星の海へ   作:ステルス兄貴

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八十六話 探査、解放

 

ケンタウルス座 α星系 第四惑星

 

 探査船団は惑星周辺の監視にあたり、探査母船、蓬莱丸は惑星自体の探査と監視機材の設営にかかっていた。

 探査は、惑星の大気や地殻の組成、引力、風力、水脈、原住生物等を分析して、人間の行動や居住に適した環境かどうかを調べる一方、地球の資源として有用な鉱物資源の有無も確認する。

 監視機材は地上と宇宙空間に設置し、敵性勢力であればその存在をタキオン通信で中央司令部に自動連絡する。

 この手の監視機材や監視用人工衛星・惑星はこのα星系のみならず、地球を球状に囲むように設置し、太陽系に近づく艦隊や大型天体を監視するのだ。

更に、防衛軍は時空管理局の艦船から得たテクノロジーで異次元空間用アクティブ・パッシブソナーを現在開発中で、異次元空間というトンネルで太陽系や地球に近づこうとする艦船等を探知する試みも進められていた――。

 それと同時に管理局の艦の様に異次元の海へ潜れる次元潜行艦の建造計画案も挙がっていた。

 建造に関しては、管理局の次元航行艦とガトランティスの潜宙艦のデータが参考にされているが、何分、防衛軍としても初の試みの為、未だに慎重な調査と開発が続けられており、実用化はまだまだ先になる見通しだ。

 

 

宇宙戦艦 まほろば 艦長室

 

「‥‥以上がこれまで判明した惑星のデータです」

 

 良馬の目の前にはスクリーンが開かれ、十数人の人物が映し出されていた。

 畝傍の艦長、七波は元より、今回の調査船団司令官、調査を行った研究者、技術者の責任者たちが一同に集まり今回の調査結果を報告し、協議していた。

 

 学会の研究者からは、恒星研究の第一人者である地球連邦大学教授のエドワード・サイモン教授、民間の技術者からは、南部、揚羽、月村等の有力な宇宙開発企業体からのスタッフも少なからず乗り組んでいる。

 太陽系外の惑星の中には有用な資源が埋蔵されていたり、人間の生活に適した環境の星が存在する可能性がある上、各種新機材のデータ取りもできるため、企業にとっても一大開拓事業なのだ。

 打ち合わせ自体は概ね順調で地学班からは、重力は地球とほぼ変わらず、地殻構造もオスニウム、コスモナイト等の貴重な鉱物資源らしき鉱脈や鉱床の存在が確認されているとの報告があった。

 

 続いて、気象班からは大気や気象状況の報告があった。

 大気組成も、窒素の比率が若干多い代わりに二酸化炭素が少ないが、それ以外は地球とほぼ同じで、宇宙服等の特別な装備は要らないようだが、気候は地球の砂漠地帯または乾燥帯に近く、また地下水脈も細いため、居住可能な星ではあるが、居住者の人数には制限があるとの見解がとられた。

 しかし、この問題も長い時間をかければ解決するだろうという結論に至った。

 

「軍関係者や資源採掘関係者の居住はともかく、民間の一般人の移民先としては気候が厳し過ぎると言う事か‥‥」

 

「はい」

 

「まぁ、最初から何もかもがうまくいくわけありませんが、少数とは言え、居住可能で、貴重な地下資源が有ると分かっただけでも良しとしましょう」

 

 確かにサイモン教授の言うとおり、有用な鉱物資源があり、酸素の心配をしないで済むだけでも上出来というものだろう。

 何しろ、外宇宙への本格的な進出はこれが初めてだ。

 地球人類は存在する限り、これから長い時間をかけ、風に乗ったタンポポの種のように天の川銀河系、そしていずれは他の銀河系にも乗り出していくのだろう。

 調査船団の乗員は、今回の調査結果に遥か先のゴールに思いを馳せた。

 そのゴールを見る事はかなわないだろうが、少なくとも自分たちがバトンを握りしめ、走り出したのだ。

 そして、今、自分たちが出来ることは、次世代の若者たちにこのバトンを少しでも優位な形で繋ぐことだった。

 

 調査船団は、予定の調査日程を終え、今回得た調査結果を纏め、防衛軍司令部に調査結果を報告し、船団はケンタウルス座宙域を後にし、故郷である地球へ向け、帰還の途へとついた。

 その途中、補給関係の為、ヤマトが密かに停泊するイカルス天文台に立ち寄った まほろば。

 

「いつまでも真っ直ぐ飛んでいるんじゃない!!それじゃあ、どうぞ撃墜して下さいと言っているようなもんだぞ!!」

 

 モニタースピーカーからは山本の怒号が響く。

 イカルス天文台近くの宙域では、ヤマト配属予定の新人パイロットたちが今日も山本明夫らにしごかれていた。

 どうやら本日の訓練メニューは小惑星帯内の模擬戦の様だった。

 

「坂本!!椎名!!貴様ら、ヒナ共に一体何を教えていた!?」

 

「「すみません!!」」

 

 坂本と椎名は、新人の教導官も務めていた様だ。

 山本の容赦ないダメ出しは新人のみならず、彼らを教えた坂本と椎名にも及ぶ。

 

「絞られているようですね、新人のヒナ鳥たちのみならず、若鳥の坂本たちも‥‥」

 

「ヤマト戦闘機隊の名の重さは、山本が一番よく知っているからね。坂本たちにとってもいい復習になるだろう」

 

 感嘆の声を上げる永倉に良馬が応じる。

 ヤマトが不撓不屈の艦である以上、ヤマト所属の戦闘機隊もまた不屈であることを求められる。

 今は亡きエース、加藤三郎と共にヤマト戦闘機隊を支え、唯一生還した山本とすれば、坂本や椎名たち後輩は、今後のコスモタイガー隊を担う期待の後輩たちだ。 

 散っていった仲間たちの思いを継ぎ、立派なファイターパイロット、否、宇宙戦士に育ってもらいたいという思いは人一倍だ。

 

「さて、それじゃあこちらもそろそろ始めるか‥‥」

 

「そうですね」

 

「これより対空戦闘演習に入る。新人相手とはいえ、手加減なしで行くぞ!!」

 

「はいっ!」」

 

 良馬が鼓舞するように言うや、ブリッジクルーが元気よく返す。

 

「航海長、張り切り過ぎないようにな」

 

「はい」

 

「機関長、機関全速!!」

 

「了解!!機関全速」

 

「新人隊、編隊を組み直しています」

 

「やれやれ、鍛える余地が大分あるな」

 

 新見の観測の報告に、良馬は一人愚痴る。

 些か時間がかかり過ぎだ。敵に奇襲されたら最初の一撃で二割から三割はやられてしまう。

 

「全機突撃!行くぞっ!!」

 

 まほろば と 畝傍が加速しつつ前進を始め、それを目指して、山本率いるヤマトのコスモタイガー新人組が突撃していった――。

 

 

ボラー連邦 首都 ロスクワ 首相官邸

 

 管理局制裁艦隊をいとも簡単に返り討ちにしたボラー連邦では、管理局‥管理世界への侵攻案が議題に上がった。

 ボラー艦隊は時空管理局の侵攻部隊を完膚なきまでに叩きのめした。

 恐らく彼らにはもはや管理世界の治安維持に最低限必要な戦力しかなく、暫くこちらに侵攻してくる事はできないだろう。

 仮に来たとしても、また返り討ちにすればいい事だ。

 いや、その前に連中の本拠地を叩き潰して二度とこの様な愚かなマネが出来ない様にしてやるのも一つの手であった。

 事実、ベムラーゼを含め、軍官僚のほぼ全員が管理局への遠征に賛成の様子だ。

 彼らも弱者の分際で、まるでこの世を支配する神様気取りの時空管理局の存在にウザったさを感じていた。

 それにこれを放置して居れば、管理局は何度もこちらにちょっかいを出してくる可能性もあり、本国を始めとし、ボラー連邦系列の惑星国家の輸送船などが今後も臨検と称した海賊行為の被害を受ける事も十分にありえる。

 何せ、そもそもの発端は、管理局が此方の輸送船に対して海賊行為(強引な臨検)を行ってきたのが始まりだった。

 むしろボラー連邦側は被害者なのだ。

 しかも、最初に海賊行為を行って、その次に来た捜索隊も同じく海賊行為を行って来た。

 見せしめのために連中の艦を拿捕して、乗っていた乗員を処刑し、その映像を連中の根拠地に流した。

 だが、この見せしめは逆効果となり、連中は処刑した者の敵討ちを行ってきた。

 こちらへちょっかいを出す意欲と戦力を失わせれば、今回の戦闘の目的は果たしたようなものだ。

 だが、再び戦力が整えば、今回の件で返り討ちにした連中の敵討ちだと言ってまたもや、艦隊を派遣して来るかもしれない。

 そうなる前に根拠地ごと管理局を‥管理世界を支配してしまえばよい。

 評決を下すまでもなく、管理局への侵攻が決まりそうになった時、

 

「首相閣下!!一大事です!!」

 

 国家中央作戦室のオペレーターが慌てた様子で来た。

 

「何事だ?」

 

「ガルマンで‥‥ガルマン星で、大規模な反乱が起きました!!」

 

「何っ!?どういう事だ!?駐屯軍は何をしている!?」

 

「そ、それが‥‥」

 

 報告では、外宇宙から現れた大艦隊が突如、ガルマン星に押し寄せ、現地住民と協力し、駐屯軍を攻撃し始めたのだと言う。

 

「どこの勢力だ?」

 

「まさか、時空管理局か!?」

 

「いえ、報告では見た事の無い、艦影との事です!!それどころか、ガルマン周辺の植民星にも我々、ボラー連邦からの独立を促す放送を一斉に流しているそうです!!」

 

「ぬぅ~小癪な‥‥」

 

 突如現れた時空管理局ではない第三者の宇宙艦隊‥‥。

 しかも、それはガルマン星にいる駐屯軍を撃破できる程の技術を持っている。

 その力が時空管理局よりも上回る事は明白である。

 ボラー連邦の方針は一転し、管理局よりもこの謎の艦隊の殲滅と反乱を起こしたガルマン星への制裁へと方針転換が行われた。

 ベムラーゼ曰く、「時空管理局とか言う弱小勢力などいつでも滅ぼせる。それよりも今は、我がボラー連邦の庭に入り込んだ新たな虫けらを潰す事を優先する」との事だった。

 これが、この先数年にわたって銀河系を巻き込む大戦乱‥‥ボラー連邦とガルマン‥後のガルマン・ガミラス帝国との闘争の始まりであった。

 

 結果的に管理局はガミラスのおかげで破滅の危機を乗り越えたのだが、当の管理局はその様な事を知る由も無く、ボラー連邦からのいつ来るか分からない報復に怯える日々が続くことになった。

 

 その反乱が起きたガルマン星では‥‥

 

 

銀河系中心付近核恒星系 ガルマン星

 

 つい数日前まで、この地を支配していたボラー連邦の総督府だったビルの前には数万もの人々が群れ集まり、歓呼の声を上げている。

 群衆の視線は、ビルのテラスに立つ数人の人物の中央にいる一人の男に注がれていた。

 歓呼に手を挙げて応えた一人の男はマイクの前に立ち、宣言する。

 

「本日、ガルマン星は暴虐なる支配者、ボラー連邦から解放された事をここに宣言する!!」

 

 人々の喚声が一際高くなった。

 マイクの前に立つ男‥‥元大ガミラス帝国総統アベルト・デスラーは再び挙手し、喚声が鎮まるのを待って再び口を開く。

 

「ボラー連邦の理不尽極まる支配は、もはや過去のものである!!これからはガルマン、ガミラス両民族が手を取り合って新たな国を造り、暴虐なるボラー連邦を打倒して、この銀河に真の平和を齎そうではないか!」

 

 デスラーと共にテラスに立つのは、ガデル・タラン、グラーフ・シュパー、ガル・ディッツら旧ガミラス軍高官とガイデルら、デスラーに協力した反ボラー活動のガルマン人指導者たちだ。

 ボラー連邦に対するレジスタンス活動は長く続いていたが、当然ながら凄まじい弾圧を受け続け、活動の中心的指導者がいなかった。

 宇宙艦船を有して居なかった事も大きな要因でもある。

 そんなガルマン星に現れたのが、遥か昔に宇宙の海原に漕ぎ出していったガルマン人の末裔、デスラー率いる旧ガミラス艦隊と、ガミラス本星等から脱出してきたガミラス人の移民船団だった。

 星の名前は違えど、そこに住んでいたのは、かつての自分たちの先祖の子孫たち‥‥。

 同胞たちの惨状を見聞きしたデスラーは憤怒し、ボラーの駐留艦隊を奇襲し撃滅した後に一気にガルマン星に迫った。

 ボラー連邦は当初、事態をさほど重視しておらず、近隣星系の駐留艦隊を討伐艦隊として派遣したが、ガミラス艦隊はこれも“瞬殺”してしまった。

 この時期、ボラー連邦には同格の敵対勢力は存在せず、軍、特に占領地の駐留軍の士気は弛緩が見られていたようだ。

 喧嘩を吹っ掛けてきたあの時空管理局でさえも、ボラー連邦にとっては、演習相手レベル‥いや、もしかしたらソレ以下かもしれなかった。

 一方、旧ガミラス軍はヤマトや小マゼランにてガトランティス、マゼランでは暗黒星団帝国などの強敵と戦ってきたことで技量・士気は保たれており、しかも祖先の同胞を救うという大義名分もあってか戦意は旺盛で、数で勝るボラー連邦軍を戦術と戦意で圧倒したのである。

 

「手応えがなさ過ぎる。地球の連中はもっとしぶとかったぞ!」

 

 宇宙に漂うボラー艦の残骸を見ながらデスラーはかつての敵と比較しつつボラー連邦軍を酷評したという

 二度の惨敗した現地駐留軍の醜態にボラー連邦の実質的リーダーである連邦首相ベムラーゼは大激怒。

 命からがら本星へ逃げ帰った現地駐屯軍の幹部の役職を即刻解任し、その者たちを粛清した上で、ボラー本星防衛艦隊から一個艦隊を抽出し、“叛徒どもと扇動者を討伐するため”に艦隊を派遣した。

 既にこの時、ベムラーゼの頭の中には時空管理局の存在など当に消えていた。

 本国艦隊の出撃で、不逞なる叛徒どももひとたまりもなかろうと、連邦政府中央や軍首脳部も考えたのだが、戦力を増やしていたのはガミラス側も同じだった。

 

 各地に散らばっていた艦隊が“新天地”に到着したデスラーの後を追って続々とガルマン星に到着、または接近しつつあった。

 しかもこれらの艦隊は行き掛けの駄賃とばかりにと、ボラー軍の補給線を突つき、輸送船団を襲って物資の強奪もやってのけた。

 デスラーはこれら戦利物資のうち、軍事物資は接収したものの、食糧や医薬品などの物資をボラーの支配に喘いでいたガルマンの住民やガルマン星周辺の星々の住民に分け与えたため、否応なしにデスラーと旧ガミラス軍の人気は高まったのである。

 

 祖先を同じくする者同士ということもあるが、ガミラス軍は厳しい軍規を敷いており、住民に狼藉を働いた者は公開銃殺刑にすると総統名で布告したこともあり、住民に乱暴狼藉を働くガミラス兵はいなかった。

 当然ながらガルマン人からの評判もボラー軍人とは段違いで、急速に人心が離れたボラー駐留軍や総督府は孤立無援に陥った。

 そこに、ボラー本国からの艦隊が叛徒と扇動者を討つべくやってきたのだ。

 ここが正念場と判断したデスラーも全艦隊に集結を命じて迎撃準備にかかり、ガルマン人レジスタンスたちもボラー陸上軍との全面対決に備えた。

 ガルマン星から約一光日余りの空域でボラー艦隊とデスラー直率のガミラス艦隊は激突したのだが、ここでデスラーはガミラスのお家芸とも言える“ドメル戦法” を以ってボラー艦隊本隊を急襲。

 旗艦だけでも三十発以上被弾して落伍させ、艦隊指揮官及び幕僚らを戦死させた。

開戦早々に指揮系統が乱れたボラー艦隊にガミラス艦隊は群狼の如く、容赦なく襲いかかり、ボラー艦隊は司令部と戦力の半分を失って退却したのだが、退却するボラー艦隊にガルマン人のヴォルフ・フラーケンが率いる新造間もない次元潜航艦隊が執拗な追撃をかけたため、ボラー首都星に辿り着けた艦は出撃したうちの三割に過ぎなかった。

 この戦いにおいて、フラーケンが率いる次元潜航艦隊はボラー艦の中に他と違う艦影‥しかも、自分らと同じ、次元潜行能力を有する艦を発見し、沈めると言う戦果を得ていた。

 それは紛れもなく、ボラー連邦が管理局から鹵獲したS X級艦、アフトワーズだった。

 やはり、管理局の鹵獲艦よりも純ガルマン・ガミラス製の次元航行艦の方が性能は上だった。

 ボラー連邦はこの戦いで貴重な次元航行能力を有する艦も失ったのだ。

 

 頼みの綱の本国艦隊が敗れたことで抗戦の手段を失ったボラー連邦のガルマン総督府と軍司令部は完全に陥落し、総督はデスラーの親衛隊に逮捕され、デスラーの面前に引き出されて不正蓄財を暴露・断罪された末に住民に対する残虐行為の責任も問われて即決裁判の後、公開処刑された。

 その他にも同様の罪状により、多くの高級士官が処刑された。

 降伏したボラー軍人やその関係者の一部は処刑こそされなかったが、旧式な宇宙貨物船に乗せられて追放された。

 彼らはにはもう帰る星はなかった。

 敗北した中、のこのこと本星へと帰れば、ベムラーゼの怒りを買うは必至。

 言い渡されるのは敵前逃亡罪による死刑判決のみ‥‥。

 当てもない星の海を流離う事になった彼らの末路は恐らく悲惨なものとなるだろう。

 しかし、この宇宙難民となったボラー連邦の者たちの中で、ある一人の男の存在がこの後の管理局に希望と新たなる火種を生み出す事は誰一人として知る由もなかった。

 

 

 ボラー連邦の勢力が一掃されたことで、ガルマン星は長きにわたるボラー連邦の支配下から解放され、今日の解放宣言に漕ぎつけた。

 解放後、デスラーは星の名前を『ガルマン・ガミラス』と改め、同じく二連星の青い星の名を『スターシア』と名付けた。

 演説するデスラーを眩しく見ながらも、タランは自分たちが思っていたよりも早く新天地を得た喜びより、これから待ち受ける難問に身が引き締まる思いだった。

 

(ボラーの支配で荒廃したガルマン星の整備と、再び侵攻してくるであろうボラー連邦の魔の手から同胞を守るための軍備増強、そしてガミラス人とガルマン人の融和。これが一番大切だ‥‥)

 

 デスラーを先頭に、このガルマン星を銀河の中心にするための闘いが始まろうとしていた――。

 

 

 デスラーたちがかつての祖先の星からボラーを駆逐し、新たなる帝国の建国を行っている時、地球防衛軍でも、新たなる新造艦がこの日就役した。

 

 その艦は、艦首の形状はかのアンドロメダ級と同系列艦であることを証明する、並列二門の波動砲砲口が存在しているのだが、艦首下部に更にもう一門、波動砲口らしき開口部が存在していた。

 その艦の艦首直下、居並ぶ軍高官を背に、地球防衛軍司令長官・藤堂平九郎は厳かに宣言した。

 

「本艦の艦名を『春藍』と命名する!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 アンドロメダの時の様な派手な進宙式ではないが、春藍の期待は大きかった。

艦長には、地球防衛軍連合艦隊提督の山南 修が仮就任し、副長には古代の兄、古代 守が仮就任した。

 春藍の進宙式の模様はテレビ放映され、その中継を月村家に居たフェイトとティアナも見ていた。

 

「防衛軍の新型宇宙戦艦‥‥」

 

「しかも、今までの戦艦と違って波動砲の発射口が三つあるなんて‥‥」

 

「やっぱり‥‥と言うか、当然管理局の艦船より遥かに強いんでしょうね」

 

「そうだね」

 

 テレビ画面に映る春藍の姿に率直な感想を述べた。

 

 ヤマト、まほろば、春藍、ネメシス‥‥日本が誇るこの四大宇宙戦艦が今後の地球の切り札となる事は、異邦人であるフェイトとティアナでもすぐに理解出来だ。

 もし、管理局がこの四隻を拿捕、あるいは破壊するには、一体何隻の次元航行艦と人材を生贄にすればよいのか、正確な数は打ち出せないが、管理局の活動に支障をきたすぐらいの数になると言う事は理解できた。

 

 その日の夜、ティアナがお風呂に入っている間、フェイトは部屋にて、姿見と相対していた。

 身に着けているのは私服でも寝間着でもなく、白いマントを纏った通常のバリアジャケットだ。

 フェイトはしばらく瞑目していたが、瞼を開き、鏡に映る自分を直視するや、一言呟く。

 

「――バルディッシュ、真・ソニックフォーム・セカンドバージョン」

 

「イエッサー。マスター」

 

――瞬転――

 

 ほんの一瞬、僅か一秒もしない内にフェイトのコスチュームが変わった。

 それは、管理局員や犯罪者達がよく見知っている二の腕や太腿が露わな、セクシーとも露出過多とも言われるコスチュームではなく、首から下、爪先や手首まで黒を基調に 白と金のラインが入ったとボディスーツ型のコスチュームに包まれていた。

 

「――よしっ、コスチュームは完成だ」

 

 フェイトは姿見に映る自分の姿を見た後、両拳を握り、小さなガッツポーズを作る。

 

 フェイトの真‥‥もとい、新・ソニックフォームが姿を現した瞬間だ。

 脚や二の腕をフルカバーしたことで防御力を増した一方、魔力制御の再設定で在来のソニックフォームとほぼ同等の機動力を確保し、バリアジャケットとしての総合性能は格段に向上した。

 新コスチュームのモチーフは、過日、まほろば、ヤマトに身を寄せていた時に貸与された女性乗組員用制服だった。

 ボディスーツの様なそれは宇宙服や戦闘服としての機能を持ち、ヤマト唯一の女性乗組員だった森雪は、その姿で幾度となく鉄火場を走り回り、負傷して倒れた古代進を庇ってデスラー総統とも対峙したという。

 その話を聞いたフェイトは深く感銘を受け、自分も負けていられないと発奮したかどうかはともかく、その制服の高い実用性にも着目。自らのバリアジャケット改良のモデルに決め、こうしてデザイン変更を行ったのだ。

 

 以来、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンのバリアジャケットは“露出度”を下げ、通常のバリアジャケットもスラックスタイプに転換した。

 後にその事実は、男性局員を落胆させた一方で、女性局員からは凛々しさを増したと好評を博した。

 

 

某宇宙空間

 

 太陽系からアンドロメダ座銀河方面に約27万光年離れた宇宙空間に多数の漆黒の艦船が遊弋しているが、その艦隊のすぐ前には、艦船“だった”金属片や残骸、人間だった有機物が漂っていた。

 漆黒の艦隊の中で一際大きな艦の艦橋で、中央の席に座るスキンヘッドの男に、幕僚らしき、これもスキンヘッドの男が姿勢を正して立つ。

 

「ミヨーズ司令、ガトランティス艦から回収した記録媒体から、地球艦隊と例のヤマトの資料が発見されました!」

 

「そうか、やはりあったか‥‥」

 

 ミヨーズと呼ばれた若い司令官の表情が僅かに綻ぶ。

 しかし、それは物凄く近づかなければ、分からない程で、離れてみると、司令官の顔は普段通りの表情にしか見えない。

 

「取り急ぎ資料を用意しますが、引き続き解析と更なる収集を行います!」

 

「うむ」

 

(フッ‥‥遂に見つけたぞ、地球への道の欠片をな‥‥カザン総司令や聖総統閣下もお喜びになるだろう)

 

 ミヨーズは自らの読みが的中したことに、内心で快哉を上げた。

 地球に敗れたガトランティス軍は、支配下においているアンドロメダ星雲に引き揚げるものと読み、網を張っていたところにガトランティスの敗残艦隊が引っ掛かったのだ。

 

(もっとも、現地に行けたとしても、聖総統御自らお打ちになった手で、奴らの占領軍は大揺れだろうがな‥‥)

 

 ガトランティスとはいずれアンドロメダ星雲の覇権をかけて雌雄を決するつもりでいたが、地球を取るに足らぬ存在と侮った挙げ句、愚かにも元首たるズオーダーが斃されてしまった。

 アンドロメダ星雲にいる彼らの現地占領軍は勢力争いで早くも共食いを始めてくれたし、占領地の奴隷たちも蜂起しつつある。

 地球に対し、国家元首たるズォーダーの復讐戦など夢のまた夢だろう。

 ガトランティスより戦力や技術が劣っていた地球が一体どんな手でズォーダーを討ち取ったかはわからないが、この大宇宙は勝ち残った者こそが強者だ。

 

(だが、我が帝国はそんな愚策はとらない)

 

(十分かつ迅速に地球を調べ、彼らが戦力を回復する前に制圧してやる)

 

 ミヨーズは、前方、太陽系のある天の川銀河がある方向に鋭い視線を射込んだ――。

 

 

ミッドチルダ ベルカ地区 聖王教会

 

 カリムはその日、普段通り自分の執務室にて、執務を行っていた。

 

 そこへ、

 

「騎士カリム!!」

 

 カリムの護衛兼秘書のシャッハ・ヌエラが慌てた様子で飛び込んできた。

 

「どうしたのですか?シスターシャッハ?」

 

「一大事です!!」

 

 カリムとシャッハらが所属する聖王教会内には強硬派‥現代に存在する聖王‥ヴィヴィオを聖王と崇め、古代ベルカ王国を復活させようとする派閥があり、彼らは管理局がボラー連邦との戦いで疲弊した今こそ、管理局にとって代わって自分たちがこの次元世界を支配、運営しようと考えていた。

 強硬派の考えを危険だと感じていたカリムは義弟のヴェロッサ、秘書兼護衛のシャッハ、そして元スカリエッティ一味であり、更生プログラムを受けたセイン、オットー、ディードの五人に彼らの動きを密かに内偵させていた。

 

 シャッハの話では、その強硬派に動きが有ったのだと言う。

 現代の聖王‥高町ヴィヴィオが養母である高町なのはの下を離れて暮らして居る事を知った強硬派は、ヴィヴィオが居る世界‥第97管理外世界へと工作員を送り込み、ヴィヴィオを拉致しようとしているのだと言う。

 

「っ!?シスターシャッハ!!シスターセインたちを連れて、直ぐに第97管理外世界へ向かって陛下をお助けして来て下さい!!」

 

「承知しました!!」

 

 シャッハはまたも、慌ててカリムの執務室を出てセインたちを連れ、急ぎ第97管理外世界へと向かった。

 

「‥‥シャッハ‥頼みましたよ‥‥」

 

 カリムは執務室を出て行ったシャッハを見送った。

 シャッハたちがヴィヴィオを救い出す事を信じて‥‥。

 

 

第97管理外世界 地球 海鳴

 

 なのはの下から離れて過ごしていたヴィヴィオは、預けられた日から元気が無く、勉強以外の時は、公園や神社で人知れず泣いている事が多かった。

 この日もヴィヴィオは神社の境内で一人、泣いていた。

 するとそこへ‥‥。

 

「陛下‥‥」

 

 声をかけられ、ハッと俯いていた顔をあげると、ヴィヴィオの目の前には黒いロングコートを纏い、サングラスをかけた薄気味悪い男たちが数人居た。

 首にはヴィヴィオも見慣れたお揃いのロザリオをぶら下げている。

 男たちがぶら下げていたロザリオは聖王教会の物で、ヴィヴィオは教会の知り合いであるカリムやシャッハ、セイン、オットー、ディードも身に着けていた事からその男たちが聖王教会の者たちである事がすぐにわかった。

 それに自分の事を「陛下」と呼ぶのは、教会の関係者しかいない。

 

「‥‥」

 

 ヴィヴィオは、無意識の内、後退り、男たちから距離を取る。

 

「お迎えに参りました陛下」

 

「さあ、私たちと共にミッドに帰りましょう」

 

 男たちは無表情のまま、ヴィヴィオに近づいて来る。

 

「い、いや‥‥」

 

 ヴィヴィオは震える声で男たちに言う。

 ミッドに帰ると言うが、ヴィヴィオには、この男たちについていけば、もう二度となのはには会えない様な気がしてならなかった。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁー!!」

 

 恐怖が限界に達したのか、ヴィヴィオは悲鳴を上げて逃げ出した。

 

「はっはっはっはっ‥‥どこへ行こうというのですか?陛下?」

 

 男たちは逃げ出したヴィヴィオに慌てる様子もなく、むしろ、余裕がある様な感じで追いかける。

 そりゃあ、大の男と小学校低学年の女子とでは、歩幅も走る速度も段違いである。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

 神社の森をヴィヴィオは滅茶苦茶に走る。

 ただ、足が赴くままに‥‥

 背後から迫ってくる脅威から逃れるために‥‥

 しかし、その途中で、

 

ガッ

 

「あっ!?」

 

 ヴィヴィオが、足に何かが当たった感触が有ったと思ったら、途端にバランスを崩し、ヴィヴィオはその場に転んだ。

 

「うぅ~いたたたた‥‥」

 

 涙目で起き上がるヴィヴィオであったが、それが大きな時間のロスとなり、

 

「鬼ごっこはもう終わりですかな?陛下?」

 

「っ!?」

 

 ヴィヴィオが振り返ると、男たちは自分の直ぐ近くまで来ていた。

 彼女自身、かなり走ったからもう大丈夫だろうと内心何処かでそう思っていたのだが、やはり、体格差と体力差がモノを言った様で、実際は全然引き離せていなかった。

 

「さぁ、陛下。お戻りのお時間です。大人しく我々と共にミッドに来てもらいますよ」

 

 男たちがゆっくりと近づいてくる。

 ヴィヴィオは、転んだ事と、迫り来る恐怖に起き上がれず、尻餅をついたまま、後退る事しか出来なかった。

 

(いや‥‥誰か‥‥誰か助けて‥‥なのはママ‥‥フェイトママ‥‥)

 

 心の中で、この場には居ない二人の母親に助けを求めるヴィヴィオ。

 そんな彼女の指が地面に落ちていた小石程の小さなガラス片の様な物に触れた時、

 それは起こった‥‥

 突如、辺り一面に虹色の輝きが起こり、サングラスをしていた筈の男たちもその眩さに目を閉じたり、手で目を覆ったりした。

 

 ヴィヴィオを強硬派の工作員たちから救出すべく、地球へやって来たシャッハ、セイン、オットー、ディードの四人は海鳴の有る方向から魔力反応を探知した。

 

「この反応は!!」

 

「陛下‥‥」

 

「行きますよ!!」

 

「「「はい!!」」」

 

 シャッハたちは、魔力反応がした現場へと向かった。

 そこで、彼女たちが見たものは、

 

「あぁ~あぁ~目がぁ~、目がぁ~!!」

 

 と、ある有名なアニメ映画に登場する特務大佐と同じような台詞を吐き、目を手で抑え悶え苦しんでいる教会内における強硬派の工作員たちの姿だった。

 しかし、その場にヴィヴィオの姿は見当たらなかった。

 オットーに彼らの捕縛を命じ、残りのメンバーは付近を捜索し、ヴィヴィオを探したが、彼女の姿を発見する事は出来なかった。

 その代わりに、セインが“ある物”を発見した。

 

「こ、これは‥‥」

 

「どうしたのですか?セイン?」

 

「シスターシャッハ、コレ見て」

 

 セインは小さなガラス片の様な物をシャッハに見せる。

 

「‥‥シスターセイン、今は貴女と遊んでいる場合じゃないんですよ。それにそんなガラクタを拾って貴女は一体何を考えているのですか?」

 

 シャッハは顔を引き攣らせながらセインに言うが、決してセインはふざけている訳では無かった。

 

「違いますよ!!コレ、昔ドクターの作った玩具(ガジェット)に埋め込まれていたジュエルシードにそっくりなんですよ!!」

 

「なんですって!?」

 

「まさか、陛下はジュエルシードの影響を受けて‥‥」

 

「でも、なんでこんな場所にジュエルシードが?」

 

 シャッハは、念の為、セインとディードにヴィヴィオの捜索の続行を命じ、オットーと共に捕縛した強硬派の工作員と共にミッドへと戻った。

 しかし、シャッハの心中は重かった。

 内偵を進めていたにも関わらず、強硬派にその一歩先を行かれ、ヴィヴィオを襲撃され、その上、肝心のヴィヴィオを行方不明にさせてしまった。

 この事実を知れば、必ずなのははショックを受けるだろう。

 度重なる心労に今の彼女が耐えられるだろうか?

 しかし、この事実をひた隠しにするには無理がある。

 故に彼女に今回の件を伝えなければならない。

 シャッハにはその事が辛く重かった‥‥。

 

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