星の海へ   作:ステルス兄貴

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八十八話 再会と回転寿司

「ふふふ~ん♪~」

 

この日、ヴィヴィオはやけに上機嫌で、鼻歌を歌いながら、道路を歩いていた。

 

「ねぇ、紅葉さん」

 

「はい?」

 

ヴィヴィオの後ろを歩いている桜花と紅葉は、そんなヴィヴィオに若干戸惑いがちであった。

 

「今日のヴィヴィオさん、やけに機嫌が良いですね」

 

「そうですね」

 

「そんなにBRAVE DUELをプレイするのが楽しみなんでしょうか?」

 

「さあ、どうでしょう?」

 

昨夜の寂しそうな様子から打って変わって、今日の朝食の後、桜花がBRAVE DUELのCMを見て、驚いているヴィヴィオに、「今日やってみますか?」と、誘ってみた所、ヴィヴィオは「やる!!やる!!やってみたい!!」と、凄い勢いで桜花に迫り、こうして今日、ヴィヴィオの初BRAVE DUELが決まった。

ヴィヴィオが、上機嫌な訳にはちゃんと理由が有った。

その一つは勿論、フェイトやティアナから聞いたBRAVE DUELをプレイ出来ることだ。

ミッドにはまだない全立体型の体感シミュレーションゲーム‥‥

想像するだけでワクワクする。

そしてもう一つ、

それは、ヴィヴィオにとって、もう一人の母であるフェイトと会えるかもしれないと言う期待だった。

そもそも、ヴィヴィオがBRAVE DUELを知ったのは、フェイトとティアナからの定期通信の時であり、そのBRAVE DUELがこの地球には存在する。

と言う事は、この地球は現在、フェイトとティアナが滞在している地球と同一の地球ではないかと言う説が濃厚なのだ。

だから、この地球‥海鳴の何処かにフェイトとティアナは居る。

二人はBRAVE DUELをプレイしている様なので、BRAVE DUELをやっていれば、会えるのではないかとヴィヴィオはそう思っていた。

やがて、三人はBRAVE DUELの機器が設置されているHOBBY SHOP Testarossaへと到着した。

 

「おおぉー」

 

初めて見るBRAVE DUELのプレイ機器に思わず感嘆の声が出るヴィヴィオ。

 

「それじゃあ、早速プレイするための手続きをしましょう」

 

桜花の案内の下、ヴィヴィオがBRAVE DUELをするための手続きを行う。

データカートリッジとブレイブホルダーを購入し、次にアバターカードの製作に移る。

カードローダーに自分の性別、年齢、身長、体重を入力し、最後にカードローダーのカメラで、顔写真を撮れば終了。

程なくして、ヴィヴィオのアバターカードがカードローダーのカード取り出し口から出てくる。

 

「これが、私のカード‥‥」

 

出て来たカードを見て、目を輝かせるヴィヴィオ。

準備は出来たので、いよいよ後は、BRAVE DUELをプレイするだけとなった。

ブレイブシミュレーターの方は紅葉が既に予約し、確保してくれたので、すぐにプレイする事が出来た。

ヴィヴィオがBRAVE DUEL初プレイと言う事で、最初は、この体感空間に慣れる事から始められた。

勿論乱入禁止設定はちゃんと行っている。

最初はやはり、操作に慣れるまでぎこちない動きのヴィヴィオであったが、次第に慣れていき、プレイ時間が終わる事には、ある程度の動きは出来る様になっていた。

 

「初回だけど、ヴィヴィオは中々筋が良いですね」

 

初めてのBRAVE DUELが終わり、お店のフードコートにて、三人は飲み物や軽食をとりながら、先程のデュエルを振り返る。

 

「えへへへ」

 

桜花がヴィヴィオを褒めると、ヴィヴィオは照れ臭そうに顔を緩める。

ヴィヴィオがジュースを一口飲んだ後、本題の一つを切り出した。

 

「あ、あの‥‥」

 

「ん?」

 

「桜花お姉ちゃんと紅葉お姉ちゃんは、BRAVE DUELをやって長いの?」

 

「まぁ、そこそこは‥‥」

 

「それじゃあ、他のプレイヤーの人の事とか詳しい?」

 

「うーん‥‥全部のプレイヤーを知っているわけじゃないけど、オンライン対戦で戦った相手位なら‥‥」

 

「そ、それなら、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンかティアナ・ランスターって人を知っていますか?」

 

「「えっ!?」」

 

ヴィヴィオから尋ね人の名前を聞き、桜花も紅葉も唖然とする。

 

「知っているんですか!?」

 

二人の様子から、もしかしたら知っているのかもしれないと思ったヴィヴィオは、二人に詰め寄った。

 

「ええ‥‥」

 

「知っているも何も‥‥」

 

二人は、詰め寄るヴィヴィオに若干押されながらも、

 

「その人が居る所知っていますから‥‥」

 

桜花の言葉に、ヴィヴィオは更に彼女に詰め寄り、

 

「教えてください!!」

 

と、頼んだ。

 

一先ず、ヴィヴィオを落ち着かせた後、二人はヴィヴィオとフェイト、ティアナとの関係を訊ねた。

すると、フェイトはヴィヴィオの養母の一人なのだと言う。

事情を知った桜花と紅葉は早速、フェイトたちがいる月村邸へと向かった。

 

その月村邸では‥‥

 

「‥‥」

 

フェイトは、ヴィヴィオが行方不明との知らせを聞いてから、強いショックを受けて、あてがわれた部屋のベッドで、膝に顔をうずめたり、一日中食事もせずに泣いたりしていた。

 

「フェイトさん‥‥」

 

ティアナが話しかけてもフェイトはそれに対し、答えなくなり、心を閉ざしてしまった。

なのは同様、ヴィヴィオを救う事が出来なかったと言う責任感と罪悪感、何もできなかったという虚無感に押しつぶされてしまっていた。

憔悴したフェイトにどうすることもできなくなってしまったティアナ。

そこに、メイドのノエルが、部屋の扉をノックして入って来た。

 

「失礼します。ハラオウン様。ハラオウン様にお客様が来ています」

 

「お客‥ですか‥‥?」

 

フェイトの代わりにティアナが答えた。

 

「はい」

 

ノエルがフェイトを訪ねて来たと言うお客を通すと、

 

「「こんにんちは」」

 

「桜花に紅葉‥‥」

 

部屋の前に桜花と紅葉が来た。

 

「フェイトさん、今日来たのは、フェイトさんに会わせたい人が居るからなんです」

 

「‥‥」

 

紅葉が月村邸に来た要件を言う。

しかし、フェイトはやはり、何のリアクションを見せない。

そこで、

 

「会わせたい人?」

 

と、ティアナが代理で答える。

 

「はい。入っておいで‥‥」

 

桜花が部屋の外で待っていたのであろう人物に入室を促すと、

 

「フェイトママ?」

 

フェイトの耳に聞き慣れた子供の声が聞こえ、彼女の身体がピクッと反応した。

そして、フェイトよりも先に反応したのは、

 

「ヴィヴィオ!!どうしてここに!?」

 

ティアナだった。

 

「ヴィヴィオ‥‥」

 

ヴィヴィオの名を聞き、ようやくフェイトが始動し、ゆっくりと部屋の出入り口の方へと視線を向ける。

 

「フェイトママ!!」

 

フェイトの視線には此方に駆け寄って来るヴィヴィオの姿があった。

 

「ヴィヴィオ!!」

 

フェイトは無意識の内にヴィヴィオを抱きしめた。

今、自分が抱きしめているのはサイレンの星で見た幻覚では無く、正真正銘、本物のヴィヴィオなのだ。

こうして、ヴィヴィオは何とか、感動の再会を果たす事が出来、フェイトもヴィヴィオを失った喪失感から解放された。

 

ヴィヴィオに事情を聞く前にフェイトは身嗜みを整えるため、一度シャワー室へと向かい、ノエルはお茶の準備を行った。

そして、フェイトたちの部屋で、お茶とフェイトの準備が整った。

 

「それで、ヴィヴィオは、どうしてここに?」

 

まず最初に、フェイトが何故なのはの実家にいる筈の地球からこの並行世界と呼ぶべき、未来の地球にヴィヴィオが居るのかを彼女本人に訊ねる。

すると、やはり、定時連絡でカリムから聞いた通り、聖王教会の強硬派から襲われた事を話した。

しかし、その後の事は分からず、気がついたら、この世界の道端で倒れており、倒れている所を桜花に助けてもらった事をフェイトとティアナに話した。

そして、昨夜は桜花の家に泊めてもらった事もフェイトに話した。

ついでに、紅葉と一緒に寝た事もヴィヴィオは話した。

 

「そうだったんだ‥‥」

 

ヴィヴィオから話を聞いたフェイトは、桜花と紅葉の方に顔を向け、

 

「桜花、紅葉。娘が‥‥ヴィヴィオがお世話になりました」

 

と、深々に頭を下げ、桜花と紅葉にお礼を言った。

 

「い、いえ、そんなっ!!当然の事をしたまでですから」

 

年上の人から頭を下げられて、お礼を言われた桜花は若干慌てふためく。

何はともあれ、ヴィヴィオはちゃんと保護者と再会できたのであるから、良しとしよう。

 

「それで、ヴィヴィオは今後どうするんですか?」

 

紅葉がフェイトに今後のヴィヴィオの処遇を訊ねた。

まぁ、普通に考えれば、保護者と再会できたのだ。このまま一緒に過ごすのが普通なのであるが、ここはフェイトの家では無く、お世話になっている他所様の家‥‥

フェイト一人の独断では決められない。

全ての決定権はこの家の主である忍にあるのだ。

しかし、忍も訳を話せば、ちゃんと分かってくれる筈だ。

そして、案の定忍は、月村邸でのヴィヴィオの滞在を許可してくれた。

加奈江には桜花から、ヴィヴィオの保護者が無事に見つかったと、電話を入れた。

ヴィヴィオの件を聞き、加奈江は少し残念がっていたが、ヴィヴィオに「またいつでもいらっしゃい」と、言うと、ヴィヴィオは嬉しそうな顔でお礼を言った。

 

翌日、フェイトはヴィヴィオの無事をミッドのなのはに知らせるために、良馬とリニスに無理を言って、ミッドとの通信回路を開いてもらった。

ミッドの本局の管制室では、先日地球防衛軍との定期通信は終わった筈で、次の定期通信まで日数が有る筈なのに、どういう訳か、今日いきなり、防衛軍側からのコンタクトが有った。

オペレーターが通信回路を開くと、モニターにはフェイトが映っており、彼女は急いでクロノないし、はやてに取り次いでほしいとオペレーターに言った。

暫くしてはやてが通信室へと呼び出され、やって来た。

 

「どないしたん?フェイトちゃん?」

 

突然呼び出されたはやては、何故、定期通信でもない日にフェイトが管理局に通信をいれてきたのかを訊ねた。

 

「はやて!!ヴィヴィオが‥‥」

 

「ヴィヴィオがどないしたん?」

 

「ヴィヴィオが見つかったの!!」

 

「ホンマか!?フェイトちゃん!!」

 

「うん。ほら、ヴィヴィオ」

 

フェイトに促され、ヴィヴィオが画面に映る。

 

「はやてお姉ちゃん」

 

「ホンマにヴィヴィオなんか?」

 

「うん。私は今、フェイトママの所に居るよ」

 

笑みを浮かべてはやてに手を振るヴィヴィオ。

 

「ミッドにはフェイトママと一緒に帰るから、なのはママに心配はいらないよって伝えて」

 

この場に居ないなのはに心配をかけたため、こうして自分は無事だと言う事をもう一人のママ(なのは)に伝えてほしいと言った。

ヴィヴィオの無事を知らせる通信を終えたはやては、急いでなのはが入院している病院へと向かった。

 

「なのはちゃん!!」

 

はやてがなのはのいる病室へと入ると、そこには、同じ教導隊に所属しているヴィータが居た。

恐らくなのはの見舞いに来ていたのだろう。

 

「はやて、どうしたんだ?そんな急いだ様子で?」

 

ヴィータははやての慌てた様子に首を傾げるが、当のなのは本人は全くの無反応。

なのはは、目が曇り、その下には隈がうっすらと浮き上がり、髪の毛はボサボサ、頬も痩せこけている。

看護師や医師の話では、満足に食事もとらないのだと言う。

今のなのはの様子は、十一歳の頃、当時アンノウンとされたガジェットⅣ型によって負傷し、魔法を使い、空を飛ぶどころか、歩けなくなるかもしれないと言い渡された時と同じ‥‥いや、それ以上に傷ついていた。

しかし、この後の話を聞けば、なのはは、復活するとはやては確信していた。

 

「なのはちゃん、落ち着いて聞いてや‥‥ヴィヴィオが‥‥ヴィヴィオが見つかったんや!!」

 

「それ、本当かよ!?はやて?」

 

なのはよりも先にヴィータが驚くように反応した。

 

「間違いない。私もついさっき、会って来たばかりや!!」

 

「それじゃあ、ヴィヴィオは今、ここ(ミッド)に居るのか?」

 

「いや、残念ながらミッドにはおらへん」

 

「それじゃあ何処に‥‥?」

 

ヴィータがヴィヴィオの居場所をはやてに聞こうとした時、

 

「ヴィヴィオは‥‥ヴィヴィオは何処‥‥何処に居るの‥‥?」

 

先程まで、ベッドの上で放心状態だったなのはが、いつの間にか、はやての身体にしがみつき、ヴィヴィオの行方を聞いていた。

 

「な、なのはちゃん、いつの間に‥‥」

 

「そ、それでヴィヴィオは今どこに居るんだ?はやて」

 

なのはの行動に若干引き気味のはやてと肝心のヴィヴィオの行方を訊ねるヴィータ。

 

「それがな、ヴィヴィオは今、フェイトちゃんと一緒や‥‥もう一つの地球に居るんよ」

 

「あの世界にか!?」

 

 ヴィヴィオが例の第二の97管理外世界の地球に居る事をはやてから聞いたヴィータは驚きの声をあげ、なのはは目を見開いた。

 

「これが、さっき私が会って来たヴィヴィオの映像や‥‥」

 

 はやては、デバイスに録画されたヴィヴィオの映像を流す。

 そこには、確かにフェイトと一緒に居るヴィヴィオの姿があった。

 

「ヴィヴィオ‥‥」

 

 ヴィヴィオの無事な姿を見て、なのはの目からは自然と涙が流れる。

 

「良かったな、なのは」

 

 ヴィータがなのはに声をかけると、なのはは小さく頷く。

 今こうして、ヴィヴィオを抱きしめる事も声をかける事も出来ないが、ヴィヴィオが無事に見つかった。

 その事が、なのはを立ち直らせた。

 

「ただ、ヴィータになのはちゃん。この事はもう少し、オフレコにしといてや」

 

「ん?どうしてだよ?はやて」

 

「もし、ヴィヴィオがあの世界に居ると分かれば、管理局よりも聖王教会の方が何をしでかすか、わからんからや‥‥」

 

ヴィヴィオの件に関しては、はやては管理局よりも今は教会側に注意が必要だと言う。

 

「でも、はやて。教会は次元航行艦を持ってないぜ」

 

 ヴィータの言う通り、聖王教会は管理局と違い、次元航行能力を有する艦船を所有しておらず、他の世界への布教活動には、一般人同様次元航行船か管理局の次元航行艦に便乗して他の世界へ渡っている。

 故に、それほど脅威ではないだろうとヴィータは言うが、

 

「もし、教会の強硬派の連中が、管理局に金を渡して、次元航行艦をチャーターしたらどうや?」

 

「‥‥」

 

 はやての指摘にヴィータは何も言えなかった。

 確かに一般の次元航行船よりも管理局の次元航行艦ならば、渡航記録も操作できるし、普通の船よりかは安全で尚且つ長距離の航行が可能だ。

 教会側はヴィヴィオ(聖王)の身柄が確保出来、管理局側としても金は手に入る、さらに第二の97管理外世界の位置が特定できるかもしれないと言う事で利害関係は一致する。

 まぁ、必ずしも、上手い具合に第二の97管理外世界の位置を特定できるかは分からないが‥‥

 兎も角、教会の強硬派の活動を完全に止めるか、フェイトたちが無事にミッドに帰って来るか、そのどちらかまでは、ヴィヴィオが第二の97管理外世界に居る事は秘密にされた。

 

 

 ここで場面はミッドから地球へと変わる。

 

 

 月村邸のリビングでは、ヴィヴィオとユリーシャの二人がボードゲームを興じていた。

 

(フェイトさん‥‥)

 

 二人の姿を見て、ティアナがフェイトに念話で話しかける。

 

(何?ティアナ)

 

(この光景ってある意味凄いですよね‥‥)

 

 フェイトとティアナの前には、ミッド(ベルカ)とイスカンダルの王族がこうして和気藹々とボードゲームを興じているのだから。

 そこへ、

 

「ティアナさん」

 

 忍がやって来た。

 

「なんでしょう?」

 

「はい、コレ‥整備に出していた貴女のデバイス」

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 そう言いながら忍はティアナに整備し終えたクロス・ミラージュを手渡す。

 

「‥‥」

 

 その様子を見ていたヴィヴィオは、ティアナを羨ましそうに見ていた。

 

「ん?どうしたの?ヴィヴィオ」

 

 ユリーシャが首を傾げながらヴィヴィオに訊ねる。

 

「‥‥私、まだデバイスを貰えないの‥‥」

 

 ヴィヴィオはまだ小等部に上がったばかりの年齢故か、デバイスを貰っていない。

 しかし、二人の母や周囲の知り合いは皆、デバイスを持っている。

 子供さの願望なのか、そうしたデバイスを持っている人に囲まれていると、自分も専用のデバイスを欲しくなってしまうのだ。

 

「それじゃあシノブに頼んでみたら?」

 

 ユリーシャが、ティアナのデバイスを整備した忍に自分(ヴィヴィオ)のデバイスを製作してもらったらと提案した。

 

「うーん‥‥作ってくれるかな?」

 

「それは分からない。でも、ダメ元で頼んでみたら?」

 

 ユリーシャにそう言われてヴィヴィオは忍の下へと歩み寄る。

 

「あ、あの‥‥忍さん‥‥」

 

「あら?ヴィヴィオちゃん。どうしたの?」

 

「その‥‥私にもデバイスを作って貰えますか?」

 

「「「えっ!?」」」

 

 ヴィヴィオの頼みに忍、フェイト、ティアナの三人は驚いた。

 

「えっと‥‥」

 

 忍は、チラッとフェイトとティアナの方を見る。

 忍としては別に作っても構わないのだが、勝手に作って与えても良い物なのか、その点に関しては、判断に困った。

 どうしたものかと、困っている忍に助け舟を出したのはフェイトだった。

 

「ヴィヴィオ、突然どうしちゃったの?」

 

 フェイトがヴィヴィオにデバイスを欲しがる理由を訊ねる。

 

「だって、なのはママもフェイトママ、はやてお姉ちゃんにティアナさん、スバルさんにノーヴェたちも自分のデバイスを持っているんだよ‥‥それなのに、私だけまだデバイスが無いんだもん」

 

 ヴィヴィオは少し、むくれる感じでデバイスを欲しがる理由をフェイトに話す。

 理由を聞き、忍やティアナは何となくヴィヴィオの気持ちが分かった。

 

((そういえば、私にも同じ様な頃が有ったわね‥‥))

 

 二人の心はまさにシンクロしていた。

 

「えっと‥‥ヴィヴィオ、それはミッドに帰ってからじゃダメなの?」

 

 フェイトはデバイスをあげるのはミッドに戻ってからでも良いじゃないかと言うが、

 

「むぅ~‥‥」

 

 ヴィヴィオは納得していない様で、頬を膨らませる。

 フェイトにしては珍しく困惑した。

 別にデバイスを所有するのに年齢制限等は存在しないが、忍が作るとしたら、この世界のデバイスだ。

 それをミッドで普通に使用できるのかと言う問題があった。

 リニスがこの世界でデバイスを製作している事から作れないと言う訳ではなさそうだ。

 この世界製のデバイスをミッドに持ち帰ってそれが新たな揉め事にならない保証は無い。

 

(どうしよう‥‥)

 

 珍しくヴィヴィオも今回ばかりは折れそうにも無い。

 何とかならないかと思っていると、

 

「それなら、私が何とかしましょう」

 

 と、フェイトに助け舟を出したのはリニスだった。

 

「リニス」

 

「私なら、ミッド製のデバイス製作に心得がありますし、何とかなると思います」

 

「うーん‥‥そう言う事だけど、フェイトさんはどうかな?」

 

 最終的な決定権はフェイトに託された。

 しかし、ヴィヴィオのウルウル攻撃に耐えられるはずもなく、フェイトは、

 

「じゃ、じゃあ‥リニス‥‥お願いできる?」

 

「分かりました」

 

 と、リニスにヴィヴィオのデバイスの製作を依頼した。

 元々自分(フェイト)のデバイスの製作者はリニスだったので、変な物は作らないだろうと思い、決断したのだ。

 

「ヤッター!!」

 

 自分のデバイスを作って貰えると言う事で、ヴィヴィオは大はしゃぎだった。

 

 ヴィヴィオの保護者が見つかったと言う事で、桜花と紅葉がその再会を祝して、ヴィヴィオを外食へと招いた。

 と言っても、費用は中嶋夫妻から貰った物だが‥‥。

 

「ヴィヴィオはお寿司って食べたことありますか?」

 

「うん、あるよ」

 

 地球育ちの養母(なのは)と、地球での生活経験のあるもう一人の養母(フェイト)がいるため、ヴィヴィオは地球の日本食というモノには、馴染みがあった。

 その為、桜花と紅葉はヴィヴィオを寿司屋に招いた。

 と言っても、カウンター席の寿司屋ではなく、回る方の寿司屋であったが‥‥。

 ユリーシャも寿司と言う食べ物に興味があるのか、一緒に来た。

 

「ここのお寿司は中々、美味しいと評判なんですよ」

 

「へぇー」

 

 ヴィヴィオが桜花と紅葉の後をついて行き、コンベアーの上をチラッと見ると、そこには、ケーキ、プリン、メロンのスイーツ等が流れていくのが見えた。

 寿司をまだ知らないユリーシャはコレが寿司なのかと思い、特に疑問を抱かなかったが、

 

「?」

 

 ヴィヴィオは、自分が入ったのは、確か寿司屋であり、喫茶店ではない筈だと思い、紅葉に訊ねる。

 

「あ、あの‥紅葉お姉ちゃん」

 

「何でしょう?」

 

「私たちが入ったのは、確かお寿司屋さん‥‥だよね?」

 

「ええ、そうですよ」

 

 紅葉からはここが間違いなく寿司屋だと言われ、もう一度コンベアーを見ると、今度はちゃんとした寿司が流れて行った。

 

 一同は、店員さんの案内の下、席に着いた。

 

コンベアー

ヴィヴィオ 机 紅葉

ユリーシャ 机 桜花

    机

通路

 

 席はこの様な配置である。

 

 こうして、ヴィヴィオたちの食事会は幕を上げた。

 

「サーモ‥‥」

 

 桜花がコンベアーで流れて来たサーモンの握り寿司を取ろうとしたら、紅葉が先にひょいと取ってしまった。

 

「‥‥」

 

 桜花が唖然としている中、紅葉は先程取ったサーモンの握り寿司をむしゃむしゃと食べた。

 

「マグロ‥‥」

 

 続いて、桜花がマグロの握り寿司を取ろうとしたら、またも紅葉が先にひょいと取ってしまった。

 

「‥‥」

 

 コンベアーから取ったマグロの握り寿司をむしゃむしゃと食べている紅葉をまたも唖然とした表情で見る桜花。

 しかし、何時までも唖然としている桜花では無かった。

 

「紅葉さん‥一体何のつもりですか‥‥?」

 

「何がです?」

 

 桜花は額に青筋を浮かべて紅葉に詰め寄るが、紅葉は素知らぬ顔で華麗にスルーしている。

 

「私が取ろうとしたのをわざと取っているでしょう!?」

 

「気のせいです」

 

「むぅ~ヴィヴィオさんたちもなんか言ってよ!!」

 

 桜花は年下のヴィヴィオたちに援護射撃を求めるが、

 

「ん?」

 

「はてな?」

 

 二人のお姫様たちは突然話題を振られ、首を傾げるが、彼女たちの前には、この寿司屋でも値段が高い寿司が乗っていた絵皿が積まれていた。

 

(しまった!!先にツッコむべきは、こっちだった!!)

 

(見事に高い物ばかりを食べていますね‥‥流石王族)

 

 桜花と紅葉はここに来て、回転寿司の皿について先に説明しておくべきだったと思った。

 

「セコいぞ!!ずるいぞ!!ずっこいぞ!!」

 

 ヴィヴィオたちが援護射撃の戦力とならないと判断した桜花は実力行使に移った。

 空腹のせいか、既に桜花のキャラが崩壊しつつある。

 桜花と紅葉のオラオラオラオラが行われていると、

 

「でも、オウカがその席を選んだのはオウカ自身のミスなんじゃないのかな?」

 

 ユリーシャが首を傾げながら、桜花に訊ねる。

 しかし‥‥

 

「まさか、私の奥義の封印を解くことになるとは‥‥」

 

 桜花はユリーシャの言葉を軽くスルーして、紅葉をやる(殺る)気満々であった。

 

「ならば、それで私に右手をつかわせたら、席を変わってあげましょう」

 

 と、紅葉は自信満々で受け答える。

 寿司屋で一触即発な雰囲気になる中、二人のプリンセスたちは、我関せずの様子で寿司を堪能している。

 そこへ、

 

「ふ、二人とも何やっているの?」

 

 フェイトとティアナが来た。

 フェイトとしては、やはりヴィヴィオが心配だったのと同時にこの世界の回転寿司と言うモノに興味があったのだ。

 それはティアナも同じであった。

 

「それで、どうしたの?」

 

 フェイトが桜花に事情を聞くと、

 

「えっ!?それなら注文パネルを使えばいいんじゃない?」

 

 と、冷静に指摘すると、

 

「あっ!?」

 

 ここで、桜花は注文パネルの存在に気がついた。

 

 桜花が注文パネルで寿司を注文している中、

 

「およ?フェイトさん?」

 

 フェイトは突然、自分の名前を呼ばれて、声のした方を向くと、

 

「やっほー」

 

 そこには、フェリシアとセフィリアの姿があった。

 

「フェイトママそっくり‥‥」

 

 ヴィヴィオは初めて見たフェリシアに驚き、目を大きく見開く。

 

「フェリシアさんにセフィリアさん。お二人で夕食ですか?」

 

「うん。そうだよ」

 

 母との夕食‥しかも、外食で、食べるのがお寿司と言う事で、フェリシアはご機嫌な様子。

 

「えっと‥‥」

 

 状況がつかめないヴィヴィオは困惑している。

 

「フェイトママ、この人はママの知り合い?」

 

「いやいや、ただのそっくりさんだよ。まぁ、知り合いと言えば知り合いだけどね」

 

 フェイトが言う前にフェリシアが自分とフェイトの関係をヴィヴィオに言った。

 フェイトとティアナは彼女がこの世界におけるフェイト、またはアリシアの子孫と言う事実を知っているのだが、ややこしくなるので、言わなかった。

 

「君は、フェイトの事を『ママ』と言っていたけど、もしかして、フェイトの娘さん?髪の毛も金髪だし‥‥」

 

 フェリシアはフェイトとヴィヴィオが共に金髪と言う事で、ヴィヴィオがフェイトの娘だと思った。

 まぁ、フェリシアの言う事も決して外れでは無い。

 フェイトはフェリシアにヴィヴィオとの関係(養女と養母)を話、ヴィヴィオにフェリシアの事を紹介した。

 

「それじゃあね~ヴィヴィオ~」

 

 フェリシアとセフィリアは、ヴィヴィオに手を振って自分の席へと去って行った。

 そして、フェイトとティアナも子供たちの邪魔はしない様にと近くに別の席を設け、そこで食べることにした。

 

 

 注文パネルで注文を終えた桜花は、

 

「注文するとここは何が運んでくるんだろうね?」

 

「ん?」

 

「ほら、お店によっては船とか電車とかあるやつ」

 

 当初、質問を受けた紅葉は桜花の質問の意図が読めなかったが、寿司を運んでくる装置だと知ると、

 

「ああ、アレは店の武器の一つですからね。意表をついて裏を巡り巡って‥‥店員が持ってくるとか?」

 

「ちょっと、ソレ、武器を捨てているよ!!」

 

 夢の無いオチをかました。

 すると桜花が注文した寿司がデフェルメされたUFOに乗って空からやって来た。

 UFOはテーブルに着くと、屋根の部分が空き、そこに寿司が乗った皿があった。

 桜花が皿を取ると、UFOは再び宙に舞い上がり、店の奥へと姿を消した。

 

「‥‥」

 

 桜花が恐る恐る寿司に手を伸ばすと、

 

「キャトられたマグロがこんな姿に‥‥」

 

 紅葉はまるで拝むように手を合わせる。

 

「ちょっ!!やめてよっ!!これから食べるのに!!」

 

 食べにくくなる発言をした紅葉にツッコム桜花だった。

 

 その後も、皆は次々と寿司を平らげて行くが‥‥。

 

「そろそろ皿が邪魔になって来たな‥‥」

 

 テーブルの上には皆が食べた寿司の皿が所狭しと乗っている。

 

「ここのお店はこの穴へ皿を入れると簡単に集計できる上に面白いサービスが有る様です」

 

 紅葉が、店のサービスを説明しながら、コンベアーの下にあるシューターの様な所へ皿を入れていく。

 

「お皿が一定数になったら、スキャンして‥‥」

 

「スキャン?」

 

 桜花が首を傾げると、

 シューターに入った皿が一定量になったのか、桜花の頭上にUFOが再び来ると、

 

カシャ

 

 カメラのシャッターの様な音が鳴った。

 

「次にサンプル型のポーズを選ぶと‥‥」

 

 紅葉が注文パネルを操作して、画面に表示されているポーズを選ぶ。

 すると、シューターの隣にある穴からガチャポンのカプセルが出される。

 

「カプセルに入ってフィギュアが作製されて出てくる」

 

「すごい!!」

 

「「おおぉぉぉー」」

 

「更にこのフィギュア、頭部の部分にはマグネットが入っているので、小物アクセを別に買ってつけられるらしいです」

 

(えっ!?ここ、お寿司屋さんだよね?)

 

 最初に見たスイーツと言い、このフィギュアのシステムと言いここが本当にお寿司屋さんなのかと少し疑問に思えて来たヴィヴィオだった。

 

「それじゃあ、早速小物アクセを買って来ようかな」

 

 と、フィギュアをゲットした桜花はお店の玄関口付近にある小物のガチャポンの所へと向かい、ユリーシャもついて行った。

 

「それじゃあ、私はちょっとお手洗いに」

 

 紅葉はお手洗いの為、席を立った。

 

「あっ、ヴィヴィオさん」

 

「ん?何?」

 

「もし、まだ食べられそうならお皿の枚数を稼いでおいてくれませんか?」

 

「あいさー」

 

 皆が席を立った後、一人残されたヴィヴィオは、

 

キュピーン!!

 

 何かを思いついた様で、にやけ顔で注文パネルを操作した。

 そして、ヴィヴィオが注文したお寿司は‥‥

 

大トロ

 

特上ウニ

 

アワビ

 

キャビアの軍艦

 

 等、お店の寿司ネタでも上位の値段に当たるネタばかりであった。

 

(うましっ!!)

 

 特上寿司を平らげたヴィヴィオはその皿をシューターへと落とし、証拠を隠滅した。

 

「あっ?枚数たりましたね」

 

「よく食べれましたね」

 

「うん」

 

 隠滅と同時に皆が席に帰って来た。

 

「さて、そろそろ帰りましょう」

 

「そうだね~」

 

 皆はお腹いっぱいに寿司を堪能したのか満足そうである。

 ユリーシャも初めての寿司体験であったが、満足そうであった。

 しかし、彼女はどちらかと言うと寿司よりもデザートのパフェの方が気に入ったらしく、全種類のパフェを食べた。

 将来、紅葉が翠屋を再建し、ガミラスと国交を結ぶことがあれば、きっとそこにはユリーシャ、ジュラ、メルダの三人の姿があるかもしれない。

 

「会計‥‥と‥‥これは‥‥」

 

 合計金額が記された明細書を見た桜花は、

 

「うむ‥‥やはり、最初にヴィヴィオさんたちが絵皿を食べ過ぎた様ですね‥‥」

 

 と、細かな所まで突っ込まなかった。

 

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