ゴブリンスレイヤー ―灰色の狼―   作:渡り烏

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[壁];・ω・) <遅くなりました。


新たな道筋

 ゴブリンスレイヤー一党がオーガを倒して帰還してから3日目、今日も冒険者ギルドでは暇をしている冒険者達が屯していた。

 

「で、これがそのお宝だ」

 

 槍使いが冒険者ギルドの卓上に出したのは、先日の冒険で遺跡の宝箱から見つけた指輪と首飾りだった。

 指輪には獣、鳥、猩々、蜥蜴、幻獣の意匠が施されており、首飾りにも同じような飾りが付けられている。

 

「うちの鑑定でも引っ掛からねぇ。

 それで他の鑑定師にも見せたんだが全滅と来た」

 

「意匠からして……動物に、関係が、あると思うのだけど……ね」

 

「遺跡の様相はどんなものだったんだ?」

 

 槍使いと魔女の言葉を聞いて女騎士が聞く。

 

「規模としちゃそう大きくはなかったさ。

 ただ大型の動物が入りそうな檻が幾らかあったな」

 

「資料の類は?」

 

 重戦士の言葉に槍使いは両手を上げて肩をすくめ、魔女は静かに首を横に振った。

 

「そうか……しかし、この指輪と首飾りは対と見た方が良いな」

 

「そうだな。

 同じ意匠の違う装飾などそう多くない」

 

「んで帰りに神殿に寄って呪われてないか確認して貰ったんだ。

 ま、結果は白だったけどな」

 

 呪われた装備品を付けるなど命に関わる問題だ。

 そうでなくとも何らかの障害が付くことがある。

 冒険者の間で笑い話として有名なのは、装備したら下着の類が一生着けれなくなる呪い等だ……アマゾネスなら問題ないだろうが。

 

「しかしそう言われても、確認が取れていない物を着けるのは……」

 

「ああ、俺でもごめんだ」

 

 女騎士と重戦士が意見を揃えて言う。

 いくら呪われていないとはいえ、それが従属の魔法が掛けられたものならばシャレにならない。

 罠的な魔法……性格の狂暴化や理性の消失等の魔法だった場合も考えて、銀等級冒険者で試すのはやはり憚られる。

 

「しかし……様々な動物の意匠とは、動物を使役する類の物だろうか?」

 

「だが対象はこの首飾りを着けれるもの……か。

 ……狙ったような大きさだな」

 

 女騎士がそう言うと各々があの剣狼を思い浮かべる。

 その首飾りの大きさは、まさに彼の剣狼の首周りと同じサイズだった。

 

「そう言えば今日は剣狼の弟子の特訓だろう?」

 

「ああ、どうやら剣狼殿の師は私と装備が似ているらしい。

 剣技は剣狼殿の見取り稽古にとどめ、基本的な動きなどは私がするようにしている」

 

「片手に大剣、もう一方に大盾、それに全身鎧か。

 しかも灰色の剣技を見るに、生半可な鍛錬じゃ身に付かないな。

 それこそ白金……いやそこまで行かなくても、金等級まで上り詰めるくらいの鍛錬は要る」

 

「それに剣の方もな。

 かなり頑丈な奴じゃないと剣がすぐにダメになる」

 

 灰色の剣狼の剣技は飛んだり跳ねたりしながら、その大剣を縦横無尽に振り回す力と早さを兼ね備えた剣技だ。

 一撃大きいのを与えた後にバックステップ、それをしたかと思えば今度は大ジャンプをした後の叩き付け、地面に擦り付けるように左右に振り回し、相手に隙がないならば鋭い突きで相手の体勢を崩す。

 女騎士も互いに己の得物と同じ大きさの木剣で対峙したが、防戦一方だったのは記憶に新しい。

 

「そう言えば、彼らが見つけた魔法金属と鍛冶に使うと言う代物、それらの技術本の解読はどこまで進んでいる?」

 

「工程は……半分まで、進んだところ。

 ここの工房の、親父さんでも……あの種火は、扱えると思う、わ」

 

 話を振られた魔女がそれだけ口にする。

 

「あの魔法金属は……あの種火じゃないと、扱えない代物、なの」

 

「へぇ、じゃあ普通の武器が魔法の武器に早変わりって事か」

 

「いや、それが出来れば苦労はねぇんだがな」

 

 そこへ話に入ってきたのは、ギルドの工房長だった。

 

「あの金属を使って、長剣を鍛えてみたんだ。

 まず2回は1個ずつやって成功したんだが、3回目からが曲者でな。

 金属の要求量が2個になりやがったんだ」

 

「あーそりゃ痛いな。

 あれの入手手段も未だに分かってないんだろ?」

 

 重戦士の言葉に魔女が「いえ」っと答える。

 

「亡者の、死体から、稀に、取れるそう、よ。

 技法書にも、書いてあった、わ」

 

「亡者の死体ったって……あいつら神官の奇跡じゃないと倒せないんだよな」

 

「それと聖剣か、効きが悪いが属性か魔法の武器の類だな。

 神官の奇跡だと灰になってしまうが、属性剣や聖剣の場合は稀にその場に残ると聞いたことがある」

 

「へぇ面しれえ、じゃあ今度亡者関係の依頼があったら受けようぜ」

 

「まあ最初にこれをやるのはあの武闘家の嬢ちゃんだがな」

 

 その場にいた4人が工房長の言葉を聞き、4対の目線を向ける。

 

「鍛えた長剣で巻き藁を切ってみたんだが、これが元の切れ味から良くなっていてな。

 調子に乗って日が暮れるまで切ってみたんだよ」

 

「おいおい」

 

「まあ聞け、そこではたと気が付いて長剣を見てみたんだ。

 そしたらこれよ」

 

 工房長が一振りの長剣を抜いて卓の上に乗せる。

 そこには傷が僅かにしか付いていない長剣があった。

 

「おい、これ本当に日が暮れるまで巻き藁に振った剣なのか?」

 

「丁稚もそこに居た。

 なんならあいつに改めて聞いてくれてもいい」

 

「あいつに保証されてもなぁ……」

 

 俄かに信じられない工房長の言葉に、槍使いが頭を掻きながら長剣を見る。

 確かに一般の長剣に比べて刃が立っている。

 

「ちなみにそいつはほんの少し前まで、かごの中に入れられていた数打ち物だ」

 

「……出来上がったものを鍛え直すなんてできるのか?」

 

「普通は出来ねぇ。

 だがこの欠片と剣の金属が馴染むまで根気よく、そして折れないように打ち込むことによって、初めて鍛え直しができる。

 試しに丁稚にもやらせたが、あいつがやったら長剣が折れて欠片も1個ダメになっちまった」

 

「じゃあ欠片は残り10個か。

 それなら第一発見者のゴブリンスレイヤー達に回すしかないか」

 

 重戦士がそう言うと工房長は首を振る。

 

「いや6個だな。

 4個は賢者の学院に送っちまったから、量産できれば御の字と言う所か」

 

「魔神王が復活したばかりだからな。

 今のうちに使えそうなものを研究したいと言うのは当たり前か」

 

「と言うか貴重な素材を勝手に使ったのか?

 私としてはそっちの方が心配事なんだが」

 

「なぁに、さっき追加の報告書として送っといたよ」

 

「いや、そういう問題じゃねぇだろ……」

 

 工房長のあんまりな態度に槍使いが辟易する。

 

「本来全部ガメられても仕方ない所を、連中は3割も出したんだぞ。

 それにあの魔術師の連名入りで、恩師へ送付してある」

 

「しれっと第三者を巻き込むなよ。可哀そうに」

 

 しかし実際に、全て金に換えられてもおかしくない所を態々分けて送ったのだ。

 使用用途が現状、鍛冶に使えるくらいしか分からないので、あとは王都の頭の良い人達のお仕事である。

 

「それは兎も角、この技法の検証の為にも亡者狩りは必要そうだな」

 

「だがどうする?

 やろうにも魔法武器持ってるの槍使いくらいだしな」

 

「貸そうと思いや貸せるけどよ。

 使い慣れてない武器なんて危なっかしいだろ」

 

「剣狼d「「「無理だろ(、でしょ)」」」……そうか」

 

 女騎士が意見を出そうとするが速攻で否定され、長剣の切っ先を指で突つく。

 心なしかいじけ気味になっている。

 

「さて、そろそろ行くぞ」

 

「うむ……」

 

 そして重戦士に促される形ですごすごと退場、しかし気を使われて嬉しいのかちょっと足元が浮足立っている。

 

「まあ亡者関連の依頼があったら受けるよ。

 その分色付けといてくれよな?」

 

「ああ、ギルドの方には予め振り込んどくよ。

 欠片一つに付き金貨3枚だ」

 

「ヒュー!太っ腹だねぇ」

 

「鉱人の道士にも出させたからな」

 

 やはり鉱人としては未知の金属には目が無いらしい。

 

「なんでも親戚の鉱人に送るそうだ」

 

「ああ、金属の事なら鉱人に任せりゃ安泰だな」

 

「視点は、多い方が、良いもの、ね」

 

 そろそろ冒険に向かう時間になったので、槍使いと魔女が席を立ち、工房長も仕事に戻る為に工房へと戻っていく。

 金属の事に関しては一先ずこの場でお開きとなった。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

――……――

 

 剣狼が見守る前で武闘家と女騎士が正対する。

 武闘家の方はここ最近になって、やっと慣れてきた比較的安い品の半甲冑に片手半剣と盾のいで立ちで、筋力も順当に付いてきており、女騎士ほどではないがかなり動けるようになってきている。

 

「やぁ!」

 

「っは!」

 

 武闘家が仕掛け女騎士が両手剣で受け止める。

 亡くなった彼女の父親の修行の成果もあるのか、剣筋のブレも少なくなり、振りの速さも増している。

 それに彼女は今回のような稽古だけでなく、依頼や稽古がない日も鍛錬も行っており、その努力の成果もあるだろう。

 防がれた武闘家はバックステップで女騎士から距離を放す。

 

「それ!」

 

「っ!」

 

 女騎士が大盾で武闘家を圧迫しながら距離を詰める。

 武闘家も次に来る攻撃を予測して盾を構え、女騎士の大剣が彼女の盾に当たると同時に角度を変える。

 

「おお!?」

 

「そこ!」

 

 女騎士がバランスを崩したたらを踏む、そこに武闘家が左から薙ごうとするが、女騎士は強引に大盾を武闘家に当てた。

 

「あっ!」

 

 体に大盾をぶつけられ剣の出を潰され、受けた衝撃で体を倒された。

 両者ともに地に着くが先に起き上ったのは女騎士だ。

 

「ふふ、打ち合うたびに上達して行くな。

 それに先程の飛び込みながらの剣撃は見事だった」

 

「はぁっ!はぁっ!ありがとうっ、ございますっ!」

 

 遅れて武闘家も立ち上がり答える。

 そんな彼女等の鍛錬風景を、白磁の冒険者4名が見ていた。

 

「あれだけ動いて、よく息切れで済んでるな……」

 

「……あんたとは鍛え方が違うのよ」

 

「……足と腕の肉も、私のたるたるより張りが」

 

 新米剣士の呟きに見習い聖女と少女巫術師が答える。

 実際水浴びなどで女武闘家と共にする機会があるのだが、その時に健康的に鍛え上げられた無駄な筋肉がなく、張りがある肉体を晒された時の事を思い出し、両名は遠い目をした。

 そんな乙女の気持ちなど微塵も考えない相方の男二人は、頭の上にクエスチョンマークを出している。

 

「でも良いなぁ全身鎧」

 

「前に行ったゴブリン退治で、オーガと遭遇して討伐したからボーナスが出たんだろ?

 俺は頭目たちが一緒でもごめんだね」

 

「オーガなんて金等級案件、あんたじゃ無理よ無理」

 

「私も遠慮したいですね……」

 

 新米剣士の儚い希望に応えた知り合いたちの声は酷くドライだった。

 

「てぁ!」

 

「っあ!?」

 

 そこへ女騎士が武闘家の片手半剣を弾いた。

 だがそこで諦める武闘家ではない。

 

「やぁ!」

 

「おお?!」

 

 シールドバッシュからの正拳突きで、女騎士の腹を強かに殴りつける。

 武闘家の右手は女騎士の様に小手ではなく、鉄甲を装備している。

 防御範囲は劣るが、その分無手の際には不意打ち用の予備武装(サイドアーム)として使える。

 そのまま再びシールドバッシュを加えた後に足払いを狙うが、女騎士もそれに反応して大盾で防ぐ。

 

「よーし、そこまで!」

 

 重戦士の声で二人の動きが止まる。

 そして互いに礼をした。

 

「ふむ、武器を落とされても戦えるのは流石だな」

 

「はぁ、ありがとう、はぁ、ございます!」

 

「だが初見で通じる相手も居るだろうが、達人クラスだと読まれる可能性もある。

 やはり武器を落とさないように、しっかりと握れる体力を付けるのが課題だな」

 

「そうですね……師父もその辺り厳しいですし」

 

――ウォン!――

 

 剣狼は当然だとばかりに吠える。

 だが武闘家にとっては己の得物は剣だけでなく、己の拳と脚も武器な為その辺りは理解しているようだが、やはりリーチの差と言う物は如何ともしがたい。

 しかし最初は剣に不慣れだった武闘家も、今では立派な見習騎士になっている。

 

「しかし、剣も拳もかなりのものになってきたな。

 いっそのこと戦士(ファイター)を名乗ってみてはどうだ?」

 

「戦士……ですか」

 

「ああ、君が剣のみで戦う事に拘りはあるまい。

 ならば生き汚くとも出来る全てを使って、仲間のために戦うのならばそう名乗るのが順当だろう」

 

 格闘家や剣士と違い、純粋に戦う事のみに長けた役職。

 剣や弓、格闘術を高いレベルで扱う事が求められるが、武闘家が所属しているゴブリンスレイヤーの一党には、彼女を抜けば純粋な前衛がゴブリンスレイヤーと剣狼のみと言う前衛不足に陥っている。

 

(あれ、十分な気がしてきた……いやいや、前衛は多い方が良いよね!)

 

 1人と1頭でも十分な気もするが、前衛の枚数は多い方が安定感も増すので、武闘家は気にするのを止めた。

 

「しかし良い鎧を買ったな」

 

「はい、オーガ討伐の褒賞で買いました。

 名有り(ネームド)だったそうで、これを買ってもしばらくは生活に余裕が持てるようには……」

 

「ふふ、前はあのゴブリン狂いの仲間と思っていたが、最近は冒険をしているようではないか。

 だが世の中には件のオーガよりも強い奴など五万と居る。

 あいつは今の今までゴブリンしか興味がなかったから、これも剣狼殿の影響か」

 

「あの……」

 

「いや、悪く言うつもりはないんだ。

 以前の様にゴブリンばかりだと、周りからの妬みがな……本人は気にして無いみたいだが」

 

 重戦士が控えめに女騎士の言葉を継ぐ。

 彼にはゴブリンスレイヤーに少なくない借りがある為、少なくとも悪印象は持っていない。

 

「ゴブリン退治ってのは初心者の実力を測るだけでなく、力の無い奴の振るい落としの面もあるってのが、俺たち冒険者の共通認識だ。

 まあ銅より上になれる実力があれば安泰だが、それ以下の中堅組は自分達の食い扶持に響く、それでやっかみが多くなるんだ」

 

「じゃあ師父も……」

 

「まあ少ないだろうが良く思われていないだろうな。

 大概が混沌で悪辺りだろうが……」

 

「まあそれは兎も角として、どうだ?」

 

「どう……とは?」

 

 女騎士の言葉に武闘家は首を傾げる。

 

「戦士を名乗るかどうかだ。

 まあ私としては騎士と名乗っても構わんがな?」

 

「そっちが本命だろう」

 

 女騎士と重戦士が軽く言い合う中、武闘家は師である剣狼を見る。

 剣狼は武闘家の瞳を見つめ返すだけだった。

 

「……では」

 

 この日、女武闘家は女戦士になった。




どうも渡り烏です。
年末に向け仕事量が多くなってまいりました。
1月の中旬辺りまで忙しくなるので、投稿ペースは格段に下がるものと思われます。
せ、せめて1週間に1話投稿は目指したい……。

さて、前半は前回槍使いと魔女が見つけたお宝と楔石の欠片関連のお話。
後半は女武闘家のジョブチェンジ回となりました。
次回はアニメにそって水の街を予定しております。
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