の存在する宙域一本に絞り、ヤマトの後方からガス状生命体を送り込りこんだ。

ガス生命体は、ガミラスがミルベリア星系で発見された原始的なガス状生命体を兵器開発局が改良して作り上げた生物兵器で、物質を変換・同化・吸収して無限に増殖する特性を持っていた。

デスラーは、このガス生命体によって食われるか、それともα星のコロナ溶鉱炉で溶けて消滅するかの選択をヤマトに迫ったが、ガミラスのミスは、このガス生命体が生命体とは言え、知的部分が全くなく、見境なく餌に喰らいつく性質しか持っていなかった為、ヤマトよりも質量エネルギーが大きい、α星へと食らいつこうとし、自らα星のコロナ溶解炉へと突入して燃え尽きたと言うガミラスにとっては無様な醜態を晒した。

ガミラスが崩壊した今でこそ、α星の周囲を囲っていたあの強力な電磁バリアは機能を停止している為、今回は最初のイスカンダルへの航海の時の様にα星の真上を通る危険な航路をとっていない。

そんなα星近海でヤマトの艦橋では、最初のイスカンダルへの航海の事を思い出したのか、

 

「オリオンα星ペテルギウス‥‥最初の航海の時、ここでデスラーの放ったガス生命体に襲われたんだったな‥‥」

 

「そうだな‥‥今となっては懐かしい思い出さ」

 

島と古代は昔の思い出に耽りながら目の前で太陽のように燃えるα星を見ている。

ヤマト、まほろば、雪風・改は此処でワープを行い次は一気に七色星団まで行く予定だった。

その為、現在は機関の総チェック中であった。

 

「総員に告ぐ、艦の機関チェックが完了次第、ヤマトは七色星団までのワープに移る。総員、ワープ準備!!」

 

古代が次のワープ予定地点を確認し、艦内放送を流す。

 

「古代君‥‥ちょっと待って!!」

 

ワープ準備をしようとした時、レーダー担当の雪が古代に『待った』をかける。

 

「どうした?」

 

「α星の向こう側に、大きなエネルギー反応があるのよ‥‥」

 

雪がコスモレーダーでα星付近に異常なエネルギー反応を発見した。

 

「α星の重力レンズ効果で星が放出するエネルギーが屈折して見えているのでは?」

 

北野がただの自然現象ではないかと訊ねる。

 

「それが、エネルギー源が動いているのよ。もうすぐα星の陰から出てくるわ‥‥」

 

雪の報告どおりα星の陰から黒いモヤの塊が出てきた。

 

「な、なんだ‥‥あれは?」

 

「黒い‥‥モヤのような‥‥ガスのような‥‥」

 

「ま、まさかガス生命体の生き残りじゃあ‥‥」

 

ヤマトの艦橋がざわつく。

確かに見た目は最初の航海時に見たガス生命体と変わらないからだ。

そこで、真田が空間スキャナーを使い謎の黒いモヤの正体を探る。

本当にガス生命体の生き残りなのか?

それとも未知の宇宙物質なのか?

そして、結果が出た。

 

「むぅ、すごいエネルギー密度だ‥‥ただし、生命反応は感じられん。これはガス生命体ではない。これは‥‥暗黒物質で出来た原始星そのものだ!」

 

「どういうことです?真田さん?」

 

「たかが二年でこれだけの自然現象が起こるはずが無い‥‥あきらかに人為的なものだ」

 

真田がこの異常な現象を人為的だと突き止めた時、太田がレーダーで捕らえた艦影を発見した。

そしてその艦隊から強力な磁力線が暗黒物質とペテルギウスに向け放射されていることも確認できた。

 

「採掘しているんだ!!あの艦隊はペテルギウスからエネルギー資源を抜き出そうとしているんだ!!古代、これは一大事だぞ!!」

 

真田の仮説によるとこのままペテルギウスのエネルギーが抜き出されれば、ペテルギウスは予定よりも早く超新星化しハイパーノヴァと呼ばれる大爆発を起こすと考えられ、ペテルギウスがもし、ハイパーノヴァを起こせば地球にもその被害が及ぶと言う。

しかも壊滅的な被害を齎す程の‥‥

その迷惑な採掘行為を行っていた相手のエネルギー波長パターンがデスラーから送られてきたガミラス星で無許可に資源採掘を行っていた艦隊と同じものだと判明した。

つまり、今、目の前に居る連中は、他の星系の生命体の事など、意にも介さない、傲慢な資源盗掘集団と言う事になる。

問題なのは、地球から、14万8000光年から離れたマゼラン星雲にいた敵と思しき艦隊が太陽系のすぐそばまで居ると言う事は、相手の勢力は想像以上に広がっていると言う事になる。

古代は相原にエネルギー採掘をしている艦隊に対し警告を送るよう指示した。

それと同時にいつでも戦闘が行える臨戦態勢を命じた。

 

ペテルギウスにて、エネルギー採掘を行っていたのは円盤を思わせる艦影の艦で、その甲板上には砲身着きの砲塔を備えている事から、れっきとした戦闘艦である事が窺える。

 

 

暗黒星団帝国 巨星エネルギー資源採掘艦隊・第二十四師団 左翼艦隊旗艦・戦艦エルドラB

 

「クーギス司令、星系に突然出現した謎の艦隊より電文を受信しました。現在、翻訳中であり、翻訳終了まで65メルを要します」

 

「うむ、続けよ」

 

通信士は電文の翻訳を続ける。

 

「プラント稼働32%に到達。熱核エネルギーから暗黒質量へのエネルギー変換、順調です」

 

オペレーターが採掘状況を報告する。

 

「うむ、これだけエネルギー変換率が高い恒星も珍しい。わざわざ銀河系の辺境まで出向いた甲斐があるというものよ。これで本隊が例のイスカンダリウム採掘に成功すれば、我が帝国の戦闘資源は事実上無尽というわけだ!!」

 

「クーギス司令、電文の翻訳が終了いたしました」

 

「読み上げよ」

 

「はっ」

 

通信士が母国語に変換した電文を読み上げる。

 

『貴艦ハ星系ノ平穏ヲ脅カシテイル。採掘ヲ続行スレバ、ハイパーノヴァノ可能性ガ大。即時二恒星カラノエネルギー採掘を停止スル事ヲ求ム』

 

と、内容はこのままエネルギー採掘を続ければハイパーノヴァが起こる可能性があるので、ただちに採掘作業を止めろというものだった。

 

「フハハハハ‥‥兄上どう思う?」

 

その電文の内容を聞くと、クーギスは高笑いをし、右翼側に展開している双子の兄に通信を入れる。

 

 

暗黒星団帝国 巨星エネルギー資源採掘艦隊・第二十四師団 右翼艦隊旗艦・戦艦エルドラA

 

弟から通信を受け取った右翼艦隊司令のルーギス。

 

「無視するわけにもいくまい。反応からするとちゃんと武装した艦隊のようだぞ」

 

その言動から採掘を中止するのかと思ったクーギス。

 

「では兄上はこんなたわけた通信を聞き入れると?」

 

「ふっ、まさか‥‥ちょうど採掘任務で退屈していた所だ。ちゃんと相手をしてやろうではないか。勿論、言葉ではなく力でな‥‥」

 

「フハハハハ、それでこそ兄上よ」

 

ルーギスとクーギスの両艦隊はまずジャミング電波を流してきた。

そして、左右両翼から接近してくる。

しかもエネルギーの放出パターンにも変化があり、砲門を開いている。

これは明らかな敵対行動であった。

防衛軍艦艇の長距離レーダーはジャミングの為、使用不能、近距離レーダーに切り替える。

そしてタイムレーダーを使い、ジャミングされる前に探知した敵の配置図を探知すると、左右にそれぞれ十二隻ずつ、計二十四隻。

数の上では圧倒的に不利である。

そこで、雷王作戦同様まず敵旗艦を撃破し、敵艦隊の指揮系統を混乱させ、残る敵艦隊を撃滅する戦法をとることにし、エネルギー反応から敵旗艦らしい戦艦を探知する。

するとエネルギー反応から敵艦隊には二隻の旗艦級戦艦が存在した。

それから察するに、どちらかの艦隊旗艦が潰されても、もう片方が全ての指揮を引き継げる。

デスラーから送られてきた交戦データから、推測すると敵の武装はガミラス、彗星帝国、地球防衛軍と同等レベルの強力なものだった。

指揮系統を混乱させないまま接近戦を挑んだら、たちまち蜂の巣にされてしまう恐れがある。

なんとか、二つの旗艦をほぼ同時か、一気に叩かなければならない。

戦力を分散すべきか、集中して各個撃破すべきか‥‥。

 

「本艦は、はこれより正体不明の艦隊と交戦状態に入る!!総員戦闘用意!!繰り返す!!」

 

総員配備を下令する良馬の声とともにアラームが鳴り響き渡る。

 

「「‥‥」」

 

フェイトはティアナと共に、医務室で緊急一斉放送を聞いた。

戦闘になったら、自室か医務室にいるよう彼女たちは指示されていたからだ。

医務室などがある居住エリアは最も防御力が高い。

そしてフェイトたちは今、ペテルギウスに迫っているハイパーノヴァの事も知らされていた。

その件については、フェイトとティアナも採掘をしている艦隊に怒りを覚えていた。

管理局のロストギアの回収にも強引な手段も行われていたが、他の星系の生命を無視してまでの強引なエネルギー採掘は管理局でも行わない。

それを平然と‥‥しかも当たり前の様に行っているあの艦隊に怒りを覚えるのは局員以前に人として当然の感情であった。

しかし、地球防衛軍、ガミラス、ガトランティスを含め、またも脅威となる星間国家が現れたのではないかと不安も抱くフェイトだった。

フェイトが不安を抱いている中、

 

(エンジンの音が甲高くなった・・・・?)

 

室外の音が殆ど遮断されている医務室だが、フェイトの耳には回転数が上がった波動機関の音が届いていた。

 

(速度を上げている‥‥これから戦うから‥‥?)

 

流石は元次元航行艦の艦長の義兄を持つだけはある。

聞き慣れた管理局の艦船の魔力炉の運転音とは違う‥‥管理局の艦船とは根本から異なる、戦うためのエネルギーを生み出す心臓音‥‥。

ズシンという衝撃が続けざまに伝わってきたのはそれから間もなくの事だった。

 

 

防衛軍は結局、戦力を二分する作戦をとりクーギス艦隊をヤマトが受け持ち、ルーギス艦隊を まほろば が受け持つ事となった。

 

敵の艦隊‥‥左右どちらか、または両方なのか、空母が居た様で、そこからは敵の戦闘機が出迎えるかの様に来襲してきた。

敵戦闘機の対処は まほろば と ヤマトのコスモタイガー隊、雪風・改が引きうけ、艦隊は一路、敵艦隊へと進撃していく。

その中で、ヤマトの速度が急に落ちた。

 

「おい、どうした、北野!!スピードが落ちているぞ!!」

 

古代が北野に訊ね、北野は慌ててシステムをチェックするが、異常らしい異常は見つからないし、自分もミスをした覚えはない。

 

「そっちじゃありません。古代さん。機関部です!!」

 

機関長の山崎がスピードの落ちた原因が機関部のミスである事を瞬時に見抜いた。

 

「何をやっとる徳川!!この大事な時に!!」

 

山崎が機関室の太助を叱咤する。

 

「すみません!!レ、レバーを間違えまして‥‥!!」

 

「ば、ばかもん!!」

 

やがて、ヤマトは直ぐに速度を元の巡航速度に上げた。

 

一方、まほろば の方はルーギス艦隊を捕捉していた。

敵はアステロイドの向こう側に展開していた。

そして、この角度から波動砲を撃ってもペテルギウスに影響のない角度に居た。

まほろば としては好都合であったが、敵にとっては運が悪い位置だった。

 

「波動砲へエネルギー注入‥モードは収束から拡散モードへ移行‥‥」

 

「了解、波動砲へエネルギー注入開始。パイパスチャージャーへと接続、チャージを加速中!!」

 

アステロイド帯のおかげで敵の砲撃は来ないし、波動砲の射程は敵の主砲の射程外だった。

 

この世界での宇宙戦艦同士の戦いを医務室のモニターで見ていたフェイト、ティアナ、の二人は息を吸うのも、瞬きをするのも忘れたかのようにモニターをジッと見ていた。

そこに、

「フェイト、ティアナさん、これを‥‥」

 

と、リニスが二人に閃光ゴーグルを渡す。

 

「ゴーグル?」

 

渡されたゴーグルを見て、フェイトたちは首を傾げる。

 

「どうやら、まほろば は波動砲を撃つつもりです。念の為、目を保護する為に着けて下さい」

 

と、リニスも原田もゴーグルをつける。

モニターをつけていなければ、窓のない医務室でゴーグルをつける必要もないのだが、今はモニターをつけている。

そのモニターには今まさに まほろば が拡散波動砲を撃とうとしている映像が流れている。

モニター越しに波動砲の発射時に発する際に起こる眩い閃光で目を悪くする可能性があるので、リニスはゴーグルを配ったのだ。

リニスの説明を聞き、二人は急いでゴーグルを着けた。

やがて‥‥

 

「波動砲、発射準備完了!!」

 

波動砲の発射準備が整った。

今回波動砲のトリガーを引くのは新人の星名だった。

星名は緊張した面持ちでトリガーを握る。

しかし、エネルギー調整は機関長の井上がやってくれるし、照準は砲雷長のフェリシアがやってくれる。

後は彼がやるのは艦長の発射命令がでたら、トリガーを引くだけであるが、やはり初めて波動砲を撃つのだから緊張して当たり前である。

 

「波動砲発射!!」

 

良馬の発射命令を受け、星名は波動砲のトリガーを引いた。

すると、艦首の発射口から眩い閃光と共に拡散波動砲が発射された。

 

「ば、バカな‥‥バカなぁぁぁっ!!」

 

ルーギスの断末魔と共にエルドラAを含む、ルーギス艦隊は一瞬の内に消滅した。

 

ルーギス艦隊の消滅は直ぐにクーギスにも伝わった。

 

「兄上‥‥兄上ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

クーギスの絶叫がエルドラBの艦橋にこだました。

 

「「‥‥」」

 

拡散波動砲の威力をモニター越しとは言え、今この場で見た二人は言葉がなかった。

ヤマトの波動砲や土星圏での戦いで拡散波動砲の映像を見たが、やはり、「凄い」の一言しかうかばない。

波動砲の威力をまじまじと見たティアナは、あれは夢なのではないかとさえ、思ってしまう。

 

(相変わらず恐ろしい破壊力ね‥‥)

 

(あんな兵器を持つ勢力と敵対したら‥‥)

 

フェイトとティアナの脳裏には、拡散波動砲を受けて壊滅する管理局の次元航行艦の姿が浮かんだ。

 

まほろば が敵艦隊の一方を撃破してからヤマトの方も、

 

「艦首波動砲‥発射!!」

 

波動砲にて、敵艦隊を撃破した。

しかし、またもや機関部のミスで出力調整に不備があり、敵艦隊を全滅するには至らなかった。

 

「く、クーギス様!敵の超エネルギー砲が本艦に‥‥うわぁぁぁぁー!!」

 

クーギスの乗るエルドラBの船体の脇を波動砲が掠め船体の一部が消滅、融解した。

 

「動力五%へ低下!!クーギス様、これ以上は艦が持ちません!!」

 

「おのれっ!!おのれぇぇぇっ!!」

 

「クーギス様、脱出艇で離脱を!!」

 

「こんな奴等に‥‥こんな奴等ごときに‥‥!!」

 

「クーギス様!」

 

「‥‥っ、残存艦に連絡!無念だが、ここは撤退だ!」

 

クーギスは沈みかけるエルドラBから近くの巡洋艦に移乗し戦線を離脱した。

そしてクーギスら乗組員たちが退艦した後、まるで待っていたかのようにエルドラBは爆沈した。

 

戦闘終了後、敵の残存艦隊を ヤマト も まほろば も追わなかった。

元々の任務は敵の殲滅ではなくイスカンダルの救援で、α星での戦闘はエネルギー採掘を止める事だった。

敵が去ったこの状況でα星からのエネルギー採掘を中止させることが出来たと言うことで、α星での戦闘は終了したのだ。

これ以上無駄な戦闘を続ける必要はなかったのだ。

しかし、

 

「古代、大変だぞ」

 

「どうしました?」

 

「あの、暗黒物質‥‥あれはどうも、敵のエネルギープラントらしいのだが、敵が居なくなった直後から暴走を開始した様なんだ」

 

「なんですって!!」

 

「徐々に軌道がズレ、ペテルギウスに近づきつつある。このままではいすれペテルギウスにぶつかってしまうぞ!!」

 

「でも、元はペテルギウスのエネルギー物質なんでしょう?それが元に戻るだけじゃないんですか?」

 

と、太田が真田に質問するがそう簡単な事では無い様だ。

 

「いや、あれだけの高圧縮エネルギーが一気にペテルギウスに戻れば、それこそハイパーノヴァが起きてしまう!!」

 

それならば、波動砲で撃てばよいのではないかと思うがそれもダメであった。

真田曰く、

 

「相手は高密度なエネルギーの塊だ。波動砲で吹き飛ばすのはあまりにも危険だ」

 

との事だ。

もはや打つ手は無かった。

 

「疲れたなぁ‥‥」

 

ペテルギウスの戦闘後、ヤマトの機関室では戦闘後の機関の修理、総チェックが終わり、新人の機関員たちが皆ヘトヘトになっていた。

中には機関室の床で大の字で寝ている者も居た。

 

「ああ、疲れたよ‥‥親父はガミガミうるさいしなぁ‥‥」

 

「それはそうと、聞いたか?α星の事‥‥」

 

「ああ、大爆発を起こすんじゃないかって事だろう?どうなるんだろうなぁ?」

 

新人の機関員たちがα星について話していると、

 

「ん?何の話だ?」

 

太助が訊ねて来た。

 

「あれ?聞いてないのか?実は‥‥」

 

新人の機関員が太助にα星の事を話すと、太助は大急ぎで艦橋へ走って行った。

 

 

敵のエネルギー採掘プラントはあと二時間で重力均衡点を突破する。

プラントは本格的にペテルギウスへの落下を開始した。

このまま此処にいては、ハイパーノヴァの衝撃波で甚大な被害を受けてしまう。

ペテルギウスでハイパーノヴァが起きたとしてもその影響が地球に届くのは500年以上先だと言う。

それだけの時間が有れば、人類が地球を脱出する時間は十分にある。

500年後、もしかしたらそこに居るかもしれない自分たちの子孫に迷惑をかけてしまうと言う後悔とハイパーノヴァを防げなかったと言う悔しさを抱きながらワープにてこの宙域から撤退しようとした時、

太助が突然第一艦橋に飛び込んできて、

 

「山崎機関長!!ちょっと、どいて下さい!!」

 

と、機関長席から強引に山崎をどけると、必死に機器を操作し始めた。

 

「なんなんだいきなり、お前は!!非常時だってのに!!」

 

太助の行動に思わず声をあげる山崎。

 

「非常時だからですよ!!頼みますからカミナリもゲンコツも後にして下さい!!」

 

と、ヤマトのメインコンピュータにアクセスし、イスカンダルでの航海時、父が残した航路データを引き出し、かつてこの宙域に残されていたガミラスのバリア装置へエネルギーを送り込みバリア発生装置を稼働させ、でプラントを鳥籠の様に囲んだ。

やがてあのプラントはバリア装置にエネルギーを吸い出され、消滅してしまうだろう。

そして、バリアも再びエネルギー切れを起こして機能を停止する。

ヤマトの出力やガス生命体ですら、抜け出せない強力なバリアだ。

あのプラントがペテルギウスにこれ以上、接近する事はもうないだろう。

地球がハイパーノヴァからの脅威から救われたと言う事に、まほろば、ヤマトの乗員たちは喜んだ。

その知らせを聞き、この世界の地球とは縁も所縁もないフェイトたちもホッと胸をなでおろした。

しかし、ガミラス星の崩壊原因を作ったあの艦隊が太陽系付近にまで浸出していることから、今回のイスカンダル救援の任務はそう簡単には終わらないだろうし、また新たな脅威が地球へと向けられているのではないかと、不安に思う古代や良馬であった。

 

徳川前機関長の残した遺産ともいうべきデータ‥‥

それに気づいた息子の太助‥‥

まさに徳川親子二代が地球をハイパーノヴァの危機を救ったと言っても過言ではなかった。

その立役者の太助はと言うと‥‥

 

「はぁ~‥‥」

 

機関室で何やら落ち込んでいる様子だった。

そこに、

 

「よう、英雄。えらく元気が無いじゃないか?」

 

と、大山が声をかけてきた。

 

「あっ、トチローさん。いえ、戦闘中にエンジン出力超でえらくヘマをやらかしたもんですから‥‥すぐに親父みたいにはなれないもんですね‥‥」

 

「まぁ。代わりに大手柄を立てたんだから良いじゃないか‥‥おおっと、いけね」

 

大山は誰かの気配を感じたのか、その場から隠れた。

 

「徳川!!今回の仕事ぶりは何だ!?」

 

其処に、現れたのは機関長の山崎だった。

 

「は、はい!!申し訳ありません!!」

 

「‥‥と、まぁ、本当ならゲンコツの一発でも食らわす所なんだが、今回はよしとしよう。バリアの件はご苦労だったな」

 

と、山崎は、戦闘中での太助のミスを不問にし、反対に今回の功績を労った。

 

「はぁ、でもあれは僕の手柄と言うより、親父の手柄ですから‥‥」

 

「いや、お前の手柄さ。いいか、機関員に求められるのは一体何だ?正確さ?技術力?それらは確かに必要だ。だが、重要なのはそれだけじゃない。本当に大切な資質とは、そんな時でも、臨機応変に動ける事なんだ‥‥何せこんな気分屋のエンジンと付き合っていかねばならんのだからな」

 

「‥‥」

 

山崎と太助はヤマトのメインエンジンを見上げる。

 

「あのデータはわしも閲覧した事があった‥‥本来ならば。気づいて当然の事だったんだ。真田副長や森レーダー長だって過去の交戦記録を調べれば掴めたのかもしれん。だが、臨機応変に考え、実際にあの答えを見つけ出したのはお前だけだったんだ。もっと自信を持て、そして頑張って親父さんに追いつき、追い越すんだ‥‥いいな?」

 

「は、はい‥‥ありがとうございます!!」

 

上官から褒められ、少しは自信がついた様子の太助。

 

「よし、来い。祝いに佐渡先生の所でパアっと飲むぞ」

 

「えっ?でも、僕はまだ未成年ですよ」

 

「じゃあ、ソフトドリンクでも飲め」

 

「そりゃ、不公平ですよぉ~」

 

「うるさい!!大体、お前の機関員としての技術力は20点以下なんだぞ!!よく訓練学校を卒業できたもんだ」

 

「そ、そんなぁ~」

 

と、結局山崎に注意されつつも、太助は彼と共に佐渡の居る医務室へと向かった。

 

「まっ、俺がしゃしゃり出るまでもなかったか」

 

機関室を後にする二人を見ながら大山はそう呟いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。