ゴブリンスレイヤー ―灰色の狼―   作:渡り烏

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ダークソウル的に言えば牛頭のデーモン的な回。
山羊?ゴブリンロードで良いんじゃないかな(投槍

今回の三本立て
・オーガ討伐
・経歴開帳 in 神々の間
・継承の障害


Victory Achieved

「ふん、所詮ゴブリンでは雑兵役ですら満足にできんか。

 貴様ら、ここが我らが砦と知っての狼藉とみた!」

 

「オーガ!」

 

「金等級案件じゃない!」

 

 広間の奥から出て来たのはオーガ……人食い鬼であった。

 妖精弓手と女魔術師が悲鳴のように声を上げる。

 

「……ゴブリンではないのか」

 

「オーガよオーガ!人食い鬼!あんた知らないの!?」

 

「上位種が居ることは予想していたが、こいつに関してはまだ教わっていない」

 

 最近ゴブリン退治以外にも依頼を受けるようになった為、他の冒険者や受付嬢から他のモンスターについて教わっているが、目の前の存在に関してはまだ習っていなかった。

 

「貴様……魔神将より、軍を預かっているこの我を……侮っているのか!」

 

 ゴブリンスレイヤーの言い分に腹を立て、手に持つ体格に見合った棍棒を振り下ろす。

 棍棒が地面に当たり、破片と風圧が一党を襲う。

 

「きゃあああ!?」

 

 体重が軽い女神官が吹き飛ばされそうになるが、すんでの所で剣狼が体で受け止める。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ふん、獣風情にしては良い反応だな」

 

 オーガが嘲笑うように鼻を鳴らしながら言う。

 

「師父を舐めないで!」

 

「師だろうが何だろうが獣には変わらん。カリブン()……」

 

――ウォン!――

 

 オーガが何かを唱え始めると同時に剣狼が吠え、背にある大剣を抜きながらオーガに肉薄し、その腕を斬り付ける。

 

「がぁ!?」

 

――ヒュン――

 

「流石ね灰色!」

 

「後衛は上階に退避しろ。

 前衛はここに残る」

 

 隙だらけだと言いた気に鼻を鳴らす剣狼。

 ゴブリンスレイヤーはその隙に、後衛へ退避するように指示する。

 

「貴様ぁ!」

 

 術の邪魔をされ怒り心頭のオーガが棍棒で剣狼を攻撃するが、剣狼はそれ以上の反応速度で回避する。

 師である狼の騎士の剣戟に比べれば、この程度は十分に反応できる。

 

「仕事だ仕事だ土精ども、砂粒一粒転がり廻せば石となる。≪石弾≫(ストーンブラスト)!」

 

「隙だらけよ!」

 

 剣狼が作った隙に、先に上階へ上がった鉱人道士と妖精弓手が攻撃をしかける。

 

「はぁ、はぁ、……っサジタ()インフラマラエ(点火)ラディウス(射出)!」

 

「グ……!?」

 

 息を切らせながらも詠唱を唱え女魔術師が放った≪火矢≫(ファイアボルト)がオーガの右目を抉る。

 

「やった!」

 

「よくも我の右目を!」

 

 オーガが激昂し、手短にあった岩を掴む。

 

「っ!いと慈悲深き地母神よ。か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください!≪聖壁≫(プロテクション)!」

 

 オーガの考えを察した女神官が≪聖壁≫を唱え終えるのと、オーガが岩を投げつけたのは同時だった。

 張った≪聖壁≫に岩が命中して砕け、≪聖壁≫もその威力を十分に吸収しきれず崩壊、飛び散った破片が後衛を襲う。

 

「うおお!?」

 

「きゃあ!」

 

「ちょ、大丈夫!?」

 

「な、なんとか!」

 

 女武闘家が声を掛けると、手すりから後衛の四人が顔を出し、女神官の声が聞こえてきた。

 とっさに急所をガードし、手すりの影に入ったことで無事だったようだ。

 

「おおお!」

 

「ふん!」

 

 蜥蜴僧侶が龍牙刀で切りかかるとオーガは棍棒でそれを受け止める。

 そこへ女武闘家とゴブリンスレイヤーが両足の腱を狙い斬り付ける。

 だがオーガに対してゴブリンスレイヤーの剣で付けた傷は浅く、女武闘家の長剣は鍛錬の成果もあって、彼よりも深い手傷を負わせたが、それが却ってオーガを苛立たせる事となった。

 

「硬い……っ!」

 

「ちょこざいなぁ!」

 

 薙ぎ払うように振られたオーガの棍棒が女武闘家に迫る。

 迫ってくる棍棒は酷くゆっくりと映り、蜥蜴僧侶とゴブリンスレイヤーが駆け出し、上から見ていた後衛が声を上げようとしたその時、彼女の目の前を灰色の壁が遮った。

 

――ウォン!――

 

 それは大剣を振り上げた剣狼の背だった。

 オーガの棍棒は下から掬い上げる様に、その軌道に合わせて振り上げられた大剣により、その勢いがいなされて大きく空振った。

 

「なにぃ!?」

 

 女武闘家を薙ぎ払おうとして振った渾身の一撃をいなされたオーガはたたらを踏み。

 剣狼は着地の際に、振った勢いのまま右側へ咥え直した大剣をその胴へ斬り付ける。

 肉は裂け、中の臓物が飛び出る。誰がどう見ても致命の一撃(クリティカル)だ。

 

「がっはぁ!」

 

「大丈夫ですかな!武闘家殿」

 

「は、はい!」

 

 腰を抜かした武闘家を蜥蜴僧侶が抱え起こし退避する。

 

「お、おのれ獣風情がぁ!」

 

 棍棒を杖代わりにし、片膝を突きながらオーガが片手を上げる。

 詠唱か?いや、これはフェイントだ。

 剣狼はゴブリンスレイヤーを視線だけで見る。

 彼は投げナイフを投げつけた。

 オーガの表皮に対しては余りにも非力な一撃だが、それでもオーガの気を引くことには成功する。

 続けて女魔術師の≪火矢≫と鉱人道士の≪石弾≫、妖精弓手の連射がオーガの爪先に刺さる。

 

「ぐあああ!」

 

 どうあがいても足がある生物にとって急所なそこを狙われ、激痛と共に苛立たし気に雄叫びを上げ、後衛に再び岩を投げつけようと右腕を伸ばすと、同時に、剣狼の大剣がその腕を床ごと断ち切る勢いで振り下ろされる。

 右腕は切り落とされ、血を噴出させながらオーガは再び絶叫した。

 

「な、なぜだ!なぜこのような!」

 

「簡単な事だ」

 

 右腕を失ったオーガが困惑の声を上げる。

 相手は個体では非力な相手ばかり……いや、1頭はそうではないが、何故強大な自分がここまで追いつめられるのか。

 オーガは残った左目でゴブリンスレイヤーを見る。

 

「幾ら個体で優れていても、お前は1匹だ」

 

 ゴブリンスレイヤーの声を聴きながらオーガは立ち上がろうとするが、再び剣狼の一撃が左足の腱と骨を奪い、もんどりうってオーガは広間の床に倒れ伏す。

 

「そして俺達は、個体では確かにお前に対して非力だが、その代わり数が居る」

 

 それはゴブリンスレイヤーが5年間、ゴブリンに対峙して得た経験だった。

 確かにゴブリンの1体1体は人間に対して非力だ。

 だがその代わりゴブリンは多数で1人の人間を襲う。

 剣狼がオーガの残った左腕の肘に大剣を突き刺し、そのまま大剣を引き倒して肘から先を切断する。

 

「がああ!」

 

 これまでに負った傷で激痛にオーガが悶える。

 彼は半ば肉達磨と化していた。

 

「だから……お前なんぞよりゴブリンの方がよっぽど手強い」

 

 ゴブリンスレイヤーの最後の一刺しがオーガの脳天に刺さる。

 オーガの断末魔が響き、遺跡における戦いが終わった。

 

 

 

「怪我はないか?」

 

「掠り傷程度よ。

 と言うか、何で前衛の方が無事なのよ!」

 

「あの、私一応死にかけたのですが……」

 

 再び合流して妖精弓手が言った文句に女武闘家が答える。

 眼前に金属塊が迫ってくると言うのはかなりの恐怖だろう。

 

「あ……うん、ごめん」

 

「とにかく皆さんご無事でよかったです」

 

「しかし先程の剣狼殿の受け流し(パリイ)と致命の一撃は見事でしたな」

 

 蜥蜴僧侶が先程の剣狼の一撃について語る。

 

「と言うかまともにダメージ与えてたのって、魔術師の≪火矢≫と灰色の剣だけだったわね」

 

「そうじゃな。わしの≪石弾≫も悉く効いておらんかったし」

 

「私の≪火矢≫だって2発目は表皮に当たったけど、軽い火傷くらいしか入らなかったわ」

 

 各々反省会を行おうとする。だが仕方が無いのかもしれない。

 ただのゴブリン退治かと思っていたらオーガとの遭遇である。

 しかもその言葉を信じるならば、魔神王の将の配下であった実力者だ。

 気を抜くなと言う方が無理がある。

 この場で唯一気を抜いていないのはゴブリンスレイヤーと剣狼だけであった。

 

「治癒の水薬と強壮の水薬を飲んだら奥を探索する。

 まだすべてを探索したわけではない」

 

「さすがに先程のオーガで打ち止めではないですかな?」

 

「いや、すべてを探らねば気が置けん。

 奴等は馬鹿だが間抜けではない」

 

 ゴブリンスレイヤーの言葉で即座に反応したのは新人3人組であった。

 ゴブリンの怖さを身を持って知っているだけに、彼の言葉を聞いた後の行動の速さは訓練された兵士のようであった。

 

 

 

 結果的に言えば奥を探索しても出て来たのはガラクタの山と、厳重に鍵が施された宝箱が2つであった。

 

「これはまた厳重に固めたわね……」

 

 妖精弓手がごちるがそれでも鉱人道士の鍵開けでそれも難なく突破された。

 仕掛けや細工は鉱人の領分だ。

 

「こっちは……鍛冶の指南書かの?

 ぱっと見じゃが、さっきの種火を使った武器を鍛える物のようじゃ」

 

「こっちには魔法金属のような黒い欠片があったわ」

 

「ふむ……今までの発見物から見て、種火はその欠片を使った特殊な鍛冶の材料ですかな?」

 

「その様じゃの。

 じゃが生憎とわしは鍛冶を専門にしとる訳ではないから、こいつらは扱えんがな」

 

「ならば、ギルドの工房主に聞いて見るのが良いだろう。

 彼なら何か知っているかもしれん」

 

 ゴブリンスレイヤーの意見に一党は同意する。

 こうして遺跡に巣くっていたゴブリンとオーガの退治は、無事に終了したのだった。

 

 

 

大きな種火を取得しました。

種火の技法を取得しました。

楔石の欠片を15個取得しました。

 

 

 

 ここは神々の間。

 彼等は新たに現れた変なの(灰色の剣狼)の経歴を見ていました。

 ……いえ、正確には見てしまったのです。

 結果≪真実≫は口を噤み、≪幻想≫は両手で顔を隠して泣いており、地母神は地母神ではらはらと涙を零していました。

 何か様子がおかしいと覗きに来た秩序と混沌の神々、そして四方世界で信仰の対象となっている神々も一同に顔が曇っています。

 そして≪真実≫が口を開きました。

 

 あいつの行動に関しては、なんか変なのと一緒で今後も不干渉の方向で、しかし何かしらの冒険(シナリオ)も用意したい。

 

 ≪真実≫の意見は満場一致で可決した。

 

 

 

「お疲れ様です皆さん!中の様子はどうでしたか?」

 

「大方は掃討した。だが取りこぼしが居るかもしれん」

 

「分かりました。後は我々にお任せを」

 

 外で帰りの馬車を用意していた森人と二三言葉を交わして馬車に乗り込む。

 吾輩も体を振るってから馬車に乗り込むと、女武闘家が吾輩の大剣を背から外してくれた。

 

――何時もすまんな――

 

「いえ、弟子として当然の事ですから」

 

 本当に吾輩には勿体無いくらい出来た娘だ。

 これで結婚をして子宝に恵まれれば文句はないのだが、如何せんこの手の行職で女が目立つと、一般の男が手を出しにくいというジレンマがある。

 ……キアランはどうだったのだろうな。

 

「今回の戦利品は術師殿曰く鍛冶道具とその材料だったか」

 

「そうなのよねぇ。お宝とか期待してたんだけどなぁ」

 

「馬鹿を言うでない。これだって鍛冶師にとっては大金を払ってでも手に入れたい代物じゃ」

 

「でもこれどうしましょうか……」

 

「この古文書を解読できれば使い道が分かるじゃろうが、わしもこればかりは専門外だからの」

 

 鉱人道士が100ページほどの古文書を広げる。

 そこには吾輩でも読めない字が書かれていた。

 

「ま、兎も角今回の冒険は、ご苦労様と言った所じゃな」

 

「うむ、万事滞りなく遂行できた上、拙僧も祖先への功徳を積めた」

 

「私も、これで故郷への害が無くなったから安心できるわ」

 

 三人の銀等級が気を抜いて話し始める。

 

「しかし剣狼殿の剣技はまさに達人の一言、貴殿の活躍がなければ全滅していたでしょうな」

 

――いや、吾輩が居なくても、ゴブリンスレイヤーが何とかしただろう――

 

 吾輩は一旦首を振って鳴いた後、ゴブリンスレイヤーを見る。

 

「あ、今の私でもわかったわ!

 確かに灰色が居なくても、オルクボルグがあの巻物(スクロール)で何とかしてたかも!」

 

「ほほ、確かにの」

 

「しかし、それでも苦戦は避けられなかったでしょうな」

 

――さて……――

 

 今回、単体でぶつかれば強力無比な強敵との経験を積めたのは僥倖だった。

 武闘家の娘もこれで次のステップに進める。

 マヌスに遭遇するまで吾輩とアルトリウスはそれこそ負け知らずだった。

 だがウーラシールへの遠征で吾輩は負傷し、親友は吾輩を守るために守りの盾で結界を張り、まだ剣技を十分に受け継げずに……深淵に呑まれた。

 その親友の仇を戦友と共に討ち、気が遠くなるほどの年月をただ墓守に費やした。

 

(だからこそ……)

 

「師父?」

 

 自らを見る吾輩に不思議そうに尋ねる娘。

 

(今こそ吾輩の……親友の剣技を、本格的に受け継がせる時……だが)

 

 見取り稽古では限界がある。

 だからと言って吾輩は喋れない。

 どうしたら良いのか……。




さて、そろそろ分岐を示唆した内容となっています。
解決のための方法も、感想からアイデアを頂きまして感謝しております。
問題は形状ですが……指輪で行くことにします。
魔道具が指輪なのは、生き物が呼吸するのと同じくらい自然な事ですからね。

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