月夜が照らす墓地、そこに大扉を開く音が響き、我が親友の墓場に闖入者が来た。
――不死人か――
気配で入ってきたものの正体を察し、吾輩は気配を殺し、親友の墓石の影に隠れながら接近し、墓石の上に登る。
ちょうど親友の墓石に手を触れようとした所で、一声発し噛み殺そうと前脚で抑える。
だがそこで嗅ぎ覚えのある臭いに気が付いた。
――そんな……っ!馬鹿な!――
その不死人はかつて小さき頃の吾輩と共に、アルトリウスの仇を討ったあの不死人だったのだ。
そしてここに来たと言う事は、深淵へ行くことができるあの指輪が目当てなのは間違いない。
不死人は一旦北の不死院に幽閉され、このロードランで火継ぎの巡礼を許された時、北の不死院からこのロードランへ出されると言う。
そして吾輩も北の不死院から強き不死人が、最近輩出され巡礼を開始したと、アルヴィナから聞かされていた。
キアランを経由してアルトリウスから託されたこの指輪を、死を賭して守り抜くのが吾輩の使命、だが……その巡礼者が、時を越えて吾輩を助け、親友の仇を討った恩人とは!
――世界とは……悲劇しかないのか!――
吾輩は、かつての戦友の力を試さねばならない悲しみに暮れ、月に向かって吠える。
そして前脚を除け、我が剣を地面から抜き放った。
――……抜け!――
戦友は動揺しながらも、戦うしかないと意思を固め、その背にある黒騎士の剣を抜く。
吾輩も咥えた剣を構え直す。
互いに譲れぬ使命があるのならば、どちらかを屠るまで続けるしかないのだ。
そして悲しい決闘が親友の墓場で始まった。
戦友との戦いは死闘の一言に尽きた。
互いにアルトリウスを知った仲で、マヌスを倒す為に共闘している内に連携し、相手の手の内は読めている。
不死人は吾輩の剣を何度か受けながらもエスト瓶で回復し、隙を見て吾輩の体をその手に持つ剣で刻む。
そうしている内に互いに満身創痍の状態となった。
吾輩は体がふら付いて荒く息を吐き、戦友もエスト瓶が尽き剣を構えるのもやっとの状態だ。
――次の一太刀で勝負を決める!――
吾輩は剣を咥え直し、不死人も剣を持つ手に力を籠める。
互いに飛び掛かり勝敗の一太刀を決めたのは……戦友だった。
――見事!――
この身がソウルとなって消え行くのを感じ、最期に一声鳴いた。
最後に吾輩の目に映ったのは、兜の奥で涙を零す戦友と、決闘を見守る為なのか木陰から見守っていたアルヴィナ……そして。
――アルトリウス!――
親友の姿だった。
書いてる途中で当時の感情を思い出して書くのが辛かった……。