星の海へ   作:ステルス兄貴

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五十五話 シャンブロウ海戦

 

 

敵の混成艦隊が一斉射撃を行い、その攻撃を受けて前衛艦隊の味方艦艇が撃沈されていく様をダガームは苦虫を噛み潰したような表情で見ていた。

そして、怒りに任せ、長剣の剣先を思いっきり床に叩き付ける。

 

「ええいっ!!何をやっておるか!!火炎直撃砲発射用意!!」

 

ダガームは状況を打開すべく、ダガーム艦隊の切り札を用意させる。

 

「火炎直撃砲発射用意!!目標!!前方敵艦隊!!」

 

オペレーターがダガームの命令を復唱し、停船しているメガルーダは火炎直撃砲の発射準備を行う。

そこへ、

 

「で、ですがこの状況下では前に まほろば を狙った時の様に惑星の引力の影響を受けてしまいます」

 

何時の間に艦橋に戻っていたメイスは忠告した。

 

「構わん!!あれだけ艦船が並んでおるのだ!!どれかに当たるだろう!!撃ち続けていれば敵を殲滅出来る筈だ!!」

 

「そんないい加減な‥‥」

 

其処まで言いかけてメイスはダガームに睨まれたので、それ以上の発言は出来なかった。

その間にも兵たちは火炎直撃砲の発射準備を進めて行く。

 

「薬室内圧力上昇」

 

「相対着弾地点座標入力」

 

「エネルギーダンパー起動」

 

彼らにとっては副長のメイスの言葉よりも上官であるダガームの命令の方が優先される。

それは何もダガームがメイスよりも階級が高いと言う理由だけでは無い。

彼の命令に背けば、どうなるかは知っており、彼らは自分の命がかかっている為、兵たちはダガームの命令を熟していくしかないのだ。

 

「火炎直撃砲準備完了!!着弾地点に友軍艦艇はおりません!!」

 

オペレーターは最終宣告を行いあとは引き金を引くだけであった。

 

「火炎直撃砲発射!!」

 

そしてダガームは火炎直撃砲の引き金を引いた。

 

メガルーダの眼前に生まれた灼熱の高エネルギーはすぐに消失、艦首に装備されている転送機によって空間を越えて転送された。

火炎直撃砲が発射されてダガームは口元をニヤリと緩め前衛艦隊と混成艦隊が戦闘を行っている宙域が表示されていたモニターを見ていた。

 

突如宇宙空間がゆらりと揺らぎ、リングが生まれる。その中心へ光が収束すると巨大な灼熱の高エネルギー波が形成されて混成艦隊へと迫って行く。

しかし、メイスの言った通りメガルーダが放った火炎直撃砲はシャンブロウの重力影響を受け、まほろば を狙った火炎直撃砲の高エネルギー波は大きく右側にズレ、其処を航行していたクリピテラ級航宙駆逐艦に迫ったが、直撃は免れ、船体をかすった程度で済んだ。

 

「チッ、外したか」

 

ダガームは初弾が外れた事に思わず舌打ちをした。

それと同時に解せない事もあった。

 

「しかし、どういう事だ?火炎の出現を確認してから、幾らスラスターを噴かそうとも、火炎直撃砲の砲撃からは逃れられない筈だが‥‥?」

 

そのダガームの疑問を観測していたオペレーターが報告する。

 

「それは、やつらの後退スピードのせいかと思われます」

 

「後退スピードだと?」

 

「はい。現在、敵艦隊は全速で後退をしております。火炎直撃砲を奴らの前方に照準して発射していては、実際に火炎が現れたポイントからはかなりズレてしまいます」

 

「つまり、臆病者が全速で逃げている故、当たらないと申すか?」

 

「そうなります」

 

火炎直撃砲がかわされた後も、混成艦隊からの攻撃で前衛艦隊への被害が再び増す。

 

「敵からの攻撃で前衛艦隊に再び着弾!!被害多数!!」

 

「ええいっ!!悪戯に損害を増やしおって!!パラカスの奴は何をしている!?数は前衛艦隊の方が優っている筈だろうが!!同じように此方も艦隊を横に広げて応戦させろ!!」

 

ダガームの命令は直ぐに前衛艦隊へと伝えられ、前衛艦隊は陣形を正三角形から混成艦隊と同じように横一列へとなり、混成艦隊を追って行く。

相変わらず、混成艦隊への攻撃は行われ、沈む艦がいるが、陣形を変える前よりは被害は減っており、逆に反撃を行い、混成艦隊には被害が出始めた。

 

「フンっ、いちいち命令を下さなければ、この程度の事も分からんのか?」

 

ダガームは自分の部下の不甲斐なさに呆れた。

もっと優秀な部下がいれば、敵艦隊などあっという間に殲滅出来たモノを‥‥と思っていた。

 

「臆病者が!!その逃げ足で命拾いしておると言うのであれば、今度は逃げれない位置へと撃ち込んでやる!!火炎直撃砲第二波発射用意!!目標、敵艦隊後方!!」

 

火炎直撃砲の特性の一つはその速射性と狙撃性にある。

波動砲やデスラー砲は、威力は高いが、高速で移動する敵に対しては狙撃する事は出来ない。

しかし、火炎直撃砲ならば、敵の移動先が分かれば高速で移動する目標でも捕捉できる事が可能である。

しかも波動砲、デスラー砲と比べると、速射性も上である。

 

「火炎直撃砲発射準備完了!!」

 

「火炎直撃砲発射!!」

 

メガルーダから火炎直撃砲の高エネルギー波がワームホールの中へと撃ち込まれた。

そして、放たれた高エネルギー波は突如、混成艦隊の前に現れた。

しかし、今回もシャンブロウの重力影響の為か、 まほろば から外れ、隣を航行していたニルバレスの至近距離に現れた。

ニルバレスはバーニアを噴かして回避しようとしたが、出現ポイントが余りにも近すぎた為、逃れる事が出来ずに、その灼熱の炎に焼かれた。

 

「ニルバレスが沈んだ!!」

 

「くっ‥‥」

 

爆沈するニルバレスを見て、ミランガルの艦橋員はうろたえ、ネレディアは思わず顔を歪ませる。

警務艦隊の主力の一隻であるニルバレスの損失は混成艦隊にとっては大きな痛手であり、なにより敵が此方の火炎直撃砲の対策に気がつき、別の手を打ってきた事が更に混成艦隊に不安を抱かせた。

 

「ガッハハハハハ!!小賢しい策では戦いに勝てんぞ!!このまま全艦沈めてやれ!!」

 

勝ち誇ったダガームが火炎直撃砲を更に撃ち込もうとした時、

 

「提督、ゼーダ総司令より緊急電です」

 

メイスがダガームに話しかけて来た。

この時、彼の口元は僅かに緩んでいた。

何故このタイミングでゼーダからの緊急電が来たのかと言うと、ゼーダの命令を無視し、暴走したダガームの行動をあの時、艦橋から抜け出た時、ゼーダに密告したのだ。

メイスは常々ダガームを陥れ、自分が彼に変わってこの艦隊の司令官職を狙っており、遂にそのチャンスが来たと思いそれを実行に移したのだ。

一方、自分の楽しみの時間を若造の司令官に邪魔された事にダガームは「チィッ!!」と舌打ちをして、通信に応じた。

自分よりも若く、姿を見るのも嫌な相手であったが、上官である以上、敬意は示さなくてはならない。

 

「これは、これは、総司令官閣下。緊急とはいかなる御用件でありましょうか?」

 

「メイスから報告を受けたのだが、例の星を発見したそうだな?」

 

ゼーダは表情を変える事無く、ダガームに淡々と訊ねる。

ダガームは密告された事を知り、メイスを睨みつける。

だが、既にメイスの手によって詳細がゼーダに知られてしまっては今更、白を切るのも不可能なので、正直に答えた。

 

「御意、発見には大変苦労をかけましたが、ようやく‥‥」

 

シャンブロウの発見は全くの偶然であったが、印象を良くしようと成果を大きく、大げさに報告した。

しかし、ゼーダはそんな言葉に意を返さず、

 

「ならば、即時攻撃を中止したまえ」

 

と、冷静に命令を下した。

だが、戦の勝利に強いこだわりを持つダガームにとってはその命令は納得しがたいものであった。

 

「これは異なことを総司令官閣下。某はガミラスの青虫共を血祭りにあげ、大帝陛下を始めとする大勢の同胞の仇である地球の戦艦を手土産として手に入れられる機会をみすみす‥‥」

 

ダガームは戦闘続行に正当な理由をつけようとするが、

 

「馬鹿もん!!」

 

ゼーダは一喝してダガームを黙らされた。

 

「私が貴様に与えた命令は件の星を見つけ、アンドロメダ方面へ回航させる事だ!!ガミラスや地球の連中などと戦争ごっこなんぞしおって!!終いにはその星を火炎直撃砲で傷つけるとは何事か!!」

 

ゼーダの言う事は正論であり、ダガームは反論する事が出来なかった。

 

「し、しかし、ガミラスは、一時は同盟を組んでいたとは言え、今はその同盟もなく、彼奴等は小マゼランを巡っての宿敵であり、地球は我等にとっては大仇であります。目の前に敵が居れば、戦い、そして勝利するのは戦士としての本懐というもの!!」

 

尚もダガームはこの戦闘を正当化しようとするが、ゼーダは呆れた表情でダガームを見る。

 

「ふんっ、所詮は獣同然の野蛮人か‥‥」

 

ゼーダは呆れるように言い放つ。

 

「なっ!?なんだと!!」

 

ダガームの手に持つ剣が怒りのせいか小刻みにカタカタと震えている。

しかも口調までもが普段通りになっている。

しかし、ゼーダはそれを知りつつも尚、語り続ける。

 

「貴様を今回の遠征軍司令官に推したのは恐れを知らぬその勇猛さを買っての事だったのだが、貴様は戦士ではなく、ただの獣同然の野蛮人の様だな。それでは、折角与えた新鋭艦も宝の持ち腐れだ。こんな事ならば、司令官にはメイスかパラカスにしておくべきであった‥‥貴様の様な獣が私の部下であった事こそ、私の最大の恥辱だ」

 

ゼーダの言葉はダガームを怒らせるには十分すぎる言葉であり、

 

「うらぁぁぁぁ!!」

 

野獣の様な大声をあげ、ダガームは長剣を振り上げると、それを一気にゼーダの姿が映るホログラム投影機に振り下ろした。

すると、ゼーダの姿は消え、ホログラム投影機は煙と火花をあげて壊れた。

しかし、彼の怒りは収まらず、

 

「ふんっ!!」

 

続いて長剣を横一線に振るう。

すると、メイスの首と胴は切り離された。

メイスは痛みを感じる事無く一瞬で絶命した。

一刀両断にされたメイスの体がドサッと床に倒れ、メガルーダの艦橋の床は血だまりが出来、血液独特の臭いが漂った。

しかし、艦橋に居た兵たちは誰一人、動揺する者は居なかった。

彼らはダガームの怒りに触れた者の末路を知っていたからだ。

 

「ふんっ、密告などと姑息なマネをしおって!!勝利の美酒が不味くなるではないか!!」

 

ダガームは長剣に着いた血を振り払い、キャプテンシートの隣にあるテーブルの上に置いてある酒瓶を手に取ると、そのまま酒をガブガブと煽る。

彼は既にこの戦闘に勝利したと確信していた。

別の意味で、彼はバルゼー同様、慢心していた。

まぁ、そう思うのも確かに頷けた。

戦力では相手は十数隻で此方は数では勝っている。

火炎直撃砲を撃っていれば敵艦を吹き飛ばせる。 

まほろば を撃沈する事は出来なかったが、照準は次第に近づいており、もはや撃沈は時間の問題だ。

それに火炎直撃砲の直撃がなくとも前衛艦隊の被害を無視して行けば、いずれ数に物を言わせて包囲殲滅するのは簡単な筈。

どの道、勝利は自分のモノになるのだ。

ここらで一気にカタをつけるか。

そう思い、ダガームは全艦に下令する。

 

「前衛艦隊は包囲網を狭めて攻撃を強化、パラカスには艦載機を全部出せと命令しろ!!」

 

通信士がダガームの命令を機動部隊に伝え、前衛艦隊は命令通り、包囲網を狭め、パラカスが座乗する空母キスカでは、残りの搭載機の発艦準備が始まった。

その時、観測士がレーダーの異常を報告した。

 

「提督!!レーダーに異常が!!強力な電波妨害(ECM)を受けています!!」

 

「なにっ!?どういう事だ!?」

 

スクリーンに目をやると、電波妨害の為、映像はノイズが走り何も映らなくなった。

 

「原因は近くを飛行する敵機によるものだと判明しました」

 

オペレーターはコンソールを操作して調整を試みるがノイズを除去する事は出来なかった。

 

「ふんっ、既に勝敗は決しておるわ!!彼奴等め、今更こんな小細工等何になる?」

 

電子妨害を受けていてもダガームには余裕が有った。

ECMとて万能ではない。

敵の妨害電波に対して此方も妨害電波を流せば、中和出来るのだ。

ただ、相手が使用している妨害電波の周波数を特定するのに少し時間がかかるだけなのだ。

その時、ダガームは獣的勘で不吉なモノを感じ、前方の窓を睨む。

そこには敵機と思しき銀色の艦載機が此方に向かって接近して来た。

機影からして友軍機でもガミラス機でもなかったので、まほろば の‥‥地球の艦載機だと言う事が分かった。

これは索敵活動をしていた玲が乗るコスモゼロであった。

 

「敵機だと!?どうして奴等に我々の居場所が‥‥?」

 

「ち、近くに索敵機が居るのでしょうか?」

 

メガルーダは今、敵のレーダー範囲外に居る。敵が索敵機を飛ばして此方を探している可能性も十分考えられるが、この広大な空間で多数の索敵機を飛ばせる程の余裕が敵に有るとはとても思えない。

ならば、偶然にも運悪く見つかってしまったと言う事か?

 

「そんな事はどうでもいい!!前方から迫る敵機を撃ち落せ!!」

 

「ですが、レーダーが作動していない今、連動しての射撃は不可能です!!」

 

「構わん!!手動で撃て!!気合で何としてでも撃ち落せ!!」

 

その間にも敵機はメガルーダに迫り搭載されていたミサイルを切り離した。

コスモゼロから発射されたミサイルはメガルーダの艦首付近で左右へと分かれ、艦首部に命中した。

艦首からはオレンジ色の爆炎と煙が上がり、艦体が揺らいだ。

しかし、超弩級戦艦であるメガルーダはたった二発の対艦ミサイル如きでは沈む事は無かった。

ミサイル攻撃をした敵機(コスモゼロ)は、機体をロールさせながら、艦橋近くを通り抜け、パルスレーザー掃射を行いながら艦尾方向へと去って行った。

当然、ミサイル攻撃同様、パルスレーザーの攻撃でもメガルーダにとっては蚊に刺された程度の損傷にしかならなかった。

しかし、被害はある意味甚大であった。

その報告を受け、ダガームは驚愕することになる。

 

「提督!!」

 

「なんだ?」

 

「先程の敵機の攻撃で艦首の転移装置が全損!!火炎直撃砲が使用不能です!!」

 

「なっ、何だと!?」

 

先程の敵機は最初から艦首の転送機のみを狙って攻撃してきたという事実を知り、ギリッと苦虫を噛み潰したような表情をするダガーム。

切り札の火炎直撃砲が使用不能と言う事実により、自軍の勝率はガクッと落ちた。

ゼーダに無礼な態度を取ってしまった以上、このまま手土産なしにアンドロメダ方面へと帰れる訳がない。

しかし、火炎直撃砲が無くともメガルーダにも武装は施されており、艦数ではまだ此方が優っている。

味方が何隻沈められようとも生き残れば、勝者であり、正義なのだ。

 

(まったく、どいつもこいつも不甲斐ない連中め!!)

 

心の中で部下たちに毒づき、ダガームは命令を下す。

 

「火炎直撃砲が使えなくとも問題ない!!わしが貴様らにガトランティス戦士の本当の戦いと言うモノを教えてやる!!機関全速!!敵艦隊へ向かって全速前進!!」

 

ダガームの命令の下、メガルーダはゆっくりと動き出した。

 

「行くぜ!!全機、俺に続け!!」

 

玲のコスモゼロが行ったECM攻撃はバーガーが隊長を務めるガミラス航空隊の攻撃開始の合図でもあった。

電子妨害はガミラス航空隊も影響も受けており、やりにくい戦場ではあるが、そこは歴戦の軍人であり、ドメル艦隊の切り込み隊長バーガー。

彼は自らが先頭に立ち、士気を高めていく。

かつて、ドメル将軍から彼は「厳しい状況でも現有戦力で臨機応変に対応しろ」と何度も言われ続け、その度に様々な劣勢な状況下を想定したシミュレーションを行ってきた。

 

「全員、センサーをあてにせず有視界の攻撃を行え!!いいか、ビビって敵が豆粒みたいな距離でミサイルを撃っても当たらんぞ!!照準器一杯に敵の姿が映るまで近づけば必ず当たる!!わかったな!!」

 

各機からは『了解』と返答があった。

 

「警務艦隊の艦載機隊の奴等にそんな芸当が出来ますかね?」

 

バーガーの隣をメルヒが乗るツヴァルケが飛行してバーガーに訊ねる。

 

「しゃあねぇだろう。数が足りないんだから」

 

バーガーはそう言うが、ガミラス航空隊の士気は高かった。

特にニルバレス所属のツヴァルケ隊の士気は凄かった。

彼らは戦死した仲間と撃沈された艦の仇を討つため、乗艦と仲間を失った悲しみを怒りに変えて敵艦隊へ向かって行ったのだ。

 

「では、少佐、自分は空母を叩きます」

 

「了解だ。空母さえ潰してしまえば、多少は有利になるだろう」

 

ガミラス航空隊がシャンブロウの大気圏から飛び出して行く。

バーガー率いるガミラス航空隊は大気圏に潜んでおり、良馬たちが前衛艦隊を自身に引き付けてガミラス航空隊から目を避けさせてくれたおかげで、こうして敵の機動部隊に接近する事が出来た。

眼前には巡洋艦と駆逐艦を護衛艦とする空母が居る機動部隊が居る。

ガミラス航空隊は敵機動部隊の真横から接近していた。

もし、敵のレーダーが正常に機能していれば、あっという間に探知されていただろうが、電子妨害のおかげで探知されずに接近する事が出来た。

しかし、いつまでも気づかれないと言う訳では無く、敵もガミラス航空隊の存在に気づき、ビームを撃ちこんで来た。

敵の第一斉射で数機の艦載機が撃墜された事に戸惑いが生じた。

 

「電波妨害が効いていない!?」

 

「これじゃあ近づけないぞ!!」

 

不安と戸惑いの為、編隊は一時、乱れそうになったが、

 

「騒ぐな!!電波妨害はちゃんと効いている!!連中は当てずっぽうで撃っているだけだ!!撃たれるか撃たれないかは運次第だ。でもな、下手に編隊を乱すと当たっちまうぞ!!」

 

バーガーの言葉に編隊は何とか崩壊を免れた。

 

「こうなったら、一撃離脱方式をとる。全機、目の前の敵艦に飛び込み、俺の指示で一斉に対艦ミサイルを撃ち込め!!チャンスは一度っきりだ!!」

 

「対空砲火は俺たちが引き付けてやる!!心配するな!!デバッケ隊!!俺に続け!!」

 

メルヒはランベアに搭載されていたデバッケ隊を引き連れて先頭を飛行する。

バーガー自身も自らの機体を先頭に置いたまま、飛行を続ける。

既に各機の照準器には敵艦船がロックオンされた状態だが、まだ司令機であるバーガーから発射命令が下されない。

誰かが一人撃てばつられて皆も撃ってしまいそうな状況下‥‥。

いくら当てずっぽうでも『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』の言葉通り、被弾し撃墜される機体が増えて来た。

敵弾が至近距離を通過すると、機体がビリビリと揺れた。

やがて、敵艦との距離を知らせる「ビィー」と言う警戒音が鳴り響いた。

 

「よし、全機ありったけのミサイルを敵に撃ち込め!!」

 

ガミラス航空隊からは一斉にミサイルが発射された。

ガトランティス艦艇からは狂ったようにビームを撃ち、迫るミサイルを撃ちおとそうとする。

撃ち落されるミサイルはあったが、ミサイルの数が多すぎる。

ミサイルは次々とガトランティス艦船へと命中して行く。

スヌーカーが放った対艦ミサイルは特に効果的で、駆逐艦は辺り所が悪ければ、一撃で撃沈する成果をあげた。

そして、メルヒが狙った空母キスカでは、今まさに追加のデスバーテーターの発艦準備中だったのか、飛行甲板には多数の機体が展開されており、そこにミサイルが命中したため、燃料と爆薬に引火し、艦体を滑るかのように炎が包み込む。

自分の目標である空母を攻撃した後、上空をパスしたが運悪く、そこに一隻の駆逐艦がおり、ビームを放った。

そして、メルヒはその攻撃に自ら当たりに行くような形となり、被弾した。

機体は大きく揺れ、制御もままならない。

 

「メルヒ!!脱出しろ!!」

 

墜ちていくメルヒの機体に向かってバーガーが叫ぶ。

 

「‥‥少佐‥‥自分には‥‥運が無かったようです‥‥‥‥」

 

満足そうにメルヒは微笑む。

そして、彼の機体はグラリと機首が下がり急速に編隊から落伍し始め、爆発した。

 

「メルヒ!!」

 

バーガーはまた一人、大事な部下を失った。

しかし、彼は取り乱す事無く、航空機の指揮を執り続け、本来の作戦通り、深追いを避けて まほろば のコスモタイガー隊への合流を目指した。

尊い犠牲を出しながらもダガーム艦隊の機動部隊は壊滅し、残存艦は被弾しつつも航行可能な艦は数隻程度であった。

 

「此方コスモゼロ、山本。敵旗艦の転送装置の破壊に成功」

 

玲からの通信に まほろば の艦橋は湧き立った。

 

「流石っすね、副長。敵艦の位置を割り出すなんて」

 

永倉が新見の策が成功した事に彼女を褒める。

 

「それほど難しいことじゃないわ。あの転送砲のデータはある程度土星圏の戦いであったし、あとは測量の応用ね」

 

「測量‥‥ですか?」

 

永倉が今回の策と測量がどの様な関係があるのかを訊ねる。

 

「ええ、だから敵に二発以上撃ってもらう必要があったのよ。一発目は軸線上を捜索し、二本目の交差点に敵が潜んでいる可能性が大きですから」

 

ワームホールから出た火炎直撃砲はそのまま後方へと飛んでいく。

そこで、出現後の飛翔距離を逆算して二つの線が重ねるポイントに発射点を求めたのだ。

そこへ玲のコスモゼロを向かわせて電波妨害を行い、ピンポイントで敵旗艦の転送装置のみを破壊した。

敵の転送砲を封じ、機動部隊を壊滅させた混成艦隊。

残るは敵旗艦と残存する敵艦のみ‥‥。

低かった勝率は上がったが、それでもまだ油断はできない。

 

「この機会に敵旗艦を叩く!!全艦、機関反転全速前進、まほろば を中心に密集隊形!!」

 

後退していた状態から艦隊は一転し、前進する。

前衛艦隊とメガルーダの火炎直撃砲により、ニルバレス以下、数隻の艦艇を失い。

ミランガルも多少被弾したが、俄然無傷な艦艇も存在する。

敵は此方が未だに後退していると思い込んでおり、前進して来る。

それは此方の必中距離に自ら飛び込んで来ると言う事だ。

 

「全砲門開け!!目標前方敵艦隊!!」

 

「主砲発射!!」

 

混成艦隊からの一斉射撃を受け、またもや宇宙の塵と化した。

 

「敵陣突破!!」

 

密集隊形をとった混成艦隊は敵前衛艦隊を中央突破した後、周囲に砲撃とミサイルをまき散らしながら進んでいく。

火炎直撃砲は使用不能、機動部隊は壊滅、中央突破をされ、ダガーム艦隊は真面な連携がとれずに混乱していた。

しかし、敵を攻撃すると言う行為そのものは、止める事無く、散発的ではあるが、混成艦隊へ向け、攻撃しようとする艦が多かったが、この時彼らの動きが自分で自分の首を絞める結果となった。

戦闘艦が一番の隙を見せるのは回頭する時である。

被弾面積が大きい、側面を晒し、速度を落すからである。

中央突破され、後ろから混成艦隊を追おうとし、回頭しようとする。

そこへ、混成艦隊の後部砲塔から発射されたショックカノンとミサイルが襲い掛かる。

 

「艦長、ミランガルから通信です」

 

「ミランガルから?スクリーンに投影してくれ」

 

「ツキムラ艦長、貴官の艦隊指揮は中々の腕だな」

 

「偶然上手くいっただけです。それに自慢の優秀な部下が大勢いますから」

 

「そうか‥‥」

 

「ですが、まだ勝った訳ではありません。最後まで油断せずに行きましょう。ネレディア大佐」

 

「うむ、そこで提案なのだが、敵は左右に分かれ我々を追撃して来るだろう。例え、敵の旗艦に肉迫しても後ろから追いつかれれば挟撃される。故に殿は我々が務めよう」

 

「しかし、敵の数はまだ相手が上ですが、大丈夫ですか?」

 

「お気遣い感謝するツキムラ艦長。だが、我々も誇りあるガミラス軍人。たかが二倍の戦力の敵相手に遅れはとらんさ」

 

ネレディアは気高い笑みを見せた。

 

「分かりました。本艦は敵旗艦との戦闘に入ります。ネレディア大佐には殿をお願いします」

 

「ああ、ではな、ツキムラ艦長。後でまた会おう」

 

「ええ‥ご武運を‥大佐」

 

「貴官もな‥‥」

 

良馬とネレディアは互いに敬礼し合って通信をきった。

 

「機雷投下準備」

 

良馬はネレディア率いるガミラス艦隊が少しでも優位になるように離れる際、援護を忘れなかった。

 

「機雷、投下準備完了!!」

 

「投下!!」

 

「機雷、投下します!!」

 

まほろば から投下された機雷は当初は大きな樽の様なモノに詰められていたが、ある程度の時間が過ぎると、その樽から放出され、広範囲にばら撒かれる仕掛けとなっていた。

機雷はガミラス艦隊前方‥つまり敵艦隊の針路上にばら撒かれた。

この機雷はただの機雷としても使用できるが、電波で敵艦の接近を捉えると自動でバーニアが点火し、敵に向かって行き、また熱源モードにセットすれば、噴射ノズルから発せられる高熱を探知してその熱源に向かうことも出来、レーダー波を探知したり、時間が来ると爆発する時限式にも調整可能な機雷だった。

今回は熱源探知モードと通常の機雷モードの二つのモードにセットされており、まほろば、ガミラス艦の機関パターン以外でセットされていた。

 

『シ・エ・ン・カ・ン・シャ・ス・ル』

 

と、ミランガルから発光信号が送られ、ガミラス艦隊はガトランティス艦隊へ、まほろばはメガルーダへと向かって行った。

 

ネレディアは まほろば の作ってくれた機雷原を前に残存艦艇を集結させ、半円形の陣形をとった。

敵の数が少数で自軍の戦力が多い場合、射線が十字砲火出来る様に包囲する。

反対に守備側の場合は、円陣を組み、全方位からの攻撃に対処できるようにする。

まほろば が敵の旗艦、メガルーダへ向かった後もガトランティス艦隊はガミラス艦隊へと迫って行く。

当初は中央突破を図られ、混乱したガトランティス艦隊も態勢を立て直し始めた。

ダガームやパラカスの指示が無くとも各分艦隊司令の命令が届いたのだろう。

ガトランティス艦隊は左右から迫り、ガミラス艦隊を包囲しようとする。

しかし、彼らは まほろば の残した置き土産に気がついていない。

それはダガームがシャンブロウに対して行った火炎直撃砲による艦砲射撃が原因であった。

周囲には星間物質が大量に漂っており、敵艦以外は無視していた。

そして、一隻のガトランティス艦が機雷原に突入すると、機雷が作動し、ガトランティス艦へと向かう。

急速に接近して来る物体をキャッチしたガトランティス艦は直ちに迎撃を行う。

やはりガトランティス艦の射撃性能は早く、弾頭部を撃ち抜かれた機雷は次々と爆発して行くが、この機雷原は飽和攻撃も狙っており、周辺の機雷も次々と連動し、ガトランティス艦隊へと向かって行く。

敵に撃ち抜かれる機雷も多かったが、全ての機雷を撃ち抜くことは出来ずに、敵艦の懐へと飛び込み敵艦を沈める機雷もあった。

 

「今だ!!敵の混乱に乗じて砲撃を行え!!」

 

ネレディアが全艦に砲撃命令を下す。

ガトランティス艦隊は目の前のガミラス艦隊よりも自分達に迫って来る機雷の対処に目が奪われてしまった。そこをネレディアは見逃さず、一艦、一艦を着実に沈めにかかった。

しかし、多勢に無勢で、ガミラス艦隊も奮闘したが、被害は出る。

ミランガルも敵弾を何発か食らい、艦橋にいるネレディアの下には逐次被害状況が入る。

他艦に比べたら、装甲は厚いが、無傷と言う訳では無い。

このまま被弾し続ければ、航行不能か撃沈される。

 

(思ったよりも敵の数が多かったか‥‥しかし、奴らを まほろば の下へ行かせる訳にはいかんのだ。例え、本艦が沈もうとも‥‥)

 

ネレディアには自分が成すべきことが分かっていた。

命令系統を司令官一人に集中させているガトランティス艦隊は総大将を失えば、瓦解する。

だからこそ、自分は此処で一分一秒でも長く、敵を足止めしなければならない。

それこそが、まほろば を救い、引いてはこの戦への勝利に繋がるのだ。

 

ミランガル率いるガミラス艦隊が奮戦していると、

 

「敵艦ミサイル発射!!」

 

「本艦への直撃コースです!!」

 

ミランガルへの艦橋目がけてミサイルが接近して来た。

 

「迎撃!!」

 

すぐにミランガルはパルスレーザーで迎撃するが、ミサイルは既に迎撃網の内側へと迫っていた。

 

「迎撃不能!!当たります!!」

 

「回避!!」

 

「駄目です!!間に合いません!!」

 

(フォムト‥‥)

 

死を覚悟したネレディアの脳裏に過ぎったのは妹が愛した男‥‥そして、ネレディア自身も愛した男の姿であった。

ミサイルは前甲板を高速ですり抜け、艦橋へと迫る。

艦橋員はその場に伏せて直撃を覚悟する。

その時、横から黒い影が横切り、ミサイルと衝突した。

凄まじい衝撃音と衝撃がミランガルの艦橋を襲い、揺れるが、ミランガルの艦橋事態は無事だ。

 

「フォムト!!」

 

ミランガルの艦橋とミサイルの間に割り込んだのは一機のツヴァルケであった。

多数のツヴァルケが出撃したが、ミサイルに体当たりをしたのは、誰のツヴァルケなのかネレディアは直ぐに分かった。

こんな無茶で馬鹿な事をするのは一人しか居ない‥‥。

軍に入り、妹が死んでから一度も流していない涙がネレディアの頬を伝う。

こんな事になるなら、自分の気持ちを伝えておくべきだった。

ネレディアは通信士のコンソールへと走り、マイクのスイッチを入れて叫ぶ。

 

「フォムト!!フォムト!!返事をして!!私を一人にしないでよ!!」

 

彼女の悲痛な叫びは全艦に伝わり、将兵たちの涙を誘った。

皆は、ネレディアが初めて見せる女性としての姿と愛する人に対する気持ちに心を打たれた。

暫しの沈黙の後、

 

「‥‥ネ‥‥ディア‥‥ネレ‥‥ア‥‥ネレディア」

 

ノイズ交じりであるが、スピーカーから照れくさそうな声が聴こえてきた。

艦橋の窓には、爆発の影響を受けてパイロットスーツを黒く汚したガミラス兵が一人、漂っているのが確認出来た。

ヘルメットのバイザーが下ろされているが、それが誰なのかネレディアには直ぐに分かった。

こみ上げる感情を爆発させて笑みを浮かべたネレディアは全面窓まで走り漂うガミラス兵に向かって手を振る。

 

「フォムト!!生きていてくれたのね!!」

 

「自爆は好きじゃねぇからな‥‥直前で脱出した」

 

ヘルメットごしだが、バーガーはニッと笑みを浮かべる。

 

「あ、ありがとう‥‥フォムト‥‥生きていてくれて‥‥」

 

ネレディアは涙を流し、彼の生存を心から喜んだ。

 

「また生き残っちまったな‥‥だけどな‥‥」

 

「だけど何?」

 

「だけど‥‥今は恥ずかしくて死にそうだ‥‥」

 

バーガーは艦橋に向かってクイクイと手を向ける。

ネレディアが振り返ると、艦橋員が皆、ネレディアとバーガーの先程のやり取りを見て、温かい目で二人を見ていた。

彼女はここに来て、今のやり取りを全艦放送で流してしまった事に気がつき、顔を羞恥で真っ赤に染めた。

 

「バッ、バカ!!」

 

彼女の照れ隠しの叫びがミランガルの艦橋に響いた。

 

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