作 「メインメンバーで言うと、君達兄弟だけだよね」
秋 「ならなんで…」
作 「よく分からん。タイトルはパッとひらめいただけだし」
第十三話始まります。
無粋な乱入者が現れ、中止になったクラス対抗戦から、およそ一か月経った。
一年生は詰め込みでISの基礎の基礎を教えられ、ISの実習も増えてきた。放課後、自主的に練習する人もかなりの数居る。
これには理由が有って、本来クラス対抗戦の優勝クラスの賞品だった学食のデザートの半年間無料パスが、6月の真ん中にある学年別トーナメントのベスト32に入った生徒に与える事になったからだ。
それを聞いた女の子達はにんじんに釣られた馬状態だ。
もちろん、専用機持ちも例外ではない。
さて、IS学園の近況はこんな感じで、今僕と夏兄の二人は男友達の五反田弾の家に遊びに来ている。
本来なら練習すべき所なのだが、正直言うと、女の園に居続けるのは精神的にしんどい。
「で? IS学園ってどうなんだ?」
格ゲーをしながら、対戦相手の夏兄に聞く弾。うーん、これも家庭版の楽しみだね。
「ぶっちゃけ言うと、女の園は実際いると男にとっては地獄だ」
「嘘付け! お前や一秋のメールを見る限り楽園じゃねえか! なんだよ、そのヘヴン。招待券はないのか!」
「テンション高いねー。ちなみに、招待券は今は無いけど、あるかもよ?」
「マジかよ!」
「どういう事だ、一秋?」
僕の言葉に喜ぶ弾に、疑問を浮かべる夏兄。
「まあ、行事とかなら招待券ぐらいあるんじゃない?」
IS学園は世界最強の武器を使っているだけあって、セキュリティーが高く、アポ無しだと、敷地内に入りすらできない。生徒の保護者ですらだ。
しかし、そうは言っても学校なのだ。一般の学校レベルの普通の行事だってもちろんある。そこに一般の方が入れるように招待券ぐらいあると思う。
「なるほどなー。そういや、蘭の中学もそうだしその可能性もあるか」
「もし、有ったら、弾に連絡入れるよ」
「頼むな。…よっしゃ、今だ!」
夏兄の隙を突いて、ハイパーモードで削りきる弾。
「やっぱ、イタリアのテンペスタは強いわ。つうか、えぐいわ」
今プレイしている格ゲーは『ISVS』という全世界で大ヒットを記録したゲームだ。この作品は第二回のモンドグロッソの機体データを元に作られている。
「たまには、別のを使えよ。イギリスのメイルシュトロームとかさ」
「いや、あれ凄く使い辛いし、技弱いし、コンボ微妙だし」
「じゃあ、僕の持ち機体のフランスのラファールカスタムは?」
「メイルシュトローム以上に無理だろ! なんだよ、ダメージ元がパイルバンカーしか無いし、リーチ短いしで使い辛さならメイルシュトローム以上だぞ!?」
「ていうか一秋、よくあれ使えるよな。校内じゃ、滅多にいないラファールの使い手でかなりの奴から知られてたし」
「だねー。最後の文化祭でトーナメントした時、ベスト8の時点で使い手いなくてビックリしたもん」
「俺としては暮桜が使いたかったんだけどな」
冬姉の暮桜は諸事情でゲームに収録されていない。…まあ、あれを入れたらクソゲー確定は固いけど。
「それで選んだのが、アメリカのストライクラプターなんだよねー。ぶっちゃけ、テンペスタにラプターはかなり無理でしょ」
「いや、ラファールよりはマシだぞ。絶対」
弾の言葉にうなずく夏兄。
ラプターは遠距離こそ微妙だが、近距離戦はゲーム内でもトップクラスの性能である。スピードや防御面もかなり優秀だ。
それに比べ、ラファールはパイルバンカーの一言で済む機体だ。それさえ当てれればほとんど勝てる。しかし、それ以外の性能が底辺レベルなのでピーキー過ぎる。
ちなみにテンペスタは高性能なバランス型で強キャラの代表格だ。それゆえ、対策もたくさんされている。
「何時も観てて思ってたけど良く潜り込めるよな」
「慣れれば行けるよ。多分」
「「いや、無理」」
夏兄と弾がハモってそう言った所で、弾の部屋のドアが派手に開けられた。
「お兄! さっきからお昼出来たって言ってんじゃん! さっさと食べに…って一夏さん!」
「あ、久しぶり。邪魔してる」
「僕も居るよー。久しぶりだね、蘭ちゃん」
ドアを開けたのは弾の妹の五反田蘭ちゃん。歳は僕達の一つ下で、中学三年生。ドアを開けていきなり夏兄に反応した事から分かるように、彼女も夏兄に惚れている。弾はこの事について「一夏を弟に迎えるのは嫌だ! 女性問題で家庭が崩壊しそう」と言っている。夏兄は誠実だとは思うけど、それを否定は出来ない僕が居る。
ちなみに僕はたまに夏兄の事で蘭ちゃんから相談をされる事が有った。それが、成果が有ったとは言い難いが…。
「一秋さんまで…。どうして」
「どうしてって、遊びに。ていうか、弾。蘭ちゃんに言ってなかったの?」
「どうやら、そうらしい…。すまん! 蘭!」
平身低頭で謝る弾。世の中は女尊男卑とか言われているけど、この二人は昔からこうだったらしい。
「あの、お二人ともお昼どうぞ。まだですよね?」
「うん、そうだよ。じゃあ、ありがたくいただこうかな。ね、夏兄」
「そうだな。いまから、昼を買いに行くのも面倒だし。ありがとうな、蘭」
「い、いえ…」
そう言って蘭ちゃんは部屋を後にした。
「しかし、蘭との付き合いもかれこれ3年になるけど、まだ俺に心開いてくれないのかね」
「「えっ?」」
夏兄の言葉に絶句の僕と弾。これは、蘭ちゃんには聞かせられないかな…。多分、泣いちゃうよ。
「いや、だってよそよそしいだろ。今もさっさと部屋から出て行ったし」
その言葉を聞いて僕と弾は夏兄をスルーして小さな声で話し出した。
「一夏の奴、全然変わってねえなあ…」
「あれはそう簡単に変わんないよ。ていうか、僕は半分諦めてる」
「実の弟に見捨てられるとは…」
「不治の病レベルだよ、夏兄の鈍感は」
「ぶっちゃけ、何人が一夏の事狙ってる?」
「僕の知る限りだと、今の所、鈴ちゃんをいれて4人。でも、まだ序の口だよ」
「どこまで増えるのかねぇ…」
「「はあ…」」
僕と弾は同時にため息を吐いた。
「そういや、一秋にそういう浮いた話は無いのか?」
「今の所ないね。というより、女の子達がそれぞれを警戒し合ってるんだよ」
「怖いな、それ。…中学の時も一秋は告白されていたのに断っていただろ? 少し気になって聞いたんだけどよ」
「うーん、好きな人は一応いる。会った事は無いけど」
「どんな人だ?」
「釣り仲間のおじさんの友人の娘さん。歳は僕と同じ」
「一目ぼれか?」
「そうなるね」
「二人とも何話してるか知らないけど、さっさと飯食いに行こうぜ」
その夏兄の言葉を聞いて僕達三人は下に降りた。
降りた先には五反田兄妹の祖父五反田厳さんが経営している『五反田食堂』があり、今日のお昼はそこの賄いだ。
中学時代は美味くて安く、量も多いのでたまに夏兄と食べに来ていた、姉さん二人と来た事はあまりない。
理由は姉さんたちの仕事が忙しいのでたまにしか帰ってこない事と、そのたまに帰って来た時も僕や夏兄の作った物が食べたいというので外食をあまりしなかった。
僕達4人は五反田食堂の一角でお昼を摂りはじめた。
「そういや、蘭。着替えているけど、どっか行くのか?」
そう、下に降りてくると蘭ちゃんは部屋に来た時の様なラフな格好ではなく、結構おしゃれな格好をしていた。説明できないのは僕のファッションの知識が無いからである。
「えっ、あっと、その…」
突然の事で言葉がうまく纏まらない蘭ちゃん。
「あっ、デートか!」
「違います! 気分です、気分!」
夏兄の答えにくい気味に返した蘭ちゃん。
蘭ちゃん、かわいそうに…。君の努力は鈍感という病気を患っている夏兄には通じないみたいだよ。それは他のメンバーにも言えるんだけどね。
「そう言えば、一秋さん」
「何、蘭ちゃん?」
夏兄の方から僕の方へ向いて話しかけてくる蘭ちゃん。その顔は若干赤い。多分、夏兄に見られたくないからだろうけど、これが夏兄が「まだ俺に心開いてくれないのかね」と言っちゃう一因なんだよね。仕方の無い事なんだけど。
「鈴姉からメールが来たんですけど、鈴姉もIS学園に入っているんですよね?」
蘭ちゃんは弾の女友達として会った鈴ちゃんを実の姉の様に慕っている。意外と鈴ちゃんが姉御肌だったんだなとその時は驚いた。
でも、いきなりクラスの皆に押しかけられて代表を二つ返事で受けるんだから、今思うと合うんだよね。
「そうなんだよー。学校の敷地歩いてたら、聞き覚えのある声が聞こえたから行ってみたら再会だよ。連絡くれたら良かったのにって言ったら、そしたらサプライズにならないって」
「鈴姉らしいです。それでIS学園で昔の親友に会ったり、新しい友達を作ったりで楽しい学園生活を送っているって。私もその人たちに会ってみたいです」
「そうだね、多分蘭ちゃんも皆と仲良くなれるよ」
夏兄という一人の男性を取り合っているはずなんだけど、箒ちゃん、セシリアさん、鈴ちゃん、簪さんの4人は仲が良い。本人たち曰く「ライバルである前に親友」らしい。この4人の中では夏兄を狙うライバル=自分たちの友人という謎の公式が出来上がっている。
まあ、いがみ合われるよりは何倍もマシだけど。
「それで…、ですね。私、鈴姉に相談したんですよ。私もIS学園受けるって」
「お、お前何言って―」
「弾、ストップ。まずは、蘭ちゃんの話を聞こうよ。…それに、鈴ちゃんは何て?」
「『蘭が後輩になるのは嬉しいけど、ISに乗るのに軽い気持ちじゃダメ』と言われました」
「流石は代表候補生、良い事言うね。…時に弾。弾はさ、ISをどう思う?」
「俺がか? そんな事考えた事も無いけど、テレビやゲームをの事を考えるとスポーツみたいなものか?」
「だよね。大体の人がそう思ってる。でも、僕達のクラスの担任はISを兵器と言った。しかも現在の兵器をすべて過去にしてしまうほどのね。そんなものを学ぶ学校だよ?」
そう、兵器の扱いを学ぶという意味ではIS学園は軍学校と変わらない。違うのは留学生が多いのと、基本は高校だという所くらいだと思う。
「それでも…」
「まあ、蘭ちゃんの中学は有名校でしかもエスカレーター式なんだから、ゆっくり考えれば良いさ。成績も良いんでしょ?」
「はい。それに友達と簡易のIS適性の検査を受けに行ってきたんですよ」
簡易のIS適性検査というのは、その名の通り、短い時間でその人にISの適性があるかを調べる物である。日本では色々な所で無料で受けられる。普通に中学生が記念的に検査を受ける場合も多いらしい。
「へえー、結果はどうだったの?」
「判定はAでした」
「Aか。俺がBだったから、これって凄いんじゃないか?」
「そうだね、勉強すれば代表候補生になれるレベルだよ」
ちなみに、適性だけを書くなら、夏兄はB、代表候補生組はA、箒ちゃんでSだ。Sは適性だけなら冬姉や春姉クラスという事だ。
ただ、これはあくまで適性であって、これが高いから勝てるとは限らない。
「あくまで簡易ですから、実際精密な検査を受けないと詳しくは分からないって検査した人が言ってましたけどね」
「まあ、簡易のはざっくりとした物らしいからね。それでも、Aは凄いよ」
「そう言えば、一秋の適性はどうなんだ?」
「僕はBだよ。偶然だけど、夏兄と同じだね。…ごちそうさまでした」
食べ終わったので箸を置く。
「何時の間に食べ進んでたんだよ」
「喋りながら食べるぐらいしなよ。午後からは外に行くんでしょ? そうだ、蘭ちゃんも一緒に来る?」
「はい、ぜひ!」
この後、僕達四人は外で色々遊んだのだった。
その日の夜、部屋で僕と夏兄がくつろいでいると、春姉がやって来た。
「突然だけど、夏君はこの部屋から引っ越しです」
「何でさ、千春姉?」
「内緒だけど実は、転校生が来るのよ。男の子の」
「「はあっ!?」」
その声に思わず大声を上げてしまう僕達。
「静かに。その子の面倒を秋君に見てもらおうと思ってね」
「分かった。引っ越しは今すぐ?」
「ええ。急にゴメンね、夏君」
「大丈夫、仕方ない事だし」
「僕も、引っ越しの準備手伝うよ」
そこから、三人で夏兄の荷物を纏めて、夏兄はこの部屋を出て行った。
…しかし、転校生ね。どんな人なんだろう?
原作二巻の内容に入りました。
次回、残りのヒロイン二人登場です。