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SX級の外見がガンダムSEEDに登場したクサナギで、クサナギとカキツバタの外見が少し似ていたので‥‥
時空管理局本局
「世界全体にAMFが展開しているだと!?」
先日の防衛軍との定期連絡において、新たな事実がハラオウン執務官から分かったと言うので、本局ではその内容についての行儀が行われた。
「はい。かの世界を覆うAMFはもはやAMA(アンチ・マギリング・エア)‥と言った方が正しいかもしれません」
「AMAと言う事は、管理局の大部分の魔導師は無力化され、高ランク魔導師もリミッターを解除しても“普通かそれ以下”の力しか発揮できぬと言う事か!?」
「そのとおりです。まさにあの世界は魔導師にとっては禁断の世界です」
「‥‥ハラオウン執務官の報告では、その空気を形成した原因らしいのは、イスカンダルとやらから持ってきたその“コスモクリーナー”とかいう機械と言う話ではないか。そんな危険極まる物、何とか回収することは出来ないのか?」
「いや、いっそ、その機械のあった母星、イスカンダルを管理局世界へ編入させた方が良いのではないか?」
管理世界拡大推進派の“海”の高官が発言する。
それに他の魔導師至上主義者、管理世界拡大推進派の高官も頷く。
“AMA”の原因であるかもしれないコスモクリーナーを回収し、魔導師にとって苛酷な環境形成を抑えること‥‥いやその製造元であるイスカンダルを管理世界に編入させれば、管理局にとって大きな利益になるかも知れないが‥‥
「お言葉ですが、“コスモクリーナー”は前所有者のイスカンダルのスターシア女王が地球に譲渡することを決め、妹のサーシア王女やヤマトの乗組員たちが命懸けで戦い、多大な犠牲と引き換えに持ち帰ったものです。それを管理局が回収することは、ヤマトやスターシア、サーシア姉妹を‥赤の他人の努力の成果を否定する事と同じです。そうなれば、地球連邦は、管理局を掠奪者と見なすのではないですか?」
「その通りだ。それにイスカンダルを管理世界等に編入しようとすれば、地球防衛軍、そしてガミラスが許しはしないでしょう。ノアとテリオスの船体は地球防衛軍にあり、そこにあのガミラスの技術が加わったら、あっという間に彼らは次元航行を可能にする艦を建造するでしょう。そうなれば、本局と次元航行艦隊は防衛軍とガミラス軍の波動砲の前に消え去り、ミッドを始めとする管理世界にはガミラスの遊星爆弾の雨が降ることになります。それに我々はイスカンダルの正確な位置さえも知らないのですよ」
「それにそのようなことをすれば、かの地球にいるハラオウン執務官らの待遇はおろか、生命の危険さえも伴うのですぞ。管理局はいつからそんな恥知らずの侵略者に成り下がったのですかな?」
“陸”や本局の穏健派の高官らが魔導師至上主義者、管理世界拡大推進派の高官の意見を否定する。
「なんだと!!貴様ら!?」
「我らが掠奪者集団に侵略者だと!?」
「他人が汗水垂らして、ましてや夥しいまでの量の血を流してまで得た物を、横から掠め取る行為を『掠奪』と言わずして何と言うのかね?是非そのことについてご教授を願いたいね」
“陸”の高官が冷ややかな目で“海”の強硬派の高官達に言い放つと会議室は再び強硬派、穏健派の局員達が言い合いを始める。
魔導師至上主義者、穏健派‥二つの派閥のやり取りを呆れた様子で見ていたクロノ。
彼は、内心で、
(こんな事ならコスモクリーナーの事を話すべきではなかったな)
と、今になって後悔していた。
いきり立つ“海”の魔導師至上主義者、管理世界拡大推進派に冷水を浴びせたのは三提督の一人、レオーネ・フィルスであった。
「地球連邦に我々時空管理局について今少し理解を深めてもらう必要はあるにしても、地球防衛軍の概念は、国あるいは世界の守り手としては別段過激なものではないと思うがね?」
「しかし閣下!彼らは本局と次元艦隊を壊滅させられるような過剰戦力を持っているのですぞ!野放しにしておくわけにはいきません!」
「危険度ならば、先日のボラー連邦やガトランティス、暗黒星団帝国の方が余程危ないだろう。彼らは、最初からこちらを皆殺しにするつもりで撃ってきているんだ。それに対し、地球連邦はハラオウン執務官らを救出し、治療のみならず、当面の生活まで面倒を見ているんだ。どちらが信頼に足るか、それぐらい子供でもわかる理屈だろう?それに地球防衛軍‥‥特に彼らの宇宙艦隊と戦って勝てる成算があるのかね?“海”は?」
「し、しかし!」
「そこまでにしたまえ!!」
“海”側の魔導師至上主義者、管理世界拡大推進派が何か反論しようとしたが、それはラルゴ・キールが遮った。
「地球防衛軍が地球連邦政府傘下の組織であり、彼らに侵略の意図がないのは明白である。これ以上、地球連邦側の機嫌を損なわぬように今後も協議してもらいたい。そもそも、地球は魔法文化がなく、現地の住人の暮らしには何の支障もない筈だ。我々よそ者の魔導士が目くじらを立てる事自体おかしいのだ。くれぐれも‥‥いいか、く・れ・ぐ・れ・も、軽率な行動と発言は控えるように‥‥良いな?」
ラルゴ・キールが鋭い眼光で睨むと、辺りは波打ったように静まり返った。
(今回はコスモクリーナーの事を報告してしまったが、彼女‥高町紅葉の事を報告しなくて良かった‥‥)
紅葉の件についてはまだ彼女が魔導師資質及びデバイスを所持しているのか、不明だったため、報告には上げなかったが、この様子を見てクロノは報告しなくて良かったと思った。
報告すれば、魔導師資質及びデバイスの有無に関わらず、彼女を管理局に入れろと、言いそうだからだ。
そんな事になってみろ、たちまち防衛軍との交渉は決裂する。
それにもし、彼女をミッドに連れて来て、魔導師資質がなかったら、どうするつもりなのだ?
ミッドのなのはの家にでも押し付けて終わらせるつもりか?
そんな単純な事で終わる筈がない。
きっと管理局には、防衛軍の手厳しい報復が待っているに違いない。
最も、彼女をミッドに連れてくるのは無理だろうけど、今後紅葉の事は内密にするようにはやてたちに言わなければならないな、と思うクロノであった。
海鳴 月村家 リビング
これが漫画やアニメだったら、対峙する二人の背後には、ゴゴゴゴゴゴ‥‥と言う効果音が入っているだろう。
「「‥‥」」
「はてな?」
「‥‥なかなかやりますね、ティアナさん」
「貴女こそやるわね。紅葉‥‥」
フェイトの腕の中で、事の流れが理解できていない様子の月村家のリトル・プリンセス、ユリーシャ・イスカンダルこと、月村摩耶は首を傾げている。
真田さんがサーシアを自らの姪、真田澪ともう一つの名を与えたようにユリーシャも彼女がイスカンダルの王女である事を隠す為、忍はサーシア同様、ユリーシャを遠縁の親戚の娘として、月村の姓と摩耶と言う名前を与えた。
ティアナと紅葉‥二人が醸し出す闘志は旧六課のFW陣ならば、涙目で逃げ出すだろう程に鋭利で重かった。
隊長陣ならば、冷や汗が伝うレベルだろう。
事の発端は、紅葉がチェス盤を持って月村家を訪れた事だった。
「あら?紅葉、それチェス盤?」
「はい」
「どうしたの?それ?」
「実は‥‥」
紅葉曰く、二日後に自分の通う中学校のチェス部が大会に出るのだが、自分が部員のピンチヒッターになったので、忍かノエルにチェスの稽古をしてもらおうと来たのだと言う。
「紅葉。貴女、チェスが出来るの?」
「まぁ、人並み程度には‥‥」
チェスの稽古に来た紅葉であったが、忍もノエルも今は出掛けている。
そこで、
「それじゃあ、私が相手をしようか?」
「フェイトさんはチェスが出来るんですか?」
「まぁ、私も人並みくらいにはね‥‥」
と、フェイトが相手をする事になった。
しかし結果は‥‥
「チェックメイト」
「‥‥」
短時間でフェイトの敗北で終わった。
フェイトはその戦い方故か、駒を全て前進させる電撃戦、短期決戦型の戦いを行い、有利な地で待ち伏せた紅葉の戦法で次々と有力な駒を討ち取られていった。
「フェイトさん‥‥(;^ω^)」
ティアナはやや憐れむような眼でフェイトを見る。
「も、もう一回!!もう一回やりましょう!!」
体面を思ったのか、フェイトは、もう一度、紅葉にチェスを挑む。
だが、
「チェックメイト」
「‥‥」
またもやフェイトの敗北で終わった。
今度は先ほどの電撃戦とは違い、防御路線の戦い方をしたのだが、紅葉の一撃離脱方式の戦法で次々と有力な駒をとられていったフェイト。
「うわーん!!ティアナ、仇を討って!!」
「わ、私がですか!?」
フェイトは今度、ティアナに泣きついた。
自分よりも年下の紅葉に負けてよほど悔しかったのだろう。
しかし、実年齢は前世を含めれば紅葉が上である。
「わ、分かりました‥‥」
ティアナもチェスに関しては、全くのど素人と言う訳ではない。
六課時代にフェイトに勧められて何度かチェスや将棋を指したことがある。
いや、それ以前にティアナは囲碁と将棋を知っていた。
訓練校時代にスバルの実家へと行った時、ゲンヤがカルタスやギンガと囲碁や将棋を指している場面に出くわしたことがあった。
何故、異世界であるはずのミッドに囲碁や将棋が有るのかと言うと、
地球人‥それも日本人の系統のゲンヤは昔から、そう言った地球の日本文化由来の品を持っており、先祖から伝わって来た文化を継承していた。
その際、ティアナはゲンヤからルール等を教わり、ゲンヤやギンガと対局した経験があるのだ。
それに六課時代、センターガードを務めていたティアナであれば、駒の読みも自分より優れているかもしれないと思い、もしかしたらティアナならば勝てるかもしれないと思い、フェイトはティアナに自分の仇を討ってくれと頼んだのだ。
こうして始まったティアナと紅葉のチェス対決。
序盤ティアナは、いくら紅葉がフェイトに勝ったとしてもそれはまぐれで、中学生相手に本気でやる訳には行かないと思っていたのだが、
「チェックメイト」
フェイト同様、ティアナも紅葉に敗北した。
「‥‥もう一戦‥良いかしら?」
「はい」
(中学生だと思って侮っていたわ‥‥でも、次は容赦なく潰す!!)
そして、場面は戻り、
ティアナと紅葉はチェス盤を睨みながら、互いに重苦しい雰囲気を発生させている。
「‥‥なかなかやりますね、ティアナさん」
「貴女こそやるわね。紅葉‥‥」
「でも‥‥」
「負ける訳には‥‥」
「「いかないの!!」」
二人とも負けず嫌いの性格の為か、真剣になって駒を動かしていく。
タン
タン
コッ
コッ
トッ
トッ
リビングには駒を動かす音以外は聞こえず、ギャラリーのフェイトはハラハラしながら二人の戦いを見守っている。
反対に摩耶は興味無さそうだ。
制限時間を設けていないため、時には長考もあったが、遂に、
「チェックメイト」
「‥‥ま、まいりました」
ティアナはマジで悔しそうに苦々しく敗北宣言をする。
「ありがとうございました」
「あ、ありがとうございました」
僅差でティアナは紅葉に敗北した。
「ふぅ~正直、勝てる自信はあったのになぁ‥‥」
ティアナはチェスの駒の一つを手にとり、呟く。
「いえ、ティアナさんも良い腕をしていましたよ」
「負けた後に言われても虚しいだけよ」
「でも、駒の動きとか、二手、三手動きを読んでいる所もありましたし、やっぱりすごいですよ。ティアナさんは管理局では参謀の様な役職なんですか?」
「いえ、以前にセンターガードって言うポジションを務めていたのよ」
「センターガード?」
ティアナは紅葉にセンターガードの役割を話した。
「成程。となると、やはりティアナさんにとってチェスや将棋は切っても欠かせない訓練になりますね」
「えっ?どうして?」
「味方を守るためのロジック、そのイメージ力や思考の素早さを養うには、チェスや将棋は最も適していますから‥‥最もコレは良馬さんからの受け寄りですけどね‥‥」
「「へぇー」」
紅葉の言葉に思わずフェイトも声を出す。
その後、忍とノエルが帰って来るまで代わる代わる対戦者を変えてチェスを撃ち込んでいた。
ただ、フェイトは今日初めてチェスを打つ摩耶にも負けて物凄いショックを受けていた。
イスカンダルの女王の娘であるが、もう半分には不屈の宇宙戦士を父にもつ摩耶にも才覚があったようだ。
紅葉は夕食も月村家で食べ、その後、ノエルが運転する車で中嶋家へと帰って行った。
フェイトとティアナは月村家にあったチェス盤を借りて、就寝前に部屋で打った。
「でも、チェスと言うのは盲点だったかも‥‥」
駒を動かしながらフェイトが呟く。
「そうですね。魔法やシミュレーターばかりに頼りきっていましたけど、これなら盤と駒が有れば、何処でも出来ますからね」
ティアナも盤面から目を離さず、駒を動かしながら言う。
「ミッドに帰ったら、チェスや将棋を盛り込んだ訓練も導入する様になのは言ってみようかな‥‥っと」
「‥‥」
フェイトがポツリと呟いた内容を聞き、
(なのはさんが将棋やチェス‥‥)
ティアナはなのはがチェスや将棋を指している場面を想像する。
しかし、どれも教え子である筈の訓練生にいとも簡単に敗北してしまう姿しか想像がつかなかった。
特に理論よりも体が先に動くヴィータではこうした頭脳戦は苦手だろうと思うティアナだった。
ボラー連邦 本星 首都 ロスクワ 首相官邸
首相官邸のモニターには軍工廠、宇宙艦船製造ドックの様子が映っており、其処には、一隻の白色に塗られた艦が鎮座していた。
ただ、この艦は周囲に並ぶ、ずんぐり型が特徴のボラー艦とは全く異なるフォルムをしており、従来のボラー艦とは全く違う思想のもとに設計・建造されたことが窺われる。
「ほう‥‥これが‥‥」
「はい、鹵獲した時空管理局の艦を改造した次元哨戒艦アフトワーズです」
ボラー連邦首相ベムラーゼの隣には、彼の補佐官でもあり、ボラー連邦軍総参謀長のゴルサコフが居り、軍工廠から提示されたアフトワーズの説明を行っている。
艦首部のフォルムはSX級だが、機関換装、武装更新、艦体強化と装甲の追加等を行った為、外見もSX級と異なる。
SX級自体はボラーの造艦技術から二、三世代前の旧式なのだが、未だに無い次元航行能力の試作艦として、ボラーは鹵獲したSX級を改良したのだ。
「しかし、次元航行能力は未だに我が方としては未知数であり、当面は本艦でデータを収集し、今後の新造艦船に反映させます」
「よろしい。だが、些か消極的過ぎるな‥‥本艦をもっと積極的に活用するのだ」
ベムラーゼは、ゴルサコフや工廠の技師が提示したアフトワーズの運用計画よりも積極的な活用を考えていたようだ。
「と、おっしゃいますと?」
「時空管理局とか言う盗人共への嫌がらせに使うのだ。そろそろ緊張感もゆるむことだろうしな。災いは忘れた頃にやってくることと、魔法などと言う怪しい力では何も守れないことを、彼奴等に知らしめてやるのだ。それにスペックを見る限り彼奴等の動向を窺うにはもってこいの艦ではないか」
「承知しました。至急運用計画を練り直します」
最凶最悪のSX級は、新たな猛毒の牙をかつての古巣と仲間たちに剥こうとしていた。
時空管理局本局、レティ・ロウラン執務室
八神はやてとシグナムを自分のオフィスに招いたレティは早速切り出した。
「二人は、ギルフォード提督と面識があるわよね?
「はい」
「何度かは‥‥」
ギルフォードの名前を聞き、はやてとシグナムは微かに苦い顔つきになった。
先月、地球防衛軍との定期通信の席に同席したはいいが、いきなり高圧的なKY発言を繰り返して先方と一触即発になり、急遽レティ自身がとりなす事態になったのだ。
典型的な魔導師至上主義者で、はやてたちからの印象も芳しくない。
「そのギルフォード提督がどうなさったんですか?」
「クルーの集団造反よ」
「「造反!?」」
やや物騒な言葉を聞き、思わず聞き返すはやてとシグナム。
ギルフォード自身もXV級次元航行艦フーガの艦長であるのだが、自分が指揮する艦で造反が起きているとは、一体何が起きているのだろう。
クルーの一部がクーデターでも起こしたのだろうか?
レティが打ち明けた内容は、クーデターでないにしても、確かに聞き流すには余りに深刻なものだった。
クルーの一人や二人ならまだしも、半数近くが抜けては、艦船はまともに運航できない。
「時期が時期だから、事情聴取と説得に当たっているんだけど、芳しくないのよね」
「一体、フーガに何が有ったんですか?」
浮かぬ表情のレティにシグナムが質すと、他言無用と念押しして口を開いた。
「一口で言えば、パワハラよ」
「パワハラですか?」
「そうよ。彼の人となりは、直に会った貴女たちも大体わかるでしょう?」
「はい」
はやてとシグナムは、やっぱりという表情になった。
彼はニアSクラスの空戦魔導師で、武装隊時代は反管理局勢力の摘発に活躍したらしいが、指揮官としては独善的なところがあり、部下からは敬遠されていた。
特に魔力ランクの低い低魔導師や魔力を持たない非魔導師には‥‥。
それでもフーガが、これまで実績を挙げてこれたのは、非魔導師ながらも実直な副長や航海長、機関長らの幹部クルーが他のクルーたちをよく纏めていたからなのだが、数か月前の人事異動で副長、航海長、機関長の三人が揃って他艦への異動となり、その途端に艦の雰囲気が悪くなり、不満を募らせたクルーたちが、抗議の意味を込めて、一斉にレティ宛に退職・転属願を提出したというのだ。
本来は所属の長たる艦長を経由とすべきところを、いきなり本部宛に提出したというのは、艦長や新しく着任した副長が全く信用されていないという証拠だ。
「事情を聞いた限り、原因は典型的な魔導士至上主義の高ランク魔導師VS低ランク魔導師+非魔導師の対立ね」
まさに今の管理局の溝の縮図とも言える対立であった。
「そりゃあかんわ。魔導師ランクと人間の出来は全く関係ないのに‥‥」
はやてとシグナムも思わずため息をつく。
「それで、ギルフォード提督は何と主張していられるんですか?」
当然、あちらにも言い分はあるだろう。
「『副長や幹部乗組員の統率力不足だ』と言うばかりで、『自分の指揮に問題はない』‥‥だそうよ」
「それは、奇妙な論理ですね。副長や幹部乗組員を指導しフォローするのは提督や艦長の責任では?ましてや当の副長を始めとする幹部乗組員は新任だったのでしょう?」
シグナムも呆れた口調で指摘する。
「そうね。副長や他の士官たちの指導力不足もあるけど、新任士官を育てる責任は提督や艦長にあるからね」
レティはさらに、呟くように付け加えた。
「この際、荒療治がベターかしらね」
幸い、ここ一ヶ月余りは艦船が遭難したとの知らせはないが、問題は全く解決していないのだ。
そんな状況下で、内部に問題を抱える艦船は使えないし、こう言った問題は大きくなる前に処理した方が良いだろう。
只でさえ、“海”から転属願や退職願を出す局員が増加の一途を辿っている中、こうした件が公になるとあっという間に他艦へ広がる恐れがあるからだ。
続いての話題は先日本局で行われた会議での話題となったコスモクリーナーについての話となった。
「放射能を広範囲で除去‥しかもそれと同時にAMFを散布するとは‥‥」
シグナムはコスモクリーナーの性能を知り、驚愕する。
「私も実際にこの目でその機械を見たわけではないけど、放射能塗れになった地球がああして、元通りになった事から、コスモクリーナーには、放射能を除去する力はあると思っているわ。でも‥‥」
レティが自分なりの見解を述べる。
「AMFですか?」
「ええ、人体に有害な放射性物質が除去されるのは喜ばしい事なのだけれど‥‥」
「その反面、AMFが広範囲に散布されれば、魔導師にとっては、魔法を使うのに支障をきたしますな」
「本局の方々は何と?」
「地球からコスモクリーナーを接収し、製造元のイスカンダルは管理世界へ編入するべきだと主張してきたわ」
「なっ!?」
「それは、ヤバいのとちゃいますか!?」
イスカンダルを管理世界へ編入させる‥‥。
そんな事をすれば、ミッドはおろか、管理世界全てが破滅する恐れがある。
ガミラスと地球防衛軍の手によって‥‥
「もちろん、その主張は却下されたわ」
「そうですか‥良かった‥‥」
「まったくです」
はやてもシグナムも一安心した様子。
「私たちは今、この不気味なくらいの平穏の時間を無駄にする訳にはいかないの。この時間を使って何らかの打開策を打ち出さないといけないのよ‥‥今の管理局はね」
レティの言葉にはやてとシグナムは頷いた。
そして、レティとの会談が終わり、はやてとシグナムがレティの執務室を出る間際、レティが思い出すかのように言った。
「ああ、それと‥‥」
「なんです?」
「クロノ君からの伝言で、『クレハちゃんの事は黙っておいてくれ』だそうよ」
「あの子の事ですか?」
「それで、誰なの?『クレハ』って?」
レティは紅葉の事を知らないため、渦中の紅葉が誰なのかをはやてに訊ねる。
「うーん‥クロノ君が黙っておいてくれと言われては、今この場で私が話すわけにはまいりません。お許しください。詳しくはクロノ君にでも聞いてもらえますか?」
と、はやては紅葉の件をクロノに押し付けた。
「そう、わかったわ」
レティも納得した様子で、はやてとシグナムを見送った。
レティ・ロウランがはやてとシグナムをオフィスに招いた数日後、次元航行艦フーガの艦長らの異動人事が発表された。
艦長であるギルフォードは本局人事局統括官補佐、つまりレティの補佐官に異動。
副長、航海長、機関長もそれぞれ、他艦への異動となった。
そして、後任の艦長は、同艦の前副長だった局員が艦長へと昇進し、航海長、機関長も前任者を呼び寄せ、副長も低ランクの魔導師の局員が採用された。
この人事は当然物議を醸した。
そして、異動させられたフーガの副長には同情する声が大きかったが、事情を知る一人であるはやては、この人事が記されたタプレットを見ながら紅茶を一口飲み、
「ギルフォード提督はレティ提督の監視下に置かれたんやな。もう我が儘は出来へんで‥異動させられた副長は一見左遷やけど、異動先の艦長さんは人材育成と再生に定評がある人やからな。どっちが得したか、解る人には解るで」
と語った。
「それにしても、あのベムラーゼの大虐殺からこの方、次元の海は静かやな。不気味な程に平穏や‥‥」
はやての言うとおり、ボラー連邦による局員公開虐殺から幾日かの月日が経ったのだが、管理局や管理世界の艦船が襲われたという報告は未だにないし、ボラー連邦がミッドや他の管理世界に対し侵略して来る様子もない。
「過大な期待は禁物やけど、フェイトちゃんたちが帰って来れば、問題解決の糸口に繋がるんかなぁ」
はやての独り言は紅茶の湯気と共に消えていった‥‥。
しかし、平和、平穏と言うのはそう長いものではなく、唐突に乱れ、崩れるものである。
そしてソレは突然やって来た。
ミッドチルダ 首都 クラナガン ザンクト・ヒルデ魔法学院初等科
その日、学院全学年で午後の授業が突然自習になった。
午前中は通常どおりの授業だったのだが、昼休みも終わりに近づいた頃、突然全校放送で、全学年とも第五限を自習とする旨が知らされたのである。
そして、教師全員が職員室へと集められた。
突然の放送と教師の集結、そして授業が突然の自習になり、クラス内が僅かながらざわついた。
一部では自習になった事を喜ぶ生徒も居たが、大半が戸惑っている様だ。
「なんだろう?」
「なにがあったんだろうね?」
「あんまりいいことじゃなさそうだね」
この学院に籍を置く金髪に紅翠のオッドアイの少女、高町ヴィヴィオは、すぐ前の席のクラスメイトであるコロナ・ティミルと会話を交わしていた。
ヴィヴィオが“いいことじゃない”と口にしたのには理由がある。
昼休み、件の放送がなされる少し前、学院理事長代理の職にある聖王教会騎士、カリム・グラシアが、秘書兼護衛のシャッハ・ヌエラを伴って現れた。
カリムが学院に顔を出すのは公式行事の時くらいで、何の行事もない日に現れただけでも珍しいのだが、心なしか二人の表情が強張って見えたのだ。
最も二人は子供たちの挨拶に応えるためか、すぐ穏やかな表情になったのだが――。
ヴィヴィオはかなり特殊な生まれ育ちであり、つい一年前は某事件のキーパーソンに祭り上げられていた経験上、他人の不安な表情には敏感なのだ。
(また、ああいうことがおきちゃうのかな?)
幸いにも今度は事件の当事者にはなっていないが、時空管理局の手に負えないらしい世界の存在は、ヴィヴィオも知るところになっている。
彼女自身、そうした世界の一つである第二の97管理外世界こと地球連邦の軍隊である地球防衛軍の士官とモニター越しに対面し、短時間だが会話したこともあるのだ。
(なのはママやフェイトママでもどうにもならないのかな?)
二人いるママが、“わるいことをする人”には負けない事を、ヴィヴィオは肌身に染みて知っているが、それは、対人戦における魔導師と直接相手と戦ってこそだった。
管理局の艦船に乗っているところを、より強い艦船に襲われてしまえば、いかに強い魔導師でもどうにもならないことをフェイトの件で、嫌と言うほど思い知らされたのだ。
そして、管理局とは全く違う世界の存在も‥‥。
その世界は、なのはの故郷と同じ名前を持ちながら、とんでもなく強い艦船をたくさん持っており、その艦船を指揮している者たちもまた、とても強い意思の持ち主であることを直感的に感じ取った。
ヴィヴィオが考え込んでいると、
「皆さん、突然ですが、本日の午後の授業は全て中止です。今日はこれで下校と言う事になりました。寄り道をせず、真っ直ぐお家に帰って下さい。お家の方には、先生たちが既に連絡を入れておきました。では、皆さん気をつけて下校して下さい」
と、職員室から戻ってきた担任の教師が開口一番告げたからだ。
担任の教師も緊張した表情をしている。
(やっぱり、何かあったんだ‥‥)
担任の教師の様子から、何かただならぬ事態が起きたのだとヴィヴィオは察した。
そして、ヴィヴィオを含め、生徒たちは一様に不安な表情になったのだが、詳しい事態を知ったのはその次の日の朝、朝一のニュースで管理局からの発表によってであった。
クラナガン中央港地区、港湾特別救助隊 隊舎
「――そんな!!」
緊急召集を受けたスバル・ナカジマ一等防災士は、上司から、事のあらましを聞かされ絶句した。
「第一次捜索隊を率いるクロノ・ハラオウン提督が、お前さんの派遣を打診してきたんだが‥‥」
「行きます!行かせて下さい!」
上司に皆まで言わせず、スバルは自ら参加を申し出た。
ミッドチルダ 西部地方 エルセア ナカジマ家
「すまねぇな。またこんな時ばかり頼っちまってよ‥‥」
画面の向こうで頭を下げる陸士108隊部隊長、ゲンヤ・ナカジマ三佐に、チンクとウェンディが返す。
「気にしないでくれ、父様。ああいう場所でこそ私たちの特性が活きるんだからな」
「そうっスよ、パパリン。家族なんだから気遣い無用っス」
「でも、とんでもねぇ事になっちまったな」
荷物をまとめながらノーヴェが呟く。
「比べたくはねえけど、ドクターとあたしらがやらかしてきた事がすげぇ、小さくてつまらなく思えてきたぜ‥‥」
去年、彼女たちはとある大事件に深く関与したが、彼女たちやその生みの親は無差別な殺戮は考えていなかった。
最もノーヴェたちの姉で管理局の司法取引を拒否し、刑務所に服役している腹黒メガネの姉一人は、分からないが‥‥。
しかし、いずれにしても、自分たちがやったのはミッドチルダのクラナガン一都市内での事。
それに比べ、今回あった出来事と、ボラー連邦が行った管理局員を残虐極まるやり方での公開処刑は、スケールが違いすぎる。
ボラー連邦の行った公開処刑には、彼女たちも皆憤怒したが、同時に、管理世界の価値観が通じない世界が存在することも実感させられた。
(嵐みたいなこの世界で、あたしらがやれる事って何なんだろう?いや、自分で考えて見つけて、生涯それを貫き通すのが、あたしらに課された“償い”なんだろうな)
荷造りの手を止めて、ノーヴェは自分たちに課された贖罪について思いを馳せていたが、
「ノーヴェ、手が止まっているよ」
ディエチにツッコまれた――。
「わ、わりぃ‥‥」
ノ―ヴェは慌てて荷造りに専念した。
ミッドで何やら大変な事が起こっている様子であるが、その頃、地球では‥‥
海鳴 月村家
この日、紅葉が先日のチェス大会での結果を報告しに来た。
結果は、紅葉の通う中学が優勝したと言う。
「おめでとう。紅葉」
「おめでとう」
フェイトとティアナは、その成果に祝福の言葉を送る。
そして、三人はリビングにて、再びチェスをする。
(この世界のミッドチルダか‥‥)
チェスを指しながら、紅葉はまじまじとフェイトとティアナの顔を窺う。
「お二人は何時頃、そのミッドチルダにお戻りになられるんですか?」
「うーん、まだ何時とは明確には分からないかな‥‥でも、紅葉もいつか、ミッドにも来てくれると嬉しいな」
「‥そうですね‥‥お互いの星同士が国交を結べば、互いに行き来出来るでしょう。そうなれば、いつかお二人とお目にかかる機会もできますよ」
紅葉は再会を期待するフェイトたちにそう応えた。
それが現実になるまでには今暫くの年月を要する事は何となく想像がつく。
(時空管理局か‥‥)
とはいえ、紅葉は前世での勤務先‥そしてこの後世の管理局については些か警戒せざるを得ない。
彼女たちからチラリと聞いた話では、時空管理局が保有する艦船は、白色彗星帝国の艦船に全く歯が立たなかったらしい。
そうでなければ、そもそも彼女たちと会う事すらなかったのだから。
また、フェイトたちは地球防衛軍と時空管理局が何らかの形で提携できないだろうかと思い始めたようだ。
ただ、魔法以外の戦力保有を認めていないという時空管理局が、果たして質量兵器上等の地球防衛軍のあり方を受け入れられるのか?
それを言うならば、魔法文化がない地球側とて似たようなものなのだが、良馬はもとより、周囲の軍人たちは冷静に受け止めているようだ。
もし、この後世でもミッドに生まれていれば、職業選択の自由と言う選択肢は生まれた時から無くなっており、小学校など満足に卒業することなく、管理局に入れられていたかもしれないからだ。
(ハラオウン執務官たちはそういう世界に生まれ育ったのだから、私があれこれ言う資格はないけれど、フェイトさんの親友さんたち‥‥高町一尉と今の私は衝突してしまうかもね‥‥)
この世界の現実を目の当たりにしたフェイトとティアナは兎も角、別世界の紅葉の先祖、高町 なのはであれば、恐らく紅葉を管理局に入れ様とするだろう。
現在は、管理局の有り方に疑問を持つも、やがて、機動六課の様に部隊を持つ時に、即戦力になりそうな人材‥‥しかも、あの高町なのはの直系の子孫と言うブランド名が付いているとなると、いくらはやてでも、手放しはしないだろう。
きっと手元に置きたい逸材だろう。
正規の局員は無理でも、民間協力者、嘱託局員として、間接的に管理局へ関わりを持たせるのではないだろうか?
紅葉、フェイト、ティアナがチェス盤を見ている中、摩耶はテレビを見ていた。
アナウンサーは、2201年の凶悪犯罪発生数と検挙率の話をしていた。
それをチラッと見て聞いたフェイトとティアナは、
(悔しいけど、治安の良さでは、ミッドやどの先進管理世界も、地球にはまだ及ばないね。こちらの地球にも、私たちが知っている地球にも‥‥)
(管理世界は管理外世界を格下に見る傾向がありますけど、とんだ思い上がりだったんですね)
念話で会話をするフェイトとティアナ。
フェイトは内心複雑な思いを禁じ得ないが、異邦人たる自分がどうこう言う権利はないし、当のフェイトも口を挟むつもりはない。
しかし、第97管理外世界と同様に、この世界、いや、この星は紛れもない地球だ。
住まう人はあちらの地球と何ら変わらない。
紅葉のような極一部の例外を除けば、魔導師資質を持っていない人が圧倒的に多いが、それだけだ。
人間性も管理世界の住民に劣るところはない。
それどころか、絶滅戦争を生き延びただけあって、紅葉たちのような子供世代も含めて、バイタリティが高い人が多いように思えた。
舞台は再びミッドへと移る。
ザンクト・ヒルデ魔法学院初等部の制服を着た少女は朝、そのニュースを見て驚愕し、思わず手にしていた朝食のトーストを落した。
碧銀の髪と、紫碧のオッドアイの彼女は、ふと、朝食の最中、ニュースを流しているテレビ画面に目をやったが、次の瞬間、全身に悪寒が走る感覚に襲われて立ち竦んでしまった。
昨日何故、学院が午後の授業が自習になり、その後すぐに一斉下校になった理由も理解した。
(大変なことが起きてしまった‥‥)
ニュースでは、
『ザンクト・ヒルデ魔法学院高等部の生徒たちが乗った次元航行客船が行方不明。正体不明の艦船から攻撃された可能性もある』
と言うテロップが表示され、記者が詳しい情報を探ろうと管理局施設前で中継している。
少女は震えながらテレビ画面をジッと見ていた。
(クラウス、貴方や聖王オリヴィエ殿下の時代のような、いや、もっと血生臭い時代が来てしまうんでしょうか――?)
少女――ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトの問いに答えられる者は誰もいなかった。
次元空間回廊
捜索隊員と機材を載せ、僚艦三隻と共に本局を離れたクラウディアだが、件の船が緊急通信を発信した座標空間までは、最大巡航速度でも約十時間を要し、それが皆の焦慮をかき立てる。
(あ~、もうっ!遅い、遅過ぎるよ!!)
焦りを隠せずにいたのはスバルだった。
彼女は十一歳の時に姉(ギンガ)と共に大規模な空港の火災事故に巻き込まれた経験があった。
それ故に災害現場での恐怖や不安はここに居る中では、誰よりも理解しているつもりだ。
だからこそ、一分一秒も早く現場に到着し、救助活動を始めなければ、と思っているのだ。
XV級は在来のL級艦より大型重武装であるとともに、航行能力も上がっているのだが‥‥
(映像で見た地球防衛軍の艦速と比べると、管理局の艦船はまるで遊覧船程度じゃない!!こうしている間にも、助けを待っている人がいるのにぃ~)
ヤマトを初めとする地球防衛軍艦船の性能を映像越しとは言え、目の当たりにしてからは、管理局の艦船が、次元空間航行能力以外では数世代も遅れていることを実感せざるを得ない。
しかし、魔法科学も日々進歩している。
管理局関係では、AMF下でも使える新型デバイスの開発と試作も進んでいるが、未だに試作段階。
また、ジェイル・スカリエッティが開発・投入した無人兵器ガジェットドローンをベースにした空・陸戦用ガジェットもテストが始まったが、量産と配備には今しばらくの時間を要している。
しかし、これまでの犯罪者やテロリスト相手はともかく、ガトランティスみたいな獰猛な軍事勢力相手には何とも心許ない。
格段に強力な艦船や機動兵器でなければ撃退できないのだ。
スバル同様、一見落ち着いている様に見えるが、クロノも内心、焦り、苛立っていた。
ヤマト や まほろば ならば‥‥波動エンジン‥‥タキオン粒子機関ならば、既に現場について救助活動を行っているのではないか?
大体、管理局の版図が拡大していけば、いつかは管理局よりも強大な勢力と遭遇してもおかしくなかった。
今までの管理局の歴史の中でそれが無かったのが、奇跡に近かった。
それを指摘する声は以前から何度も上がっていたのに、管理局‥特に“海”の魔導師至上主義者や管理世界拡大推進派の連中は耳を貸さないまま突き進んだあげくがこの有様か‥‥
一歩間違えれば、地球防衛軍とも武力衝突していてもおかしくは無い状況だった。
しかし、それには、魔法以外の武装を質量兵器だと一様に決めつけ、ひどく嫌悪してきた現場の自分たちにも責任はある。
宇宙戦艦の乗組員は厳しい選抜と訓練をくぐり抜けなければなれず、質量兵器は誰にでも扱えるという管理局の認識は当たらない。
遅きに失するかも知れないけど、やはり管理局は法律を改正してでも地球連邦から波動エンジンを含めた艦船建造技術を導入しないといけないんじゃないか?
そういう改革を迫られる状況、時期に来ているのではないだろうか?
戦艦クラスや波動砲の技術供与は当然無理としても、波動砲未搭載の小型艦なら可能性がある。
地球防衛軍の艦船は見た目の大きさ以上に戦闘力が高いことは目の当たりに見て知っている。
さらに、武装はショック・カノンやパルスレーザー等の光学兵器中心で、解釈さえ変えれば質量兵器には該当しない。
実弾兵器ならいざ知らず、魔法によらない兵器全てを質量兵器に指定しているのでは、魔法原理主義・高ランク魔導師優位主義と受け取られても仕方ない。
事実、管理局内でもそういう不満の声が上がっている。
特に低ランク魔導師、非魔導師局員からだ。
管理局でも低ランク魔導師、非魔導師局員の方が多いのに、佐官、将官の大半は高ランク魔導師だ。
JS事件後の内部改革でいくらかは是正されているが、中途半端だという声が大きい。
魔法要らずで強大な軍事力を持つ国家と接触し、その多くを敵にまわしている現在、今までのような考えでは到底この“嵐”は乗り切れないのかもしれない。
幾人かの高官は賛同しているが、全体の意識改革は遅々として進まずにいた。
ネックはやはり質量兵器。
拳銃はデバイス扱いで所持できるが、あくまで例外。主流を占める魔導師の間では魔法に拠らぬ武器に対する抵抗が強いのだ。
クロノの顔に翳りがさした。