星の海へ   作:ステルス兄貴

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四十九話 悪魔の実験 

旧ガミラス領‥サイレンの星近くに突如出現した管理局艦隊。

その管理局艦隊は まほろば からの通信には一切応えずに無警告で まほろば に発砲してきた。

 

「管理局艦、更に発砲!!」

 

「総員、戦闘用意!!」

 

良馬は自衛手段の為、 まほろば に戦闘準備整えさせた。

 

「月村艦長、ですが‥‥」

 

フェイトはやはり目の前で味方の艦が沈められるのは見たくないのか良馬に声をかける。

 

「ハラオウン執務官、貴女の言いたい事は分かる。しかし、このままでは、貴女自身の身にも危険が迫っているんです。お辛いかもしれませんが‥‥」

 

「「‥‥」」

 

良馬の言葉を聞き苦悩するフェイトとティアナ。

 

「ハラオウン執務官」

 

そこへ、ギンガがフェイトに声をかけた。

しかし、フェイトの事をフェイミリーネームと役職名で呼んだのは今のギンガはフェイトの知り合いのギンガ・ナカジマ(中嶋ギンガ)ではなく、宇宙戦艦 まほろば 通信長の中嶋ギンガとして、声をかけたからだ。

 

「艦長の事を分かってあげてください‥‥艦長は乗員全員の生命の安全を守る義務があるんです。その中には、当然、ハラオウン執務官、ランスター補佐官の御二方も含まれるんです‥‥ですから、どうか‥‥」

 

ギンガからも説得されたが、まだ完全に諦めがつかない様子のフェイトたち。

そこへ、

 

「ただ、主砲の必中距離まで接近し、その間にもし管理局側が通信に出れば、まだ、話し合いの余地はありますから」

 

良馬が妥協案をフェイトとティアナに言う。

 

「‥‥はい」

 

「‥‥分かりました」

 

良馬の言葉にフェイトとティアナは力なく返答する。

しかし、これで少なくとも、ただ一方的な戦闘にはならない可能性も出てきた。

フェイトとティアナは管理局艦が まほろば の主砲の必中距離に入る前に通信に答えてくれることを祈った。

 

管理局艦の攻撃を回避しながら、主砲の必中距離まで管理局艦隊へと接近する まほろば。

ギンガも必死で管理局艦に呼びかける。

そして、主砲の必中距離手前で、

 

「っ!?管理局艦との通信が繋がりました!!モニターに表示します!!」

 

フェイトとティアナの祈りが通じたのか、管理局艦と通信が繋がり、指揮官らしき人物がモニターに表示された。

 

「あっ、貴方は!?」

 

指揮官らしき人物の顔を見て、フェイトは思わず声をあげた。

 

モニターに表示された人物それは‥‥

 

「ぎ、ギルド提督!!第37探査部隊指揮官のギルド提督ではありませんか!?」

 

フェイトがモニターに表示された人物の名前と官職を言う。

モニターに表示された人物は、フェイトたちがまだテリオスに乗艦中に本局から知らせが来た行方不明となった第37探査部隊の指揮官だった。

知らせがきた時、フェイトは第37探査部隊の指揮官の顔写真と名前は見ていたので、今、自分たちがモニターで見ている人物が行方不明となった部隊の指揮官である事に驚いている。

 

(それじゃあ、あの艦隊は‥‥行方不明になっていた第37探査部隊‥‥)

 

フェイトとティアナはモニターから まほろば の周囲に展開している管理局艦を見渡し、今、自分たちを攻撃している艦隊が行方不明になった友軍なのだと自覚した。

しかし、何故行方不明になった部隊が自分たちを攻撃してくるのかが分からない。

そこで、フェイトはもう一度モニターを見て、指揮官であるギルド提督に話しかける。

 

「提督、何故攻撃をするのですか!?それに行方不明になっていた貴方たちが何故此処に居るのですか!?お答えください!!」

 

声を上げ、ギルド提督に訊ねるフェイト。

 

「・・・・・・」

 

しかし、ギルド提督は何も言わない。

 

「提督!!なぜ黙っているのですか!?」

 

ティアナもギルド提督の行動が分からず、フェイト同様にギルド提督に訊ねる。

またもや、無言かと思いきや、

 

「・・ハラ・・・・オウン・・・・執務官・・・・・?」

 

「えっ!?」

 

すると、ギルド提督は、途切れ途切れではあるが、声を発した。

 

「ハラオウン執務官・・・・?」

 

「そ、そうです!!フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです!!」

 

「ハラオウン執務官・・・・わ、私は一体?」

 

「ギルド提督、一体何があったんですか?」

 

どうやら、ギルド提督は、正気を取り戻した様子なので、フェイトは一体提督たちの身に何があったのかを訊ねる。

 

「・・・・た、確か、あの時、円盤の様な艦隊から突然攻撃されて・・・・・助かったのか私は!?・・ウッ・・・・アッ・・・・ガッ・・・・グワァ・・・・!!」

 

突然ギルド提督は苦しそうに頭を抱えると、通信回線が寸断されてしまった。

 

「通信‥切れました‥‥」

 

「一体何が‥‥?」

 

「レーダーに反応、サイレンの星の周回軌道上に人工衛星らしき物体をキャッチしました」

 

新見がサイレンの星近くに人工衛星の存在をキャッチし、報告する。

 

「モニターに表示してくれ」

 

「了解」

 

モニターに表示された衛星は蜘蛛の様な形をした人工衛星であった。

 

「あれは、管理局の?」

 

「いえ、管理局や管理世界で採用している人工衛星の中にあの様な形の物はありません」

 

良馬があの人工衛星は管理局の物かと訊ねると、フェイトはそれを否定した。

 

「ガミラスの物とも違う‥‥むろん、地球やガトランティスの物とも形が異なるな‥‥」

 

今まで遭遇してきた星間国家の人工衛星とも形が異なる。

 

「あの‥‥通信中に気づいた事があったんですが‥‥」

 

新見が恐る恐る意見をする。

 

「何だい?」

 

「通信中、あの指揮官の頭に真新しい手術痕の様な傷があったんですが、あの指揮官はつい最近、頭に怪我を追って手術した事があるんですか?」

 

「いえ、私の知る限りではギルド提督が頭部を手術したと言う事実も記録もありません」

 

新見が、ギルド提督が以前頭部を負傷し手術経験が有るかとフェイトたちに訊ねるが、またもフェイトはそれを否定した。

 

「もしかすると‥‥」

 

フェイトの回答を聞いて新見は顎に手を当て考える仕草をとると、

 

「通信長」

 

「はい」

 

「あの衛星から何か電波の様な物は出ていないかしら?」

 

「確認します」

 

新見はギンガに衛星の逆探知を行わせた。

 

「確認できました!!詳しい解析は出来ませんが、あの衛星から何らかの特殊な電波が出されています!!」

 

「その方向は?」

 

「それが‥‥」

 

「どうしたの?」

 

「それが‥‥衛星の出している電波は全て管理局艦隊へと流されているんです」

 

「やっぱり‥‥」

 

「どういう事です?」

 

「もしかしたら、彼らは洗脳されているのかもしれません」

 

『洗脳!?』

 

新見の推測に艦橋にいた全ての物が驚愕する。

 

「はい。恐らく彼らはあの衛星から発する特殊な電波に反応して何者かに操られているのではないでしょうか?その受信機が頭部に埋め込まれているとしたら‥‥」

 

「では、頭の手術痕はその為に‥‥?」

 

「はい。それにあの指揮官は通信の中で『円盤の様な艦隊から突然攻撃されて』と言っていました。もしかしたら、その『円盤の様な艦隊』があの衛星を設置し、彼らの頭部に受信機を埋め込んだのかもしれません」

 

「何て奴等だ‥‥」

 

永倉はまだ姿を見せない黒幕に怒りを露わにした。

永倉だけでなく、フェイトやティアナの管理局組も同じ様子。

 

「許せない、人の事を何だと思っているの‥‥?」

 

ギンガも同じで、特に彼女の場合はフェイト同様、他の人とは少し違う特殊な生まれ故か、生命に関しては人一倍気を遣う。

それに『洗脳』と聞いて、誰よりも不快感を出していたのも彼女だった。(←まぁ、原作では、敵の手に落ちて、洗脳され敵の手駒にされてしまったし、もしも、ギンガがこの世界に次元漂流しなければ、原作同様の運命をたどっていただろう)

 

「航海長、針路変更」

 

「えっ!?」

 

「目標はあの人工衛星だ。衛星を破壊し、管理局艦隊にかけられた洗脳を解く」

 

「了解」

 

「砲術長」

 

「はい」

 

「間違っても管理局艦には攻撃するな。彼らは自分たちの意思で此方に攻撃を仕掛けている訳ではないのだからな」

 

「了解」

 

まほろば は針路を変更し、一路、管理局艦を操っているであろう人工衛星へと向かう。

フェイトとティアナは、管理局艦の皆が洗脳されていた事実に関しては、あまりいい気分ではないが洗脳が解ければ彼らも正気に戻るし、撃沈されずに済む。

彼らを助け出したら、一緒にミッドへ帰れると思っていた。

 

管理局艦隊からの攻撃を障壁と巧みな操艦で回避しながら まほろば は管理局艦を操っている人工衛星を目指す。

まほろば の波動エンジンと管理局艦の魔導機関では速力差があり、まほろば はあっという間に管理局艦を振り切った。

そして、

 

「主砲の射程内に衛星を捕捉!!」

 

衛星がようやく まほろば の主砲の射程内に入った。

 

「よし、撃て!!」

 

「主砲発射!!くらえ!!」

 

砲術長のフェリシアが、人工衛星目がけて主砲を放った。

衛星はバリア等の自己防衛機能や砲やミサイル等の迎撃機能を持ち合わせていない普通の人工衛星だったので、まほろば の主砲を防御する術はなく、いとも簡単に破壊された。

 

「命中!!」

 

「やった!!」

 

「衛星の破壊に成功しました!!」

 

「これで管理局艦にかけられた洗脳も解かれる筈です」

 

人工衛星を破壊し、管理局艦の洗脳を解いた事により、艦橋にはホッとした空気が流れた。

フェイトとティアナも一安心の様子。

 

しかし‥‥

 

「っ!?レーダーに反応!!」

 

「なにっ!?」

 

突如、サイレン宙域の近海に多数の艦船がワープアウトしてきた。

 

「あっ、あれはっ!?」

 

ワープアウトしてきた艦船は全て円盤の様な形をした艦船。

それはα星と七色星団で交戦した艦船と同じ型の艦だった。

 

「まさか、あいつらがあの衛星を!?」

 

「敵艦隊、管理局艦に接近していきます!!」

 

「ま、まずいっ!!」

 

突如、ワープアウトしてきた艦隊は まほろば には目もくれず、洗脳が解けたばかりの管理局艦の方へと向かい、

 

そして‥‥

 

管理局艦に向けて次々と発砲していった。

装甲が地球艦隊の艦よりも貧弱な管理局の艦ではとても耐えきれず管理局艦は次々と沈められて行く。

しかも、突然洗脳が解けたので、恐らく中の乗員はその殆どが昏倒しているのだろう。

反撃や回避する様子もなく、まさに射的場の的の様に撃沈されていく管理局の艦。

 

「洗脳が解けた途端に、攻撃して、沈めるなんて‥‥」

 

「酷い‥‥」

 

「「‥‥」」

 

味方(管理局)の受けた余りにも酷い仕打ちに、フェイトとティアナは共に唇を噛んで、その悔しさを露わにする。

 

「敵艦隊此方に向かってきます!!」

 

管理局艦を片付けた敵艦隊は攻撃目標を まほろば に変更して迫って来た。

 

「戦闘用意!!航空隊スクランブル発進!!」

 

「えっ!?」

 

「艦長?」

 

「時空管理局と地球連邦は、互いに交流は無いが奴らがした事は余りにも人としての道を外れすぎている!それにアイツらを野放しにしていれば、今回の様な実験をまた繰り返すだろう」

 

「そうですね。それに敵が攻撃して来るのであれば、これは立派な自衛行動ですしね」

 

新見も良馬の行動を裏付けして、迎撃は正当なモノだと言う。

友軍でもなければ、同盟国でもない筈の管理局の仇を討とうとしている良馬たちにフェイトとティアナは感謝しつつも、今の自分たちには何も出来ないのだと、無力感を味わった。

 

「通信長」

 

「はい」

 

「ハラオウン執務官とランスター補佐官を医務室に‥‥精神的に辛いモノを見てしまったので、ゆっくり休ませてやってくれ」

 

「分かりました」

 

ギンガがフェイトとティアナを医務室へと案内していく。

その際、ティアナが振り返り、

 

「月村艦長‥‥必ず‥必ず勝って下さい」

 

と、味方の仇を必ず討ってくれと頼んだ。

 

「ええ、必ず勝ちますよ」

 

良馬は「必ず勝って、フェイトたちが抱いた無念を晴らす」と言って、二人を見送った。

 

敵の戦力は、高速駆逐艦三隻、護衛艦六隻、そして旗艦らしい巡洋艦が一隻の小規模艦隊であったが、敵はその機動力を生かし、一撃離脱戦法を繰り返してきた。

しかし、まほろば の方も、航空機隊を展開し、周りを固め、遠方の敵は、まほろばの武装で、近距離の敵には航空隊が応戦し、敵艦船を次々と沈めていく。

そして、最後に旗艦らしい巡洋艦が回頭し、この宙域からの撤退を図ろうとしたが、

 

「逃がすか!!」

 

フェリシアの精密な遠距離射撃により、沈められた。

 

ギンガの付き添いの下、医務室へ辿り着いたフェイトとティアナの顔色は優れない色だった。

 

「どうしたんですか?二人とも?」

 

そんな二人にリニスが訊ねる。

医務室に居たリニスは艦橋での出来事を知らなかった。

 

「うん‥‥実は‥‥」

 

フェイトはリニスに艦橋で見た事を話した。

 

行方不明になっていた部隊に遭遇した事、

 

その部隊がα星、七色星団で遭遇した星間国家の艦隊によって洗脳されていた事、

 

その洗脳が解けた直後に敵に襲撃され全滅した事、

 

それらの事実を話している時のフェイトは顔を俯かせ、声にも覇気がなく、ティアナも気まずそうな表情をしていた。

そんな彼女らにリニスは、

 

「フェイト、ティアナさん」

 

「はい」

 

「‥‥はい」

 

「此処での戦闘をよく見ておきなさい」

 

と、言い放った。

 

「えっ!?」

 

「それってどういう‥‥?」

 

リニスの発した言葉に戸惑う二人。

 

「管理局の力を簡単にはね退ける勢力が実在した‥‥それも、単なる犯罪組織ではなく、星間国家の宇宙軍隊が‥‥魔法文化がない以外は、管理局より科学力も軍事力も上回っている。今後、管理局はそう言った星間国家との外交と管理局自体の改革を余儀なくされるでしょう‥‥」

 

「「‥‥」」

 

「今のままでは、確実に管理局の未来に待っているのは破滅‥‥だからこそ、此処での見聞の経験を生かして、ミッドに戻ったら貴女たちが先頭に立って今後の管理局を導いて下さい」

 

(されど、番人は認めず、)

 

(管理の世界と番人達は、更なる混沌の渦にのまれる)

 

リニスの言葉を聞いた後、フェイトの脳裏にカリムの予言の一説が浮かぶ。

テリオスをいとも簡単に破ったガトランティス、その艦隊と互角に渡り合い全滅させた地球防衛軍の戦艦

恐らく彼らの本国の地球でも、多数の戦艦やそれに類似する戦闘艦もある筈。

彼らの戦いぶりは、時空管理局の世界運営に強い疑問符、あるいは『No』を突き付けているかのように映った。

だからこそ、リニスの言った「此処での戦闘をよく見ておきなさい」の言葉の意味を理解したフェイトとティアナであった。

 

敵勢力を排除した後、 まほろば はサイレンの星へと降下を開始する。

人を洗脳する人工衛星を設置した奴らなのだ。

あの幻影ももしかしたら、そうした類の物で、このサイレンの星に基地かそう言った施設を建設・設置しているのかもしれないと思い、もし、そのような施設があれば、破壊するつもりでいた。

サイレンの星の大気圏内を航行している まほろば。

その まほろば に、

 

アナタたちは、ダレ?

 

と、女性の声が聞こえた。

ハッとして良馬は辺りを見回すが、誰もそのような台詞を言ったようにも思えないし、他の誰にも聞こえていない様子。

しかし、艦橋員の中で、ギンガには聞こえていた様で良馬同様、辺りを見回している。

 

「ギンガ、今の声、もしかして君には聞こえた?」

 

「は、はい‥‥確かに女性の声で‥‥」

 

「‥‥もしかしたら」

 

良馬は医務室へと内線を入れた。

 

「リニスか?」

 

「はい」

 

「さっき女性の声で、『誰か』と、聞かれたのだが、君には聞こえたか?」

 

「はい。私の他にもフェイト、ティアナさんも聞こえた様です」

 

謎の女性の声は幻影を見たメンバーに聞こえた様だ。

 

「良馬さん、これは恐らく念話の一種だと思われます」

 

ギンガが、この女性の声について見解を述べる。

 

「念話?‥‥あのテレパシーみたいなやつか?」

 

「はい」

 

「ギンガ、この念話を送っている人物が何処から念話を送っているか、突き止められるか?」

 

「此方からも念話を送って聞いてみます」

 

ギンガは全周囲に念話を飛ばした。

 

自分たちの正体が地球防衛軍である事、

 

幻影を見て、この星の近くに来た事、

 

そして、この星の近くで何者かが洗脳実験を行っており、このサイレンの星にもそいつらの基地か施設があるかもしれないと思いこの星に降りた事、

 

そして、先程、念話を飛ばした人物に正体と今、何処に居るのかを訊ねる。

すると、

 

「返答がありました」

 

どうやら、相手はギンガの念話に答えてくれた様だ。

 

念話を飛ばしてきた人物の名前はジュラと言う。

それによればジュラと言う人物は今、この星の南に位置する神殿に居ると言う。

ギンガはジュラに尚も念話を行い続け、

自分たちは敵意が無い事を説明する。

やがて、まほろば が南の山間部と山間部の間に広がる平地の中で、ポツンとひっそり佇む神殿を発見した。

 

「この神殿の構造‥ガミラスのモノに似ているな‥‥」

 

神殿を見た良馬が呟く。

かつて、冥王星を占拠していたガミラス。

ヤマトの活躍でその基地は破壊されたが、辺境地に残されていたガミラスの基地、施設を防衛軍は占領した経緯があり、この時にガミラスの建築物を良馬は見ていた。

その時に見た建築物と今、目の前にある神殿は何処となく造りが似ていた。

良馬は調査隊を結成し神殿の調査へと向かった。

その中には先程までジュラと念話をしていたギンガも含まれていた。

 

誰も居ない神殿の中、

人はおろか、防衛システムや警備ロボの類も見当たらない。

神殿内は長い間、手入れがされていないのか通路は埃塗れになっていた。

ギンガは絶えずジュラと念話を行い、ジュラが神殿の何処に居るのかを訊ね、何気ない振りで皆をジュラの下へと誘導する。

そして、ジュラが居るとされる部屋のドアまで来た。

恐る恐る扉を開けると其処は薄暗い部屋で沢山の電子機器の様な物が置かれていた。

部屋の中に入っていくと、其処には大きな冷凍睡眠カプセルの様な物があり、その中に、水色のドレスを来た一人の女性が眠っていた。

ギンガが念話で、カプセルの中で眠っている女性に、「貴女がジュラなのか?」と、問うと、カプセルの中の女性は「自分がジュラだと」言った。

そして、ギンガは彼女に起きる事は出来ないのか?と訊ねると、

自分はもう一人ぼっちなので、このまま此処で永遠に眠るつもりなのだと言う返答が帰って来た。

彼女の孤独を瞬時に理解し、自分もクイントに助け出される前、そして、この世界に次元漂流した事を思い出し、ならば自分たちと一緒に来ないかと、訊ねた。

ジュラは当初、戸惑っていた。

いきなり見知らぬ人に来ないかと問われ、そう簡単にホイホイついて行くほど、警戒心が無い訳ではない。

そこで、ギンガは自分も別の世界から次元漂流し、救われた経緯を話した。

そして、地球の中嶋家に養子として迎えられて新たな家族を得て過ごしている事をジュラに話した。

やがて、ジュラはギンガの話を聞きギンガたちと共について行く事を決めた様で、コールドスリープを解除した。

 

ジュラはギンガに付き添われて、神殿を後にして、まほろば へと乗艦した。

良馬はジュラがギンガに思いのほか、懐いている様子だったので、ジュラの事はギンガに一任させた。

ギンガの方も快く了承した。

ただ、ギンガは通信長としての任務もあり、常にジュラの傍に居る事は出来ないため、ギンガはリニスにも応援を頼んだ。

そして、同じく遭難したフェイトとティアナにも彼女と仲良くやってほしい旨を伝えると、リニス、フェイト、ティアナも快く引き受けてくれた。

ジュラ自身、昔のスバルの様に極度の人見知りと言う訳ではなく、最初はぎこちなさもあるが徐々に打ち解けるだろうとギンガはそう思った。

 

医務室にて、ギンガはジュラと向き合うように座り色々と事情を聞いた。

良馬もオブザーバーとしてその場に出席した。

その中でまず彼女は昔、ヤマトと出会ったことが有ると言った。

これには流石に良馬たちも驚いた。

そして、ヤマトの出会いのエピソードを聞いている中で、彼女の母親があのサイレンの星の大地で眠っている事、

そして、一度父を追いかけて宇宙へと出たが、間に合わずに、母の眠るサイレンの星へと戻り、母と共に永遠の眠りにつこうとしていた事が分かった。

そして、ギンガがジュラの父の事を訊ねると、

ジュラは父の名前を出すのにかなり躊躇していたが、やがて意を決したかのように、父の名前を言った。

 

「私の父は‥‥アベルト‥‥アベルト・デスラーです‥‥」

 

「「「‥‥」」」

 

ジュラの父の名前を聞いた時、リニスもギンガも‥そして良馬も固まった。

そして、

 

「「「えええええっー!!」」」

 

医務室が揺れる程の声を出した。

 

「本当に貴女は、あのデスラーの娘なんですか!?」

 

「は、はい‥‥地球の皆さんには、父が大変ご迷惑をかけた様で‥‥申し訳ありません」

 

ジュラは深々と頭を下げる。

 

「い、いえ‥でも、肌の色が‥‥それに耳の形も‥‥」

 

ガミラス人は地球人やガトランティス人と違い青い肌をしているのが特徴だが、ジュラは肌の色が地球人と同じ色をしている。

それに耳の形も本に出てきたエルフと呼ばれる種族のような長い耳をしていた。

 

「私の肌の色や耳は母譲りなんです‥‥母の肌の色もあなた方地球の方と同じ色をしていましたから‥‥」

 

でも、これでジュラが父の名前を言うのに躊躇した理由が分かった。

ならば、ジュラには知る義務があるだろう。

 

「ジュラ、実は貴女のお父さん‥デスラーは‥‥生きているの」

 

「えっ!?」

 

父(デスラー)が生きていると言う事実を知り、ハッと顔を上げるジュラ。

そして、ギンガは自分が知っている範囲で、今、マゼラン星雲で起きている事をジュラに教えた。

デスラーが何故生きていたのかを知らないが、しかし、彼は現実に生きており、ヤマトの乗員が何人も彼の姿を見ている。

そして、ガミラス星の消滅とイスカンダルの暴走を地球に知らせてきたのは他ならぬ彼自身である事をジュラに告げた。

 

「父が‥‥生きている‥‥」

 

死んだと思われた父が生きている事実を知り、ジュラは安堵の表情を浮かべる。

 

「フェイトさん、あの人のお父さんは、ガミラスの総統だそうですよ‥‥」

 

「ええ、そうみたいね‥‥」

 

医務室にて、ギンガとジュラの会話を聞いていたフェイトとティアナもジュラの父があのガミラスの総統デスラーだと知って驚いている。

しかし、艦内にはガミラスによって家族や恋人、友人を亡くした者も大勢いる。

彼女がもし、デスラーの娘だと知れると後々不味い事になる。

男性乗組員から性的暴行を受ける恐れもあるし、その他にも乗員から私刑を受ける事だって十分にあり得る。

 

「ギンガ、リニス」

 

「はい」

 

「何でしょう?」

 

「彼女がデスラーの娘だと言う事は、今後他言無用とする」

 

良馬が二人に釘を刺す。

 

「はい」

 

「分かりました」

 

二人もジュラの父がデスラーだと知った時の乗員の反応を察したようで了承した。

 

「フェイトさんも、ティアナさんもよろしいかな?」

 

次に良馬は、フェイトとティアナにも同じことを言った。

 

「はい」

 

「勿論です」

 

フェイトとティアナも同じ女性として、ジュラの父の件がバレた時、彼女の身に何が起きるのかを察した様子で、この件についてはギンガとリニス同様他言無用と決めた。

 

ジュラを まほろば に乗せた後、このユークレシア孤立星系での幻影騒動は幕を下ろしたが、管理局側には多数の犠牲者を出した結果となり、

この星系を離れる前に此処で散っていった管理局員の為、黙祷をする時間が設けられ、フェイトとティアナは展望デッキにて、此処散った局員たちに黙祷を捧げた。

ジュラもこのサイレンの星で眠る母に黙祷を捧げ、まほろば はこのユークレシア孤立星系から別れを告げた。

 

ユークレシア孤立星系を後にし、ヤマトを追いかける まほろば。

そんな中、医務室では、

 

「それにしてもフェイトさん、凄い事になりましたね」

 

「うん、未だに現実とは思えないんだけどね」

 

「でも、私たち一国の国家元首の娘さんと同じ船に乗り合わせているんですよね?」

 

チラッと横目で見る二人。

其処には、リニスと会話を楽しんでいる様子のジュラの姿。

 

「フェイト、ティアナさん」

 

其処に、リニスが二人に声をかける。

 

「二人とも、ジュラさんに挨拶をしてはいかがでしょう?これから航海を共にする仲間なんですから」

 

リニスに勧められ、フェイトとティアナはジュラに挨拶をした。

 

「は、はじめまして。時空管理局所属執務官のフェイト・T・ハラオウンと申します」

 

「同じく、ハラオウン執務官の補佐をしております、ティアナ・ランスターと申します」

 

「初めまして。私は‥ジュラです」

 

自己紹介をするフェイトとティアナにジュラは柔らかく微笑みかけてきた。

その様子はやはり王族特有のオーラが漂っていた。

ヴィヴィオも同じくクローンとは言え、一応王族なのだが、ヴィヴィオとは異なるオーラがジュラからは漂っていた。

少し話をしていたのだが、ジュラはこれから、メディカルチェックを受けるというので、フェイトたちは自室に引き上げた。

 

「マスター」

 

自室に戻るとフェイトのデバイスであるバルディッシュがフェイトに話しかけた。

 

「何?バルディッシュ」

 

「先ほどのジュラさんですが、やはり強力な魔力反応がありました。ランクはAランクオーバーAA。リンカーコアは全く損耗しておりません」

 

「そう、やっぱり」

 

ユークレシア孤立星系、サイレンの星の近くで見た幻影から彼女が高ランクの魔導師としての素質がある事を既に見抜いていたフェイト。

 

「ティアナはどう思う?ジュラさんが高ランクの魔力保有者であることを管理局に報告すべきだと思う?」

 

フェイト自身が関係した、PT事件や闇の書事件で、管理外世界にも天才的魔導師資質を持つ者が少なからず存在することが判明した結果、時空管理局は管理外世界からも魔導師を積極的にスカウトする方針をとっていたのだが、

 

「フェイトさん。私は報告すべきではないと思います」

 

ティアナは局員としては少々異端的な発言ではあるが、ジュラの事は管理局には、黙っておいた方が良いと言う決断をした。

 

「‥‥続けて、ティアナ」

 

フェイトはティアナにその理由を訊ねる。

 

「はい、率直に言いますと、魔導師素質者の管理局入りは自由意思ということになっていますが、実際にはかなり強引で執拗な勧誘が行われており、少なからず管理局は反感を買っていると聞いています。それにこの先にあるイスカンダルではジュラさんのお父さんが待っているんです。死んだと思われていた父親との再会を私たち管理局が妨害する権利はありませんし、それにそのような事をすれば、ガミラスの怒りを買う事になります。そうなれば、ミッドは‥‥」

 

ティアナの言う事も最もである。

家族愛については、フェイトは人一倍気にする方である。

それは幼い頃の自分の家庭事情が関係する。

父親と再会できそうな所に、高ランクの魔力を有している‥‥そんな一方的な管理局側の理由で、折角再会出来る家族との仲を引き裂くのは人としてどうかと思うし、相手はあのガミラスの国家元首の娘。

もし、あのデスラーが自分の娘が管理局に連行と言う事態を拉致だと認識したら、ミッドに遊星爆弾の雨が降り、たちまちこの世界の地球の様に、管理世界に住む人類は絶滅の一途を辿る事になる。

ガミラス軍の艦船もこの地球防衛軍の艦船同様、管理局の次元航行艦では歯が立たない。

そもそも自分たちは救助された立場なのだから、ジュラを勧誘する権利なんて最初からなかった。

 

ティアナの考えを聞いたフェイトは微笑を浮かべた。

 

「うん。私もティアナと同じ考えだよ。ジュラさんにはイスカンダルでお父さんと再会してもらって家族で過ごして貰おう。だから、バルディッシュ。ジュラさんの魔力データは記憶しないでおいてね」

 

「それがよろしいかと。マスター」

 

「クロスミラージュ、あんたもね」

 

「了解です」

 

バルディッシュとクロスミラージュも積極的に同意したため、フェイトとティアナはこの件を封印した。

 

 

サイレンの星を出て数日‥‥

 

まほろば は未だにヤマトに追いついていない。

そんな中、ジュラの下にはギンガがよく訪ねる機会が多かった。

ギンガはジュラからガミラス語、そしてジュラの母、ジレル星人の言葉、ジレル語のレクチャーを受けていた。

元々士官学校にて通信科に在籍していた頃からギンガは様々な言語のスペシャリストになりたいと思い、様々な言語を学んでいた。

それにこの先、ガミラスとの邂逅が予測される中、少しでもガミラス語のマスターとその翻訳機の製作に勤しんでいた。

フェイトとティアナも個人的なのか?それとも執務官、執務官補佐官としてこの先、必要と感じたのか、ギンガと共にガミラス語、ジレル語のレクチャーを受けていた。

また、リニスはジュラの幻影を制御する為、彼女専用のデバイスの製作に取り掛かった。

 

 

そんな中、ワープを後一回行えば、ヤマトに追いつける距離だった為、ワープの準備を行っているその時だった。

 

「右舷、四時の方向から高熱源体反応、急速接近!」

 

艦橋内に緊張が走った。

 

「艦種は特定できるか?」

 

新見に訊ねる良馬に新見がややあってから答える。

 

「お待ち下さい‥‥識別コードはガミラスのモノではありません!!これはガトランティスです!!モニターに表示します」

 

モニターに表示されたのは、カブトガニの様な機体‥‥つい最近まで、自分たちが戦ってきた相手‥‥ガトランティスの主力艦載機、デスバテーターだった。

 

「対空戦闘用意!!」

 

良馬はすぐに指示を出す。

何故ガトランティスの連中が此処に居るのか?

そんな疑問が一瞬浮かんだが、連中は宇宙をまたにかける放浪星間国家。

国家元首と本国であるガトランティスが滅んでもその残党が今も太陽系に存在している様に、宇宙の各地に植民地を持つ彼らがこのマゼラン近海に艦隊を派遣してきても可笑しくはなかった。

やがて、デスバテーターからはミサイルが一斉に発射された。

 

「敵機、ミサイル発射!!」

 

「対空戦闘始め!!」

 

まほろば からは、迎撃ミサイルやパルスレーザー、副砲が掃射され、デスバテーターのミサイルや機体自体へと襲いかかる。

迎撃網にかかり、爆発を起こすミサイルとデスバテーターの機体。

威力偵察だったのか、まほろば は大した被害を受ける事も無くこの事態を脱した。

しかし‥‥

 

「レーダーに感あり!!艦影五!‥‥いえ、後方に更にワープアウトを確認!!艦数、次々と増えます!!」

 

艦橋のスクリーンには、後方の状況が表示されており、次々とワープアウトをしてくるガトランティスの艦影が表示される。

そして、

 

「敵艦隊最後尾に大質量のワープアウトを確認!!」

 

「大将のお出ましか‥‥」

 

最後にワープアウトをした旗艦と思しき艦を見て、良馬を含む艦橋員は驚愕と同時に、顔色を悪くした。

 

「あっ、あの艦は‥‥!?」

 

「間違いない‥‥」

 

「あの時の同型艦だ‥‥」

 

最後にワープアウトして来た艦はこれまでワープアウトして来た通常のガトランティス艦と違い、双胴船の様なシルエットをしていた。

それは紛れも無く、土星圏にて地球連合艦隊と激戦を行ったガトランティス太陽系侵攻艦隊、旗艦メダル―ザと同型の艦影だった。

メダル―ザに防衛軍は苦戦を強いられたにも関わらず、またもやその同型艦が出現した。

あの艦相手では土星圏と同じく苦戦が強いられるのは確実であった。

戦わず、話し合いが出来るのであれば、それに越した事はないが、先程のデスバテーターからの攻撃を見ると素直に話し合いに応じてくれる可能性は低そうだ。

 

「艦長、ガトランティス艦より通信が入っています」

 

「繋いでくれ」

 

「はい」

 

通信回線を開くと、平和の大使とはとても思えない風体の男が映った。

身長二メートル以上の巨体で、鋼の様な屈強そうな体に中世ヨーロッパ風の甲冑を身に纏い、袖無しのコートの様な上着を羽織り、腰には柄の入ったファルシオンの様な刀剣をぶら下げ、左手には刃渡り一メートルは有りそうな両刃のバスターソードを杖の様に床に刺している。

オールバックの髪を後頭部で一つに纏め、戦傷なのか、顔の右半分には鍵爪でつけられた様な傷跡があり、畏怖を抱かせる面持ちをしていた。

 

「地球人よ、よく聞くがいい。我が名はゴラン・ダガーム。ガトランティス、マゼラン方面遠征軍提督なり」

 

相手の名乗りに対し、良馬はスクリーンに向け、毅然とした態度で応じた。

 

「地球防衛、宇宙戦艦 まほろば‥‥艦長の月村良馬です。当方に戦闘の意志はない。即刻攻撃を中止されたい」

 

しかし、良馬の意見にダガームは「何を勘違いしている?」といった表情をし、言い放った。

 

「戦は武門の誉れ、兵を退くなど腑抜けの所業。この状況で和睦などあり得ぬ!!既に戦端は開かれた!!一度抜かれた刃は相手を斃すまで納めぬものなり!!」

 

「予告なく攻撃を仕掛けて来たのは、其方の方だろう。当方は自衛手段の為、応戦したに過ぎない。我々は先を急ぐ航海の途中だ。無駄な戦いをするつもりはない」

 

「笑止!!その様な弱腰の者にその艦は分不相応なり!!地球人よ!!我が軍門に下り、艦を明け渡すべし、さすれば生命は保障するものなり。返答はいかにっ!?」

 

ダガームの提案は交渉と呼べるものでは無く、テロリスト同等、高圧的で一方的な自分たちの要求を押し付けてくるものであった。

 

ダガームと良馬のやり取りは医務室のモニターでも表示されており、ガトランティス側の一方的な要求にリニスたちも苦虫を噛み潰したような表情をしてダガームに対し、嫌悪感を抱いた。

 

(あれで交渉しているつもりなの?一方的な押し付けじゃない。でも、管理局でもロストロギアの回収や管理世界編入に当たっては同様の事が行われているのよね‥‥)

 

(同族嫌悪ってこういう事かしら?)

 

フェイトもティアナも管理局側から一方的にロストロギアを渡せと言われてきた他の世界の住人の気持ちが分かるような気がした。

交渉の余地は無く、降伏か?戦闘か?

そのどちらかしか選択肢は残されていない様だ。

はたして良馬はどの様な決断を下すのであろうか?

 

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