名前も原作では不明だったので作者のオリジナル設定で公式のものではありません。
無限に広がる大宇宙‥‥
静寂な光と闇に満ちた世界‥‥
そこには様々な生命が満ち溢れている‥‥
死んでいく星もあれば、生まれてくる星もある‥‥
そうだ宇宙は生きているのだ‥‥
我々の太陽系を含む大銀河系もまたさまざまな生命に満ち溢れているのだ‥‥
しかし我々の地球は今、その最期の終末の時を迎えようとしていた‥‥
海は蒸発しつくし、地上の全生命は死滅した‥‥
人類は僅かにその生存圏を地下に求めてほそぼそと生き延びているのだった‥‥
その地球をあざ笑いながら冷酷に見ている目が宇宙にある‥‥
我が銀河系を隔てること14万8000光年、大マゼラン雲の太陽系サンザー‥‥
その第八番惑星ガミラスこそ、今、地球を滅亡に追いやろうとしている悪魔の星だった‥‥
時に西暦2199年、地球は今、最後の時を迎えようとしていた‥‥
宇宙侵略を着々と進めてきたガミラス宇宙艦隊は、ついに太陽系へその魔の手を伸ばし地球に対して遊星爆弾による無差別攻撃を加え続けた。
地球人は地下都市を築き、必死に生き延びていたが、地球防衛軍の懸命の努力にもかかわらず、ガミラス宇宙艦隊は圧倒的に強力であり、地球人の絶滅か奴隷かを要求して情け容赦の無い攻撃を繰り返していた。
次第に戦力を失っていく地球防衛軍にとって最後の頼みは地球防衛艦隊であったが、強大なガミラス宇宙艦隊の攻撃の前に今や地球防衛艦隊は壊滅しようとしているのであった。
遊星爆弾による放射能の汚染は地球の表面はもとより地下をも着実に冒し始めていた。
もはや地球に健康な土地は無くなった。
人類は、ただその絶滅の時を待つだけだろうか?
明日への希望は無いのだろうか?
西暦2199年 地球 地下都市 地球防衛軍第三艦船ドック
第三ドックには地球防衛軍が正式採用しているM-21881式宇宙突撃駆逐艦の一隻、駆逐艦、雪風がその翼を休めていた。
ドック内では技術者と作業員が艦の補修・整備をしている中、一人の技術者に話しかける男が居た。
「どうだ?戦えるようになったか?」
この男こそ、宇宙駆逐艦 雪風の艦長、古代 守その人だった。
「ん?あ、ああ‥‥」
守に話しかけられた技術者はどことなく曖昧に答える。
この技術者の名前は真田 志郎。
古代 守とは士官学校での同期で、親友の間柄だった。
彼はこの第三ドックの技術主任でもあった。
「そうか‥‥三日後には出発する。冥王星海戦だ‥‥これに負けたら地球はもう後が無い。どれくらいの艦が辿り着けるか分からないが、必ず冥王星基地を叩いてみせるさ」
真剣な表情で守は真田に今の地球の現状を話した。
「‥‥」
そんな守の話を真田も真剣な表情で聞いていたが、真田には何か守には言いだせない様な事情を抱え込んでいる様な姿だった。
しかし、守は真田の技術者の腕前を知っており、彼が一流の技術者でもあり、科学者でもあるので、彼の腕と言葉を信じた様子だった。
同じく地球防衛軍第七艦船ドックでは、防衛軍が正式採用しているM-2170式宇宙巡洋艦 三笠が補給・整備を行っていた。
その三笠の艦長室には、防衛軍士官へと成長した月村 良馬の姿があった。
そしてその傍らには、人の姿になったリニスの姿があった。
長年寝食を共にしている中で、いつまでも秘密にしておけることなど、たかが知れている。
あの日‥‥すずかの家で開かれたお茶会の日からすぐ後にリニスが人の姿になれると言う事は良馬にバレた。
最初こそ、驚いていた良馬であったが、その後はすぐに、人の姿になったリニスに懐き、リニスを忍、ノエルに続き、三人目の母のように慕った。
当然、リニス本人も本当の母のように良馬を育てた。
「リニス、君は本当に良いのか?そりゃ、医務官である君が残ってくれると言うのは、心強いが‥‥」
「構いません。私は、貴方の使い魔なのですから、どこまでもマスターである貴方と共に居ます」
良馬はリニスに退艦を勧めたがリニスは頑としてこれを拒否した。
そして、良馬と共に戦場へ向かう信念を曲げなかった。
「これがこの艦の負傷者のリストです」
リニスは良馬に一冊のファイルを手渡す。
それは三笠の医務官を務めているリニスが纏めたこの艦における負傷した乗員の名前が載ったリストだった。
リストは正確に纏まっており、いつ負傷したのか、そして現在における治療と負傷の具合などが書き込まれていた。
「ありがとう」
早速、リニスから受け取った負傷者リストに目をやる良馬。
「彼らも連れて行くんですか?」
怪訝な表所で尋ねるリニス。
医務官として負傷者を戦場へと連れて行く事に対し、反対の様子だった。
「いや、動いても支障がない軽傷者以外は全て退艦させる。恐らく彼らは納得しないだろうが、重傷の者に鞭を打つ様な事は出来んさ‥‥退艦してもらい、今後は治療に専念してもらうつもりだよ。藤堂長官と沖田提督には此方から伝えておく」
赤ペンで退艦させる者の名前に印をつけながらそう答える良馬。
確かに今は、一人でも人手が欲しい現状ではあるが、まともに動くことのできない負傷者を連れて行っても何もできないだろう。
ならば、彼らにはこのまま艦を降りてもらい、今後は治療に専念して、次の戦いに備えてもらおうと思ったのだ。
もっとも、次の戦いというものがあればの話であるが‥‥。
そして本来ならば、リニスも彼らの専属医務官と言うことで退艦させようと思ったのだが、先ほど断られてしまった。
負傷者の退艦リストが出来上がると良馬の下に一本の通信が入った。
「月村艦長、駆逐艦、冬月の高町艦長から通信が届いています」
「わかった。こっちに回してくれ」
「了解」
机の上にあるパソコンが通信画面に切り替わると良馬と同じ黒いジャケットタイプの艦長服を着た青年と防衛軍宇宙艦隊の群青色の制服を着た青年が映っていた。
「高町に沖田か。どうした?」
良馬は学友に話しかける口調で二人の青年に声をかける。
古代 守と真田 志郎が士官学校の同期で親友だったのと同様、良馬と画面の向こうにいる二人の青年、高町 恭介と沖田 一(はじめ)は士官学校の同期で親友の間柄だった。
「月村、お前のほうにも人事部から来たと思うがコレについて、少し話がしたくてな‥‥」
恭介が一枚の書類を良馬に見せる。
「あぁーそれか、確かにうち(三笠)にも来たよ」
その書類には以下のような事が書いてあった。
『長男または家督を継ぐ者は、直ちに申告せよ』
それは人事部が出した合法的な退艦許可証だった。
「それで月村、貴様はどうする?」
「どうって?」
「お前は月村家の長男だし、実家は何代にも渡って続いてきた由緒ある家だ。お前の代で終わりにするわけにはいかないだろう?」
高町と沖田の二人は良馬に退艦を勧めてきた。
しかし、良馬は、
「馬鹿を言うな、艦長である俺が降りれば、誰がこの艦を指揮する?それにお前たちも同じだろう? 沖田、お前だって沖田家の跡継ぎだ。お前のルックスならすぐに再婚相手だって見つかる。親父さんだって、お前が出撃するのには反対したんじゃないか?」
一の父、沖田 十三は今回、出撃する艦隊の総司令を務める人物であり、一はその提督の一人息子だった。
「つい、さっきも高町にも同じようなことを言われたよ。でも、俺の惚れた女はこの世でただ一人、雫だけだ。それ以外の女と一緒になろうとは思わんさ‥‥それに提督の息子だからと言って逃げたら沖田の家の名は後世までに卑怯者・臆病者の代名詞になるだろうよ」
この三人の中で、一は一番早くに結婚したが、ガミラスの遊星爆弾の攻撃により、一は妻を亡くしていた。
そして、一の言葉と態度から一は退艦などサラサラする気がない様子だった。
「高町、貴様も高町家の長男だろう?それに妹さんだってまだ小学生だ。肉親はもうお前しかいないのだろう?お前こそ、退艦するべきなんじゃないのか?」
次に良馬は、恭介に話を振った。
恭介の家族も妹一人を残し、遊星爆弾の無差別攻撃や病気により落命していた。
「俺だって冬月の艦長だ。艦長たるもの最後まで艦や乗組員を見捨てはしない。それにアイツはしっかり者だ。俺に万が一の事があっても、高町の家はアイツが立派に継いでくれるし、店だってきっと再建出来る筈だ」
三人は互いに退艦を勧めたが、既に選択肢は決まっていた。
退艦などしない。
最後の最後まで防衛軍軍人としての責務を全うしようと‥‥
その後、三人は互いに書いた遺書の保管場所を伝えた。
全員戦死した場合は人事部が持っていくことになっているが、もし、誰か一人でも生き残った者が居れば、その者が遺書を遺族へ届けると言う事を決めた。
もっとも、沖田と高町は同じ艦なので、冬月か三笠のどちらかがと言った方が正しいだろう。
(マスターも‥‥そして高町さんや沖田さんもみんな‥みんな、死を覚悟しておられる。三人は、まだまだこんなにも若いのに‥‥アリシアの時も‥そして今回も‥神は何故、何故、若い命を散らせるような無情な運命を課すのですか!?)
三人の男たちのやり取りをリニスはただ黙って見ていた。
そして、この世に神が存在すると言うのであれば、その神の無情を嘆いた。
三日後の出撃を控え、乗員にはそれぞれ一日ずつ最後の半舷上陸(休暇)の許可が下りた。
一日目は三笠副長の三木 幹夫、率いる乗員の半分が休暇となった。
ただ、重傷者についてはまだ受け入れ先の病院が決まらないので、三笠の医務室に居る。
「では、艦長‥‥」
先頭の三木を始めとし、休暇で降りる乗員全員が良馬に敬礼する。
そんな彼らに対し、良馬も答礼する。
「ああ、皆、家族や親しい者たちとの一時を存分に楽しんできてくれ‥‥思い残すことがないように‥‥」
荷物を抱え、三笠を降りる乗員を良馬はその姿が見えなくなるまで、その場に立ち続け彼らを見送った。
そして次の日、半舷上陸二日目、休暇の最終日に、艦長である良馬は副長の三木と交代し、艦を降り、リニスと共に地下都市にある月村の実家へと戻った。
もっとも艦長と言う立場から一番最後に艦を降りた為、時刻は既に夕方となっていた。
艦を降りた良馬とリニスは実家に戻る前に下宿先を提供してくれている中嶋家に寄り、挨拶をしてから実家の月村家に戻った。
地下都市にあるとはいえ、月村の家は他の地下都市の家よりも大きかった。
「ただいま、戻りました」
軍帽を脱ぎ、脇に抱え、良馬は、玄関ホールにて、自分が帰ってきたことを家族に伝える。
リニスは良馬の一歩後ろで付き人のように立っている。
「お帰りなさいませ、良馬様、リニス様」
ノエルが良馬とリニスを出迎える。
「忍様、良馬様とリニス様が戻られましたよ」
ノエルが奥にいる忍に良馬とリニスが帰ってきたことを告げる。
「お帰りなさい、良馬」
「ただいま戻りました。忍さん」
自分たちを出迎えた忍に良馬とリニスは静かに一礼した。
一度、部屋に戻り、軍服からポロシャツにジーンズといったラフな格好でリビングへと入った良馬。
リビングでは、ノエルがお茶の準備を行い、忍が椅子に座っていた。
良馬も静かに椅子に腰かけ、ノエルが準備をしているお茶を待つ。
やがて、二人の前に紅茶の入ったカップが置かれ、二人は互いにカップに口をつけ、お茶を一口飲む。
「明日、冥王星へ向け出撃します」
カップをソーサーヘ置いた良馬がポツリと呟く。
「そう‥ですか‥‥」
忍は良馬の顔を見ようとはせず、自分のカップの中の紅茶を見ている。
「防衛軍としては恐らくこれが最後の艦隊決戦になるかもしれません。しかし、現段階において、地球側が勝てる見込みは‥‥」
良馬が今の地球の‥防衛軍の実情を話そうとした時、
「それじゃあ、今夜は良馬の出陣を祝って盛大に送り出さないとね。ノエル、手伝ってくれるかしら?」
「かしこまりました」
そう言って忍とノエルは良馬の話を最後まで聞くことなく、台所へと姿を消した。
「‥‥」
忍とノエルが去った後、良馬は一人、紅茶の入ったカップを見つめていた。
「やはり、後悔していらっしゃいますか?」
台所で、夕食の準備をしている忍にノエルが語りかける。
「‥‥」
「あの時、良馬様を無理矢理にでも士官学校へ入校させない方が、良かったと御思いなのですか?」
「‥‥」
ノエルの問いに忍はただ黙って黙々と料理の下拵えをしていった。
忍は下拵えをするのと同時に、先ほど、ノエルが言った、良馬が士官学校へ入校を決めたその日のことを思い浮かべていた。
『地球以外に知的生命体は存在しているのか?』
二十世紀から幾度となく議論され、地球人類が太陽系内とは言え、宇宙へと進出してからも引き続き議論されて来たこの話題は八年前、ついに終止符がうたれた。
『ガミラス帝星』と名乗る、外宇宙からの来訪者によって‥‥‥
外宇宙からの来訪者。
この現実に地球人類は大いに沸きたった。
地球人類が長い年月を重ね、開拓してきた宇宙開発事業‥‥しかし、地球の科学にも限界があり、今まで行けた宇宙は太陽系のはずれ、第十一番惑星までであり、ガミラスはそれよりも遥か彼方の宇宙からやってきた。
ガミラス帝国と友好関係を築く事が出来れば‥‥太陽系の外宇宙から来訪した彼らの宇宙船技術を導入出来れば、地球は大きく発展できるだろうと、当時の地球連邦政府の高官達はそう考えていた。
しかし、その夢は脆くも崩れ去った。
それも、地球人類がもっとも恐れていた最悪な形で‥‥
ガミラスは友好どころか、地球連邦政府に対し、無条件降伏と全地球人の奴隷化を要求してきた。
当然地球側としてはそのような要求は呑めるわけがなく、ガミラス側に拒否の姿勢を示した。
その後は、二十世紀に数多くアメリカやヨーロッパで上映された宇宙人による侵略戦争そのものだった。
SF映画では最後の最後で地球は宇宙人の侵略を防いだ形で終わる内容でも、現実は厳しく、そして残酷でガミラスによる一方的な虐殺でしかなかった。
地球がガミラスの放つ遊星爆弾の無差別攻撃にさらされ始めた頃、月村家に良馬とリニス宛ての手紙がそれぞれ届いた。
封筒には地球防衛軍士官学校の烙印が押され、忍は嫌な予感がしつつもその封筒の封を破き、中の手紙を見た。
手紙の内容を見た忍は、顔を強張らせた。
やがて、良馬とリニスが帰宅すると忍は良馬とリニスを呼び、手紙の内容について問いただした。
忍から手渡された手紙の内容を見た良馬は喜んだ。
手紙の内容は宇宙戦士士官学校の合格通知書だったのだ。
喜ぶ良馬に対して、忍は、
「良馬、それはどういうことなの!?」
と、宇宙戦士士官学校の入校について難色を示した。
「この手紙のとおりです。士官学校へ行き宇宙戦士になります」
「いけません!!」
宇宙戦士になるという良馬に忍は反対した。
「っ!? な、何故です!?今、地球はガミラスの攻撃を受けて大変だというのに‥‥?」
「だからこそです!!」
「‥‥」
「今の地球の科学力でガミラスに敵うと思っているの?宇宙に出てもむざむざ殺されに行く様なものじゃない!!私は、絶対に認めませんからね!!」
忍が此処まで良馬が防衛軍軍人になるのを反対した理由は、ただ危険だからというわけではなかった。
ガミラスの遊星爆弾による無差別攻撃は、忍が今まで見守ってきた自分の孫たちの命を奪っていき、その中には、忍の妹のすずかも含まれていた。
常人よりも優れた身体機能を持つ夜の一族でも放射能や遊星爆弾には勝てなかった。
中には良馬の両親の様に事故や病気で命を落とした者もいたが、現在、忍の直系として生き残っているのは良馬を残すのみとなっていた。
「じゃあ、忍さんはこのまま地球がガミラスに滅ぼされても良いって言うの!?こんな時だからこそ、夜の一族の力が必要なんじゃないの!?」
「そうは言ってないわ!!でも、貴方がそんな危ない事をしなくても良いって言っているの!! 貴方は月村の家の次期当主なのよ!? それにリニス!!貴女も良馬が士官学校を受けるのを黙っていたの!?しかも貴女まで良馬と一緒に士官学校へ行くってどういうことよ!?」
どうらや二人は忍に黙って宇宙戦士士官学校の入学試験を受けていた様で、
リニスも良馬同様、宇宙戦士士官学校の入学試験に合格していた。
「わ、私は良馬さんの使い魔ですし‥それにマスターが行くというならば、私がお止めするわけにも‥‥」
「使い魔ならば、主人が道を誤りそうになったらソレを止めるのも使い魔の役割でしょう!?」
忍は怒りの矛先を良馬からリニスへと変えた。
「リニスは関係ないだろう!?大体忍さん、この手紙を見せたと言う事は、勝手に封を開けたな!? いくら身内でもプライバシーの侵害じゃないか!? 僕はいつまでも子供じゃないし、忍さんの人形でもないんだ!!自分の未来くらい自分で決める!!僕は宇宙に行きます!!」
「っ!?‥‥わかりました。どうしても行くというのなら、貴方とは家族の縁を切ります!!」
忍はそう言って部屋を後にした。
良馬との口論の後、忍と良馬の溝は深まり、月村家の空気は物凄く重く、悪くなった。
忍と良馬は互いに一切口を利かないし、顔を見ようともしない。
食事の時間ですら、互いに会おうとはせず、部屋で摂るか、時間帯を互いにずらしている。
そして、良馬が士官学校へ入校する前日の夜。
忍は電気もつけない自分の部屋にて、ウィスキーが入ったグラスを片手に持ち、死に別れた旦那の写真をジッと見つめていた。
(あの子が二度と生きて家に帰ってくることはないかもしれない。それでも、止めることは出来ないのね‥‥ホント、あの子は貴方そっくりね‥‥変な所で義理堅く、困った人を見捨てることができない‥‥やっぱり、あの子は私と貴方の血を立派に継いでいるわ‥‥わかっているのにね‥‥あの子は男の子だもんね‥‥男の子なんだからしかたがないよね‥‥)
その時、忍は何処か吹っ切れた顔をしていた。
翌朝、士官学校へ入校する為、荷物を持ち、月村家を後にする良馬とリニス。
見送り人はノエルのみで、忍は部屋から出てこない。
「それじゃあ、元気でね、ノエル」
良馬自身これが月村家との最後の別れになるのだと覚悟していた。
月村の家の当主は未だに忍であり、その当主である忍が自分と家族との縁を切ると言う事は、つまり勘当と言う事になる。
そうなれば、もう二度と、月村の家の敷居を跨ぐことはない。
でも、後悔はしていない。
それに自分は一人じゃないリニスが居てくれる。
心にそう言い聞かせながら良馬はノエルと別れを告げる。
「はい、良馬様もお元気で‥‥リニス様、良馬様の事をよろしくお願いします」
ノエルはリニスに深々と頭を下げる。
「ノエルさん‥‥分かりました。マスターの事はお任せください」
二人は玄関のドアを開け、門へと向かい歩いていく。
その時、
「良馬!!」
忍の声がした。
良馬が振り向くと、バルコニーに忍の姿があった。
「やるからには最後まで諦めずにベストを尽くしなさい!!そして、必ず生きて帰りなさい!!待っているから‥‥貴方が帰ってくるのを‥‥!」
忍の声援を聞き、良馬は一礼した後、無言のまま、忍に背を向け、歩き出す。
「いいんですか?良馬さん?忍さんに何か言わなくて?」
隣を歩くリニスが尋ねる。
「何か言えば辛くなる‥‥それに、男は簡単に泣いちゃダメなんだよ」
良馬はグッと拳を握りしめ、歩いていく。
(マスターも忍さんも互いに不器用な人なんですね)
リニスはそう思い苦笑しつつ、良馬と共に士官学校へ向かった。
あの日から幾月の年月が流れたが、戦況は一向に好転せず、地球はガミラスの猛攻の前に追い詰められていく。
そんな中、良馬は数々の戦場を渡り歩き、無事に生き残っては昇進を重ねていった。
やはり、常人よりも優れた反射神経や運動神経がものを言ったようだ。
そして、今地球の命運を賭けて、防衛軍最後の決戦が冥王星で行われようとしている。
良馬の出陣を祝う夕食会なのだが、雰囲気はまるでお通夜のように暗く、空気は重い。
ノエルとリニスが無理にでもこの場を盛り上げようとしているが、あまり意味をなしていなかった。
出撃日当日、良馬とリニスは朝一で月村家を後にした。
玄関ホールには、ノエルと忍の姿がある。
「いってらっしゃいませ。御武運をお祈りいたします」
ノエルが深々と頭を下げる。
「ああ、それじゃあ‥忍さん、ノエル‥‥行ってきます」
良馬が忍に顔を向けると、忍は感極まって良馬を抱きしめる。
「例え卑怯者‥臆病者と呼ばれても良い‥‥必ず‥‥必ず無事で生きて帰ってきなさい‥‥良馬」
「忍さん‥‥はい‥‥」
「リニスも良馬の事、よろしくね」
「承知しました」
良馬も忍を抱きしめ返し、暫し抱擁した後、二人はノエルと忍に敬礼をし、月村邸を後にし、宇宙船ドックへと向かった
遠ざかっていく良馬とリニスの後姿を忍とノエルはいつまでも見ていた。
各艦が出撃準備を整えている中、良馬は先日リストアップした負傷者を退艦させる旨を艦内に放送した。
ギリギリで重傷者の受け入れ先は見つかったのだ。
ただ、放送を聞いた重傷者の中には驚き、悔しそうに顔を歪める者も居た。
やがてタラップの周りには退艦する負傷兵達が集まった。
「今回の出撃には、君達を加えない事になった。退艦する事は残念だろうが、此処は命令に従って潔く艦を降りてくれ。 以上だ‥‥」
良馬のこの命令に悔しそうに顔を歪める将兵が何名かいた。
「右向け、右!!‥‥前へ、進め!!」
号令がかけられ、負傷者達は次々と退艦していく。
そんな中、号令を無視して一人だけ艦長の前に駆け寄る負傷兵がいた。
「艦長殿!お願いです!退艦させないで下さい!!私も‥‥私も一緒にお供させて下さい!!」
退艦に立ち会った他の兵士に羽交い絞めにされつつその負傷兵は良馬に嘆願する。
「駄目でありますか!?自分は足手纏いでありますか!?」
「そうだ!!」
悲願する兵に対し、良馬は声をあげ、堂々と負傷した兵を足手纏いだと宣言する。
だが、その後のフォローも忘れない。
「気持ちは分かるが聞き分けてくれ。出て行く者達が地球の為ならば、残る君達も地球の為なのだ。まだまだ尽くして貰う事がある!!それに必ず死ぬとは限らない。また戻ってくるかもしれない。その時は傷を癒し、再び共に戦おう!!」
その負傷兵の肩に手をポンと置き、生き残る重要性と完治した後、再び共に戦おうと言う良馬の言葉を聞き、その負傷兵は目に涙を浮かべた。
「うぅ~艦長殿~」
「では、諸君ごきげんよう!!」
ちょっとした悶着がありながらも、全ての退艦者が艦を降りると、
「下艦者に対し、総員敬礼!!」
艦上には三笠の乗員が全員出て、退艦者に敬礼を行った。
手が動く者は答礼し、中には涙を流す者もいた。
修理・補給、退艦者の退艦が終わり、いよいよ出撃する時が来た。
出撃前に総司令官、沖田 十三が出撃する艦に放送で訓示を述べた。
「出撃にあたり、いまさら改めて何も言うことはない。ただただ諸君らの奮闘に期待する。地球防衛軍の軍人として、全地球市民の輿望にこたえるよう!!‥‥以上だ‥‥全艦出撃!!」
さまざまな思いを胸に秘め、最後の地球防衛艦隊は決戦の地、冥王星へと出撃して行った。
沖田提督の息子、沖田一の容姿は、機動戦艦ナデシコの主人公、テンカワ・アキト(天河 明人)
その妻で、故人ではありますが、沖田雫の容姿は同じく機動戦艦ナデシコのヒロイン、ミスマル・ユリカ(御統 ユリカ) をイメージしてください。
主人公の親友の一人、高町恭介の容姿はリトルバスターズ!の棗 恭介 をイメージしてください。