星の海へ   作:ステルス兄貴

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五十七話 マゼラン雲突入

「私は大ガミラス帝星航宙艦隊総司令官、ガル・ディッツだ。貴官が艦長か?」

 

「はい。地球防衛艦隊所属、宇宙戦艦、まほろば 艦長の月村良馬です」

 

良馬を睨むような視線を送りながら、ディッツが問う。

 

「貴官らが何故、我が母星の領域に我々の友軍艦艇と行動を共にしている理由を聞かせてもらいたい」

 

下らぬ事をぬかしたら、この場で討ち果たしてやるぞというところか。

まぁ、当然だろう。

デスラーの知らせを聞き、ガミラス艦隊と行動を共にしていると言っても、こちらは正式にデスラーからガミラス領内の航行許可を得て航行している訳ではない。

つまり、我々は堂々とガミラスの領海内で侵犯行為を行っているのだ。

しかも、ガミラス軍の総司令官の目の前で‥‥

 

「ディッツ総司令官、我々はデスラー総統からの緊急電を受けた軍司令部の命令を受け、暴走したイスカンダルの救援に最短ルートで赴く途中、ここに通りかかった。ガミラス領を領海侵犯したのは、事実であるが、我々地球の恩人であるイスカンダルの危機を見過ごすわけにはいかず、我々はどうしてもイスカンダルへ向かわなければならない。そちらに正当な理由があるのは百も承知だが、もし、武力によって我々を止めると言うのであれば、こちらも自艦防衛として其れ相応の覚悟で望む所存です」

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

両者はしばらくメンチを切り合うように互いから視線を離さなかったが、やがてディッツは僅かに表情を緩めた。

 

「‥‥そうか。実は我々も総統のご命令を受け、イスカンダルを追跡する途中に立ち寄ったところだ。総統から、ヤマトとその友軍との戦闘は禁じられているので、我々も貴官らと戦うつもりはない」

 

彼らも我々と戦う意思はないようだ。

ディッツの言葉を聞き、艦橋内にホッとした空気が流れた。

 

医務室では、画面越しとは言え、生で見るガミラス艦隊に艦橋員よりも、緊張した面持ちでフェイトとティアナはモニターを見ていた。

 

「あれがガミラス艦隊‥‥」

 

「あの戦艦なんて、この まほろば よりも大きいですね‥‥」

 

フェイトは、まほろば と航行しているガミラス艦隊を見て、緊張を解き、今度は複雑そうな顔でガミラス艦隊を見ている。

かつて敵対した者と和解するのは、フェイト自身と高町なのはやヴォルケンリッター。

最近ではJS事件後のナンバーズ(一部を除く)やルーテシアたちで経験済みだが、この世界の地球はガミラスによって滅亡寸前まで追い込まれたという。

一方、ヤマトはイスカンダルへ行く為、結果としてガミラスの首都を破壊し尽くしたという。

互いの母なる星を破壊したのだから、自分たちよりも遥かに重苦しい話だ。

それに伴う犠牲も半端ない数の筈だ。

 

「どうしました?フェイト?」

 

リニスがフェイトに訊ねた。

 

「リニス‥‥ガミラスと地球‥‥互いに同胞の仇同士だったんだよね?」

 

復讐戦が勃発しても何ら不思議ではないのに、緊張状態ではあるが、爆発する様子はない。

ガミラス戦役の時とは、大きく技術進歩した地球防衛軍の艦船。

特に波動砲の威力は自分もこの目で何度か見たが、『凄い』の一言だ。

射程内に上手く誘い込めば、あの艦隊も全て薙ぎ払えるのに‥‥

それにも関わらず、まほろば にはそんな気配は全くない。

その事をフェイトがリニスに訊ねると、

 

「もちろん、互いに言いたい事は山ほどあるでしょうけど、でも、自分の言い分ばかり主張しても何も始まりませんから‥ヤマトの皆さんも、ガミラスの方も自らの故郷の存亡を賭けて戦い、ひとまず決着はついたのですから、敵対した者を全否定し続けたら、いつまで経っても平和は来ないでしょうから‥‥」

 

その後も両者の話が進み、ディッツ艦隊と まほろば はイスカンダルまで同航することになった。

 

 

良馬が艦長を務める宇宙戦艦 まほろば とガミラス軍総司令官ディッツ率いる艦隊は、ほんの一ヶ月余り前までは敵対していた者同士という、何とも奇妙な呉越同舟で、共にイスカンダルへの合流を目指していた。

まぁ、イスカンダルの前にヤマトとの合流が先であるが‥‥

 

「通信長」

 

「はい」

 

「秘匿通信でディッツ総司令に繋いでくれ」

 

「えっ?」

 

「ジュラさんの事をディッツ司令に話しておきたい」

 

「分かりました」

 

ガミラス軍の総司令と言う役職ならば、デスラーの娘の存在は知っている筈だと思い、彼女の生存を知らせておこうと思ったのだ。

 

「何とも妙な気分ですねぇ‥‥まぁ、彼方さんも同じなんでしょうが‥‥」

 

操舵桿を握りながら、永倉が隣を航行しているガミラス艦隊を見ながら、呟く。

 

「そうじゃな、今まであの艦影は敵だと言う認識があったからな‥‥」

 

井上も肯定する。

 

「ディッツ提督、向かいの地球艦より秘匿通信です」

 

「秘匿通信?兎も角、繋いでくれ」

 

「了解」

 

まほろば からの秘匿通信にディッツは当初、首を傾げたが、取りあえず まほろば からの通信に応じた。

 

「態々すみません。ディッツ総司令」

 

「いや、構わん。それで何の用かな?」

 

「実は、先程立ち寄ったサイレンの星にて、ある人物を まほろば に収容したのですが‥‥」

 

「ある人物?‥‥っ!?」

 

良馬が、モニターの前に呼んだ人物を見て、ディッツは目を見開いた。

 

「お久しぶりです。ディッツ提督」

 

「じゅ、ジュラ様」

 

ディッツは慌てて頭を下げる。

やはり、デスラーの娘と言う事で、艦隊総司令のディッツもジュラの事は知っていた様だ。

 

「サイレンの星で、メラ様がお亡くなりになり、そしてジュラ様の行方が分からなくなり、私もジュラ様の身を案じておりました」

 

「ご心配をおかけしましたディッツ提督‥‥ですが、私はこうして無事に生きています」

 

ジュラの生存にホッとした様子のディッツ。

そして、良馬は、何故ディッツに秘匿通信をしたのか、理由を話した。

それは、いくら地球とガミラスとの星間戦争が終わっていても未だにガミラスに対する遺恨があり、それらの負の感情からジュラを守るためだと説明した。

その件に関しては、ディッツも理解した。

それを踏まえ、ディッツはジュラに自分たちの艦に移乗しませんか?と問うと、ジュラはその勧めを断った。

理由は、ギンガを始めとし、気兼ねなく話せる同性がいるためであった。

ディッツもジュラの意見を受け入れ、良馬にジュラの事を「くれぐれも丁重に扱うように」と、ジュラの身柄を良馬と まほろば に託した。

ただ、ディッツが良馬にジュラの事を託す際、内に殺気を秘めていた。

それは、くれぐれもジュラ様に不埒な事をするなよ。

もし、ジュラ様にかすり傷でもつけて見ろ、タダではすまさん。

等の思いが含まれていた。

良馬は、蛇に睨まれた蛙の様に冷や汗を流しながら、「は、はい‥‥」と返事をした。

 

(ディッツ提督の覇気、土方提督と同等だ‥‥)

 

ディッツ提督と土方提督が同類だと思った。

 

まほろば とガミラス艦隊はヤマトが航行しているであろう宙域に向けてワープを行った。

ワープアウトをした際、ヤマトでは即座に警戒された。

何せ、ワープアウトが一隻では無く多数あったかだ。

まほろば がヤマトを追いかけてきて、ワープアウトをしたのならば、ワープアウトは一つなのだが、今回ヤマトの周辺で観測したワープアウト反応は、四十に近い数値だったからである。

しかし、ワープアウトした艦影の中に まほろば が含まれていた事で、ヤマトは早速まほろば に通信を入れ、確認に入った。

良馬は、古代にサイレンの星、シャンブロウ宙域で起きた事を話した。

ただし、ジュラの件は除いて。

ヤマトの乗員にもガミラスに家族や恋人を殺された乗員が大勢いるので、ジュラの件はまだ内密にしておこうと思ったのだ。

 

そして、古代とディッツは互いに通信をして、相互理解をした後、全ての艦艇は一路イスカンダルを目指した。

 

二年前は何ヶ月かけて来た14万8千光年を、今回の航海では僅か一週間強でやってきた。

地球の波動エンジン技術が格段に進歩した事とガミラス側のワープ機関の譲渡、ガミラスの航路妨害もなく、既に海図も確立されている事が航海日程の短縮にも繋がっている。

しかし、果たしてこれは進歩といえるのだろうか?

退歩していないと誰が断言できるのか――?

 

ヤマト、まほろば、雪風・改、そしてディッツ、ネレディアのガミラス艦隊。

この奇妙な形の混成艦隊は間もなくイスカンダルに追いつくと思われるところまで来ている。

その理由は各艦のセンサーに近くに恒星系がない宙域にも関わらず、地球型惑星の重力反応を捉え、なおかつ反応が少しずつ強くなっていることも、イスカンダル星である可能性を高くしていた。

 

そして、先日ガミラス星の地下資源を盗掘し、α星、七色星団、サイレンの星で遭遇したあの艦隊の本隊も同様にイスカンダル星を追跡している可能性が高い。

何故、あの艦隊がガミラスの資源を採掘していた理由が分からず、その点を良馬はディッツに訊ねた。

ディッツによれば、ガミラスとイスカンダルの両星のマントル~外核にはそれぞれ「ガミラシウム」、「イスカンダリウム」という高放射性エネルギー鉱石が豊富に存在し、その鉱石は長距離宇宙航海や戦闘用のエネルギー源になるという。

イスカンダルの場合はガミラスが常に隣で睨みを利かせてきたため、イスカンダルが侵略を受ける事は無かった。

しかし、ヤマトとの戦いでガミラスは滅び、イスカンダルの用心棒はいなくなり、しかも鉱石を大量に含み、なおかつ、穴だらけで採掘しやすいガミラスは無人状態。

盗掘屋にとっては格好の穴場だったのだろう。

しかし、まさかのデスラーの一時帰国でその目論見は外れ、採掘は失敗しその採掘惑星であるガミラスが消滅した今、同種のイスカンダリウムだけでも確実に採掘しようと考えてもおかしくはないだろう。

 

「通信長、ヤマトに打電してくれ」

 

「はい」

 

良馬はある意見文を書いた紙をギンガに渡し、ギンガはその紙に書かれた文面をヤマトに打電した。

 

それから暫くして、まほろば、ヤマトからコスモタイガーが数機発艦した。

マゼラン星雲に入り、あの艦隊がいつ襲撃して来る事も予想できるし、この先で布陣をしている可能性もあるため、早期警戒・偵察機の任務を帯びて、発艦した。

 

あの艦隊は地殻を貫ける設備と作業用艦船を持ち込むだけの力、そして太陽系と目と鼻の先のα星まで進出してきた事から、かなり大規模な事業体‥‥それも国家クラスの規模だと推測される。

それに採掘しているエネルギー物資が全て戦闘用のエネルギー源と言う事から、あの艦隊の本星が慢性的なエネルギー不足で枯渇している訳ではなく、採掘したエネルギー源を戦争利用しようとしている事が窺える。

戦力再建途上の地球防衛軍としては、極力戦闘は避けたいところだが、あの艦隊が地球の恩人であるスターシャ・イスカンダルと古代守の身に危害を加えようとするならば、実力で排除してでも二人を救出するしかない。

しかし、問題はスターシアが素直にイスカンダルを離れるかどうかである。

実際にスターシアと面識がある古代と雪の話から推察するに、彼女は自分の命を落とすことになっても、イスカンダルを離れるようなことはないように思える。

事実、ヤマトがイスカンダルに到着した際、沖田はスターシアに一緒に地球へ来ないかと、誘うが、スターシアはイスカンダルの女王としての務めとして、その誘いを断った経緯がある。

それにスターシアにぞっこんな守もスターシアと離れる事をよしとしないだろう。

美しい夫婦愛なのだが、救助しようとしている此方側にとっては厄介な事だ。

上手い具合に二人の間に子供でも生まれていれば、話は違ってくるだろう。

通常、親は子より先に逝く。

それは当たり前の摂理なのだが、幼子を一人残すのは余りにも忍びなく、子供が生まれていれば、その子は地球人でもあるし、スターシアには母親としての責務、守には父親としての責務がある筈だ。

例え子供が産まれていなくてもいい‥‥スターシアが妊娠中でもそれは同じ事が言える。

親の都合で子供まで死に追いやられるなど、断じて認めない。

最悪、人道的措置との名目で、家族全員強制的に拉致してでもイスカンダルから連れ出してやる。

恐らく古代や真田も同じような事を考えているに違いないだろう。

良馬がイスカンダルにいる二人の事を考えていると、哨戒機からの連絡が入った。

 

「イスカンダル近海に艦隊らしき反応を感知!艦隊又は船団と思われる!」

 

艦橋に緊張感が走った。

敵艦隊発見の通信は当然ディッツ艦隊にも伝わっているはずだ。

 

「総員戦闘配置!!」

 

新見が当直外の乗組員にも配置命令が出し、

 

「通信長、偵察隊に打電、敵艦隊の詳細戦力を確認せよと!!」

 

「了解!!偵察隊へ!!十分注意の上、艦隊編成を確認されたし!!」

 

ギンガが敵勢力の詳細データを取集する様に偵察隊に呼びかける。

ガミラス艦隊ならディッツから合流を呼びかけてもらう。

 

「艦長、前方に地球形惑星の存在を確認。不鮮明ですが投影できます」

 

「投影しろ」

 

「はい」

 

星名がスクリーンの映像回路を開いた。

 

「おお‥‥」

 

「うわぁ‥‥」

 

艦橋に嘆声が漏れる。

距離があり、恒星からも遠いため暗く、解像度も良くないが、青い海の中に南北に走る陸地は、映像で見たイスカンダル星に他ならないだろう。

それは、フェイトたちも同じであった。

 

「この星が‥‥」

 

「イスカンダル‥‥」

 

自分たちの知るどの管理世界よりも目の前に広がる星は青く美しく神秘的だった。

 

「綺麗な星ですね‥‥」

 

「うん。この映像を見る限り、星としての寿命が尽きかけているというのが信じられない」

 

地球に高度な宇宙用推進機関をもたらしたのは目の前のイスカンダル星だという。

また、地球上から致死量の放射能を短期間で一掃したという「コスモクリーナー」もこのイスカンダル星の機械だ。

管理局員のフェイトたちから見れば、この星の技術レベルは明らかにロストロギアレベルの技術だ。

いや、管理局の視点では、ヤマト や まほろば 自体が動くロストロギアレベルである。

 

そう言った点で言えば、イスカンダルは管理局員の自分たちから見ても、十分ロストロギアの宝庫だ。

何故、これまでの管理局の歴史でイスカンダルの存在が知られていなかったのがおかしいくらいだ。

ロストロギアならば、本来は時空管理局員として放置しておけないが、波動エンジンは地球防衛軍にもガミラス軍にも広く普及しているのでは、回収なんか不可能だ。

第一、自分たちは地球防衛軍に助けられ、世話になっている身だ。

 

(いくらロストロギア回収とはいえ、正規の手続きを踏まずに干渉したら、管理局は侵略者と見なされてしまうわね)

 

地球防衛軍の宇宙戦士は、太陽系赤道祭で知り合った経緯から、普段は気のいい人ばかりだが、侵略者には容赦しない。

古代をはじめ、ここの乗組員たちの姿勢を見てもよくわかる。

平和を維持しようとする思いは管理局員も防衛軍軍人も変わりないが、ハード面もソフト面も違いがあり過ぎる事も事実であった。

そういう人たちが唯々諾々と管理局に従うとは思えないし、イスカンダルに手を掛ければ、ガミラスはもとより地球防衛軍をも敵に回してしまうだろう。

 

管理世界でさえ、管理局に反感を抱く人が少なくないのに、基本的にまだ管理局にとって未知な部分が多く、かつ危険極まりない軍事勢力が複数存在するこの世界で敵を増やすことは愚の骨頂ではないのか?

 

(そもそも、この世界にはこの世界のルールがあるはず。管理局がそれを無視して踏み込む権利があるのかしら?)

 

管理局の枠から離れた今、第三者的な位置で自分の所属する組織について、ティアナはふと思う。

敬愛する兄の殉職、親友の姉の‥ギンガの葬儀を目のあたりに際し、管理局側が示した反応に失望と反発を覚えた事がある彼女は、口にこそ出さないが、目の前の直属の上司や、かつての直属の上官ほどは管理局に心酔していない。

自分が管理局員、執務官を目指すのも、兄の夢であった執務官への道を継ぎ、兄の死をバカにした連中を見返してやろうと言う事だった。

しかし、ガミラス、地球防衛軍、ガトランティス等管理局よりも高度で強力な科学技術、軍事力を有している星間国家相手に管理局は何処まで相手が出来るのだろうか?

その中で、時空管理局執務官と言う役職がどんな役に立つのだろうか?

今、目の前に居る上司の執務官は全くと言って良い程、肩書のみの存在である。

月村艦長は基本的に親切だし、こちらの話にも最後まで耳を傾けてくれる。

親友の姉であるギンガが防衛軍に入隊したのはそう言う事も一因なのかもしれない。

とはいえ、耳を傾けてくれるのと賛同を得るのは全く別問題で、しっかり反論されてバッサリと斬られてしまうこともあるのだが、こちらの考えや思いを一旦は受け止めてくれる事は率直に嬉しい。

と、すると管理局の士官局員、特にミッドチルダ出身の高ランク魔導師の中には、自分の意見や考えを相手に押し付ける者が少なからず存在し、周囲を省みない行動や言動が周囲の反発を招いた挙げ句、事件解決に手間取ったり冤罪事件になった事例は多数存在する。

冤罪事件においても管理局は決して自分たちの非を認めないか、責任転嫁ばかりを繰り返してきた。

 

(同年代の管理局士官には勘違いしている人が結構いるのに‥‥やっぱり何度も死線をくぐり抜けた人たちは違うのかな?)

 

ティアナは、フェイトら元機動六課の隊長達と同年代の管理局士官を思い浮かべて考え込んだ。

 

 

「偵察隊より入電!!敵、戦力判明!!旗艦らしい超弩級戦艦一、戦艦十、巡洋艦二十二、護衛艦五十一、駆逐艦五十六!!艦影はガミラス・白色彗星帝国いずれにも該当せず‥です!!」

 

流石本隊だけあって、数は今まで遭遇してきた艦隊よりも規模が大きい。

表示を切り替え、偵察隊がキャッチした敵艦隊の映像へと切り替わる。

そこに映っていた艦影はα星、七色星団、サイレンの星で見たあの艦隊と同型の物ばかりである。

 

「敵艦隊の一部、イスカンダル星へ降下を開始しました!!」

 

「っ!?全艦全速!!航空隊、全機発進準備!!」

 

奇妙な混成艦隊はイスカンダルへと急速に接近した。

 

 

混成艦隊がイスカンダルに着く少し前、

 

「デーダー司令!!イスカンダルが‥‥イスカンダルの落下が停止いたしました!!」

 

「何ぃ!?」

 

オペレーターの報告に声をあげるデーダー。

暴走していた惑星が突然停止するなんて、普通ではありえない事だからだ。

 

「イスカンダル近辺に超重力反応‥‥マイクロブラックホールか何かによる重力干渉と思われます」

 

オペレーターが観測データからイスカンダルの停止原因を報告する。

 

「むぅ‥‥小生意気な‥‥だが、イスカンダルの落下を止めてくれたことには感謝しよう。我々が直接手を下して停止させる手間が省けたというものだ。そして、今度は貴様らがザンザーの灼熱の炎へと落下する番だ!!全艦、進軍開始!!あのハエ共を今度こそ叩き落とすのだ!!」

 

デーダーの命令一下、艦隊は加速を開始し、ガミラス艦隊へと迫って行った。

 

「敵艦隊が接近してきます!!敵の総攻撃と思われます!!接触まであと35分!!」

 

当然、敵の動きはガミラス側も察知していた。

敵の動きを報告するオペレーター。

 

「ぬぅぅ‥‥」

 

敵の総攻撃の報告を聞き、デスラーは苦虫を潰したかのような顔をする。

 

「総統、このままでは、我が艦隊は‥‥」

 

「全艦‥‥イスカンダル星への降下準備をとれ‥‥」

 

「大気圏突入準備!!急げ!!」

 

デスラーの命令を聞き、ガミラス艦隊は急いでモードのチェンジを行う。

 

「総統、大気圏突入モードに移行するまでの時間は約20分‥‥その間、我々は完全に行動不能になります。もし、敵が進軍を加速すれば、無防備状態を突かれてしまいますが‥‥」

 

「信じるのだ‥‥タラン」

 

「ハッ」

 

「我らの進む道に‥‥ガミラスに‥‥栄光を!!」

 

『栄光を!!』

 

乗員はガミラスの勝利を信じ、大気圏突入準備を継続させた。

 

一方、ガミラス艦隊を追撃するデーダーは‥‥

 

「敵艦隊、先程より動きを完全に停止しています」

 

「敵もようやく諦めたと見える‥‥いや、それとも上面から刺し違えるつもりでいるのかな?」

 

突然動きを止めたガミラス艦隊の意図がつかめないデーダーであるが、

 

「フフフ、どちらとて構わん。蹴散らすのみだ!!全艦加速!!一気に殲滅するぞ!!」

 

と、力によるごり押しを敢行するデーダーであった。

 

「敵が‥‥加速を!!総統!!」

 

「‥‥」

 

「敵の到着時刻と我々の大気圏突入モード移行の終了時間が重なります」

 

「天は‥‥天はどちらに味方するのでしょうか?」

 

「愚問だぞ‥‥タラン‥‥」

 

「交戦可能距離まで、あと120宇宙キロ!!」

 

「各砲門、エネルギー充填開始!!」

 

「あと‥‥80宇宙キロ!!」

 

「‥‥」

 

「あと50宇宙キロ!!敵艦隊、依然動きません!!」

 

「ふははは、覚悟を決めたか!!‥‥全砲門、敵旗艦に向けよ!!」

 

追う者と追われる者。

緊張した時間が過ぎていく。

一秒がこれほど長く感じた事は恐らくデスラーたちにとって初めての経験だろう。

そして、

 

「た、大気圏突入モード移行完了!!」

 

タッチの差でガミラス艦隊の大気圏突入モードの移行が終了した。

 

「敵の砲撃可能距離まで、あと15宇宙キロ!!」

 

「総員戦闘態勢!!全艦、第二戦速!!」

 

「全艦、第二戦速!!」

 

「イスカンダル大気圏へ突入開始!!」

 

ガミラス艦隊は次々とイスカンダルへと降りていく。

 

「司令、敵艦隊が突然、イスカンダルへの降下を開始しました!!」

 

一方、デーダーの方でもガミラス艦隊がイスカンダルへの降下を開始した事は予想外の行動だった。

 

「何ィ?」

 

「ここからでの砲撃では、大気圏表層通過時にビームが減衰し、威力が落ちてしまいます!!」

 

「小癪な‥‥追え!!敵が逃げるなら追い詰めるのみ!!追うのだ!!」

 

「しかし、現在ほとんどの艦が宇宙戦闘モードに固定されています!!現状で大気圏突入可能な艦は、後続の予備隊‥‥全体の三分の一程に過ぎませんが‥‥」

 

「かまわん!!それだけいれば充分だ!!今すぐ降下し、逃げ場を失った敵共を一掃するのだ!!そしてついでにイスカンダル地表にある目障りなあの街も一気に掃討してやれ!!」

 

「はっ!!」

 

デーダーは大気圏突入が可能な予備隊を直ぐにイスカンダル地表へと降下させた。

 

「総統閣下!!敵が分散し、一部が大気圏降下体制に移りました。我々を追撃してく模様です!!」

 

「このまま降下し、マザータウンの周りの海へ着水しろ!!敵は必ずマザータウンをも狙ってくる筈‥‥命を賭けて、マザータウンを死守せねばならん!!」

 

「こ、後方より敵が急接近!!予想外の速度です!!」

 

「デスラー機雷を打ち上げろ!!」

 

ゲルバデスからは、デスラー機雷が入ったポッドが多数射出され、ポッドはある一定の高度まで上がると、自然に割れ、そこからは無数のデスラー機雷が散布された。

 

突然散布された機雷を回避する事が出来ずに、敵の高速駆逐艦二隻と護衛艦三隻がデスラー機雷の餌食となった。

 

「機雷だ!!」

 

「危険だ!!回避!!」

 

「速度を落せ!!」

 

ガミラス艦隊は、機雷によって追撃してくる敵の足を鈍らせる事に成功した。

 

「敵艦より、機雷が射出された模様です!!」

 

追撃していった予備隊からの報告を読み上げるオペレーター。

 

「ええい、何から何まで小癪な奴らめ!!突入部隊に打電!!一刻も早く機雷原を突破し、一艦残らず撃滅するのだ!!」

 

「はっ!!」

 

予備隊は機雷に向けて主砲を撃つが、如何せん機雷の数が多く、中々機雷原の突破に時間がかかっている。

その間にガミラス艦隊はマザータウン近くの海へと着水体制をとっていた。

 

「海面までの距離あと2000!!」

 

「全艦、対ショックに備えろ!!着水するぞ!!」

 

大きな波しぶきを立て、ガミラス艦隊は次々とイスカンダルの海へと着水していった。

 

「全艦着水完了!!」

 

「各部、閉鎖!!全艦、上方の敵に備えろ!!」

 

ガミラス艦隊の各艦は砲塔の全てを最大仰角まで上げて、上からの敵襲に備えた。

 

「まだ機雷原は突破できんのか!?」

 

機雷原の手前でイスカンダル大気圏まで降下した予備隊の旗艦である戦艦で艦長が部下に声を荒げながら訊ねる。

 

「も、申し訳ありません。如何せん機雷の数が多すぎて‥‥」

 

部下の方は恐る恐る答える。

 

「ならば、艦載機隊を先行させ、あの街を廃墟と化せ!!」

 

プレアデスを始めとする戦艦からは次々と艦載機隊が出撃していった。

小型の艦載機ならば、機雷原の穴を問題なく通る事が出来た。

しかし、戦闘機では、対艦戦闘は不向きなので、戦闘機隊はマザータウン施設の破壊に向かいった。

装備されていた、小型爆弾でも、無防備の都市に対してはそれなりの被害を出す威力はあった。

 

「宮殿上空に向かう敵機を撃ち落せ!!スターシアと古代守を守るのだ!!」

 

ガミラス艦隊は対空砲を都市爆撃に向かう敵の戦闘機に対して、撃ちはじめる。

 

「デスラー‥‥」

 

「俺たちの為にデスラーが‥‥あのデスラーが‥‥くっ、俺たちは、こうして見ている事しか出来ないのか‥‥!!」

 

宮殿の外で繰り広げられる戦闘に、スターシアは嘆き、守は何も出来ない自分に対し、悔しそうに歯を喰いしばる。

 

「総統、機雷源が完全に突破されました!!敵艦隊が侵入してきます!!」

 

「撃ち落せ!!ガミラスの怒り、その全てを込めて応戦するのだ!!」

 

「まだあの小うるさいハエを叩き潰せんのか!?」

 

デーダーは戦闘開始からかなり時間が経っているにも関わらず、未だにガミラス艦隊を殲滅出来ない事に苛立っていた。

 

「ええい、役立たず共め!!もうよい!!私が直接指揮を執る!!大気圏突入モードへの移行は完了したか!?」

 

「はっ、全艦、移行完了しております!!」

 

「右舷大隊、左舷大隊前へ!!左右から突入し、敵を包囲しろ!!艦載機隊は先行してあの目障りな都市を破壊しろ!!どうやら敵はあの都市を死守したい様子だからな‥‥その希望の芽、先に摘み取ってやるのだ!!」

 

右舷大隊、左舷大隊の戦艦より、艦載機隊が射出されていく。

 

「敵もさるものとはいえ、瀕死の状態に変わりない!!一気に叩き潰すぞ!!」

 

中央を先に突入した予備隊、そして左右をそれぞれ、一個大隊が包囲する陣形でガミラス艦隊へ迫っていくデーダー艦隊。

 

「軌道上の敵部隊、さらに分離!!中央の本体は動かないようですが、左右から大部隊が突入してきます!!」

 

「更に、艦載機部隊の増援を確認!!マザータウンへと向かっています!!」

 

「総統!!各部隔壁に禱殿損傷が出ています。残念ですが、これ以上交戦を続行しては、艦が持ちません!!」

 

デスラーの下には戦況不利な報告が次々と入ってくる。

 

「もはや‥‥もはや、これまでと言うのか?‥‥マザータウンを!!スターシアと守を!!イスカンダルを見殺しにしろと言うのか‥‥!!」

 

デスラーにしては珍しく、手詰まりになり、諦めかけていた。

 

 

此処で場面はイスカンダルからミッドへと変わる。

 

時空管理局、本局 大会議場。

 

テリオス遭難事件にて、地球防衛軍が設置した通信ポッドのあるヘリオポーズへと行き、次元ブイを設置した、クロノ・ハラオウンが艦長を務めるクラウディア。

自分たち、管理局が此処に来たと言う証を残して、クラウディアは本局へと戻り、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、ティアナ・ランスターニ人の生存、テリオス遭難の真相と通信ブイの設置をこれまでの映像と記録と共に報告したのだ。

今回の会議には三提督の他にも“海”、“空”、“陸”の上層部局員が集まっていた。

度重なる次元航行艦の喪失と多数の乗組員の殉職・行方不明、管理局からの離職は管理局の“海”には深刻な打撃を与えていた。

また、管理局屈指のエースであるフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官も遭難し、管理外世界の宇宙船に救助されたらしいが、現在も連絡不能であることは、ミッドチルダの住民も驚愕した。

しかし、一般には地球防衛軍等の事は伏せられ、単に管理外世界とだけ発表されていた。

時空管理局が最新最強と喧伝しているXV級次元航行艦をあっさり撃破できる強力な宇宙戦闘艦とそれを運用できる軍事組織が管理局のコントロールを受けずに存在する事が明らかになれば、管理世界全体に衝撃と不安をもたらし、管理局への不信感を募らせるだけでなく、反管理局組織や次元犯罪者に要らぬ勢いを与えかねないからだ。

クロノの報告を聞き、表情は様々だが、共通するのは驚愕と当惑であった。

 

「テリオスを襲ったのが、ガトランティス帝国で、ハラオウン執務官らを救助したのが、地球防衛軍らしいというのが解ったのはいいが、戦闘力が圧倒的に違う。これでは対処のしようがないな‥‥」

 

次元航行部隊の佐官が首を横に振りながら呟いた。

 

「ハラオウン提督、地球防衛軍という組織と第97管理外世界の関連は確認できないのか?」

 

一人の高官がクロノに質問する。

 

「私が居を構えている第97管理外世界には、間違いなくここまでの宇宙戦闘艦を建造できる技術もなければ、地球防衛軍なる組織も存在していません」

 

クロノが自分の知る地球と地球防衛軍の根拠地とされる地球との違いを明確に報告する。

 

「宇宙戦艦‥‥スペース・バトルシップ‥‥ですか?」

 

「はい。文字どおり、宇宙空間で艦船同士の戦闘を第一目的とした戦闘艦です。恐らくテリオスを襲撃した艦もそれに類似する物でしょう。正直、信じたくない気持ちですが、現実から逃避して対応を誤れば、我々も同じ運命に見舞われることになります」

 

三提督の紅一点、ミゼット・クローベルの問いにクロノが頷く。

 

「確かに強力そうな砲身だ。アインヘリアルをも上回りそうだが、そんな砲を何門も搭載しているのか?」

 

「はい。しかも、執務官らが救助されたこの まほろば に関しては大きさも我々が所有しているXV級よりも大型です、更にテレザートにて確認されたヤマトの大きさもほぼ、XV級とほぼ同じ大きさです」

 

以前、クラウディアがテレザートにて記録に成功したヤマトの映像が再生され、次にテリオスを襲っているガトランティスの艦艇が まほろば の放つビーム(ショックカノン)により串刺しにされて爆発炎上する動画が再生された。

 

「今の段階では、地球防衛軍、地球連邦と第97管理外世界の関連性は不明です」

 

「だとすれば、第97管理外世界の事は置いてもよかろう。話をややこしくするだけだ」

 

三提督の法務顧問相談役、レオーネ・フィルスが複雑になりかける話をリセットした。

このまま話が行けば、第97管理外世界を管理世界に編入せよと言い出す輩が出そうだからだ。

 

「ガトランティス軍は血に飢えた獣みたいなものだ。どう考えても、コンタクトを取るべき相手は地球連邦‥地球防衛軍だろう」

 

続いて、三提督の武装隊栄誉元帥のラルゴ・キ-ルが言う。

 

「元帥、お言葉ですが、そんな危険な質量兵器を使う連中を相手にするのですか?」

 

本局の高官の一人が非難する口調でたしなめる。

 

「その通りです!!テリオスを沈めた連中は危険だが、奴らをあっさりと片付けてしまった地球防衛軍とやらの艦はもっと危険だ!しかも、更に強力な大量破壊兵器もあるというではないか!」

 

そう主張する管理世界拡大推進派の提督にレティ・ロウランが反論する。

 

「些か早計に過ぎませんか?地球防衛軍が好戦的なだけならば、戦闘はともかく、テリオスの救助作業まではしないでしょう。しかも自分たちの身元も明かしているんです。これは、ハラオウン執務官らの身柄を我々に返す気があるのでは?」

 

「ロウラン提督の言う通りだ。それに肝心のハラオウン執務官らの身柄は向こうにある。返してもらうには、いずれ地球防衛軍ないし地球連邦政府と交渉する他ないのではないのかな?」

 

「さよう。その時、向こうが高圧的な態度でくるのか、友好的な態度なのか、中立的な態度でくるのかはわからないが、こちらが『お前たちは危険な存在だ』というような態度で接したら、全てが無駄になりかねない。現時点で、明らかにガトランティスとまともに渡り合える戦力や技術を有しているのは地球防衛軍のみであり、母体である地球連邦本国がどこにあるのかもわからないんだからな」

 

レオーネとラルゴは、防衛軍側とコンタクトを取る気でこの話を終えようとしたが、

 

「だからこそ、地球連邦のある世界を特定して、その世界を直ちに管理世界に編入し、彼らの技術をロストロギア指定し全て接収するべきです!!」

 

ここで空気の読めない高官が居た。

この高官は元々、管理世界拡大推進派に属する高官ゆえの発言であった。

 

「ソレはどんな名目なのですかな?管理局と戦闘状態にない惑星国家に対して?」

 

「テリオスは地球連邦とガトランティスの戦争に巻き込まれたんです!当事者に謝罪を求めるのは正当な権利な筈です!」

 

「その代償が一世界の主権か?多くの人命が失われた事に怒り、手を下したガトランティス側に謝罪させるのは当然だが、救助した防衛軍側に対する礼がそれとはな‥‥管理局は一体いつから礼儀知らずの侵略組織に成り下がった?」

 

「何だと!?」

 

慎重策を求める“陸”“海”“空”の士官と管理世界拡張を求める“海”“空”の士官が口論を始めた。

フェイトとティアナの身柄がまだ彼方にあるにも関わらず、強硬な手段をとり、牙を剥かれてはかなわない。

もし、そんな事になれば、彼女らの生命にも危機が及ぶ可能性もある。

第一、地球防衛軍の総戦力も根拠地である彼方の世界の地球の正確な座標さえ分からないのだ。

“魔法文化がない世界を軽んじる空気が蔓延していては、いずれ管理局は存亡の崖に立たされる”

管理局はまさに改革の時を迫られていたのかもしれない。

 

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