星の海へ   作:ステルス兄貴

98 / 294
八十九話 バイキングレストランの悲劇とヴィヴィオのデバイス

 

 

 ヴィヴィオたちが回転寿司に行っている中、良馬、ギンガ、加奈江、源三郎の四人は、バイキングレストランへと来ていた。

 後で桜花が聞けば、『ズルイ!!』と言いそうだが、桜花たちも回転寿司に行っているのだから、お相子だろう。

 O・M・C・S(オムシス)の量産のおかげで地球の食糧事情は日に日に改善されていき、外食産業もガミラスとの戦争前の様に次々と出店するようになった。

 そんな中、四人はとあるバイキングレストランへと入り、夕食をとった。

 

「おかわり!」

 

「わ、私も‥‥」

 

「「は、ははは‥‥」」

 

 山のように詰まれた料理を平らげまた料理を取りに行った加奈江とギンガの中嶋親子。

 元々ギンガはよく食べる方だし、加奈江の方も前世の頃、同様に食欲は転生しても変わらなかった。

 ガミラス戦役時の食糧事情は加奈江やギンガにとってはまさに地獄であった。

 その地獄から解放された今日、その食欲は留まる事を知らない。

 

「げ、源三郎さん‥‥」

 

「なんだ?」

 

「会計大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ、そのためにバイキングの店を探したんだ。問題ない」

 

 大丈夫とは言うが、顔を引き攣らせている源三郎。

 結構ギリギリの賭けなのかもしれない。

 足りなかったら、その分を補おうと思った良馬だった。

 

「でも、お会計以前に大丈夫でしょうか?店員さんの目が怖いんですけど‥‥」

 

 ハラハラと言うか、『どんだけ食うんだ?こいつら?』と、心の中でツッコミを入れていそうな店員たちの様子が気になる良馬。

 

「気にするな、それに限界まできたら、流石に店員が止めに来るだろう」

 

「ただいま。二人共もういいの?男の人なんだし、食べ足りてないんじゃないの?」

 

 高く盛られた料理が乗った皿を持ちながら加奈江が良馬と源三郎に訊ねる。

 

「「いや、気にしなくていい」」

 

「そう?」

 

 そう言って皿に高く盛られた料理を食べ始める加奈江とギンガ。

 彼女たちが食べている様子を見ているだけでお腹いっぱいになりそうだ。

 大量の料理は次々と加奈江とギンガのお腹の中へと消えていく。

 この二人の胃袋はブラックホールなのではないかと疑うほどだ。

 

「ふぅ~ご馳走様!」

 

「私も」

 

 二人の豪快な夕食はようやく終わった様子。

 後ろにいた店員たちもホッと安堵の息を吐いている。

 

「それじゃあ、次はデザートね!」

 

「はい」

 

「「「えっ!?」」」

 

 まだいけるのか!?思わず声が出てしまう良馬、源三郎、店の店員たち。

 そんな皆の様子に気がつくことなく、デザートコーナーへと意気揚々と向かう親子の姿がそこにあった。

 

その後‥‥

 

「源三郎さん‥‥俺は初めて見ました‥‥バイキングのお店で店員さんから『帰ってください』って言われたの‥‥」

 

 夜の海鳴の街を歩きながら良馬は源三郎に語り掛ける。

 

「だ、だからもう言わないでよ!恥ずかしいんだから!!」

 

 加奈江が赤面しながら言うと、

 

「それはこっちの台詞だ」

 

 源三郎が冷静に突っ込んだ。

 デザートコーナーで加奈江、ギンガの中嶋親子がデザートたちを蹂躙していると、店長が従業員数人を引き連れて頭を下げられた。

 このままじゃ店が潰れるから帰ってくれと言われ、店長らしき人は泣きながら土下座しようとしていた。

 そのおかげで、一緒に来ていた源三郎と良馬も公衆面前の前で大恥を掻く羽目になった。

 

「そ、それは謝るけど‥‥」

 

「まぁ、これでお前たちはあの店のブラックリストに載ったわけだ、もう行けないな」

 

「う、うそっ!?そんな~あのお店の料理美味しかったからまた来ようと思っていたのに!!」

 

「諦めろ、あっちも商売なんだ。お前とギンガがしょっちゅう来たらすぐに閉店に追い込まれるぞ」

 

 店長自らが頭を下げたんだからな、相当凄かったんだろう、金額的に‥‥。

 

「ま、まぁ‥次から気をつけて‥‥」

 

 良馬が加奈江を弁護しようとしたら、

 

「はぁ~これで三件目か‥‥」

 

 加奈江が残念そうに呟く。

 

「って!?何度もやっているの!?」

 

 それを聞き、思わずツッコミを入れてしまう良馬。

 

(加奈江さん実は常習犯だったのか‥‥それなら学習しなさいよ!!)

 

「だって食べ放題って書いてあるから‥‥」

 

「いくら食べ放題でも限度ってものがあるだろう‥‥」

 

 シュンとする加奈江に源三郎は注意を促す。

 そのうち街全体の飲食店のブラックリストに載るんじゃないのか心配になってきた良馬だった。

 予想外のハプニングがあったが、良馬たちの方も愉快な夕食の時間を過ごした様だった。

 

 

ここで場面は地球からミッドへと移る。

 

 この日、特別捜査官・八神 はやては本局の通路を歩いていた。

 彼女は昨夜、レティ・ロウランから呼び出しを受けたのだ。

 そのため、彼女はこうして朝一番でレティ提督に会うために、こうして本局の通路を歩いているのだ。

 

「それにしても、お話って何なのでしょう?はやてちゃん?」

 

 彼女の右肩に座るティンカーベル‥‥もといユニゾンデバイスにして八神ファミリーの一人たるリインフォースⅡ(ツヴァイ)が顔を傾けながら疑問を呈する。

 

「うーん‥‥何やろうなぁ‥‥まぁ、可能性としては、一連の事態に関する事やろか?」

 

 はやての言う『一連の事態』とは、ここ最近多発している次元航行艦の遭難・行方不明事故、フェイトたちが現在滞在している第二の97管理外世界、そしてボラー連邦の事を指していた。

 そして、はやてとリィンはレティ提督の執務室前まで辿り着いた。

 

「さて、到着や‥‥さぁ、この先に鬼が出るか蛇が出るか‥‥」

 

 緊張した面持ちで、レティ提督の執務前に立つ。

 

「うぅ~鬼も蛇もどちらも嫌ですぅよぉ~はやてちゃん」

 

 はやての緊張した面持ちと言動を聞き、不安になるリィン。

 とはいっても何時までも部屋の前で、突っ立っている訳にもいかず、

 はやては目の前の扉を二、三度ノックする。

 すると、中から「どうぞ」

 と、レティ提督の声がしたので、はやてとリィンは、

 

「「失礼します」」

 

 と、言いながらレティ提督の執務室へと入室した。

 

「八神はやて二佐参りました」

 

「八神リィンフォース・ツヴァイ曹長参りました」

 

 執務室にいるレティ提督に敬礼しながら、階級と姓名を名乗る二人。

 

「待っていましたよ。八神二佐」

 

「はい」

 

「今日、貴女を呼んだのは他でもないわ‥‥貴女をある部署に配属するため、その辞令を渡す為よ」

 

「ある部署‥ですか?」

 

「ええ」

 

 『ある部署』と言われ、いぶかしむはやて。

 そんなはやてに構うことなく、レティ提督は、その『ある部署』についての説明をはやてにした。

 

「それは、ほんまでっか?レティ提督」

 

 レティ提督から内示を伝えられた八神はやての第一声は間抜けの一語に尽きるが、それを受けたレティの答えも似たようなレベルだった。

 

「ほんまどすえ」

 

 はやての問いにそれっぽい口調で答えたレティ提督はそこで一息つき、口調を戻す。

 

「ボラー連邦との戦いで、管理局は惨敗し、管理局の内実は、管理世界の治安維持すら怪しいところまで弱体化してしまった。責任論はこれからとしても、既存の世界の治安は何としても守らなければならないの」

 

 レティ提督の言わんとすることはわかる。体制を改めて新たに海上警備本部を創設するというのもわかるのだが――。

 

「おっしゃることはわかります。しかし、私に艦の指揮は‥‥」

 

 はやては自信が無いのか、戸惑うように言う。

 

「大丈夫、そこは優秀なスタッフをつけるわ。それに貴女も、短期間とはいえJS事件の時にアースラを指揮したじゃない」

 

 レティ提督の言う通り、はやてはJS事件の決戦時、半壊してしまった六課の隊舎から、廃艦処分寸前のアースラを引き取り、そこを六課の司令部とし、聖王のゆりかごとの決戦時、六課のメンバーと空の首都防空隊の指揮を執った経験がある。

 その時の経験から今回、レティ提督は、はやてを海上警備の一部隊の指揮官として、彼女を次元航行艦の艦長に任命したのだ。

 

 レティ提督はすかさずモニターを起動させる。

 

「こ、これは‥‥」

 

 モニターに映し出されている艦を見て、はやては驚愕の声をあげる。

 映し出されたのは、これまでの管理局の艦とは異なるシルエットの艦船だ。

 

「今度、就航予定の新造艦LS級よ」

 

「LS級?」

 

「ええ、今までにない新理論を下に造られた実験型の次元航行艦よ‥‥最もこの技術も地球防衛軍やガミラス、ガトランティスの星間国家では、旧式なのかもしれないけれど‥‥」

 

(やっぱりか‥‥まぁ、それもしゃーないか‥‥あちらさんと管理局とじゃあ技術力も設計思想違うからなぁ‥‥)

 

 レティ提督の話では、新型の魔導炉機関を搭載された艦で、大気圏内での運用を主眼に入れて開発され、次元震制御により、大気圏間次元転移が容易になったという。

 無論、宇宙空間での運用も可能だ。

 

「LS級一番艦、ヴォルフラム。これを貴女に任せるわ」

 

 機動六課解散から約一年半‥‥。

 

 急転する時局は、はやての思いには応えてくれなかったようだ。

 

「ヴォルフラムの艦長就任の話、受けてくれるかしら?」

 

 正直な話、いきなり一艦の艦長なんて荷が重すぎる。

 しかし、これはある意味チャンスであった。

 ボラーとの戦いで疲弊した管理局を立て直す事を手伝えるし、フェイトたちも、もしかしたら迎えにいけるかもしれない。

 そう考えたはやては、

 

「分かりました。謹んで、その役職拝命いたします」

 

 と、LS級一番艦ヴォルフラムの艦長職へと着いた。

 こうして、海上警備司令・八神はやての新たなる闘いの幕が開いたのである。

 

 

 はやてが、新たなる任務を拝命してから数日後、ヴィヴィオが居る第二の97管理外世界では‥‥。

 

「ごちそうさまでした」

 

 夕食を終えたヴィヴィオが、元気な声で発する。

 

「はい、お粗末様でした」

 

 ノエルがペコッとヴィヴィオに一礼する。

 

「そうだ、ヴィヴィオちゃん」

 

「はい?」

 

「後で、地下の練習場に来て、貴女に渡す物があるから」

 

 と、忍がヴィヴィオに言うと、

 

「渡す物?はっ!?それってもしかして‥‥」

 

 ヴィヴィオの目が煌めきだす。

 

「ええ、ヴィヴィオちゃんのデバイスが完成したのよ」

 

「本当ですか!?ヤッター!!」

 

 頼んでおいたデバイスが完成したと言う事で、ヴィヴィオのテンションは最高潮に上がった。

 

「でも、随分早く完成しましたね?」

 

 ティアナが通常のデバイスの製作日数よりもヴィヴィオのデバイスの製作日数が早い事に関して質問をする。

 

「ヴィヴィオちゃんの場合はベルカ式の魔法だったから、直ぐに出来たのよ」

 

 と、ヴィヴィオのデバイスの製作監修をしたリニスがティアナに答える。

 製作日数が異なったからと言って決してヴィヴィオのデバイスが欠陥品と言う訳では無い様だ。

 

 夕食後、地下の練習場では、ヴィヴィオ、フェイト、ティアナ、リニス、忍の姿があった。

 ヴィヴィオはフェイト再会してから、この地下練習場でフェイトとリニスに魔法の教授を受けていた。

 元々学校である程度の魔法の授業を受けていたが、それ以上にリニスの教え方はうまかった。

 空気中に大量のAMFが含まれていても、流石はフェイトの魔法の師であり、その道のエキスパートである。

 

「それじゃあ、開けてみてヴィヴィオ」

 

 忍が白いケーキ箱ぐらいの大きさの箱をヴィヴィオに手渡す。

 ヴィヴィオはワクワクした様子で箱を開ける。

 

するとそこには‥‥

 

「くま‥‥?」

 

 そこには、デバイスでは無く赤い蝶ネクタイをして緑色の帽子を被り、クマのような、コアラのようなぐるみが入っていた。

 箱の中身が、デバイスではなく、ぬいぐるみだった事にヴィヴィオは首を傾げる。

 

((あっ、あの姿は‥‥))

 

 フェイトとティアナにはそのぬいぐるみがなんなのかすぐに分かった。

 あの姿は紛れもなく、年始年末において開かれた防衛軍のカウントダウンパーティーにて良馬が着ていた着ぐるみのキャラクターそのものだった。

 

「あっ、そのぬいぐるみは外装というかアクセサリーね」

 

「中にクリスタル状のデバイス本体が内蔵されているわよ」

 

 忍とリニスがぬいぐるみの仕様を説明する。

 ヴィヴィオが忍とリニスから説明を聞いていると、箱の中のぬいぐるみはムクッと一人で起き上がり、箱をよじ登る。

 そしてフヨフヨと飛び上がり、ヴィヴィオの目の前で停止し、シュタッと片手を上げる。

 それはまるで、ヴィヴィオに挨拶をしているかのように思えた。

 

「と、と、と、飛んだよっ!?っていうか、動いているよ!!」

 

 慌てて忍とリニスの背後に隠れ、声を上げながらぬいぐるみを指さすヴィヴィオ。

 外見は可愛い仕様になっているが、一般人から見たら、軽くホラーに近い光景だ。

 

「それはおまけの補助機能よ」

 

 やはり、ヴィヴィオはまだまだ幼い故に心配したリニスが様々なサポート機能を付けていた。

 

「バルデッシュやフェイトに話しを聞いて、ヴィヴィオちゃん専用にチューニングしたんだけど、まだまだ中身は真っ白のまま‥‥生まれたての赤ちゃんなのよ」

 

「名前もまだ着いていないから、ヴィヴィオちゃんが名付け親になってあげて」

 

 説明を聞き、ヴィヴィオはぬいぐるみ(デバイス)に歩み寄る。

 

「実は、名前も愛称ももう決まっていたりして‥‥」

 

「それじゃあ、早速登録とセットアップをしてみて」

 

「うん」

 

 ヴィヴィオが少し皆から離れると、ヴィヴィオの足元に魔方陣が出現する。

 

「マスター認証‥‥高町 ヴィヴィオ‥‥個体名称を登録。愛称『クリス』。正式名称『セイクリッド・ハート・エクセリオン』‥‥いくよ、クリス‥‥」

 

 ヴィヴィオがデバイスのクリスへと語り掛けると、クリスはまるで「任せろ」と言うように頷く。

 

「セイクリッド・ハート・エクセリオン!セット・ア―――――ップ!」

 

 ヴィヴィオが呪文を唱えると、眩い光がヴィヴィオを包み込む。

 すると、ヴィヴィオの身体にも変化が現われた。

 小さかった体は成人女性の姿へと変わって行ったのだ。

 フェイトはその姿を見た途端、大きく目を見開くと、そのまま腰を抜かした。

 

「ん?ばっちりね」

 

 ヴィヴィオが無事にセットアップ出来た事に忍とリニスはホッとした様子であったが、フェイトは放心したままだ。

 そして、ヴィヴィオは成人した自分の姿を見回していた。

 

そんな中、

 

「あら?どうしたの?フェイト」

 

 リニスが腰を抜かし、放心しているフェイトに声をかけた。

 

「り、リニス‥‥ヴィヴィオが…ヴィヴィオがぁぁー!!何で聖王モードに!?」

 

「?」

 

 取り乱しているフェイトにリニスは状況がついて行けず、首を傾げる。

 そこで、リニスはフェイトに事情を訊ねた。

 すると、ヴィヴィオの正体が元は古代ベルカ時代に存在した聖王のクローンだと言う事実を聞いた。

 そして、ミッドで起きた大規模なテロ事件、JS事件の際、ヴィヴィオは『聖王のゆりかご』の中で、もう一人の養母、高町なのはとあの成人した姿で戦った事も教えられた。

 今の成人化したヴィヴィオの姿とバリアジャケットの恰好はまさになのはと対峙した時と同じ格好だったのだ。

 ヴィヴィオの今の姿はフェイトにとって一種のトラウマでもあったのかもしれない。

 

「でも、なんでヴィヴィオがこんな事に!?」

 

 フェイトはヴィヴィオが成人化した事についてリニスに説明を求めた。

 それによると、ヴィヴィオを検査した結果、一時的であるが、成人化出来る魔法要素をヴィヴィオは元々有しており、それは、決して悪い意味では無く、このAMFが充満して居る中では、成人化している方が魔法の練習効率が上がる結果が出たので、デバイスに成人化出来る要素を組み込んでいたのだ。

 最も紅葉はこのAMFの空気に体とリンカーコアが馴染んだ様で、成人化する必要はないから、そのままの姿である。

 

 ヴィヴィオ本人曰く、この成人化は決して聖王化したわけでは無いとフェイトに弁明した。

 それでも何だか納得していないフェイトにヴィヴィオは、

 

「クリス、変身モード解除」

 

 元の姿に戻り、

 

「大丈夫だよ、フェイトママ。変身してもヴィヴィオは、ちゃんとヴィヴィオのまんま!!もう、『ゆりかご』もレリックも無いんだし。だから大丈夫。クリスもちゃんとサポートしてくれるって」

 

 ヴィヴィオが微笑みながらフェイトにそう語り、クリスもフェイトにまるで「任せろ」と言っているかの様にサムズアップを送る。

 

「う、うん‥‥」

 

 ヴィヴィオの言葉を聞き、ようやく納得した様子のフェイトだった。

 

「それに‥‥」

 

 納得した様子のフェイトにヴィヴィオは更に言葉を重ねる。

 

「ママたちだって、小さい頃に随分やんちゃなことをしたって、聞いたことがあるよ」

 

「そ、それは‥‥その‥‥」

 

 フェイトはなのはとの出会いのきっかけとなったジュエルシードの件を思い出した。

 確かに、今のヴィヴィオよりも年上であるが、六課に配属されたばかりのエリオやキャロよりも年下の頃だったため、やんちゃな事だと言われれば、確かに当てはまっていた。

 

「でも、ヴィヴィオ。これだけは覚えておいて」

 

 リニスが真面目な顔でヴィヴィオに語り掛ける。

 

「大人姿は魔法の練習の為だけに使う事。決して悪戯や遊びで使わない事。これだけは守ってね」

 

「はい」

 

 ヴィヴィオも真剣な表情でリニスとの約束を誓った。

 

(これじゃあ、まるでリニスの方が私やなのはよりも母親らしいわね‥‥)

 

 と、フェイトは、リニスにほんの少しだけ嫉妬したが、フェイトにとってリニスは魔法の師であり、もう一人の自分の母と言えるべき存在だったため、仕方がないと思った。

 

 

 ヴィヴィオがデバイスを貰ってから、数日後、通常の定期通信の日を迎えた。

 この日は、入院中だったなのはも無事に退院して、この場に来ており、ヴィヴィオの姿を見ようとしていた。

 前回のヴィヴィオの無事を知らせる通信ではやてが「次はなのはちゃんを連れてくるから、またヴィヴィオも来てや」とヴィヴィオを誘っていた。

 ヴィヴィオ自身もなのはに自分の無事な姿を見せて安心させたかったので、通信の最後に、はやてに「必ず連れて来てね」と言っていた。

 そして、ヴィヴィオにとっても、なのはにとっても楽しみにしていたこの日を迎えた。

 ヴィヴィオとしては、この世界に突然跳ばされたのは、予想外であったが、無事にフェイトと再会する事が出来、尚且つやってみたかったBRAVE DUELをプレイし、デバイスまでも貰った。

 なのはに伝えることはたくさんあった。

 やがて、通信回路が開かれると、

 

「ヴィヴィオ!!」

 

 と、いきなりなのはが画面に向かって叫んだ。

 地球側の一同はヴィヴィオも含め、突然なのはの叫び声と彼女の顔のドアップ姿に、ギョッとした。

 

「ヴィヴィオ、元気?ケガとかしてない?ちゃんとご飯食べている?好き嫌いしてない?」

 

 ギョッとしている一同をスルーして、ヴィヴィオに色々と質問をし続けるなのは。

 

「ちょっ、なのはちゃん。落ち着いて‥‥」

 

 隣に居るはやてもなのはの豹変ぶりについていけず、まずはなのはを落ち着かせる事か始めた。

 でないと、ちゃんと話をする事が出来ないからだ。

 

「落ち着いた?なのは?」

 

 それからしばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した様子のなのは。

 

「う、うん‥‥ゴメン。恥かしい所を見せちゃって‥‥」

 

 なのはは顔を赤くして俯いている。

 

 そして、定期通信はようやく始まった。

 

「それで、ヴィヴィオ、ケガとかは無い?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

「ご飯とかはちゃんと食べている?」

 

「うん。この前、お寿司屋さんに連れて行ってもらったの。それでね‥‥」

 

 ヴィヴィオは先日行ったお寿司屋さんでの出来事を話した。

 

「へぇー流石は未来のお寿司屋さん。随分変わったサービスをするんやね」

 

 はやてはヴィヴィオの話を聞き、自分達の知る地球よりも未来の地球の回転寿司屋のサービスや店内設備を聞き、驚いている。

 

「お寿司もとっても美味しかったし、そのお店で、フェイトママとそっくりな人とも会ったんだよ」

 

「へぇー‥‥」

 

 はやてとなのはは。ヴィヴィオの言うフェイトにそっくりな人と言うのに、少し興味がある様子だった。

 

「それでね、デバイスも作って貰ったんだ」

 

「えっ!?」

 

「デバイスを!?」

 

 ヴィヴィオがデバイスを持ったと言う事実に驚きの声をあげるなのはとはやて。

 

「それ、本当なの!?ヴィヴィオ」

 

「うん」

 

 ヴィヴィオは証拠と言わんばかりに、クリスを両手で持って、なのはたちに見せる。

 

「ん?」

 

「ぬいぐるみ?‥‥にしもてその動物は一体何や?クマ?」

 

「こっちの世界のキャラクターみたい‥‥」

 

 しかし、デバイスと言われて見せられたのは、ごく普通のぬいぐるみ。

 これの何処がデバイスなのかと首を傾げる二人。

 

「なのは、はやて、ぬいぐるみはあくまで外装でこの中身にデバイスの本体があるの」

 

 フェイトが補足説明を行い、ヴィヴィオがぬいぐるみの背中にあるチャックを降ろして、中からデバイスの本体を取り出す。

 すると、ヴィヴィオの小さな手の中には黄色いクリスタル状のデバイスがあった。

 

「これがヴィヴィオのデバイス。クリスって言うんだよ」

 

 ヴィヴィオは満面の笑みを浮かべて、自らのデバイスをなのはとはやてに披露する。

 

「えっ、でも‥‥デバイスって‥‥」

 

「魔法文化が無いのに簡単に作れる物なんか?」

 

 なのはとはやては、本来魔法文化の無い筈の世界で、デバイスを作る事の出来た事実に戸惑いが隠せない。

 

「えっと‥‥このデバイスを作ってくれた人は、その‥‥魔法の事を知っている人なの‥‥」

 

 フェイトはデバイスの製作者の事を触り程度で紹介した。

 まさか、かつての自分の母、プレシア・テスタロッサの使い魔であり、自分のデバイスの製作者でもあり、魔法の師であるリニスが作ったとは言えなかった。

 しかし、デバイスの製造は管理局法でも特に違法とは認識されていないため、別に管理外世界で作っても何ら問題は無い。

 だが、本来魔法文化の無い筈の世界で、尚且つ管理局よりも強力な力を持つ宇宙戦艦等を有する世界で作られたデバイスだ。

 なのはとしてもそんな世界で作られたデバイスを持って大丈夫なのかと心配になった。

 そんな、なのはの不安を読み取ったのか、フェイトが、

 

「大丈夫だよ、なのは。私もデバイスの初起動に立ち会ったけど、私たちが使っているデバイスと何ら変わりがないよ。ちゃんと、非殺傷設定もできるから。それに、デバイスを作った人と私がヴィヴィオに魔法を教えているから」

 

 と、フォローを入れる。

 

「そ、そう‥‥」

 

 フェイトのフォローを聞き、その場では納得したなのはだった。

 しかし、フェイトはこの時、ヴィヴィオがセットアップした時に大人姿(聖王姿)になる事を言わなかったので、後にセットアップしたヴィヴィオの姿を見て、なのはが大変驚いた事を明記しておく。

 

「あとね、ヴィヴィオ、BRAVE DUELもやったんだよ」

 

 そう言ってヴィヴィオはなのは達にBRAVE DUELで使うアバターカードを始めとするBRAVE DUELに必要な機器をなのはとはやてに見せる。

 

「へぇーあのBRAVE DUELをヴィヴィオもプレイしたんか‥‥それでどうやった?」

 

 はやてが、BRAVE DUELの感想を訊ねると、

 

「とっても面白かった!!」

 

 ヴィヴィオは子供らしい感想を述べた。

 

「この後も、紅葉お姉ちゃんたちと一緒にBRAVE DUELをやる約束をしているんだ!!」

 

 と、ヴィヴィオはこの後の予定もはやてとなのはに教える。

 最も二人はヴィヴィオの口から『紅葉』と言う名前を聞き、何かを思い出した様子だ。

 

「ヴィヴィオ、その‥紅葉お姉ちゃんは今日、そこには来ていないの?」

 

 と、なのはが、紅葉の所在を確認する。

 

「ん?ここには来ていないよ」

 

 ヴィヴィオの口からは、ここに紅葉が来て居ない事を告げた。

 

「そう‥‥」

 

 紅葉がここに来て居ない事を知って、少し、残念そうな様子のなのは。

 当初、ヴィヴィオはなのはたちに紅葉を紹介しようとしたが、紅葉自身は、「私は管理世界の住人でもなければ、管理局員でも防衛軍の関係者でもないので、遠慮します」と言って、定期通信での同席を拒否した。

 フェイトとティアナも紅葉の同席拒否はある意味、安堵した。

 もし、立ち会えば、はやてとなのはは、紅葉を管理局へスカウトするかもしれない。

 しかし、紅葉は管理局へ入るつもりなど毛頭ない。

 それで、剣呑な空気となり、ヴィヴィオに精神的不安やストレスと与えてはマズイと思ったのだ。

 

「なぁ、ヴィヴィオ」

 

「ん?何?はやてお姉ちゃん」

 

「ヴィヴィオのデバイスを作った人ってどんな人なん?」

 

 今度は、はやてがヴィヴィオのデバイスの製作者を訊ねる。

 やはり局員としては、管理外世界にも関わらず、デバイスを製作した人物に興味と言うか、関心が有る様だ。

 

「うーんと‥‥優しくてママみたいな人」

 

 これもBRAVE DUELの感想同様、子供らしい率直な意見で、具体性がない。

 なのは、はやて、ヴィヴィオの会話の様子を見たフェイトとティアナは何かを察した様子だった。

 まだ、定期通信の時間は終了ではないのだが、途中でヴィヴィオが、

 

「あっ、そろそろ待ち合わせの時間になっちゃう‥‥」

 

 時計を見て、ヴィヴィオは、紅葉たちとの待ち合わせ時間が迫っているのを知った。

 

「いいよ、ヴィヴィオ行ってきて」

 

 なのはは、ヴィヴィオにまた次の定期通信の時に一杯お話しようと言って、ヴィヴィオを見送り、ヴィヴィオ自身も後ろ髪を引かれる思いがありつつも、楽しみにしていたBRAVE DUELをプレイしたい衝動で、なのはとはやてに、

 

「わかった。次にいっぱいお話しようね」

 

 と言って紅葉たちとの待ち合わせ場所へと向かった。

 

 ヴィヴィオが退室してから、フェイトとティアナ、なのはとはやてはその後も、お互いにあった日常の出来事ついて訊ねたが、終了時間が近くなったところで、はやてが、

 

「なぁ、フェイトちゃん」

 

「何?はやて」

 

「次の定期通信の時にその紅葉ちゃんとヴィヴィオのデバイスの製作者って人も連れて来てくれへんか?」

 

 と、紅葉とヴィヴィオのデバイスの製作者(リニス)をこの場に連れて来てと言う。

 まぁ、デバイスの製作者であるリニスとは、何度もこの場に立ち会っているのだが、はやてたちはその事実を知る筈がない。

 しかし、何故はやてが、紅葉とデバイスの製作者(リニス)に会いたいのか、フェイトとティアナは、何となく想像がついた。

 

「‥‥念のために聞くけど、はやては、二人に会って何を聞きたいのかな?」

 

 若干冷めた声ではやてに訊ねるフェイト。

 

「ん?そりゃ、フェイトちゃん。管理外世界にも関わらず、デバイスを製作できるっちゅうことは、その人も魔導師なんやろう?どんな人かやっぱり局員として気になるやんか。それに紅葉ちゃんはその世界におけるなのはちゃんの子孫なんやし、どんな人なのか気になるやん」

 

「デバイスの製作者(リニス)はまず、置いといて、もし、紅葉が魔導師だったらどうする?」

 

 フェイトの問いにはやては、予想通りの回答をした。

 

「もし、その紅葉ちゃんが魔導師やったら、管理局に来てもらいたいわ‥‥なのはちゃんの子孫なら、きっとなのはちゃん同様、すっごい魔導師の筈やで‥‥実は、今管理局はある事件で、人員が物凄く不足しとるんよ」

 

 はやては笑みを浮かべてそう言うが、ティアナは、心の中で、

 

(はやてさん、もう少し空気読みましょうよ‥‥明らかにフェイトさん、不機嫌じゃないですか‥‥)

 

 と、はやての言動に呆れた。

 はやてとしては管理局の高官‥‥ボラー連邦への制裁に賛成した者たちの言動は許せないが、その影響で管理局の人材不足が拍車をかけている事に対しても危機感を覚えていた。

 そんな中、並行世界とはいえ、なのはの子孫である子が存在するのであれば、彼女もきっと、なのは同様、高ランクの魔導師に違いない。

 高ランクの魔導師ならば、是非とも管理局へ来てもらいたかった。

 

「なのはもはやてと同じ意見なの?」

 

 フェイトは次になのはの意見を求めた。

 

「う、うん。もし、紅葉ちゃんが魔導師ならやっぱり管理局に来てほしいな。それに紅葉ちゃんは私の子孫‥‥私のひ孫さんかもしれないんでしょう?それなら、私も一緒に働きたいし‥‥」

 

 なのはらしいと言えば、なのはらしい意見なのだが。フェイトはここで心を鬼にして、二人に言い放った。

 

「無理だよ」

 

「「えっ!?」」

 

 フェイトの「無理」と言う言葉になのはとはやては一瞬唖然とした。

 

「フェイトちゃん『無理』ってどういう事?」

 

「紅葉ちゃんは魔導師やないんか?」

 

「はやて、なのは、それ以前の問題だよ。仮に紅葉が魔導師だったとして、どうやってミッドまで連れて行くの?」

 

「それは‥‥」

 

「フェイトちゃんたちが戻ってくるときに一緒に来ればええやん」

 

 なのはは、どうやって紅葉をミッドまで連れてくるのかと言う問いに言葉を詰まらせるが、はやてはさも当然の様に、自分たちがミッドに帰るついでに連れてくればいいと言う。

 

「はやて、地球連邦とミッドは交流を一切持っていないんだよ。そんな中で、地球連邦の人を勝手にミッドへ連れて行けるわけないでしょう」

 

「でも、魔法素質はあるかもしれへんのやろう?」

 

「そんな事をしたら地球連邦側が、『管理局は地球連邦市民の少女を拉致した』って騒ぎ立てるよ。そうなった場合、地球連邦は当然紅葉の身柄引き渡しを要求するけど、管理局側としたら、絶対に紅葉を手放さないんじゃないかな?」

 

「まぁ、そうやろうな‥‥」

 

 高ランクの魔導師は管理局にとって金の卵であり、それを『還せ』と言われて『はい、どうぞ』と言って返却する訳がない。

 されるとしたら、任務で大けがを負い、魔導師としての素質を無くしたか、『殉職したから遺体を還します』のどちらかであろう。

 どちらにせよ、紅葉を強引にミッドに連れて行けば、地球連邦側は管理局を許す筈がない。

 

「もし、それが原因で地球連邦と‥地球防衛軍と管理局が戦争になったら、なのはやはやてどうするの?」

 

「「‥‥」」

 

 フェイトからの問いにはやてとなのはは何も答えられなかった。

 

「ねぇ、どうするの?管理局は勝てるの?地球防衛軍に‥‥もし、管理局が負けたら、二人は責任をとれるの?」

 

 はやての脳裏には、管理局の次元航行艦隊が防衛軍の波動砲の一斉射撃で消滅する光景しか思い浮かばない。

 しかも、防衛軍と戦争となれば、当然自分もその戦場へと向かわなければならない‥‥。

 自らの指揮する艦が防衛軍の波動砲によって融解されるシーンを想像し、はやては身震いし、冷や汗を流す。

 

「で、でも‥管理外世界での、魔法の使用は禁止されている筈だし‥‥」

 

 未だに黙っているはやてに変わってなのはが、震える声でフェイトに言う。

 

「それは、管理世界ないし、管理局員に言える事で、管理外世界の人にとっては、管理局の法律なんて関係ないよ‥‥なのはだって管理局(クロノたち)が来る前から魔法を使っていたじゃない」

 

「うっ‥‥」

 

 フェイトの指摘についにはなのはも黙り込んでしまう。

 まもなく定時通信終了の時間が迫る中、

 

「最後に、私から言える事は、この世界の人を管理局や管理世界の面倒事に巻き込まないで欲しいって言う事だよ。はやて、なのは‥‥」

 

 フェイトは冷たい声と目でなのはとはやてに忠告を送る。

 

「‥‥ティアナも同じ意見なの?」

 

 なのはが今度はティアナに意見を求める。

 

(ここで私に振らないでよ‥‥)

 

 ティアナは、心の中でなのはの言動に愚痴りながらも、口では自分の考えをちゃんと述べた。

 

「そうですね、私もフェイトさんの考えに賛成です。この世界の人々は二度も異星人からの侵略を受けて、疲弊しているんです。だから、そっとしておいてあげたいと思っています」

 

「そんなっ!?」

 

 愛弟子とも言えるティアナまでもが、自分では無く、フェイト寄りの考えにショックを受けている様子のなのは。

 

「なのはさん‥‥彼女には‥‥紅葉には夢があります。なのはさんも、紅葉と同じ年ぐらいの時にはもう、明確に将来のビジョンがあったんじゃないんですか?」

 

 ティアナの言う通り、なのはは、中学時代には中学卒業後には、正式に管理局員になる事は決めていたが、その中でも教導隊の教官になると言う夢を既に抱いていた。

 

「う、うん‥‥」

 

 ティアナの問いに頷くなのは。

 

「そんな中、もし、横から大人が、『お前はこうならなければならない』と言ってなのはさんの夢を否定し、その夢を実現することの出来る道を絶たれたら、なのはさんはその人をどう思います?」

 

「‥‥」

 

「その人を許せますか?なのはさんは大人が勝手に引いた線路を黙って走れますか?将来、ヴィヴィオにも同じような事を言えますか?」

 

「‥‥」

 

 ティアナの問いに黙り込んでしまうなのは。

 なのは自身も十一歳の頃、任務中に大怪我をして、もう二度と魔法は使えない、それどころか満足に歩けないかもしれないと診断された時に、両親が、『もう管理局や魔法とは縁を切れ』と言われたが、なのはは、必死に両親に頼み込み、管理局に居座り続けて今に至る。

 もし、両親があの時、強引に自分からデバイスを取り上げ、魔法や魔法世界とも縁を切らせていたら、当然今の自分は無いし、ヴィヴィオとも会えなかった。

 それに、自分から唯一の取り柄である魔法を取り上げた両親を許せるだろうか?

 自分の事を心配してくれたと言う事は理解できるが、やはり、それでも‥‥それでも‥‥

 

「‥‥」

 

 ティアナに言われてそんな思いがこみ上げてくる。

 

「‥‥なのはさん‥今、なのはさんが紅葉にやろうとしたことは、なのはさんが心の中で思っているような事なんですよ‥‥彼女も今、自分の夢を持ち、それを実現させようと日々頑張っているんです」

 

 ティアナが冷静な声で、しかも、まるで自分の心の中を見透かしたように指摘する。

 まぁ、なのはの場合、根が真面目で素直故、顔に出やすいから、ティアナも分かったのだろう。

 

「はやてさんもなのはさんも今後、この様な事が無いように気を付けてください‥‥『魔法素質が有るから、必ず管理局員に入ならなければいけない』なんて、大人の横暴で我儘な考えは捨てた方が良いですよ‥‥それがきっかけになって思わぬ大怪我や惨事を招く事や取り返しのつかない事態に発展しかねないんですから‥‥」

 

「「‥‥」」

 

 ティアナからの指摘を受け、二人は頭から冷水をぶっかけられた様な気がした。

 何とも言えぬ重い空気の中、この日の定期通信の時間は終了した。

 ただ、ティアナの言葉にはフェイトの心にもグサッと来るものがあった。

 エリオとキャロを局員にした事が今では間違いだったのかもしれないと思い始めていたからだ。

 時間を巻き戻せるなら、二人には局員ではなく、ヴィヴィオのようにちゃんと学校に通わせてあげたかった‥‥大人だらけの環境ではなく、同世代が沢山居る環境で色々と学ばせてあげたかった。

 

 

「まさか、ティアナにあそこまで言われるとは思わへんかったわ‥‥」

 

 通信が終わり、フェイトとティアナの姿が消えたモニターを見ながらはやてが呟く。

 

「うん‥‥」

 

 ティアナからの言葉に、衝撃を受け、なのはは、力なく返答する。

 

「なのはちゃん、大丈夫か?」

 

「うん‥‥」

 

(こりゃ、あかんな‥‥)

 

 ヴィヴィオの無事な姿を見る事が出来て嬉しかった。

 そのついでに自分の子孫かもしれない子と会って、その子が魔導師ならば、管理局に引き入れたかった。

 そうした意図はなのはにもはやてにもあったが、フェイトとティアナの冷静な指摘を受け、はやての方は、管理局のやや歪んでいると言うか、強引な勧誘部分を認識させられたが、なのはの場合は、それがショックの様だった。

 小学校三年で、魔法と言う今まで自分の人生の中で見た事も無い未知の力を手に入れ、その力に魅入られ、そしてその力を平和利用していると言う管理局に盲信していたなのはにとって、今回、管理局員でありながら、管理局とは違う、外から見た管理局の内情を突きつけられて、これまで自分がしてきた事は一体何だったのだろうか?と、戸惑いが隠せない様子。

 

「ま、まぁ、なのはちゃん、とりあえずヴィヴィオが無事に見つかって良かったやないの」

 

「うん‥‥」

 

「フェイトちゃんやティアナの事もあるけど、今は、私らも大変なときなんや、クヨクヨしとる暇はないで」

 

「うん‥‥」

 

 はやてははやてなりに、なのはを元気づけるが、真面目な性格故、なのはは結構後まで引きずったり、気にするタイプの性格だ。

 フェイトとティアナの指摘をこの先、長く引きずらなければよいがと思うはやてであった。

 

 AMFが充満するこの特殊な環境下で、魔力ランクB以上を保っている紅葉は、ミッドではSランク以上の魔導師だ。

 管理局員としては是が非でも手に入れたい人材であった。

 しかし、フェイトの話を聞く限りでは、紅葉は聡明な子であり、かつてリンディがなのはに対して言った、自発的に協力を求めるような話術ではあっという間にその点を見抜かれてしまうだろう。

 それに、この地球の太陽系内にはかなりの警戒網が張り巡らされており、それらの警戒網を突破してこの地球に来るのは管理局の艦船では、事実上かなりの困難である。

 そう考えると、Sクラス以上の魔導師一人に対し、割に合わない。

 大人たちは重苦しい空気となったが、ヴィヴィオと紅葉の方は、大人たちの事情を知る由も無く約束通り、この日もBRAVE DUELを楽しんだ。

 




今回から登場した、はやてが艦長として指揮する艦、LS級ヴォルフラムの外見は、機動戦士ガンダムSEED DESTINYに登場したミネルバをイメージしてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。