星の海へ   作:ステルス兄貴

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文章が無駄に長い為、誤字脱字等が含まれ、読者の方々には不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございません。

此方でもチェックはしているのですが、どうしてもチェック漏れが生じてしまう次第であります。

こんな誤字脱字が含まれる話ですが、今後ともよろしくお願いします。



四十八話 サイレンの魔女

私はジュラ‥‥

 

空間を全速で飛ぶ私を見る者がもし、いたとしたら

 

それは、断続するグリーンの炎の尾を引いた流星だと思ったに違いない‥‥

 

 

私はジュラ‥‥

 

地球人が教えてくれたイスカンダルの波動エンジンが後尾の隔壁の奥で鈍い‥‥

 

そして快いうなりをあげていた‥‥

 

大マゼラン雲から銀河系まで、14万8千光年の距離がある‥‥

 

それでも私はどうしても行かねばならない‥‥

 

母なる銀河のふところに、あの‥‥

 

あのヤマトが帰り着く前に‥‥

 

私はしばしまどろむ‥‥

 

ヤマトに追いつくまでのあいだ‥‥

 

私の母が残してくれた記憶端子を、私の脳中枢に接続して‥‥

 

こうして眠ればヤマトと私と‥‥

 

そして私の母のあいだに起こった今までの物語を‥‥

 

夢の中でみることが出来るだろう‥‥‥

 

眠り、そして夢から醒めた時‥‥

 

私は再びヤマトに巡り合うのだ‥‥

 

私はジュラ‥‥

 

 

 

 

私はジュラ‥‥

 

私にはわかっていた‥‥

 

デスラー(父)の心も、母の心も‥‥

 

母はデスラーを憎みながら、それでも彼をひたすら愛し‥‥

 

そして、けなげな地球人たちも愛していた‥‥

 

あの鋼のような沖田艦長の‥‥

 

生きて故郷の土を踏むつもりのない決意も、母は知っていたのだ‥‥

 

やがて、デスラーのガミラス星はヤマトとの戦いに敗れ‥‥

 

ヤマトは、放射能除去装置コスモクリーナを持って地球への帰路についた‥‥

 

そう‥‥私の父、デスラーが最後の戦いを生き残り、ヤマトを追っている事も知らずに‥‥

 

だから、私もヤマトを追ったのだ‥‥

 

‥‥でも、ほんとうはどうしてヤマトを追ったのか、その理由は私にもわからない‥‥

 

ヤマトを追い、デスラー(父)の事を知らせようとしたのか‥‥

 

デスラーの‥‥父の船を追って、共にヤマトと戦おうとしたのか‥‥

 

自分の心なのに、その心は永久にわからない‥‥

 

私がヤマトに追いついた時‥‥

 

夢から醒めた時‥‥

 

幸か不幸か、最後の戦いは既に終わっていた‥‥

 

‥‥‥‥

 

私は父にも、ヤマトにも間に合わなかったのだ‥‥

 

父の船はその影もなく、目の前に広がる銀河が‥‥

 

そして彼らの星、彼らの母なる地球へと帰ってゆくヤマトだけが遥かに見えていた‥‥

 

 

 

 

私はジュラ‥‥

 

空間を全速で飛ぶ私を見る者がもし、いたとしたら‥‥

 

それは、断続するグリーンの炎の尾を引いた流星だと思ったに違いない‥‥

 

私はジュラ‥‥

 

父を愛し、地球人を愛した宇宙の娘‥‥

 

私がこれからどこへ行けばいいのか、教えてくれる者はいない‥‥

 

私はジュラ‥‥

 

その信ずるままに、ガミラスの栄光と共に死んだ、偉大なデスラーの娘‥‥

 

私はジュラ‥‥

 

 

 

 

七色星団にて敵の妨害があったが、何とか無事に七色星団を通過してマゼラン雲近海まで来たヤマト と まほろば。

 

此処からは通常航行と小規模のワープにてイスカンダルへと向かう予定となっていた。

 

マゼランに入ってからはあの円盤状の艦船からの襲撃もなく、順調なペースである。

 

(ようやく此処まで来たか‥‥‥)

 

古代はマゼラン星雲入り、ようやくイスカンダルがもうすぐなのだと思いつつ、最初のイスカンダルへの航海で、この付近であったある出来事を思い出した。

 

(そういえば、あの娘と会ったのもこの近くか‥‥元気にしているだろうか?)

 

今回の予定航路には入っていないが、この付近にある、旧ガミラス領ユークレシア孤立星系‥‥その第一番惑星“サイレン”‥‥

 

その惑星に幽閉されているような生活を送っていた一組の母子がいた。

 

彼女たちはジレルと言う星の出身で、名前を母親の方はメラ、その娘のジュラと言った。

 

母親のメラは他人の頭の中の考えを感知する能力を有していた。

 

それは、例え百万光年離れていても指向性増幅器の力を使えば大群衆の一人一人の頭の中の考えを正確に読み取ってしまうほどの能力だった。

 

その上、相手の性格や経験に合わせて幻影まで見せる事が出来た。

 

そんな彼女の能力を恐れたからこそ、デスラーは彼女をこのサイレンの星に幽閉したのかもしれない。

 

娘のジュラはガミラスとの混血の為か母親の能力をそこまで強くは引いていない様子だったが、何が切っ掛けでその能力が開花するか分からない為、母親のメラと共にサイレンの星に幽閉された。

 

ヤマトがイスカンダルへ向かう途中、メラはヤマトに幻影を送り込んだ。

 

そして、普通の人間ならば逃げ出す所をヤマトは幻影の原因であるサイレンの星へと向かってきた。

 

ヤマトのサイレン星接近の報告にデスラーは慌てた。

 

メラの口からガミラスの機密情報が漏れると思ったからだ。

 

その反対にデスラーはメラにヤマトの詳細なデータを要求したが、メラはそれには決して応じなかった。

 

デスラーは直ちにサイレンの星付近の艦隊をヤマトに差し向けるが、何分小規模な艦隊だった為にヤマトのサイレン接近を防ぐ事は難しいと判断してある決断を下した。

 

それは、ヤマトの接近をどうしても防げない様ならば、ヤマトではなくサイレンの星を破壊‥つまりメラとジュラを抹殺せよと言う命令だった。

 

命令を下した後、デスラーは苦渋の決断だったと項垂れた。

 

例え、厄介な能力を有していても自分が一度は愛した女であり、その女の間に出来た子供は紛れもなく自分の娘なのだから‥‥

 

しかし、デスラーの命令は実行される前に艦隊はヤマトとの戦闘で全滅し、サイレンの星は破壊されずに済んだ。

 

ヤマトが降下する直前、メラは自らの命を絶った。

 

それは、彼女なりにデスラーに見せた誠意なのかもしれない。

 

ガミラス、そしてヤマトの詳細なデータを持っていたのはメラただ一人だった。

 

メラが自らの命を絶ったのは自分の頭の中にあるガミラスの詳細データをヤマトに渡さないための行動だった。

 

そして、自分よりもスターシアに心を奪われ、自分から心が離れていく夫に対しての最大限の抗議だったのかもしれない。

 

残されたジュラにヤマトの乗員はイスカンダル製の波動エンジンを組み立てた小さな宇宙船を造り、それをジュラに与えた。

 

サイレンの星にはもうジュラ一人になってしまった。

 

その為、その宇宙船を使って父の居る星へと向かうように言ったのだ。

 

ジュラは自分の父がデスラーである事をヤマトの乗員には言わなかった。

 

一人サイレンの星に残ったジュラに後髪を引かれる思いを抱きながらも、ヤマトはイスカンダルを目指し、サイレンの星を後にした。

 

 

(無事に父親のいる星に辿り着けただろうか?あの娘は‥‥?)

 

と、星の海を見ながらジュラの身を案じる古代だった。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 女性士官予備室

 

「‥‥ナ‥‥‥ティ‥‥ア‥‥‥ティアナ‥‥‥」

 

就寝中、ティアナは誰かに名前を呼ばれ目を覚ました。

 

フェイトが自分を起こしたのかと思ったが、隣のベッドにフェイトの姿がなかった。

 

「?」

 

誰も居ない部屋から自分を呼ぶ声‥‥。

 

空耳かと思っていると、

 

「ティアナ‥‥ティアナ‥‥」

 

電気が消えた暗い部屋の中からまたもや自分の名を呼ぶ声がしてきた。

 

しかも、それは男の声だ。

 

男性乗員の誰かが自分に不埒な行為をしに来たのかと思ったが、女性専用居住区画は出入り口に厳重なロックがある為、そう簡単には男性乗組員は入って来ることはできない。

 

ならば、この声は誰の声だろうか‥‥?

 

それにこの声は何処か聞き覚えのある声だった。

 

「ティアナ‥‥」

 

暗闇に目が慣れてくると、暗がりにボゥっと一人立っている男の姿が段々と浮き彫りになって来た。

 

警戒しつつ、その男が何者なのか正体を確かめようとしていると‥‥

 

「ティアナ‥‥」

 

「っ!?に、兄さん‥‥?」

 

其処に居たのはティアナの死んだ兄、ティーダ・ランスターだった。

 

「そんなっ!?どうして‥‥?なんで、兄さんが此処に‥‥?」

 

死んだ筈の兄が今、自分の目の前に居る事に困惑するティアナ。

 

これは夢なのではないかと思っていると、

 

「ティアナ‥‥寒いぞ‥‥俺は今、とても寒い所に居る‥‥死ぬとこんなに寒い世界を彷徨うとは思わなかった‥‥此処は、上も下もない‥‥始まりも終わりもない、寂しい所だ‥‥このままでは、いずれお前も此処に来ることになってしまう‥‥帰るんだ‥‥ミッドチルダに‥‥すぐに‥‥」

 

ティーダはそう言い残し、スッと消えてしまった。

 

「兄さん!!」

 

ティアナはベッドから飛び起き、兄に駆け寄ろうとしたが、ティアナの手は空を切った。

 

其処には当然兄の姿は無く、ティアナ一人だけであった。

 

「‥‥はぁ~精神的に参っているのかしら?‥‥リニスさんに睡眠薬でも貰って来よう‥‥」

 

ティアナは生死にかかわる遭難をして、慣れない環境下に置かれた事によって自分でも知らない内に精神的に疲労して兄の幻覚を見たのだと思いリニスに睡眠薬でも貰おうと部屋から出た。

 

医務室へと向かっていると、通路の先に再びティーダの姿が目に入った。

 

「兄さん!!」

 

ティアナは再び現れたティーダの傍に寄ろうとすると、ティーダは踵を返して走り出していく。

 

「待って!!兄さん!!兄さん!!」

 

ティアナが必死にティーダの後を追いかけていくがその距離は縮まらず、やがてその姿は消えてしまった。

 

「ティアナ」

 

そこへフェイトが、先程ティーダが走り去っていった方向からやって来て、ティアナに声をかけてきた。

 

「フェイトさん‥‥今、オレンジ色の髪をした男の人が通りませんでしたか?」

 

「えっ?男の人?ううん、誰も来なかったよ」

 

「そう‥ですか‥‥」

 

「ティアナ、大丈夫?顔色が悪いけど‥‥?」

 

「少し、精神的に疲れているのかもしれません‥‥リニスさんから薬でも貰ってきます」

 

顔が青白く、少し足元がふらついているティアナ。

 

そんなティアナが心配でフェイトも医務室について行く事にした。

 

フェイトとティアナ、二人が医務室へ向かっていると、

 

「うえ~ん‥‥うえ~ん‥‥」

 

子供の泣き声が聞こえてきた。

 

「っ!?そんなっ!?バカなっ!?」

 

フェイトは通路の先で信じられないものを見た様に驚愕の表情を浮かべる。

 

「フェイトさん?」

 

突然表情を変えるフェイトに戸惑うティアナ。

 

如何やらティアナには子供の泣き声もフェイトには見えているモノも見えていない様だ。

 

それは先程、ティアナが見えていた兄、ティーダと同じ様に‥‥

 

そして、フェイトには見えていたモノ‥‥

 

それは‥‥

 

「フェイトママ‥‥」

 

通路の先に居たのは、ミッドに居る筈のヴィヴィオだった。

 

「ヴィヴィオ‥‥そんな‥‥ミッドに居る筈の貴女が何で此処に‥‥?」

 

(えっ!?ヴィヴィオ?)

 

フェイトが呟いたヴィヴィオと言う名前に反応するティアナであったが、当然何処にもヴィヴィオの姿は見えない。

 

しかし、フェイトにはヴィヴィオの姿が見えている様だ。

 

フェイトが慌てて泣きじゃくるヴィヴィオへと駆け寄り彼女を抱きしめようとすると、

 

「フェイトさん!!」

 

ティアナが慌ててフェイトを呼び止める。

 

「っ!?‥‥私‥‥今‥‥」

 

フェイトが正気に戻ると、其処にはヴィヴィオの姿は当然無かった。

 

「私もティアナの事を強く言えないね‥‥」

 

自嘲めいた笑みを浮かべるフェイト。

 

彼女もティアナ同様、リニスに睡眠薬でも処方してもらう事にした。

 

二人で医務室へ向かって行くと、ギンガとバトライザーとすれ違う。

 

「お二人とも顔色が良くないようですけど、どうかしましたか?」

 

「い、いえ大丈夫です」

 

「少し疲れただけだから‥‥」

 

と、無理に笑みを浮かべてその場から去って行くフェイトとティアナ。

 

「やっぱり、慣れない航海生活で精神的に疲れているのね」

 

ギンガが、二人の心中を察する。

 

九死に一生を得て、慣れない艦での長期間にわたる航海生活、極度の緊張下で過ごしていた為、肉体的疲労よりも精神的疲労が本人たちの知らぬ間に蓄積されたのだろう。

 

「人間ハ色々ト悩ミ、故障シテ不便デスネ」

 

「貴方もネジ一本が緩んだだけで故障の原因になるのよ、バトライザー」

 

ギンガはフェイトとティアナの二人の精神的疲労を少しでも緩和する為にホログラムによるメンタルマシーンを使う事を決め、シミュレーションルームへと向かう。

 

そこで、ブリッツ・キャリバーに記録されていたミッドの記録をメンタルマシーンにセットしようとしていたら、背後に何者かの気配を感じた。

 

「誰!?そこに居るのは!?」

 

ギンガが慌てて振り向くと、其処には沢山の白い手が自分に迫ってくる光景が目に入った。

 

「きゃぁぁぁぁー!!」

 

シミュレーションルームの外で待っていたバトライザーにギンガの悲鳴が聞こえ、部屋の中に入ると其処にはギンガが倒れていた。

 

「ギンガサン、シッカリシテ下サイ」

 

バトライザーがギンガの身体を揺するが、ギンガが目を覚ます気配はない。

 

「私ガ何カシタト思ワレルノモ心外デス‥此処ハヤハリ、リニス先生ノ所二運ビマショウ。ソウシマショウ」

 

そう言って、ギンガを抱き上げるとバトライザーは医務室へと向かった。

 

バトライザーよりも先に医務室に到着したフェイトとティアナは医務室を覗くと、そこには異様な光景が広がっていた。

 

「あぁ‥‥プレシア‥‥アリシア‥‥」

 

リニスが涙を流しながら、既に亡き大事な人たちの名前を呟いていた。

 

しかし、それは絶望に染まった涙ではなく、もう二度と会えない大事な人と再会する事が出来た歓喜の涙のであった。

 

そして誰も居ないにも関わらず、まるでそこに人が居るかのように抱きしめる仕草をしていた。

 

「リニス!!しっかりして!!リニス!!」

 

フェイトが、慌ててリニスに駆け寄り声をかける。

 

「アリシア?」

 

「ううん、私はフェイトだよ。リニス‥‥」

 

「‥‥」

 

「リニスさん‥一体何が見えていたんですか?」

 

ティアナはリニスが見ていた幻影を訊ねる。

 

「私はかつてのマスターのプレシアとアリシアの姿が‥‥」

 

「‥‥」

 

リニスの見ていた幻影を聞き、気まずそうな顔をするフェイト。

 

「ティアナさん、さっき『見えていた』って言いましたが、もしかして貴女も幻影を?」

 

「はい。死んだ兄の幻影を見ました」

 

「私はミッドに居る筈のヴィヴィオの姿を見ました‥‥」

 

リニス、フェイト、ティアナの三人が幻影を見たと言った中、

 

「リニス先生、大変デス。ギンガサンガ」

 

と、気を失っているギンガを抱きかかえたバトライザーがやってきた。

 

「ギンガさん!!」

 

「何があったの?バトライザー」

 

「分カリマセン。ホログラムノプログラムチェックヲ行ッテイタノデスガ、何カ恐ロシイモノデモ見タノデショウカ?私ガシミュレーションルームニ入ルト気ヲ失ッテイマシタ」

 

「恐らくギンガさんも幻影を見たのではないでしょうか?」

 

と、ティアナはギンガが気を失った原因を述べる。

 

とりあえず気を失ったギンガを医務室のベッドに横たえる。

 

「バトライザー、他の乗員には何か異常は無い?」

 

「此処ニ来ルマデノ間デ、特ニ異常ハ認メラレマセンデシタ」

 

「幻覚を見たのは私たちだけって事だけでしょうか?」

 

「艦長は大丈夫かしら?」

 

リニスは良馬の事が心配になり、ギンガの事をバトライザーに任せると急いで艦長室へと向かった。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦長室

 

その頃、良馬は艦長室の寝台にて仮眠中だったのだが、

 

「良馬‥‥」

 

「月村‥‥」

 

突然、何処からともなく自分を呼ぶ声に良馬は、目を覚ます。

 

「っ!?」

 

良馬の目の前には、ガミラス、そして白色彗星帝国との戦いで死んでいった大勢の戦友たちの姿があった。

 

「ひ、土方さん‥‥高町、沖田‥‥三木君‥‥」

 

震える声で、目の前のかつての恩師や戦友たちの名を告げる良馬。

 

すると、土方たちは良馬を睨みながら訊ねてきた。

 

「月村、何故お前は生きている?」

 

「僕たちを殺しておいて何故生きている?」

 

「恥ずかしくないのか?」

 

「自分だけ生き残って英雄になりたいのか?」

 

「お前も大勢の部下を殺してきたじゃないか‥‥お前は英雄じゃない‥‥人殺しだ」

 

「責任を取って死ぬべきだ‥‥」

 

「そうだ、死ぬべきだ」

 

「死ね‥‥」

 

「死ね‥‥」

 

「死ね‥‥」

 

「死ね‥‥」

 

ガミラス戦から艦を降りた時と同じように戦友たちからの非難を浴びる良馬。

 

ギンガやリニスのおかげで見る事の無くなった筈の幻影が再び良馬の前にその姿を現した。

 

しかし、良馬は取り乱す事もなく、黙って戦友たちの非難の言葉を聞いている。

そして、

 

「俺は貴方たちを忘れたわけでもなければ、一人英雄になるつもりもない‥‥ただ地球を守りながらその時がくるのを待っているんだ‥‥本当の英雄は地球を守り、死んでいった貴方たちの方だ‥‥」

 

顔を俯かせ、自分は英雄などではないと言う良馬。

 

そこに、

 

「艦長!!」

 

リニスが艦長室へと飛び込んできた。

 

リニスの後にはフェイトとティアナも入って来た。

 

すると、先程まで目の前に居た戦友たちの幻影は綺麗さっぱり消えていた。

 

「幻覚?」

 

「はい、私、フェイト、ティアナさん。そして恐らくギンガさんも‥‥」

 

「他には?」

 

「いえ、今の所、幻覚を見たのは、艦長を含め、五人だけです‥‥皆、死んだ人や悲しい幻覚ばかりでした‥‥艦長は?」

 

「これまでの戦いで戦死したみんな‥‥土方さんや三木君‥‥高町や沖田に会ったよ‥‥そしてみんなに『何故お前は生きているのか?』と、言われたよ‥‥」

 

自嘲めいた笑みを浮かべながら先程自分が見た幻影を話す良馬。

 

「‥‥」

 

良馬が先程見た幻影の事を話すと、リニスが気まずそうな顔をした。

 

「それよりもこの幻覚の原因を調査しなければな」

 

「そうですね」

 

原因を調査すると言っても、他の乗員は幻覚を見ている様子は無く何故、自分たちだけが幻覚を見たのか分からない。

 

そんな中、ティアナが、

 

「あの‥‥幻覚を見たのは魔力を有した人だけの様な気がするんですけど‥‥」

 

と、幻覚を見た人間の共通点をあげた。

 

確かにティアナの言う通り、幻覚を見たフェイト、ティアナ、ギンガの三人は魔導師で良馬は法術の力を持つ術師でリニスは魔力を有する使い魔。

 

皆、異能力者ばかりであった。

 

「何か異能力者のみに幻影を見せる特殊な力の様なモノが まほろば に働いていると言うのか?」

 

「それについては、心当たりがあります」

 

と、フェイトのデバイスバルディッシュが言葉を発する。

 

「何なの?バルディッシュ?」

 

「魔力をモヤ状に変換した様な変な力がこの艦を包み込むかのようにある方向から流れてきます」

 

「その方向を解析出来る?リニス」

 

「やってみます」

 

フェイトからバルディッシュを借りたリニスは早速CICへと向かい、そこで解析を行い、異能者のみに幻覚を見せる特殊なモヤ状の魔力が来る方向を突き止めた。

 

「解析できました‥‥方位、右45、度‥‥距離、28宇宙キロです」

 

「その方向に惑星はある?」

 

「ちょっと待って下さい‥‥解析度を目一杯にします‥‥あっ、ありました!!惑星反応です!!」

 

「その映像をモニターに表示して」

 

「了解」

 

リニスが機器を操作し、モニターにモヤ状の魔力を放つ惑星の姿を映し出す。

 

其処に映し出されたのは一つの惑星と太陽らしき星の二つの惑星の姿だった。

 

「大きさ、質量共に火星程の大きさの星です」

 

「右にあるのは?」

 

「小さな太陽の様です。その他の惑星は確認できません」

 

「太陽一つに惑星一つの太陽系か‥‥」

 

「なんか、寂しい太陽系ですね」

 

「ヤマトの航路データからあの太陽系について何かわからないか?」

 

「調べてみます」

 

リニスが更にメインコンピューターに記録されていたヤマトのイスカンダルへの航海記録で、あの星の事が無いか調べてみた。

 

すると、一件ヒットする事項が出てきた。

 

ヤマトの記録では、あの星の名前は『サイレン』と言う名前の星であり、その星にはかつて幽閉されていた一組に母子がいた。

 

母は相手の心理を読み強力な幻覚を万光年単位の範囲で送り込む強力な超能力を持っていたらしい。

 

しかし、ヤマトが到着する前に母は自らの命を絶っていた。

 

自殺の原因は不明。

 

子供の方はそのような能力は確認されず、また父が誰なのかを言わなかったが、自分たち親子はこの星の出身者ではない事を伝えてきた。

 

ヤマトの乗員はその子が自分たちの生まれた星へと返す為にこの星に放置されていた壊れかけの船を改修した。

 

その後、この子がどうなったのかは不明。

 

と言う内容だった。

 

ヤマトの航海記録が正しければ、あの惑星には今は誰も居ない筈‥‥

 

それにも関わらず、まほろば に居る異能力者たちは幻影を見た。

 

となると、あの惑星に幻惑を見せる何かがあるのかもしれない。

 

もしかしたら、α星、七色星団で交戦したあの敵の新兵器かもしれない。

 

今は異能力者たちだけで済んでいるがそれがやがて まほろば、ヤマトの乗員全員に広がるかもしれない。

 

良馬は急ぎヤマトへと通信を入れた。

 

良馬は まほろば の一部の乗員が幻覚を見てその幻覚の原因が例のサイレンの星に有ると説明した。

 

勿論幻影を見たのが、異能力者たちである事は伏せて‥‥

 

説明を聞いた古代は、「あの星にはもう誰も居ない筈なんだが‥‥」

 

と、首を傾げた。

 

その事については、良馬もヤマトの航海記録から知っていたが、誰も居ない星だからこそ、α星、七色星団で交戦したあの敵がサイレンの星に基地を築き、そこで、幻影を見せる装置ないしそれに類似する新兵器が設置されている可能性も示唆した。

 

古代もイスカンダルでの航海経験から、良馬の意見も一理あると納得した。

 

そこで、サイレンの星の調査は まほろば が行い、ヤマトはそのままイスカンダルへ向かってもらう事にしてもらった。

 

良馬は乗員にサイレンの星に敵の新兵器が設置されている可能性を説明し、一時、ヤマトから離れサイレンの星を調査する旨を伝えた。

 

なお、その間、フェイトとティアナは医務室で待機してもらった。

 

一時戦列から離れてサイレンの星へと向かう まほろば。

 

その近海に差し掛かった頃、まほろば のレーダーが艦影を捉えた。

 

すぐさま、あの円盤の敵が現れたのかと思ったが、

 

「あっ、あれはっ!?」

 

モニターに映ったのは意外なモノだった‥‥。

 

医務室に居たフェイトたちに突如、呼び出しがかかった。

 

「ハラオウン執務官、ランスター執務官補佐は直ちに第一艦橋へお越しください。繰り返します‥‥」

 

「なんでしょう?」

 

突然の呼び出しに少し戸惑うティアナ。

 

「分からないわ。でも、何かが有ったみたいだから行ってみましょう」

 

「はい」

 

フェイトとティアナは呼び出しに応じ、第一艦橋まで上がって行った。

 

二人が呼び出しを受ける少し前、ギンガも目を覚まし、二人と共に第一艦橋へと上がった。

 

「どうだ?副長」

 

「間違いありません」

 

モニターを見ていた良馬が新見に訊ねる、彼女は肯定する返答をした。

 

そこへ、

 

「ハラオウン執務官、参りました」

 

「ランスター執務補佐官、参りました」

 

と、呼び出しに応じたフェイトとティアナが艦橋に来た。

 

「ギンガ、もう大丈夫なのか?」

 

「はい。それで何が有ったんですか?」

 

「ああ、実は‥‥管理局の艦隊が現れた」

 

「えっ!?」

 

「管理局の艦隊が!?」

 

管理局(友軍)の艦船が現れたと言う言葉を聞き、フェイトとティアナは思わず目を見開く。

 

「本当に管理局の艦なんですか?」

 

「あ、ああ‥‥これなんだが‥‥」

 

先程捉えた管理局の艦の映像を大モニターに表示すると、

 

「っ!?」

 

「‥‥」

 

フェイトとティアナは見慣れた管理局の艦の艦隊を組んでいる光景をその目で見た。

 

「間違いありません」

 

「あれは‥‥確かに時空管理局の次元航行艦と巡航艦です」

 

二人とも震える声でスクリーンに映る艦船が管理局の艦船だと肯定する。

 

「そうか‥‥」

 

しかし、フェイトとティアナには一つ解せない事があった。

 

マゼラン星雲近海は突発性の次元震が起こる為、ここら辺での探査は見送られてきた筈だった。

 

それにも関わらず管理局の艦が今、自分たちの目の前に居る。

 

自分たちが次元漂流した後、本局がマゼラン星雲近海の探査を再び開始させたのだろうか?

 

だが、自分たちを含め、良馬、ギンガ、リニスが幻影を見た近海で魔法に関しての専門組織である管理局が現れたのは間が悪い。

 

もしかしたら、先程の幻影は管理局がこの宙域で新兵器の実験でもしていたのではないかと思われたら、かなり気まずい。

 

しかも、幻影を見たのが異能力者たちと言う事でその可能性も十分にあった。

 

「応答は?」

 

「それが、先程から何度も通信を送っているのですが、一向に返答がありません」

 

そう言って新見は再び管理局艦とコンタクトを取ろうと、管理局艦に通信を送り続けていたが、ギンガが艦橋へ上がったので、新見に代わりギンガが通信を送ったが、やはり管理局からの返答はない。

 

それどころか、

 

「エネルギー反応らしきモノを探知!!管理局艦発砲!!」

 

「回避!!下げ舵20!!取り舵15!!」

 

「了解!!下げ舵20!!取り舵15!!」

 

此方(まほろば)に向けて、突然無警告で攻撃を仕掛けてきた。

 

幸い討ってきたのはアルカンシェルではなく、標準装備されていた魔力砲(マジックカノン)だった。

 

威嚇射撃だったのか、放たれた砲撃は まほろば の右上を通過して行った。

 

「「‥‥」」

 

突然、味方(管理局)から攻撃を受け、呆然とするフェイトとティアナ。

 

「管理局艦、更に発砲!!」

 

管理局艦はまたもや まほろば に攻撃を仕掛けてきた。

 

「総員、戦闘用意!!」

 

良馬は自衛手段の為、まほろば に戦闘準備整えさせた。

 

 

サイレンの星、近海で突如現れた管理局の艦‥‥

 

まほろば と 管理局艦との間で始まった戦い‥‥

 

管理局は何故、まほろばからの通信に応えず、いきなり攻撃してきたのか?

 

管理局には何か目的があるのか?

 

しかし、事態はそう簡単なものではなかった‥‥

 

 

またその頃、別の宙域では、

 

まほろば が突然現れた管理局艦に発砲を受けた頃、マゼラン星雲寄りの銀河系某宙域で、一つの戦闘が行われようとしていた。

 

いや、これは戦闘と言うより一方的な虐殺に近いモノであった。

 

「提督、前方に艦船反応を発見いたしました」

 

「艦船?して、所属は?」

 

「はっ、艦影、エネルギー波長より前方の艦船は時空管理局所属の艦船かと思われます」

 

「時空管理局?‥‥ふんっ、以前、銀河方面軍から報告が有ったあの軟弱な羽虫共か‥‥」

 

「如何なさいますか?」

 

「知れた事、戦舟がこうして出会ったのだ、それをただ黙って見過ごすは愚の骨頂なり」

 

「承知しました」

 

一方、この艦隊に狙われた管理局艦隊では‥‥

 

第124探査部隊の旗艦 サイオンのブリッジでは、艦の幹部たちが上機嫌であった。

 

「提督、大収穫でしたな」

 

「ああ、まさかあんな辺境の田舎世界にこれ程のロストロギアがあったとはな」

 

彼らは航行が禁止されているマゼラン星雲の探査を密かに行い、その中でとある管理外世界(有人惑星)にて、その世界における重要文化財等の宝物を一方的にロストロギアと認定し、それらを根こそぎ回収(強奪)してきたばかりであった。

 

艦の幹部たちはこれで本局へ戻れば、自分たちの昇進は間違いなしと確信していた。

 

そんな彼らにソレは突如、襲い掛かって来た。

 

「ん?」

 

レーダー担当のオペレーターが艦隊前方に重力変動を観測した。

 

「前方に重力変動‥‥提督!!」

 

「なんだ?」

 

オペレーターが提督にこの重力変動を報告しようとしたその時、ブリッジから見える宇宙空間の一画がグニャリと歪むとそこから白熱化した高エネルギー波が出現。

 

サイオンの左舷を航行していた味方艦を飲み込んだ。

 

飲み込まれた味方艦は一瞬で爆沈した。

 

当然脱出者も居なかったので、生存者はいない。

 

「な、なんだ!?何が起こった!?」

 

突然の攻撃(?)に上機嫌だった幹部たちに緊張が走る。

 

「前方、射程外の距離に艦影多数探知!!」

 

「何だと!?どこの連中だ!?」

 

「エネルギー波長から以前、クラウディアから報告が有った例のプレオを破壊した艦隊と同一のモノです!!」

 

スクリーンには横一列に陣形を組む黄緑と白を基調とした艦船の姿が映し出されていた。

 

その陣形はまるで管理局の艦隊を通せんぼしているかの様だった。

 

(プレオを破壊したのは確か、質量兵器を有する蛮族共‥‥此処で連中を撃破すれば、更なる恩賞が得られるかもしれないな‥‥)

 

サイオンの提督は欲を出し、前方の艦隊に攻撃を命じた。

 

「蛮族共め!!反撃だ!!」

 

管理局艦は艦に搭載されていた魔導砲を放つが、相手は此方の射程外に居る為、当たらない。

 

すると、攻撃を行っている管理局艦隊‥サイオンの右舷側の正面の一画が先程の様にグニャリと歪むと、そこから再び白熱した高エネルギー波が管理局艦に襲いかかる。

 

「艦隊損耗率、九割を越えました!!」

 

「そんなバカな!!」

 

「野蛮人共にこんな技術が‥‥い、いや、信じられん‥‥」

 

「ど、どうしますか!?提督」

 

「て、撤退だ!!大至急この海域から離脱する!!転移準備!!」

 

「はっ、はい。全艦に告ぐ‥‥」

 

「全艦では無い」

 

「は?」

 

「本艦はこのまま転移するが、その他の艦は此処に留まり援護せよ」

 

「つまり、撤退が成功する様に犠牲になれと?」

 

「命令だ。直ぐに伝達をしろ」

 

此処に来て漸く相手が自分たちに敵う相手では無いと悟ったサイオンは残った味方を犠牲にして自分たちだけ撤退準備を始めるが、その行動は余りにも遅かった。

 

「急げ!!早くしろ!!」

 

未だに転移準備が出来ない事態に苛立つ提督。

 

前方の艦隊は接近する事も無く、また此方に攻撃して来る様子も無い今が撤退するチャンスなのだ。

 

第124探査艦隊の味方艦は大半が撃沈されてしまったが、ロストロギアを大量に回収できたこの艦さえ戻れば、昇進は自分たちだけのモノだ。

 

彼らは何としてでも生きて本局へ戻りたかったのだが、その願いはかなう事は無かった。

 

突如、サイオンの前方の空間がユラリと歪んだかと思ったら、其処から灼熱の炎の様な高エネルギー波が迫って来た。

 

サイオンのクルーが最後に眼にしたのは自分たちに迫る地獄の様な業火であった。

 

高エネルギー波を受けたサイオンは他の艦艇同様、溶ける様にして爆発し消滅した。

 

後に残ったのは、彼方へと消えて行く様なエネルギー流の尾と攻撃をした艦の艦橋にて「思い知ったか、管理局の羽虫共」と豪快に高笑いをする不気味な男の声だけであった。

 

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