艦隊司令官のデーダーは身じろぎもせず、戦況を見守っていた。
ガミラス星のガミラシウム採掘を邪魔した艦隊は、小癪にもイスカンダルにもやってきて我々の前に立ちはだかっているが、戦況は俄然、此方が有利だ。
ガミラス艦隊を追い詰めたデーダー艦隊。
しかし、内心は苛立っていた。
それは未だにそのガミラス艦隊を殲滅できていなかったからだ。
そんな時にプレアデスのレーダーが艦船の反応を捉えた。
「デーダー司令、後方より接近中の艦船があります!!」
「なにっ?あそこ(海上)にいる連中の一味か?」
「大部分の艦艇はあの敵艦隊と同型艦ですが、うち三隻は全く異なる形状とのことです!」
そこへ、一通の通信が入った。
「デーダー司令、後方から接近中の艦船より入電です!!」
「読み上げろ」
「はっ、『貴官ラノ行動ハ、いすかんだるノ平穏ヲ脅カスモノデアル。タダチニ戦闘行動ヲ中止シ、コノ星系ヨリ退去サレタシ』‥‥以上です」
「何だと!?小生意気な連中め!!後衛の部隊を迎撃に当たらせろ!!それと、連中がそこの勢力に属する奴等なのかを問いただせ!!」
「はっ!!」
此処で、視点を防衛とガミラス軍の混成艦隊へと戻す。
「敵艦隊の一部、イスカンダルへ降下を開始しました!!」
「っ!?全艦全速!!航空隊、全機発進準備!!」
奇妙な混成艦隊はイスカンダルへと急速に接近した。
「通信長、前方の艦隊へ打電してくれ!!『貴官ラノ行動ハ、いすかんだるノ平穏ヲ脅カスモノデアル。タダチニ戦闘行動ヲ中止シ、コノ星系ヨリ退去サレタシ』と」
「了解」
ギンガは良馬の言った文を前方の艦隊へと送った。
すると、
「前方の艦隊より、高速駆逐艦隊がこちらに向かってきます!!その後方に旗艦らしい大型一隻を確認!!」
「前方の艦隊より入電!!『貴官らの所属国家とあの星に近づく目的を説明せよ』‥‥以上です」
その後、二~三回通信での応酬が行われたが、向こうはどこまでも高圧的で、自分たちの正体を明かさず、こちらの所属を聞き出そうとする。
無論、此方側としてはそんな要求に応じる必要はない。
ましてや自分たちの所属を明かさず、戦闘行為も止める様子もない輩ならば、尚更だ。
「敵艦隊、こちらに高速接近!」
どうやら、彼方は話し合い等応じず、殺る気満々のようだ。
「敵艦発砲!」
「主砲、斉射三連!!まずは旗艦らしい大型艦を仕留める!」
「了解、主砲、斉射三連!!射撃用意!!」
「ヤマトも射撃準備を始めました」
「主砲発射準備完了!」
「撃てっ!!」
まほろば、ヤマトの前部主砲から放たれた火線は、接近してくる敵艦隊へと吸い込まれていく。
そして、その狙いは外さず、敵の大型艦を貫いた。
此方からの長距離射撃を受け、しかも旗艦と思しき、艦が撃沈されると、残る艦の隊列が乱れ始めた。
其処にディッツ提督から通信が入った。
「奴らは我々が始末する。貴官らは一刻も早くイスカンダルへ行け!!」
「了解しました」
陣形を乱す敵艦隊にディッツ艦隊が襲いかかった。
駆逐艦では、到底、餓狼のごときディッツ艦隊を防げまい。
凄惨な殺戮劇を横目に見ながら、まほろば と ヤマト、雪風・改は一路イスカンダルに向かう。
「偵察機より入電!!イスカンダル大気圏上に艦隊を確認!!マザータウン方向に向け降下中との事です!」
「コスモタイガー隊、対艦攻撃準備!準備出来次第発艦せよ!!」
デスラーたちはマザータウンを死守しているようだ。
スターシアと古代守の二人を救出するには、まずマザータウンの周りに居る敵を一掃しなければならない。
「ディッツ艦隊、敵艦隊を撃滅しました!!すぐにこちらに向かうそうです!!」
やはり、猛将と言うだけあって良馬が予想していたよりも早い。
「コスモタイガー、全機装備完了しました!」
「よし、全機発進!!」
まほろば からは、坂井率いるコスモタイガー隊とヤマトからはコスモゼロに乗った古代と山本率いるコスモタイガー隊が次々と発進。
古代機を先頭に、マザータウンに向かっていった。
まほろば が戦闘配備になった時点で、フェイトとティアナ、ジュラは医務室から自室に移動していた。
二人は先程から言葉が出せずに、無言のままモニターを見ていた。
虚空に浮かぶイスカンダル星、急接近してくる円盤形戦闘艦と、それに対するヤマトと まほろば の砲撃、一撃で爆散する円盤形艦艇、逃げ惑う羊に襲いかかる狼のごときガミラス艦隊‥‥。
自分たちの世界の戦闘とは次元が違う。
飛び交う光学兵器や質量兵器と艦載航空機。
閃光とともに艦船が砕け散る度、あの光の中で数十から数百の人命が消えていくのだ。
α星、七色星団、サイレン宙域、シャンブロウで宇宙戦艦の戦いを見てきたが、やはり何度見ても自分たちの知る管理局内で見てきた価値観が根底から覆されていく。
戦争、戦闘には死が伴う。
こんな簡単な事すら自分たちは忘れていた。
六課を始めとして、これまで管理局での経験全ての戦闘行為が甘っちょろいとは思わない。
PT事件の時も、闇の書事件の時も、そしてJS事件の時も、自分は命懸けに任務に望んで来た。
しかし、それらは地上での出来事‥‥。
だが、ここは真空の宇宙空間‥‥。
宇宙では地上での常識は通用しない。
未知の宇宙気象や現象が起こり得る空間故、管理局でさえ宇宙で起こる現象を全て解明できているわけでは無い。
モニターの向こうで行われている戦闘では続けざまに放たれる光学兵器はミッド式の砲撃魔法を遥かに上回る速度。
今、目の当たりにしたヤマト、まほろば の砲撃もたった一門の砲撃でも高町なのはのスターライト・ブレイカー、次元航行艦に装備されているアルカンシェル、ミッドに設置されていたアインヘリアルの威力を大きく凌いでいる。
時空管理局の次元航行艦はレーザー核融合と魔法のハイブリッド機関だが、地球防衛軍やガミラス軍の艦船は、魔法に頼らない同系列の、少なくとも管理局の艦船より数世代先行した推進機関を使用しているのは間違いない。
(波動エンジンというのはこれほどまでに強力なの‥‥?)
ティアナが管理局の艦と防衛軍、ガミラスの波動エンジン搭載艦との違いについて考えを巡らせていた。
そして、ヤマト、まほろば らの地球防衛艦隊に、管理局の次元航行艦隊が一方的に撃ち沈められる様を想像して慄然とし、頭を強く横に振った。
(この世界では、ガトランティスやガミラスより、地球の人たちの方がきちんと話し合いの場を持てるはず‥‥)
時空管理局がこの世界の星間国家と対立したり、無理矢理従属させようとしたら、間違いなく大量の血の代償を支払わされる。
そんな危険なこの世界で、味方というか、友誼を結べる存在があるとすれば、地球防衛軍と地球連邦くらいしかないのではないか?
フェイトもまた、ティアナと同じ事を考えていた――。
「デーダー司令、後方の艦隊へと差し向けた味方部隊が壊滅状態です!!」
「敵は二手に分かれ、三隻がこちらに接近中!残りは我が船団と交戦中!」
「何だと!?」
デーダーは思わず舌打ちした。
その後の部隊の状況も、短時間のうちに急速に悪化の一途を辿り、
「味方部隊全滅!!」
「ええい、小賢しい真似を!」
「分派した敵艦から艦載機が発進しました。こちらに向かってきます!」
「全艦、陣形を密集させろ、対空砲火を濃密にするのだ!」
ここで浮足立っては元も子もなくなる。
まずは海上に居座る敵艦の処理が先だ。
デーダーは、後衛の被害にはある程度目をつぶる事にした。
「コスモタイガー隊、敵艦隊後衛に接触。戦闘状態に突入、攻撃を開始しました!」
「うん」
良馬は報告を聞き、頷く。
どうやら、第一関門は無難にくぐり抜けたようだ。
とは言え、コスモタイガー隊の目標はあの艦隊ではなく、マザータウンとガミラス艦隊に取り付いている敵編隊の排除なのだ。
コスモタイガー隊は敵艦隊後衛に対艦ミサイルを撃ち込むとそのままフライパスし、マザータウンに向かった。
「味方護衛艦部隊に多数の被害!!」
「つくづく小賢しい奴らめ!」
デーダーは毒づいた。
海上の連中とは異なるシルエットの敵艦から発進した戦闘攻撃機は、こちらの後衛艦隊に向けて対艦ミサイルを全弾発射し、そのまま我が艦隊の対空砲の射程外を通り過ぎ、海上の敵艦隊に向けて飛び去った。
対空戦闘のため、後衛艦隊を密集させていたのが結果として裏目に出てしまった。
敵編隊が放ったミサイルは、忌ま忌ましくも、密集した後衛艦隊を左右に分断するかのようにほぼ一直線に着弾し、被害を与えてくれたのだ。
小勢ながらなかなかどうして、こちらの神経を逆撫でてくれる。
「通信参謀、あの艦載機の所属する艦の通信を傍受分析し、所属を探れ!」
「はっ!」
海上にいる艦隊は、どうやらガミラス星に元々住んでいた連中らしいが、あの艦は、敵艦隊と同盟こそしているが、かなり異なる勢力なり国家なりに属しているようだ。
デーダーは通信参謀に件の敵艦の分析を命じた。
どんな小勢でも、ひょっとしたらとんでもない強力な勢力がバックについているかも知れない。
過大評価以上に避けなければならないのは過少評価だ。
コスモタイガー隊は敵艦隊本隊をフライパスし、マザータウンへと迫る。
攻撃目標はガミラス艦隊を攻撃しようとしている艦艇と艦載機群。
まほろば のコスモタイガー隊は、デスラー機雷を突破した敵の艦隊に向かい、ヤマトのコスモタイガー隊は、敵、艦載機隊に襲い掛かった。
「七色星団に居た奴らに比べれば、楽なもんだな。坂本、椎名、お前らは大丈夫か?」
敵艦載機を撃ち墜しながら、坂本と椎名に訊ねる山本。
「相手は宇宙戦闘用の艦載機みたいですからね、大気圏内なら此方に分があります‥‥この前の様にはいきませんよ」
「同感です。山本隊長こそ、油断して撃ち落されない様にご注意を!!」
「全く、いつまでたっても口数の減らない奴等だぜ」
軽口を叩きながらも忠実に任務をこなしていくコスモタイガー隊だった。
マザータウン周辺の敵を一掃し、帰還行動をとる。
マザータウンから戻って来たコスモタイガーがヤマト と まほろば をフライパスする。
何機かは煙の尾を引いているが、一機も欠けることなく戻ってきた。
損傷機には教導隊機が随伴しているが、パイロットは負傷しておらず、どうやら大丈夫のようだ。
しかし、万が一の為、被弾した機には帰還命令を出した。
「デーダー司令、イスカンダルへ突入した部隊が援軍の艦載機部隊により全滅しました!!敵の内、降下しているのは艦載機だけのようですが、大気圏内での戦闘は此方に不利だと思われます」
「ぬぅ~侵攻中の左舷大隊、右舷大隊に転進を命じろ!!こうなれば、戦力を全て集結し、この軌道上で片をつけてやる!!艦載機部隊にも出撃を命じろ!!」
「地表に居る敵はどうされますか?」
「地表に居る敵とて、いずれ飛び立たねばなるまい。のこのこと上昇して来たところを迎え討てば良いわ!!」
デーダーの命令でイスカンダルの大気圏内を侵攻中だった左舷大隊、右舷大隊は停止し、宇宙戦闘モードへと移行しながら上昇したが、突然の転進命令で、直ぐには集結が出来なかった。
そこで、コスモタイガー隊への追撃はプレアデスが搭載している艦載機隊が行った。
「敵艦載機、接近します!」
「対空戦闘用意!!全対空火器、照準追尾始め!」
「了解」
良馬が対空戦闘準備を指示。
副砲、対空パルスレーザー砲が仰角をかけ、ミサイル発射管の蓋が開放された。
「敵機、射程内に補足!!」
「対空戦闘始め!!」
良馬の号令一下、ヤマトと まほろば が対空戦闘を開始し、無数のパルスレーザー砲とミサイルが発射された。
対空ミサイルは命中を狙ってはいない。
近接信管で炸裂し、極超音速でばら撒かれた榴散弾が目標を襲う。
ミサイルの洗礼を免れた敵機にはヤマト と まほろば のパルスレーザー砲の掃射が降り注ぎ、死角を突こうとした敵機には再反転したコスモタイガーが襲いかかった。
意外に強い対空砲火と迎撃機に鼻白んだ敵機の一部は、いったん後方に離脱して体制を立て直そうとしたが、そこへ別の砲火が襲った。
ディッツ艦隊がようやく追いつき、主砲と対空ミサイルを撃ってきたのだ。
「母なるガミラスの仇に情けは無用!一機たりとも生かして帰すな!」
ディッツ艦隊の怒りの砲火は、雨のごとく敵機に降り注いだ。
「敵艦隊、反転上昇していきます!」
幕僚の報告に、デスラーは額の汗を拭った。
やはりヤマトは来た‥‥。
艦影こそまだ確認できないが、コスモタイガー編隊の先頭を切るコスモゼロを駆っているのは、間違いなく古代進だ。
一瞬緩んだ緊張をすぐに引き締め、デスラーはすぐさま指示を飛ばす。
「戦闘可能な艦は集結せよ!各部の修理も急げ!!」
「はっ!」
敵艦隊はヤマトに向かったようだが、こちらを忘れては困る。
我々にとどめを刺さず、背中を見せたことを必ず後悔させてやる。
デスラーは不敵な笑みを零した。
「敵編隊撤退!入れ代わりに艦隊が接近してきます!」
「対艦戦闘用意!コスモタイガーを全機戻せ!隔壁閉鎖確認!」
敵将は本気で我々を潰しに来たようだ。
まほろば の医務室では、リニスや原田らの医療班が、治療に使う薬や包帯、怪我人を運ぶ担架を準備して、何時でも動けるようにしていた。
先程艦内放送で「対艦戦闘用意」が告げられた。
間もなく宇宙戦艦同士の殴り合いが再び始まろうとしているのだ。
そこへ、自室に居た筈のフェイトたちがやって来た。
やはり、モニターで見ているだけではどうにも手持ち無沙汰となり、何か自分たちにも出来ないかと思ってきたのだ。
「あの‥‥リニス先生?」
「ん?何かしら?」
ティアナがリニスに質問する。
「ヤマトを含めた地球防衛軍の艦船は、敵方より少ない数で戦ってきたのですか?」
「ええ」
リニスが肯定の回答をよこす。
「ヤマトはイスカンダルまでの航海の時は、一隻で29万6千光年の旅をしたし、冥王星海戦の時は、防衛軍が三倍以上の数のガミラス艦隊に戦いを挑んだわ。白色彗星の時も同じだったわね‥‥この時も、再建したてだったから、2199年当時よりも最も数が多かったわ。それでも敵である白色彗星の艦隊の方が数は地球艦隊よりも多かったわね。だからこそ、地球艦隊は、地の利を活かした戦法で数の問題を少しでも和らげた。それでも、あの都市帝国によって全滅寸前までに撃ち減らされ、死兵同然で戦って、ギリギリの勝利を掴んだのよ」
「そう‥ですか‥‥」
敵より多数の戦力で臨むのが戦術の基本であり、少数で多勢に挑むのは下の下だ。管理局ではそう学んできた。
しかし、戦力が整わないうちに敵が来ては仕方ないだろう。
ただ、目の前のリニスや原田たちは、うろたえることなく、特に緊張した様子もなく、平然とその時を待っている。
自分たちが六課に配属され、ファーストアラートの時は、現場に向かう途中のヘリの中で緊張しっぱなしだった。
その前に行ったBランク試験の時も同じだった。
ホテル・アグスタの時は、周りのコンプレックスと緊張からミスショットをした。
つい最近では、執務官補佐官試験でも同様だ。
(映像に出てこない過去に、もっと辛く悲しい思いをしてきたのかも‥‥)
先日見せてもらった映像はダイジェストだ。
実際にはもっと血生臭い修羅場も存在したはずだ。
(正直、想像がつかないな‥‥)
しかし、ヤマトや地球防衛軍は、決して諦めることなく、絶望的な状況に立ち向かい、奇跡的な逆転勝ちをおさめてきたという。
(地球防衛軍の戦いぶりを見れば、奇跡を起こしてきた所以がわかるかも知れない)
そう思うティアナの背後にある医務室の壁に掛けてある薄型スクリーンに映った宇宙空間が光芒で満たされた。
イスカンダリウム採掘のため、マザータウンに着水したガミラス艦隊相手に優位な戦闘を展開していたデーダー率いる暗黒星団帝国軍・第一機動艦隊であったが、新手の敵艦隊(ディッツ艦隊&ヤマト、まほろば、雪風・改)にイスカンダルへ突入した部隊及び、本隊後衛にまで被害が及んだことを看過できず、艦隊司令官のデーダーは、反転して新たな敵艦隊を叩くことを決断した。
そして、ようやく艦隊の集結が終了した。
イスカンダルの軌道上でまさに一大決戦が始まろうとしていたのだ。
「これより、本艦隊は、イスカンダル軌道に集結した敵艦隊との交戦に移る!!イスカンダル地表のデスラー率いるガミラス艦隊は大きな被害を受け、直ぐには動けそうにない。しかし、デスラーはあれだけの艦隊で此処まで持ちこたえてくれたんだ。その努力を無駄にするな!!」
古代が士気を上げるために皆を鼓舞する。
「ですが、気を付けた方が良いですよ。何せあれだけの大艦隊です。それにこれまでの交戦データに無い艦も居る様ですし‥‥」
南部の言う『交戦データに無い艦』とは、プレアデスの事を指していた。
「うむ、南部の言う交戦データに無い艦‥‥恐らく旗艦とおぼしきこの大型艦が問題だな。とてつもない量のエネルギー反応を持っている。どう思う、大山?」
真田はプレアデスの異常なエネルギー反応について大山に意見を求める。
「波動砲の様な超兵器を積んでいるか‥‥あるいは強力な偏向バリア搭載艦か‥‥推測なら幾らでも出来る。だが、実際に戦ってみんことにはどうせわからんのだ。今から心配していてもしょうがないさ。気楽に行け、気楽に」
「気楽にいけと言われましてもね‥‥」
太田が少々弱気な様子で言う。
「兎も角、イスカンダルにいるスターシアさんや守さん、そしてデスラーを守るのが先決だ。砲火がイスカンダル方向に向かないように注意して戦う必要があるぞ」
島がイスカンダルへ流れ弾が落ちないようにと慎重論を唱える。
「そうだな」
暗黒星団帝国 第一艦隊 旗艦 プレアデス 艦橋
「デーダー司令、全艦集結完了しました」
「フフフ‥‥今までの分の借り、たっぷりと返してやるわ!!全軍、進撃開始!!」
デーダーが開戦とも言える命令を発した。
その時に、
「あの‥‥デーダー司令‥‥申し上げ難いのですが‥‥」
幕僚の一人がデーダーに声をかけた。
「何だ!?」
気分が乗って来たところに水をさされ、不機嫌そうな声をあげるデーダー。
「我々は既に、イスカンダルにいる同じような小規模の艦隊により、予想を遥かに上回る被害を受けております。敵が小規模とは言え、油断してかかるのは禁物かと‥‥」
「‥‥なるほど、崇高なるご意見、ありがたく承ろう。すると君は、このデーダー率いるプレアデス艦隊があのハエ共に負けるとでもいいたいわけか?」
デーダーが意見を述べた幕僚を睨みつける。
「いえ、あの、はは‥決して‥‥‥そんなわけでは‥‥‥」
デーダーの睨みに怖気づく幕僚。
そんな幕僚にデーダーは‥‥‥
バン!!
腰のホルスターから銃を抜き、その幕僚を射殺した。
「臆病者めが!!」
床で死んでいる幕僚にデーダーはまるでゴミでも見るかのように言い放つ。
デーダーの行動にプレアデスの艦橋内に居た乗員も皆、唖然としている。
「何をしておる!!命令が聞こえなかったのか!?全軍、進撃開始だ!!」
モタモタしている乗員にデーダーは声をあげる。
「りょ、了解!!」
デーダーの声を聞き、我に返る乗員たち。
乗員たちは大慌てで各艦に命令を伝達し、艦隊は進軍を開始した。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「敵艦隊、前進してきます!!」
「敵艦隊前衛との距離、12000!!」
「主砲、射撃用意!!」
敵の巡洋艦、護衛艦、駆逐艦が高速で距離を詰めてくる。
「月村艦長」
其処に、古代から通信が入った。
「どうした?」
「まほろば に拡散波動砲の発射を具申します」
「拡散波動砲を?」
「はい、急接近する敵艦に対して、拡散波動砲を撃ち、撃ち漏らした敵を我が仕留めます!!幸い、接近する敵はイスカンダルの射線上に居ませんので、拡散波動砲を撃っても問題はありません!!」
「分かった。拡散波動砲、発射準備!!」
「拡散波動砲、発射準備!!」
「波動砲チャージャーに接続!!チャージを加速します!!」
古代の戦略プランにより、まず敵艦隊を十分に引き付け、そこを まほろば が拡散波動砲を放ち、続いて撃ち漏らした敵は、ヤマトとディッツ艦隊の一斉射、次いで、ガミラスのデストロイヤー艦が得意とする中・近距離の砲雷撃戦に持ち込む作戦だ。
「距離、12000!‥‥10000!‥‥」
「拡散波動砲、発射準備完了!!」
敵の巡洋艦が撃ち始めるが、まだ至近弾はない。
「9500!」
距離は一万をきり、やがて至近弾が出始める。
戦艦はともかく、装甲が薄い駆逐艦にはボチボチきつくなる距離だ。
「距離、9000!」
「艦首、拡散波動砲、発射!!」
まほろば から拡散波動砲が放たれ、拡散波動砲は接近する敵艦隊を包み込むように覆い、敵艦を次々と血祭りにあげていった。
暗黒星団帝国 第一艦隊 旗艦 プレアデス 艦橋
「な、何だ!?今の攻撃は!?」
味方の前衛部隊を一瞬の内に壊滅させた敵の兵器に驚愕するデーダー。
「て、敵はタキオン波動砲を搭載している様です!!」
「ぬぅぅぅぅ~プレアデスを敵とイスカンダルを結ぶ線上に移動させろ!!イスカンダルを背にしておれば、そうそう敵も撃ってはこれまい!!」
プレアデスは、味方を見捨てるような形で、一隻だけ安全圏へと退避した。
「主砲撃ぇっ!!」
続いて、ヤマト、ディッツ艦隊の艦船からら放たれた光の束は、拡散波動砲から逃れた敵艦隊へと突き刺さる。
着弾地点で幾つもの爆発の閃光がきらめいた。
拡散波動砲、ヤマト、ディッツ艦隊からの一斉射撃で動揺したか、戦術を転換したかはわからないが、敵艦隊両翼に動きが見られる。
「包囲に転換したか‥‥だが遅い!全艦、敵艦隊に楔を打ち込め!!」
不敵に笑うディッツの号令一下、デストロイヤー艦が突撃を始めた。
「侵略者共と地球の若造共にガミラスの電撃戦の真髄を見せてやれ!」
ディッツ艦隊は敵艦隊左翼の包囲攻撃隊形が完成しないうちに襲いかかった。
たちまち敵艦が続けざまに火を噴き、爆発する。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「見事な手綱捌きですねぇ」
永倉が感嘆の声を漏らす。
「あ、ああ‥‥冥王星基地の艦隊よりもさらに手強いな。ディッツ提督が冥王星基地司令官でなくて良かったと思うよ」
「ど、同感です」
良馬と永倉はやや顔を引き攣らせながらガミラスの電撃戦を見ていた。
「ガミラスの連中も意地を見せておる!!此方も頑張らなくてはな、艦長」
井上が良馬に声をかけ、
「え、ええ。そうですね。敵艦隊右翼に攻撃を集中しろ!」
「はいっ!」
ガミラス艦隊に負けじと、ヤマト、まほろば は砲雷撃戦を行い、雪風・改は雷撃戦を展開する。
ビームの奔流は複数の敵艦を串刺しにして爆散させる。
魚雷は薄い装甲を食い破って炸裂し、艦を内側から食い破った。
敵の中堅を務める巡洋艦部隊も前衛の護衛艦、駆逐艦部隊と同様の運命を辿っていた。
沈没を免れても、主機関が損傷して隊列から脱落したり、艦橋への直撃弾で首脳陣が壊滅し、有効な指揮がないまま僚艦と衝突して共に轟沈する艦も続出する。
しかし、一方的な殺戮劇はそう長く続くものではない。
敵艦隊の後方から太い光芒が走り、ガミラスのデストロイヤー艦が次々と炎上・爆発する。
これは敵戦艦部隊からの主砲によるものだった。
さすがに業を煮やしたらしい。
「敵艦隊後方から敵の戦艦部隊が接近してきます!!」
「ディッツ艦隊は後退を始めました」
敵戦艦の攻撃を受けるが、潰走にはならず、反撃して追い縋る小型艦を沈めながら撤退してみせる辺りは、なかなかの手腕だ。
流石、名将は引き際を心得ている。
(見事な撤退戦だ。戦術実技の生きた教材そのものだな)
良馬はディッツの艦隊運用の見事さに惚れ惚れした。
「敵戦艦、有効射程距離まであと1分30秒です!」
「砲撃用意!!」
ヤマト、まほろば が前に出て、ガミラス艦隊も超弩級戦艦とガイデロール級航宙戦艦を前に出して応戦する。
「バラバラに撃ってもダメだ。全ての火線を集中して相手に叩き込むんだ。照準急げ!ヤマトの砲術長にもそう伝えろ!!」
「はいっ!」
精密射撃を得意とし、砲術に関するエキスパートである南部の事だし、既に照準を絞り込んでいるかも知れない。
敵戦艦がこちらに目標を変えたようだ。何本かの火線がヤマト と まほろば の間を抜ける。
「有効射程距離です!」
「狙点固定!」
「よし、主砲斉射三連。撃てっ!!」
良馬の号令とともに、ヤマト、まほろば 両艦の主砲が轟然と火を噴く。
医務室では、モニターに表示されている戦闘状況にフェイトとティアナは見入っていた。
「‥‥」
「凄い‥‥」
ガミラスの電撃戦を見て、二人とも言葉を失っていた。
敵艦船の数が多く、大型の戦艦まで登場してきたにも関わらず、ヤマト、まほろば そして同航しているガミラス艦隊は浮足立つことなく迎撃して蹴散らしにかかっている。
「戦艦の装甲は巡洋艦や駆逐艦よりも厚いから火線を集中しての精密射撃‥‥」
「いかに早く確実に相手の弱点をつかみ、攻撃を集中させて無力化する‥‥これも数で劣って来た防衛軍の戦術の一つね」
「なるほど」
(相手のウィークポイントを素早く見抜いて、正確に多くの弾丸を撃ち込む、か‥‥)
射撃型魔導師のティアナは思うところが多々あるようだった。
「敵旗艦、撃ってきましたっ!」
「くそっ、アウトレンジされたか‥‥」
主砲の有効射程では、図体の分、あちらの方が有利のようだ。
橙色をしたビームの束はヤマト、まほろば の脇を通り過ぎた。
そして、三射目でヤマト、まほろば を捉えた。
「ヤマト、右舷に被弾!!本艦も左舷中央部に被弾しました!!」
ズシン!
ドーン!
いきなり凄まじい震動が艦を襲い、フェイトたちはイスに座ったまま前後左右に揉みくちゃにされた。
(直撃を受けた!?)
モニターを見る限り、敵艦とはかなり距離が有った筈なのに、衝撃がさほど変わらないのは敵艦の攻撃エネルギーが強いからだろう。
フェイトとティアナは思わず顔を見合わせる。
「左舷中央部に被弾!!メディカルは現場に急行せよ!!」
原田たち、衛生士は救急箱や担架を持って現場に行き、リニスは手術着に着替えスタンバイする。
しかも焦っている様子は全くない。
(この位の被弾は慣れっ子だということ!?)
フェイトたちは唖然としたが、同時に僅かながら緊張を緩めた。
「主砲一番二番、撃っ!!」
「十一時方向から接近!!」
「っ!?両舷、ミサイルランチャー撃て!!」
敵の旗艦(プレアデス)はどうやら、ヤマトを狙い、他の戦艦部隊が総出で まほろばとディッツ艦隊を押さえ込むつもりだろう。
「一歩たりとも退くなっ!臆病風に吹かれた者はわしが撃つ!」
被弾に揺れる旗艦の艦橋に仁王立ちになったディッツが、味方を鼓舞するように号令する。
既に少なからぬ被害を受けていたが、ディッツ艦隊の小型、中型艦艇は敵艦隊の猛攻をはね返し、既に敵の中型、小型艦の大半を葬り去り、あるいは戦闘不能に追い込んでいた。
まほろば の方も、既に三隻の戦艦、十隻以上の敵中小型艦を撃沈または戦列から落伍させていた。
とは言え、むろん無傷では済まず、小口径砲の被弾でここかしこから煙を噴いているが、曲がりなりにも地球防衛軍が作った新鋭の大型戦艦。主砲等の重要部分は傷一つなく、戦闘力は落ちていない。
「敵旗艦の様子は?」
「イスカンダルを背にヤマトと撃ち合いをしています。しかし、強力な偏向バリアを張っているためか、ヤマトが不利です!!」
良馬の問いに新見が答える。
スクリーンで見ると、ヤマトは艦体のあちこちから盛大に煙を噴いている。
波動砲や主砲は無傷のようだが、このままではジリ貧だ。
宇宙戦艦ヤマト 第一艦橋
ヤマトの四十六センチ、ショックカノンの直撃を受けたプレアデス。
しかし、プレアデスは全くの無傷だった。
「そんなバカなっ!!主砲がまるで効いていない!!」
南部が信じられない物を見た様に言う。
実際、今まで対峙してきた艦船の中でヤマトの主砲に対し、無傷だった艦船は居なかったし、旗艦らしい大型戦艦以外の艦船にはちゃんと効果があるので、驚くのも当然である。
「やはり、敵は偏向バリアを張っているのか‥‥」
真田が、敵戦艦が無傷な理由を述べる。
「しかし、艦の周りにバリアを張っているなら、どうして相手は攻撃を出来るんですか?通常、バリアを張っていたら、攻撃は出来ないんじゃあ‥‥?」
太田が真田に質問する。
「恐らく、相手のビーム砲は自分たちの張っているバリアをすり抜けることが出来るのだろう。相手のビーム砲とヤマトのショックカノンは、ビームの性質は違うんだ‥‥だから、相手はバリアを張りながら攻撃が出来、反対に此方がいくら主砲を撃ってもバリアで防がれてしまうんだ」
真田はプレアデスの武装がかつて双子座宙域でみたガトランティスの無人要塞と似た構造をしているのだと推察する。
「いくらバリアが強力でも波動砲ならば」
相原が主砲ではなく、波動砲を撃てば相手を撃沈できるのでは?と、意見具申するが、
「駄目だ、今波動砲を撃てば、イスカンダルを巻き添えにしてしまう。敵はイスカンダルを背にして、此方に波動砲を撃てないようにしている」
古代が波動砲を撃てない理由を説明する。
「何て卑怯な奴だ」
主砲は相手にダメージを与えられず、切り札の波動砲も封じられたヤマト。
八方塞がりの中、
「あの‥艦長代理」
北野が古代に声をかける。
「何だ?」
「思ったんですが、相手のバリアがエネルギー偏向型なら、もしかすると、実弾に対しては無力なのかもしれません。魚雷やミサイルによる実弾攻撃なら、効果があるんじゃないかと‥‥」
「なるほど‥‥どう思います、真田さん?」
「うむ、可能性はあるな」
「よし、艦砲攻撃を控えろ!!実弾によるミサイルと魚雷による攻撃を優先させろ!!雷撃戦だ!!」
ヤマトはショックカノンによる砲撃戦を止め、艦首魚雷と煙突ミサイル、艦底ミサイルによる雷撃戦を敢行した。
ズシン!
ドーン!
ヤマトからの魚雷とミサイルを食らったプレアデスに衝撃が走る。
「な、何だ!?どうしたと言うのだ!?」
「敵はビーム兵器から実弾による雷撃攻撃に変更した様です!!」
「何っ!?何故、バリアが効いていない!?」
「本艦に搭載されている偏向バリアは、ビーム兵器には有効ですが、実弾による攻撃には、効果が薄いモノと思われます」
「おのれぇ~野蛮人共めぇ~」
デーダーは苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。
そこへ、
「レーダーに反応!!イスカンダル地表に居る敵が上昇してきました!!」
「何ィ!!」
イスカンダルの海に着水していたデスラー率いるガミラス艦隊本隊が大気圏を抜けてきたのだ。
「全艦、雷撃戦用意!!」
プレアデス対策は既にヤマトからデスラーに通信で送られていたため、デスラーは直ぐに砲撃でなく、ミサイルと魚雷攻撃をプレアデスに仕掛けた。
そして‥‥
「で、デーダー司令!!敵のミサイル攻撃により、偏向バリア装置が大破いたしました!!」
「な、なにっ!?早く何とかしろ!!直ぐに修理に取り掛かるのだ!!」
「それが、バリア装置にかなりの負荷がかかっていた様で、被害が凄まじく。もはや原型を留めぬ程、破損していまして‥‥」
「ば、馬鹿者っ!!」
自らの判断ミスから招いた事なのに、バリア装置が使い物にならなくなった責任を部下に丸投げするデーダーであった。
ゲルバデス 艦橋
「敵旗艦、エネルギー反応が大幅に低下しています!!」
「恐らくバリア装置に重度の破損が出たものと思われます」
「よし、止めは私が刺す。デスラー砲発射用意!!」
「デスラー砲発射用意!!射線上の友軍艦艇に退避勧告を送れ!!」
ゲルバデスから射線上の友軍艦艇へ退避勧告が送られた。
「デスラーから通信です!!敵旗艦に向け、デスラー砲を撃つため、射線上の友軍艦艇は直ちに退避せよとの事です!!」
「直ちに回避行動を!!」
友軍艦艇は、攻撃しながら後退して行き、友軍艦艇全てがデスラー砲の射線上から退避した。
そして‥‥
「デスラー砲‥‥発射!!」
ゲルバデスからプレアデスめがけてデスラー砲が発射された。
「て、敵の波動砲が来ます!!」
デーダーもまさか、イスカンダル方向から波動砲が迫って来るとは思ってもみなかった。
「か、回避しろっ!!」
「ダメです!!間に合いません!!直撃です!!」
「ぐあああああああっっ――――――!!」
デスラー砲がプレアデスをその眩い閃光と共に飲み込んだ。
「敵旗艦の撃沈を確認!!」
新見が報告し、良馬は頷く。
そして、
「通信長、敵残存艦に通告。『これ以上の戦闘は望まぬ。即刻現宙域から立ち去れ』とな」
敵の残存艦に向けて戦闘停止を勧告した。
しかし、残存敵艦には通じなかったようだ。
「敵残存艦、散開してこちらに突撃してきます!」
デスラー砲が集束型だったから、散開して反撃しようというのだろう。
しかし‥‥。
「やむを得ない。敵艦隊を掃討する!拡散波動砲、発射用意!」
「了解!エネルギー充填開始!」
「敵艦、拡散範囲内に捕捉!!拡散計測完了!」
「拡散波動砲発射準備整いました!!」
「撃て!!」
良馬命令一下、艦首から放たれた光の柱は、敵残存艦群の手前で無数の波動エネルギー弾に分離、突撃してくる敵艦に襲い掛かった。
殆どの艦は回避し切れず、波動エネルギー弾に襲われて大火球と化した。
辛うじて難を逃れた艦は尚も突撃をかけてきたが、手ぐすね引いていたディッツ艦隊とヤマトにより全て討ち取られてしまった。
「敵艦全て撃沈しました!」
「ふぅ~終わったか‥‥」
周囲に敵影の存在が完全になくなり、皆はホッとした様子だった。
後は、イスカンダルにいるスターシアと守の救出となったが、これはある意味敵艦との戦闘よりも手強いだろうと思う、古代、真田、良馬の三人であった。