鎌倉特別危険廃棄物漏出問題以降、厳戒下の東京都。
そこであったかも知れない、ちょっとへそ曲がりの刀使同志の諍いだったり、友情だったり。


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 まきすず尊い(挨拶)
 どうも臣です。刀使ノ巫女若干パラレル気味のシリアス寄り短編になります。とじともの方はあんまり反映されていないかも知れません。
 色々暴走こじらせてますが、お楽しみ頂けたなら幸いです。



剣の時代

 赤紅に明滅していた闇が、程なく水槽の如き青へと染まる。

 青く色づく闇の世界は、またも明滅を始め、やがて再び朱に染まる。

 分間ごとに色を変えて明滅する闇の中で、観世思惟(かんぜ・しゆい)は立ち続けていた。

(我が神明夢想林崎流との斬り合いを望むか)

 都内の交通信号は凡そ一分前後で赤から青へと変わり、点滅を経て青から赤へと変わる。その信号が幾度目か、赤から青に変わり、青から赤へと変わった。

 変遷の度に、夜が様相を変えること幾たびか。

 思惟と、思惟の対面している謎の刀使は、歩行者信号が幾度となく赤から青へと変わっても横断せず、深夜の対面2車線の横断歩道の端と端で、こうしてモノも言わずに見合っているのである。

(だとするならば相手は居合……)

 間違いなくそうであろう。

 思惟は確信する。

 厳戒下の都内に入り、ここしばらくの間に都内警邏に駆り出された刀使たちと行き会うこともあった。思惟は校則に則り美濃関学園の制服を着用して帯剣しており、それにより会釈なり敬礼なり(刀使の敬礼は室外でも挙手礼ではなくお辞儀であると思われる)熱心な者には職質を受けたりしたものであるが、追尾を受けたのはこれが最初である。

 行く先が同じであるということもあろうと当初は思っていた。

 偶然でないと悟ったのは居合剣士たる思惟の心得で、念を入れて二三、回り道をし、コンビニに入って一回りして出て行ったりしていたものだが、それでもやはり、その一名の刀使は思惟の後ろを付かず離れず着いて来ていた。

 己に何らかの含むところがあるものと定め、頃合いを見計らい、ぐるりと思惟が回頭したのが10分ほど前。

 都内の対面2車線道路の、横断歩道を渡り切ったところである。

 追尾の刀使は、まだ車道に足を踏み入れていなかった。

 思惟はついに、尾行者と対面を果たしたのである。

 思惟の「頃合い」とはこの対面二車線の横断であった。横断しきったここで振り向いて迎撃に出たなら、追尾していた相手が開けていた距離によっては、車道の真ん中で対峙を迫られる。

 都内のこの時刻、交通の車両は概ね80キロ以上で流れる。激突すれば命はない。信号が変わるまでに退くか、前の思惟を突破するかせねばならない。いずれにせよ、思惟は相手の行動を制限出来る。

 追尾の刀使が未熟であれば、本当にそうなったかもしれないが、そうはならなかった。

 追尾の刀使が未熟ではなかったからだ。

 不利を避けるためには20メートル程――つまり道幅程の距離を開けて追尾する必要があることを、その刀使は理解していた。きっちりとその距離を取って、思惟が押し付けようとしたリスクを回避して来ていたのだ。

 このような事情により、思惟はそこで回頭し、思惟を追尾する刀使はそこで足を止め、対面2車線の横断歩道を挟み、歩行者信号が明滅を挟んで赤と青を入れ替えること数度の間、こうして対峙をしているのである。

 傍目には異様な光景であったろう。横断歩道の両端に立っている歩行者が何れも、信号が幾度青になろうと、横断しようとしないのだから。

(この観世思惟と抜き口を競おうとてか)

 刀使が試合を望むなら、申し入れを行うことが常である。

 然るに、対面する刀使は、それを行わない。

 それでありながら、悄然と立って在る。

 何故か。

 もう始まっているのだ。

 相手は居合であるのだ。

 立合いには始まりがあるが、居合にはそのようなものはない。立合を行っていない時の立ち居全てが居合であるのだ。

(まずは思惟が先を獲ったが、さてどうか?) 

 対峙する両者の間で、幾度となく車両が通過する。

 飛ばしているクルマも、そうでないクルマもあった。やかましいクルマもそうでないクルマもあった。

 運悪く赤信号に引っかかったクルマは、横断しようとしない歩行者に奇異の目を向けたが、だからと言って声をかけるでもなく走り去る。

(このまま対峙し続けるわけにも参るまい)

(さて、何とする?)

 凡そ20メートルという距離は、迅移を使えば十分に撃尺である。

 だがそれを行うには御刀を抜く必要がある。迅移は超能力ではなく、御刀を用いた刀技なのである。

 御刀を抜くには鯉口を切らねばならず、鯉口を切るためには左手を鍔元に持っていかねばならない。

 思惟が見落としてはならないのは、だからその左の手の動きであった。

 それのみではないが、そこは見て置かねばならなかった。それは相手も同じはずであった。

 よって、そこが視界から遮られることがあれば、両者にとり好機が訪れる。

 それは、程なく訪れた。

 低い動力音、高いタイヤノイズ――大型のトレーラーが、横断歩道に迫っていた。

 11トン積みの長大な車両である。これが差し掛かれば、相手の姿は完全に隠れる。仕掛けるならばそこと思惟は目星を付けた。恐らくは相手もそうであろう。

 ヘッドライトの光芒を前兆とし、大質量のトレーラーが差し掛かり、一瞬で通過した。かなりの速度のクルマであった。100キロ弱は出ていたであろう。いかに長大とはいえど、3メートルに満たない横断歩道を通過するのはほんの一瞬であった。

(……な!)

 その一瞬に、横断歩道の一端から、一名の刀使が消え失せた。

 現れたのは思惟の在るもう一端だ。

「……何と」

「お見事」

 迅移であった。

 それだけならば驚くことはない。

 相手は、トレーラーの通過した後に迅移をしてきたのではない。

 通過する直前、視界が遮られていないその時に迅移を仕掛けて来たのである。

(……何故だ)

 しかし、それならば迅移は使えないはずであった。相手の鍔元には十分に注意を払っていた。左手はぴくりとも動かなかった。だから鯉口も切れないはずだ。抜刀の兆候は無かった。断言出来る。

 しかし相手は、迅移を抜いて来た。

 何故か。

 不明であった。不明であったが圧倒的不利に陥ったことは確かであった。

 相手の御刀は半ば抜かれていた。完全に発刀されなかったのは、辛くも思惟が柄を用いて相手の柄を抑えたからだ。思惟の左手は鯉口にあったが、切ることは出来ていなかった。これは迅移を始め様々な刀使の技を行える相手に対し、思惟は一切行えない不利に置かれたことを示す。

「抜こうとしておれば勝負あったものを、あえて抜かず、柄で我が抜刀を抑えるとは。流石は林崎流観世思惟」

「意趣在れば承(うけたまわ)ろう」

「恨みの筋には非らじ。只々(ただただ)弘流(ぐりゅう)の為なれば、安んじられよ」

 弘流とは、己の学んだ道場なり門派なりの名を高めることを言う。立合で勝つのが近道であるが、そもそもが立合は居合の反語であり、居合剣士には遠ざけて置きたいものである。

 なれば、こうして野に在る刀使と斬り合い名を挙げようと考えたのであろう。

そうでなくとも、相応に名の知れた刀使となれば、無名の刀使に挑まれることは、起こり得る。名流名手の定めというべきものであった。

「弘流と仰られるならば止むを得ん。山を降りて以来、このようなことも有るかと思うておった。流の教え、存分に現わされたし」

「理解を頂き幸甚(こうじん)至極。ついては、神明夢想林崎流当代の御首(みしるし)を所望」

 このような問答を行う内にも、両者の虚実は続いていた。

 一度は十字に噛み合った両者の御刀の柄と柄であるが、その実幾らの力も、入っていない。

 触れているだけであった。

 入れていない力は、どのようにも入れていける。ではどのようにしてくるのか、互い唯一触れている柄の部分が、最大の情報源となる。

 一方、思惟の御刀は未だ鯉口すら切られておらず、相手のそれは半塲、白刃を現わしているという状況は変わっていない。

 思惟がどう逃れるか。相手は思惟をどう逃さぬか。

 そのような斬り合いになりつつあった。

「首は譲れぬ。貴公のことを伍箇伝に報ぜねばならぬ故に、な」

「……む!」

 思惟のあずき長光の鞘が、するすると取り払われていく。

 柄と柄が触れ合っているのにだ。

 相手の柄が邪魔で抜けるはずがないのにだ。

「林崎流、卍抜(まんじぬき。まんじぬけ、とも発音)」

 そう言い終えた時には、相手は既に退いていた。

 車道のど真ん中、ではもちろんない。もと居た歩道の辺りまで、一瞬で退(しりぞ)いている。

 迅移を用いたのだ。

「これまでと致す。真っ向五分の戦は居合の戦ではない故にな」

「追うつもりはない。退かれよ」 

「さらば」

 謎の刀使は去った。掻き消えるように消えたのは、迅移を用いたからであろう。一度も視線を外すことなく背後に迅移を用いて移動するのは言うまでもなく高度な技だ。空間把握に長けていなければ出来るものではない。

 冷たい汗を、思惟は我が掌に自覚していた。逃げてくれて助かった、というのが正直なところだった。

「得意の抜き口で遅れをとるとは、世は広い……しかし、はて。御刀を抜きもせず迅移だと?」

 

***

 

 鞍馬流のサラブレットとか、次代の女王とか、親衛隊第一席大本命とか。

 どうも昔から、己のあずかり知らぬところで、知らぬ間に梯子を外されていることが多いという自覚が、此花寿々花(このはな・すずか)にはある。

(病棟暮らしから戻ってからというもの、殊更にたくさん、梯子が取っ払われているような気が致しますわ)

 報道されるところの鎌倉特別危険廃棄物漏出問題によって荒魂討伐の情勢は逼迫しており、それに伴って折神家に出入りする刀使は最近増えた。母校綾小路以外の刀使たちに声を掛けられることも多くなったわけだが、

「頑張ってください!」

「私、応援してます!」

「ファイトです、寿々花さま!」

 といった具合の声援のようなものは、一体何なのであろうか。

(まあ、私の場合たまたま稽古が進んでいましたし……母校の皆に声援を受けるということは少なく無かったのだけれど……)

 全国の刀使より四名のみ選抜される折神家親衛隊は創設以来人気のようで、声援が黄色くなり始めたのもその頃だったように思うが……

「今日のラッキーカラーは赤だそうです、寿々花さま!」

「東南東が吉と出ました、寿々花さま!」

「これお守りです、どうかお持ちください寿々花さま!」

「これ、お二人で一緒にお召し上がり下さい、寿々花さま!」

「千羽鶴です! ご利益があるかもしれないっていうんで皆で作りました、受け取ってください寿々花さま!」

 何やら最近は様相が変わってきているような気がする。

 何か、可哀そうなとか気の毒なとか、そんな感じの人のように見られているのは気のせいか。

 見ず知らずの相手にもらったハート型のケーキだの、恋愛成就のお守りだの、一体どうせよというのだろう。大体全快して病棟から出て来た後に千羽鶴というのは、どういうものか。

(本家の取り寄せてくる見合いの話の類は全て断っておりますし)

(刀使の本丸たる女だらけのこの折神家で、殿方と接する機会などある筈ありませんのに)

 いやまて。まさか。

 まさか、あのことが知られているということは。

(いいえ、有り得ませんわね)

(私この事、誰にも話していませんもの)

 誰にも話していないことが、誰かの耳に入る筈もなし。

 そのような心配がある筈が――

「あ。寿々花さんだ。寿々花さーん! 今日は真希さんと一緒じゃないんですかー?」

 寿々花は、コケた。

「今日はまたたくさんもらいましたね。あ、すごい。千羽鶴だ」

「……衛藤可奈美(えとう・かなみ)ッ」

「はい?」

「私、真希さんの付き人でもメイドでもありませんの。四六時中くっついているわけじゃあありませんのよ?」

「付き人、メイドって、やだなあそんなこと思ってる刀使のコは何処にもいませんよー。寿々花さんと真希さんと言えば、あれですよ今一番いい雰囲気って話題の友達以上こいびムグっ!?」

「!?」

 可奈美の顔面に、突如飛来した謎の毛玉が張り付く。

「あぶねえところだったぜ」

「益子薫(ましこ・かおる)!?」

 謎の毛玉は飛来したわけではなく、どうやら薫が投擲したものであるらしい。

「モガモガモガ!?」

「よしねね、そのまま張り付いてろ」

「ねね!」

「エレン」

「Yes♪」

「足持て」

「イエッサー♪」

「よし連行する。せーの、えっほっえっほっえっほ……」

「ワンツーワンツーワンツー……」

「もが、もが、もがーっ!」

 古波蔵エレン(こはぐら・-)と薫によって連行、というより運搬されていく可奈美。何やら言っていることは、ねねが邪魔でもがもがとしか聞こえない。さっさとひっぺがせば良いように思えるが、両手は大切なパンツを隠すために塞がっていて思うに任せないようである。

「……なんですの一体……」

「あ、寿々花さん、すいませんお騒がせして」

「あ、あら、舞衣さん。皆さんもう(約三名を除いて)お揃いのようですわね」

 辛くも気を取り直した寿々花は、導かれた奥の一席に幾名かをみとめる。

 十条姫和(じゅうじょう・ひより)。

 糸見沙耶香(いとみ・さやか)。

 これに加え柳瀬舞衣(やなせ・まい)と、先ほど何処とも知れず連れ去られて居ない可奈美と連れ去ったエレンと薫の席は今空席だ。さらに――

「懐かしいお顔ですこと」

「久しいな、鞍馬流」

「お知り合いだったんですか、お二人とも」

 観世思惟が同席していた。

 共に高等部であり、名の知れた刀使であるからには、旧知であっても不思議ではあるまい。

「神道無念流の刀使に再び敗れたと聞いたが真か」

「真希さんのことを言っているならば、その通りですわ。今に至るも私は親衛隊第二席。第一席と呼ばれたことは一度も御座いませんのよ」

「俄かには信じられぬ……綾小路の名花、鬼の寿々花と名高かった貴方を、二度も破る者が在ろうとは」

「それだけではありませんわ。つい先日には、新陰流の刀使にも勝ちを譲ったことがありますのよ」

「衛藤可奈美の話ならば、師より聞いている。それもまた信じがたいが……」

「師?」

「ああいえ、それはこっちのお話で……思惟さん、師は止めて下さい」

「そのような訳には参らぬ。思惟の今日在るは師、舞衣さまの御陰」

「舞衣さま!?」

 女学校には、同年代と年下はさん付け、年上にはさまを付ける古い習わしがある。が、美濃関や平城には男子の居る学科も有るわけであるし、伍箇伝自体、出来たのは大災厄以後であるからそんな縛りはない。あったとしてもそもそもが、観世思惟はバリバリのJK。舞衣は中等部二年でずっと後輩である。

「あの、思惟さん? さま、も止めて下さいね。私の事は舞衣とか舞衣ちゃんとか、それくらいで……」

「ファーストネーム呼び捨て!」

 激しく反応したのは、沙耶香である。

「呼び捨て……舞衣を、ファーストネームで呼び捨て……」

「いや、お前もしてるだろ」

 隣の姫和が思わず突っ込む。

「はいはい、それくらいでね。そんな話をする為じゃあないでしょう?」

 仕方ないので当の発端の舞衣が話を纏めにかかる。真面目そうなコばっかりに見えるが、その実協調性はミジンコほどもない連中だ。委員長属性なのは舞衣だけで、その苦労の程は察するに余りある。

「思惟さん。先ほどのお話、聞かせて頂きますか」

「承知」

 思惟は、昨晩の顛末を話して聞かせる。

「まるで辻斬り。聞き捨てならぬことですわ」

「我ら居合を学ぶ者にとっては尋常の斬り合いなれど、荒魂狩りを専らとする伍箇伝にとっては尋常のことに非ずと思ったが故、こうして注進に上がり申した」

「狙われたのが貴方だったから良かったものの、もしそうでなかったならば、怪我では済みませんわ。鯉口を切って即写シを行える者はそうそう居るものでは、ありませんもの」

 斬られたときに写シが間に合わなければ、結果は推して知るべしである。

「御刀を持つということはその者も伍箇伝でしょう。制服は着ていましたかしら?」

「錬府のもの、と見申した」

「錬府……」

 錬府といえば糸見沙耶香の母校である。特祭隊と対立している学長高津雪菜は現在綾小路に身を寄せており、自由になる生徒は居ない筈であった。

 もっとも、最高指導者が不在なのだから、タガが外れがちとも言える。学長の意向でなければ辻斬りだが、逆であれば伍箇伝の刀使の「暗殺」となる。

「先ずは該当しそうな刀使が居るのかどうか、今の錬府の学長代行に問い合わせてみるのが良さそうですわね。当てにならないかも知れませんけど」

「けど、思惟さん。その刀使、弘流の為、と言っていたんですよね」

「如何にも」

「だったら、どうして流儀を名乗らなかったのかしら」

「……成程。言われてみれば確かに奇妙」

 流儀の名を高めたいのに、それを名乗らなければ全く徒労であるように思える。とはいえ、それを名乗ることが無いのが居合をもっての斬り合いであると言えば、そうであろう。

「斬り損じてしまったから、名乗り出る気にもならないのかも知れませんわね。そのうちに、向こうから明らかにするかも知れませんわ」

「でも寿々花さんの言う通りなら、その時は伍箇伝の誰かが斬られた後、ということになりませんか」

「そういうことになりますわ」

「……」

「……」

 重苦しい沈黙が落ちる。

「次に襲われそうな刀使に心当たりは」

「名の有る刀使を狙うとすれば、同席の者全員にその可能性があろう。席を外している衛藤可奈美などは特に危険だ。後は……」

「真希さんですわね」

「……相応しかろう」

「あの朴念仁には私から話しておきますわ。皆さんは可奈美さんや長船のお二人をお願いします」

「そうされたがいい。ああ、そうだ、これを持たれるといい」

「これは木彫りのお花? 器用ですこと」

「獅童真希(しどう・まき)が喜ぶかどうかは分からんが」

「貴方もですの!?」

 

***

 

 ケータイを鳴らす、などという無粋を此花寿々花は好まない。

 そのようなものに頼らずとも、なんとなく、この時々には何処で何をしているのか何となく分かるというのは、素敵なことだと思うのだ。

(それに、昨日は金木犀の香りがしましたもの。この季節、天気は晴れ。きっとあのあたりですわ)

 大方、季節の花の植え込みのある当たりでぼんやりしているに違いあるまいと目星を付けたら、果せるかなその姿を見つけることが出来た。

「やっぱりここでしたのね、真希さん」

「やあ、寿々花。今日はまた沢山もらったね。相変わらずの人気だ」

「託(ことづ)けられただけですわ。皆、貴方にですわよ、親衛隊第一席さん」

「千羽鶴は僕ではないと思うけどな」

「いいえ、貴方のです。きっとこれで鈍感も治りますわ」

「最近よく言われるよ、それ」

「そうですの」

「ああ。この間も長船の二人組に、「ナイス鈍感デス」「いいぞもっとやれ」って言われた」

 長船の二人組といったらあの薫とエレンの凸凹コンビのことか。一体何を暗躍してるのやら。

「いえ、あの連中のすることですもの。きっとどうでもいいことですわね。そんなことより、真希さんに耳に入れておきたいことがありますの」

「僕に?」

「ええ、実は……」

 寿々花は本題に入った。

 

***

 

「なあお前ら。恋ってのはいいよな」

「うん、いいよね恋、憧れる!」

 聞いているのかいないのか、沙耶香は頷く可奈美の横で、クッキーを詰まんではもぐもぐしている。 

「だけど、恋ってえのはな。見つめ合ったり手をつないだりしたらもう恋じゃあないんだよ」

「そうなんだ!」

「目が有ったとたんに逸らしちまう。手をつなぐどころか指先が触れるだけでも飛びのいちまう。んな気持ち、分かるか? 分かんねーよな。そいつが恋してるってえ気持ちなんだよ」

「おおーっ! さすが高校生大人の世界!」

 可奈美は感心している。

 沙耶香はもぐもぐしている。

「なあエレン。薫にゃ恋人っていたことあったのか?」

「ナッシング♪」

「だろうな」

「おいそこ、聞こえてんぞいらんこというんじゃねー」

 エレンが肩を竦め、姫和がそれに倣う。

「いいか、恋ってえのはちょっとの間違いで儚く消えちまうもんなんだ。尊いもんなんだ。だから大事にしなきゃいけねーんだよ」

 うん、うんと可奈美が頷く。

 その横で沙耶香がもぐもぐしている。

「分かったか。ならもうあいつらにの仲に口出しは無しだぞ」

「薫。それきっと、二人を邪魔してるだけ」

「ねねGo!」

「ねねー!」

「もが。もが。もが。も……」

 沙耶香のもがもがは可奈美と比べ少し元気がない。

 だけどクッキーが食べられないから、沙耶香は困っている。

「ようし分かったか!」

「はい、分かりました薫センパイ! 以後気を付けます!」

「もが」

 可奈美が挙手礼し、隣の沙耶香が何となくそれに倣う。

「ちょろいな」

「ちょろいデス」

「こらエレン&ひよよん。お前らもちゃんと了解だろうな」

「もち了解デース!」

「好きにしろ。にしても、仕事はさぼるのにどうしてこういうのは熱心なんだろうな薫は」

「あ? 何言ってんだ面白れーからに決まってんだろ」

「本音ダダ漏れデース♪」

 

***

 

 観世思惟から聞いた話を、巡を追って一通り、寿々花は語り終える。

「そうか、そんなことが……もう一度聞くけど、観世思惟は無事だったんだな」

「辛くも無事を全うした、と言っておりましたわ。私も貴方もそれなりに名を成した刀使、奴にとっては好標的となるはずです。ご用心あそばせ」

「用心? 本気で言っているのか?」

 獅童真希の纏う空気が一変していた。

「御刀は全て荒魂討伐の為用いるべきもの。刀使の技もまた、同様だ。私闘に用いるべきものじゃないし、それによって他の刀使を傷つけるなんてもっての他だ。何処のどいつかは知らないけど、そいつは道を外れた刀使だ」

 むくり、と真希が腰を上げる。

「お待ちなさい。何処に行くつもりですの」

「散歩さ」

「金木犀のお花を踏みつけて、ですの?」

 紫陽花(あじさい)や百日紅(さるすべり)のように樹上に花を群れ咲かせる金木犀は、花弁を散らせず、花ごと落ちる。

 この季節、金木犀の木の下には点々と、その黄金の花が大地から開花したが如くに散りばめられる。獅童真希がそれを知らぬはずも、見えぬはずもない。

「刀使の血肉も同様だ。荒魂と戦い、荒魂を倒し、荒魂狩りに斃れるのが刀使の在り様だ。だけど、僕らは別だ。折神家親衛隊が守るのは紫さまだけじゃない。折神家の伝えもまた、守っていかなきゃならないんだ。刀使の道義もその中に含まれてるんだ」

「だから守るというんですの? 辻斬り刀使を斬り捨てても?」

「長船の凸凹コンビは兎も角、幾ら強くてもあのコたちは、結芽と同じ中等部じゃあないか。そういうことはさ。僕らがやろうよ。卸したてのハンカチを汚すよりも、ぼろ雑巾の僕らがいい」

「分かりましたわ」

 いともあっさりと寿々花は了解したが、真希の話が「僕ら」ではなく「僕」という流れであったなら、首を縦には振らなかったであろう。

「私たちで斬りましょう。但し、条件が二つほどあります」

「一つは?」

「刀剣管理局局長代行の許可を頂くことですわ」

「上意討ちならば是非もなし、という奴か」

「最低限「黙認」くらいは頂かなくては、唯の人殺し。辻斬り刀使と同じですわよ」

「そこらへんは任せるよ。上手く丸め込んでくれ。あと一つは?」

「簡単に仰いますわね、真庭学長は手ごわいお人だというのに……まあいいでしょう。今一つの条件は、辻斬りの使う手品のことですわ」

 手品とは例の、御刀を抜きもせず迅移を仕掛けてくる、あれのことであろう。

「工夫はありますの?」

「工夫か。それなら無い。いや、有るとしてもいい」

「どっちですのそれは」

「それは蓋を開けてのお楽しみ、ということで頼むよ」

 出たとこ勝負だとても言いたいのかこの朴念仁は、と渋い顔の寿々花に、親衛隊第一席は足元に散った一輪の金木犀を拾い上げる。

 寿々花の言葉が無ければ、踏みつけていたはずの花であった。

「え? ……え?」

 何を思ったか、金木犀を手に歩み寄ってくる。

(な、何を……近い、近いですわ!)

 大接近であった。

「うん。よく似合う。踏まないで良かった」

「はわ、はわわ、はわわわわ」

 とは流石に口に出さなかったが、寿々花の心境はこれに尽きる。

 真希がその手で、拾い上げた金木犀を、寿々花の髪へ飾ったのである。

「君の御陰だ。ありがとう、寿々花」

 後ろに悠々と手を振りながら歩み去る真希の大きな背中が見えなくなるまでの間寿々花は、恋姫のように只々、立ち尽くしていた。

 

***

 

 観世思惟と柳瀬舞衣は、幾たびかの試行の末一つの結論に達した。

 鯉口を切ることなしに迅移を行うことは不可能である。写シも八幡力も透覚も行えない。

「舞衣さまであっても、お出来にはならないか」

「ですから、さま、は止めて下さい思惟さん」

 論より証拠、謎の辻斬り刀使の真似が出来るかどうかやってみよう、という話になり、中庭で試みること数度に及び、無駄を悟った二人は連れ立って、資料室に手がかりを求めたが、積んだ資料をめくるのは専ら舞衣で、思惟は何処からともなく木切れを取り出し、ハンカチを広げて小柄で何やら細工を始めている。手伝ってくれないのかと思わなくも無かった舞衣だが何が出来上がるか楽しみでもあるので、そのまま放って置くことにする。

「そもそもが、伍箇伝支給の鞘も柄も、御刀の力の暴発を抑えるためのものですから、出来なくて当然なんですけど……」

「やってのけた者が在る」

「うーん……。あ。思惟さんが写ってる」

 伍箇伝に属した刀使ならば足跡が残る筈、と考えて広げた資料の一つに舞衣は、在りし日の思惟の姿を認めた。

「前々回の御前試合の折のものかと」

「やはり、出場されていたんですね」

「あれを出場、というのであれば致した」

 引っかかる言い方である。

 しかしどう見ても整列した選手の中に、美濃関の制服は思惟しか居ない。

「……でも、おかしいですね。美濃関は代表を一人しか出さなかったんですか?」

「棄権為された」

「え?」

「美濃関の予選の出場選手は優勝も準優勝も、私以外の全員が棄権を為された」

「……どうして?」

「門派の教えにより予選を固辞した私を代表にする為、と聞く。予選出場選手が皆で協議し、より美濃関の勝利を確実とする為にそうしたのだと。これにより、私は唯一の選手権者となり、出場を余儀なくされた。皆一廉ならぬ手練れであったが、我が一身上に過ぎぬ事情により刀使としての誉を失うことと相成った」

「……それで」

 舞衣は未だ中等部に上がる前であり、初めて聞く話であった。

「それで、その年の美濃関はどうなったんですか」

「私の一回戦棄権により敗退した」

「……」

 舞衣には、言葉も無い。

「私が一回戦で仕合うこととなっていた相手は、優勝候補筆頭、折神紫以来の名手と名高い鞍馬流の此花寿々花だった。美濃関は逃げた、と後々噂されたそうだ。私は大会から帰ったその足で学友に訣(わか)れを告げ、山に入った」

「……」

「此花寿々花が私と仕合えず大層悔しがった、ということも、その此花が全く無名だった刀使に敗北した、という話も風の噂に聞いた」

「獅童真希さん……」

「勝敗は時の運、斬り合いとなってしまえば勝つも負けるも有る。鬼の寿々花と言えど敗れることもあるだろうと往時思ったものだが、次の年度、同じ獅童真希に再び敗れたと聞いた時は心底、驚いたものだ」

「そんなことがあったんですね」

「御前試合にて名を挙げようとする皆が皆、此花寿々花にどう勝つかに思いを致していた。あのお人に勝つことが、全国の刀使の頂点となることなのだと皆考えていた。試合というものに縁遠い私もそう思っていた」

 ここまで語って、観世思惟は嘆息する。

「獅童真希とは如何なる者かと、思ってはいた。此花寿々花をどう破ったのかと聞いてみたかったが、もはや刀使と関わることも無い身と諦めていた。しかし今私は此花寿々花と再会するを得た。獅童真希と会う機会も訪れよう。全て、舞衣さまの御陰」

「さま、は止めて下さい。私はただ、可奈美ちゃんと一緒に居たかっただけです。本当に大したこと、してませんから」

「相分かりました、舞衣さま」

 直ってないじゃない、ああもう、ほんとうに、と思わなくもなかったが、ここは大目に見ることに、舞衣はした。思わぬ話を思わぬ形で聞けたのだし、代価は十分であるように思われた。

「さて、出来た」

「これは……?」

 木切れはいつの間にか、女形(めぎょう)の姿を現していた。

「先の斬り合いでの賊の出で立ちを彫り出し申した。参考とされますよう」

「……ありがとうございます、思惟さん」

 

***

 

 特別祭祀機動隊の平時は待機、荒魂出現の報を受けてより後出動するのが、本来の姿だ。警察というよりも消防にその在り方は似ているのかも知れない。出動の無いときには学業と訓練に明け暮れるのが専らであった。

 警邏の刀使、などというものが都内に見られ始めたのはここ数か月のことである。もちろん、鎌倉特別危険廃棄物漏出問題に端を発し、荒魂現出の頻度が考えられないほど上がったのが原因である。出動待機するのがバカバカしいくらいに現れるようになったので、どうせ現れるのだから、待機本部から息せき切って駆け付けるより現場の近くに配置をしていた方がいいという考えに至ったわけだ。

 そのような時局であるから、つい最近までなら補導されていたような時間に、中高生である刀使が制服に帯刀して闊歩する光景も珍しいものではなかった。

「ありがとうございましたー」

 コンビニのバイト店員の挨拶に送り出されるのは、そんな刀使たちであった。

「緊張したー」

「大げさよ」

 などとお喋りしている。この年頃であるから、深夜のコンビニでの買い食いはなかなかの冒険行であったのだろう。手に手にアイスを持ってコンビニの自動扉をくぐった刀使たちが、

「「「きゃああああ!」」」

 と三人揃って派手な悲鳴を上げて飛び上がる。

 後ろにはコンビニの出入り口が閉まって居た。これが支えとなるはずが、自立開閉可能のスマートゲートであったから、三人がお尻をぶつけるまえにジェントルに扉を開いた。その結果三人が三人ともに、コンビニ出入り口に尻もちをつく結果となってしまった。

「ま、まままま真希さま!?」

「どうして、どうしてこのような場所に?」

「……ん?」

 ギロ、と三人を見下ろしたのは、呼ばれた通り、獅童真希であった。

 もちろん、ただ真希に出くわしたのであればここまで驚くことは無かったであろう。

 ここまで驚いたのは、出くわしたのが普段の真希ではなかったからだ。

 真希は御刀を携えていた。

 帯刀していたのではない。抜き身を無造作に、肩に担いでいたのだ。

 担ぎ太刀――

 試合で用いられる構えではない。専ら戦場で、太刀携えての行軍に用いられる。無造作に肩に乗せていると見えて、そのまま斬り下ろせば即袈裟となる為、敵の潜む戦場ではこれがよく行われた。

 それのみではない。

 真希は写シを張っていた。

 写シというものは、張れる時間にも限りがあるから、斬り合いが始まってから張るものである。斬り合いがいつ終わるか分からないから、なるべく電池を使わないようにしたいのが人情だ。

 然るに真希は写シを張っている。

 ということは既に斬り合いは始まっているのだ。

 斬り合う相手は?

 それらしい相手は自分たち以外にはいない。

 だから三人の刀使のコは、職務怠慢のかどでぶった斬られるのではないかと、びっくりしたのである。

「隊長は」

「……へ?」

「隊長はどのコだ」

「わ、私です、真希さま!」

 真ん中の娘があたふたと立ち上がって敬礼を行うが、左手にアイスをもったままだから今一つ様にならない。

「そうか。誰も落としたりしていないな」

「え? 何を……」

 とそこまでいって、全員が全員、尻もちを付きながらもアイスを死守していることに気づいて蒼白になるやら赤面するやらである。

(みんな、食い意地張りすぎよ!)

 怒られる。

 いや怒られるで済むのか。この場で撫で斬られてもおかしく無い。真希はすでに斬り合いの構えであるのだ。

「君」

「ひっ……」

「よく鍛えてるな。あれでこぼしたり落としたりしないなんて、たいしたものだ」

「……へ?」

「だけどいいかよく聞け。近郊に刀使を狙う賊が出没しているんだ。賊は御刀で武装しており非常に危険。連絡は受けているはずだ」

「はつはい!」

「僕が賊だったらどうしたつもりだ。部下の命は守れたのか?」

「もっ、申し訳ありません、真希さま!」

「分かればいいんだ。部下に死に遅れるなよ。必ず部下より先に死ね。でないと、後悔するぞ。死ぬほどな」

「はいっ! 努めます!」

「よろしい。さてと、僕も一つ、買っていくか。結構、美味しそうだ」

 一変して真希は、にっこり微笑む。

「はっ、」

 真希の一言から数拍、隊長の刀使も部下のコたちも、何が起こったか分からなかったようであった。どうやら首が繋がったと理解した三人は、顔を輝かせる。

「は、はい、真希さま!」

「雪見大福がセール中です、真希さま!」

「クリームたっぷりシュークリームも高価ながら無視できません!」

「ありがとう。気を付けてね」

 刀使たちと入れ違いに、真希はコンビニに入っていく。

 抜き身を肩に担いだままでだ。普通なら通報コース間違いなしだが、真希は違う。

「お疲れ様です、店員さん」

「お、おつかれさまです親衛隊さん! どうしたんですか段平担いで」

「お役目の筋なんです。お騒がせして申し訳ない」

「そ、そうですか、何事かと……ご苦労様です」

 親衛隊の制服を知らない者は都内には居ない。ましてや獅童真希は間違いなく、都民に最も名の知れた現役刀使であった。御刀を手に写シを張って店内に立ち入っても通報されない程度には、都民の信頼は厚かった。

「怖かった……」

「でもかっこよかったね」

「馬鹿、真希さまには寿々花さんじゃん」

「えー」

 などと口々に言いながら、先ほどの刀使たちはきゃいきゃいとはしゃいで駆け去るようである。

(大丈夫かなぁ……それにしても……)

(きゃあ、って言われた。きゃあって)

(何も悲鳴を上げてぶっ飛ぶことないじゃないか)

(そりゃあ見てくれはあれって自覚あるけど、こう見えて繊細なんだぞ僕は)

 出会いがしらに悲鳴を上げられるのはさすがに傷つく。凄みやハッタリは要らぬ斬り合いを避けるには良いと云うが、そのメリットが真希にはあまり嬉しくない。

(やっぱり寿々花が第一席をやればいいんだ)

(寿々花がどう思ってるか知らないけど、僕が勝ったのってたった二回だけじゃないか。勝率だったら寿々花の方が上なんだし、綺麗だから紫さまと並んでも見劣りしないし。どう考えても親衛隊の席次の決め方は間違ってるよ)

 しかし、今は己が第一席であるのだ。

 此花寿々花に勝利して、そう呼ばれているのだ。

 勝たねばならない。負けてはならない。己が勝てぬということは、己に敗れた者たち皆が勝てぬということだ。己が負けるということは、己に敗れた者たち皆が負けるということなのだ。己が勝てなければ、敗れれば、寿々花が敗れるも同然なのである。

(今まで、僕より強い刀使ばかりと試合って来た)

(だけど僕は勝ってきた)

(今度も僕は勝つ。辻斬りの刀使よ、君が僕より強いとしても。いや、僕より強いからこそ)

 僕は獅童真希。折神家親衛隊、その第一席だ。

 

***

 

 思惟の木彫りは未だ粗削りに過ぎぬものであったが、恐ろしく特徴を捉えていることを、舞衣は知っている。

 だから迷わず参考にした。

 制服が偽装である可能性も考えたが、一先ずは錬府の在校生名簿の顔写真に絞って検索をかけたら、それらしい人相はすぐに特定できた。

(辻漣(つじ・れん)……高等部二年)

 漢字で二文字、ひらがなで四文字。簡潔な名の女人(にょにん)であった。

(流儀は……やっぱり登録なし)

 大抵の刀使は学んだ門派を身元の証左として記するものだが、この刀使にはそれがなかった。

(多分、あえて記していないんだ)

(ヒントがあるんだ、ここに。流儀が分かれば、可奈美ちゃんなら何か知ってるかも知れないのに)

 どんな手品にも種がある。その筈だ。

(その筈、なんだけど……)

 考えあぐねて、舞衣は思惟の木彫りを眺めやる。

 全身像であった。

 頭身が縮まっているせいか、ちょっぴり可愛らしい。

 そういえば舞衣も自分の像を彫ってもらったことがあるのだけれど、あれも可愛らしかった。今はあれ、どうしたのだろう。

(……)

 見つめる舞衣を、賊の木彫りがじっと見つめ返してくる。

(なんだろう。何かを見落としている気がする)

 だけど一体何を?

(先の斬り合いでの出で立ちを掘り出した――そう思惟さんは言ってた)

 ならばこれが、辻恋の構えなのである。

 居合の斬り合いともなれば、写シが間に合うかどうかは分からない。文字通りの斬殺合戦であることを、自らも居合に通じる舞衣は知っている。

 辻漣はだから、この姿に我が死生を託しているのだ。

 託すに足るなにかが、その像に、その姿に――

(……)

(…………)

(………………)

 沈思数分。

 舞衣の瞳は辻漣の差した御刀に吸い寄せられていた。

「……思惟さん」

「如何なされた」

「思惟さん。謎が解けました」

「謎が解けたとは」

「手品の種が分かったんです」

 即座に舞衣はスマホを取った。

 連絡先は、衛藤可奈美である。

 

*** 

 

 獅童真希はかつて世を沸かせた刀使であったが、その真希以上に日本を驚かせた刀使が在る。

「はい姫和ちゃんチョコミントアイス」

 若き次代の英雄と呼び声も高い衛藤可奈美は、その自覚があるのかないのか、先ほど真希が買い食いを注意していた、その一本隣の通りで、コンビニのアイス売り場を買い荒らしていた。

「可奈美お前。チョコミントさえ与えていれば私がご機嫌だって思ってないか?」

「え!? ちがうの!?」

 こいつとは何時かケリをつけると内心拳を固める十条姫和の横では、糸見沙耶香が無心に右手のバニラを舐めている。左手にはシャーベットアイスの二天一流だ。左が溶けださないうちに右のバニラを平らげるつもりであるらしい。

「刀使友達とみんなで買い食い! うん一つ夢がかなったよ」

「ささやかな夢だな、おい」

「だって一度、やってみたかったんだもん。あーあ、舞衣ちゃんたちも来れば良かったのに」

「舞衣には、大事な調べものがあるから」

 この沙耶香のセリフはほぼ、あむあむというくらいにしか聞きとれない。

「さあみんな行こ!」

「まだ食べ終わってないだろ」

「何言ってるの、買い食い、立ち食いと来たら次は歩き食いだよ!」

「まだ続いてるのか、可奈美、お前の夢は……」 

 頭が痛いのはチョコミントの冷たさのせいだけではない、多分。

(まあどうせ止めても飛び出すんだろうから)

(一人で夜の街に放り出すより、この方がましだろう)

 正体不明の居合を使う、正体不明の刀使。

 衛藤可奈美が飛びつかないはずがない。姫和を含む五人が五人、そう読んだ。勝手に行方知れずになるまえに、鈴を付けて解き放とうと考えたのだ。その鈴が、姫和と沙耶香の二人というわけだ。

(いや、二人ではなく三人、か)

 何処に居るかは分からない。

 しかし、おそらく、古波蔵エレンが居る。

 付かず離れずで、追尾してきているはずであった。

(あえて合流しないのは、賊の油断を誘うため……そして最悪私たち全員が秒殺で斬られた場合、データを持ち帰る為か)

 姫和と沙耶香が鈴なら、エレンは紐といったところか。

(普段はあれな奴だが、正直頼もしい)

 三人で四つのアイスを平らげたころには、深夜もたけなわとなっていた。

 厳戒の都内の夜は早い。明るかった電飾も絶え、もはや人通りもまばらとなった通りを歩んでいた時である。

(……む)

 正面から歩んでくる姿がある。

 歩むにつれて街灯が照らしては隠すその姿は、帯刀した女人と見えた。

 姫和は歩みを止めた。

 可奈美と沙耶香も同時に足を止めていた。

 向かってくるのは刀使だ。だが、敵か味方か。

 賊なのか。そうでないのか。賊ならば戦わねばならぬが、賊でないならばそうはいかない。この分別の必要は、姫和たちの不利である。

 しかし先方が賊であったとしたらばその不利はない。なぜなら、自分以外の刀使は全て敵であるからだ。

(おい)

(……ん!)

 姫和と沙耶香は視線を交わす。

 敵か味方か分からない。そんな相手は敵とみなすべきだ。この場合、それが無難だ。敵と備えるためには、先ず先手を取って鯉口を――

「待って!」

「!?」

 止めたのは可奈美だった。

「御刀に触っちゃだめ」

「何故だ可奈美」

「斬られる」

 何を言っているのか、と思ったのは一瞬であった。可奈美は悟ったのだ。姫和にも沙耶香にも見えていない何かを。そして、絶体絶命の窮地に陥ってしまったことを。

 可奈美の認識はただちに二人に共有された。

(御刀に手も触れていない。斬り込んでくる兆候は皆無――)

 だからこそ危うい。姫和と沙耶香は想起した。賊は手品を使う。御刀を抜くことなく迅移を使って斬り込んでくる――

(確かに、絶体絶命――けど残念だったな辻斬り。私たちは三人だ)

 姫和は凄愴な笑みを浮かべる。

(鯉口を切れば、切った奴をお前はその手品で斬る)

 だけど、二人は生き残る。鯉口を切って写シを張る。賊は二人を腹背に受けることになる。

(唯の二人じゃあないぞ。一人は錬府の切り札、学長肝煎りの秘蔵っ子。今一人は禍神(まがかみ)をも退ける史上最強の刀使)

 この両名を退ける手品の種を持ち合わせているかどうか、実に見ものだ。生きてこの目で見ることが出来ないのが残念だ。

「姫和!」

「姫和ちゃん止めて!」

 気配を感じたか。流石可奈美。流石沙耶香。

(二人とも、後は頼んだぞ)

 姫和の右手と左手が動こうとする、その時であった。

 

 ねねー。ねねねねー。ねねー。

 

 ぶち壊しの着信音が場違いに響く。ねねがここに居た訳ではなく、可奈美がスマホの着信音にねねの鳴き声を収録設定していたのだ。舞衣よりの着信が可奈美のスマホに在ったのはまさにここであったのだ。

(((ここで着信!?)))

 三人が三人ともコケた。

 隙であったはずだが、これは賊にとっても思わぬ事態であったらしく機を逸した。

 一しきり鳴いたねねの鳴き声が止まる。

 可奈美が出ない為、諦めたのだろう。

 何ら状況が変わったわけではない。

 賊らしき刀使は捕捉した。拿捕は可能だろう。しかし引き換えに三人の内一人は確実に斬られる。 

「電話に出られては如何か」

「!?」

 これは三人の誰の言葉でもない。

 賊の声であった。

「先方をお待たせすまいぞ」 

 もちろん着信に応じることは出来ない。

 これは挑発だ。

 スマホに手でも伸ばそうものならそこを斬られる。賊はこちらの喉笛に刃を突き付けているも同然であった。三人は写シも迅移も行えぬ丸裸同然。但し三人であるから一人が斬られてもあと二人で賊を斬ることが出来る。 

 帳尻が合うように見える。しかし、誰か一人でも斬られることは、三人にとって敗北だった。

 一方賊はどうか。

 わからない、しかし万が一。

 万が一三人の内一人討ち取れれば、我が身斬られてもそれで善しと考えていたのであればどうか。

「……五分の戦は居合の戦に非ず。しかし今は多対我。まさしく我が戦なり」

 賊は言い放った。

(……こいつは……)

 姫和は確信した。可奈美も沙耶香も同様であろう。

 三人は三人とも名の有る刀使だ。ならば一人でも斬れれば、斬られても良い。

 三対一ならば斬られても恥にはならぬからだ。三人とも名の有る刀使ならばなおのことだ。

(こいつは命を惜しんでいない……!)

 一人斬れればいいのだ。我が身が斬られてもいいのだ。

 三人が三人とも、それは負けだ。賊を斬ったとしても負けだ。

 しかし何故。どうしてそこまでして――

「ペット荒魂の鳴き声がしたので来てみれば……世を騒がす辻斬り刀使、というのは君か?」

 三人の窮地を救ったのは、聞き知った声であった。

「!?」

「……獅童真希!」

 真希の声が降ってきたのは、たった今賊が歩んできた方であった。

 その声が降ってきた方向から、真夜中を背に、獅童真希が歩んでくる。

「……!」

 真希は既に、白刃を抜き放っていた。さらに写シを張っていた。肩に抜き身の御刀薄緑を横一文字に担ぎ上げ、袖を抜いた制服をはためかせつつ、一歩、また一歩と坂を下ってくる。

「なんと……」

 賊には鯉口を切ることなく迅移を行う手段があった。

 その有用性は、相手が刀使としての術力を発揮出来ない状況で己にはそれを用いた奇襲が可能であるという点に尽きる。

 その優位はあっさり粉砕されていた。何せ真希ははなから御刀を抜いて写シまで張った状態である。それだけのことで御刀を抜くことなく刀使の技を行える賊の超能力と対等の条件に立ってしまっている。

 いやむしろ、賊の奇襲を封じた時点で、精神的に優位に立ったと言えよう。

 昼間寿々花に工夫を問われ「無い、有るとしてもいい」などと応えた意味はこれであった。抜き身の段平を引っ担いでのし歩いていたのは、伊達でも酔狂でもなく、この為であったのだ。

「折神家親衛隊第一席、神道無念流獅童真希。一手所望仕る」

 賊は明らかに意表を突かれていた。都会に潜んで何時どこから現れるか、現れないかも知れぬ賊を相手とするのに、会敵する前に白刃を抜いて写シを張っている者がいるなど誰が想像し得ようか。

「来ないのか。ではこちらから行くぞ」

 というこのセリフは真希の後ろから来た。音速にも達しようかという、迅移による踏み込みである。

 ガツン、という音は真希の薄緑がアスファルトを斬り割った音であった。

 食らったら、写シを張っていたとしても失神コースであったろう。

 己も迅移を遣うことで、辛くも真希の打ち込みを躱した賊であったが、それで助かったとは言い難かった。中空高く飛びのいた賊の目が、地上の獅童真希の目と合う。

 真希はしっかりと賊を補足していた。

「ちいい」

 空中に在る賊に逃れる術はない。受けたところで地面に叩き落され、そこを四人で鱠切り(なますぎり)にされて終わりとなる。

「……ならば相打ちあるのみッ」

 受けず、斬る。

 真希は視線の先に、賊の表情が変わっていくのが見えた。

 敵に驚も惑も無い。そうと知って、構わず真希は飛んだ。

「獅童真希ならば道連れに不足なし……ッ!」

「僕もだ、辻斬り!」

 魔鳥と化した二名の刀使の、宙空での激突――

「止めて……!」

 意外な人物がそれを阻んだ。

 いや、その人を知る人間には、意外ではなかったかも知れない。

「真希さん、止めて!」

「衛藤可奈美!?」

 宙より舞い降りたのは二名ではなく、三名であった。後から飛んだ可奈美が、真希の剣を阻んだのである。

 一つ間違えば賊に背を斬られるところであったが、賊も意表を突かれたか、それは行わなかった。

 その代わり、脱兎と化して退避する。

 着地と同時に迅移を用いたのだ。見事な引き際であった。

「沙耶香、待て!」

「……?」

 追おうとした沙耶香を姫和が止める。

「……こっちを手伝え」

 そう言われて沙耶香は状況を悟った。

「そこをどけ」

「今斬り殺す気でしたよね! 真希さん!」

「道を外れた刀使だ。誅殺の命令は追って正式に下る。退くんだ、衛藤可奈美」

「退きません!」

 そうか。そうなるだろうな。

 姫和は思った。沙耶香も少なからずそう思った。

 可奈美は賊の刀使を討ちに来たわけでは、始めからなかったのだ。誤解を憚らず言うならば、賊を守りに来ていたのである。

 その可奈美と、真希が対峙していた。

 御刀を抜き放ってである。

 衛藤可奈美と獅童真希との斬り合いが始まろうとしていたのだ。

 

***

 

 伍箇伝の剣とは一線を画する点が、折神家親衛隊の剣には有る。

 相手となった刀使の写シを斬って剥いだ後、止めを刺しに行く点である。

 これより後の物語になるが、タギツヒメとの決戦に際し作戦総指揮を担当した綾小路学長相楽結月(そうらく・ゆづき)は真希と寿々花の両名を本隊より分離、高津雪菜(たかつ・ゆきな)の元へと差し向けている。二人は結果、高津学長の身柄を確保し退去したが、事と次第によっては級首を持ち帰ったであろう。

 その前哨となった戦闘ではかつての朋輩であった皐月夜見(さつき・よみ)を二対一で斬り伏せている。

 このように、折神家親衛隊の役儀は荒魂退治のみに留まらない。配下の伍箇伝の刀使に対する暴力装置の役割も帯びているのである。親衛隊の選考基準が荒魂討伐の戦績よりも剣対剣の技に重点が置かれているのはこのためであった。

「人を斬殺したことは」

「あるわけないよ」

 かつて親衛隊の頂点であった刀使が問い、現役最強と呼ばれた刀使が答える。

「理由も聞かずに殺しちゃうなんておかしい」

「戦場で敵兵に事情を聞く兵がいるか」

「ここ戦場じゃないもん。東京だもん」

「同輩を斬ろうとする者が居る。斬られかねない同輩が居る。戦場でなくてなんだ」

 問答の最中にも両者は虚実を凝らしている。

 実際に斬って行かないのは、その隙がないからに過ぎない。右を打とうとすれば阻まれ、左に凪ごうとすれば躱される、そのようなやりとりを繰り返している。これは別条超能力でも未来視でもなんでもなく、相手の動作となる前の予備動作を目視で判断して結論を得、再試行を行うことを繰り返しているのだ。

 未熟者には全く動いているように見えない為、何故攻めぬ、何故戦わぬと思えたりするが、これを見ている沙耶香も姫和も素人ではない。

(止めなければ……しかし、どうやって)

(いつ、どこで二人に割り込む?)

 沙耶香も姫和も、斬り合いに加わっているに等しかった。下手に入って行けば最悪、可奈美と真希の両方から斬られかねないのだ。

(沙耶香お前は可奈美を)

(姫和、真希を頼む)

 視線を交わし、それのみを定める。

 しかしその機がやってこない。やってきたときにはもう遅いかもしれない。

 可奈美や真希が斃れたとしたなら、これはもう辻斬りに斬られたものと結果は変わらない、沙耶香にも姫和にも敗北であった。

 そしてその機は、意外に早く意外な形でやってきた。

 獅童真希を覆う幽世(かくりよ)の紗幕が明滅を始める。

 写シの効果が切れつつあるのだ。

「さっきのアイスの分も使い果たしたか」

 ぼそり、と真希がそのようなことを言う。昼間から今に至るまでを写シを張ったままで過ごしていたのだから無理からぬことであった。

 真希に不利が傾いたと見えて、その実そうではない。

 ここで真希に御刀を用いた場合、日本刀による斬割と同等の事態が真希を襲う。

 日本刀は人体に対し筆舌に尽くせぬ破壊を行いうる兵器である。もし可奈美がその新陰流の技をもって日本刀を用いれば、如何なる相手も死あるのみであろう。

 にもかかわらず、不利に陥ったのは可奈美の方に他ならない。

 何故ならば、写シを叩いて相手の戦闘力を削ぐことが不可能となったからである。写シの無い真希の戦闘能力を削ごうとするなら生身を斬るより他にないが、例え四肢を断ち切ったとしても真希は投降しないだろう。

 命を絶つより他にない。しかしそれは可奈美が、可奈美自らの魂を断つに等しい行いである。

(峰打ち――)

 ならば気息を断つ。

 可奈美に閃いたのはそれであった。

「何の、勝負はこれからだ。さあ行くぞ、史上最強」

「――!」

 御刀の加護を失ったにも関わらず、歩み進んでくる真希に対し可奈美は真っ向から斬り込む。

 迅移からの真直斬り。

 剣道においては面打ち、唐竹割りである。

 常人なら頭蓋を砕かれる。しかし相手は真希だ。きっと大丈夫の筈と祈った一太刀を、真希は躱しもしなかった。

「……なんだ、それは」

 まともに、頭で受けた。

 ガキン、というもう二度と再び聞きたくない音がした。

「そんな腰の引けた打ちで人が殺せるか」

 真希がガッキ、と掴んだのは頭上の千鳥の白刃である。普通なら引いただけでも指が落ちるが、真希の左手は縦横に丈夫な布が巻かれていた。これは実戦で白刃を掴んだり掴まれたりしたことの有る真希なりの工夫であった。

(……さすがは真希さん)

 剣の技を知り尽くす可奈美にすら念頭に無かった受けであった。

(私の知らない剣を、真希さんは知ってる――)

 左手で千鳥を掴み止めた真希の右手には、御刀薄緑があった。このままでは斬られる。押しても引いても千鳥はびくともしない。ならば――

「ぬん!」

 真希が右腕のみで軽々と振り抜いた薄緑が空を切る。

 左手には千鳥の白刃がまだ残っていた。

「……なんと」

 避け切れぬと判断し、可奈美は思い切りよく御刀を捨てたのだ。

 もちろんこれは投降を意味しない。

(柳生新陰流、無刀取り――)

 幾度となく可奈美の窮地を救ってきた、頼みの技であった。

 迅移を行う刀使に対しては至難だが、今の真希はそれを行えない。目算は十分に立つ。

 我に刀が無く、敵に刀のある状況は不利には違いないが、それを我有利と思ってくれれば利は可奈美に傾く。舐めているのかと激高して斬り込んできてくれれば思うつぼだ。刀を持った人間の動作というのはその実、非常に限られたものになるのであり、可奈美のような後先の技に長けた刀使には見切りやすいものである。

(沙耶香ちゃんの時や久世勢至(くぜ・せいし)さんの時は上手くいった)

(今度もやるんだ)

(やるしかない――!)

 心は決める。逆に、身は柔らかく保つ。

 入れいてない力は、何時どこにどのようにも入れていける。あとはタイミングだけであった。

(真希さんの御刀を――)

 奪う。それに集中していた可奈美には、予想だにしない行動であった。

「面白い」

 ガキンと、アスファルトに薄緑が直立する。

(……へ?)

 可奈美が奪うはずの真希の御刀を、こともあろうに真希本人が、地面に突き立てたのだ。

 続いて可奈美の佩刀千鳥が、アスファルトに突き立てられる。

 これで真希は素手となってしまった。

「組もう」

 組もう、とは早い話が、組み打ちをやろうと誘っているのである。

 素手で戦おうと言っているのだ。

 そして可奈美が誘いに乗ろうと乗るまいと、真希はもうその気になっていた。

「八卦よい」

 高々と持ち上げられた右足が、ダンと音を立ててアスファルトを鳴らす。次に左足が、同様に大地を打つ。

 四股――

 相撲取りが取組の前にやるあれである。

 もちろん、隙だらけであったが、隙を突こうにも可奈美はあっけに取られていた。

(え? そう来るの? え?)

 可奈美の心境は大体、こうであった。

「さあ来い、衛藤可奈美」

 いや来いって言われても、と可奈美は思った。無刀取りを行う者として柔の心得くらいは可奈美にもあったが、体格ならば全然向こうが上。学校でもちっちゃな方であった可奈美は、正直あんまり勝てる気がしない。

(勝てる気がしないけど……)

 それ以上に面白い!

(こんなの初めてだ! それに――)

(真希さんは確かに大きいけど、お兄ちゃんほどじゃあない!)

 年上の男兄弟と遊んだり喧嘩したりして来た可奈美である。でかい相手を恐れはしなかった。

「だ、ああああああああ!」

「おおっ!」

 可奈美の雄たけびに、真希が獅子吼で応じた。

「おい、沙耶香!」

「ん!」

 ここまでに至って、やっと姫和と沙耶香が自失より脱した。

 あまりの成り行きに、あっけに取られていたのである。

「二人とも止めろ! 止めないか!」

 御刀を納め、制服の袖をまくった姫和は、時ならぬ場外乱闘に加わっていく。

(悪いがこっちは手一杯だ。あとは頼むぞ、エレン)

 恐らくは思っている通りに動いてくれているだろう頼れる仲間に、姫和は後を託す。

 

***

 

 辻漣は、逃げられぬと悟った。

(これまでか。しかし追ってくるのは相応に名の有る刀使と見た。この追っ手なりとも討ち止めて冥途の土産としよう)

 元より漣に、存命は念頭にない。

 門派の名を世に残せれば、ただそれだけでよかった。あまりにも時流に取り残された我が流の、名のみでも残せればそれでよかったのだ。

 その為、相手が一名であった場合は斬り合いを避けて来た。相手を斬ってしまうと名が残せないからだ。例外は抜き合わせると同時に写シを張れる、観世思惟のような居合の達人のみである。思惟のような達者であれば、電瞬の抜き合わせであってもただちに写シを張り命を全うするだろうが、尋常の伍箇伝の刀使はそのような訓練を受けてはいまい。

 もっとも相手が複数であればその心配はない。

 誰か一人を斬り倒せば、残余の者に斬られても名は残せる。

(正々堂々斬り合って斬り勝てるものならば、このような真似は無用でああらろうが)

(生憎と我が流は卑怯闇討ちを前提とする居合の業。教えを行い得るは実戦の斬り合いのみ)

 荒魂災害により廃屋となった小屋の内へと逃れたのは、複数に囲まれる事態を避けるためでありまた、門派の技を活かせる閉所でもあったからだ。野戦を専らとする伍箇伝の刀使には室内戦闘のカリキュラムはないはずであった。

 小屋に施錠はもとよりされておらず、中に目ぼしいものは何もなかった。床はなく、コンクリートで舗装された土間であった。大きさからいって乗用車用を複数納めるガレージ、といったところだろう。

 鍵のない引き戸を閉めたのは、追手に開く手間をかけさせる為であった。

 開くところを、開こうとしたところを斬る。或いは――

「お邪魔しますヨ」

 右と左に、引き戸が開く。

 現れたのは、夜目にも輝く金髪碧眼。古波蔵エレンその人に、紛れもない。

「引っかかりませンか。流石デス」

「着込み? 違うな。或いは金剛身を遣うか」

 エレンは既に抜刀していた。

 抜刀してはいたが、構えを現わしてはいない。越前康継(えちぜんやすつぐ)を右手に、ぶら下げているのみであった。

 エレンは、そうと一見して、何等かの仕掛け有りと見取って攻勢待機を選んだ恋の洞察力を、流石と言ったのである。

「聞き及ぶぞ。長船に無類の奇剣を遣う異相の刀使が居ると」

「美人(びゅーてぃー)刀使、と聞いては居ないんですネ。ちょっと残念」

「末期(まつご)の相手に不足無し。存分に手柄を求められよ」

「オー。それは私の役目ではありまセン。スコアを上げるのは薫の役目ネ」

 独特な……独特に過ぎるセリフ回しで、エレンは無構えのまま一歩を前進する。

 漣の刃圏に向かって、である。

 右の手に康継を無造作にぶら下げたまま、である。

(金剛身に相当の自負有りと認む)

(この手の相手に抜き付けても我が刃を痛めるだけ……ならば)

 漣は迅移を抜いた。

 斬りかかったのではない。迅移を用いて後ろに下がったのだ。

「!?」

 そうしておいて、隅に置かれていた工具箱――最初に武器になりそうなものの見当を付けて置いた――を放り投げた。

 エレンは意表を突かれたようだった。

 そんなに速いスピードで投げてはいない。放物線を描く工具箱はしかし、中空でバラバラと多数の工具に分裂した。ドライバー、金槌、ペンチにスパナ、モンキーレンチ。当たっても死にはしないが、当たりどころによっては大けがになりかねないものばかりだ。

 そこで金剛身を使ってしまえばその心配はない。

 その後に殺到、一太刀。

 これが漣の意図であった。

「……成程、流石実戦剣士ネ。ケド……私の仕掛けが一枚上デス!」

 エレンの、康継を握っていない左手の方の指が、わずかに動きを現わす。

 攻撃的な動作ではない、と見えた。

 しかしそれを切っ掛けとして、ガレージの四方で、パン、と何かが破裂する音がした。

(……!?)

 それを切っ掛けに殺到してきたのは、工具どころのものではなかった。

 殺到して来たのはガレージそのものであった。

 最初はゆらゆらと、揺れ始めた後はあっという間に、ガレージ自体が倒壊して来たのである。

「……爆薬だと!」

 写シがある。即死しはしない。しかしこれ程の質量の下敷きになって、写シは維持出来ない。生身に戻った我が身は下敷きとなって死するのみだ。 

 一方のエレンは――

 金槌もスパナもまともに当たった。ドライバーなどは尖った方が当たった。しかしびくともしなかった。その後に梁が当たり、天井が当たり――

(いったい、何段階の金剛身だ、あれは――!)

 漣が認識出来たのはそこまでであった。エレンに降りかかってきたものが己の身にも降りかかってきた。生き埋めとなる痛みと苦しみを、始めて漣は経験した――

「……噂にたがわぬ奇剣。見事なり、古波蔵エレン」

 襟首を捕まれ。大根か何かのように瓦礫から引っこ抜かれた辻漣は、所感を述べた。

 口は動いたが、体は動かぬ。生身なら全身が粉々。これほどのダメージは流石に、経験がない。

「意識があるとは、凄いデス。コチラこそ、見事と言っておきましょウ」

 一方のエレンはまるで平気のようであった。

 エレンの金剛身は、建物の倒壊にも耐えたのである。

「元USネイビーのグランパ直伝。戦争は得意デス。皆には、こんなところ見せられないデスけどネ」

「……流儀を所望」

「タイ捨流、エレン派とでも言っておきまショウ」

「新田宮流免許、辻漣。最期の相手が貴公で良かった――」

 辛くもそこまでを発して、漣は意識を失った。

 

***

 

「きゃあああああ!」

 夜回りから戻った真希たちを迎えた、此花寿々花の開口一句が、この派手な悲鳴であった。

「また、きゃあって言われた……きゃあって……」

「悲鳴も上げますわ!」

 血糊でべっとりの頭髪、顔には青タン引っかき傷、衣服は所かまわず破れ放題――夜回りより帰還した元親衛隊第一席、獅童真希の出で立ちは大体、こんな感じであった。

 壮絶なキャットファイトの結果である。

 その相手となったところの衛藤可奈美の出で立ちもまあ、似たり寄ったりであった。

「…………」

「あの……舞衣ちゃん……?」

「……うっ」

「……あ、あの……」

「……ぐすっ……えっ……」

 こっちは、無言で泣かれた。

「あわ、あわわわわわ」

 周到狼狽した可奈美は助けを求めて左右の沙耶香と姫和を見回してみるが、犯人はお前だ、的なジト目で左右から睨まれたのみであった。ちなみに沙耶香は右目に、姫和は左目に青タンが出来ている。

「ま、待って、待って舞衣ちゃん、舞衣ちゃんごめん、ごめんなさいあやまりますもうしないから泣かないで……」 

 一人とぼとぼ、ふらふらと彷徨い去っていく舞衣に必死で追いすがる可奈美の後ろから、

「真希さん」

「……はい」

「ちょっとこっちいらっしゃい」

「痛っ。耳引っ張るな。おい離せ。離して。ねえ寿々花! ねえ!」

 このような感じで、真希と寿々花が続く。

「成仏しろよ、二人とも……」

 見送る姫和が合掌し、横で沙耶香が何となくまねっこする。

 この時点で賊、辻漣は古波蔵エレンによって拿捕され、事件は一応の終結を見ていたのだが、可奈美たちの一件落着はちょっと先となる――

 

***

 

 舞衣は木彫りを通じて、可奈美は本人を見て、賊の手品について同じ結論に達していた。

 辻漣は御刀を抜かずに迅移を発動していたのではない。

 御刀を抜いて発動していたのだ。

 漣は御刀の鯉口を切った状態で、腰に差していた。もちろんそれでは何かの拍子に刀が鞘から脱落してしまうから、傘立てに傘を立てるように、鞘を縦に差して御刀を立てる。このような刀の差し方を「落とし差し」という。柳瀬舞衣は木彫りの辻恋を観察していて、そのことに気付いた。

 一方、衛藤可奈美は、「会敵する前に予(あらかじ)め鯉口を切って置く」ことを秘伝とする恐るべき居合剣法、新田宮流の存在を知っていた。その為遭遇した瞬間に、からくりを見て取ることが出来たのだ。

 辻漣が己の流名を伏せていたのは、新田宮流と知れれば手品の種が知れてしまうからであったのだろう。

 可奈美への連絡が不通となった後、舞衣はエレンへとそれを伝え、その為エレンは対応することが出来たのだが――しかし、新田宮流の教えの「会敵する前」とは一体何時の事なのか。

 居合とは急襲に備える技だ。では、急襲される前とは一体何時か。

 神ならぬ身にそれが分かる筈もない。分かっていれば御刀を抜いておれば良く、それが出来ぬ不測の敵襲であるからこそ、収めていた刀を抜いて治めなければならない。その為の居合の筈ではないのか。

 つまり新田宮流に云う不測とは不測ではない。目の前に人が居れば必ず斬りかかってくるのだ。居なくても何処かから、敵が現れ斬りかかってくるのだ。それに備えんがために鯉口を切るのだ。

 常在戦場という言葉も生易しい、不測を「予め」として備える居合を超えた居合の理念を持つ新田宮流居合はかつての水戸藩お留流、幕末において「薩摩っぽと水戸っぽには近づくな」と、示現流と並び維新を震撼させた名流であったが、維新に敗れ、太平洋戦争に敗れて後は門人は絶え、気息奄々となっていった。

「我が師は死出の土産に私に皆伝印可を与えた。流儀を私に託したのだ。しかし、私の考えは違った。あまりに時代に取り残されてしまった我が流はここに幕を引くべきとだと思ったのだ」

「剣を取っては荒魂を斬るべし、その為の刀使。人を斬って我が身を全うする為の技は今の世には無用――そう考えたのか」

「しかし技は無用と消えても、名のみは残さねばならぬ。師や私、滅びゆく者の無念を世に伝える形でな。特祭隊の刀使を斬れば、我らが学長の助けになるという思いも働いた」

 特殊刀剣類管理局局長代行、真庭紗南(まにわ・さな)自らの聴取に対し、辻漣はこのように応えた。

「斬られた刀使の身内は我が身を恨もう。しかし恨みと共に、我が名と我が流のことも忘れまい」

「雪菜は……高津雪菜(たかつ・ゆきな)錬府学長は承知だったのか?」

「一切不承知。全ては我が一存で為したること」

「その言葉に嘘はないな」

「誓って」

「そうか……」

 紗南は安堵の溜息をつく。少なくとも雪菜が、刀使の暗殺を命じたわけではないことが判明したからである。

「思えば師は、刀使を恨んでいたのかも知れぬ。荒魂狩りという居場所の在る伍箇伝の事を、人を斬らずとも身を立てられる刀使のことを妬んでいたのかもしれぬ。師は決して口外しなかったことだが、今となっては、私にもそれが分かる……」

「……」

「事ここに至っては、我が身は如何様にも処されたい。伍箇伝の裁きに、服し申し上げる」

「私闘に御刀を用いたとあれば、帯刀を許すことが出来ぬのが御状(ごじょう)だが……」

「如何様にも。元より、事が済んで我が身が在れば自裁する心算でありましたが故」

 紗南は再び、溜息を付く。

「私の裁きに従うか」

「はい」

「どのような裁きにも」

「……はい」

「……分かった。先ずは聞け。今より話すことは、刀剣類管理局でも知る者は一握りだ」

「謹みまして」

 辻漣はその首を、深々と垂れる。

 

***

 

「去るのか、東京を」

「貴君は……」

 今や早朝は闇ではなく、朱に染まることも蒼ざめることもない。

 折神家に程近い対面10メートルほどの車道の横断歩道を挟み、観世思惟は思いがけず、再び辻漣と対峙する。

「東都擾乱もたけなわのこの時局、何故に去る」

「貴君こそ何故に、ここに在る。良くて謹慎、悪くて投獄の裁きの筈……逃れてここに居るというなら、何故私の前に現れた」

 言葉を交わすには不自由な、10メートル程の距離が二人の間には空いている。

 その間に在るのは車道であり、不自由なく会話を行おうとすれば、相手の在る対岸まで、横断をせねばならないわけだが、思惟も漣も、それを行おうとしない。

「かつての決着、ここで着ける為と言ったら何とする」

「立合いならば受けぬ。だか斬りかかられるは貴君の勝手自由。そうなっては我が居合の技を用いるも、やむを得ぬこと」

「神明夢想林崎流は居合の技にあって立合の技に非ずか」

「新田宮流とて同様と心得るが」

「如何にも」

「……」

「……」

 信号が明滅し、その色を青から赤に変える。

 このようなことが、数日前にもあった。

 しかし既に夜闇は去り、陽光の明るさがあるのみでる。

「……問われるならば答えよう」

 思惟が沈黙を破った。

「伺おう」

 漣が答えた。

「一つには、我が身は荒魂を討つべき技を持たぬ故、ここに在っても役に立たぬからだ。今一つには我が師舞衣さまに、舞衣さまのご家族並びにご学友の守護を申し付けられたが故にだ」

「……それならば、恐らく貴公の師はそれを申し付けたに非ず」

「何故そうと言える。我が師舞衣さまと貴君に面識はない筈」

「柳瀬舞衣の人成りならば伝え聞く。見下した物言いを殊更に好まれぬお人であると。風聞通りならば貴公の師は恐らく、貴公を見込んで頼んだのだ。ご学友やご家族を守ってはくれないかとな」

「それであれば我が身においては師命を帯びたも同様のことだが……正直解せぬ。我が剣は、御刀を用いても人を斬るのみ、荒魂を討つならご学友の方々の方が通暁しておられよう。ご家族を荒魂から守るにしても、ご学友を頼られればよかろう。信望厚き舞衣様より一声あれば、馳せ参じる刀使は少なからず在る筈」

 弱音、とも聞こえる思惟の言葉であった。

 同様の所感を世に懐いたことが恐らくは有るであろう漣に対し、同感を得られるのではないかという思いが、言葉尻に見え隠れする。

「師の命は不満か」

「不満もなにもあるまい。師命ならば従うのみ」

「不満なのだな」

 漣は笑みを浮かべた。

 人の悪い笑みである。

 思惟は、苦笑いを浮かべるより他にない。

「御刀を携えた荒魂が、出没していることは承知か? 観世思惟」

「貴君は冗談を申されているのか? そのようなことがあろうはずがない。御刀たる玉鋼を人に抜かれたが故、神は荒魂と為られたはず。御刀を携えていればそれは荒魂ではなく、神で在られよう」

「冗談ではない。今や我ら刀使の真の敵は荒魂に非ず。御刀を携え、神性を取り戻した言わば荒神」

「……何と」

 刀剣類管理局においても、特別祭祀機動隊においても極々一握りしか知られていない真実を、漣は告げようとしていた。

「先日、荒魂の棟梁と称する者の姿を録画で見た。人の手足に目鼻を備え、人語を操るようだったが、なるほど確かに、人の身を備えるならば人の武器も使いこなすか」

「それのみではない。どうやら綾小路は、荒魂側に付いた様子。大荒魂の走狗となり、伍箇伝の剣技をもって我らと敵対することとなった」

「その話、どこで聞かれた」

「刀剣管理局、真庭紗南局長代行」

「むう……」

「遠からず戻る、剣の時代が。斬り合いの技が荒魂退治の切り札となり、天下の趨勢を左右し、人類の存亡を分ける時代が来る」

「剣の、時代――」

「私が知る相楽結月(そうらく・ゆづき)学長は、責務を全てに優先されるお方。特祭隊側に付いた刀使の身内にも、必要あらば躊躇なく刃を向けよう。最悪、人質とするやも知れぬ。急がれた方が良い。これを防げるは我らのみぞ」

「我ら?」

「貴公に同道し助力せよ、というのが局長代行よりの処分」

「無罪放免が伍箇伝の下した処分だと言うのか」

「如何なる処分であっても、従うのみ。剣に敗れた今となっては我が身は死者も同様である故にな」

 事実上、処分されたのは己ではないのかと、思惟は真庭紗南の悪い笑みを思い描く。かつて斬り合った相手と道行を共にせよとは。

「上意とあらば仕方あるまい。好きにせよ」

「仕方なくはない。好きで来ている。何せこの先待つのは、剣の時代。そのような時代ならば生きてみたい。それに――」

「それに?」

「我が身と同じく居合道を志した貴殿に、聞いてみたかったのだ。今までの時代をどう生きたのか、これからの時代を……剣の時代をどう生きるのか」

「剣の時代、か」

 思惟は、腰のあずき長光の重みを改めて感じる。

(守れるかも知れない。人を斬る技しか知らぬ、我が剣で)

(守れるかも知れない。この時代、何かを――)

 歩行者用信号が明滅を始め、赤から青へと変わった。

「……致仕方(いたしかた)なし」

 前とは逆に、今度、先んじて信号を渡ったのは、思惟の方であった。

「そう来なくてはな」

 かつて相戦った二つの孤影は、眩い朝日に長い影を曳きつつ、今や肩を並べて歩みゆく。その歩む先は今や等しく、待つのは等しい敵であり、そしておそらくは同じ時代、同じ未来であった。

「ひとつ行くとするか。剣の時代とやらを」

「行くとしよう。我らの時代へと」

 両者の笑みが等しい笑みであったかどうかは、両者のみぞ知る。

 

                                  了

 




 ここまで読んで下さりありがとうございました。まきすず尊い(お礼)
 今回も、敵も味方も可奈美級の能力値になってます(ただし、やっぱり可奈美は主人公効果で大正義最強無敵)。多分次に書くとしてもこんな感じかと。
 あとずっと登場してない燕結芽ですが、これはもう他に優れた結芽ちゃんがたくさんいるのと、とじともの方ではやっぱり亡くなったようですが、綾小路学長の動向やとじとも主人公を見ているとどうも再登場の機運もワンチャンありそうに思えたりして、二の足を踏んでいます。ぶっちゃけあんな可愛いつば九郎は俺にゃ無理!
 もし次を書くなら、刀使ノ巫女2期(3期?)的な長編ものもやってみたいかと思います。本家がやってくれるといいなあ。
 今度は年明けになる感じですが、その時にまたお会い出来たらと思います。

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