アンドロメダ級に関して、2202では二番艦はアルデバランとなっていますが、世に出たのはネメシスの方が先なので、二番艦はネメシス、三番艦アルデバラン 四番艦アポロノーム、五番艦アキレス、六番艦アンタレス の順とさせていただきます。
木星圏 アステロイドベルト外縁部
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「艦長、全作業、完了しました」
新見の報告を受け、良馬は頷いた。
木星圏において輸送艦と合流し、物資を積み込こんだ まほろば は、これより土星圏、タイタン基地へ向かい、そこで討伐艦隊と合流する。
「本艦は、これより土星圏タイタン基地へ向かう。取り舵20、進路255、全速前進!」
「了解。取り舵20、針路255、全速前進」
良馬の命令を永倉が復唱し、舵を左に切る。
まほろば は艦首を土星圏に向け、増速した――。
土星圏・衛星タイタン、地球防衛軍土星圏司令部
現在、対彗星帝国戦における太陽系防衛の要衝であるこの基地に次々と地球軍の艦船が降下、あるいは上空に停泊している。
大部分は紡錘形をした巡洋艦以下の中・小型艦で、戦艦は まほろば の他に蝦夷、メリーランド、アイル・オブ・スカイ、薩摩、比叡そして臨時艦隊旗艦のアンドロメダ級二番艦ネメシスの七隻が停泊していた。
先程、まほろば が補給を行った木星圏、ガニメデには山城、扶桑、榛名、加賀、ネヴァダ、ドレッドノート、金剛の七隻の戦艦を中心とする第二次防衛ラインが展開していた。
今回の戦いにはヤマトにも是非来てもらいたかったが、無いモノ強請りをしても仕方がない。
防衛軍は現有戦力で今回の事態を乗り越えなければならなかった。
此処で舞台を土星圏からミッドチルダへと移す‥‥
時空管理局 本局 次元航行本部
管制室は俄かに慌ただしさを増していた。
「ええいっ、クライスラーとはまだ連絡が取れんのか!?」
提督の制服を着た高官が苛立った声を上げる。
「は、はい、こちらの呼び出しに全く答えません」
オペレーターが困惑した声を上げる。
(いくら何でも、いきなり攻撃を仕掛けてくるとは思えないが‥‥)
クライスラーからの定時通信で、第二の97管理外世界恒星系――太陽系――の外縁部に到達したと連絡があったのはミッドチルダ標準時間で一昨日の昼前‥‥。
連絡が途絶えて既に二昼夜近くになるが、あれから全くこちらからの呼び出しに応じないし、クライスラーからの定時連絡も入らない。
クライスラーは、先日、まほろば がヘリオポーズに設置した次元通信ポッドから発信された信号をキャッチして接近。
一旦回収して、ポッド内の通信記録を解析し、第二の97管理外世界の本星、つまり、この世界の地球の座標を特定しようとしたのだ。
そして、めでたくもその座標位置を掴み、
「目的地の座標特定に成功。これより本星付近に向かう」
と連絡してきたのが最後だった。
「まさか、拿捕あるいは撃破されたのか!?」
「そんなはずはない!クライスラーには、試作段階とは言え、最新の光学障壁魔法システムを搭載していたんだぞ!」
「わからんぞ。そもそも魔法なしであんな強力な艦船を保有しているんだ。こちらの魔法を見破る術を持っているかも知れないぞ」
「向こうにクライスラーの行方を確認させる事はできないのか!?」
「そんな事、出来る訳ないだろう!!無断で彼方の領海に侵入しているのだ。下手に文句なんか言ったら、逆につけ込まれるぞ!!」
「そのとおりだ。大体、向こうにはあのハラオウン執務官たちが保護されているんだ。彼女らの身にも危険が及ぶかも知れないんだぞ!!そうなってみろ、あの統括官が黙っていない‥我々の出世の道も閉ざされてしまう‥‥」
「くっ‥‥」
件の高官たちは顔から血の気が引いていくのを感じていた。
ここで舞台は再び土星圏へと戻る。
土星圏 衛星タイタン軌道周辺
宇宙戦艦 まほろば 艦長室
「艦長、お忙しいところ申し訳ありませんが‥‥」
「構わないよ、どうした?」
まほろば の艦長室で執務をしていた良馬の下にギンガからの艦内通信が入る。
「地球にいるヤマトの真田技師長から、艦長宛に通信が入っております」
「真田さんから?わかった。繋いでくれ」
一体何事かと思う良馬のノートパソコンのモニターに真田と大山の顔が映し出された。
「真田さん。それに大山さん‥何かあったんですか?」
「実は、例の通信ポッドなのだが‥‥」
「通信ポッド?それってあのヘリオポーズに設置されているあの通信ポッドですか?」
「そうだ。時空管理局との定期連絡用に設置されているあの通信ポッドだ」
「その通信ポッドがどうかしたんですか?」
「誰かが故意に操作した形跡がログを見てわかった」
「操作?‥‥っ!?まさか、その操作した誰かって‥‥」
通信ポッドを操作した「誰か」に察しがついた良馬。
まぁ、防衛軍があんな場所に行って一々通信ポッドをいじる必要性は全くないし、そんな暇も無い。
そうなれば、あの通信ポッドを弄る「誰か」は考えるまでもなく‥‥
「そう、次元世界の法と正義の守護者様御一行。時空管理局だろうな」
大山が管理局に対して皮肉を込めて言う。
「しかし、何故管理局が通信ポッドを?」
管理局がフェイトたちを迎えに来たとは考えにくい。
それならばクロノ・ハラオウンが事前に連絡してくるだろうが、前回の定時連絡ではその様な事は全く言っていなかった。
「連中、正義の味方を気取る事に飽きて、空き巣にでも鞍替えして、地球に来たのかねぇ~?それともお忍びの観光か?」
大山が再び管理局に皮肉を込めて呟く。
「まぁ、その事は何とも言えないが、問題は、彼らがポッドに表示された『座標』を馬鹿正直にそれを真に受けたかどうかなんだが‥‥」
真田が顰めっ面で言う。
「座標?どういう事です?確かあの通信ポッドに表示される座標は太陽の反対側の座標を出すように調整していたんじゃあ‥‥?」
「そうなんだが、どうも、あのポッドの回路図をチェックしていたら、とんでもない事が判明した」
「とんでもない事?」
良馬の問いに真田は少し考え込むようにしていたが、顔を上げてある事実を告げた。
「どうもあのポッドは急ごしらえで製造された物みたいでな、安定性が今一つの様で、ログを解析してみて、その時表示された座標を調べてみたんだが‥‥」
「‥‥」
ひと呼吸ついて、真田は告げた。
「最新の座標位置は太陽系のど真ん中を指していた‥‥そして、その前は木星の本星だった‥‥」
「太陽系のど真ん中?木星の本星?それって‥‥」
「‥‥」
太陽系のど真ん中、つまりそれは太陽の‥それも中心核付近ということ。
そして、木星の本星は紛れもなく太陽系最大の惑星、木星を指す。
「えっ?マジ‥ですか?」
「‥‥」
「ああ‥‥マジだ‥‥」
真田に代わり大山が肯定する。
飛んで火に入る夏の蟲とは正にこれ也‥‥
はたまた、蟻地獄に落ちた蟻の如し‥‥
良馬と真田の顔には、いつの間にかじっとりと汗が出ていた。
それに比べ、大山は普段通りの表情だ。
「だとしても、どうにもなるまいよ。あれには、勝手に弄るなと警告文を大きな文字で、しかも分かりやすい場所に貼ってあったんだ。こっちに連絡すればどこかで待ち合わせるなりできたんだからな。それをしないで勝手な事をした管理局側の責任‥自業自得だろう。船は一瞬できれいさっぱり燃え尽きちまったか、木星の強力な重力圏に捕まり、脱出不能となり、超重力で押し潰されたか液体メタンの海に落ちて一瞬で凍りついたかのどちらかだろう。乗組員やその家族には気の毒な事だがな」
大山は防衛軍側に何の落ち度はないと言う。
「そう割り切るしかないな‥‥」
真田も大山の言葉を聞き、防衛軍側に今回の件については、責任は無く、気にするなと言う。
時空管理局はこの事でこちらを責める事はできない。
仮に管理局側が文句をつけてくれば、時空管理局側が地球連邦の領海を侵犯したと言い返せばいい。
他国の領海に無断侵入した艦船は拿捕抑留、または撃沈されても文句は言えないのだ。
それに今から捜索をかけても手遅れなのは目に見えている。
「こんな事が表沙汰になったら、ハラオウン執務官たちの立場が一層悪くなることくらい想像できない程、管理局は無知なのか?」
良馬は真田と大山たちは画面を挟んで溜息をはいた――。
地下都市・横須賀区
白色彗星帝国軍残存艦隊が太陽系に侵入した報せは直ちに全市民に伝えられ、地下都市への避難指示が出された。
それは異邦人たるフェイト、ティアナも例外なく避難させられることになった。
当然、守とスターシアの娘、サーシアとユリーシャも同じだ。
VIPたるサーシアとユリーシャは地球防衛軍が寄こしたSPの他に守の弟の進と婚約者の雪が付き添い、中島一家、そして高町紅葉、フェイト、ティアナにも一緒の部屋が宛がわれた。
泣き出す赤ん坊も少なくない中、サーシアとユリーシャはすやすやと寝息を立てていた。
(将来大物になるよ)と、古代兄弟は、そう思って外の騒動など何処吹く風の様に眠る双子の赤ん坊を見守っていた。
「皆、整然と避難しているんだね」
続々と地下都市に避難してくる人波を見ながらフェイトがぽつりと言う。
「ガミラスや彗星帝国との戦争以来、避難慣れしているからでしょうか?」
苦笑混じりに紅葉が答える。
白色彗星帝国の来襲後、放置され荒れ始めていた地下都市は整備が再開された。
備えあれば憂いなしというわけだが、地球防衛軍主力艦隊が壊滅した影響も多分にある。
(それにしても、いつの間に私たちの分まで用意してあったのかしら?)
全ての地球連邦市民には地下都市への避難に備えて防災非常袋が支給されていたが、地球に来てまだそんなに日数が経っていないフェイトたちの分も用意されており、その手回しの早さに、ティアナは舌を巻いていた。
一方、フェイトは初めて来た地下都市を目の当たりして、初めて地下都市を見た時のギンガ同様、地下都市の存在とその大きさに驚き、窓の外の地下都市を見回していた。
(軍人だけじゃない。戦争をくぐり抜けた市民の人たちも逞しくなったんだ‥‥)
避難してくる市民の中には老人を背負う若者もいるが、それも一人や二人ではなく、明らかに赤の他人の老人を背負ったり、手を引いている者、荷物を持ってあげる者も多かった。
(戦争で、人々の考え方も色々と変わったのかな?)
フェイトがふと思った事はかなり的中していた。
ガミラスの攻撃は老若男女・貧富の区別なく襲いかかった。
その結果、尊敬される基準などが大きく変わり、つてもて囃されていたセレブの「メッキが剥がれた」結果、一転して嘲笑と侮蔑の対象に変わったりしており、自己中心主義の言動をとる者や企業等は軽蔑され倒産へと追い込まれるようになった。
しかし、そんな中でもそれを改めない輩も一部は存在したがそれはほんのごく一部であった。
土星圏 衛星タイタン軌道 臨時艦隊旗艦 ネメシス 艦橋
アンドロメダ級二番艦、ネメシス‥就航は来年の頭になるかと思っていたのだが、ギリギリで今年中に就役する事が出来た。
外見はガトランティス戦役で戦没したアンドロメダと瓜二つであるが、波動砲はヤマトと同じ収束タイプの波動砲となっている。
「‥‥」
山南はネメシスの艦橋にあるメインスクリーンに投影された味方の艦艇を示す白点と、白色彗星残党艦隊を示す赤点を見比べていた。
(向こうの針路があからさま過ぎる‥‥)
白色彗星帝国艦隊の戦術は大軍にものを言わせた力攻めが多く、その結果、ヤマトや防衛軍艦艇の波動砲の餌食になったり、土方の偽敗走にまんまと嵌められて全滅したりと、地球人の目から見て大雑把過ぎた。
数だけを恃むことなく、巧みな戦術でヤマトを追いこんだデスラーやドメルの方が戦術家としては、二枚も三枚も上手だったと言えよう。
(いい加減、白色彗星帝国の連中も学んでいるはずだ)
向こうには空母がいるとはいえ、その数はたった一隻だ。
しかも例の大型空母ではなく、ナスカ級の中型の空母。
数が少なくなったとはいえ、対空火器を強化した地球艦隊を全滅させるには犠牲が大きすぎる。
それに、彗星帝国側も援軍が来たと言っても、以前地球に攻めて来た時よりもその数は極めて少ない。
よって今まで通り、数に物を言わせる戦術はとれない。
更に土星圏へ接近する艦艇は空母の他は駆逐艦、巡洋艦を中心にした中・小艦艇ばかりだ。
(連中のこの動き‥‥陽動、ではないのか?)
山南の考えと同じ考えが浮かんだ者が居た。
(連中の目的は地球艦隊を誘い出すことで、本命は地球本星への報復攻撃ではないのか?確か彗星帝国には、大型ミサイルを搭載したミサイル艦が有った筈‥鹵獲した艦にはその大型ミサイルは搭載されていなかったが、搭載されていたと思われる発射口はかなりの大きさだった‥‥あの大きさのミサイルならば、一発で一都市は壊滅させられる。ましてや艦隊単位で発射されたら‥‥)
「通信長」
「はい」
「急ぎ、ネメシスの山南司令に繋いでくれ」
良馬はギンガに山南に通信を繋ぐように指示を出す。
そこで、良馬と山南との間で協議が行われた。
「本当の馬鹿でなければ、いい加減学ぶ」
その事から、連中の本命が地球への大型ミサイルでの攻撃ではないかと言う結果になり、
「月村君」
「はい」
「君は直ぐに地球へと引き返したまえ。我々はここで引っかかったふりを通す」
「了解しました」
まほろば は直ちに地球へ向かう針路を取った。
「急げ!!土星圏を抜け次第、ワープを行う!!」
良馬は、急ぎ艦を反転させ、地球へと向かった。
まほろば の他に山南は戦力の一部を割いて まほろば と共に地球へと同行させた。
しかし、貴重な戦艦は同行させる事は出来ず、巡洋艦長良と彗星帝国鹵獲駆逐艦二隻、駆逐艦五隻を まほろば の援軍として地球へと向かわせた。
艦船ステータス
改彗星帝国高速駆逐艦(ホワイト級)
地球防衛軍が白色彗星帝国の駆逐艦を鹵獲し、改造した艦艇。
特徴であった回転速射砲塔が撤去され、代わりに地球防衛軍標準装備の砲身を有した中口径主砲、対空機銃、上方発射ミサイルを装備している。
まほろば を中心とする別働隊が土星圏を離れた後、カイパーベルトを哨戒中のパトロール艦、渦潮がシリウス方面から太陽系へと迫る彗星帝国の別働隊を発見し、追尾していた。
渦潮は一定の距離を保ちながら、位置を英文モールスで随時発信していた。
送信した信号が何故モールスにしたのかは、白色彗星帝国軍による傍受を警戒したためである。
トン・ツーの二パターンだけというローテク通信なら、傍受されても、白色彗星帝国にはその意味まではわかるまいということである。
「敵さんは気がついていないんですかね?」
「モールスなんてローテクを使うとは思っていないんだろうなぁ。いや、そもそも連中はモールスの存在自体を知らないのかもしれない」
渦潮の艦長と副長がそんな会話をしているとレーダー、センサーを監視していた観測士が緊迫した声を上げた。
「敵艦隊、ワープに入ります!ワープ明けの位置を解析します!」
彗星帝国別働隊は太陽系内に入ると突如、ワープをし、第十一惑星、土星圏を通過した。
「急げよ」
「了解!!」
「通信長」
「ハッ!!」
「次の通信は平文で打て!!敵艦隊のワープ明け位置を打電し次第、本艦もワープすると!!」
「了解」
ほどなく、ミサイル艦隊のワープ明け位置の解析が終わった。
その後、渦潮も急ぎ、追尾の為、ワープに入った。
渦潮から通信を受けた防衛軍司令部は、防衛軍の主力を土星圏に張り付かせたまま、ミサイル艦隊を迎撃すべく、他の艦艇を月軌道外縁に集結させていた。
この空域に集結を命じられたのは、哨戒任務から捻出したパトロール艦や輸送船団護衛を一時的に切り上げた護衛艦群もあった。
火星圏ではパトロール艦、畝傍が防衛軍司令部からの緊急伝で、周辺警戒を行うとと共に まほろば を中心とする土星圏からの討伐艦隊の到着を待っていた。
「敵は本当に来ますかね?」
「彼らが馬鹿でなければね」
畝傍の艦橋で副長兼航海長のターニャと艦長の美咲七波が言葉を交わす。
突如、狭い艦橋にアラーム音が鳴り響く。
すぐに観測士がコンソールを操作し、艦長席の美咲に顔を向ける。
「七号ブイに艦船反応アリ!!」
「味方識別信号を確認!!」
「了解!!‥‥反応レッド!!敵艦です!!」
「数と戦力は?」
「艦種、彗星帝国軍、ミサイル艦、数、十二隻、駆逐艦五隻速力28宇宙ノットで地球に向かっています!」
「月軌道に集結した艦隊も火星圏に向け出撃しました」
戦場は月から火星の間の宙域になる。
美咲とターニャが予想される戦場の検討をしていると、
「後方よりワープアウト反応を確認」
「敵か!?」
「いえ、識別信号グリーン‥‥土星圏から引き返してきた友軍艦艇です」
ワープアウトをしてきたのは、良馬率いる討伐艦隊の別働隊だった。
畝傍は まほろば を中心とする討伐艦隊の別働隊と合流、さらに追尾して来た渦潮もその戦列に加わった。
合流した討伐艦隊の別働隊は敵を追尾する形で敵艦隊へと針路を向けた。
「敵主力隊、海王星軌道を通過しました。土星圏の主力艦隊との接触まで、あと五時間!」
「ミサイル艦隊は依然針路を変えず地球に向かっています」
「各部のチェックを急げよ。いざと言う時に使えませんじゃたまらんぞ」
井上が機関室に指示を出し、その他の部署も最終チェックに入る。
彗星帝国残党軍と地球防衛軍の戦闘の時が刻一刻と迫っていた。
「ヒペリオン宙域で主力艦隊と敵本隊が戦闘に入りました!」
土星圏で白色彗星残党軍と地球防衛主力艦隊との戦闘が始まったようだ。
まほろば を中心とする別働隊も間もなく戦闘状態に突入する。
全ての艦艇は砲門に仰角をつけて、まほろば の格納庫では、対艦ミサイルを搭載したコスモタイガーが出撃態勢を整えて発進命令を待ち受けていた。
関心を土星圏に向けておいて、地球にあの艦首大型ミサイルを撃ち込もうという腹だろう。
やがて、敵艦隊、防衛艦隊が予定戦闘宙域に突入し、
「コスモタイガー隊全機発進!」
「了解。コスモタイガー全機発進せよ!発着口開け!」
戦闘開始のゴングはコスモタイガー隊の発艦から始まった。
宇宙戦艦 まほろば コスモタイガー 格納庫
「コスモタイガー、全機発進!繰り返す、コスモタイガー全機発進せよ!」
着艦口のエアロックが開かれる。
「よし、行くぞ!!」
そう言うや坂井はキャノピーを閉じ、チーフメカニックにサムアップしてみせる。
チーフは頷くや、リニアカタパルトのスイッチを入れた。
その瞬間、坂井機は勢い良く発進口に消えた。
反対側のリニアカタパルトからもコスモタイガーが撃ち出されていく。
発艦したコスモタイガーは小隊ごとに隊列を組むや、敵艦隊へと向かっていく。
「面舵30、全速前進!」
「了解。面舵30、全速前進!」
艦隊もコスモタイガーに続いて敵艦隊に艦首を向ける。
「コスモタイガー隊は確認後、直ちに攻撃せよ!」
「有効射程まで後四分!!」
「敵艦隊確認。全機攻撃開始! あの大型ミサイルを絶対に撃たせるなよ!」
コスモタイガー隊は翼を翻し、艦隊の前方中央に、アンテナの数が多いミサイル艦を発見。旗艦と判断して襲いかかった。
「コスモタイガー隊、攻撃開始しました!旗艦らしいミサイル艦に命中弾を確認!」
「よし。こちらも砲雷撃戦用意だ!」
コスモタイガー隊からの通信が入ったようで、先制攻撃は成功したらしい。
艦隊もあと一分強で射程距離の宙域にまで接近している。
その時、前方に大きな閃光が広がる。
「加藤機、敵艦同士が衝突・爆発したのを確認しました!」
「こちらも全砲門と発射管を開け!!ミサイル艦を主砲で叩く!」
ギンガの報告を受けた良馬は即座に砲雷撃戦の指示を出す。
コスモタイガーの攻撃は完全な奇襲になったらしく、突然攻撃された敵艦隊は、早くも隊列を乱し始めた。
この間にも他の艦艇が続々と集結していた。
その中には、かつて、ガミラス戦役で良馬が艦長を務め、その後練習艦となった三笠の姿もあった。
その他にもガミラス戦役で使用されていたM-21881式宇宙突撃駆逐艦もいた。
三笠を含めたM-2170式宇宙巡洋艦やM-21881式宇宙突撃駆逐艦は、ガミラス戦で殆ど失われたが、ヤマト就役時まで生き延びた数隻は波動機関への換装や艦体の強化等の改装を施され、地球防衛艦隊の再建期を支えた後に士官学校や訓練校の練習艦になっていたが、艦隊が壊滅した現在の防衛軍戦力不足を補うため、再就役したのだ。
「背に腹は代えられん。使える者は親でも使う」
今の地球防衛軍には、戦力を出し惜しみできるような余裕などないのだ。
ロートル艦隊は戦闘空域より低高度に位置し、敵艦隊の大型ミサイルを迎撃する構えだ。
「今のところ、こっちのペースのようだな」
「はい」
しかし、油断は出来ない。
物事は順調な時ほど、落とし穴に気づくのが遅れるものだ。
「通信長、空間ソナーを打ち出せ。伏兵がいるかも知れない。例の潜宙艦がな‥‥」
白色彗星軍には潜空艦がある。
戦艦はともかく、ロートル艦や巡洋艦以下にとっては命取りになりかねない。
「わかりました。空間ソナー、用意します!」
ギンガは通信インカムを外し、索敵用のヘッドフォンを着ける。
ほどなく、まほろば、畝傍、渦潮から全方位に空間ソナーが打ち出された。
「‥‥っ!?反応がありました!!」
「方位と距離は?」
「方位150‥上下角+38度、数7!!」
「っ!?空間照明弾射出!!」
ギンガが補足した方向に照明弾が放たれる。
其処には、漆黒の潜宙艦が潜んでいた。
幸いその中に潜宙戦艦は居なかった。
「砲雷長!!砲撃用意だ!それと三笠に警戒を要請しろ!」
「わかりました!」
こちらを無視してミサイル艦の前方を塞ぐロートル艦隊を狙おうとしたのは妥当な判断だが、そうは問屋が卸さない。
「砲撃準備完了!」
「撃てっ!!」
まほろば、畝傍、渦潮が主砲を放ち、潜宙艦を見舞う。
装甲がなきに等しい潜宙艦は掠っただけでも穴を穿たれ、火の手が上がった。
たちまち五隻の潜宙艦が炎上・爆散したが、残る二隻は炎に包まれながらも、ロートル艦隊へと向かっていく。
しかし、その潜宙艦も まほろば のコスモタイガー隊、山本玲と加藤四郎が対艦ミサイルをお見舞いして沈める。
「敵潜宙艦、全て撃沈しました!」
確認されている潜宙艦は撃沈されたが、ギンガは戦闘が終了するまで周囲の警戒を怠らなかった。
「敵艦より大型ミサイル発射の発射を確認しました。数八!!」
新見が声を上げる。
集結した地球艦隊の十字砲火を浴び、急速に数を減らしていた敵ミサイル艦隊のうち数隻が、苦し紛れに艦首大型ミサイル(破滅ミサイル)を放ったのだ。
「慌てるな。大型ミサイルはコスモタイガー隊と駆逐艦に任せて、此方は敵艦隊を潰すことに専念するんだ」
良馬は敵艦隊の殲滅を指示した。
大部分のミサイル艦は地球艦隊の十字砲火で被弾し、行動力を減殺されていたが、針鼠の如く装備した中小型ミサイルを放って抵抗を続ける。
これらのミサイルも巡洋艦以下の艦船では脅威だ。
故に まほろば はその火力を存分に発揮し、突出して敵艦隊の注意を引き付け、その間に巡洋艦、パトロール艦が砲撃の連射とミサイルによる雷撃を加える。
無論、まほろば も敵に向けて砲雷撃を行う。
破滅ミサイルにまず立ち向かったのは、まほろば から発艦したコスモタイガー隊だ。
「エンジンを狙え!」
坂井隊がミサイルの推進部にパルスレーザーの掃射を加えた。
何本かのミサイルが後部を炎に包まれ、軌道を外れていく。
撃ち漏らしたミサイルにはM-2170式宇宙巡洋艦、M-21881式宇宙突撃駆逐艦が砲雷撃を行い、ミサイルを爆発させた。
宇宙戦艦 まほろば 艦橋
「敵大型ミサイル、全弾破壊しました!」
「残りの敵艦は?」
「ミサイル艦四隻ですが、満身創痍で戦闘継続は困難と思われます」
「通信長」
「はい」
「敵残存艦に降伏勧告を打電しろ」
「わかりました」
ギンガは敵艦隊へ降伏勧告を送る。
しかし‥‥。
降伏勧告への回答は、残存艦のミサイル全弾発射だった。
「くっ‥撃て‥‥殲滅しろ‥‥」
良馬は苦渋の決断をするかのように呟き、ミサイルが到達する前に、全艦から十字砲火が放たれ、残存ミサイル艦は大火球となって爆発四散した。
「敵艦隊‥全滅です‥‥」
「被害状況確認を急げ」
新見が艦の被害確認を指示する。
まほろば が突出して敵の注意を引いたため、巡洋艦以下の僚艦の被害は大したことはなく、ミサイルも戦艦の装甲を破るほどの破壊力はなかったが、アンテナやパルスレーザー砲などの被害は無視できない。
「信号弾を撃て。引き続き周辺監視を続ける」
まほろば から集結指示の信号弾が打ち上げられ、周囲に展開していた艦船が集まってきた。
近づいてくる艦の中には、煙の尾を引いている艦が数隻見受けられる。
先制攻撃と十字砲火が効いたのか、沈没艦はなかったが、何隻かは被害を受けているようだ。
そして、それは まほろば も同様だ。
(やれやれ、またドックにとんぼ返りか)
主要部はほぼ無傷だが、アンテナや外部の第一装甲板等は要交換だ。
戦力再建途上での一時戦線離脱はやはり痛い。
工廠や造船所の技師や作業員には悪いが、休めるのは大晦日と元日だけになってしまうようだ。
「土星の山南司令より入電‥あちらの方も戦闘が終わったそうです」
「そうか‥警戒態勢解除。コスモタイガー隊へ帰還命令を」
「了解」
ギンガがコスモタイガー隊を呼び寄せ、コスモタイガーは格納庫にて整備班が整備を始め、搭乗者にはディアーチェたち、厨房スタッフが心づくしの差し入れを振舞った。
パトロール艦 畝傍 艦橋
「まほろば はだいぶ傷ついているわね」
畝傍の艦橋にあるメインスクリーンに映る まほろば を見ながら、艦長の美咲は一人呟く。
白色彗星帝国軍にすれば、降伏せず最後まで牙を剥き、首都たる都市帝国を陥とした地球防衛軍の戦艦は憎んでも余りある相手だろう。
それだけに集中攻撃を浴び、外回りはだいぶ傷ついていた。
(まぁ、まほろば が敵の注意を惹きつけてくれたおかげで、私たちはこうして無事なのだけれど‥‥)
その時、
「どうぞ、艦長」
副長兼航海長のターニャが、コーヒーの入ったカップを差し出す。
「ありがとう、副長」
美咲は礼を言ってカップを手にし、口元に運ぶと、また思考の海に飛び込んでいった。
ターニャは一礼して自席に戻る。
長時間にわたる緊張から解き放たれた艦橋には、僅かに寛いだ雰囲気が漂っていた。
「艦長、防衛軍司令部から入電です。横須賀基地へ帰還し、そこで整備・補給を受けよとの事です」
警戒態勢が完全に解除され、艦橋には明るい空気が漂った。
その要因の一つに、予想外だったが、地上で新年を迎えられることが大きかった。
火星圏に集結した別働隊は地球への帰還針路をとり、地球へと向かった。
地下都市・新海鳴地区
「市民の皆様にお知らせ致します」
地下の大空間に案内放送が流れ始め、避難した人々は耳を澄ませた。
放送は続く。
「太陽系内に侵入した白色彗星帝国の残存艦隊は、先程、地球防衛艦隊が撃滅しました。繰り返しお伝えいたします‥‥」
放送を聞き、人々はどっと湧き返る。
当面、地球への脅威はなくなったのだ。
土星圏に侵入してきた白色彗星軍の艦隊も土星圏に集結した防衛軍の主力艦隊の波動砲攻撃で八割方殲滅されたとのことだ。
人々の表情も明るさを取り戻した。
それはフェイトとティアナも例外ではなかった。
此処で舞台はミッドチルダへと移る。
時空管理局本局
会議室では、R級次元航行艦、クライスラーの行方不明事件の検証中であった。
クライスラーの派遣は管理世界拡大推進派の一部の局員が極秘に進めた事なのだが、クライスラーに乗せた乗員に問題があった。
今回のクライスラー派遣が露見したのはその乗員たちが大きく関係していた。
クライスラーに乗っていたのは大きく分けて二つ‥‥。
管理外世界で現地住民に対して、略奪暴行を行う屑局員と、管理局に入局したものの、魔導センスが無い非魔導師と魔力があるが、デバイスを起動させるギリギリの魔力しか持たぬ低魔導師の局員。
屑局員の方は、給料の支給日にキャバクラやギャンブルにつぎ込み、翌月の給料日かボーナスの支給日まで金に困る生活をしていた。
そんな金に困る生活でも、キャバクラ等に行っては、店への支払いをツケにしたり、親は元より、身内を始め彼方此方から借金をする。
酷い者は闇金にまで手を広げていた。
当然、給料やボーナスが支給されても支払う事などせずに、ギャンブルと酒に金をつぎ込み、更に借金を膨らませていく‥‥
そんな奴の下に危険であるが、成功すれば、昇進と多額の賞与を支給するなどと言われれば、その事を黙っている筈がない。
詳しい任務内容まで知らされていなかったが、金を借りた人やツケを貯めている店に対し、「もうすぐ、臨時収入が手に入る。そうすれば、借金も店のツケも全部払ってやるよ」等と豪語していただろう。
一方、非魔導師と低魔導師の局員に至っては、魔力が無い、魔力ランクが低いと言う事で、昇進に程遠く、給料も安い。
そこに危険ではあるが、任務に成功すれば、昇進と多額の賞与支給の話が舞い込めば、その事を家族や身内に話したに違いない。
または、非魔導師と低魔導師と言う事で、命令に逆らえず、その鬱憤を誰かに話した者も居ただろう。
兎も角、そのような経緯からクライスラーの無断派遣が数多くの局員にバレ、こうしてクライスラーの行方と何故無断で派遣したのかと言う追及の場となったのだ。
「地球防衛軍に問いただすべきです。でないと乗組員の家族は納得しません!」
クライスラーの派遣には無関係だが、派遣した者と同じく管理世界拡大推進派に属する若い佐官が発言し、同意する声が相次ぐ。
「しかしだ‥‥そもそも何故、クライスラーをあの世界に派遣した?同じ名を持つ世界でも、八神二佐や高町一尉の故郷とは訳が違うのだぞ?」
慎重派の高官が問い質す。
「クライスラーの派遣が誤りだとおっしゃるのですか?次元世界安定の障害になり得る世界の様子を探るのは当然のことでしょう!」
「かの世界には我々の所有する艦ではどうにもならない戦闘艦船が複数存在するんだぞ!無断で接近すれば領域侵犯で拿捕抑留。撃破されることだってある。ましてや、向こうにはハラオウン執務官たちが保護されているんだ。向こうを刺激すれば、本局は貴重な人材を失いかねないんだ!貴官らは、向こうを信じて待つとおっしゃった三提督のご意向にも背いたんだ!!」
慎重派の高官は語気を強める。
(はぁ~、余計な事をしてくれたものだ‥‥どうしたものか‥‥)
論争を見遣りながら、クロノ・ハラオウンはたちを吐く。
あの通信ポッドの細工に気づいたぐらいだ。
恐らくクライスラーの派遣にも当然気づいただろ。
自分たちの領海内に許可なく無断で艦船を派遣したのだ。
防衛軍にとっては領海侵犯されたのだから今度こそ、防衛軍側は黙っていないだろう。
そう考えると彼方の世界に居る義妹たちの待遇に変化があるかもしれない。
クロノの心配事は益々深刻なモノとなっていった。