星の海へ   作:ステルス兄貴

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おしおきだべぇ~!!の中の人の星間国家がログインしました。


七十四話 論争の余波と新たなる暗雲

 

 

双方に飲み物が出されたが、その間、ユニゾンデバイスモードのリインフォース・ツヴァイとアギトが空中浮遊しながら登場して良馬を唖然とさせたが、飲み物を載せたトレイを持ったバトライザーが登場し、管理局のメンバーらに挨拶をした時には、今度は管理局勢が目を丸くした。

 

(へぇー流石、魔法の世界、妖精もちゃんと存在するんだ)

 

(固有人格付き自律AIロボットまで実用化されているとは、地球防衛軍恐るべしやわ)

 

共に相手の文化に対し、微妙に間違った感想を持ったまま、双方の定期会談は終ろうとしていた。

 

通信を切る最後に、良馬がはやてに話しかけた。

 

「そういえば八神さんは、先日、お話をした高町さん同様、海鳴の出身者だとか?」

 

「え、ええ。そうです」

 

突然自分に話題を振られ、ビクッとするはやて。

 

「‥‥それならば、今後の管理局の在り方としてためになるかもしれないある日本海軍将校の言葉を知っていますかな?」

 

「ある日本海軍将校?それって誰ですか?」

 

「臼淵 磐(うすぶち いわお)と言う海軍将校です」

 

「いえ、残念ながら、私は知りません」

 

海鳴に居た頃、読書少女であったはやてであるが、ミリタリー系はそこまで詳しくはなく、以前フェイトから戦艦大和の資料を集めるのを頼まれた時は、戦艦大和自体があまりにも有名だったから直ぐに集めることが出来たのだが、大和の乗員についてはそこまで詳しくは知らなかった。

 

「そうですか‥‥彼は、あの戦艦大和に乗艦した将校の一人で、大和の沖縄特攻の出撃前夜に海兵出身の若手将校と学徒出身の若手予備士官との間で、作戦の意義に付いて激しく論争となった時に仲裁したとされる人物です」

 

「‥‥」

 

はやては良馬の説明を黙って聞いている。

 

「その時に彼は、揉めていた将校たちにこう言ったそうです。『進歩のない者は決して勝たない 負けて目覚める事が最上の道だ 日本は進歩という事を軽んじ過ぎた 私的な潔癖や徳義に拘って、本当の進歩を忘れてきた 敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか 今目覚めずしていつ救われるか 俺たちはその先導になるのだ。 日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃあないか』と‥‥まぁ、散るまでとは、行かないまでも、ノアやテリオスそしてクライスラー‥‥これらの尊い犠牲を無駄にせずに、管理局の今後の進歩を願います。勿論、この言葉は我々、防衛軍にも同じ事が言えますが‥‥」

 

良馬は皮肉と、次は無いからなと言う警告を含めて、はやてに伝える。

 

「はは、耳が痛いですわ‥‥でも、私らも微力ながら、今後の管理局のために、今の管理局の体制を変えて行こうと思うとります」

 

はやては苦笑いをしながら、そう言って、内心で、

 

(うぅ~‥次に下手な真似したら容赦はしないと言う事やな)

 

と、良馬の言葉の意味をちゃんと受け取っていた。

 

はやて以外にも臼淵 磐と言う海軍将校が残した言葉はこの場に居た誰もの耳に残った。

 

「では、私からも一言‥‥」

 

リニスも管理局の局員に対し、言葉を送る様だ。

 

「な、何でしょう?」

 

「人は間違いを犯します。たとえそれが命令であったとしても、 間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気も必要なんですよ。お互い組織に属する人間故、そう簡単じゃないことは、分かりますが、過去に目を閉ざす者は、未来に対しても盲目になりますから」

 

「は、はい」

 

『‥‥』

 

こうして今日の定期連絡は終わった。

 

しかし、管理局側には重苦しい空気となった。

 

良馬とリニスの言葉は声をかけられたはやて以外の者たちにも重くのしかかった。

 

(そういえば、今日来ていたあのシグナムって言う人に妖精の二人組‥八神さんの家の人たちに似ていたな‥‥それにあのはやてって言う人も同じ八神姓だったし‥‥)

 

良馬は、今日の定期連絡で、出会った八神家の皆が自分の知る八神家の人たちに似ていたと思った。

 

そして、その日の夜‥‥

 

ミッドチルダ 首都クラナガン郊外・高町家

 

「――というわけなんよ。レティ提督のおかげで何とか丸く収めたけど、そうでなかったら決裂したか、彼方さんの前で大恥かいとったかも知れんかったわ」

 

はやては愚痴る様に今日の定期連絡の事をなのはに伝える。

 

「そうだったんだ‥‥」

 

「おかげで向こうの地球に居るなのはちゃんの子孫かもしれへん子についてはなんも聞けへんかった」

 

帰宅するなり、フェイトたちとの定期通信の場に出ていたヴィヴィオから、冒頭から地球防衛軍の人たちと喧嘩になったと聞かされ、夕食後、なのはは、はやてに確認の通信を繋いだところ、レティ提督の仲裁で事なきを得たということだ。

 

しかし、それ以前ではまさに一触即発の空気だったと言う。

 

そのせいではやては紅葉について何も聞けなかった。

 

今回はレティ提督のおかげで交渉決裂にはならず、ホッと胸を撫で下ろしながらも、ギルフォードや“海”の上層部のやりようには苛立ちを隠せない。

 

そもそもフェイトたちを救出してくれた まほろば の指揮官に対し、「ありがとう」の感謝の一言もなく、いきなりクライスラーの行方不明事件の回答を迫るとは、礼儀知らずにも程がある。

 

最もギルフォードの様な連中の脳内には管理外世界‥特に非魔導師に対して、礼を述べる、頭を下げると言う言動は入っていないのだからしょうがない。

 

しかし、ギルフォードが、今でも乗組員や現地局員、住民たちに同じような姿勢で今日も職務に臨んでいるのかと思うと胸が痛くなる。

 

よく、地球防衛軍側が怒らなかったと思ったが、その疑問をはやてはなのはが口にする前に言った。

 

「でも、あちらさんは、怒る所か、何か可哀相なモンを見る眼やったわ‥‥ホンマ恥ずかしかったで‥‥」

 

と聞き、なのはは激しい脱力感に襲われた。

 

あちらにしては管理局が行った行為など怒るにも値しなかったということなのか?

 

普通ならば、大問題になるところなのに‥‥

 

その場に居たフェイトとティアナはさぞいたたまれなかったことだろう。

 

「まぁ、百聞は一見に如かずや‥‥」

 

はやてが今日行われた定時連絡の映像を再生する。

 

クロノの直属上司として自ら同席を希望したというギルフォードの態度はあまりにも拙速過ぎた。

 

しかし、地球防衛軍側の二人、宇宙戦艦 まほろば の艦長、月村良馬と同じく、まほろば の医務官である月村リニス。

 

彼らがギルフォードを見る視線は、はやての言うとおり可哀相なモノを見る眼だった。

 

地球防衛軍は、これまで管理局と相対してきた反管理局組織(テロリスト)や犯罪者とは全く異なる、地球連邦という恒星系国家の正規軍だ。

 

それにも関わらず、従来の反対勢力、テロリストや犯罪者と同じような対処をしたのでは、まさに墓穴を掘るようなものだ。

 

いや、たとえ小さな反対勢力に対しても、もっと誠実に対処すべきだったのだ。

管理局はその姿勢が大幅に欠如している。

 

それはさておき、なのはの教え子も乗り組んでいたクライスラーは、例の通信ポッドに接触した直後、地球に報復戦を挑んできたガトランティス残党軍に撃沈されたか、出鱈目な座標を真に受けて、太陽か木星本星のどちらかに墜落し、一瞬で燃え尽きたか、その強力な重力に引きずり込まれたかのいずれかで、クライスラーが太陽系内に入ったかどうかは、地球防衛軍も把握していないと言う。

 

「一応音声鑑定にかけてはみるけど、彼らが嘘を言っているようには思えへんかった。つまり、あちらさんが言っている事はホンマっちゅうこっちゃ。防衛軍はクライスラーの侵入は知っとったかもしれへんが、撃沈、拿捕をしておらん‥月村艦長の言う通り、クライスラーは向こうの太陽か木星に墜落したかガトランティスに撃沈されたかのどれかやろうな」

 

「‥‥それで、レティ提督は‥‥管理局はどう結論を出したの?」

 

「『例の通信ポッドに接触してほどなく、太陽系に侵入を図るガトランティス艦隊に遭遇し急襲され、緊急通信すら出せずに撃破された』‥‥と言う事にしたんや。まさか、出鱈目な座標を真に受けて、太陽か木星に墜落しましたなんて恥ずかしくて発表できんし、そうなった確証もないんや。それよりかは、ガトランティス艦隊との戦闘で撃沈され、殉職したとする方が乗員の名誉も保てるし、二階級特進させた上で遺族に十分な補償もできるからということや‥‥」

 

はやての説明に、なのはは唇を噛んで俯いたが、

 

「そんな‥‥そんなの‥そんなの納得いかないよ。何で‥‥何で まほろば は‥地球防衛軍は通信ポッドをいじ‥「それ以上言うたらあかんで。なのはちゃん!!」ど、どうして!?」

 

なのはが、通信ポッドをいじった防衛軍側の行動を批難しようとしたら、はやてがそれを止めた。

 

なのはとしてはクライスラーが遭難したのは防衛軍のせいだと思ったからだ。

 

防衛軍が通信ポッドに変な細工をしなければ、少なくともクライスラーが太陽か木星に墜落する事はなかった。

 

もし、クライスラーの本当の遭難原因が出鱈目な座標を真に受けてでの遭難ならば、クライスラーを沈めたのは防衛軍同然だったからだ。

 

「信用できるかわからん組織に、自分とこの重要な基地や拠点の位置を馬鹿正直に教える軍人なんか即刻クビやで。あちらさんの肩持つ気はないけど、地球防衛軍のとった処置は軍人としては正しい事やで。これはレティさんも同意しとる。むしろ責められるべきなのは、クロノ君にも内緒でポッドに小細工させた“海”のアホどもや。そもそも最初からあんな姑息な真似をしなければ、あそこまで警戒される事はなかったかも知らんし、クライスラーが出ていく必要もなかったのかも知れん。加えて今日の一件や‥‥これで管理局は完全にあちらさんのブラックリストに載ったかも知らんな‥‥」

 

「そんな!じゃあ、フェイトちゃんたちは!?」

 

地球防衛軍が時空管理局への不信感を募らせれば、かの地に保護されているフェイトたちの待遇にも悪影響が及ぶかも知れない。

 

スパイ容疑をかけられて身柄を拘束されるかもしれない。

 

そうなれば、ミッドへと戻る事も出来なくなるかもしれない。

 

向こうの地球の軍刑務所で終身刑‥最悪の場合、死刑の恐れもある。

 

なのはにとって、目下の心配事はそれだった。

 

「それは今のところ大丈夫やろう。向こうの司令長官さんがフェイトちゃんとティアナに直接面会してくれて、待遇は保証してくれとるそうやから。だからこそ、管理局はこれ以上、あちらさんを刺激したらあかんのや‥‥なのはちゃん、プレオがガトランティス軍によって破壊され、そのガトランティス軍をヤマト や まほろば が一撃で掃滅させた時点で、管理局は次元世界最強ではなくなったんや。今、管理局は真綿でゆっくりと首を絞められ始めているのかも知れんのやで。私ら管理局と協調してくれる可能性があるのは、地球防衛軍だけなのかも知れへんのや。それを認識できなければ、管理局はいずれ、地球を侮った挙句、返り討ちに遭ったガトランティスと同じ運命を辿るで‥‥」

 

「‥‥」

 

「それに今日の通信の最後に月村艦長から、あの戦艦大和に乗艦したある将校さんの言葉を言われてな、ホンマ耳が痛かったで‥‥あと医務長のリニスさんからもや‥‥」

 

「それって、どんな言葉だったの?」

 

「月村艦長の方は確か‥‥『進歩のない者は決して勝たない 負けて目覚める事が最上の道だ 日本は進歩という事を軽んじ過ぎた 私的な潔癖や徳義に拘って、本当の進歩を忘れてきた 敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか 今目覚めずしていつ救われるか 俺たちはその先導になるのだ。 日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃあないか』‥だったかな‥‥」

 

「‥‥」

 

「ほんで、リニスさんからは、『人は間違いを犯す。たとえそれが命令であったとしても、 間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気も必要』と『過去に目を閉ざす者は、未来に対しても盲目になる』‥やったな‥‥」

 

「‥‥」

 

若干のアレンジは入るもはやてはなのはに今日の定時通信で防衛軍将校から賜ったありがたい御言葉をなのはに伝えた。

 

「なのはちゃん、管理局はまさにこの海軍将校さんやリニスさんの言う通り、進歩し、現状を見直さなきゃならん状況なんや…このままやと、管理局は滅びる。そうなる前に、古い考えは捨てなあかんのや。間違った命令が出されたら、それをきっぱり否定しなきゃアカン強さが必要なんや!!」

 

「はやてちゃん‥‥」

 

いつになく真剣なはやての瞳に、なのはは絶句した。

 

その日の夜、ニュースでは、次元航行艦クライスラーが、第二の地球に再進攻を図ったガトランティス帝国軍の急襲を受けて撃破された、という時空管理局次元航行本部のプレスリリースを流していた。

 

管理局としても、クライスラーの遭難の責任を地球防衛軍に問うことは困難との結論に達したのだ。

 

防衛軍側に責任を問えば、事前連絡と地球防衛軍の承諾なしに太陽系内へ進入しようとした目的を問い糾され、領域侵犯目的で来たのかと逆に責められかねない。

 

それに今回の責任の報復に武力行使として、かの世界に次元航行艦を多数出たとしても、彼我の艦船の性能が段違いな上、地球防衛軍には宇宙戦闘攻撃機まであるのだ。

 

たちまち返り討ちに遭うのは目に見えている。

 

クラナガンをはじめとする主要都市市民のインタビューが放映されているが、多くは管理局のコントロールが効かない軍事勢力への不安や次元世界探査の一時中止を求める声だった。

 

それに対し、管理局は、地球防衛軍・ガトランティス軍とも戦闘力は極めて高いが、彼らに次元航行技術は確認されておらず、管理世界へ侵攻してくる可能性は極めて低いことと、また、地球防衛軍は現在、ハラオウン執務官らを保護しており、彼女たちの身柄返還に向けて、管理局と定期的に連絡を取り合っており、双方の間にトラブルは起きていないので、心配することはないとも報道官は話していた。

しかし、クライスラーの乗員遺族にとっては、当然、納得のいくものではなく、遺族補償が有るとはいえ、泣き寝入りする様な心地だろう。

 

「‥‥」

 

テレビに見入りながら、なのはは複雑な思いに浸っている。

 

時空管理局と地球防衛軍との関係は、公式発表されたほど良好でないことを肌で感じているからだ。

 

フェイトたちの待遇が思った以上に良好であることは、彼女たちの顔色や声の調子でわかっている。

 

とはいえ、彼らは質量兵器を多用する純軍事組織であり、地球連邦という統一国家の正規軍だ。

 

質量兵器は管理局法に違反しているから、本来は取り締まり、必要ならば武力を用いてでも質量兵器を廃棄させなければならない。

 

しかし、地球防衛軍はこれまでの武装組織や正規軍とは比較にならない強力な戦闘艦船と機動兵器を持つ。

 

しかも、彼らの世界は管理外世界だ。

 

本来ならば、管理局が干渉する世界ではない。

 

だが、その技術は管理局をゆうに上回るため、管理局側としても、見過ごすわけにはいかないのだろう。

 

彼らはガトランティスや暗黒星団帝国軍のような好戦的かつ侵略的ではないようだが、管理局と一線を引く姿勢である以上、潜在的な脅威であることは変わりない。

 

そして案の定、先日のやり取りで、地球防衛軍側の若い士官が、

 

『管理局は管理局、うちはうち』

 

という趣旨を明言したことで、管理局とは一線を画する姿勢を示した。

 

非公式で、かつ予想していたとはいえ、管理局の下に集う気はないという意思表示をしたことに、本局上層部、特に次元世界拡大派の高官は渋面だろう。

 

だが、実力行使すれば甚大な被害を被るのが目に見えているからだ。

 

「ねぇ、なのはママ」

 

余程難しい表情をしていたのか、目の前にヴィヴィオが来てこちらを見ている。

 

「ん?何?ヴィヴィオ」

 

一人娘は少し考えるようにしてから、顔を上げて母に訊ねてきた。

 

「かんり局とちきゅうぼうえい軍はどうして喧嘩しちゃったのかな?このまま、ちきゅうぼうえい軍とせんそうになっちゃうの?フェイトママは、帰って来れるの?」

 

「ヴィヴィオ‥‥」

 

ヴィヴィオはギルフォードと地球防衛軍士官の刺々しいやり取りを目の当たりにしている。

 

不安にならない訳がない。

 

はやてに言わせれば、いきり立ったのはギルフォードだけで、向こうは白けていたということだが、ヴィヴィオの目には喧嘩しているように見えたことだろう。

 

しかし、互いに相手をよく知らないでいるのなら、行き違いはあるだろう。

 

これはかつてなのは自身が、アリサやフェイト、ヴォルケンリッターたちとぶつかり合い、そして友情を結んだ経験則だ。

 

JS事件で逮捕された戦闘機人たちとも同じ事が言える。

 

「大丈夫よ。管理局も、地球防衛軍も、まだお互いの事を知らないからだよ。じっくり語り合えば、必ず仲良くなれるはずだよ。フェイトママたちも、向こうの地球の事を勉強して、そして、管理局の事も知ってもらおうと頑張っているんだから」

 

これは確信できた。

 

フェイトとティアナの二人は無為徒食するような事はしない筈だ。

 

必ず、向こうの地球の生きた情報を持ち帰ってくる筈だ。

 

なのははそう信じて、二人の帰還を待つ事にした。

 

 

ミッドチルダ北部・ベルカ自治区、聖王教会本部

 

「そう‥そんなことが‥‥」

 

はやては、定期連絡の翌日、ベルカ自治区、聖王教会本部へと赴いた。

 

そこで、はやては昨日の定期連絡の映像を見せた。

 

案の定、カリムもシャッハもギルフォードの行為には顔をしかめた。

 

「これは、ありませんね」

 

良馬やリニスがそうだった様にシャッハもギルフォードの行為に対して呆れたように言う。

 

「そうですね‥まるで管理局が既にかの世界を管理下に置いたような発言と行為に受け取られる様な言動ですね」

 

カリムの彼の発言に対して危惧する。

 

「それで、ハラオウン執務官たちの待遇は大丈夫なのですか?」

 

ギルフォードの行為によってフェイトたちの待遇が救助者から捕虜、ないしスパイ容疑をかけられて拘束されたのではないかと心配になるカリム。

 

「その点に関しては、大丈夫や。向こうの司令長官さんが待遇は保証してくれとるそうやから」

 

「そうですか」

 

はやての言葉を聞き、安心した様子のカリムとシャッハ。

 

「それで、今回のクライスラーの件なんやけど、これはこの前のカリムの預言の一つだと思うんよ」

 

「はい。私も今回のクライスラーの件を聞き、確信しました」

 

「あれから何か別の預言とか出たか?カリム?」

 

「いえ、あれから発動はしていません」

 

「そうか‥‥しかし、そうなると、後もう一つの預言が起こる可能性がある訳やな」

 

「‥‥」

 

「今度の預言‥‥」

 

 

星海を行く法の番人の船

 

独裁を司る者の宝物(ほうもつ)を強奪せんとす‥‥

 

独裁を司る者は、怒り狂い、強奪せし法の番人を業火の彼方へと滅する

 

報復せし法の番人は、独裁の地へと赴く

 

されど番人は漆黒の闇へと飲まれる‥‥

 

 

はやては以前にカリムから見せてもらった預言の言葉を書き記した紙を見て、呟く。

 

「この文面からガトランティスや防衛軍に喧嘩を売るわけやなさそうやけど‥‥」

 

ガトランティスは国家元首が地球との戦争で死亡している事が防衛軍との定期連絡で判明しており、地球連邦には、独裁者など存在しない。

 

そのため、この預言に書かれている『独裁を司る者』はガトランティス、防衛軍では無い事が分かる。

 

では、ガミラスか暗黒星団帝国それともまた新たな星間国家なのだろうか?

 

「兎も角、最初の預言は現実に起きてもうた。二つ目の預言は何とか防ごうと私は思うとる。勿論クロノ君やリンディ提督、レティ提督も同様の意見や」

 

「そうですね。私も出来ることは極力協力していきます」

 

と、カリムもはやてたちに協力を申し出た。

 

しかし、事態はそう上手くは行かなかった‥‥。

 

 

銀河系中心部・核恒星系より北方にある某宙域

 

無人惑星を望む宇宙空間に、数十隻の艦船が遊弋している。

 

そのフォルムは全体的に丸みを帯び、ずんぐりとした型であり、その中でも一際大型の艦のブリッジの中央部に一人の男が立ち、少し緊張した面持ちでチラッと横目で窓の外の光景を見ていた。

 

男の視線の先には、剥き出しの大砲を曳航しているずんぐり型の艦船がおり、更にその先‥曳航している大砲の砲門の先には古めかしい宇宙船が多数漂っていた。

 

ずんぐり型の艦船が曳航している大砲はその大きさから、艦船に搭載するものではなく、地上または宇宙要塞に搭載する要塞砲である事が窺える。

 

もっとも彼らがあのガトランティスが保有していた超巨大戦艦を建造しているというのであれば話は別となるが‥‥

 

「バルコム提督、お待たせ致しました。首相閣下との回線を開きます」

 

「うむ」

 

画面が切り替わり、いかにも尊大そうな壮年の肥満な男が映し出された。

 

敬礼するバルコムに男は頷いて応え、口を開いた。

 

「バルコム提督、例の新兵器とやらの準備は万端かね?」

 

「はっ、全て完了しております。首相閣下」

 

「よろしい。それでは早速見せて貰おうかね」

 

「承知しました」

 

“首相”に敬礼したバルコムは幕僚に向き直った。

 

「ブラックホール砲発射準備!!」

 

「ブラックホール砲発射準備」

 

「ブラックホール砲へエネルギー注入!!」

 

バルコムの命令は直ちに参謀長を通じて伝えられる。

 

曳航している艦船が大砲にエネルギーを注入し、やがて砲身の先が白く光り始める。

 

「ブラックホール砲発射準備完了!!」

 

「よしっ、ブラックホール砲発射!!」

 

バルコムは頷くや、発射命令を下した。

 

エネルギーが充填された砲身から白濁色の光源が放たれ、老朽船の上を通り越していくと、老朽船の傍に突如、ブラックホールが出現し、老朽船と周囲にある小さな星やアステロイドは次々とブラックホールへと飲み込まれていく。

 

老朽船やアステロイドを全て飲み込んだブラックホールは暫くすると、消えてしまった。

 

後には、何事も無かった様な平穏な星の海が広がるだけだった。

 

「如何でしょうか?首相閣下。新兵器『ブラックホール砲』の威力は?」

 

「うむ、見事だったぞ、バルコム君」

 

「いえ、これも首相閣下のご指導の賜物であります!」

 

首相はブラックホール砲の威力を見て満足げな表情だ。その様子にバルコムは内心で胸を撫で下ろした。

 

「これを完成予定のあの要塞に搭載できれば、我がボラー連邦の攻守は完璧なものとなる訳だ。君たちはよくやってくれた。君たちの帰還に合わせて祝いの品を用意させておこう。それで兵士たちを労ってくれたまえ」

 

「はっ、首相閣下のお気遣い心より感謝いたします!!」

 

バルコムは深々と頭を下げた。

 

「うむ、では君たちの帰還を待っておるぞ」

 

首相はかなり上機嫌な様子で通信を切った。

 

画面が完全に消えたのを確認して、バルコムは額に浮き出た汗を拭う。

 

「ふぅ~‥‥」

 

首相閣下は一度不機嫌になると何をするかわからない。

 

激怒しようものなら、怒りが解けるまでに何人もの官僚や幕僚が“突然の病のため、長期療養に入る”そして、その療養に入った者は、二度と表には戻ってこない。

 

それはバルコムに限らず、軍の高官ならば同僚や上官が粛清されていくのを間近で見ているから、いつ自分がそういう目に遭うか戦々恐々なのだ。

 

それでも軍部があの首相についていくのは彼にこれまでの国家元首にはない圧倒的な指導力があるからである。

 

彼――ベムラーゼ――が首相の座に就いてから、自身が属するボラー連邦の版図は従来に増して早いペースで広がっている。

 

この銀河(天の川銀河)の中心を越え、辺境惑星であるバース星をも保護領にし、さらには高い科学技術力を誇るガルマン星をもその支配下に収めた。

 

祖国が‥ボラー連邦が、この銀河全域を統一するのも現実のものになるだろう。

 

ボラー連邦軍主流派の将校たちは、その時はそう信じていた――。

 

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