星の海へ   作:ステルス兄貴

63 / 294
宇宙戦艦ヤマト 完結編に登場した水惑星アクエリアス‥その地表には滅び去った文明がありましたが、星巡る方舟のレーレライの言葉からあの文明を築いたのはジレル人だった可能性が高いですね。


五十四話 ジレルの女王 

「い、何時の間に‥‥?」

 

バーガーはフロントロビーに立っていた。

周囲にはメルヒ、バーレン、良馬、ギンガ、加藤の姿もある。

確か、自分たちは十一階の防空指揮所で大量の水と水蒸気に巻き込まれた筈なのだが、一瞬の内で防空指揮所から四階のフロントロビーへと移動していた。

まるで魔法でも使ったかの様に‥‥。

そして、着ていた服も皆、この大和ホテルに入った当時の各国家の軍服へと戻っていた。

だが、ホテルの方は来た時と違った様相をしていた。

いや、この様相こそがこのホテルの本当の姿だったのかもしれない。

白い大理石だった床は古代文字が彫られた黒曜石の様な石の床に変わっていた。

エレベーターもフロントも光の粒子となり消えて遺跡の様相と変わっていった。

そして、部屋の隅の方には沢山の白骨化した死体が山の様に積み重なっていた。

謎の遺跡に白骨死体はいかにも古代遺跡の様相を醸し出すが、出来ればそれはフィクションの世界であって欲しかった。

メルヒがその白骨死体に近づき、死体を確認する。

 

「っ!?此奴らガトランティスの連中です!!」

 

白骨死体が身に着けていた軍服とヘルメットを見て、この大量の白骨死体がガトランティスの軍人である事を確認した。

確かに白骨死体は以前、良馬たちがガトランティス本国で突入した際、滑走路で戦ったガトランティス軍の兵士と同じ軍服にヘルメットを着けていた。

偽ネレディアは良馬たちから離れ、ロビーの中央部に佇んでいた。

 

「これは、君がやったのか?」

 

良馬が偽ネレディアに訊ねると、

 

「この星の力を利用しようと乗り込んで来た者たちの末路よ。私から誘ったのではない。それに私が直接手をかけた者は一人も居ない」

 

偽ネレディアは一人も殺していないと言うが、

 

「嘘つけ!!こんな沢山の死体が転がっているじゃねぇか!!」

 

偽ネレディアの言葉をメルヒは否定する。

 

「外との連絡手段と出入り口を遮断しただけよ。貴方たちの様にね‥‥たったそれだけの事で、彼らは互いに疑心暗鬼になり、食糧、金品‥‥あらゆる欲望に取りつかれ、殺し合ったわ」

 

偽ネレディアは良馬たちにこの大量の白骨死体たちが生きていた時の事と、その末路を冷やかな目で語る。

 

「なっ!?そんな事、当たり前だろう!!こんな所に閉じ込められれば誰だって‥‥」

 

「貴方たちガミラス人が魔女と呼んだジレルの民ならば、お互いの心が読み取れるから、仲間割れなんて事はしないわ」

 

バーガーの反論を抑えて偽ネレディアが静かに、しかし、力強い口調で言う。

 

「ジレルの民‥だと?」

 

訝しそうに呟くバーガー。

そんな中、偽ネレディアの姿が変化した。

髪は床に着く程に伸び、ジレル人特有なのか、ジュラ同様、美しい金色の髪、雪の様な真っ白い肌にエルフの様な長い耳‥‥。

服は黒いマーメイドスタイルのドレスとなり、顔には薄紫色で紋章の様な模様が現れる。

顔立ちは聡明で悲しみを背負った未亡人の様だ。

そして、その容姿はホテルのフロントロビーに飾られていたあの肖像画の女性だった。

 

「我が名はレーレライ・レール。この星は我等ジレルの聖地‥我が始祖、アクエリアスの作りし天の船、シャンブロウ」

 

レーレライ曰く、この星は星では無く巨大な宇宙船である様な言い方だ。

 

「やっぱりこの文字はジレル語だったんだ‥‥」

 

ギンガは柱や床に彫られている文字を手でなぞる。

 

「魔女め!!手の込んだことをしやがって、それよりも本物のネレディアは何処に居る!?事と次第によっちゃ、ただじゃ済まさねぇぞ!!」

 

今まで一緒に居たネレディアはこのレーレライの変装と言う事になる。

ならば、本物のネレディアは今何処に居るのか?

バーガーは本物のネレディアの安否が気になり、レーレライにネレディアの行方を訊ねる。

 

「彼女は最初から此処に連れて来て居ない。あの紫の船から連れて来たのは貴方たち三人だけ‥‥」

 

良馬はサイレン宙域でジュラが見せた幻影を思い出した。

 

「幻影を見せたのか?」

 

「‥‥」

 

良馬の問いにレーレライは答えなかったが、恐らく当たっていたのだろう。

 

「‥‥以前、ヤマトがイスカンダルへの航海の途中、幻影を見せられると言う事例があった‥‥もしかしてそれも貴女方が?」

 

ジュラの母、メラがレーレライの差し金でイスカンダルへ向かう途中のヤマトに幻影を見せたのかと良馬が問うと、

 

「それは、ガミラスの男に心を奪われし、一人の女の所業‥‥我等ではない。我等は故郷滅亡に際し、一握りの者は巡礼の為にこの地に有り、滅びを免れ、それ以降この地に留まり続けている」

 

「成程、ジレル人はこの次元の狭間でひっそりと生存していた訳か‥‥」

 

良馬たちはレーレライの説明を聞き、絶滅したと言われるジレル人がこうして生存していた事に納得した

その間、ギンガは周辺にある石碑を見ながらブツブツと呟いていた。

それは明らかに石碑に彫られた文字を読んでいた。

ギンガのその行動にレーレライは驚いた様子で、

 

「ソナタはその文字が読めるのか?」

 

と、ギンガに問う。

 

「あっ、はい。ジュラさん‥‥ジレルの血を受け継いでいる方からジレル語を教わりまして‥‥」

 

「‥‥そうか、最初、ソナタが来た時から不思議に思っていた‥‥ソナタたちには不思議な力を感じた‥‥」

 

レーレライはギンガと良馬に自分と似た力を感じ取っていた。

 

「それは‥‥」

 

ギンガは一度口ごもり、チラッとバーガーたちを見た後、覚悟を決めてレーレライに言う。

 

「それは、私も貴女と同じ魔女だからです」

 

「なっ!?」

 

「っ!?」

 

ギンガの魔女発言にバーガーとメルヒは驚いていた。

 

「正確には魔導師と呼ばれる存在です」

 

ギンガはAMFが展開する中、集中し小さいながらも手の平の上にシューターである魔力球を出現させる。

 

「魔導師‥‥ソナタの故郷にはソナタと同じ力を持つ人間が居るのか?」

 

「いえ、ごく一部です」

 

(ミッドや管理世界には沢山存在しているけど、管理局がこの人たちの事を知ったら、きっと利用しようと考えるでしょうね‥‥)

 

元局員のギンガから見てもレーレライ、ジレル人の魔力レベルはすさまじいモノだ。

まさに高魔導師のバーゲンセールと言っても良い。

そんなジレル人を管理局が知ったらそのまま野放しにしておくわけがない。

だからこそ、管理局にはジレル人の事を知られる訳にはいかなかった。

 

「俺も‥実は普通の人間じゃないしな‥‥」

 

「どういう事だ?ツキムラ」

 

「見かけは普通の地球人に見えるが、ガミラスにもいるか分からないが、俺は夜の一族‥‥吸血鬼族の末裔だ‥‥そして、法術師でもある」

 

良馬も法術で身体の周りにオーラを出す。

それは先祖‥忍の旦那譲りで虹色のオーラだった。

 

「キュウケツキ‥‥ホウジュツシ?」

 

ガミラスには吸血鬼も法術もない為か、バーガーもメルヒも首を傾げている。

 

「‥‥そうか‥‥宇宙にはまだまだ私の知らない事が沢山あったのだな‥‥」

 

レーレライは自分たちジレル人以外にも魔法、魔術と言った類のモノを使える種族が存在していた事に驚いていた。

そんな中、ギンガは、「えっと‥‥どこかに‥‥」と言いながら周囲を見渡す。

やがてお目当てのモノを見つけた様子で、ギンガは透明ガラスで出来たコンソールの様なモノの前に立ち、

 

「コレね‥‥」

 

手慣れた手つきでコンソールを操作する。

すると、パネルにジレル語らしき複雑な絵文字が浮かび上がる。

いくつかの段取りを行うと、何らかの別の動力が作動し、機械音らしき音が鳴り響きだした。

そして、その機械音は次第に大きくなっていく。

ロビーに積まれていたガトランティス兵の死体は消え、キラキラと光る粒子に辺りは包まれ始める。

その粒子はコンソールの前に立つギンガも包み込もうとしていた。

 

「ギンガ!!」

 

「ナカジマ!!」

 

良馬とバーガーがただならぬ雰囲気を感じ、ギンガに声をかけるが、本人はまるで何かに憑りつかれたかのように目が虚ろになり、喋り始めた。

 

「銀河に蒔かれた種‥‥数多の種族、この地に集い七日の後、心を一つと成せ。輝く光輪に入りて、手を携えよ、同じアクエリアスの遺伝子を持つ銀河の同胞よ。さすれば封印は解かれん」

 

ギンガがパネルに表示されている言葉を喋っていると、壁が光り輝き、魔方陣の様なモノが床に出現し、ギンガを中心として三つの輪が現れる。

 

「全てのヒューマノイドは一つの種族から‥‥って事か‥‥三つの輪‥‥それぞれの種族が一つずつ輪に入れば、キーは解除されると言う訳か‥‥」

 

良馬が先程、ギンガが呟いた言葉を解釈すると、

 

「ツキムラ、終わりにしようぜ」

 

そう言ってバーガーは輪の一つに入る。

 

「ああ。さぁ、貴女も‥‥」

 

良馬も頷いて、躊躇しているレーレライへ手を伸ばす。

 

「わ、我は安息の地を捨てて旅立つ事など‥出来ぬ」

 

レーレライは俯き、顔が前髪で隠れる。

そんな彼女の手を良馬は優しく包み込む。

 

「希望を持ち、明日を信じよう。滅びを待つ今日でなく、一歩踏み出し、未来へ希望を繋げる明日の方が良い」

 

「‥‥我等の明日‥‥ソナタは地球人の月村と言ったか?」

 

「ああ‥‥地球人の月村良馬だ」

 

「ガミラスのフォムト・バーガーだ」

 

バーガーは少し照れくさそうにレーレライへと手を伸ばす。

二人の手を掴んだレーレライは輪の中へと入る。

彼女はその時、生まれて初めて感じる感情に手を震わせた。

自分たち種族を魔女と罵り、その為多くの同胞が迫害された後、殺されていくのを見てきてこの世に信じられる者など存在しないと思っていた。

事実、この閉鎖空間で七日間耐え凌いだ者は居らず、その事実が彼女の思いを裏付けていた。

 

「我が名はレーレライ‥‥レーレライ・レール。数少ないジレルの民の生き残り‥‥我らの事を覚えておいて欲しい‥‥」

 

例え、他の種族から魔女と罵られてきてもやはり、ジレル人も人間‥そのメンタリティーは他の人間と変わらず同じであった。

悲しみを癒す優しさに触れ、彼女の目からは無意識に涙が流れた。

ギンガは三人の他種族の姿を笑顔で見て、上を向き、

 

「星巡る方舟‥永き眠りより今、目覚めん」

 

ギンガがそう呟いた瞬間、その言葉はまるで始動キーだったかのように、光は三人だけでなく、この部屋全体を包み込み、心地よい鐘の音がした。

 

「我らの起源‥‥時は巡る‥‥旅立ち‥‥種の保存‥‥再生‥‥誕生‥‥ヒトのカタチ‥‥」

 

ギンガがそう言い終えた瞬間、光は周囲へ一気に拡散していき、ギンガはまるで糸の切れたマリオネットの様に倒れるが、床に倒れる前に加藤が支えた。

周囲へ散った光は上空で二重螺旋となり、まるで空へと舞い上がる竜の如く登って行く、やがて光は高く大きく広がり、爆発するようにいっそう強く輝いた。

その眩しさで皆は目を閉じ、そして目を開いた時、周囲にあった物は全て消えていた。

ホテルのロビーもそこにあった高そうな家具もエレベーター、ガトランティス兵の死体、ラウンジ、客室‥何もかもだ。

そして皆はいつの間にか戦艦大和の甲板に居り、良馬、バーガー、レーレライの三人は手を繋いだままの体勢だった。

 

「ありがとう‥‥レーレライ」

 

良馬は自分たちを信じてくれたレーレライに礼を言う。

 

「‥‥私も信じよう。希望を持ち、新しい明日を‥‥未来を‥‥」

 

レーレライの声も先程までの悲壮感が漂っている声ではなく、若干明るい声となっていた。

彼女も明日への希望を見出した様だ。

そして、其処に居る全員が互いに顔を見合わせて頷く。

全ての幻影は消え失せ、目の前には広大な熱帯雨林が広がっている。

だが、其処は最初に此処へ来た平和な光景では無く、大和の防空指揮所で見た爆発と森林の彼方此方で火事が起きている。

木々は炎に飲み込まれ、強力な攻撃に大地は抉れ、崩壊して行く。

そんな中、攻撃の一発が大和の近くに着弾する。

 

「この攻撃‥‥ガトランティスの奴等か!?」

 

赤く灼熱のエネルギー弾は紛れも無く、まほろば がこの星へ来るきっかけとなったメダル―ザ級の戦艦からの攻撃であった。

 

「蛮族共め!!この星を破壊する気か?」

 

バーガーも横に立ち、その様子をいまいましそうに見つめる。

良馬とバーガーは互いに顔を見合わせ頷く。

二人の中では同じ答えに行きついたからだ。

 

ガトランティスを倒す

 

方舟惑星、シャンブロウに対して無差別攻撃をするガトランティスに対する思いは一つだった。

明日への希望を掴み取る為、連中の暴挙を許すわけにはいかなかった。

その時、轟音をとどろかせてバトライザーが操縦する上陸用舟艇が浮上して来た。

 

「ミナサン、オムカエニキマシタ」

 

上陸用舟艇からバトライザーの声がした。

 

「よし、戻ろう!!」

 

比較的に広い、後部甲板へ着陸した上陸用舟艇へ向かってレーレライを除く皆が走って行った。

レーラライは遠ざかっていく皆をジッと見つめていた。

 

大和を発進した上陸用舟艇はバーガーたちが乗って来たランベアの内火艇が停めてある所へと赴き、バーガー、メルヒ、バーレンの三人はその内火艇でランベアへと戻って行った。

そして、良馬たちを乗せた上陸用舟艇も まほろば へと戻って行く。

 

 

メガルーダの火炎直撃砲の攻撃を受け、シャンブロウは崩壊して行く。

それを防ぐ為、これよりガミラス軍と共闘し、ガトランティス艦隊を撃滅する為に まほろば へと戻っている最中、良馬たちは驚愕の事実を知った。

 

「七時間!?」

 

「俺たちが上陸してから七時間しか経っていなかったのか!?」

 

加藤が確認するかのようにバトライザーに訊ねる。

 

「ハイ」

 

「どういう事なんでしょう?」

 

バトライザーの解答に困惑する良馬たち。

確かに大和ホテルの中では、一週間以上の日々を過ごした筈だ。

それにもかかわらず、ホテルの外では、七時間‥つまり、ホテル内の一日がホテルの外では、一時間しか時は流れていなかった。

詳しい原因や理論は分からないが、このシャンブロウでは、一部の空間が時間の流れ方とは違う様だ。

やがて、上陸用舟艇は まほろば に着艦し、ガミラスの内火艇はランベアへと降りた。

しかし、ランベアに降りたのはバーレンだけで、バーガーは、バーレンに自分が不在の間、ランベアの指揮権を譲渡した。

少佐であるバーガーの次に階級が高いのは大尉のバーレンであり、彼は七色星団やゴルニ戦役と言った歴戦の前線士官であり、十分に指揮官としての素質はあった。

バーレンをランベアに降ろし、バーガーとメルヒを乗せた内火艇はミランガルへと着艦した。

そして各艦は発進準備に取り掛かる。

あれ程、自由がきかなかった舵が今では嘘の様に問題なく作動する。

惑星表面に打ち込まれたアンカーも収納されている。

良馬とギンガは艦橋を目指し、加藤はパイロット待機室へと向かった。

やがて、艦橋に上がって来た良馬とギンガの姿を見た他の面々は唖然とした。

 

「ど、どうしたんですか?その恰好‥‥」

 

皆を代表するかのように新見が良馬とギンガに訊ねて来た。

確かに密林地帯を調査したのだから服が汚れるのは不思議では無い。

しかし、その汚れ方が結構凄かった。

同じくパイロット待機室にて加藤も坂井や玲から同じ質問を受けていた。

 

「説明は後でするよ。それより状況は?」

 

「はい、ガトランティス艦隊は惑星軌道上に待機しており、我々が浮上して来るのを待っている様です。陣形は不明。現在は例の長距離転移砲にて惑星表面を艦砲射撃しています。ですが、いずれは艦船または艦載機を進撃させてくるでしょう」

 

新見が状況報告をする。

 

「いかがいたしますか?艦長」

 

「‥‥勝算が無い訳では無い」

 

「えっ?」

 

「この惑星の近くにはガミラス艦隊が居る。彼らと共闘すればあるいは‥‥」

 

「‥‥信頼できるのですか?」

 

「その点については大丈夫だ。我々はそれだけの信頼関係を一週間で築き上げてきた」

 

「一週間?」

 

良馬の言葉の意味が分からない様子で首を傾げる新見。

 

「だが、艦長、ガミラスとの共闘は良いがまずはあの大砲を黙らせないと厄介じゃよ」

 

井上が敵の火炎直撃砲の対処をどうするのか?と、訊ねる。

確かにあの火炎直撃砲は厄介だ。

馬鹿正直に正面から戦いを挑めば、あっという間に的にされて撃沈される。

土星圏の様に氷の輪に誘い込んで、水蒸気爆発を狙いたいが、シャンブロウには土星の輪の様な氷のリングは存在せず、敵も恐らく土星圏での戦法は学習しているだろうから同じ手はきっと通じないだろう。

 

「あっ、その点は問題ありません。敵のロングレンジ攻撃の対処は目星がついています」

 

新見が『我に策アリ』という感じで言う。

 

「マジっすか!?副長!?」

 

永倉が少し興奮した感じで尋ねる。

 

「ええ、ただし敵に二発以上撃たせなければなりませんし、有効性を上げるために偵察機を飛ばし、敵の弾道をトレースする必要がありますけど‥‥」

 

「分かった直ぐに準備させよう。ギンガ頼む」

 

「分かりました」

 

ギンガがパイロット待機室に連絡を入れると、玲がコスモゼロにて偵察を行うと言う。

コスモゼロならば、ステルス性にも優れており、速度も問題ない。

まほろば から出撃したコスモゼロは早速偵察活動を行い、データを まほろば へと送る。

 

「コスモゼロからデータが来ました」

 

今まで惑星近辺までしか届かなかったレーダー波がコスモゼロのレーダーと直結されたことで、飛躍的に広がり、シャンブロウへと迫るガトランティス艦隊の姿をモニターに表示する。

モニターに表示された艦影は、ラスコー級宇宙巡洋艦とククルカン級宇宙駆逐艦、そして一隻のナスカ級宇宙中型空母で、あの火炎直撃砲搭載艦の姿は見当たらなかった。

しかし、攻撃を今なおシャンブロウへと行っている事からレーダー範囲外の宙域にいるのだろう。

敵の機動部隊は前衛に巡洋艦と駆逐艦を三角の陣形を展開し、その後方に空母と直掩の駆逐艦、巡洋艦を展開している。

また、まほろば のレーダーはこの近辺にいるガミラス艦隊も同時に補足していた。

ガミラス艦隊は まほろば の現在位置から丁度反対側に停泊しており、ゲルバデス級戦闘空母のミランガル、ニルバレスの二隻を中心にガイペロン級多層式航宙母艦のランベア、デストリア級航宙重巡洋艦、ケルカピア級航宙高速巡洋艦、クリピテラ級航宙駆逐艦、十数隻が発進準備を整えていた。

恐らくミランガルの艦橋ではバーガーが良馬同様、惑星内での出来事を話し、まほろば との共闘を提案している事だろう。

良馬は、ガミラスとガトランティスの戦力不足を痛感する。

 

(なんでいつも艦隊戦をする時は、自軍の戦力が敵より劣っているんだ!?)

 

ガミラス、ガトランティス、そして今回新たにペテルギウスやサイレン宙域で遭遇した円盤型の艦隊も数では此方を圧倒していた。

自軍よりも戦力差のある敵に挑むため、艦橋員らは敵の陣営を見ながら短い時間ながらも作戦計画を立て始めた。

 

「前衛の機動部隊だけなら、何とか五分の戦いは出来るかもしれないが‥‥」

 

「ですが、あまり敵に時間を与えますと、制宙権を取られてしまいます」

 

「しかし、最初の邂逅時よりも空母は後方に位置していますね」

 

「発艦準備中に此方の砲撃を受けたんだ。相手も敵前での発艦に慎重になったんだろう」

 

「この陣形を見ると前衛と機動部隊は一定の距離を保つように指示が来ているのではないでしょうか?」

 

確かにガトランティス艦隊はゆっくりではあるが、機動部隊は前衛艦隊から着かず離れずの距離を保って行動している。

空母という艦種は搭載している艦載機の燃料、爆薬を集積するいわば動く補給基地であり、例え装甲を張っても戦艦の強度と比べるとやはり劣る。

そこで、空母を配置するのは、艦隊の後方と言うのが定石であるが、あまり敵との間を取り過ぎても、艦載機が敵に到達するのに時間がかかり、燃料の過剰な消費と言うリスクがある。

こうした空母の弱点を補うべく、ガミラスでは、戦艦でもあり、空母でもあるゲルバデス級戦闘空母を建造し、防衛軍でも似た様な空母を建造した。

しかし、防衛軍側は正規空母のノウハウの途上と言う事で戦闘空母になったが、ガミラスは空母運用の困難から実験として建造した。

だが、こういった実験艦はどっち着かずで何かしらの欠点を抱えると言う事が多い。

実際、防衛軍の戦闘空母もガミラスのゲルバデス級の戦闘空母も戦艦としての攻撃力はあるが、その分空母としては搭載機が通常の正規空母よりも少ないと言う欠点がある。

結局の所、空母の運営は弱点を抱えつつ、損失を考慮して人海戦術と大量生産で補うしかない。

そして、現在の局面では、ガトランティスは「シャンブロウを攻撃していればいずれ敵は慌てて出撃して来る。出て来たところで艦載機を飛ばせばいい」と思っているのだろう。

 

「敵空母は、まほろば の攻撃を受けて、能力が低下している‥‥そう考えて良さそうだな‥‥」

 

ガトランティス側の慎重さと慢心に漬け込む隙が有るのではないかと思う良馬。

 

「通信長、航空隊に直ちに出撃命令。発艦後は上空で待機。それとガミラスとの通信回路を開いてくれ」

 

「は、はい」

 

ギンガに指示を出した後、良馬は再び敵の陣形が表示されているモニターを睨むように見つめた。

 

「航空隊は直ちに発進せよ!!繰り返す航空隊は直ちに発艦せよ!!発艦後は別名あるまで上空待機!!尚、敵はガトランティス艦艇であり、ガミラス艦は敵にあらず!!」

 

出撃命令が出てパイロット待機室に待機していたパイロットたちは隣接する格納庫へ走り、振当てられた愛機へと搭乗していく。

やがて、発進シークエンスが終了すると、コスモタイガー隊は次々と発艦して行った。

艦内放送が流れ、まもなくガトランティス艦隊と戦闘が予想される中、フェイトとティアナ、ジュラは用意された部屋での待機を命じられた。

ペテルギウス、七色星団、サイレン宙域同様、部外者である自分たちに出来ることは何もない。

分かっているが、分かっている分、自分たちの無力さを痛感させられた。

そんな中、シャンブロウから戻ったバトライザーがフェイトたちの部屋を訪れた。

 

「フェイトサン、ティアナサン、ジュラサン。間モ無ク戦闘ガ開始サレマス。念ノ為、ヘルメットト気密手袋ヲ着用シテクダサイ」

 

バトライザーはフェイトとティアナ、ジュラに安全の為にヘルメットと気密手袋を着ける様に促す。

 

「う、うん」

 

「分かった」

 

「はい」

 

フェイトとティアナ、ジュラはバトライザーの指示の下、気密手袋を腕に着け、ヘルメットを被った。

そして、戦闘状況が表示されるであろうモニターを凝視した。

 

まほろば は機関を始動させ、ゆっくりと上昇する。

その まほろば をまるでエスコートするかのようにコスモタイガー隊は編隊を組んで上昇して行く。

やがて、左舷側から まほろば 同様、雲を割いて上昇して来る艦が複数あった。

言うまでもなく、それはガミラス艦隊だった。

まほろば とガミラス艦隊は並走し、陣形を組む。

停戦状態とは言え、一昨年までは互いに殺し合いを行っていた仲だ。

そんな間柄でかなりの近距離まで近いてきたのだから、緊張するのは当然であった。

しかし、バーガーたちを信頼していた良馬とギンガは表情が柔らかかった。

恐らくミランガルに居るバーガーも同じだろう。

 

まほろば でコスモタイガー隊が発艦したのと同じく、ガミラス側も次々と艦載機を発艦させていった。

ミランガルとニルバレスからは空間格闘戦闘機DWG262ツヴァルケが次々と発艦していく。

また、ガミラス艦隊の最後尾に位置するランベアからは七色星団の戦いを生き残った空間艦上戦闘機DWG109 デバッケと空間艦上攻撃機DMB87 スヌーカが次々と発艦していった。

スヌーカはランベアに残っていたなけなしの爆薬を装填しての出撃であった。

バーレンはランベアを次々と発艦していく艦載機を見て、当初は自分も出撃をしようとしていたが、そこを少年兵のパイロットらに止められた。

バーレンはバーガーから此の艦の指揮権を一時的に預かった身なので、ランベアに残って指揮を貰わねば困る。

ガトランティスとの戦闘は自分らに任せて下さい!!

等と言われ、渋々と言った様子で彼らを見送った。

七色星団の戦いではまだまだ新米のひよっこだった新兵たちも今では一人前のガミラス兵であった。

かつて、ドメルがバーレンに言った『兵は戦場で一人前になる』の言葉通り、彼らはもう新米のひよっこではなく、一人前の立派なガミラス軍人へと成長していた。

ランベアにはこの他にも空間雷撃機FWG97 ドルシーラが搭載されていたが、機数が少ないのと、ドルシーラの主力兵器とも言えるFi.97型魚雷をランベアは搭載していない為、発艦は見送られた。

 

三隻の空母とは言え内二隻は正規空母ではなく、残る正規空母のランベアも本来の搭載機分よりも少ない機数しか搭載していなかった為、ガミラス側の航空戦力は決して多いとは言えない。

 

良馬は、コスモタイガー隊と一緒に飛行するガミラス航空隊の姿をジッと見つめる。

ガミラス戦役から今日まで、考えられない光景だった。

地球防衛軍とガミラスが共闘するというのだから‥‥

コスモタイガー隊と まほろば の艦内に良馬は一つの命令を下した。

 

「これより本艦は、ガミラス艦隊と共闘し、ガトランティス艦隊を撃滅する!!」

 

艦橋にも まほろば の艦内にも、そしてコスモタイガー隊のコックピット内にも緊張が走った。

その時、まほろば の艦橋の近くを一機のツヴァルケが翼を振りながら通り過ぎていった。

コックピット内にはバーガーの姿があった。

 

「バッ、バーガー少佐!?」

 

てっきりガミラス艦隊の指揮を執るものだと思っていた加藤は目を見張った。

バーガーは良馬と通信で作戦内容を聞き、「誰かが前線で指揮を執らなければ、そんな作戦は無理だ」と言ってガミラス艦隊の指揮権を良馬に任せ、自らは航空隊の指揮を行うべく、こうしてツヴァルケに乗り、部下のメルヒと共に出撃したのだ。

 

ミランガルの艦橋ではそんなバーガーを見ながら、「本当に馬鹿なんだから‥‥」と、微笑むネレディアの姿があった。

バーガーもガミラス艦隊全艦へ通信を入れ、

 

「お前らを仲間の下へ帰してやる!!俺を信じてついて来い!!」

 

と、味方を鼓舞し、それを聞いた兵たちは、『ザー・ベルク!!』と口々に答えた。

こうして地球、ガミラスの歴史上初の共闘が行われようとしていた。

 

 

その頃、メガルーダは、主戦場から離れた後方に布陣していた。

 

 

メガルーダ 艦橋

 

「ガハハハハハ‥‥火炎直撃砲の優位はその射程距離にある!!態々前線へ赴かなくとも前衛艦隊が発見した敵艦のデータを元にその地点へ火炎直撃砲を撃ち込めばよいのだ!!」

 

ダガームは直掩の駆逐艦数隻だけを残し、高見の見物を決め込んだ。

このように主戦場から遥か後方に身を置く司令官と言うのは昔から存在したが、その行動に問題が無い訳ではなかった。

 

「ですが、其れでは前衛艦隊を囮‥引いては捨て駒にするのではないでしょうか?それでは味方の士気に影響が‥‥」

 

副官のメイスが意見するが、それを聞き入れるダガームでは無い。

 

「連中の駆除などあくまでついでだ!!我々の目的は宝の星の取得である!!」

 

ダガームの言葉にメイスが余りにも解せない点があった。

 

「では、何故その宝の星を傷つける真似をしているのですか?」

 

「フンっ、腰抜け共がどこかに隠れおって、わしの前に堂々と出て来ぬからよ!!ならば、星ごと焼き払い、いぶり出す他あるまい!!」

 

ダガームは鼻を鳴らしながら言う。

 

「な、何を言っているのですか!?」

 

彼の滅茶苦茶な考えにメイスは狂気を感じる。

口ではガミラスと まほろば等どうでもよいと言って宝の星‥シャンブロウを入手すると言いながら、実際は、シャンブロウは二の次で、ガミラスと まほろば を何としても撃沈したがっている。

その為ならば、折角見つけた宝の星であるシャンブロウを破壊しても良いと考えている様にも思える。

マゼラン方面遠征軍司令官‥一司令官の身でありながらまるで一国を治める独裁者如き彼の所業にもうこれ以上ついて行けないと判断したメイスは人知れず艦橋を後にした。

このまま彼の横暴な振る舞いを許しておけば、ダガームは本当にシャンブロウを破壊してしまう恐れがある。

そうなれば、自分はアンドロメダ方面総司令のゼーダからダガーム共々処刑されてしまう可能性がある。

冗談では無い!!

あんな獣の様な野蛮で知性の欠片の無い無能な男と共に心中なんて真っ平御免だ!!

そんな思いがメイスを突き動かしていた。

艦橋を後にした彼は通信室にて、密かにある場所へ通信を入れた。

メイスが艦橋を後にした事に気がついていないダガームは、

 

「まだ敵を捕捉出来んのか!?」

 

スクリーンを見ながらイラつく様子でオペレーターに訊ねる。

しかし、敵が発見しにくいこの状況を作り出したのは他ならぬダガーム本人なのだ。

 

「か、火炎直撃砲を撃ち込んだ事により惑星内から星間物質が大量に舞い上がり、それによって大気圏内をレーダーで捕捉しにくい状況になっておりまして‥‥」

 

怯えながらオペレーターは敵を捕捉しにくい状況を説明する。

 

「貴様はわしが悪いとでも言いたいのか!?」

 

まさしくその通りなのだが、オペレーターは『はいそうです』と言える訳がなかった。

ダガームは長剣を杖のようにして立ち上がった。

その時、スクリーンに光点が幾つか現れた。

またもや命拾いをしたオペレーターはその反応を見逃さずにダガームに報告する。

 

「敵機接近!!」

 

それはメガルーダのレーダーが捕捉したのではなく、前衛艦隊のレーダーが捕捉したモノがデータ送信されてきたのだ。

 

「なにっ!?艦載機だと!?艦隊では無いのか!?」

 

「は、はい‥エネルギー反応が艦船よりも小さいことから間違いありません」

 

ダガームは撃破しても対して武勲を誇れるとは言い難い艦載機など興味が無かった。

故に彼は、

 

「ふんっ、ハエ共(敵艦載機)の処理は前衛のパラカスに言って処理させろ」

 

手を二、三回振って厄介払いの様な仕草をとる。

 

「りょ、了解」

 

オペレーターは指示通り、前衛のパラカスに対処する様に通信を入れる。

 

メガルーダから命令を受けたパラカスのナスカ級空母、キスカからは次々とカブトガニこと、デスバ・テーターが発艦していく。

その映像をメガルーダのキャプテンシートからふんぞり返りながら見るダガームの気持ちは未だに晴れない。

 

「ガミラスの青虫共と まほろば はまだ見つからんのか!?」

 

オペレーターは慌てて前衛艦隊に確認の通信を送る。

ダガームの剣がオペレーターの体を刻む前に、

 

「て、敵艦隊出現!!惑星から上昇してきました!!位置は前衛艦隊の前方!!エネルギー反応、艦影、共にガミラス艦隊と まほろば で間違いありません!!」

 

オペレーターは冷や汗をびっしょりかきながらダガームに報告した。

スクリーンには、惑星表面から浮き上がって来る十数隻の艦影が映し出されていた。

その艦影はガミラス艦隊と まほろば で間違いなかった。

ガミラス艦隊と まほろば は勢いを殺す事無く、パラカス率いる前衛艦隊へと迫って行く。

 

「ふんっ!!ガミラスの青虫共め!!わしの力に恐れをなして、敵と手を組むか?だが、雑魚が幾ら集ろうが無意味なり!!火炎直撃砲発射用意!!目標、前方敵艦隊!!弱腰の青虫共を まほろば 諸共宇宙の藻屑にしてやる!!」

 

ダガームの命令を受け、メガルーダは起動し始める。

そして、彼は不敵にニヤリと笑みを浮かべた。

 

その頃、玲が乗ったコスモゼロは搭載されていたレーダー衛星を周囲に散布し、衛星は敵艦隊の位置を克明に捕えていた。

そして、まほろば のコスモタイガー隊はキスカのデスバ・テーターの姿を捕捉した。

 

「お出迎えだ!!いいか、お前ら、下手に武勲を立てようと思うな!!生きて帰る事だけを考えろ!!」

 

坂井がコスモタイガー隊全機に通信を入れる。

 

バーガーとメルヒが乗ったガミラスのツヴァルケ隊は、コスモタイガー隊の後方を飛んでいた。

すると、ツヴァルケ隊はゆっくりと大気圏内へと降下し消えてしまった。

新人のコスモタイガー隊乗員の中には、「所詮はガミラスか‥‥」と、彼らの行動に落胆と裏切られた気持ちを抱いた者も居たが、加藤はガミラスには何か作戦があるのだと思い、坂井も

 

「機体の性能も戦法も違う者同士が一緒になっても編に混乱を招くだけだ」と言って今は目の前の敵に集中する様に伝えた。

 

「おっ?もう、ロックオンが出来るのか?」

 

モニターに表示されたロックオンの表記を見て、坂井が意外そうに呟く。

まだ敵機は目視では確認できていない。

通常の多目的ミサイルの発射距離ではない。

これは玲が設置したレーダー衛星による機能であり、設置された衛星から敵の情報が逐次コスモタイガー隊へと送られていた。

これにより、コスモタイガー隊の多目的ミサイルは全て誘導可能となっている。

 

「玲とレーダー衛星に感謝だな。お前ら!!まだイスカンダルを見ずに、死ぬなんてつまらんぞ!!全機初っ端からミサイルを全部ぶっ放せ!!敵にはまだ俺たちが見えていない!!最初から全力全開で行くぞ!!」

 

坂井がコスモタイガー隊全機にそう告げると、各機から『ラジャー』と返答があった。

そしてコスモタイガー隊から一斉にミサイルが放たれた。

コスモタイガー隊から発射されたミサイルはシャンブロウへと進撃していくガトランティスの艦載機、デスバ・テーター部隊へと向かって行く。

上方から突如現れ、自分たち目がけて降り注ぐミサイルを受け、デスバ・テーター隊は次々と被弾し、墜落して行った。

 

突然のミサイル攻撃を受け、デスバ・テーター隊は大混乱となり、滅茶苦茶な回避行動をとる内に味方と衝突する機体も居た。

その混乱を見逃すまいと、コスモタイガー隊が襲い掛かった。

 

コスモタイガー隊がキスカのデスバ・テーター隊とドッグファイトを繰り広げている中、まほろば とガミラス艦隊は巡洋艦と駆逐艦で構成された敵前衛艦隊に接近しつつあった。

良馬は敵艦隊を睨みつつ、ギンガに向かって命令を下す。

 

「通信長、ガミラス警務艦隊司令、ネレディア大佐に連絡、まほろば を中心に単横陣に!!」

 

ギンガが通信を送ると、まほろば の右舷にはネレディアが座乗するミランガルが左舷にはニルバレスが並び、その外側にそれぞれ、デストリア級航宙重巡洋艦、ケルカピア級航宙高速巡洋艦、クリピテラ級航宙駆逐艦が並び陣を組む。

ガミラスとの合同で演習なんてした経験も無く、時間も無かったため、複雑な陣形をとるのは難しいので、良馬は艦船を横一線に並ぶ単横陣を選んだのだ。

 

 

ガミラス軍 第八警務艦隊 旗艦 ミランガル 艦橋

 

「全艦!!戦闘隊形!!」

 

「戦闘甲板開け!!全艦、戦闘隊形!!」

 

ネレディアが命令を下すと、ミランガル ニルバレスの飛行甲板の部分が回転し、そこから多数の砲塔を装備した戦闘甲板が姿を見せる。

戦闘甲板を出したミランガル ニルバレスの二隻は既に空母の姿では無く、戦艦としての姿をしていた。

 

まほろば とガミラスの混成部隊の指揮権は良馬が執る事になっていた。

先程、バーガーと連絡をとった良馬は、作戦を説明すると共に艦隊指揮権をバーガー、ネレディアの双方から受け取っていた。

本来ならば、艦艇数が多い、ガミラス側で警務艦隊の司令官であるネレディアが執るのが普通なのだが、警務艦隊のネレディアは艦隊戦の経験が多い訳では無い。

警務艦隊は主に友軍の憲兵業務を行っていた為だ。

バーガーは艦隊戦の経験は豊富なのだが、今回は敢えて艦載機部隊の指揮を執る方を選んだ。

その為、こうした変則的な形となった。

何より、この指揮官のメンバーの中で火炎直撃砲搭載艦との戦闘経験があるのは良馬だけだったのも要因の一つだ。

 

まほろば、ガミラスの混成艦隊の前に三角陣を組むガトランティス前衛艦隊が迫り、両者の距離は徐々に狭まって行く。

 

「両翼を広げ!!艦の間隔を大きく!!両翼は少し前進し、中央は速度を落し、緩いアーチを形成!!」

 

各艦は艦首バーニアを吹かし、減速し、陣形を組んでいく。

流石は練度の高いガミラス軍、少々難度のある艦隊運動をこなし、まほろば を中心に弓型の陣形を組んだ。

 

「全砲門開け!!目標、敵艦隊先端部、指定座標へピンポイント攻撃準備!!」

 

まほろば の前甲板にある第一、第二、第三主砲、第一、第二副砲が狙いを定め、ガミラス各艦艇もそれぞれの主砲、副砲の照準を敵艦へと向ける。

 

「敵艦隊先端部、指定座標へ照準固定!!」

 

「敵艦隊射程圏内へ突入!!」

 

「全砲門撃て!!」

 

「発射!!」

 

発射命令はガミラス艦隊へも通達され、混成艦隊の砲塔から一斉にショックカノンが敵艦隊に向け放たれた。

混成艦隊から放たれたショックカノンは接近し引かれ合い、やがて一本の太いビームとなり、敵艦隊の先端部へと迫って行く。

収束したショックカノンは敵艦隊の先端部へと命中し、敵艦が一時に四、五隻が吹き飛んだ。

ガトランティスはなまじ艦隊を密集させていたのが、被害を大きくしたのだ。

 

「砲雷長。座標を移動させて繰り返し、敵中央部にピンポイント攻撃を続けろ」

 

「了解。全艦へ通達‥‥」

 

フェリシアがポイントの修正情報を各艦へと送り、

 

「てぇぇぇっ!!」

 

再び混成艦隊の各艦から放たれた光が収束し、敵艦隊へと向かうと、そこで幾つもの爆炎が上がった。

 

こうしてシャンブロウ上空にてガミラスとの混成艦隊とダガーム艦隊との決戦の火蓋が切って落とされた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。