星の海へ   作:ステルス兄貴

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ヤマト、999と同じく松本零士先生の作品、キャプテン・ハーロックに登場した敵、イルミダス。

緑色の肌という共通点から、イルミダス=ガトランティス な説もあったので、ダガームの上官は、『わが青春のアルカディア』に登場したイルミダス地球占領軍司令官、ゼーダを採用しました。

彼は肌の色は当然の事、髪型もなんとなくズォーダーに似ていたので、イルミダス=ガトランティスの場合、もしかしたら彼はズォーダーの身内だったのかもしれませんね。

宇宙戦艦ヤマト2の説明でガトランティスはアンドロメダ銀河の有人惑星を悉く占領していたみたいなので、その植民地のガトランティス人が集結し、あらたにイルミダスを建国したとしたら、イルミダス=ガトランティスの説も成り立ちます。


五十三話 大和ホテルでの邂逅 後編

 

 

「くそっ、寝ていられるか!!」

 

メルヒは空腹の為、イラつきながらベッドから飛び起きた。

 

非常食の量は日に日に減り続け、ここ最近は殆ど水だけで生活している状態だった。

 

掘削作業を行えば、当然腹は減る。

 

しかし、食べ物は無い。

 

空腹の為、寝ても直ぐに目を覚ましてしまう為、満足に疲れもとれずにストレスと空腹感が溜まっていく。

 

どこまでも続く労働に減り続ける食糧、不眠、知らぬ星の異星人との共同生活等により、メルヒは疲労困憊し、判断力も鈍り、些細な事にイライラを感じる様になっていた。

 

自分たちガミラス組がこのホテルに閉じ込められて既に十日以上の日時が過ぎている。

 

メルヒの精神力は限界に近づいていた。

 

朝、メルヒが朝食前にラウンジへと降りると、ソファーにはあのザルツとか言う星の女とバーレンが向き合う形で座っており、何かを話しているのが見えた。

 

(あの爺さん、なに異星人なんかと親しげに話しているんだよ、)

 

その姿にメルヒは階級が上のバーレンに対しても腹立たしさを感じた。

 

一方、そんな事を思われているとも知らずにバーレンはギンガからの質問を受けていた。

 

それは、バーガーについての事だった。

 

「‥‥そんな事があったんですが、その‥‥メリアさんって誰なんですか?」

 

ギンガは先日、魘されていたバーガーの様子と彼が口走ってした『メリア』と言う名前が気になり、事情を知っていそうなバーレンに訊ねたのだ。

 

バーレンはギンガの質問に答えてくれた。

 

「メリアと言うのはリッケの嬢ちゃん‥‥ネレディアの妹で、アイツの恋人の名前じゃよ」

 

「恋人‥‥」

 

「ああ、今は少々ひねくれちまっているが、昔は物凄く真面目で礼儀正しい性格の若者だったんじゃ‥‥フォムトの奴は‥‥」

 

「そうだったんですか‥‥」

 

今のバーガーの様子から考えられないのか、少々驚愕の様子のギンガ。

 

「ネレディアとフォムト、メリアの三人は幼い頃からずっと一緒でな、ネレディアとフォムトが軍に入り、それを追う形でメリアも軍へ入った。そして、フォムトとメリアの乗った艦がガトランティスの襲撃を受けた時、メリアだけが戦死しちまって、それ以降、フォムトは変わってしまった‥‥まるで自分の満足の行く死に場所を探すかのような‥無茶な戦い方をするようになった‥‥」

 

「恋人が死んでしまったから‥‥?」

 

「うむ‥‥」

 

ギンガは胸に手を当てた。

 

バーレンの話を聞き、自分の恋人である良馬もガミラス戦役時、似た様な状況だったと思いかえしていた。

 

「フォムトの奴は目の前で恋人を救えず、メリアの死を目の当たりにしちまってのう‥それ以来‥アイツはずっと、メリアの死を引きずっておる。あの時、もっと自分が早く駆けつけていれば、いや、自分が軍に入らなければ‥‥とな‥‥」

 

「‥‥」

 

親しい人を失う気持ちはギンガにも分かっている。

 

彼女も自分を救い、人として接し、自分たち姉妹を家族として受け入れてくれた母(クイント)の死を幼いときに経験している。

 

「戦いで恋人を失い、その上、苦楽を共にした大切な仲間たちを失い、信頼できる上官であるドメル将軍も失った」

 

「ドメル将軍!?」

 

ギンガもドメルの名前は知っていた。

 

ヤマトを幾度となくピンチへと追いやったガミラスが誇る名将、エルク・ドメル。

 

「うむ、ガミラスの命運をかけた七色星団の戦いで、ドメル将軍は戦死し、同時に沢山の仲間も失った。今、フォムトの中にあるのはヤマトと地球に対する恨みだけじゃな」

 

「そ、そうですか‥‥」

 

ギンガは顔を引き攣らせながら、話題を地球から逸らそうとした。

 

「あ、あの‥ジレルって言う星の人たちの事は何か知りませんか?」

 

続いてジレル星人の事を訊ねた時、

 

「何、異星人なんかと仲良く、くっちゃべっているんだよ?バーレンの爺さん」

 

二人の様子を見かねたメルヒが割って入って来た。

 

ギンガは不機嫌そうな様子のメルヒを見上げた。

 

「このお嬢ちゃんがフォムトの事を心配している様子なんでなぁ」

 

バーレンは優しく笑みを浮かべる。

 

フンっとメルヒは面白く無さそうに鼻を鳴らして腕を組み、

 

「ジレル人は魔女だ。人の心中を覗き込んで、ソレを幻影に映す化物だ。総統も一時はその魔女に心を奪われそうになったが、その強く鋼のごとき精神力で魔女の誘惑に打ち勝ち、その魔女を辺境の星へと追放したのさ」

 

メルヒはジレル星人について語った。

 

ギンガはあのネレディアが聞かせてくれた話の内容を思い出した。

 

それと同時に、

 

(人の心は読むに至らないけど、幻影魔法はミッドの魔導師も出来るんだけどな‥‥)

 

妹(スバル)の親友である執務官補佐の顔が脳裏を過った。

 

「そのジレル人はもう滅んでしまったんですよね?」

 

「ああ‥‥あっ、でもその魔女の娘が居たって噂を聞いたことがあるな‥‥でも、まっ、女一人じゃ滅んだも同然だな」

 

メルヒが思い出したように言う。

 

そこへ、残りのメンバーもラウンジへとやって来て朝食が始まった。

 

最も朝食と言っても非常食の在庫はほぼ無く、水を飲みながら今日の予定確認をするぐらいである。

 

しかし、そんな状況下でも皆、諦めている様子も無く、またいざこざを起こす様子はなかった‥‥この日までは‥‥

 

良馬や加藤、バーガーは今日まで掘り進んだトンネルの状況が書かれた地図を見ながら話している。

 

その様子を見て、メルヒは段々と嫌気が差してきた。

 

(何でこいつらはこんなにも必死になっているんだ?少佐も少佐ですよ、こんなザルツ何て訳の分からない星の連中とつるむなんて‥‥)

 

「‥‥と言う方向性で、メルヒさんは十時から採掘作業をお願いします」

 

加藤がメルヒの予定を伝えた時、

 

「うるせぇよ!!こんな事をしても無駄なんだよ!!ム・ダ!!穴なんか掘っても出れねぇんだよ!!俺たちは此処から出られずに飢え死にするしかねぇんだよ!!」

 

メルヒが度重なる飢え、疲労、不眠によるストレスで等々キレた。

 

彼の態度と言葉でラウンジに緊張が走る。

 

加藤は一瞬で熱くなりメルヒを睨んだ。

 

「何、諦めているんだよ!!実際に地面に続く穴があって、トンネルは確実に掘り進んでいる!!もう少ししたら、此処から出られるかもしれないじゃないか!!」

 

「あぁ~そうかい、そんなに穴がほりたきゃ、お前たちザルツ人でやれ!!

 

絶望しかけているメルヒにバーガーが冷静に諭す。

 

「メルヒ、諦めるな。何が有ってもあきらめるんじゃねぇ。『ガミラス軍人は可能性を信じ、目の前のなすべき事をする。そして最後まで諦めない』以前あの方にそう言われた筈だぞ」

 

上官のバーガーからそう言われ、立ち尽くすメルヒ。

 

「『最後まで諦めない』‥か‥いい言葉ですね」

 

良馬が微笑みながらバーガーの先程の言葉を褒めると、彼は照れた様子で、

 

「これは俺の言葉じゃねぇ‥‥尊敬する上官から教わった言葉だ」

 

「俺も尊敬する上官が似た様な言葉を言っていたよ‥‥『命ある限り戦へ』 『決して絶望はしない』‥‥その人たちはそう言っていたよ‥‥まぁ、怒ると怖い上官でしたけどね‥‥でも、良い上官でしたよ」

 

「そりゃ、お互いにおっかなくて尊敬する上官に会えたってことだな」

 

「ええ」

 

この時、良馬は沖田と土方を‥‥

 

バーガーはドメルとハイデルンを思い出していた。

 

そして互いに似た様な上官を持ったことに共感を覚えたのか、互いにハハハハ‥‥と笑いあった。

 

(どうしてこんな事になっているんだ?)

 

自分(メルヒ)は一等ガミラス市民でガミラス軍の士官なのに‥‥

 

そして、目の前の上官(バーガー)も同じ筈なのに‥‥

 

その上官がザルツなんて訳の分からない星の連中と楽しそうに話している。

 

笑っている‥そんな上官を見ていると、自分だけが浮いている存在に見える。

 

自分だけがまるで異常者ではないのかと思える。

 

「自分は少佐を尊敬しています。しかし、これ以上コイツらと一緒に居るのは、もう耐えられません。では‥‥」

 

メルヒはガミラス式の敬礼をバーガーにすると、そのまま回れ右をしてラウンジから去って行った。

 

「メルヒ!!」

 

バーガーがメルヒを呼び止めるが、彼は歩みを止める事無く、階段をズカズカと登り、ラウンジから通路に通ずる扉をバンッと開け、そのまま通路へと出て行った。

 

「くそぉぉぉ!!」

 

通路に出たメルヒは悪態をつく。

 

とりあえず一人になりたかった彼は今の時間帯、誰も居ない客室前の通路へとやって来た。

 

当たりようも無い怒りを彼は通路の壁にぶつけた。

 

しかし、堅い壁には当然ヒビも入らず、隠し通路の類も現れず、ただ、自分の拳に痛みが走るだけだった。

 

メルヒ自身もこんな態度をとるのは恥ずかしい事だし、情けない事だと自覚はしている。

 

しかし、心がそう思っていても言葉や態度は心と反比例してしまう。

 

「くそっ、どうすりゃあ良いんだよ!!」

 

悪態をついているメルヒ。

 

そんな中、彼は突如、空気の流れを感じた。

 

(ん?なんだ?)

 

「こ、これはっ!?」

 

気になったメルヒが風の来る方向へ行ってみると、其処には今朝‥いや、ほんのさっきまで無かった筈の上の階へ続く長い階段があった。

 

その階段の中間にはネレディアが座っており、メルヒを冷やかな目で見ている。

 

しかし、判断力が落ちているメルヒにはネレディアの異常な様子に気がつかない。

 

「メルヒ‥‥貴方が悪いんじゃないわ‥‥お腹がすいているのでしょう?‥‥いらっしゃい」

 

暗い階段に座るネレディアは、ジッとメルヒを見つめながら彼を誘った。

 

 

メガルーダ 艦橋

 

ダガームは停船中のメガルーダの艦橋に居た。

 

追い込んだ惑星で まほろば はその惑星内でワープを行った。

 

その為、彼は まほろば を見失いこの宙域で待機していたのだ。

 

これで まほろば は逃げ切れたのかと言うとそうでは無い。

 

ワープを行えば、必ず空間航跡が残る。

 

そしてその航跡をトレースする技術はちゃんと存在するのだ。

 

それはガトランティスにも備わっていた技術であった。

 

しかし、今回 まほろば が行ったワープは特殊なケースで、 まほろば が地表近くでワープを行った事とダガーム艦隊が周囲を広範囲で破壊した事で星間物質が大量にばら撒かれ、その影響でトレースに時間が掛かっていたのだ。

 

「ええい!!まだ見つからんのか?」

 

イラつくダガームは持っていた長剣を床に突き刺す。

 

ダガームの長剣はガキンっ!!と言う音と共に火花を散らして剣先が床に食い込む。

 

メガルーダの床素材が決して脆い訳では無い、ダガームの腕力が異常なのだ。

 

「く、空間トレースはもう間もなく終わります」

 

オペレーターが怯えながら答える。

 

作業にあまり時間をかけると、この艦では命に係わる問題となる。

 

気が短いダガームはソファーの様なキャプテンシートから立ち上がると、トレース作業を行っているオペレーターの下へとノッシノッシと歩み寄る。

 

オペレーターは冷や汗を流し、恐怖で絶叫したいのを我慢しながら、コンソールを操作する。

 

ダガームの足音がまるで今から自分を処刑する死刑執行人が迫って来る様な間隔である。だが、それはある意味当たっていた。

 

コンソールを操作する指は小さく震えているが、間違えたりすれば、それだけ自分の命の時間を縮めることになる。

 

周囲の者たちは固唾を飲んで成り行きを見守る。

 

此処で進言などすれば、忽ち首と胴が泣き別れとなるのは目に見えている。

 

残酷かもしれないが、この様な状況下では誰もが他人よりも自分の命優先となってしまう。

 

ダガームが剣の柄に手をかけた時、

 

「あ、アンドロメダ方面総司令部より入電!!ゼーダ総司令です!!」

 

通信兵が伝令を伝える。

 

「むっ!?ぬぅ~‥‥通信回路を開け」

 

流石に伝令の意見は腐っても軍人故、ダガームもその通信兵を斬る事無く通信回路を開くように指示する。

 

ましてや、通信を送って来た相手は自分の上官からなので、無視するわけにはいかなかった。

 

オペレーターは九死に一生を得た。

 

彼は、ゼーダに感謝しつつこの貴重な時間を無駄にしない様に作業を急いだ。

 

通信回路が開かれると、床の一部が一瞬歪むと、その中心に一人の男性のホログラムが浮き上がる。

 

「ダガーム、報告を聞こう」

 

ホログラムの男性、ガトランティス軍アンドロメダ方面総司令官、ゼーダが重みを含む声でダガームに訊ねると、彼は姿勢を正して現状を報告する。

 

「そ、それが‥‥未だに『静謐の星』に関する情報は未だ何も掴めず‥‥」

 

「愚か者が!!何の為、お前に最新鋭艦を預け、マゼラン方面へと遠征させたと思っている!?」

 

自分よりも若い上官に怒鳴られ、ダガームの肩が震える。

 

「で、ですが総司令。それに代わる獲物を発見し、現在追跡中であります。かの獲物は我がガトランティスの大仇、地球の戦艦にございます。彼奴等の戦略砲の技術が手に入れば、我が軍は一層の力を手に入れる事が出来‥‥」

 

上半身を傾け丁重に説明するダガームの姿は、まるで鞭を掲げる調教師に頭を下げるサーカスの熊の様に見えた。

 

メダルーザやメガルーダが装備している空間転移装置は言うまでもなく、ガミラスの瞬間物質転送機の技術が流用されている。

 

これは一時的とは言え、デスラーがガトランティスと同盟を組んでいた頃、その時に彼らと技術交換をしたものだ。

 

ガトランティスはガミラスの瞬間物質転送機の技術を得て、代わりにガミラスはガトランティス艦艇の主砲である回転速射砲塔、潜宙艦の技術を得ている。

 

なお、そのガトランティスは潜宙艦の技術を得る切っ掛けは、ある船を拿捕したのが切っ掛けだった。

 

ミッドでは行方不明扱いとされているが、民間の次元航行船をガトランティスは拿捕していた。

 

その技術をガトランティスは調査をしてそこから潜宙艦を造り上げた。

 

しかし、ガトランティスはデスラー砲‥‥波動砲の技術は得ていない。

 

デスラーがガトランティスに身を寄せて居た時、彼の為に与えられたノイ・デウスーラの建造に至っては、ガトランティスは資材を提供しただけで、設計、建造したのはガミラス人の技術者たちだった。

 

そして、デスラーが幽閉されていた時、ガトランティスはまだ波動砲の威力を知らず、特に脅威を抱いていなければ、興味も湧かずそのままノイ・デウスーラはドックに係留されていたままで、技術調査等は行わなかった。

 

波動砲の前に消滅したゴーランド艦隊も艦隊から本国へどの様な戦闘経緯があったのか、報告される前に艦隊全てが波動砲の前に消えた為、ガトランティスは波動砲の威力を知る事は無かったのだ。

 

波動砲と類似したデスラー砲の威力も、使用された空洞惑星内の戦闘当時、ノイ・デウスーラに監視役として乗艦していたミルもその威力を見ておきながら、本国への報告を怠っていた。

 

何も彼が職務怠慢と言う訳ではなく、この時、彼は上官であるサーベラーからデスラーの監視を命令されていた為、デスラー砲の威力まで目が行かなかったのだ。

その後、土星圏で行われたバルゼー艦隊と地球防衛軍との戦闘で地球艦隊の波動砲の威力を此処で初めて知ったが、既に後の祭りであった。

 

この時、波動砲に類似したデスラー砲を搭載したノイ・デウスーラは既にガトランティスを出奔し、建造データは残されていなかった。

 

そんな中、波動砲を装備した地球の戦艦と遭遇したのだ。

 

彼はこの時、波動砲の技術を手に入れられるかもしれないと、上官であるゼーダに進言するが、彼の報告はゼーダにより一刀された。

 

「黙れ!!私が命じたのは技術惑星である『静謐の星』の発見と確保だぞ!!お前は現在、我が帝国が置かれている状況を貴様は理解していないのか!?既に偉大なるズォーダー大帝陛下と本国は無く、アンドロメダ方面での領地の維持にも困窮している我が帝国が再び威厳を取り戻すには、強大かつ優れた技術の確保が急務なのだ!!余計な浅知恵など巡らせるな!!貴様は言われた通りの事をすればよいのだ!!分かったな!?」

 

ゼーダは波動砲よりも優れた技術とされる『静謐の星』の確保を優先した。

 

容赦ない追及にダガームはただただ耐えた。

 

「も、申し訳ございません」

 

「もし、貴様が定められた期日以内に『静謐の星』を発見できぬ時は、その命を持ってあがなえ。良いな?」

 

「ははっ!!」

 

完全に頭を抑えられているダガームは低頭平身を貫き通すしかなかった。

 

「うむ、吉報を待っているぞ」

 

ゼーダのホログラムはそう言い残して消えた。

直後に、

 

「若造がぁ!!調子に乗りおって!!」

 

ダガームは大剣を振るい、先程までゼーダのホログラムが映っていた床に大剣を投げつける。

 

重々しい金属音と共に、剣先の一部が床に突き刺さる。

 

ダガームはこう見えてもプライドが高く、そのくせ自分よりも身長が低い者や若い者から指図されるのが一番嫌いであった。

 

怒り狂い肩で息をするダガームがオペレーターの方へと振り向くが、彼はこの通信の時間を最大限に利用でき、

 

「提督、トレース完了しました。追尾可能です!!」

 

オペレーターを睨みつけつつ、彼は命令を下した。

 

「よし!!では直ちに まほろば を追跡する!!」

 

ダガームはマントを翻し、キャプテンシートにドッカリと腰を据える。

 

しかし、ダガームの命令を聞いた副長のメイスは一抹の不安を抱き、ダガームに訊ねる。

 

「し、しかし、総司令の命令は『静謐の星』の発見です。この際、まほろば は捨て置いてもよろしいのでは?」

 

ギロッとメイスを睨むダガームは、

 

「わしは偉大なる大帝陛下の臣下!!若造の小間使いではないわ!!全艦、空間跳躍(ワープ)の陣を敷けぇい!!航跡データに従い直ぐに飛ぶのだ!!」

 

メガルーダ以下、ダガーム艦隊の艦艇は まほろば を追い、次々とワープを行っていった。

 

そして、ワープアウトをした宇宙空間は灰色一色の妙な空間であった。

 

ダガーム以外の者たちは此処が何処なのか?

 

ワープ装置に異常が出て、自分たちは異次元の狭間に来てしまったのでは?と、オロオロした。

 

そんな中、強烈なピンクの光を放つリングを持った不気味な星が彼らの前に現れた。

 

だが、ダガームにしてみれば、ソレは不気味な星ではなかった。

 

彼は自分の幸運に一人感激し、口角を吊り上げ、笑った。

 

「『静謐の星』は『薄鈍色の空に輝く』とある。これぞまさに僥倖!!まさに天佑神助!!地球の艦を追いかけて来てみれば、我、宝の星を見つけたり!!ガハハハハハ‥‥」

 

メガルーダの艦橋に彼の大声が響いた。

 

ガトランティス艦隊の出現は まほろば でも、更には惑星の下部へ降下し、待機していたミランガル以下のガミラス艦隊も補足していた。

 

「蛮族共が‥‥」

 

そのミランガルの艦橋では、何故か大和ホテルに居た筈のネレディアの姿があった。

 

 

その頃、大和ホテルでは‥‥

 

朝食の後、ギンガは一人でフロントロビーへ来ていた。

 

何故、ギンガがこのロビーに一人で来たのかと言うと、朝食の時間が終わりに差し掛かる頃、彼女はまた声を聴いたのだ。

 

フロントロビーの隅では、水漏れでも起こしたのか、水溜りが出来ていた。

 

それを見つけたギンガはその水溜りの近くにしゃがみ込んだ。

 

 

壁のかたわらで、

 

わたしはおまえにひとこと話そう。

 

わたしのいうことを聞きなさい。

 

わたしの教えに耳をかたむけなさい。

 

『シュメルの洪水神話』(粘土板)における記述より

 

 

「水‥‥」

 

ギンガは目を閉じ、薄く広がる水面に手を浸け、指を使って何度も文字を水面に書く。

 

(少女は、目も見えず、耳も聴こえず、残された触覚によって光を見つけた‥‥)

 

水の中で手を広げたギンガは感覚を研ぎ澄ます。

 

元々シューティングアーツを嗜んでいたギンガは集中する事が得意だったので、今の彼女には周りの音は一切聴こえず、目も閉じているため、完全な闇の世界にギンガは居た。

 

すると、今までただの大理石の床だと思っていた床石に凹凸があるのを発見した。

 

その凹凸をなぞるかのように触って行くと、それがやはり文字となっている事に気がついた。

 

(文字‥‥これは、ジレルの言葉!?)

 

床に刻まれていた凹凸はジレル語の文字であった。

 

事前にジュラからジレル語の手ほどきを受けていたギンガは床に彫られたジレル語の言葉を読んでいく。

 

「目は闇を映し、耳は沈黙を聞く。闇を真実とし、沈黙に呑まれし者は、互いの疑心が自らの身を滅ぼす」

 

更にギンガは手を動かして周囲に彫られた文字も何と書かれているかを探った。

 

そんな中、床一面に突如、ジレル語と思われる文字が書かれた魔方陣が現れた。

 

だが、今のギンガは脳が視界に頼っていなかった為、気づかなかった。

 

辺りにAMFが充満していた事も影響していた。

 

AMFが充満していた状況下で現れた魔方陣故、視界で見なければ気がつかなかったのだ。

 

「十一層に辿り着きし者は、真の世界を見出せるであろう」

 

そこで目を開けたギンガ。

 

彼女が目を開けた直後に魔方陣も消え、ギンガは先程このロビーに魔方陣が張り巡らされていた事に気がついていない。

 

「十一層‥‥それって十一階って事かしら?でも、四階以上は‥‥」

 

ギンガが考え込んでいると、

 

チンッ!!

 

と言う電子音がした。

 

「えっ!?」

 

ギンガが音のした方へと視線を向けると、其処には今まで動かなかった筈のエレベーターが稼働しており、扉が開いた。

 

それはまるでギンガを誘っているかの様だった。

 

ギンガは唖然とし、息を飲んだ。

 

しかし、このまま此処で呆けていたら、再びエレベーターが停止してしまうかもしれない。

 

十一階に行けば何か手がかりが有るかもしれない。

 

ギンガは意を決して、エレベーターの中へと入ると十一のボタンを押した。

 

すると、格子状の扉がゆっくりと閉まり、ゴトッと小さく揺れると、エレベーターは動き出した。

 

「十一階まで行けるのかしら?」

 

動き出したエレベーターの中で辺りを不安そうに見渡しながらギンガは呟いた。

 

扉の上には半円形の数表示があり、今の階数を表示する針が等々四の数字を越えて、五‥‥六‥‥七‥‥八‥‥と、右に傾いていき、このエレベーターが上に上がっている事を表示する。

 

やがて、針が右一杯に傾き、十一の数字を示すと、チンっ!!と言う音と共にエレベーターは停止した。

 

そして再びギンガを誘うかのように格子状の扉がゆっくりと開いた。

 

十一階は真っ暗で周囲が良く見えない。

 

扉を越えてエレベーターの中の灯りで照らされた部分に出て、辺りを窺っていると、カシャンとエレベーターの扉が閉まる。

 

「なっ、何っ!?」

 

ギンガが慌てて振り向くと、エレベーターのゴンドラは下へと降りて行った。

 

此処に誘い出されたのか?

 

それとも‥‥

 

ギンガの中に不安が過ぎる。

 

それは、あの時この世界に来た時のきっかけとなった出来事‥‥。

 

管理局員として最後の仕事となった本局共同での捜査で、罠となっていた輸送船に詰め込まれた時と同じ不安感だ。

 

だが、退路が断たれた以上、先へ進むしか道は残されていない。

 

真っ暗な空間の中にポツンと浮かぶ小さな部屋が有り、そこには梯子が見えた。

 

梯子のある部屋へと入ったギンガは、上を見上げる。

 

そこは、更に上部へと続くエレベーターホールの様な正方形にくり抜かれた空間が二階分程続いていた。

 

「ここは一本道‥‥『ここを上がれ』って事ね‥‥良いわよ‥‥行ってあげる!!誰の誘いか分からないけど乗ってやろうじゃない!!」

 

ギンガは両手で軽く両頬を叩き、梯子に手をかけて一歩一歩登って行く。

 

金属製の梯子を上る度、カツンカツンと鳴る金属音。

 

やがて先に見えていた光は次第に大きくなっていき、十畳程の部屋の床に出た。

 

ギンガは手や服についた汚れや埃を払いながら周囲を見渡す。

 

前面に並ぶガラス窓からは外に広がる熱帯雨林のジャングルが見渡せた。

 

室内には速度受送機や双眼望遠鏡、方位を示す羅針盤等が設置されていた。

 

それぞれの機器の周囲には各部へ指示を出す為にある、金管楽器の様な口のパイプである伝声管も見える。

 

「もしかして此処は大和の艦橋かしら?」

 

ギンガは今、外から見えていた時に見えていた戦艦大和の前部艦橋の最上部に来ていた。

 

窓から外を見ると、電波探信儀と呼ばれていたレーダーアンテナと主砲射撃用の測距儀が見えた。

 

隙間を風が吹く度にヒュューと小さな音を立てている。

 

 

「確か外で見た時にはこの上にも階が有った筈‥‥」

 

この艦橋を見渡しても『真の世界を見出せる』様な要素が有りそうもない。

 

そこでギンガは横にある扉から外へ出た。

 

「キャっ」

 

流石に十階以上の高さがある為、風は強く、リボンで纏めてある髪が大きく煽られる。

 

ギンガは手すりをしっかり持ちながら、露天となっている防空指揮所へ通じる階段を上がって行く。

 

やがて防空指揮所へと着くと、其処には先客が居た。

 

それは、先程四階の通路で上へと続く通路を発見し、ネレディアと共に此処(防空指揮所)へとやって来たメルヒであった。

 

彼は左手に紙袋を大切に抱えて、右手に持っていたモノを口へと運ぼうとしていた。

 

そんな彼の様子をギンガは大きく目を見開いて、信じられないと言う表情を浮かべる。

 

ギンガが唖然としてメルヒを見ていると、その視線に気がついたのか、メルヒがギンガの方へと視線を向ける。

 

しかし、彼の目は虚ろで血走っており、正常には見えなかった。

 

最も正常ならば、今彼が手にしているモノを食べようだなんて思わない。

 

「コレを奪いに来たな‥‥コレはお前らには渡さねぇ」

 

メルヒは右手に持っていたモノを紙袋へと戻すと、彼の腰には何処から持ってきたのか、ガミラス軍が正式採用しているコスモガンが納められているホルスターがあり、彼はコスモガンをホルスターから引き抜き、その銃口をギンガへと向けた。

 

 

時系列はギンガがロビーにあるエレベーターへ乗り込んだ直後へと戻る。

 

バーガーとバーレンがラウンジで休憩していると、良馬と加藤が慌てた様子で飛び込んできた。

 

良馬はフロントに掛かっていたあの絵が気になりもう一度見に行ったのだ。

 

その時、動かなかった筈のエレベーターに乗り込むギンガの姿を見た。

 

急ぎ、自分も後を追おうとしたが、エレベーターは一基しかないので、エレベーターで追いかけるのはあまりにも時間がかかる。

 

そこで、別ルートを追いかけることにしたのだが、その前にこの時間帯掘削作業をしていた加藤を呼び、ラウンジに居たバーガーたちに声をかける為、ラウンジへと来たのだ。

 

四人は急ぎ最上階を目指した。

 

その最中、

 

「あれ?もう一人の人は?」

 

加藤がメルヒの行方を訊ねる。

 

「朝飯の後、ラウンジには来なかったがのう」

 

バーレンがメルヒは朝食以降ラウンジへ姿を見せなかった事を伝える。

 

「部屋で寝ているんだろう。疲れていた様だから今は寝かせてやれ」

 

バーガーがメルヒは部屋で寝ているのだろうと予想し、今は起こさないでおこうと言う。

 

ラウンジから客室の通路に着いた良馬たちは、今朝まで無かった筈の階段を見つけた。

 

「階段?」

 

「そんな、朝はこんな階段は無かった筈なのに‥‥」

 

「兎も角、登ってみよう」

 

良馬たちは階段を駆け上がって行った。

 

すると、風景はレトロな高級ホテルから一転し、鋼鉄とパイプだけの武骨なモノへと変わった。

 

「何だ?此処は?」

 

「大昔の洋上戦艦の艦橋の様だ」

 

如何やら此処は戦艦大和の第一艦橋の様だ。

 

しかし、ギンガの姿は見当たらない。

 

すると、

 

バキューン

 

一発の銃声が聴こえた。

 

「あの銃声は!?」

 

「モルドラP-88の銃声だ!!」

 

バーガーは先程聴こえた銃声はガミラス軍が正式採用している銃のモノだと言う。

 

銃声の聴こえた方向の扉から外へ飛び出し、良馬とバーガーは屋外に設置されていた階段を駆け上がる。

 

やがて大和の防空指揮所に着くと、其処には大きな紙袋を足元に置いたメルヒがギンガの首を後ろから締め上げ人質にとっていた。

 

そして銃口は良馬へと向けられていた。

 

「メルヒ!!」

 

「く、来るな!!これは俺たちの食糧だ!!お前らザルツ人にやる分はねぇ!!」

 

メルヒはチラッと足元に置いてある紙袋へと視線を移すが、血走った目で良馬を睨む。

 

そして今の彼の様子からメルヒが正常な判断力を失っている事が窺える。

 

「で?その食糧は此処に置いてあったのか?」

 

「そうだ!!肉や新鮮な食べ物がいっぱい入っていた!!コレは俺が見つけたんだ!!だからこれを食う権利は俺たちガミラス人にある!!」

 

「生鮮品が何の貯蔵機能の無い環境下で腐らずに置いてあると思うのか?それも一週間以上も‥‥」

 

良馬が言う通り、この大和の艦橋には冷蔵庫のような食糧を貯蔵できる様な箇所は無く、どう考えても生鮮品が有るとは思えない。

 

しかし、

 

「うるせぇ!!あるったら、あるんだよ!!そんな事言って俺から食糧を奪うつもりなんだろう!?浅ましい連中だぜ!!」

 

メルヒは良馬の意見を否定し、あくまでもここに生鮮品が有るのだと主張する。

 

「そ、それは‥食べ物なんかじゃない‥‥」

 

首を絞められてギンガは苦しそうに言う。

 

AMFが広がり、魔法は使用できず、更にここ最近は食事を摂っていない為、力が出ない様だ。

 

もし、普段の彼女ならば、魔法を使えずとも持ち前の格闘術でメルヒを返り討ちにしていたに違いない。

 

「うるせぇ!!黙れ!!コイツを撃ち殺すぞ!!」

 

メルヒはギンガの頭部に銃口を押し当てる。

 

「何で彼は銃を?」

 

「分からねぇ。俺たちがホテルに入った瞬間、持っていた銃は消えちまったはずなんだが‥‥」

 

良馬はバーガーに小声でメルヒが何処から銃を持ちだしてきたのかを訊ねるがバーガーもメルヒが何処から銃を調達して来たのか心当たりがない様子。

 

その時、メルヒの背後からネレディアがゆらりと音も無く現れた。

 

目の前で人質と銃を突き付けている者が居るのに慌てる様子も無い。

 

「何を言っているの?バーガー、ツキムラ‥貴方たちも銃を持っているじゃない」

 

ニヤリと笑みを浮かべながらバーガーと良馬にそう指摘する。

 

二人が慌てて自分たちの腰の辺りを見ると、其処にはいつの間にかコスモガンが入ったホルスターを身に着けていた。

 

バーガーはホルスターからメルヒの方へと視線を向け、

 

「メルヒ!!いい加減にしろ!!食糧が見つかったのなら、分ければいいだろう?俺たちもザルツの連中から非常食を分けて貰って生き延びたんだ!!」

 

メルヒを説得するが、正気を失っているメルヒは、ギンガの頭部に銃口をグリグリと押し当てながら叫んだ。

 

「少佐こそ目を覚まして下さい!!なんでガミラス人の俺たちが異星人なんかに食糧を分けなくちゃいけないんですか!?貴方もバレラスで教えられたでしょう?『ガミラス人の赤子一人の命は異星人千人分の命に匹敵する』って‥‥そんなのガミラスじゃ、常識だったじゃないですか!!」

 

ガミラスでの常識を語るメルヒが悪い訳では無い。

 

バーガーもそうであるが、彼らは幼いときからその様に教育されて来たのだ。

 

ガミラスに負けた星間国家に住む住人の生殺与奪は全てガミラスの自由であると‥‥。

 

ガミラス人は他の異星人などよりも高貴な人間で、その高貴なガミラス人が生き残る為には、他の異星人など何人、何万人も死んでも構わないと言う選民的な考えだ。

 

最も管理局にも同じような考えを持つ輩は存在するが‥‥

 

「メルヒ‥もう止めろ‥‥そう言う事を考えるのは‥‥ザルツ人だって人間なんだ‥‥撃たれれば傷を負うし、当然苦痛も感じる‥‥下手をすれば死んじまうんだぞ」

 

バーガーは哀しそうな目でメルヒを説得する。

 

それはたとえ異星人であってもかつての恋人そっくりの女が再び自分の前で死ぬのは見たくなかった。

 

しかし、その行為が逆にメルヒを孤独に追い込み、

 

「うわぁぁぁぁー!!」

 

自棄を起こさせた。

 

メルヒがギンガのこめかみに銃口を押し当て、銃の引き金を引こうとする。

 

良馬とバーガーが息を飲む中、ネレディア一人だけが涼しい顔をしている。

 

その時、

 

「止めろ!!」

 

「っ!?」

 

突如、上から黒い影が降って来てメルヒの体と衝突した。

 

それは別ルートから防空指揮所へ登って来た加藤がメルヒに急降下をかけたのだ。

突然、加藤からの急降下体当たりを喰らい、その衝撃でメルヒは思わず銃を手放してしまう。

 

彼の手から離れた銃は、クルクルと甲板を回りながら、下の甲板へと落下していった。

 

そして、メルヒの体は食糧が入っていた袋に当たった。

 

袋は取り入れ口が塞がれておらず、中身が防空指揮所の床へとぶちまけられたが、その中身を見て、ネレディアとギンガ以外の者たちは息を飲んだ。

 

袋から出て来たのは食糧などではなく、沢山の人の頭蓋骨だった。

 

メルヒはそれを食糧だと思い込み、それを食べようとしていたのだ。

 

しかし、ギンガには袋の中身が食糧ではなく、頭蓋骨に見えていた為、先程彼女は頭蓋骨を食べようとしていたメルヒを信じられない表情で見ていたのだ。

 

そして、ギンガは彼に袋の中身が食べ物ではなく、頭蓋骨だと教えようとしていたのだ。

 

「な、なんじゃこりゃ!!」

 

今まで頭蓋骨が入っていた袋を食糧が詰まった袋だと思い込んでいたメルヒ自身も慌ててバーガーたちの下へと駆け寄る。

 

袋に詰められていた沢山の頭蓋骨を見て、彼も正気を取り戻した様だ。

 

全員が袋に詰められた頭蓋骨に視線が集中している中、ただ一人、ネレディアだけが不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

「地球人とガミラス人は共存なんて出来ないわ!!」

 

突然のネレディアの言葉にバーガーは困惑する。

 

此処に居るのはザルツ人であって地球人ではない筈だ。

 

「ネレディア。突然どうした?」

 

バーガーは親友までもが発狂してしまったのかと思った。

 

一方、良馬たちは何故自分たちが地球人とバレたのかと思ったが、自分たちが地球人である事に変わりないので、口をつぐむ。

 

「私たちは騙されて居たのよ。コイツらはザルツ人なんかじゃない。地球人で、あのヤマトの仲間‥まほろば と言う名の艦の乗員で、ツキムラはその艦の艦長よ」

 

ネレディアはまるで探偵が犯人を突き止めた様な口ぶりで言う。

 

良馬は余計な混乱‥引いては自分たちの身の安全の為、嘘をついた事を少なからず後悔した。

 

「コイツらはドメル将軍を殺し、私たちの故郷、ガミラス星を滅茶苦茶にしたヤマトの連中と同じ地球人なのよ!!」

 

「ほ、本当なのか?ツキムラ?」

 

「‥‥ああ‥俺たちはザルツ人じゃない‥‥地球人だ」

 

バーガーの問いに良馬は頷く。

 

良馬の言葉にバーガーはゆっくりとその手を腰の銃へと伸ばし、グリップを握る。

一方の良馬の方もバーガー同様、銃のグリップを握りしめる。

 

バーガーにとって、地球人は尊敬するドメル将軍や親爺と慕っていたハイデルン、戦友だったゲットーやクライツェの仇‥‥

 

良馬にとっては、ガミラス人は大叔母のすずかや戦友であった恭介や一の仇‥‥

 

しかし、良馬の脳裏には此処で彼らを殺して何になる‥‥

 

今回のイスカンダル救済任務ではガミラスと共闘する可能性が大いにあった。

 

自分も乗員に向かってガミラスとの共闘が納得できない者は退艦しろと言ったではないか‥‥それを此処で覆すのか?

 

と、自分に言い聞かせていた為、銃を抜くに抜けず、グリップから手を離す。

 

「コイツらはバーガー、貴方の大切な人たちを殺し、私たちを騙していた浅ましい連中なのよ!!さぁ、バーガー撃ちなさい!!」

 

ネレディアは興奮した様にバーガーを煽る。

 

「君たち、ガミラス人から見たら、俺たち地球人は大勢の同胞の仇だ。だが、それは俺たち地球人からも同じ事が言える‥‥でも、許し合わなければ、負の連鎖は永遠に続く‥‥良いぞ、バーガー、俺を撃て!!」

 

「良馬さん!!」

 

「艦長!!」

 

良馬の言葉を聞き、ギンガも加藤も慌てる。

 

しかし、良馬は二人を手で制する。

 

「俺を撃ち、それで君の戦争が終わると言うのであれば、構わない‥‥でも、地球人全員を殺さなければ怒りが収まらないと言うのであれば、俺は君を全力で止めてみせる!!」

 

ジッとバーガーから視線を逸らさない良馬。

 

そして、良馬から視線を逸らさないバーガー。

 

両者が真剣なまなざしで対峙している中、

 

「みんな、撃ち殺しなさい!!バーガー!!コイツらは地球人全員!!大勢の同胞の仇なのよ!!」

 

ネレディアがまたもやバーガーを煽る。

 

彼女の言葉を聞き、バーガーは顔をしかめて、「チッ!!」と舌打ちをすると、ホルスターから素早く銃を抜いた。

 

ギンガと加藤は良馬が撃ち殺されるかと思い、良馬本人も撃ち殺されるものだと思ったが、バーガーは銃口を良馬ではなく、意外にもネレディアへと向けた。

 

『えっ!?』

 

バーガー以外の皆が戸惑う。

 

それは銃を向けられたネレディアも例外では無い。

 

「さっきからギャーギャーうるせぇぞ!!だいたい誰だ?テメェは!?」

 

ネレディア本人以外の全員の視線が彼女に向けられる。

 

「な、何言っているのよ!?私はネレディアよ。一体どうしたって言うのよ?バーガー」

 

彼女の声から、ネレディアが明らかに動揺しているのが分かる。

 

「何の猿真似かしらねぇが、化けるにはもっと正確にやるべきだったな」

 

「な、何っ!?」

 

「最初から変だと思ったよ。突然俺のことを『バーガー』なんて呼びやがったんだからなぁ。あのなぁ、ネレディアは俺の事を昔から『フォムト』って呼ぶんだよ。決定的だったのは、ナカジマを見た時だ。自分の死んだ妹に瓜二つの奴が現れたにも関わらず、お前は何のリアクションも起こさなかった」

 

「っ!?あの時か!?」

 

偽ネレディアには、心当たりがあった。

 

それは、良馬たちがこのホテルに来た時、バーガーがネレディアにギンガの事を訊ねて来た時の事だった。

 

あの時、バーガーはギンガの事を『似ているよな?』と訊ねたにも関わらず、ネレディアは『誰に?』と聞き返した。

 

例え異星人であったとしても、肌の色が違うだけで妹と瓜二つの容姿を持つギンガに対して姉として何のリアクションを起こさなかったのは余りにも不自然だった。

 

「そこまで分かっていてどうして?」

 

「黒幕はお前だって分かっていたんだが、何を狙っていたかが分からなかった。本当なら、俺たちを簡単に殺せた筈だ。それにも関わらずお前は何日も俺たちを殺さなかった。お前には俺たちの死に様に何か理想の形があるんだろう?そうじゃねぇと自分の恨みは晴れねぇよな?」

 

ニヤリと笑みを浮かべながら偽ネレディアに訊ねるバーガー。

 

「それに此奴らがザルツ人じゃねぇって事はとっくに気がついていたぜ」

 

「えっ!?そうなのか?」

 

「ああ。最初に会った時にな‥‥メルヒの奴は気がついていないみたいだったが、切っ掛けはツキムラたちから貰った非常食だ。あの非常食の袋に書かれていた文字が地球の言語だったからな」

 

バーガーはニッと微笑みながら良馬たちが地球人である種明かしをした。

 

如何やらバーガーたち、ガミラスの士官の一部は地球の言語を研究していた様だ。

 

これも恐らくドメルがバーガーたちに命じて教育したのだろう。

 

そして、良馬に銃を受けなかったのは、以前、バーガーが尊敬するドメル将軍から教わった「復讐とは心が弱い者が行う愚かな行為だ」と言う言葉の意味がこのホテルで良馬たちと過ごしていく内にバーガーは理解したのだ。

 

皆が偽ネレディアと対峙していると、彼女は寂しそうに呟いた。

 

「どうやら、ネレディアの記憶を読み間違えたようね‥‥」

 

そして、視線を熱帯雨林の方へと向ける。

 

「‥‥それと‥‥どうやら、招かざる客が来た様ね」

 

その時、空の一角が赤くなるとまるで遊星爆弾が落下したような衝撃と爆発が起こった。

 

灼熱の炎は川を蒸発させ、その大量の水蒸気と水が戦艦大和へと迫って来た。

 

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