星の海へ   作:ステルス兄貴

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ガミラスの中でバーガーは良いキャラでした。

星巡る方舟に登場し、生き残った時は嬉しかった‥‥

しかも2202にも登場‥今回も生き残ってくれ!!


五十話 再会

 

「最後に勝敗を決めるのは、人の力だ!!」

 

「ガーレ・ドメル!!(ドメル万歳!!)」

 

「プレゼントだ!受け取れぃ!」

 

「こちら第三次攻撃隊、更なる攻撃の要を認む!!我が隊は敵機と遭遇、これと交戦中!!」

 

「天はこの手でヤマトを沈めよというのか‥‥ならば天命に従うのみ!」

 

「こんな結末、認められるかよぉ!!」

 

「どうやら、全員命令違反で軍法会議送りですな」

 

「我がガミラスに栄光と祝福あれ」

 

 

あの戦いから、約一年と半の時が経とうとしていた‥‥。

 

 

 

 

突如、まほろば の前に現れたガトランティス艦隊。

 

しかも旗艦はあの火炎直撃砲搭載艦。

 

その艦隊司令官は まほろば に対して一方的に艦の明け渡しを要求してきた。

 

交渉の余地は無く、降伏か?戦闘か?その二択を迫られた良馬。

 

彼の選択は‥‥。

 

「断る」

 

当然、拒否の姿勢をとった。

 

つまり、戦闘を選択した。

 

元より、ガトランティスに屈するつもりなど毛頭ない。

 

艦橋に居る皆が頷き、ダガームを睨む。

 

すると、彼は良馬たちを小馬鹿にした表情で、

 

「ガハハハハハ‥‥よくぞ申した!!戦はそうでなければ楽しくない!!で、あれば、汝らには名誉ある死を贈ろうぞ。汝らが信じる戦死者の集う魂の国へと逝くがよい!!ハハハハハハ‥‥」

 

不気味な笑いと共にダガームの姿がスクリーンから消える。

 

「来るぞ!!総員、戦闘配備!!」

 

まほろば の艦内には警戒警報を知らせるアラームが鳴り響き、乗員たちはそれぞれの配置へと着く。

 

ダガーム艦隊はナスカ級空母と左右に二隻ずつ計四隻のラスコー級巡洋艦を前衛に配置しており、前衛部隊指揮官イスラ・パラカスはナスカ級空母キスカにて、指揮を執っていた。

 

「あの艦を沈めるは、我等がキスカ航空戦隊よ!!他艦に後れをとるな!!」

 

『おおぉー!!』

 

パラカスの指揮の下、ラスコー級巡洋艦は、キスカを守る様に進撃し、キスカ自体も進撃しながら、艦載機の発艦シークエンスを開始する。

 

前衛部隊の進撃と共に、ダガームの本隊も進撃を開始する。

 

「科学奴隷として使えそうな技術者のみ生かせ!!それ以外の者は全て皆殺しじゃ!!女とて容赦なく殺せ!!」

 

『おおぉー!!』

 

ダガームは各艦に通信を送り、彼の通信を聞いた将兵たちは声を上げる。

 

彼らは殺戮を行う事に喜びを感じ、士気を上げるのだ。

 

それがダガーム艦隊の流儀であった。

 

ただ一つ意外なのは、こういう輩は女子供を捕まえ慰み者にするのが通例なのだが、彼らはそれを行わず、命そのものを奪う極悪非道な連中だった。

 

「あの艦‥‥まほろば の艦長首をあげた者にはたんまりと褒美を出すぞ!!」

 

ダガーム艦隊の各艦はメインエンジンを吹かし、全速で まほろば へと迫った。

 

 

ダガーム艦隊 前衛部隊 旗艦 空母キスカ 艦橋

 

「艦載機、発進準備完了!!」

 

「よしっ、直ちに発艦させろ!!」

 

「はっ!!」

 

キスカの方も艦載機の発艦準備が整い、デスバテーターが次々と格納庫から飛行甲板に移動する。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 第一艦橋

 

まほろば では、敵の前衛空母が今まさに艦載機を発艦させようとしている光景を捉えた。

 

「艦長、此方も艦載機で迎撃しますか?」

 

新見がコスモタイガーを出撃させるか訊ねる。

 

「いや、この近距離での出撃は危険だ。発艦中に撃ち落されてしまう。それよりも後部砲塔へエネルギー伝達及びミサイル発射準備」

 

「了解。後部砲塔へエネルギー伝達及びミサイル発射準備」

 

「副長」

 

「はい」

 

「この宙域で逃げ込めるような惑星が無いかを捜索してくれ」

 

「了解」

 

「砲雷長、後部主砲で空母の甲板上を撃て!!狙いは甲板の上に居る艦載機だ」

 

「艦載機ですか?」

 

「ああ、此方の射程内で堂々と発艦準備をするのが悪い」

 

「ですが、直接空母本体を狙った方が効率なのでは?」

 

良馬が何故空母本体では無く、空母の甲板を狙うのか理解しかねたフェリシア。

 

その訳を良馬が説明しようとした時、新見が惑星を発見し、それを報告した。

 

「艦長、近くに浮遊惑星があります」

 

「よしっ、航海長、針路変更、惑星方向へ転舵」

 

「了解、針路変更」

 

まほろば の艦首を惑星方向へ向け、全速で惑星へと向かう。

 

「えっ?艦長、逃げるんですか?」

 

「逃げる」

 

フェリシアの質問に良馬は躊躇なく答える。

 

「このままこの宙域に留まっていれば、あの戦艦(『メガルーダ』)が搭載している例の転移砲‥火炎直撃砲で此方が沈むのは確実だ。だから時間稼ぎの為、空母の甲板を撃ち、損傷させて、あの空母に連中の足止めをしてもらう」

 

「成程」

 

空母を沈めない訳を聞き、納得した様子のフェリシア。

 

確かに土星で見たあの戦艦(『メダル―ザ』)の砲撃‥火炎直撃砲の威力は強力だ。

 

短時間で‥‥しかも一撃で防衛軍の主力艦が次々と沈められ、土方提督も一時、土星の環まで後退し、敵を誘い込んで自滅させた戦法をとった。

 

正直に言ってあの戦艦(『メダル―ザ』)を真正面から相手をするなど、自殺行為に等しい。

 

「後部砲塔、ショックカノン測的完了、目標敵空母甲板」

 

「撃ち方始め!!」

 

「撃ち方始め!!」

 

まほろば の第四、第五砲塔からショックカノンがキスカの甲板向けて放たれ命中。

 

出力を絞り、艦体そのものを狙っていないと言っても甲板には爆装した艦載機がおり、次々と誘爆。

 

発艦用設備を破壊し、整備員を艦外へと放り出す。

 

突然の砲撃を受け、キスカは行足を止める。

 

護衛の艦もそれぞれ回避行動を取り、足並みが乱れる。

 

「よしっ、今だ!!最大船速!!逃げろ!!砲雷長、ついでに煙幕弾と機雷を連中にプレゼントしてやれ!!」

 

「了解!!」

 

まほろば からのスモーク弾をもろともせず、突っ込んで来るダガーム艦隊だったが、その艦隊にスモークの次は自走式機雷が襲い掛かる。

 

仕方なくダガーム艦隊は機雷の除去の為、スモークに向けて発砲するが、スモークの中で発砲したせいで、誤って味方を撃つ艦も居た。

 

だが、全体の統率がとられていないダガーム艦隊はスモークを大きく迂回した駆逐戦隊が思ったよりも早く まほろば に追いついて来た。

 

「副長、惑星の解析を急いでくれ!!」

 

「は、はい」

 

駆逐戦隊は射程内に入るや否や砲撃してくる。

 

しかし、狙いは雑であった。

 

だが、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」かのように、何発かは まほろば に着弾した。

 

「艦底部に被弾!!」

 

「技術班!!応急修理を急げ!!」

 

「後部砲塔!!続けて撃て!!」

 

フェリシアが第四、第五砲塔へ発射命令を出し、敵の行足を止めようとする。

 

互いに高速で移動している為、正確な射撃は出来ず、被弾し落伍した艦もいれば、当たり所が悪く爆散する艦もいた。

 

「あれだけの被害を出しても何故追撃を止めない!?」

 

味方の犠牲をもろともせず、追撃して来るダガーム艦隊に良馬は思わず舌打ちをする。

 

ガミラスでさえ、此処までの追撃などしない筈だ。

 

どうやら、この艦隊の連中は人命を軽視した戦い方をする連中の様だ。

 

 

ダガーム艦隊 旗艦メガルーダ 艦橋

 

まほろば の思わぬ行動にダガーム自身も思わず舌打ちをした。

 

「なかなかやりおるではないか。しかし、我が艦隊からは逃れられぬぞ!!火炎直撃砲用意!!目標、まほろば!!」

 

ダガームの命令でメガルーダは速度を落し、安定した体勢をとる。

 

火炎直撃砲を正確に打ち込むには安定した態勢でないと撃てないのだ。

 

それは土星圏で対峙したバルゼーのメダル―ザも同じで、突如発生した水蒸気爆発とその気流により、正確な射撃が不可能となり、そこへ防衛軍の砲撃を受け、火炎直撃砲を封じられた。

 

最もそれはバルゼーの慢心が招いた結果でもあった。

 

しかし、この場には水蒸気爆発や気流を生む、氷のアステロイドは無く、絶好の射撃体勢が取れた。

 

だが、火炎直撃砲を使用する事で、ダガームは当初の狙いであった まほろば と技術者の捕獲と言う事を諦めた。

 

「火炎直撃砲、発射準備!!着弾予測地点周辺の艦艇は退避せよ!!」

 

オペレーターが各艦に火炎直撃砲着弾予測点の座標を送り、退避を促す。

 

メインスクリーンには前方の惑星へ逃げ込もうとしている まほろば の映像が表示されていた。

 

「星を盾に逃げると見える‥‥ふん、臆病者が!!」

 

まほろば の行動を見てフンと鼻で笑うダガーム。

 

そして着々と火炎直撃砲の発射準備が進められて行く。

 

そんな中、

 

「グリアデが突出し過ぎています。提督、このままでは照準にズレが生じる可能性があります」

 

照準を担当している砲手から意見が入る。

 

突出している味方の巡洋艦グリアデにも先程の退避命令は届いている。

 

だが、やっとのことで まほろば に張り付いたのだ。

 

しかも周りには自分以外誰もいない。

 

自分たちに褒美の絶好のチャンスが来たのだ。

 

グリアデの乗員は皆そう思っていたに違いない。

 

こういった所が集団ごとに統括された艦隊の欠点である。

 

友軍は味方でもありライバルなのだ。

 

故にチャンスが到来すれば、味方を出し抜いてでもそのチャンスをモノにする。

 

「グリアデめ、功を焦りおって‥‥」

 

ダガームは唸るが、決してグリアデが悪い訳では無い。

 

これはダガーム艦隊の本質そのものに問題があったのだ。

 

「如何いたしましょう?このままでは、グリアデを巻き込んでしまいますが‥‥?」

 

「構わぬ」

 

副官のボドム・メイスが指示を仰ぐと、ダガームは即答する。

 

「えっ!?そ、それはどういう事でしょうか?」

 

ダガームの言葉の意味が分からず、その真意を訊ねるメイス。

 

「我がガトランティスの栄光の輝きを彼奴等に見せてやれ」

 

「まっ、まさか‥‥提督‥‥」

 

ダガームの言葉の意味を理解したメイスは震える声で言う。

 

彼は味方艦諸共 まほろば を火炎直撃砲で屠ると言うのだ。

 

「火炎直撃砲発射!!」

 

ダガームの命令が下され、メガルーダの艦首からは灼熱の炎が放たれた。

 

 

メガルーダから火炎直撃砲が発射される少し前、

 

まほろば は全速で前方の惑星へと逃げていた。

 

追撃して来るのは敵の巡洋艦一隻。

 

ガトランティスの容赦ない追撃を受け、「しつこい」と思いつつも、動きを止めればあの火炎直撃砲の絶好の的になる。

 

故に止まる事は許されなかった。

 

その時、

 

「敵旗艦に高エネルギー反応と微弱ながら空間歪曲反応を確認!!」

 

新見の報告を聞き、艦橋内に緊張が走る。

 

彼女の報告は、防衛軍にとってトラウマとも言うべき、あの最悪な兵器、火炎直撃砲が発射体制に入った事を知らせるモノだった。

 

「っ!?来るぞ!!下げ舵一杯!!取り舵15!!急げ!!」

 

少しでも今の航路からズレなければ、あの灼熱の炎に飲み込まれる。

 

「了解!!下げ舵一杯!!取り舵15!!」

 

永倉もあの火炎直撃砲の威力を知る為、今の航路から少しでもズレて回避、もしくは少しでも被害を減らそうと回避努力を行う。

 

やがて、まほろば を追いかける敵巡洋艦の更に後方の空間に波紋が浮かび、グニャリと歪むと中心に向かって光が収束した。

 

次の瞬間、その中心に巨大な炎の塊が現れ、敵巡洋艦諸共 まほろば に襲い掛かって来た。

 

超高温と灼熱の炎のエネルギー波は近づくだけで敵の巡洋艦を消失させ、その爆炎さえも跡形も無く飲み込んだ。

 

そしてその炎は まほろば をも飲み込もうとしたが、事前の回避行動と敵の巡洋艦の影響で照準が少々狂ったのか、直撃を免れた。

 

しかし、まほろば の右舷側を通り過ぎていった炎のエネルギー流は まほろば の波動防壁を消失させ、右舷側の装甲の一部を融解させた。

 

そして、艦内ではゴゴゴゴゴゴ‥‥と物凄い振動が襲い掛かり、乗員は必死に何かに掴まった。

 

「や、やっぱり、火炎直撃砲か‥‥」

 

灼熱の炎の脅威が去り、自分たちの予測が外れていなかった事を認識した良馬たち。

 

出来れば、外れて欲しかった。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 医務室

 

まほろば の医務室にて、初めて火炎直撃砲の威力を目の当たりにしたフェイトたちは冷や汗をびっしょり掻いていた。

 

「あ、あれが‥‥」

 

「火炎直撃砲‥‥」

 

火炎直撃砲の存在は救助された時に映像を見て、その存在を知っていたが、こうして生でその威力を見ると、波動砲とは別の意味で脅威であった。

 

「何なのアレ‥‥」

 

ジュラ自身も初めて見た火炎直撃砲に驚いている。

 

「物凄い熱量でしたよ‥‥」

 

「確か高エネルギー弾を転移させて相手の至近距離に直接打ち込む兵器でしたよね?」

 

「波動砲の威力もすごかったけど、こっちも凄い威力ね」

 

「まほろば の人は過去に経験があるから、今の攻撃は回避できだけど‥‥」

 

「もし、何も知らなかったら‥‥そして、あんなモノが直撃すれば‥‥」

 

「 まほろば の装甲と言えど、簡単に融解していたわね‥‥それにしても‥‥‥」

 

「え、ええ‥あいつら、射線上に味方が居たのに構わず撃つなんて‥‥」

 

フェイトとティアナも味方諸共吹き飛ばそうとした敵艦隊の司令官の愚行に嫌悪感を抱いた。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 第一艦橋

 

「敵の後続艦接近!!」

 

火炎直撃砲を逃れた まほろば に止めをさそうと敵は再び艦隊戦へと切り替えて来た。

 

しかし、艦隊を差し向けると言う事は、火炎直撃砲は暫く撃っては来ない筈。

 

もし、敵の司令官が味方の艦、全てを犠牲にしてまでも此方を沈めようとするのであれば、話は別だが‥‥

 

「艦長、惑星の解析が終了しました」

 

此処で漸く前方の惑星の解析が終わった。

 

それによると、前方の惑星は大きな空洞惑星となっているらしい。

 

(惑星サイズのサンゴ礁の様なモノか‥‥しかし、逃げるには持ってこいの星だな。障害物が多い星ならば攻撃もしにくい筈だ)

 

「敵を引き付けつつ前方の惑星へ降下、空洞を利用して敵を振り切る!!」

 

まほろば はエンジンを吹かし、惑星へと全速で降下して行く。

 

惑星は年老いた星の様で表面には水も木も無く、大きな穴を彼方此方に開けている星で、表面を見る限り人工構造物は確認できず、この星は無人惑星の様だ。

 

穴の大きさはとても大きく まほろば でも余裕で通り抜ける事が出来た。

 

その上をビームが通り過ぎていく。

 

ビームは まほろば に命中することなく、惑星を構成する鉱物に命中する。

 

すると、着弾点が爆発を起こし、大岩が降り注ぐ。

 

敵艦も まほろば を追って次々と降下して来る。

 

しかし、艦隊行動を取るにはこの惑星の内部は余りにも不向きだ。

 

個々で障害物を回避しつつ まほろば に攻撃を仕掛けてくる。

 

「くそっ、こんな状況下でもお構いなしかよ!!」

 

永倉が毒づきながら操艦レバーを握りながら前方を睨む。

 

まほろば もただ攻撃を受けるだけでは無く、反撃を行う。

 

反撃を受け、墜落する艦、爆散する艦がいる中、後続艦の反応が漸く消えた。

追撃艦を振り切ったようだ。

 

だが、その直後、今度は上から大きな爆発が起き、まほろば 目掛けて岩が降って来た。

 

「くそっ、此処からいぶり出す気か!?」

 

ガトランティス艦隊は空洞内の追撃戦は不利と判断した様で岩盤を崩し、まほろば の動きを止めようして来た。

 

「これ以上、下層を航行するのは無理か‥‥やむを得ない航海長、上昇だ」

 

この星を出ると火炎直撃砲で沈められる恐れがある。

 

しかし、このまま下層に居ると瓦礫で押し潰される。

 

そこでこの星の最上層を航行しようとしたら、敵の巡洋艦が待ち構えていた。

 

「VLS開口!!ミサイル撃て!!」

 

煙突ミサイルから多数のミサイルが巡洋艦めがけて放たれる。

 

迫る煙突ミサイルを回転輪胴砲で撃ち落していくが、全てのミサイルを撃ちおとす事はかなわず、命中し墜落して行く艦もいたが、それでも連中は諦めない。

 

ミサイル攻撃を免れた巡洋艦と駆逐艦は まほろば と並走し、ビームを撃って来る。

 

互いに砲撃戦をしながら惑星の中を進んでいくと、突如、惑星の中にある穴からニュルリと大きなイカまたはタコの様な姿の生き物が大量に出て来た。

 

穴から出てきたイカまたはタコの様な生き物は まほろば と敵の巡洋艦と駆逐艦を追って来る。

 

その姿は まほろば のレーダーでも捕えていた。

 

「後方より、未確認飛行物体接近!!」

 

「敵の援軍か!?」

 

「いえ、この反応は艦船反応ではありません!!未確認飛行物体増殖しつつあり!!左右から針路を塞ぐように接近してきます!!」

 

周囲を確認すると、まるで大海原を泳ぐように体を発光させながら まほろば と敵艦の後ろからイカかタコの様な姿をした軟体生物様なモノが迫って来る。

 

この軟体生物の様なモノが無害な物体とは無縁な事は敵艦の様子を見れば分かる。

 

敵艦は まほろば よりも迫り来る軟体生物の様なモノに対しビームを発砲している。

 

軟体生物の様なモノは砲撃にも怯むことなく敵艦へと接近し、船体全部に軟体生物の様なモノが付着すると、敵艦は墜落し、爆発・炎上した。

 

やがて、軟体生物の様なモノは まほろば の船体にも吸着し、破損した箇所から触手の様なモノを艦内に突っ込んで来た。

 

この様子から明らかにこの軟体生物の様なモノな物体は鉱物ではなく、生命体である事がわかる。

 

実際、この軟体生物の様なモノを分析した新見からは「生体反応がある」と報告を受けた。

 

「宇宙生物か‥‥」

 

「破損個所から生物が侵入!!」

 

「艦長、波動エネルギーが低下しとるぞ!!」

 

火炎直撃砲を回避した際、生じた傷から触手を差し込み まほろば のエネルギーを吸い始めた宇宙生物。

 

このイカまたはタコの様な宇宙生物かつてテレザート宙域に点在していたバキューム鉱石の生物版の特徴を持っている様だ。

 

「まずいぞ、艦長このままエネルギーを吸われ続けられたら、十分足らずで航行不能になるぞ!!」

 

「こんな時に‥‥」

 

思わず苦虫を潰したような表情になる良馬。

 

先程、敵艦が墜落したのはエネルギーを全て吸い尽くされたからだ。

 

「このままじゃ墜落しちまいます!!艦長、ローリングしてあのイカ共を振り落します!!」

 

永倉が操縦レバーを操作し、艦を回転させる。

 

これだけの大型艦が回転すれば、遠心力も相当なモノなのだが、宇宙生物は小さいモノは幾つか取れたが、大型のモノはそのまま食いついたままだった。

 

「くそっ、全然取れねぇ‥‥艦長どうしますか?」

 

この軟体生物の様なモノが生物である以上、星を離れれば、気圧や空気の問題から死滅する可能性はある。

 

しかし、星の外へ出れば、ガトランティス艦隊が待ち受けている。

 

あの火炎直撃砲や飛行甲板を修復した空母が艦載機を展開させて来る事も考えられる。

 

それならば‥‥

 

「総員ワープ準備!!」

 

良馬の下した命令に艦橋要員はギョッとした表情になる。

 

今まで惑星内でのワープなんてあのヤマトでさえ、実例が無いのだ。

 

しかし、このままエネルギーを吸われ続けたら、航行不能になり、まほろば は敵艦に拿捕あるいは射撃の的にされて沈む。

 

それよりは危険な賭けではあるが、ワープでこの星からの脱出をした方が生存の可能性はある。

 

「宇宙生物は波動エネルギーを吸っています。であれば、ワープ進入時の極性反転で排除できるかもしれません」

 

新見がシミュレートで理論的な裏付けをする。

 

「うん‥‥航海長、カウントダウンは省略!!タイミングは全て航海長に一任する!!」

 

「了解!!機関長出来るだけエネルギーをワープ機関へと回して下さい!!」

 

「分かった!!シリンダーがぶっ飛んでもエネルギーは供給してやる!!」

 

「総員に告ぐ!!本艦はこれより敵艦及び宇宙生物の突破の為、ワープに入る!!全員対ショック姿勢をとれ!!」

 

良馬は まほろば に艦内放送を流し、乗員に注意を促す。

 

良馬の放送を聞き、医務室では、リニスや原田たちは負傷者が横になっているベッドにベルトを巻き、負傷者がベッドから落ちない様に固定する。

 

「惑星内でワープなんて‥‥」

 

「大丈夫なんでしょうか?」

 

ティアナとジュラが放送を聞き、不安そうに言う。

 

「二人とも、ここは月村艦長を信じよう」

 

フェイトはティアナとジュラを励ますが、それでもやはり不安の色は拭えなかった。

 

「ワープ可能エネルギー保持限界点まであと十秒‥‥九‥‥八‥‥七‥‥」

 

井上がカウントダウンを行い、そしてワープの条件が漸く整い、

 

「ワープ!!」

 

永倉がワープ機関を作動させ、 まほろば の前方にはワームホールが出現し、まほろば はその次元の裂け目へと入って行く。

 

取り付いていた宇宙生物は時空の裂け目に削ぎ落とされるかのように まほろば の船体から振り落とされ、それでも頑張って張り付いていたモノは、通常空間と異次元の間に生じる圧力によってすり潰された。

 

まほろば の姿はそのまま亜空間へと消え、惑星軌道上には目標をロストしたダガーム艦隊が残された形となった。

 

折角の大物を取り逃がしたダガームの怒りはすさまじく、たまたま近くに居たメイスを殴りつけ、

 

「怒髪衝天!!」

 

両手を上げてウガッー!!と叫んだ。

 

 

此処で時系列は まほろば がダガーム艦隊の攻撃を受ける前まで遡る。

 

かつて、七色星団にてヤマトと雌雄を決したドメル機動部隊。

 

その中で第二空母と称されたガイベロン級多層式航宙母艦のランベアは七色星団の戦いで撃沈はされなかったものの、酷く傷ついた状態であった。

 

一時はヤマトの砲撃を左舷側の艦首に受け、七色星団のイオン乱流の雲海へと沈んだが、乗員の必死の努力で何とか推力を回復させ、命からがら七色星団宙域から脱出できた。

 

しかし、その際、艦長のルタン・ベスター大佐が戦死してしまい、現在はドメル幕僚団の中で唯一の生き残りであるフォムト・バーガー少佐が艦の指揮を執っていた。

 

そんな彼は今、ランベアの艦長室にて片膝を立てて椅子に腰に掛け、机の上に置いたホログラム発生装置の映像(ホログラム)を見つめていた。

 

士官としては行儀が悪いが、生憎とフォムト・バーガーと言う男はこういう男なのだ。

 

ホログラムには、一人のスカートを穿いたガミラス人の少女が映っていた。

 

長く美しい赤い髪を藍色のリボンで結い上げ、そして自分と同じ青い肌を持つ少女が笑みを浮かべながら語り掛けていた。

 

「えっ!?ミランガルと同じ部隊なんだ。じゃあ、姉さんと一緒だね♪~」

 

「メリア‥‥」

 

勿論ホログラムに話しかけてもホログラムの少女は記録された内容以外の事は話さない。

 

だが、漂流している現状では部下の前では強く振る舞わなければならない。

 

彼が弱音を吐けるのは、このメリアと呼ばれたホログラムの少女の前だけであった。

 

彼は、ドメル幕僚団では最年少であり、性格は非常に血気盛んで直情的。

 

師団が電撃戦を展開する際に先陣を切るドメル軍団の切り込み隊長を務めていた。

 

何故彼は、自分の死を恐れずに戦場を駆け巡れたのかと言うと、若くして守るべき大切なモノを失っていたからだった。

 

直情的な性格のバーガーは己の無力を人一倍憎んだ。

 

尊敬する上官であったドメル、「親爺」と慕っていたハイデルンは共に乗艦していたゼルグート級一等航宙戦闘艦、ドメラーズⅢにてヤマトとの戦いでイオン乱流へと誘い込まれ、艦は大破、最後は艦橋部分を切り離し、ヤマトの艦底部に張り付き、自爆して落命。

 

戦友であったゲットーとクライツェはヤマト所属の航空隊と激しいドックファイトの結果、撃墜され戦死。

 

長い間、共に数多の戦場を駆け巡った家族の様な仲間たちをヤマト一艦の為に失った。

 

命からがら七色星団から脱出したが、これは明らかにガミラスの軍規に照らし合わせると、敵前逃亡罪だ。

 

七色星団の戦いの後、ガミラスはヤマトと本星で決戦を行い、その後に敗れた。

 

一時、デスラー総統の死亡説も流れたが、デスラー総統は存命し、小マゼランにて、ガミラス残存艦に集結命令を下した。

 

集ったガミラス残存艦隊はデスラーと共にヤマトへ復讐戦を行うが、最終決戦の中、デスラーは古代と‥‥地球と和解し、新天地を求める大航海へと入る。

 

その前に、最後に生まれ故郷のガミラス星を見る為、再びマゼラン星雲へ一年半ぶりに帰って来た。

 

ガミラス残存艦隊がマゼランへ接近した時もデスラーは再び招集命令をかけていた。

 

最初の招集命令の時は、ランベアの修理がまだ終了していなかった為、受信出来なかったが、これまでガミラスがあちこちの小惑星に建造した補給基地の廃墟を転々としながらランベアは艦の修理と物資の補給を行ってきた。

 

そして二度目の招集命令は受信でき、バーガーはその招集命令に応じた。

 

敵前逃亡罪で裁かれれば死刑になると分かっていたが、今となっては惜しむ命でもない。

 

自分一人の命で何とかランベアの他の乗員の命だけは助命してもらおうと思っていた。

 

ランベアの乗員はその多くが老兵か、まだあどけなさが残る少年兵たちばかり‥‥。

 

せめて少年兵の彼らだけは親御さんの下へ帰してやりたかったのだ。

 

ただ唯一の未練としてはヤマトに‥‥地球に対し、一矢報いる事が出来なかったことだろう。

 

しかし、機会があれば、其れを行いたいとバーガー本人は今でもそう思っている。

 

「ねぇ、フォムト。今度姉さんと一緒に‥‥」

 

ホログラムの少女が其処まで言った時、彼はホログラムのスイッチを切った。

 

ブザーが鳴り、「伝令であります!!」と、扉の外で少年兵の声がしたからだ。

 

扉を開けると、まだまだガミラス軍兵士のカーキ色の軍服が似合わない一人の少年兵が立っていた。

 

「バーガー艦長代理」

 

「少佐でいい‥‥なんだ?」

 

「バーレン大尉殿が艦橋へお越し下さいとのことです!!」

 

「分かった」

 

バーガーは伝令の少年兵と共にランベアの艦橋へと向かった。

 

 

ガイベロン級多層式航宙母艦 ランベア 艦橋

 

「バーガー少佐殿をお連れしました」

 

「わざわざすまんな」

 

艦橋には、七色星団の戦いにおいて、ヤマトの波動砲の発射口にドリルミサイルを撃ち込んだ空間重爆撃機DBG88 ガルントのパイロット(機長)を務めたヴァンス・バーレン大尉がバーガーを待っていた。

 

彼自身もバーガーやランベアの様に、ヤマトにドリルミサイルを撃ち込んだ後、母艦(ゲルバデス級航宙戦闘 ダロルド)への帰還途中で、ヤマトの航空隊の攻撃を受け、機体が損傷した状態でイオン乱流の中へ墜落した。

 

しかし彼らはあの戦いとイオン乱流の中、辛くも生き延び、ランベアへ収容され、以降バーガーと共に艦の運営に当たっていた。

 

「仕方ねぇよ。艦内電話が使いたくても配線が彼方此方切れちまって使えねぇ状態なんだから」

 

ランベアは今、艦内の一斉放送は出来るが、個室同士を結ぶ艦内電話は使用不能で、復旧させるには一度ドック入りか、修理に使う資材を調達する必要があった。

 

艦内には寝ている者も居たので呼び出しだけで一斉放送を流すわけにもいかなかった。

 

「それで、何かあったのか?」

 

「友軍艦艇が接近しとる」

 

「友軍?」

 

「ああ、第八警務艦隊じゃ‥‥停船命令も出とる」

 

「数は?」

 

「十二隻じゃ、内二隻はゲルバデス級じゃぞ」

 

「ゲルバデス級?」

 

バーガーは第八警務艦隊のその艦種に引っかかるのを覚えた。

 

「艦名は?」

 

「ミランガルとニルバレスじゃよ」

 

艦名を聞いたバーガーは肩を落とす。

 

「ったく、よりにもよってアイツの艦かよ」

 

「うむ、確かミランガルの艦長は、リッケのお嬢ちゃんじゃったな」

 

バーガーとバーレンはミランガルに乗艦する第八警務艦隊司令兼ミランガルの艦長を知っている様子だった。

 

発光信号を打ちながらランベアへと接近するゲルバデス級航宙戦闘母艦のミランガルを見ながらバーガーは呟いた。

 

「爺さん、ミランガル相手じゃ仕方がねぇ停船だ。あっちの方が足は速ぇからな」

 

「そうか。お前さんがそう言うのであれば、そうしよう」

 

「アイツが来たら、艦長室へ通してくれ」

 

バーガーはオペレーターに指示を出すと、ポケットに手を突っ込んで艦橋を後にした。

 

ランベアが機関を停止させると、甲板はダークグレー、艦体は赤、黒、灰色の迷彩色が施されたゲルバデス級航宙戦闘空母、ミランガルがランベアの左舷側に接舷した。

 

周囲にはミランガルの同型艦ニルバレス他、デストリア級航宙重巡洋艦、ケルカピア級航宙高速巡洋艦、クリピテラ級航宙駆逐艦がランベアを包囲する様な陣形で停止した。

 

そして接舷したミランガルから発進した一艇の内火艇がランベアの甲板へと着艦し、そこからガミラス式の船外宇宙服を着た人物が一人、ランベアの甲板へと降り立つ。

 

やがて、その人物はランベアの艦長室へと向かった。

 

バーガーが待機していた艦長室のドアがノックの後、開かれ、彼は予想通りの人物が着た事で口元をフッと緩めた。

 

「やっぱりお前か、ネレディア」

 

「久しぶりね、フォムト」

 

切れ長の瞳、長いまつ毛、細く高い鼻筋が通り、ネレディア・リッケ大佐は軍服でなければ、ファッションモデルと言われればそれを信じてしまうぐらいの美貌の持ち主であった。

 

短く切った赤紫色の髪でもその美貌を損なわせないのは、彼女の立ち振る舞いに優雅さと気品があるからだ。

 

彼女はバーガーと同い年で地球年齢に換算すると今年で二十八歳になり、彼とはガミラスの士官学校でも同期の間柄であった。

 

それにも関わらず、女性士官でバーガーよりも階級が上なのは、異例中の異例であり、その訳はガミラスの歴史の中で『チタベレーの戦い』と呼ばれる戦場において大きな武勲をたてた為であった。

 

ネレディアは、バーガーに改めてデスラーからの集結命令、そしてヤマトを含む地球艦船との戦闘行為の中止命令を伝えた。

 

バーガー自身もその命令は受けていたが、やはりこうして改めて伝えられると、釈然としない。

 

そんな様子のバーガーを見て、ネレディアは呆れる様子で言う。

 

「不服そうね」

 

「当たり前だ。どうして連中との戦いをやめなくちゃいけねぇんだ?」

 

「貴方も軍人でしょう?それなら上官の命令には従う義務があるんじゃない?ましてやこれは総統からの命令よ」

 

「それは時と場合によるだろう!!それに軍人以前に俺は男だっ!!」

 

ふぅ~‥‥と、ネレディアが小さく息を吐く。

 

そこへ、艦長室のドアがノックされた。

 

「入ります」

 

先程の伝令の少年兵がお盆を持って入って来た。

 

お盆の上にはカップが二つ乗っかっていた。

 

「どうぞ」

 

少年兵はネレディアにカップを差し出す。

 

「ありがとう」

 

ネレディアは少年兵に礼を言う。

 

バーガーもお盆の上のカップを取り、少年兵にアイコンタクトで部屋から出ろと伝える。

 

「失礼します」

 

役目を終えた少年兵は艦長室から出て行った。

 

彼はそのままランベアの艦橋へと戻る。

 

「どうじゃった?」

 

艦橋にてバーレンが少年兵にバーガーの様子を訊ねる。

 

「少佐殿は物凄い剣幕でした」

 

「ふん、だろうな‥‥」

 

バーレンには大体の予想はついているみたいだった。

 

「ミランガルの艦長はとても綺麗な方でした‥‥」

 

少年兵ははにかみ、僅かに頬を赤く染めた。

 

「やはり、リッケの嬢ちゃんだったか‥‥」

 

少年兵の様子を見て、ミランガルの艦長は自分の予想通りの人物だった事に思わず昔を懐かしむ様な目をするバーレンだった。

 

「嬢ちゃん?」

 

少年兵はバーレンの「嬢ちゃん」と言う言葉に首を傾げた。

 

 

「でも、総統はヤマトと‥地球と和睦をしたのよ。貴方が不服だろうとなかろうと既にガミラス軍からのヤマト、地球への攻撃は禁じられた。これは総統からの厳命で従わなければ反逆罪よ。それにただでさえ、貴方は七色星団からの敵前逃亡罪も適用されるかもしれないのに‥‥」

 

艦長室ではネレディアが引き続きバーガーを説得していた。

 

「だからこそだ。どうせ、死ぬなら、連中に一矢報いて仲間の仇をとる」

 

バーガーは握り拳を大きく振って力説する。

 

「‥‥相変わらずね」

 

「な、何?」

 

二人の様子、そしてネレディアのこの一言でバーガーとネレディア‥‥どちらが大人なのかよくわかる。

 

軍人は合法的に人殺しを許される職業である。

 

それ故に暴走しない様に規律はしっかりと定められている。

 

例え、停戦命令が下るほんの僅か前に親や恋人が殺されても停戦命令が下されれば即時に戦闘行為を止めなければならない。

 

命令を無視すれば、軍人は賊へと成り下がる。

 

そしてその刃を政府へと向ければクーデターの要因となる。

 

だからこそ軍隊内には軍人を取り締まる軍人‥「警務」「憲兵」と言う部署があるのだ。

 

戦争となれば、互いに殺し殺され、恨みと仇の数は増えていく。

 

しかし、どこかで妥協しなければ、延々と殺し殺される戦争が続く。

 

そして軍人はただの殺戮者となる。

 

これはガミラスの士官学校でも初期の段階で習う事で、当然バーガーも教官から教えられた‥‥と言うか、知らないまま士官学校を卒業する事は不可能だ。

 

「馬鹿な所は変わっていないって言う意味よ」

 

ネレディアはガミラス軍の大佐ではなく、旧友を見る温かな表情で言う。

 

彼女の表情に自分も少々熱くなり過ぎていたと、自覚した様で、気まずそうに彼女から視線をそらし、

 

「馬鹿は生まれつきだ」

 

と、まるで照れ隠しの様に言った。

 

「此処(艦長室)に来るまで艦内の様子や乗員の顔を見てきたわ。乗っているのは、老兵やさっきみたいなまだまだ若い少年兵ばかり‥‥皆、七色星団の戦い以降宇宙を漂流し、疲れ切っている。皆が貴方の様に元気なわけじゃないのよ」

 

「そんな事は分かっている」

 

「空母と言っても艦載機は本来の搭載機分の半分以下、弾薬も食糧も底をつきかけている‥‥そんな状況で戦えるの?大勢の乗員を貴方の私怨の為に巻き込むつもり?」

 

「俺だってアイツらを家族や仲間の下に帰してやりたい。でも、それと同時に仇も討ちたいんだ‥‥ドメル閣下もハイデルンの親爺もゲットーもクライッツェも皆‥皆、ヤマトに‥地球人に殺されたんだ」

 

バーガーは痣が出来るのではないかと言うぐらいの力で自分の膝をギュッと握る。

 

そんな様子のバーガーをネレディアは彼の左頬に残る傷を見ながら呟く。

 

「また‥‥あの時みたいに?」

 

その人言を聞き、バーガーは「そ、それは‥‥」と、口ごもる。

 

これ以上説得してもラチが明かないと思ったネレディアは作戦を変更した。

 

「とりあえずこの宙域から離れましょう」

 

突然話題を変えられたバーガーは顔を上げる。

 

「この宙域は魔女が住む海よ」

 

「魔女?ああ、宇宙に住む魔女がその美しい歌声で、船乗りを惑わしてその魂を喰らうってヤツか?馬鹿馬鹿しい」

 

「でも、実際にこの付近の宙域で過去に何隻もの船が行方不明になっているのよ。中には軍艦も含まれているわ」

 

「下らねぇ、そんな御伽話を信じているのは宇宙に出た事のないガキぐらいなもんだろう。そんな話を信じてガミラス軍人なんてやってられっかよ」

 

そう言い放ったバーガーであるが、その瞬間、彼の耳に聴こえてくる音に「なんだ?」と椅子から立ち上がり周囲を見渡す。

 

音のする方向を探ろうとしたが、その音は全方位から聴こえてくる様だ。

 

次第に聞き慣れてくると、それは女の歌声であった。

 

少年兵辺りが、故郷の母親か恋人を思い、曲を流しているのか?

 

それとも何かの誤作動か?

 

いずれにせよバーガーは、この迷惑な艦内放送を止める為、艦長室にあるマイクで艦内に放送を流した。

 

「こら!!艦橋!!変なモンを流すな!!」

 

「い、いえ!少佐殿此方は何も流していません!!」

 

艦内の全員が聴こえるスピーカーからビクつく少年兵の声がした。

 

「だったら、何処の部署で此奴を流しているのか調べろ!!何だ!?この歌は?」

 

「う、歌‥でありますか?その様なモノは聴こえませんが‥‥」

 

「何を言ってやがる!!現に女の様な声が歌を歌って‥‥」

 

バーガーが其処まで言うと、彼の手に握られていたマイクをネレディアがスッと掴む。

 

そしてバーガーからマイクを取り上げ、真剣な目で彼に言った。

 

「何も聴こえないわよ。フォムト」

 

「お前まで何を言っている!?」

 

「しっかりして、本当に何も聴こえないわよ」

 

「な、んだと‥‥」

 

ネレディアの表情から彼女が嘘を言っている様には見えない。

 

しかしバーガーの耳には確かに女の歌声が聴こえおり、その声は次第に大きくなっていく。

 

やがて、危険を知らせる警報音が艦内になり始めた瞬間、周囲の空間が歪んでいくような感覚がバーガーを襲った。

 




PS2版のヤマトのソフトでガミラスのステージをクリアーすると、ガミラスの援軍が最後に来ますが、彼らもまた作中のバーガーと同じくらいの期間、宇宙を彷徨ってデスラーと合流した訳ですので、そうした点からバーガーが原作よりも長い期間、宇宙を漂流していても不思議では無いと思い今回、登場させました。

星巡る方舟編ではバーガーは欠かせないキャラなので‥‥

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